(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147010
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】PCタンクの施工方法と施工時のPCタンク
(51)【国際特許分類】
E04H 7/20 20060101AFI20220929BHJP
E04H 7/18 20060101ALI20220929BHJP
F17C 3/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E04H7/20
E04H7/18 301Z
F17C3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048083
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520230019
【氏名又は名称】Daigasガスアンドパワーソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本谷 幸康
(72)【発明者】
【氏名】西宮 暁
(72)【発明者】
【氏名】仁井田 将人
(72)【発明者】
【氏名】児島 啓太
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172CA10
3E172DA40
(57)【要約】
【課題】工事用開口に鉛直方向のPC鋼棒を配設してコンクリートにて閉塞し、PC鋼棒にプレストレスを導入するに当たり、下部PC鋼棒と上部PC鋼棒の高精度な位置合わせを不要にする、PCタンクの施工方法と施工時のPCタンクを提供する。
【解決手段】PCタンクの施工方法は、側壁20の一部にある工事用開口50の下方に下部PC鋼棒41を配設し、下部PC鋼棒41の下端を定着し、上端を工事用開口50の下縁52から上方に突設させ、工事用開口50の上方においてシース管30を配設し、工事用開口50以外の側壁20を施工するA工程と、シース管30の上端31から上部PC鋼棒43を挿入して下部PC鋼棒41と直接的もしくは間接的に接続するB工程と、工事用開口50をコンクリートを打設することにより閉塞し、シース管30にグラウト60を注入するとともに上部PC鋼棒43の上端を緊張してプレストレスを導入するC工程とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレストレストコンクリートにより形成される側壁を有する、PCタンクの施工方法であって、
前記側壁の一部に工事用開口があり、該工事用開口の下方に下部PC鋼棒を配設し、該下部PC鋼棒の下端を定着し、上端を該工事用開口の下縁から上方に突設させ、
前記工事用開口の上方において、前記側壁の上端から該工事用開口の上縁まで延設するシース管を配設し、該工事用開口以外の前記側壁をコンクリートを打設することにより施工する、A工程と、
前記側壁の上端にある前記シース管の上端から上部PC鋼棒を挿入し、前記下部PC鋼棒と該上部PC鋼棒とを、直接的もしくは間接的に接続する、B工程と、
前記工事用開口をコンクリートを打設することにより閉塞し、前記シース管にグラウトを注入するとともに前記上部PC鋼棒の上端を緊張してプレストレスを導入する、C工程とを有することを特徴とする、PCタンクの施工方法。
【請求項2】
前記B工程において、前記工事用開口の下縁から突設する前記下部PC鋼棒の上端に、該工事用開口の上縁近傍まで延設する中間PC鋼棒の下端を接続し、該中間PC鋼棒の上端と前記上部PC鋼棒の下端を接続することにより、該下部PC鋼棒と該上部PC鋼棒を前記中間PC鋼棒を介して間接的に接続することを特徴とする、請求項1に記載のPCタンクの施工方法。
【請求項3】
前記B工程では、重機から垂下されるワイヤに吊り治具を取り付け、該吊り治具に前記上部PC鋼棒の上端を取り付けて、前記シース管に該上部PC鋼棒を落とし込んでいくことにより該上部PC鋼棒の挿入を行うものであり、
前記吊り治具は、前記上部PC鋼棒の上端が螺合される雌継手と、前記ワイヤが玉掛けされる玉掛け部とを備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のPCタンクの施工方法。
【請求項4】
前記B工程では、前記上部PC鋼棒を通し、前記吊り治具を通さない切り欠きを備えた仮受け架台を前記シース管の上端に設置し、該仮受け架台にて前記上部PC鋼棒の上端が接続されている前記吊り治具を仮受けした状態で、前記上部PC鋼棒と前記下部PC鋼棒を直接的もしくは間接的に接続することを特徴とする、請求項3に記載のPCタンクの施工方法。
【請求項5】
前記C工程では、注入ホースの一端を前記シース管の下端に連通させ、前記工事用開口にコンクリートを打設する際の打設口から該注入ホースの他端を張り出しておき、該注入ホースの他端から前記グラウトを注入することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のPCタンクの施工方法。
【請求項6】
プレストレストコンクリートにより形成される側壁を有する、施工時のPCタンクであって、
前記側壁の一部に工事用開口があり、該工事用開口の下方に下部PC鋼棒が配設され、該下部PC鋼棒の下端が定着され、上端が該工事用開口の下縁から上方に突設しており、
前記工事用開口の上方において、前記側壁の上端から該工事用開口の上縁まで延設するシース管が配設され、該工事用開口以外の前記側壁が硬化したコンクリートにより施工されており、
前記シース管の上端は前記側壁の上端に位置しており、該シース管には、その上端から上部PC鋼棒が挿入されるようになっており、該シース管に挿入された該上部PC鋼棒と前記下部PC鋼棒が直接的もしくは間接的に接続され、前記工事用開口にコンクリートが打設されて閉塞された後に前記上部PC鋼棒の上端が緊張されてプレストレスが導入されるようになっていることを特徴とする、施工時のPCタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCタンクの施工方法と施工時のPCタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)や液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等の低温液体を貯留する低温液体タンクは、少なくとも底盤と側壁(防液堤)を備えるPCタンク(PC:Prestressed Concrete、プレストレストコンクリートタンク)の内部に、鋼板等により形成される内槽及び外槽が配設されることにより、その全体が構成される。
PCタンクを構成する側壁は、内槽から漏洩した低温液体の外部への液漏れを防止するための構造体であり、側壁は一般に円筒状を呈しており、内槽から漏洩した低温液体の液圧により側壁に生じる円周方向の引張力を打ち消すべく、側壁には円周方向のPC鋼材(PC鋼より線)が配設され、PC鋼材には液圧に相当するプレストレスが導入されるようになっている。
ところで、上記するように、低温液体による液圧に相当するプレストレスが側壁の側面に導入されるものの、低温液体が漏洩していない状態においては、側壁の側面に常時作用している円周方向のプレストレス(圧縮力)により、側壁には、当該側壁をその内側へ転倒させようとする外側引張りの曲げモーメント(負曲げ)が生じており、この曲げモーメントに起因するひび割れが問題となる。
そこで、上記ひび割れ防止対策として、側壁に鉛直方向のPC鋼材を別途配設し、この鉛直方向のPC鋼材にプレストレスを導入することにより、円周方向のプレストレスに起因するひび割れを防止するようにしている。
このように、PCタンクにおいては、円筒状の側壁に対して、円周方向と鉛直方向のPC鋼材が配設され、それぞれのPC鋼材にプレストレスが導入されることにより施工が行われる。
例えば、大規模なPCタンクの施工においては、側壁の断面を変断面構造とし、側壁の下方断面を上方の一般部の断面よりも大きくする構造の防液堤(所謂、Dual PC防液堤)が施工されることがあり、この構造の防液堤では、鉛直方向のPC鋼材を外側の大断面内にて緊張することができる。
【0003】
低温液体タンクの施工においては、防液堤を施工した後、その内側に資機材を搬送して外槽と内槽を構築する順序で施工が行われるため、側壁には、資機材を搬送し、作業員や工事関係者、重機、車両等が出入りするための工事用開口が設けられるのが一般的である。すなわち、側壁の施工においては、工事用開口を残した状態で側壁の施工が行われ、内槽と外槽の構築が完了した後に工事用開口が閉塞されることになる。
側壁における工事用開口の設置場所にもよるが、工事用開口をコンクリートにて閉塞した後は、閉塞された工事用開口においてもプレストレスが導入されるのが一般的である。この際、上記するように、Dual PC防液堤においては、鉛直方向のPC鋼材を外側の大断面内にて緊張することができるため、工事用開口の位置や開口寸法が制約を受けることは無い。一方、中型もしくは小型の防液堤においては、必要壁厚が大型タンクに比べて小さく、経済性と施工性の観点から側壁は上端から下端まで厚みが均一な等断面構造が一般に適用される。変断面構造の側壁と異なり、この等断面構造の側壁における鉛直方向のPC鋼材の緊張端は、当然に側壁の内部もしくは頂部となる。
【0004】
そこで、等断面構造の側壁の施工に際して、鉛直方向のPC鋼材に直線状のPC鋼棒を適用する場合、上記する工事用開口を閉塞する際には、工事用開口の下方にある下部PC鋼棒と、工事用開口の上方にある上部PC鋼棒に対して、工事用開口内に配設された中間PC鋼棒の上下端がそれぞれカプラ等の機械式継手を介して接続されることになる。
しかしながら、このように上部PC鋼棒と中間PC鋼棒と下部PC鋼棒を相互に機械式継手を介して接続させるには、上部PC鋼棒の下端位置と下部PC鋼棒の上端位置が鉛直方向で高精度に位置合わせされている必要があるものの、このように高精度の位置合わせは極めて難しく、仮に位置合わせができていない場合には、上部PC鋼棒と下部PC鋼棒を中間PC鋼棒にて繋ぐことができなくなり、施工不能に繋がり得る。
従って、PCタンクの施工の終盤において、工事用開口に鉛直方向のPC鋼棒を配設してコンクリートにて閉塞し、PC鋼棒にプレストレスを導入するに当たり、高精度の位置合わせを不要にしながら、下部PC鋼棒と上部PC鋼棒の接続を可能としたPCタンクの施工方法が望まれる。
【0005】
ここで、特許文献1には、工事用開口の寸法を小さくすることなく、工期を短縮することのできるタンクの構築方法が提案されている。具体的には、プレストレストコンクリートによる側壁を有するタンクの構築方法であり、工事用の開口部を残した状態で側壁を構築し、側壁の開口部を除く部分に通された緊張材を緊張して側壁にプレストレスを導入する工程と、開口部を閉塞する工程とを有し、緊張材の少なくとも一部は開口部の縁部に一端を有し、緊張材によるプレストレス導入時に、この一端を開口部の縁部で定着させる構築方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のタンクの構築方法では、開口部の上下縁に定着するPC鋼材を予め緊張しておき、開口部内のPC鋼材を予め緊張されているPC鋼材に接続した後、側壁外面に別途設けた定着用突起を使用して開口部にプレストレスを導入することから、適用されるPC鋼材は可撓性のあるPC鋼より線となる。従って、上記する課題、すなわち、工事用開口に鉛直方向のPC鋼棒を配設してコンクリートにて閉塞し、PC鋼棒にプレストレスを導入するに当たり、下部PC鋼棒と上部PC鋼棒の高精度な位置合わせを不要としながら、双方の接続を可能としたPCタンクの施工方法を提供するものではない。
【0008】
本発明は、工事用開口に鉛直方向のPC鋼棒を配設してコンクリートにて閉塞し、PC鋼棒にプレストレスを導入するに当たり、下部PC鋼棒と上部PC鋼棒の高精度な位置合わせを不要としながら、双方の接続を可能にする、PCタンクの施工方法と施工時のPCタンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明によるPCタンクの施工方法の一態様は、
プレストレストコンクリートにより形成される側壁を有する、PCタンクの施工方法であって、
前記側壁の一部に工事用開口があり、該工事用開口の下方に下部PC鋼棒を配設し、該下部PC鋼棒の下端を定着し、上端を該工事用開口の下縁から上方に突設させ、
前記工事用開口の上方において、前記側壁の上端から該工事用開口の上縁まで延設するシース管を配設し、該工事用開口以外の前記側壁をコンクリートを打設することにより施工する、A工程と、
前記側壁の上端にある前記シース管の上端から上部PC鋼棒を挿入し、前記下部PC鋼棒と該上部PC鋼棒とを、直接的もしくは間接的に接続する、B工程と、
前記工事用開口をコンクリートを打設することにより閉塞し、前記シース管にグラウトを注入するとともに前記上部PC鋼棒の上端を緊張してプレストレスを導入する、C工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、工事用開口の上方において、側壁の上端から工事用開口の上縁まで延設するシース管を配設した状態で工事用開口以外の側壁を施工し、シース管の上端から上部PC鋼棒を挿入して下部PC鋼棒と直接的もしくは間接的に接続した後、工事用開口をコンクリートにて閉塞して上部PC鋼棒の上端を緊張してプレストレスを導入することにより、シース管と上部PC鋼棒との間に隙間(遊び)があることから、上部PC鋼棒と下部PC鋼棒との高精度な位置合わせを不要としながら、双方を接続することができる。
また、上部PC鋼棒と下部PC鋼棒を接続した後、上部PC鋼棒の上端を緊張して上部PC鋼棒と下部PC鋼棒にプレストレスを導入することにより、工事用開口を含む側壁における鉛直方向のPC鋼棒に対して、一度の緊張にてプレストレスを導入することができる。尚、本態様の施工方法における、鉛直方向のPC鋼棒と円周方向のPC鋼より線の緊張のタイミングの一例としては、工事用開口以外の側壁のコンクリートを打設し、工事用開口を利用して内槽及び外槽を構築し、工事用開口にコンクリートを打設して閉塞した後に、鉛直方向のPC鋼棒の緊張と円周方向のPC鋼より線の緊張を行う方法を挙げることができる。
【0011】
ここで、「下部PC鋼棒の上端を工事用開口の下縁から上方に突設させ」とは、下部PC鋼棒の上方の僅かな領域で、例えばカプラ等の機械式継手を螺合できる程度の領域を工事用開口の下縁から上方に突設させておくことを意味しており、工事用開口の使用に際して邪魔にならない程度の長さを突設させる。
また、「下部PC鋼棒と上部PC鋼棒とを直接的もしくは間接的に接続する」とは、下部PC鋼棒の上端と上部PC鋼棒の下端をカプラ等を介して直接接続することと、下部PC鋼棒の上端と上部PC鋼棒の下端に対して、それぞれカプラ等を介して別途のPC鋼棒の下端と上端を繋ぐことにより、この別途のPC鋼棒を介して上部PC鋼棒と下部PC鋼棒を間接的に接続することの双方を含む意味である。例えば、現場へ搬送可能なPC鋼棒の長さに応じて、下部PC鋼棒と上部PC鋼棒を直接接続できる場合は直接的な接続(一箇所の接続)で十分となり、上部PC鋼棒の長さが足りない場合は、別途のPC鋼棒を介して間接的な接続(二箇所の接続)にて上部PC鋼棒と下部PC鋼棒を接続する。
また、「側壁の一部に工事用開口がある」とは、側壁の下方(底盤との取り合い部)に工事用開口が設けられている形態や、側壁の途中の高さレベルに工事用開口が設けられている形態が含まれるが、工事用開口の利便性や最終的な閉塞を含む施工性を勘案すると、前者の形態が好ましい。尚、前者の形態の工事用開口では、下部PC鋼棒は、その下端が例えば底盤の内部に定着されており、その上端が工事用開口の下縁から僅かに突設していることから、比較的短尺なPC鋼棒が適用されることになる。
また、C工程においては、シース管にグラウトを注入した後に上部PC鋼棒の上端を緊張する施工順序であってもよいし、上部PC鋼棒の上端を緊張した後にシース管にグラウトを注入する施工順序であってもよい。
【0012】
また、本発明によるPCタンクの施工方法の他の態様は、
前記B工程において、前記工事用開口の下縁から突設する前記下部PC鋼棒の上端に、該工事用開口の上縁近傍まで延設する中間PC鋼棒の下端を接続し、該中間PC鋼棒の上端と前記上部PC鋼棒の下端を接続することにより、該下部PC鋼棒と該上部PC鋼棒を前記中間PC鋼棒を介して間接的に接続することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、例えば現場へ搬送可能な上部PC鋼棒の長さが、下部PC鋼棒と直接接続するには短い場合に、中間PC鋼棒を介して双方のPC鋼棒を間接的に接続することにより、工事用開口の下方から側壁の上端のプレストレス導入位置まで延設する連続したPC鋼棒を形成することができる。
【0014】
また、本発明によるPCタンクの施工方法の他の態様において、
前記B工程では、重機から垂下されるワイヤに吊り治具を取り付け、該吊り治具に前記上部PC鋼棒の上端を取り付けて、前記シース管に該上部PC鋼棒を落とし込んでいくことにより該上部PC鋼棒の挿入を行うものであり、
前記吊り治具は、前記上部PC鋼棒の上端が螺合される雌継手と、前記ワイヤが玉掛けされる玉掛け部とを備えていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、上部PC鋼棒の上端が螺合される雌継手と、ワイヤが玉掛けされる玉掛け部とを備えている吊り治具に対して上部PC鋼棒の上端を取り付けることにより、相互に螺合される雌継手と上部PC鋼棒の上端との鉛直性が確保される。そのため、クレーン等の重機にて上部PC鋼棒を吊った状態でシース管の内部へ落とし込んでいく際に、上部PC鋼棒の下端がシース管のエッジに干渉することが抑制され、シース管の内部に上部PC鋼棒をスムーズに挿入することが可能になる。
【0016】
また、本発明によるPCタンクの施工方法の他の態様において、
前記B工程では、前記上部PC鋼棒を通し、前記吊り治具を通さない切り欠きを備えた仮受け架台を前記シース管の上端に設置し、該仮受け架台にて前記上部PC鋼棒の上端が接続されている前記吊り治具を仮受けした状態で、前記上部PC鋼棒と前記下部PC鋼棒を直接的もしくは間接的に接続することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、仮受け架台をシース管の上端に設置し、仮受け架台にて上部PC鋼棒の上端が接続されている吊り治具を仮受けした状態で、上部PC鋼棒と下部PC鋼棒を接続することにより、クレーン等の重機による上部PC鋼棒の揚重を最小限にでき、このことによって施工性と安全性の向上を図ることが可能になる。
【0018】
また、本発明によるPCタンクの施工方法の他の態様において、
前記C工程では、注入ホースの一端を前記シース管の下端に連通させ、前記工事用開口にコンクリートを打設する際の打設口から該注入ホースの他端を張り出しておき、該注入ホースの他端から前記グラウトを注入することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、注入ホースの一端をシース管の下端に連通させ、工事用開口にコンクリートを打設する際の打設口から注入ホースの他端を張り出しておくことにより、工事用開口へのコンクリートの打設後、注入ホースを介してシース管の内部へグラウトを注入することが可能になる。ここで、シース管の下端から注入されたグラウトは、シース管の内部を上昇しながらシース管と上部PC鋼棒の間に充填される。
【0020】
また、本発明による施工時のPCタンクの一態様は、
プレストレストコンクリートにより形成される側壁を有する、施工時のPCタンクであって、
前記側壁の一部に工事用開口があり、該工事用開口の下方に下部PC鋼棒が配設され、該下部PC鋼棒の下端が定着され、上端が該工事用開口の下縁から上方に突設しており、
前記工事用開口の上方において、前記側壁の上端から該工事用開口の上縁まで延設するシース管が配設され、該工事用開口以外の前記側壁が硬化したコンクリートにより施工されており、
前記シース管の上端は前記側壁の上端に位置しており、該シース管には、その上端から上部PC鋼棒が挿入されるようになっており、該シース管に挿入された該上部PC鋼棒と前記下部PC鋼棒が直接的もしくは間接的に接続され、前記工事用開口にコンクリートが打設されて閉塞された後に前記上部PC鋼棒の上端が緊張されてプレストレスが導入されるようになっていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、工事用開口の上方の側壁において、側壁の上端から工事用開口の上縁まで延設するシース管が埋設され、工事用開口の下方には下部PC鋼棒が配設されてその上端が工事用開口の下縁から上方に突設しており、シース管の上端から上部PC鋼棒が挿入されるようになっていることにより、シース管と上部PC鋼棒との間に隙間(遊び)があることから、上部PC鋼棒と下部PC鋼棒との高精度な位置合わせを不要としながら、双方を接続することを可能にした施工時のPCタンクとなる。
また、上部PC鋼棒と下部PC鋼棒が接続された後、上部PC鋼棒の上端が緊張されて上部PC鋼棒と下部PC鋼棒にプレストレスが導入されることにより、工事用開口を含む側壁における鉛直方向のPC鋼棒に対して、一度の緊張にてプレストレスを導入することを可能にした施工時のPCタンクとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のPCタンクの施工方法と施工時のPCタンクによれば、工事用開口に鉛直方向のPC鋼棒を配設してコンクリートにて閉塞し、PC鋼棒にプレストレスを導入するに当たり、下部PC鋼棒と上部PC鋼棒の高精度な位置合わせを不要としながら、双方を接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係るPCタンクの施工方法の一例のA工程を説明する工程図であって、かつ、実施形態に係る施工時のPCタンクの一例を示す図である。
【
図2】
図1のII-II矢視図であって、PCタンクにおける工事用開口を含む側面で切断した縦断面図であり、かつ、実施形態に係る施工時のPCタンクの一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るPCタンクの施工方法の一例のB工程を説明する工程図である。
【
図4】
図3のIV部の拡大図であって、上部PC鋼棒の上端が螺合されている吊り治具が重機から垂下されるワイヤに吊られている状態を示す図である。
【
図5】
図3に続いて、実施形態に係るPCタンクの施工方法の一例のB工程を説明する工程図であって、かつ、実施形態に係る施工時のPCタンクの一例を示す図である。
【
図6】
図5のVI部の拡大図であって、シース管の上端に設置されている仮受け架台に吊り治具を仮受けしている状態を示す図である。
【
図7】実施形態に係るPCタンクの施工方法の他の例のB工程を説明する工程図である。
【
図8】
図7に続いて、実施形態に係るPCタンクの施工方法の他の例のB工程を説明する工程図である。
【
図9】実施形態に係るPCタンクの施工方法の一例のC工程を説明する工程図である。
【
図10】
図9に続いて、実施形態に係るPCタンクの施工方法の一例のC工程を説明する工程図である。
【
図11】
図10に続いて、実施形態に係るPCタンクの施工方法の一例のC工程を説明する工程図であって、かつ、施工されたPCタンクの一例を示す図である。
【
図12】
図11のX1I-XII矢視図であって、PCタンクにおける工事用開口を含む側面で切断した縦断面図であり、かつ、施工されたPCタンクの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態に係るPCタンクの施工方法と施工時のPCタンクについて、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[実施形態に係るPCタンクの施工方法と施工時のPCタンク]
図1乃至
図12を参照して、実施形態に係るPCタンクの施工方法と施工時のPCタンクの一例について説明する。ここで、
図1,
図3,
図5,
図9,
図10、及び
図11は順に、実施形態に係るPCタンクの施工方法の一例の工程図であり、
図1はA工程を説明し、
図3及び
図5はB工程を説明し、
図9、
図10及び
図11はC工程を説明する図である。また、
図2は、
図1のII-II矢視図であって、PCタンクにおける工事用開口を含む側面で切断した縦断面図であり、
図12は、
図11のX1I-XII矢視図であって、PCタンクにおける工事用開口を含む側面で切断した縦断面図である。尚、
図1乃至
図10の各図は、実施形態に係るPCタンクの施工方法を説明するとともに、実施形態に係る施工時のPCタンクを説明する図であり、
図11及び
図12は、実施形態に係るPCタンクの施工方法を説明するとともに、施工されたPCタンクを説明する図である。
【0026】
施工対象のPCタンク(プレストレストコンクリートタンク)は、低温液体を貯留する低温液体タンクであり、
図1に示すように、少なくとも底盤10と側壁(防液堤)20を備え、側壁20の内部には、鋼板等により形成される内槽及び外槽(いずれも図示せず)が配設されるようになっている。ここで、図示例のPCタンクは、地盤Gに対して底盤10が直接支持される直接基礎として示しているが、底盤10が杭により支持される杭基礎であってもよい。また、底盤10の上面は、例えば地盤Gから500mm程度高い位置に設定できる。
【0027】
側壁20は円筒状を呈しており、平面視円板状の底盤10から円筒状の側壁20が立設している。底盤10は、不図示の鉄筋がコンクリート内に埋設されている鉄筋コンクリート(RC:Reinforced Concrete)造であり、必要に応じてPC鋼材がさらに配設され、プレストレスが導入されているプレストレストコンクリート造である。
【0028】
図1及び
図2に示すように、側壁20の一部には工事用開口50があり、底盤10と工事用開口50以外の側壁20は、コンクリートが打設されることにより施工されている。尚、この段階で、側壁20の備える鉛直方向と円周方向のPC鋼材にはプレストレスは導入されていない。
【0029】
側壁20において、円周方向のPC鋼より線45が鉛直方向に所定の間隔を置いて配設されており、鉛直方向と円周方向には不図示の鉄筋が配設されている。
【0030】
図示例の施工時のPCタンク100においては、側壁20の一部の下方に工事用開口50が設けられており、工事用開口50の下縁52は底盤10の上面に位置している。
図1に示すように、工事用開口50が底盤10の直上にあるため、外部から進入する不図示の重機や車両、工事関係者は、スムーズにPCタンクの内外へX1方向に出入りすることができ、工事用開口50を介して資機材が搬出入されることにより、側壁20の内部において、内槽と外槽の構築が効率的に行われる。
【0031】
側壁20のうち、工事用開口50の上方には、側壁20の上端21から工事用開口50の上縁51まで延設する複数(
図2では、九本)のシース管30を配設した状態で側壁20の施工(コンクリート打設)を行う。
【0032】
また、底盤10の施工においては、側壁20の施工の際に配設される各シース管30に対応する位置に、下部PC鋼棒41の下端を定着させる。下部PC鋼棒41は下端に定着体41aを備えており、底盤10の内部に定着体41aを定着させた状態で、下部PC鋼棒41の上方の雄ネジ41b(上端)を工事用開口50の下縁52から上方に突設させておく。
【0033】
図示するように、下部PC鋼棒41のうち、以下で説明するカプラが装着される雄ネジ41bのみが工事用開口50の下縁52から上方に突設していることから、雄ネジ41bの突設は工事用開口50の利用の際に邪魔になることはない。尚、雄ネジ41bにカプラが装着されるまでの間は、雄ネジ41bの上方に当該雄ネジ41bを防護するスロープ(図示せず)等を設置しておいてもよい。
【0034】
このように、側壁20の一部に工事用開口50を設け、工事用開口50の上方の側壁内に複数のシース管30を埋設した状態で、工事用開口50以外の側壁20をコンクリート打設により施工する(以上、A工程)。
【0035】
A工程の後、工事用開口50を利用してPCタンク内に資機材を搬送し、内槽と外槽の構築を行う。図示を省略するが、外槽側部ライナと外槽底部ライナ、及びドーム状の外槽屋根板を有する金属製の外槽を構築し、その内部に、低温液体を直接貯留する内槽側板と内槽底板、及び内槽屋根板を有する金属製の内槽を構築する。内槽と外槽の間には、低温液体の一例であるLNGを例えば-162℃に保ち、BOG(Boil Of Gas ボイルオフガス)の発生量を抑制するための保冷層と、LNG漏洩時に防液堤を保護するための冷熱抵抗緩和部(いずれも図示せず)等を設置する。
【0036】
内槽と外槽の構築が終了した後、工事用開口50の閉塞を行う。まず、
図3に示すように、工事用開口50の下縁52の上方に突設している下部PC鋼棒41の雄ネジ41bに対してカプラ48を装着し、工事用開口50の上縁51近傍まで延設する中間PC鋼棒42の下方の雄ネジ42bをカプラ48に装着することにより、カプラ48を介して下部PC鋼棒41と中間PC鋼棒42を接続する。また、この際、中間PC鋼棒42の上方の雄ネジ42aに対しても別途のカプラ49を装着しておく。
【0037】
ここで、中間PC鋼棒42は、アンボンドタイプのPC鋼棒が適用されてもよいし、不図示のシース管が工事用開口50の内部にも配設され、アンボンドタイプでないPC鋼棒が適用されてこのシース管に挿入され、シース管にグラウトが充填される形態であってもよい。
【0038】
図3に示すように、中間PC鋼棒42の上端に装着されているカプラ49は、工事用開口50の上縁51から下方に位置しており、以下で説明するようにシース管30の内部を吊り下ろされてきた上部PC鋼棒43の下方の雄ネジ43bがカプラ49に装着できるスペースを確保した位置にある。
【0039】
次に、同
図3に示すように、不図示のクレーン等の重機から垂下されるワイヤ90に吊り治具70を取り付け、吊り治具70に上部PC鋼棒43の上方の雄ネジ43aを取り付けて、上部PC鋼棒43をシース管30の上端31へY1方向へ移載し、上部PC鋼棒43をシース管30の内部に挿入して落とし込んでいく。上部PC鋼棒43をシース管30の内部へ落とし込むに当たり、側壁20の上端21にあるシース管30の上端31には、仮受け架台80を設置しておく。
【0040】
図4に示すように、吊り治具70は、上部PC鋼棒43の上方の雄ネジ43aが螺合される雌継手71と、ワイヤ90が玉掛けされる玉掛け部73とを有する。
【0041】
雌継手71の内部には貫通する雌ネジ72が設けられており、雌ネジ72に対して上部PC鋼棒43の上方の雄ネジ43aが螺合される。
【0042】
また、縦長で円筒状の雌継手71の側面のうち、上方の対角線位置に二つの玉掛け部73が取り付けられており、これら二つの玉掛け部73にワイヤ90の端部が玉掛けされることにより、吊り治具70を介して長尺な上部PC鋼棒43を安定的に吊持することができる。
【0043】
特に、縦長の雌継手71に対して上部PC鋼棒43の雄ネジ43aが螺合されることから、双方の軸心が鉛直方向に揃い、このことにより、吊持される上部PC鋼棒43の鉛直性が確保される。そのため、重機にて上部PC鋼棒43を吊った状態でシース管30の内部へ落とし込んでいく際に、上部PC鋼棒43の下端がシース管30のエッジに干渉することが抑制され、シース管30の内部に上部PC鋼棒43をスムーズに挿入することができる。
【0044】
図5に示すように、シース管30の内部に上部PC鋼棒43を落とし込んだ後、シース管30の上端31に設置されている仮受け架台80に対して吊り治具70を仮受けし、この状態で上部PC鋼棒43の下方の雄ネジ43bを工事用開口50の上縁51の下方にあるカプラ49に装着する。
【0045】
図6に示すように、仮受け架台80は扁平なブロック状を呈し、その一端から伸びる細長の切り欠き81を備えている。切り欠き81の幅はt3であり、上部PC鋼棒43の外径はt1であり、吊り治具70の雌継手71の外径はt2であり、t1<t3<t2の関係を有している。すなわち、切り欠き81は、上部PC鋼棒43を通し、吊り治具70を通さないように設定されており、この構成により、切り欠き81に上部PC鋼棒43を挿通させた姿勢で、仮受け架台80に対して吊り治具70を仮受けすることができる。
【0046】
このように、仮受け架台80をシース管30の上端31に設置し、仮受け架台80にて上部PC鋼棒43の上方の雄ネジ43aが接続されている吊り治具70を仮受けした状態で、上部PC鋼棒43の下方の雄ネジ43bを工事用開口50の内部に位置するカプラ49に装着することにより、重機による上部PC鋼棒43の揚重を最小限にでき、このことによって施工性と安全性の向上を図ることができる。
【0047】
図5に戻り、上部PC鋼棒43の下方の雄ネジ43bがカプラ49に装着されることにより、工事用開口50の内部に位置する二つのカプラ48,49を介して、下部PC鋼棒41と中間PC鋼棒42と上部PC鋼棒43が相互に接続され、底盤10から側壁20の上端21まで延設する長尺なPC鋼棒が形成される。このように、図示例では、下部PC鋼棒41と上部PC鋼棒43は直接接続されず、中間PC鋼棒42を介して間接的に接続されることになる。
【0048】
図5及び
図6に示すように、シース管30と上部PC鋼棒43との間には隙間35(遊び)があり、従って、上部PC鋼棒43はこの隙間35の範囲内で側方へ移動すること(位置変更)ができる。
【0049】
それぞれのシース管30に対して同様の方法で上部PC鋼棒43を落とし込み、カプラ49を介して対応する中間PC鋼棒42と接続することにより、側壁20のうち、工事用開口50の範囲内において、下部PC鋼棒41と中間PC鋼棒42と上部PC鋼棒43が相互に接続されている複数本(図示例では九本)の長尺なPC鋼棒が形成され、施工時のPCタンク100が形成される。
【0050】
図示するように、工事用開口50の上方において、側壁20の上端21から工事用開口50の上縁51まで延設するシース管30を配設した状態で工事用開口50以外の側壁20を施工し、シース管30の上端31から上部PC鋼棒43を挿入して中間PC鋼棒42に接続する。この際、シース管30と上部PC鋼棒43との間に隙間35(遊び)があることから、上部PC鋼棒43と中間PC鋼棒42が接続されている下部PC鋼棒41との高精度な位置合わせを不要としながら、双方を接続することができる。
【0051】
すなわち、対応するシース管30と下部PC鋼棒41のそれぞれの位置(鉛直方向の位置)がある程度ずれている場合は、シース管30の隙間35の範囲内で上部PC鋼棒43の位置をずらすことにより、下部PC鋼棒41(及び中間PC鋼棒42)と上部PC鋼棒43のそれぞれの位置を合わせることができ、相互に接続することが可能になる。そのため、上部PC鋼棒43と中間PC鋼棒42及び下部PC鋼棒41とを接続することができなくなり、施工不能になるといった問題は生じない(以上、B工程)。
【0052】
ところで、現場へ搬送可能な上部PC鋼棒43の長さは、搬送トラック等の関係から制限があり、例えば10m乃至12m程度となる。そのため、上部PC鋼棒43の長さが、工事用開口50の下縁52から僅かに突設する下部PC鋼棒41と直接接続するには短い場合に、図示例のように中間PC鋼棒42を介して上部PC鋼棒43と下部PC鋼棒41を間接的に接続することになる。例えば、搬送可能なPC鋼棒の長さが10m程度であって、現場にて下部PC鋼棒41と直接接続するために要する上部PC鋼棒43の長さが15m程度である場合は、不足の5m程度の長さの中間PC鋼棒42を使用することにより、必要な長さのPC鋼棒を現場にて形成することができる。
【0053】
従って、下部PC鋼棒41に対して上部PC鋼棒43を直接接続できる場合は、中間PC鋼棒42を省略することができる。
【0054】
図7と
図8は、上記するように下部PC鋼棒41に対して上部PC鋼棒43を直接接続する、PCタンクの施工方法の他の例のB工程を説明する工程図である。
【0055】
図7及び
図8に示すように、下部PC鋼棒41の上方の雄ネジ41bにカプラ48を装着した後、重機にて上部PC鋼棒44を吊持し、シース管30を介して吊り下ろし、上部PC鋼棒44の下方の雄ネジ44bをカプラ48に装着することにより、下部PC鋼棒41と上部PC鋼棒44を直接接続することができる。
【0056】
このように、上部PC鋼棒44と下部PC鋼棒41を、中間PC鋼棒を介することなく直接接続できる場合は、工事用開口50内におけるPC鋼棒同士の接続箇所は一箇所でよく、使用するカプラ48も一つでよいことから、より一層効率的な施工を可能とした施工時のPCタンク100Aとなる。
【0057】
次に、
図9に示すように、工事用開口50の上方にコンクリートの打設口53を設ける。そして、シース管30の内部にグラウトを注入するための注入ホース54の一端をシース管30の下端32に連通させ、打設口53から注入ホース54の他端を張り出しておく。
【0058】
打設口53を介して工事用開口50にフレッシュコンクリートを打設し、フレッシュコンクリートの硬化によって形成されるコンクリート体55により、工事用開口50を閉塞する。
【0059】
工事用開口50を閉塞した後、同
図9に示すように、注入ホース54を介して、グラウト60をY2方向に注入することにより、シース管30の下端32から入ったグラウト60はY3方向に上昇し、シース管30の上端31まで充填される。
【0060】
次に、同
図9に示すように、上部PC鋼棒43の上端にある雄ネジ43aに定着体43c及びナット43dを取り付け、上部PC鋼棒43の上端(雄ネジ43a)を上方のY4方向に緊張することにより、相互に連続する下部PC鋼棒41と中間PC鋼棒42と上部PC鋼棒43に対して所定のプレストレスを導入する。
【0061】
次に、
図10に示すように、側壁20の上部にコンクリートを増し打ちし、定着体43c及びナット43dを保護コンクリート体25の内部に埋設する。尚、上部PC鋼棒43の上端の定着方法は図示例以外にも様々な定着方法がある。
【0062】
側壁20のうち、工事用開口50以外の領域においては、底盤10から側壁20の上端に亘って鉛直方向に延設する複数のPC鋼棒(図示せず)が、側壁20の円周方向に所定の間隔を置いて配設されている。従って、これらのPC鋼棒に対しても、同様に所定のプレストレスを導入する。さらに、円周方向に延設する複数のPC鋼より線45に対しても所定のプレストレスを導入することにより、側壁20が備える全てのPC鋼材に対してプレストレスが導入される。
【0063】
尚、図示例は、中間PC鋼棒42にアンボンドタイプのPC鋼棒が適用される場合の施工順序である。この施工順序により、グラウト60の充填確認を目視で行うことが可能になる。一方、中間PC鋼棒42にアンボンドタイプでない普通PC鋼棒が適用される場合は、上部PC鋼棒43を緊張して下部PC鋼棒41と中間PC鋼棒42と上部PC鋼棒43に対して所定のプレストレスを導入した後に、シース管30にグラウト60を注入する施工順序となる。
【0064】
シース管30にグラウト60が充填され、下部PC鋼棒41~上部PC鋼棒43に所定のプレストレスが導入され、打設口53と注入ホース54が撤去されることにより、
図11及び
図12に示すようにPCタンク200が施工される(以上、C工程)。
【0065】
図示するPCタンクの施工方法によれば、上記するように、シース管30と上部PC鋼棒43との間に隙間35(遊び)があることから、上部PC鋼棒43と下部PC鋼棒41(及び中間PC鋼棒42)との高精度な位置合わせを不要としながら、これらのPC鋼棒を接続することができる。さらに、上部PC鋼棒43と下部PC鋼棒41(及び中間PC鋼棒42)を接続した後、上部PC鋼棒43の上端を緊張して上部PC鋼棒43と下部PC鋼棒41(及び中間PC鋼棒42)にプレストレスを導入することにより、工事用開口50を含む側壁20における鉛直方向のPC鋼棒に対して、一度の緊張にてプレストレスを導入することができ、効率的なPCタンク200の施工を実現できる。
【0066】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0067】
10:底盤
20:側壁(防液堤)
21:上端
25:保護コンクリート体
30:シース管
31:上端
32:下端
35:隙間(遊び)
41:下部PC鋼棒
41a:定着体
41b:雄ネジ
42:中間PC鋼棒
42a、42b:雄ネジ
43,44:上部PC鋼棒
43a、43b:雄ネジ
43c:定着体
43d:ナット
45:円周方向のPC鋼より線
48,49:カプラ
50:工事用開口
51:上縁
52:下縁
53:打設口
54:注入ホース
55:コンクリート体
60:グラウト
70:吊り治具
71:雌継手
72:雌ネジ
73:玉掛け部
80:仮受け架台
81:切り欠き
90:ワイヤ
100,100A:施工時のPCタンク
200:PCタンク
G:地盤