(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147015
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/16 20060101AFI20220929BHJP
H01M 8/1004 20160101ALI20220929BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20220929BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220929BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20220929BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20220929BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M8/1004
H01M8/02
H01M8/04 Z
H01M8/04313
H01M8/04694
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048093
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 登
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126CC02
5H126GG18
5H127BA61
5H127BB02
5H127BB14
5H127DA20
5H127DB49
5H127DC81
(57)【要約】
【課題】 土壌中の微生物を利用した発電装置において、土壌に簡易に設置して発電することができる技術を提供する。
【解決手段】 発電装置は、棒状の本体部を有し、本体部を杭として土壌に打ち込むことによって動作し、本体部の内部に配置され、電極表面が空気と接触可能な正極と、本体部の内部において、正極の外側に配置される負極と、正極と負極との間に配置される第1の空気遮断層と、本体部の内部において、負極の外側に配置される第2の空気遮断層と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌中の微生物を利用して発電する発電装置であって、
棒状の本体部を有し、前記本体部を杭として土壌に打ち込むことによって動作し、
前記本体部の内部に配置され、電極表面が空気と接触可能な正極と、
前記本体部の内部において、前記正極の外側に配置される負極と、
前記正極と前記負極との間に配置される第1の空気遮断層と、
前記本体部の内部において、前記負極の外側に配置される第2の空気遮断層と、を備える、
発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電装置であって、
前記本体部は、中空棒状であり、
前記正極の電極表面は、前記本体部の中空部を介して空気と接触可能に構成されている、
発電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発電装置であって、
前記正極は、前記電極表面を有する電極部材と、前記電極表面と前記中空部との間に配置される多孔質導電体と、を含んでいる、
発電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の発電装置であって、
前記第2の空気遮断層は、吸水ポリマーまたは多孔質部材であり、内部に前記本体部の延伸方向に沿って延伸する通気口を備えている、
発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発電装置は、さらに、
前記発電装置の発電状態に関する情報を取得する情報取得部と、
前記発電装置の発電性能を回復させる回復剤を前記本体部に供給する回復剤供給部と、
前記回復剤供給部を制御し、前記情報から得られた発電状態に応じて、前記本体部への前記回復剤の供給量を調整する制御部と、を備える、
発電装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の発電装置であって、
前記本体部は、一端が封止部によって封止され、前記封止部側から杭として土壌に打ち込まれる、
発電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発電装置であって、
前記封止部は、先端に向かうにつれて細くなるように形成されている、
発電装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発電装置であって、
前記本体部の外表面の少なくとも一部は、雄ねじ状に形成されている、
発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、土壌中の微生物を利用して発電する発電装置が知られている(例えば、特許文献1~3)。一般的に、微生物発電では、微生物による有機物の酸化分解において生じる電子が負極に供給される。有機物の酸化分解によって生じる水素イオンは、正極において酸素と反応することで水となって発電装置の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2011/125170号
【特許文献2】特開2005-317520号公報
【特許文献3】特開2011-65875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、負極での有機物の酸化分解は、酸素がない環境で進みやすく、正極での水素イオンと酸素との反応は、酸素が存在する環境で進みやすいため、正極と負極のそれぞれを、それぞれの反応に適した環境に設置する必要がある。このため、簡易に設置できる発電装置が望まれていた。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、土壌中の微生物を利用した発電装置において、土壌に簡易に設置して発電することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、土壌中の微生物を利用して発電する発電装置が提供される。この発電装置では、棒状の本体部を有し、前記本体部を杭として土壌に打ち込むことによって動作し、前記本体部の内部に配置され、電極表面が空気と接触可能な正極と、前記本体部の内部において、前記正極の外側に配置される負極と、前記正極と前記負極との間に配置される第1の空気遮断層と、前記本体部の内部において、前記負極の外側に配置される第2の空気遮断層と、を備える。
【0008】
この構成によれば、棒状の本体部の内部には、酸素と接触しやすい正極と、2つの空気遮断層で挟まれることで酸素と接触しにくい負極と、が配置されており、この本体部を杭として土壌に打ち込むことによって、発電することができる。これにより、土壌に簡易に設置して発電することができる。
【0009】
(2)上記形態の発電装置において、前記本体部は、中空棒状であり、前記正極の電極表面は、前記本体部の中空部を介して空気と接触可能に構成されていてもよい。この構成によれば、正極の電極表面は、中空棒状の本体部の中空部を介して空気と接触可能に構成されている。これにより、正極において、有機物の酸化分解によって生じる水素イオンの酸素との反応が進みやすくなり水素イオンが消費されるため、負極での微生物による有機物の酸化分解も進みやすくなる。したがって、発電装置の発電性能を向上させることができる。
【0010】
(3)上記形態の発電装置において、前記正極は、前記電極表面を有する電極部材と、前記電極表面と前記中空部との間に配置される多孔質導電体と、を含んでもよい。この構成によれば、正極は、電極部材と、電極部材の電極表面と中空部との間に配置される多孔質導電体と、を含んでいる。これにより、正極において、多孔質導電体によって電極部材の電極表面に空気に含まれる酸素が拡散されやすくなるため、有機物の酸化分解によって生じる水素イオンの酸素との反応が進みやすくなる。したがって、負極での微生物による有機物の酸化分解も進みやすくなるため、発電装置の発電性能をさらに向上させることができる。
【0011】
(4)上記形態の発電装置において、前記第2の空気遮断層は、吸水ポリマーまたは多孔質部材であり、内部に前記本体部の延伸方向に沿って延伸する通気口を備えていてもよい。この構成によれば、第2の空気遮断層は、保水性を有する吸水ポリマーまたは透水性を有する多孔質部材であり、土壌中の微生物と有機物を含む比較的多くの水を負極まで移動させることができる。さらに、第2の空気遮断層は、内部に本体部の延伸方向に沿って延伸する通気口を備えており、負極での有機物の酸化分解によって生じる二酸化炭素を、通気口を介して発電装置の外部に放出することができる。これにより、負極に対して、土壌中の微生物と有機物を含む比較的多くの水を供給できるとともに、有機物の酸化分解によって生じる二酸化炭素を外部に放出することができるため、負極での有機物の酸化分解がさらに進みやすくなる。したがって、発電装置の発電性能をさらに向上させることができる。
【0012】
(5)上記形態の発電装置は、さらに、前記発電装置の発電状態に関する情報を取得する情報取得部と、前記発電装置の発電性能を回復させる回復剤を前記本体部に供給する回復剤供給部と、前記回復剤供給部を制御し、前記情報から得られた発電状態に応じて、前記本体部への前記回復剤の供給量を調整する制御部と、を備えていてもよい。この構成によれば、回復剤供給部を制御する制御部は、情報取得部が取得する発電装置の発電状態に関する情報に応じて、発電装置の発電性能を回復させる回復剤の供給量を調整する。これにより、例えば、発電装置の出力が低下している場合、回復剤を供給することで発電装置の出力を増大させることができる。このように、発電装置の発電状態を制御することができるため、安定した発電を行うことができる。
【0013】
(6)上記形態の発電装置において、前記本体部は、一端が封止部によって封止され、前記封止部側から杭として土壌に打ち込まれてもよい。この構成によれば、本体部は、一端が封止部によって封止されており、封止部側から杭として土壌に打ち込まれる。これにより、発電装置を土壌に打ち込みやすくなるため、簡易に発電することができる。
【0014】
(7)上記形態の発電装置において、前記封止部は、先端に向かうにつれて細くなるように形成されていてもよい。この構成によれば、封止部は、先端に向かうにつれて細くなるように形成されている。これにより、封止されている部分から土壌に打ち込む場合、本体部を土壌に打ち込みやすい。したがって、さらに簡易に発電することができる。
【0015】
(8)上記形態の発電装置において、前記本体部の外表面の少なくとも一部は、雄ねじ状に形成されていてもよい。この構成によれば、発電装置を土壌に打ちこむときに発電装置を回転させることで、雄ねじ状の外表面によって本体部を土壌に打ち込みやすくなる。さらに、外表面が雄ねじ状に形成されているため、本体部の側面の面積が平な平面状に形成されている場合に比べ大きくなる。これにより、土壌中の微生物と有機物を含む水を多く取り込むことができる。したがって、さらに簡単に発電することができるとともに、発電装置の発電性能をさらに向上させることができる。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、発電装置を含むシステム、発電装置の製造方法、発電装置の設置方法、これら装置およびシステムの制御方法、これら装置およびシステムにおいて発電を実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。
【
図4】第2実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。
【
図6】第3実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。
【
図7】第4実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。
図2は、第1実施形態の発電装置の上面図である。
図3は、
図1のA部拡大図である。第1実施形態の発電装置1は、いわゆる、微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell、MFC)であって、微生物(発電細菌)が有機物を酸化分解する際に生じる電子を電力利用部5に供給する。発電装置1は、本体部10と、接続部40と、を備える。本実施形態では、発電装置1は、
図1に示すように、土壌6に、本体部10が杭として打ち込まれることで動作し、発電する。発電装置1が打ち込まれる土壌6は、排水処理で発生する活性汚泥や、水田の土、腐葉土などであって、発電細菌と有機物とが溶けている水を含んでいる。なお、土壌6は、家畜のふん、堆肥などであってもよい。
【0019】
本体部10は、中空部11と、正極15と、第1の空気遮断層20と、負極25と、第2の空気遮断層30と、封止部材35と、を備える。本実施形態では、本体部10は、発電装置1の中心軸CAに垂直な断面形状が円形状の棒状を有しており、本体部10が土壌6に打ち込まれる側の先端は、
図1に示すように、先に向かうにつれて細くなるように形成されている。
【0020】
中空部11は、本体部10において、発電装置1の中心軸CAに沿うように形成されている。本実施形態では、中空部11の中心軸CAの垂直な断面形状は、円形状であり、接続部40において、開口11aを介して大気と連通している。
【0021】
正極15は、筒状の部材であって、白金、パラジウム、ロジウム、金、銀、銅、鉄、コバルト、および、ニッケルの少なくとも1つを含む合金または化合物から形成されている。正極15は、電極部材16と、多孔質導電体17と、を備える。電極部材16の一方の端部16aは、接続部40に固定されている。電極部材16の一方の端部16aには、電力利用部5の電気配線5aが接続されている。電極部材16の他方の端部16bは、封止部材35に固定されている。多孔質導電体17は、筒形状を有する多孔質の導電体材料から形成される部材であり、電極部材16の内側の電極表面16cと中空部11との間に配置されている。多孔質導電体17は、酸素を透過する性質と水を透過する性質を有する。
【0022】
第1の空気遮断層20は、正極15の外側に配置されている筒状の部材である。第1の空気遮断層20には、プロトン伝導膜が用いられており、空気を遮断しつつ、水素イオン(プロトン)を透過させる性質を有している。第1の空気遮断層20は、電極部材16の外表面16dに接触しているように配置されている。
【0023】
負極25は、第1の空気遮断層20の外側に配置されている筒状の電極である。負極25は、炭素を含む材料から形成されている。負極25の一方の端部25aは、接続部40に固定されている。負極25の一方の端部25aには、電力利用部5の電気配線5bが接続されている。これにより、負極25は、電力利用部5と電気配線5a、5bとを介して、正極15と電気的に接続されることとなる。負極25の他方の端部25bは、封止部材35に固定されている。負極25の内表面25cは、第1の空気遮断層20に接触している。なお、負極25は、炭素、ステンレス、金、白金などを含む材料から形成されてもよい。
【0024】
第2の空気遮断層30は、筒形状を有し、負極25の外側に配置されている。第2の空気遮断層30は、空気遮断材31と、保護材32と、を備える。空気遮断材31は、吸水ポリマーから形成されており、酸素を遮断しつつ、二酸化炭素を透過させる性質を有する。本実施形態では、空気遮断材31は、負極25の外表面25dに接触するように配置されている。空気遮断材31の内部には、気体が流通可能な通気口33aを形成する通気口形成部材33が配置されている。通気口形成部材33は、発電装置1の中心軸CA方向に沿って延伸するように形成されている。本実施形態では、通気口形成部材33は、発電装置1の周方向において等間隔に8本配置されている(
図2参照)。通気口33aは、接続部40において、開口33bを介して大気と連通している。
【0025】
保護材32は、空気遮断材31の外表面に接触可能に配置される部材である。保護材32は、網目形状を有する部材であって、土壌6に含まれる水を通す性質を有する。保護材32は、比較的強度がある材料から形成されており、吸水ポリマーから形成される空気遮断材31を外側から支持する。
【0026】
封止部材35は、本体部10が土壌6中に設置されるときの土壌6中の本体部10の端部を封止する。具体的には、封止部材35は、中空部11と複数の通気口33aのそれぞれの端部を封止する。本実施形態では、封止部材35は、本体部10の他の部分に比べ、先端35aに向かうにしたがって細くなるように形成されている。
【0027】
接続部40は、発電装置1が土壌6に設置されているとき、土壌6の外側に位置する。接続部40は、本体部10の封止部材35が設けられている側とは反対側の端部を支持する。接続部40では、正極15の電極部材16と電気配線5aとが接点41において接続され、負極25と電気配線5bとが接点42において接続される。
【0028】
次に、発電装置1の作動内容について説明する。発電装置1が打ち込まれる土壌6には、発電細菌と有機物が含まれている。ここで、発電細菌とは、酸素がない環境で有機物を分解するときに電流を発生させる性質を持つ嫌気性細菌である。具体的には、式(1)に示す有機物の酸化分解を進行させることで電子が生じる。
有機物 → 電子(e-)+水素イオン(H+)+二酸化炭素(CO2) ・・・(1)
【0029】
発電装置1で発電を行うとき、発電装置1を本体部10の封止部材35側から土壌6に打ち込み、
図1に示す状態とする。土壌6に設置された発電装置1では、発電装置1の周辺の土壌6に含まれる、発電細菌と有機物とが含まれる水が、保護材32の網目の間を通って、第2の空気遮断層30の吸水ポリマーに吸水される(
図3の白抜き矢印W)。第2の空気遮断層30に吸水された水では、式(1)の反応が進行する。式(1)の右辺の電子は、負極25に集まり、電気配線5bを介して、電力利用部5に供給される。式(1)の右辺の水素イオンは、第1の空気遮断層20を通って、電極部材16に移動する。式(1)の右辺の二酸化炭素は、通気口形成部材33を介して通気口33aに漏れ出し、開口33bから大気に放出される(
図3の白抜き矢印F1)。これにより、本実施形態の発電装置1では、式(1)の反応は、右辺に移行しやすくなるため、電子が生じやすくなる。
【0030】
正極15では、第1の空気遮断層20を通って電極部材16に移動する水素イオンが式(2)に示す反応によって水になる。
水素イオン(H
+)+電子(e
-)+酸素(O
2) → 水(H
2O) ・・・(2)
式(2)の左辺に含まれる酸素は、大気から中空部11に流入する空気に含まれている酸素であり、多孔質導電体17を通って電極部材16の電極表面16cに供給される(
図3の白抜き矢印F2)。式(2)の右辺の水は、多孔質導電体17を通って中空部11に漏れ出し、開口11aから大気に放出される(
図3の白抜き矢印F3)。
【0031】
本実施形態の発電装置1では、負極25は、酸素遮断性を有する第1の空気遮断層20と第2の空気遮断層30とに挟まれている。これにより、嫌気性細菌の活動を阻害する酸素が負極25の周辺に入り込みにくくなっている。また、負極25での有機物の酸化分解によって生じる二酸化炭素は、通気口33aを介して大気に放出され、水素イオンは、正極15での酸素との反応によって水となり、中空部11を介して大気に放出される。このように、本実施形態の発電装置1では、式(1)および式(2)のそれぞれの右辺での生成物が電極部材16や負極25の周辺から取り除かれるため、効率的な発電を行うことができる。
【0032】
以上説明した、本実施形態の発電装置1によれば、棒状の本体部10の内部には、中空部11と、正極15と、第1の空気遮断層20と、負極25と、第2の空気遮断層30が配置されている。正極15の電極部材16は、電極表面16cに空気が接触可能な構成となっており、酸素と接触しやすい構造となっているため、有機物の酸化分解によって生じる水素イオンと酸素との反応が進みやすい。負極25は、2つの空気遮断層20、30で挟まれているため酸素と接触しにくくなり、発電細菌による有機物の酸化分解が進みやすい。これらによって、発電装置1は、土壌6中の発電細菌と有機物とによって効率的に発電することができる。この正極15と負極25とが内部に配置されている棒状の本体部10を杭として土壌6に打ち込むことによって、発電装置して動作させることができる。したがって、土壌6に簡易に設置して発電することができる。
【0033】
また、本実施形態の発電装置1によれば、本体部10は棒状を有しているため、本体部10の側面となる保護材32と土壌6との接触面積は比較的広い。これにより、本体部10には、発電に必要な発電細菌や有機物が比較的多く土壌6から供給されるため、本体部10の内部に発電細菌や有機物を補充することなく、発電を継続して行うことができる。したがって、簡便に発電することができる。
【0034】
また、本実施形態の発電装置1によれば、正極15の電極部材16の電極表面16cは、中空棒状の本体部10の中空部11を介して空気と接触可能に構成されている。これにより、正極15において、有機物の酸化分解によって生じる水素イオンの酸素との反応が進みやすくなり水素イオンが消費されるため、負極25での発電細菌による有機物の酸化分解も進みやすくなる。したがって、発電装置1の発電性能を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態の発電装置1によれば、正極15は、電極部材16と、電極部材16の電極表面16cと中空部11との間に配置される多孔質導電体17と、を含んでいる。これにより、正極15において、多孔質導電体17によって空気に含まれる酸素が拡散されやすくなるとともに、有機物の酸化分解において生じる水素イオンの酸素との反応が、正極15を構成する材料の触媒作用によって、進みやすくなる。したがって、負極25での発電細菌による有機物の酸化分解も進みやすくなるため、発電装置1の発電性能をさらに向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の発電装置1によれば、第2の空気遮断層30は、保水性を有する吸水ポリマーであり、土壌6中の発電細菌と有機物を含む比較的多くの水を負極25まで移動させることができる。さらに、第2の空気遮断層30は、内部に本体部10の中心軸CA方向に沿って延伸する通気口33aを備えており、負極25での有機物の酸化分解によって生じる二酸化炭素を、通気口33aを介して発電装置1の外部に放出することができる。これにより、負極25に対して、土壌6中の発電細菌と有機物を含む比較的多くの水を供給できるとともに、有機物の酸化分解によって生じる二酸化炭素を外部に放出することができるため、負極25での有機物の酸化分解がさらに進みやすくなる。したがって、発電装置1の発電性能をさらに向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態の発電装置1によれば、本体部10は、一端が封止部材35によって封止されており、封止部材35側から杭として土壌6に打ち込まれる。これにより、発電装置1を土壌6に打ち込みやすくなるため、土壌6にさらに簡易に設置して発電することができる。
【0038】
また、本実施形態の発電装置1によれば、本体部10の封止部材35は、先端に向かうにつれて細くなるように形成されている。これにより、封止部材35側から土壌6に打ち込む場合、本体部10を土壌6に打ち込みやすい。したがって、土壌6にさらに簡易に設置して発電することができる。
【0039】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。
図5は、
図4のB部拡大図である。第2実施形態の発電装置2は、第1実施形態の発電装置1(
図1)と比較すると、発電状態調整部を備える点が異なる。
【0040】
発電装置2は、本体部10と、接続部40と、発電状態調整部50と、を備える。発電状態調整部50は、センサ51と、回復剤タンク52と、供給ポンプ53と、供給配管54と、制御部55と、を備える。発電状態調整部50は、発電装置2の発電状態に応じて、発電性能回復剤を本体部10に供給し、本体部10での発電状態を調整する。
【0041】
センサ51は、第2の空気遮断層30の内部において、負極25の近傍に配置されている。センサ51は、発電装置2の発電状態に関する情報として、負極25の近傍での有機酸や糖類などの有機物の濃度を検出する。センサ51は、検出した有機物の濃度を制御部55に出力する。
【0042】
回復剤タンク52は、発電装置2の発電性能を回復することができる回復剤を貯留する。ここで、回復剤として、有機物を含む水が挙げられる。回復剤タンク52には、回復剤を発電装置2の内部まで送ることができる供給配管54が接続されている。供給配管54には、供給配管54における回復剤の流量を調整する供給ポンプ53が取り付けられている。なお、供給ポンプ53の代わりに、例えば、重力を利用して回復剤を発電装置2の内部まで送り込んでもよい。
【0043】
供給配管54は、回復剤タンク52から本体部10の第2の空気遮断層30の内部まで配置されている。供給配管54は、接続配管54aと、複数の供給ノズル54bを有する。接続配管54aは、回復剤タンク52と第2の空気遮断層30の内部とを接続しており、回復剤タンク52内の回復剤を第2の空気遮断層30の内部まで送ることができる(
図5の点線矢印L1)。複数の供給ノズル54bは、第2の空気遮断層30の内部の接続配管54aに取り付けられている。本実施形態では、複数の供給ノズル54bは、発電装置2の中心軸CAに沿って略等間隔で配置されている(
図5参照)。接続配管54aを流れる回復剤は、供給ノズル54bから第2の空気遮断層30の内部において、負極25の近傍に噴射される。
【0044】
制御部55は、センサ51と供給ポンプ53とに電気的に接続されている。制御部55は、センサ51が出力する有機物の濃度に応じて、供給ポンプ53の駆動を制御する。具体的には、有機物の濃度が一定の濃度以下になると、制御部55は、供給ポンプ53の駆動を開始し、回復剤タンク52に貯留されている回復剤を第2の空気遮断層30の内部に供給する。これにより、負極25において酸化分解される有機物が多くなるため、電子の発生量が多くなり、発電装置2の発電状態が改善する。
【0045】
以上説明した、本実施形態の発電装置2によれば、制御部55は、センサ51が取得する負極25の近傍での有機物の濃度に応じて、発電装置2の発電性能を回復させる回復剤の供給量を供給ポンプ53によって調整する。これにより、発電装置2の出力が低下している場合、回復剤を供給することで発電装置2の出力を増大させることができる。このように、発電装置2の発電状態を制御することができるため、安定した発電を行うことができる。
【0046】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。第3施形態の発電装置3は、第2実施形態の発電装置2(
図4)と比較すると、電流計と電圧計を備える点が異なる。
【0047】
発電装置3は、本体部10と、接続部40と、発電状態調整部60と、を備える。発電状態調整部60は、電流計61と、電圧計62と、回復剤タンク52と、供給ポンプ53と、供給配管54と、制御部55と、を備える。発電状態調整部60は、発電装置3の発電状態に応じて、発電性能回復剤を本体部10に供給し、本体部10での発電状態を調整する。
【0048】
電流計61は、電力利用部5と電極部材16とを接続する電気配線5aに取り付けられている。電流計61は、発電装置3の発電状態に関する情報として、電気配線5aを流れる電流の大きさを測定する。電圧計62は、電気配線5aと電気配線5bとに接続されている。電圧計62は、発電装置3の発電状態に関する情報として、発電装置3が出力する電気の電圧の大きさを測定する。電流計61が測定した電流の大きさと、電圧計62が測定した電圧の大きさとは、制御部55に出力される。制御部55は、電流計61が測定した電流と電圧計62が測定した電圧に応じて、供給ポンプ53の駆動を制御する。具体的には、電力利用部5に供給される電力が一定の値以下になると、制御部55は、供給ポンプ53の駆動を開始し、回復剤タンク52に貯留されている回復剤を第2の空気遮断層30に供給する。これにより、負極25において酸化分解される有機物が多くなるため、電子の発生量が多くなり、発電装置3の発電状態が改善する。
【0049】
以上説明した、本実施形態の発電装置3によれば、制御部55は、電流計61が検出する電気配線5aを流れる電流と、電圧計62が検出する発電装置3の出力電圧を応じて、第2の空気遮断層30に供給される回復剤の供給量を供給ポンプ53によって調整する。これにより、発電装置3の出力が低下している場合、回復剤を供給することで発電装置3の出力を増大させることができる。このように、発電装置3の発電状態を制御することができるため、安定した発電を行うことができる。
【0050】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の発電装置の概略構成を示す模式図である。第4施形態の発電装置4は、第1実施形態の発電装置1(
図1)と比較すると、第2の空気遮断層の形状が異なる。
【0051】
発電装置4は、本体部70と、接続部40と、を備える。本体部70は、中空部11と、正極15と、第1の空気遮断層20と、負極25と、第2の空気遮断層75と、封止部材35と、を備える。第2の空気遮断層75は、負極25の外側に配置されており、空気遮断材31と、保護材76と、を備える。
【0052】
保護材76は、本体部70の外表面でもある外表面77に、凸部77aと凹部77bを有する。凸部77aは、保護材76の外表面77において、頂部が発電装置4の中心軸CAを中心とする螺旋状となるように形成されている。これにより、保護材76の外表面77は、
図7に示すように、雄ねじ形状を有する。保護材76と負極25との間に配置される空気遮断材31の外表面は、保護材76の外表面77の形状に合った形状となっている。なお、凸部77aと凹部77bは、外表面77の少なくとも一部に形成されていてもよい。
【0053】
発電装置4を土壌6に設置するとき、封止部材35の先端35aを土壌6に接触させた状態で、中心軸CAを回転中心として発電装置4を回転させる。これにより、本体部10を土壌6に打ち込みやすくなる。さらに、土壌6に設置された発電装置4は、保護材76の外表面77に凸部77aと凹部77bとが形成されているため、第1実施形態の発電装置1に比べて、土壌6と接触している面積が広い。これにより、土壌6に含まれる、発電細菌と有機物とが含まれる水が、第1実施形態に比べ多く第2の空気遮断層30に取り込まれる。したがって、負極25において酸化分解される有機物が多くなるため、発電装置4の発電性能が向上する。
【0054】
以上説明した、本実施形態の発電装置4によれば、発電装置4を土壌6に打ちこむときに発電装置4を回転させることで、雄ねじ状の外表面77によって本体部10を土壌6に打ち込みやすくなる。さらに、外表面が雄ねじ状に形成されているため、本体部10の側面の面積が比較的大きくなる。これにより、土壌6中の発電細菌と有機物を含む水を多く取り込むことができる。したがって、さらに簡単に発電することができるとともに、発電装置の発電性能を向上させることができる。
【0055】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
[変形例1]
上述の実施形態では、本体部10、70は、中空部11と、正極15と、第1の空気遮断層20と、負極25と、第2の空気遮断層30、75と、封止部材と、を備えるとした。しかしながら、本体部の構成はこれに限定されない。正極には、多孔質導電体はなくてもよく、第2の空気遮断層には、保護材はなくてもよい。また、本体部は、断面形状が円形状の棒状であるとしたが、本体部の断面形状はこれに限定されない。多角形であってもよい。
【0057】
[変形例2]
上述の実施形態では、正極15は、電極部材16と、筒形状を有する多孔質体である多孔質導電体17と、を備えるとした。しかしながら、正極の構成は、これに限定されない。例えば、電極部材と多孔質導電体との組み合わせの代わりに、ガス透過性を有する電極材料から形成されていてもよい。
【0058】
[変形例3]
上述の実施形態では、第1の空気遮断層には、プロトン伝導膜が用いられるとした。第2の空気遮断層の空気遮断膜材は、吸水ポリマーから形成されているとした。しかしながら、第1の空気遮断層および第2の空気遮断層のいずれの構成もこれらに限定されない。第1の空気遮断層は、空気を遮断し、水素イオンを透過する性質を有していることが望ましい。第2の空気遮断層は、空気を遮断し、有機物の酸化分解によって生じる二酸化炭素を放出する性質を有していることが望ましい。例えば、第1の空気遮断層は、イオン交換膜または固定電解質膜であってもよく、第2の空気遮断層の空気遮断材は、多孔質材であってもよい。さらに、第2の空気遮断層の空気遮断材の内部に配置される通気口形成部材には、二酸化炭素を選択的に透過させる膜を用いてもよい。
【0059】
[変形例4]
第2実施形態では、発電装置2の発電状態に関する情報として、センサ51は、負極25の近傍での有機酸や糖類などの有機物の濃度を検出するとした。第3実施形態では、発電装置2の発電状態に関する情報として、電流計61によって電気配線5aを流れる電流を検出し、電圧計62によって、発電装置3が出力する電気の電圧を検出するとした。しかしながら、発電装置の発電状態に関する情報は、これらに限定されない。第2の空気遮断層における、pH(水素イオン指数)や、発電細菌の数などであってもよく、これらの情報を複数組み合わせてもよい。また、発電装置の制御方法として、これらの情報がある一定値以下となった場合に回復剤を供給するとしたが、発電装置の制御方法は、これに限定されない。例えば、発電装置の発電状態に関する情報の値に応じて、回復剤の供給量を変化させる制御を行ってもよい。
【0060】
[変形例5]
第2実施形態及び第3実施形態では、発電装置の発電性能を回復させる回復剤として、有機物を含む水を第2の空気遮断層に供給するとした。しかしながら、回復剤はこれに限定されない。発電細菌の活動を促進するメディエータを含む流体であってもよい。また、回復剤が供給される場所は、第2の空気遮断層30、75であるとしたが、第2の空気遮断層30、75以外の本体部10、70の内部であってもよく、土壌6中であってもよい。
【0061】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3,4…発電装置
6…土壌
10,70…本体部
11…中空部
15…正極
16c…電極表面
20…第1の空気遮断層
25…負極
30,75…第2の空気遮断層
33a…通気口
35…封止部材
51…センサ
52…回復剤タンク
53…供給ポンプ
54…供給配管
55…制御部
61…電流計
62…電圧計
77…(本体部の)外表面