(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146993
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】フィルタ演算回路、データ伝送回路及び保護リレー装置
(51)【国際特許分類】
H02H 3/02 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H02H3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048061
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠登
【テーマコード(参考)】
5G142
【Fターム(参考)】
5G142BB03
5G142BB13
5G142BC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アナログ入力点数に応じた複数段のディジタルフィルタの組み合わせを可能とし、要望のシステムに応じたフィルタ演算回路の自由な設計でフィルタ演算回路の乗算器の効率化を図るフィルタ演算回路、データ伝送回路及び保護リレー装置を提供する。
【解決手段】データ伝送回路において、フィルタ演算部のフィルタ演算ブロック201は、二つのデータの入力が可能なMUX2411と、MUX2411の出力側と接続するIIR Filter2511と、一つのデータの入力に対してIIR Filter2511の演算で生じる遅延を調整する遅延部2611と、IIR Filter2511及び遅延部2611の出力側と接続するMUX2421と、MUX2421の出力側と接続するIIR Filter2521と、IIR Filter2511の出力データに対してIIR Filter2521の演算で生じる遅延を調整する遅延部2621と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのデータの入力が可能な第一マルチプレクサと、
この第一マルチプレクサの出力側と接続される第一ディジタルフィルタと、
一つのデータの入力に対して前記第一ディジタルフィルタの演算で生じる遅延を調整する第一遅延部と、
前記第一ディジタルフィルタ及び前記第一遅延部の出力側と接続される第二マルチプレクサと、
この第二マルチプレクサの出力側と接続される第二ディジタルフィルタと、
前記第一ディジタルフィルタの出力データに対して前記第二ディジタルフィルタの演算で生じる遅延を調整する第二遅延部と、
を備えたことを特徴とするフィルタ演算回路。
【請求項2】
前記第一ディジタルフィルタ及び前記第二ディジタルフィルタのフィルタ係数を格納するフィルタ係数レジスタを備えたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ演算回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルタ演算回路を複数備え、
一つの前記フィルタ演算回路の前記第二ディジタルフィルタの出力データは、他の前記フィルタ演算回路の前記第一マルチプレクサに入力されることを特徴とするデータ伝送回路。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ伝送回路を備えたことを特徴とする保護リレー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の電圧および電流のアナログ量をアナログディジタル変換する保護リレー装置の技術、特に変換されたディジタル量をディジタルフィルタ処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の電圧及び電流のアナログ量は、A/D(アナログディジタル)変換する保護リレー装置(特許文献1)に供されると、先ず、A/D変換手段と接続されたディジタルフィルタによりフィルタ処理される。次いで、バッファメモリとシステムバスを介してCPU(Central Processing Unit)の演算に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アナログディジタル変換されたディジタル量は、SoC(System-on-a-chip)内のディジタル信号処理部にてフィルタ処理された後、CPUに供されて必要な処理が行われる。
【0005】
ディジタル信号処理部による処理は、SoCに内蔵されている乗算器等の専用ブロックが用いられるが、専用ブロックの数には限りがある。また、アナログ入力点数の上限は、システムの物理的な構造等によって定まる。アナログ入力点数の上限にあわせて、各アナログ入力に対して同一のフィルタ処理を実装した場合、アナログ入力点数が上限に満たない場合、使用しないフィルタが生じ、乗算器の使用率が低下する。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑み、アナログ入力点数に応じた複数段のディジタルフィルタの組み合わせを可能とし、要望のシステムに応じたフィルタ演算回路の自由な設計により、フィルタ演算回路の乗算器の効率化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、二つのデータの入力が可能な第一マルチプレクサと、この第一マルチプレクサの出力側と接続される第一ディジタルフィルタと、一つのデータの入力に対して前記第一ディジタルフィルタの演算で生じる遅延を調整する第一遅延部と、前記第一ディジタルフィルタ及び前記第一遅延部の出力側と接続される第二マルチプレクサと、この第二マルチプレクサの出力側と接続される第二ディジタルフィルタと、前記第一ディジタルフィルタの出力データに対して前記第二ディジタルフィルタの演算で生じる遅延を調整する第二遅延部と、を備えたフィルタ演算回路である。
【0008】
本発明の一態様は、前記フィルタ演算回路において、前記第一ディジタルフィルタ及び前記第二ディジタルフィルタのフィルタ係数を格納するフィルタ係数レジスタを備える。
【0009】
本発明の一態様は、前記フィルタ演算回路を複数備え、一つの前記フィルタ演算回路の前記第二ディジタルフィルタの出力データは、他の前記フィルタ演算回路の前記第一マルチプレクサに入力されるデータ伝送回路である。
【0010】
本発明の一態様は、前記データ伝送回路を備えた保護リレー装置である。
【発明の効果】
【0011】
以上の本発明によれば、アナログ入力点数に応じた複数段のディジタルフィルタの組み合わせが可能となり、要望のシステムに応じたフィルタ演算回路の自由な設計が行えるので、フィルタ演算回路の乗算器の効率化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一態様であるデータ伝送回路のブロック構成図。
【
図2】前記データ伝送回路におけるフィルタ演算回路のブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1に示された本発明の一態様であるデータ伝送回路1は、アナログ変換基板をサンプリングデータバスにより接続することで、アナログ入力点数の増加を図る。特に、複数のアナログ量をサンプリングしたディジタルデータを固定数の乗算器を有するハードウェアによりフィルタ処理を行うディジタルフィルタ演算回路において、1点のアナログ入力に対して行うフィルタ処理の段数をアナログ入力点数に応じて変更可能とする。これにより、アナログ入力点数に応じて複数段のディジタルフィルタを組み合わせた構成が可能となり、要望のシステムに応じたフィルタ演算回路を自由に設計可能となるので、乗算器が効率化される。
【0015】
また、本態様においては、複数のアナログ量を同時サンプリングしたディジタルデータを送信するサンプリングデータバスと制御用の汎用バスを確保することで、簡易な構成でアナログ入力数が容易に拡張可能とする。尚、サンプリングデータバスではなく、他の周囲の伝送手段によって前記入力点数を増やすことも可能であり、この場合、データ伝送回路1に実装されるA/D変換器制御部を適宜変更させることで対応可能となる。
【0016】
[データ伝送回路1の態様例]
データ伝送回路1は、SoC101、このSoC101と接続されるA/D変換器102と、を有する。
【0017】
A/D変換器102には、アナログ入力信号111,112,…,11mが供される。
【0018】
SoC101は、内部バス100、CPU103、タイミング制御部104、RAM105、A/D変換器制御部106、フィルタ演算部107、DMAC(Direct Memory Access Controller)108,109を実装する。内部バス100には、CPU103、タイミング制御部104、RAM105、フィルタ演算部107及びDMAC108,109が接続される。タイミング制御部104は、さらに、A/D変換器制御部106と接続される。このA/D変換器制御部106は、さらに、A/D変換器102、フィルタ演算部107及びDMAC109と接続される。
【0019】
フィルタ演算部107は、
図2に示すように、複数のディジタルフィルタ演算回路として、フィルタ演算ブロック201,202,…,20mを実装する。
【0020】
フィルタ演算ブロック201,202,…,20mは、
図1のA/D変換器制御部106から入力データ2111,2112,2121,2122,…,211m,212mを受けると、同図の内部バス100を介したCPU103からの入力切替え信号2211,2212,…,221m,2221,2222,…,222m及びフィルタ係数2311,2312,…,231mに基づき、DMAC108に対して出力データ2811,2812,2821,2822,…,281m,282mを出力する。
【0021】
フィルタ演算ブロック201,202,…,20mは同一の構造となっている。
【0022】
フィルタ演算ブロック201は、
図2に示すように、MUX2411、IIR Filter2511、遅延部2611、MUX2421、IIR Filter2521及び遅延部2621を備える。
【0023】
MUX2411は、二つのデータの入力が可能な第一マルチプレクサであって、CPU103からの入力切替え信号2211に基づき、当該二つのデータのいずれかのデータをIIR Filter2511に供する。尚、前記二つのデータとして、例えば、入力データ2111と、ゼロ値(000h)とが入力される。
【0024】
IIR Filter2511は、MUX2411の出力側と接続される第一ディジタルフィルタとしての第一無限インパルス応答フィルタである。
【0025】
遅延部2611は、1点のデータ(入力データ2121)の入力に対してIIR Filter2511の演算で生じる遅延を調整する第一遅延部である。
【0026】
MUX2421は、IIR Filter2511と遅延部2611の出力側と接続される第二マルチプレクサであって、CPU103からの入力切替え信号2221に基づき、IIR Filter2511若しくは遅延部2611の出力信号をIIR Filter2521に供する。
【0027】
IIR Filter2521は、MUX2421の出力側と接続される第二ディジタルフィルタとしての第二無限インパルス応答フィルタである。
【0028】
遅延部2621は、IIR Filter2511からの入力データに対してIIR Filter2521の演算で生じる遅延を調整する第二遅延部である。
【0029】
フィルタ演算ブロック202,…,20mは、符号が異なるが、フィルタ演算ブロック201と同様の回路構成となっている。
【0030】
特に、フィルタ演算ブロック202のMUX2412には、二つの入力データとして、入力データ2112と、フィルタ演算ブロック202の1ブロック前であるフィルタ演算ブロック201のIIR Filer2521からの出力データ2821と、が供される。
【0031】
同様に、フィルタ演算ブロック20mのMUX241mには、二つの入力データとして、入力データ211mと、フィルタ演算ブロック20mの1ブロック前であるフィルタ演算ブロックの第二無限インパルス応答フィルタからの出力データと、が供される。
【0032】
[データ伝送回路1の動作例]
図1,2を参照して本実施形態のデータ伝送回路1の動作例について説明する。
【0033】
CPU103が内部バス100を介してタイミング制御部104から所定のサンプリングタイミングを生成する。このサンプリングタイミングに従い、アナログ入力信号111,112,…,11mが、A/D変換器102によってディジタルデータに変換された後、SoC101のA/D変換器制御部106に入力される。
【0034】
A/D変換器制御部106に格納されたデータは、フィルタ演算部107及びDMAC109に伝送される。CPU103は、所望のフィルタ演算を実現するために、内部バス100を介して入力切替え信号2211,2212,…,221m,2221,2222,…,222m及びフィルタ係数2311,2312,…,231mをフィルタ演算部107に設定する。
【0035】
フィルタ演算部107は、前記設定の内容に従い、フィルタ処理を行い、DMAC108にフィルタ処理後のデータを伝送する。DMAC108及びDMAC109は、CPU103が行う設定に従い、RAM105にデータを格納する。
【0036】
図2に示したように、フィルタ演算部107において、フィルタ演算ブロック201は、A/D変換器制御部106からの入力データ2111,2121を格納する。
【0037】
入力データ2111またはゼロ値(000h)のいずれか一方が、入力切替え信号2211に基づきMUX2411により選択され、MUX2411の出力信号として、IIR Filter2511に入力される。
【0038】
IIR Filter2511は、CPU103によりフィルタ係数レジスタ2711に設定されたフィルタ係数2311を用いて、フィルタ演算処理を行う。
【0039】
IIR Filter2511の出力結果は、MUX2421に入力される。入力データ2121は、IIR Filter2511での演算による遅延と均衡化させるために、遅延部2611を介して、MUX2421に入力される。MUX2421は、入力切替え信号2221に基づき、IIR Filter2511の出力信号または遅延部2611の出力信号のいずれか一方を出力する。
【0040】
MUX2421の出力信号は、IIR Filter2521に入力され、IIR Filer2521は、フィルタ係数レジスタ2711に従い、所定のフィルタ演算を行い、出力データ2821として出力される。
【0041】
IIR Filter2511の出力信号は、IIR Fiter2521での演算による遅延と均衡化させるために、遅延部2621を介して出力データ2811として出力される。
【0042】
フィルタ演算ブロック202は、MUX2412に入力されるゼロ値の代わりにフィルタ演算ブロック201の出力データ2821が入力される以外は、フィルタ演算ブロック201と同様の動作を行う。
【0043】
フィルタ演算部107において、複数のフィルタ演算ブロックが接続できるため、任意の段数のフィルタを構成できる。フィルタ係数レジスタを用いて、各々のIIR Filterに対してフィルタ係数を設定できるため、ローパスフィルタやハイパスフィルタ等の多様なフィルタ処理を実装できる。
【0044】
フィルタ演算ブロック数m=4として、フィルタ演算ブロック201,202,203,204がある場合のフィルタの構成方法を示す。
【0045】
(1段フィルタ)
フィルタ演算ブロック201のMUX2411の出力を入力データ2111とし、MUX2421の出力を遅延部2611の出力とすることで、入力データ2111に対してIIR Filter2511でフィルタ処理を行い、フィルタ処理結果が遅延部2621を介して出力データ2811として出力される。一方、入力データ2121は、遅延部2621、MUX2421を介して、IIR Filter2521でフィルタ処理が行われ、この処理結果が出力データ2821として出力される。1ブロック当たり、二つの入力データに対して、1段のIIRフィルタ処理を行うことができる。
【0046】
(2段フィルタ)
フィルタ演算ブロック201のMUX2411の出力を入力データ2111とし、MUX2421の出力をIIR Filter2511の出力とすることで、入力データ2111に対して、IIR Filter2511及びIIR Filter2521でフィルタ処理が行われ、この処理結果が出力データ2821として出力される。1ブロック当たり、1点の入力データに対して、2段IIRフィルタ処理を行うことができる。
【0047】
(3段フィルタ)
フィルタ演算ブロック201のMUX2411の出力を入力データ2111とし、MUX2421の出力をIIR Filter2511の出力とすることで、入力データ2111に対して、IIR Filter2511及びIIR Filte2521でフィルタ処理を行い、この処理結果が出力データ2821として出力される。フィルタ演算ブロック202のMUX2412の出力を出力データ2821とし、MUX2422の出力を入力データ2122とすることで、IIR Filter2512の出力を、遅延部2622を介して出力データ2812として出力し、入力データ2122のデータを遅延部2612、MUX2422、IIR Fiter2522を介して出力データ2822として出力する。すなわち、入力データ2111は3回IIR Filterを介して出力データ2812となり、入力データ2122は1回IIR Filterを介して出力データ2822となる。2ブロックで、1点の入力データに対して3段IIRフィルタ処理と、1段IIRフィルタ処理を行うことができる。
【0048】
(4段フィルタ)
フィルタ演算ブロック201のMUX2411の出力を入力データ2111、MUX2421の出力をIIR Filter2511の出力とすることで、入力データ2111に対して、IIR Filter2511及びIIR Filter2521でフィルタ処理を行い、この処理結果が出力データ2821として出力される。フィルタ演算ブロック202のMUX2412の出力を、出力データ2821として、IIR2512でフィルタ処理を行う。MUX2422の出力をIIR Filter2512の出力とし、IIR Filter2522でフィルタ処理が行われ、この処理結果が出力データ2822として出力される。すなわち、入力データ2111は4回IIR Fiterを通過する。2ブロックで、1点の入力データに対して4段IIRフィルタ処理を行うことができる。
【0049】
同様にして、5段、6段、7段、8段のフィルタも構成可能である。入力データ点数に応じて、フィルタ段数は任意の組み合わせが可能である。
例えば、入力データ点数が2点の場合、
・1段フィルタ×1入力+7段フィルタ×1入力
・2段フィルタ×1入力+6段フィルタ×1入力
・3段フィルタ×1入力+5段フィルタ×1入力
・4段フィルタ×1入力+4段フィルタ×1入力
が構築可能となり、
入力データ点数が5点の場合、
・1段フィルタ×4入力+4段フィルタ×1入力
・1段フィルタ×3入力+2段フィルタ×1入力+3段フィルタ×1入力
・1段フィルタ×2入力+2段フィルタ×3入力
が構築可能である。
【0050】
表1にm=4における入力データ点数とフィルタ段数の組み合わせを示す。同表は、行方向に入力データ点数を、列方向にフィルタ段数を示しており、行と列が交差する箇所の値は、該当列のフィルタ段数のフィルタを通過する入力データ点数である。フィルタ演算ブロック数m=4の場合には、19通りのフィルタの組み合わせが可能である。
【0051】
【0052】
本実施形態のIIR Filterの構成には、SoC101に内蔵されている乗算器などの専用ブロックを適用すれば構成される。フィルタ演算ブロック数m、及びIIR Filterブロック内の1ブロック当たりのフィルタ段数は、SoC101に内蔵されている乗算器などの専用ブロックの数や、システムが必要とするフィルタの最小段数に応じて設計が可能である。
【0053】
以上のデータ伝送回路1によれば、MUXを用いてIIR Filterの入力信号を切り替えられるため、一つのフィルタ演算ブロック内で1段または2段のIIR Filterを通過することができ、さらに、異なるブロックの出力データに対してもIIR Filter処理を行える。また、異なる複数のブロックを組み合わせられるため、フィルタ演算ブロック数の範囲内でフィルタ段数を自由に設定することができる。さらに、入力データ点数とフィルタ演算ブロック数によってフィルタ段数を自由に設定できるため、入力データ点数は少ないがフィルタ段数が多いシステムから、入力データ点数は多いがフィルタ段数が少ないシステムまで柔軟にフィルタ演算を行うことができる。
【0054】
データ伝送回路1の具体的な適用例としては保護リレー装置が挙げられる。保護リレー装置としては、落雷や鳥獣、風雪による短絡等の事故から設備の破損、停電の波及を防ぎ、迅速な復旧を行うための装置が挙げられる。前記保護リレー装置は、電力系統の電圧および電流を一定間隔でサンプリングし、CPUで事故判定を行い、遮断器にトリップ指示を出力する。
【0055】
前記保護リレー装置のより具体的なものとしては、変電所構内の母線を保護する母線保護リレーや発電所構内の発電機保護リレーなどの種類が挙げられる。母線保護リレーは、変電所構内の母線を保護するため、入力データ点数は150点程度と多くなるが、IIR Filterは2段ローパスフィルタでよい。一方、発電機保護リレーは、発電機を対象とするため、入力データ点数は母線保護リレーに比べて少なく25点程度であるが、発電機の起動時における周波数変動や、揚水発電所における負荷として運転する場合に対応するため、IIR Filterは4段バンドパスフィルタが必要となる。本発明を用いることで、母線保護リレーや発電機保護リレーなどの入力データ点数やIIR Filter段数が異なるシステムにも柔軟に適用できる。
【0056】
以上の実施形態のデータ伝送回路1は、IIR Filterが適用されているが、IIR Filter以外のディジタルフィルタであるFIR Filter(有限インパルス応答フィルタ)が適用されても当該実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0057】
1…データ伝送回路、101…SoC、102…A/D変換器
100…内部バス、103…CPU、104…タイミング制御器、105…RAM、106…A/D変換器制御部、107…フィルタ演算部、108,109…DMAC
201,202,20m…フィルタ演算ブロック
2411,2412…MUX、2511,2512…IIR Filter、2611,2612…遅延部、2421,2422…MUX、2521,2522…IIR Filter、2621,2622…遅延部