(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147018
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】廃棄物処分場の浸出水集水設備
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B09B1/00 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048097
(22)【出願日】2021-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 竣工場所 栃木県宇都宮市下横倉町532番地 エコパーク下横倉 竣工日 2020年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】成田 大
(72)【発明者】
【氏名】矢羽田 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】小渕 考晃
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 誠
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA07
4D004AA18
4D004AA19
4D004AA31
4D004AA33
4D004AA36
4D004AA43
4D004AC07
4D004BB07
(57)【要約】
【課題】設備費が嵩むことなく揚水ポンプなどの重量設備を容易に搬入搬出できる廃棄物処分場の浸出水集水設備を提供する。
【解決手段】埋立用空間に埋め立てられた廃棄物からの浸出水を処理する廃棄物処分場の浸出水集水設備であって、前記浸出水が導かれる集水ピットと、前記集水ピットから離隔した位置に設置された立坑と、前記集水ピットと前記立坑とを接続する坑道と、前記集水ピットに設置され浸出水を揚水する揚水ポンプを前記坑道と前記立坑を通じて搬出入する搬出入装置と、を備え、前記坑道は滑らかに連続する床面を備えた斜坑で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋立用空間に埋め立てられた廃棄物からの浸出水を処理する廃棄物処分場の浸出水集水設備であって、
前記浸出水が導かれ、揚水ポンプを備えた集水ピットと、
前記集水ピットから離隔した位置に設置された立坑と、
前記集水ピットと前記立坑とを接続する坑道と、
前記揚水ポンプを前記坑道と前記立坑を通じて搬出入する搬出入装置と、
を備え、
前記坑道は滑らかに連続する床面を備えた斜坑で構成されている廃棄物処分場の浸出水集水設備。
【請求項2】
前記搬出入装置は、前記集水ピットにおいて前記揚水ポンプを昇降する第1搬送機構と、前記立坑において前記揚水ポンプを昇降する第2搬送機構と、前記第1搬送機構と前記第2搬送機構との間で前記斜坑の床面に沿って形成した滑らかな案内路に沿って前記揚水ポンプを搬送する第3搬送機構とを備えて構成されている請求項1記載の廃棄物処分場の浸出水集水設備。
【請求項3】
前記坑道は、床面に前記第3搬送機構が配され、上部がアーチ状に形成されている請求項2記載の廃棄物処分場の浸出水集水設備。
【請求項4】
前記第3搬送機構は、前記案内路に沿って移動する搬送台と、前記搬送台を前記案内路に沿って引上げるモータ駆動式の牽引装置を備えて構成されている請求項2または3記載の廃棄物処分場の浸出水集水設備。
【請求項5】
前記案内路は予め所定長さに形成されたレールユニットが前記斜坑の底面に沿って直線状に配列されて構成され、前記搬送台が前記レールユニットを走行する搬送台車で構成されている請求項4記載の廃棄物処分場の浸出水集水設備。
【請求項6】
前記第1搬送機構は、前記集水ピットで前記揚水ポンプを昇降する吊り上げ装置と、前記吊り上げ装置を移動可能に支持し前記吊り上げ装置で引き揚げた前記揚水ポンプを前記案内路の上部に配置された前記搬送台車の上方空間に移動させる天井レールと、を備えている請求項5記載の廃棄物処分場の浸出水集水設備。
【請求項7】
前記第2搬送機構は、前記搬送台車に搭載された前記揚水ポンプを昇降する前記吊り上げ装置と、前記吊り上げ装置を昇降する昇降装置と、前記昇降装置に沿って昇降する前記揚水ポンプを位置決めして案内する一対の案内柱を備え、前記揚水ポンプに備えた被案内部を前記一対の案内柱に挟み込むように構成されている請求項6記載の廃棄物処分場の浸出水集水設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水工によって周囲の地盤から仕切られた埋立用空間に埋め立てられた廃棄物からの浸出水を処理する廃棄物処分場の浸出水集水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
最終処分場は、閉鎖つまり埋立終了した後、「一般廃棄物の最終処分及び産業廃棄物の最終処分に係る技術上の基準を定める命令」で法定された廃止基準を満たすことによって廃止することができる。例えば浸出水の性状、埋立層の温度、地盤沈降の状況等に廃止基準が定められている。
【0003】
廃棄物からの浸出水は、遮水工に沿って配された浸出水案内路に沿って集水ピットに案内されて集水され、集水ピットに設置された揚水ポンプによって地上に揚水された後に処理される。
【0004】
特許文献1には、廃棄物を埋立て処分する廃棄物処分施設であって、遮水層で周囲の地盤から仕切られたすり鉢状の貯留空間に前記廃棄物を貯留する貯留槽と、前記貯留空間内の浸出水を集める集水管と、前記集水管で集められた前記浸出水を貯留する水溜部と、前記水溜部の前記浸出水を前記貯留槽の外部に排出する浸出水排出路と、を有する集水ピットと、を備え、前記集水ピットは、前記遮水層よりも前記貯留空間側の領域内に位置するように設けられている廃棄物処分施設が開示されている。
【0005】
集水ピットには、浸出水排出路を設置するための断面矩形の筒状の躯体が形成され、人が通行可能な監査廊が形成され、監査廊は複数の踊り場と踊り場を継ぐ階段が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、水溜部に貯留された浸出水を揚水するポンプのメンテナンスのために集水ピットから搬出する必要がある場合に、重量物であるポンプを人が抱えて監査廊に設置された階段を通って搬出する必要があり、非常な労力を伴う作業が要求されていた。
【0008】
そこで、
図7(a)、(b)に示すように、監査廊を構成する斜坑Aに沿ってモノレールBを配して、ディーゼルエンジンなどの内燃機関EGの動力でモノレールBに沿って走行する駆動車Cを設置して、駆動車Cに牽引される運搬車両Dにポンプを搭載して搬出入することが考えられる。なお、
図7(a)には、モノレールBに沿って走行する駆動車Cが複数台描かれているが、これは、モノレールBに沿って走行する様子を示すためのもので、実際には1台である。
【0009】
この場合、内燃機関の排ガスが斜坑Aに充満して環境が悪化するため、換気設備を備えるとともに坑内の環境を監視するガスセンサなどを備える必要があり、却って設備費が嵩むことになる。また、モノレールBや駆動車Cは汎用品ではなく、専用品であるためにそれらのメンテナンス費用も嵩むことになる。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、設備費が嵩むことなく揚水ポンプなどの重量設備を容易に搬入搬出できる廃棄物処分場の浸出水集水設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による廃棄物処分場の浸出水集水設備の第一の特徴構成は、埋立用空間に埋め立てられた廃棄物からの浸出水を処理する廃棄物処分場の浸出水集水設備であって、前記浸出水が導かれる集水ピットと、前記集水ピットから離隔した位置に設置された立坑と、前記集水ピットと前記立坑とを接続する坑道と、前記集水ピットに設置され浸出水を揚水する揚水ポンプを前記坑道と前記立坑を通じて搬出入する搬出入装置と、を備え、前記坑道は滑らかに連続する床面を備えた斜坑で構成されている点にある。
【0012】
集水ピットと立坑との間を繋ぐ坑道が滑らかに連続する床面を備えた斜坑で構成されているため、搬出入装置を介して揚水ポンプを滑らかに連続する床面の沿って容易く搬送することができる。
【0013】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記搬出入装置は、前記集水ピットにおいて前記揚水ポンプを昇降する第1搬送機構と、前記立坑において前記揚水ポンプを昇降する第2搬送機構と、前記第1搬送機構と前記第2搬送機構との間で前記斜坑の床面に沿って形成した滑らかな案内路に沿って前記揚水ポンプを搬送する第3搬送機構とを備えて構成されている点にある。
【0014】
集水ピットに設置した第1搬送機構により揚水ポンプを昇降し、立坑に設置した第2搬送機構により揚水ポンプを昇降し、斜坑に沿った滑らかな案内路に沿って移動する第3搬送機構で揚水ポンプを搬送するように構成することで、重量物である揚水ポンプであっても容易に搬出入でき、安全に且つ労力を要することなく搬出入できる。
【0015】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記坑道は、床面に前記第3搬送機構が配され、上部がアーチ状に形成されている点にある。
【0016】
坑道の上部がアーチ状に形成されるため、強固な構造でありながら容易く坑道が施工でき、また滑らかに連続する坑道の床面に沿って容易く第3搬送機構を設置することができる。
【0017】
同第四の特徴構成は、上述した第二または第三の特徴構成に加えて、前記第3搬送機構は、前記案内路に沿って移動する搬送台と、前記搬送台を前記案内路に沿って引上げるモータ駆動式の牽引装置を備えて構成されている点にある。
【0018】
斜坑に敷設された滑らかな案内路上を搬送台がモータ駆動式の牽引装置によって牽引移動するので、内燃機関を用いた場合に必要となる排ガスの排気のための特別の設備が不要になる。
【0019】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて、前記案内路は予め所定長さに形成されたレールユニットが前記斜坑の底面に沿って直線状に配列されて構成され、前記搬送台が前記レールユニットを走行する搬送台車で構成されている点にある。
【0020】
予め所定長さに形成されたレールユニットを斜坑の路面に沿って敷設すればよく、設置作業も簡素化できる。
【0021】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記第1搬送機構は、前記集水ピットで前記揚水ポンプを昇降する吊り上げ装置と、前記吊り上げ装置を移動可能に支持し前記吊り上げ装置で引き揚げた前記揚水ポンプを前記案内路の上部に配置された前記搬送台車の上方空間に移動させる天井レールとを備えている点にある。
【0022】
天井レールに沿って移動可能な吊り上げ装置で揚水ポンプを集水ピットの水槽から引き揚げ、その状態で天井レールに沿って揚水ポンプを移動させると、案内路上の搬送台車の上方空間に移動でき、そのまま吊り上げ装置を降下させることで、搬送台車に搭載できる。
【0023】
同第七の特徴構成は、上述した第六の特徴構成に加えて、前記第2搬送機構は、前記搬送台車に搭載された前記揚水ポンプを昇降する前記吊り上げ装置と、前記吊り上げ装置を昇降する昇降装置と、前記昇降装置に沿って昇降する前記揚水ポンプを位置決めして案内する一対の案内柱を備え、前記揚水ポンプに備えた被案内部を前記一対の案内柱に挟み込むように構成されている点にある。
【0024】
立坑に設置された第2搬送機構で揚水ポンプを昇降する際に、案内柱に揚水ポンプに備えた被案内部が挟み込まれることで、吊り上げ装置に吊下げられた揚水ポンプが昇降中に揺動して周囲の設備と衝突して破損を招くようなことを回避することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した通り、本発明によれば、設備費が嵩むことなく揚水ポンプなどの重量設備を容易に搬入搬出できる廃棄物処分場の浸出水集水設備を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(a)は廃棄物処分場に備えた浸出水集水設備の縦断面構造を示す説明図、(b)は浸出水集水設備の底面視の説明図
【
図2】(a)は集水ピットを示し、
図1(a)のA-A線断面図、(b)は斜坑を示し、
図1(a)のB-B線断面図(符号SPで示す破線は搬送台車用のスペースを示す)
【
図3】(a)は集水ピットから斜坑を経由し立坑に到るポンプの案内路を示す要部の縦断面図、(b)は集水ピットから斜坑を経由し立坑に到るポンプの案内路を示す要部の平面図、(c)は(b)の一点鎖線の円形で囲んだ領域のレールユニットを拡大表示した要部平面図
【
図4】(a)は搬送台車の平面図、(b)は搬送台車に揚水ポンプを搭載した状態を示す搬送台車の側面図、(c)は搬送台車に揚水ポンプを搭載した状態を示す要部の説明図
図4(b)のA-A線断面図の正確な図面を頂いておりませんので、「要部の説明図」としました。
【
図5】(a)は立坑の要部側面図、(b)は案内柱と係合した状態の揚水ポンプを示し、立坑の地上階の要部平面図
【
図6】(a)は立坑の上下中間部位の要部側面図、(b)は揚水ポンプの被案内部と案内柱との係合状態の説明図
【
図7】(a)は従来の斜坑の側面図、(b)は従来の搬送機構の説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明による廃棄物処分場の浸出水集水設備の実施形態を説明する。
図1には、クローズドタイプ(「被覆型」とも呼ばれる。)の管理型の廃棄物最終処分場10(以下、単に「廃棄物最終処分場10」と記す。)の構造が示されている。廃棄物最終処分場10は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で定められる構造基準と維持管理基準に基づいて設置及び運営され、同法に定められた廃棄物の区分に従って埋立処分される。
【0028】
廃棄物最終処分場10は、山間部の谷間や掘削地盤が堰堤で仕切られて埋立地となる埋立用空間Sが形成され、埋立物である廃棄物からの浸出水を集水ピットに向けて案内する集排水する溝や管を備えた集排水案内設備12が設置されている。
【0029】
廃棄物最終処分場10は、不特定人が安易に進入できないように塀等で閉鎖されており、埋立地から発生する様々な臭気ガスが外部に漏洩しないように、また雨水が滲入しないように被覆施設13で覆われている。被覆施設13は、鋼製の柱で骨組みが組まれ、金属製の板状体が配置されて外気と分離されている。
【0030】
なお、被覆施設13の構造として、ラーメン構造、アーチ構造、平面トラス構造、高剛性曲げ材と高引張強度のケーブルを組み合わせた自己釣合型のハイブリッド構造、スペースフレーム構造、シェル構造、空気支持構造、サスペンション構造など、公知の様々な支持構造が採用可能である。
【0031】
廃棄物最終処分場10には、汚泥などの有機性廃棄物、焼却灰、廃プラスチック、スラグ、コンクリートくず、ガラスくず、陶磁器くず、鉱滓、瓦礫くずなどが搬入されて埋め立てられる。
【0032】
トラックで搬入された様々な廃棄物は、敷地の端部から順に遮水工11の上に埋め立てられ、廃棄物が一定量埋め立てられる度に覆土が施され、さらにその上に新たな廃棄物が埋め立てられ、上限に達すると最終覆土が施され、必要に応じて埋立層に空気を供給する給気管などが配される。
【0033】
さらに被覆施設13の下方空間には散水機構を構成するスプリンクラーが設置され、埋立物から粉塵が舞い上がらないように、そして埋立物の生物処理が促進されるようにスプリンクラーから散水されるように構成されている。
【0034】
このような廃棄物最終処分場10は最終覆土が施されると閉鎖され、浸出水の性状、埋立層の温度、地盤沈降の状況等が所定の廃止基準に達するまで管理され、その後廃止される。
【0035】
埋立用空間Sに隣接して集水ピット20が設置され、集水ピット20の底部に沈砂池21及び堰を挟んで貯水池22が隣接するように設けられている。廃棄物からの浸出水は、集排水案内設備12を介して沈砂池21に流入し、沈砂後の浸出水が堰を越えて貯水池22に流入する。
【0036】
被覆施設13の外側で集水ピット20から離隔した位置に立坑40が掘削形成され、集水ピット20と立坑40とを接続する坑道である斜坑30が掘削形成されている。集水ピット20、斜坑30、立坑40及びそれらに設置された機器により浸出水集水設備100が構成される。
【0037】
図1(a)、(b)、
図2(a)、(b)及び
図3(a)、(b)に示すように、浸出水集水設備100には、集水ピット20、斜坑30、立坑40の他に、沈砂池21、排砂ポンプ2、貯水池22、揚水ポンプ3、揚水管4、給水管5、給電線6、換気ダクト9、搬出入装置50などが含まれる。
【0038】
斜坑30は、集水ピット20から立坑40に向けて15~25%程度の一定勾配で滑らかな床面(本実施形態では平面状の床面)を備え、上部がアーチ状の構造で構成されている。上部がアーチ形、下部がボックス形をしているため、上部の荷重は軸方向圧縮力として伝達され、部材の上部及び側壁に生じる曲げモーメントは大幅に低減され、合理的な構造になるという特徴がある。
【0039】
このような斜坑の築造方法として、現地でコンクリートを打設して築造する方法と、コンクリート二次製品の暗渠を敷設・連結して築造する方法があり、後者の場合には、一定品質が確保できるばかりか、工期の短縮、建設コストの削減に優れた効果がみられる。そのため、本実施形態では、上部がアーチ状であるプレキャストコンクリート製のアーチカルバート(ジオスター株式会社の登録商標)を敷設することにより築造している。なお、上部がボックス状のバックスカルバートを採用してもよい。また、プレキャストコンクリート製に代えて鉄筋コンクリート製であってもよい。
【0040】
床面には、後述する機器運搬用の搬送台車70の軌道7を構成するレール7Aや枕木7Bが敷設されるとともに、その側方に作業員の通路、つまり監査廊が形成されている。なお、本実施形態では、集水ピットの排水が坑道に流れ込むのを防止することも狙って坑道を斜坑30に形成しているが、斜度は15~25%の範囲に限るものではなく、適宜設定可能である。また、監査廊は滑り止め処理された平坦路であってもステップ路であってもよい。
【0041】
また、坑道の斜度は一定である必要はなく、滑らかに変化してもよい。つまり、坑道は滑らかに連続する床面を備え、その床面に滑らかな案内路が設けられていればよい。本実施形態では案内路として左右一対のレール7Aが用いられているが、レール7A以外に搬送方向に沿って複数本のコロなどの摩擦低減機構を配設したローラコンベア機構により案内路が構成されていてもよい。そして、搬送台車70に代えて、車輪を備えていない搬送台を当該案内路の上面を移動するように構成されていてもよい。
【0042】
なお、本実施形態で用いる斜坑30との用語は、水平姿勢の横坑(斜度0%)も含む概念として用いている。
【0043】
貯水池22には2台の揚水ポンプ3が浸漬配置され、貯水池22に流入した浸出水は、揚水ポンプ3によって地上に設置された浸出水処理設備に導かれて浄化処理される。一対の揚水ポンプ3は其々逆止弁が設けられた垂直姿勢の副揚水管4A、4Bに接続され、副揚水管4A、4Bが合流するように接続された主揚水管4に接続されている。主揚水管4はメンテナンスなどのために二本配され、斜坑30に配された傾斜管路、立坑40に配された鉛直管路で構成されている。浸出水処理設備で浄化処理された処理水の一部はスプリンクラーを介して埋立物の散水に利用され、残りは場内処理水として使用され、或いは下水処理場などに放流される。
【0044】
浸出水集水設備100は、集水ピット20に設置された揚水ポンプ3のメンテナンスなど、重量の機器を集水ピット20と立坑40との間で搬出入する搬出入装置50を備えている。搬出入装置50は、集水ピット20において揚水ポンプ3を昇降する第1搬送機構20Aと、立坑40において揚水ポンプ3を昇降する第2搬送機構40Aと、第1搬送機構20Aと第2搬送機構40Aとの間で斜坑30の床面に沿って形成した案内路で揚水ポンプ3を搬送する第3搬送機構30Aとを備えている。第1搬送機構20A及び第2搬送機構40Aは重量の機器を縦方向に搬送する搬送機構であり、第3搬送機構30Aは横方向に搬送する搬送機構である。
【0045】
第1搬送機構20Aは、貯水池22との間で揚水ポンプ3を昇降する吊り上げ装置の一例であるチェーンブロック23(
図3(a)参照。)と、チェーンブロック23を移動可能に支持しチェーンブロック23で引き揚げた揚水ポンプ3をレール7Aの上部に配置された搬送台車70の上方空間に移動させるべくカーブを描くように配された天井レール24とを備えている。吊り上げ装置として、チェーンブロック以外にロープホイスト、ウィンチ、クレーンなどを用いてもよい。
【0046】
天井レール24に沿って移動可能なチェーンブロック23で揚水ポンプ3を貯水池22から引き揚げ、その状態で天井レール24に沿って揚水ポンプ3を移動させると、レール7A上の搬送台車70の上方空間に移動でき、そのままチェーンブロック23を降下させることで、搬送台車70に搭載できるようになる。
【0047】
図3(a)、(b)に示すように、第3搬送機構30Aは、斜坑30に敷設された滑らかな案内路の一例である直線状の軌道7に沿って走行する搬送台車70と、搬送台車70を軌道7に沿って立坑40に向けて引上げまたは開放するモータ駆動式の牽引装置の一例である電動式のウィンチ80を備えて構成されている。ウィンチ80に備えた巻取ドラムは手動操作可能なハンドルを備えている。電動式のウィンチ80に代えて油圧式のウィンチや空圧式のウィンチを用いてもよい。また、牽引装置を立坑40に固定設置した例を示したが、搬送台車70に搭載してもよい。なお、ウィンチにより搬送台車70を立坑40に引き上げた後に、ウィンチを開放することにより搬送台車70を重力を利用して斜坑に沿って集水ピット20に移動させてもよい。
【0048】
図3(b)、(c)に示すように、軌道7はレール7Aとレール7Aに沿って所定間隔で配される枕木7Bで構成されている。そして、軌道7は全長よりも短く設定された所定サイズ(本実施形態では2m程度)のレール7Aと枕木7Bを備えたレールユニット7Uを準備しておき、複数のレールユニット7Uを立坑40から搬入して斜坑30の地面に直線状に配してアンカーボルトで固定するように構成されている。レール7Aは等辺山形鋼が用いられ、枕木7Bはフラットバーが用いられ、等辺山形鋼はフラットバーに溶接接合されている。
【0049】
図4(a)、(b)、(c)に示すように、搬送台車70は、前後一対のV溝形状の車輪71と、揚水ポンプ3を搭載する荷受台72と、把持部73と、荷締ベルト用フック74と、ウィンチ用フック75を備えている。車輪71に形成されたV溝がレール7Aを構成する等辺山形鋼の頂部に嵌ることにより脱輪が回避される。
【0050】
第1搬送機構20Aによって吊下げられた揚水ポンプ3が荷受台72に載せられた後に、荷受台72の前後側部に配された荷締ベルト用フック74を介して荷締ベルト76で固定される。荷受台72の前部左右に配された一対のウィンチ用フック75にワイヤー81を係合させ、ウィンチ80を起動させることにより、揚水ポンプ3が立坑40に向けて搬送される。なお、立坑40から集水ピット20に揚水ポンプ3を搬送する場合は、ウィンチ80のブレーキを開放することで、傾斜に沿って搬送台車70を自走させることができる。
【0051】
なお、揚水ポンプ3は、電動機が収容されたケーシング3Aとその下方のポンプケーシング3Bと、ポンプケーシング3Bの下方に配された吸込み口3Cとポンプケーシング3Bの側方に配された吐出し口3Dを備えている。ケーシング3Aの天面には吊下げ用のアイボルト3Eが設けられている。
【0052】
立坑40には、上下方向に配された二本の主揚水管4、監査用昇降設備となる昇降階段41、一対の案内柱43、44が設置されている。主揚水管4の上端に其々接続された水平管4Bが一本の送水管4Cに合流接続されて浸出水処理設備に送水される。案内柱43、44は、下端が床面から距離を隔てるように立坑40の側壁に複数個所で固定されている。
【0053】
第2搬送機構40Aは、搬送台車70に搭載された揚水ポンプ3を昇降するチェーンブロック42と、チェーンブロック42を昇降する電動モータによる巻取ドラムを備えた昇降装置45と、昇降装置45に沿って昇降する揚水ポンプ3を位置決めして案内する一対の案内柱43、44を備え、揚水ポンプ3に備えた被案内部を一対の案内柱43、44に挟み込むように構成されている。
【0054】
図5(b)には、揚水ポンプ3が2台示されているが、図中、上方に示されている揚水ポンプ3は、地上階の搬出入ステージに置かれ、チェーンブロックを介して吊り上げられた状態を示し、この状態から一点鎖線の矢視方向に姿勢を回転させることにより、図中、下方に示されている揚水ポンプ3の姿勢、つまり平面視弧状に対向する揚水ポンプ3の被案内部3Fと案内柱43、44を係合させ、案内柱43、44に沿って下方に降下させる姿勢となる。揚水ポンプ3を2台描いているのは説明の便宜のためであり、実際には1台である。
【0055】
図6(a)、(b)に示すように、第3搬送機構30Aによって搬送された揚水ポンプ3は、搬送台車70からチェーンブロック42を介して吊り上げられた状態で、作業者によって90度回転され、吐出し口3Dの先端側に形成された平面視弧状に対向する被案内部3Fと案内柱43、44が係合するように案内柱43、44の下端から上方に引き上げられる。なお、予め90度回転させた状態で揚水ポンプ3を搬送台車70に搭載しておけば、作業者が90度回転させる必要はない。また、集水ピット20から揚水ポンプ3を引き上げる際にも、集水ピット20に案内柱43、44と同等の構造を備えて揚水ポンプ3を案内できるように構成してもよい。
【0056】
立坑40に設置された第2搬送機構40Aで揚水ポンプ3を昇降する際に、案内柱43、44に揚水ポンプ3に備えた被案内部3Fが挟み込まれることで、チェーンブロック42に吊下げられた揚水ポンプ3が揺動して周囲の設備と衝突して破損を招くようなことを回避することができる。
【0057】
以上説明したように、本発明によれば、集水ピットに設置した第1搬送機構により揚水ポンプを昇降し、立坑に設置した第2搬送機構により揚水ポンプを昇降し、斜坑に沿った案内路に沿って移動する第3搬送機構で揚水ポンプを搬送するように構成することで、重量物である揚水ポンプであっても容易に搬出入でき、安全に且つ労力を要することなく搬出入できるようになる。
【0058】
また、各搬送機構によって搬送される被搬送物は揚水ポンプに限るものではなく、その他の重量設備や、沈砂池21に沈降した砂で揚砂ポンプで引き揚げられ、フレコンバッグなどに集積された集水ピット内堆積物も対象となる。
【0059】
以上説明した各実施形態は、何れも本発明の一例に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、各部の具体的な構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0060】
2:排砂ポンプ
3:揚水ポンプ
3A:ケーシング
3B:ポンプケーシング
3C:吸込み口
3D:吐出し口
3E:アイボルト
3F:被案内部
4A:4B:揚水管(副揚水管)
4:揚水管(主揚水管)
10:廃棄物最終処分場
11:遮水工
12:集排水案内設備
100:浸出水集水設備
20:集水ピット
22:貯水池
50:搬出入装置
20A:第1搬送機構
23:吊り上げ装置(チェーンブロック)
24:天井レール
30A:第3搬送機構
70:搬送台車
7:軌道
7A:レール
7B:枕木
7U:レールユニット
80:モータ駆動式の牽引装置(ウィンチ)
40A:第2搬送機構
42:吊り上げ装置(チェーンブロック)
43、44:案内柱
45:昇降装置
30:坑道(斜坑)
40:立坑