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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147028
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ポリマーセメントコンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220929BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20220929BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/24
B28C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048110
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】乙茂内 郁美
(72)【発明者】
【氏名】長塩 靖祐
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056AA23
4G056CB32
4G112MC00
4G112PA02
4G112PB26
4G112PC01
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】所定の空気量を確保することが可能であり、また安定したフレッシュ性状が得られるポリマーセメントコンクリートを提供することを課題とする。
【解決手段】セメント、骨材、水、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含むポリマーセメントコンクリート。また、セメント、骨材、水、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含むポリマーセメントコンクリートの製造方法であって、当該ポリマーセメントコンクリートは、セメント混和用ポリマーをセメントに対して固形分換算で5~27質量%、消泡剤をセメントに対して0.0005~0.10質量%含むことを特徴とするポリマーセメントコンクリートの製造方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、骨材、水、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含むポリマーセメントコンクリート。
【請求項2】
前記消泡剤が粉末型消泡剤である請求項1に記載のポリマーセメントコンクリート。
【請求項3】
前記粉末型消泡剤は、5μm以下の粒子含有率が25体積%以下である請求項2に記載のポリマーセメントコンクリート。
【請求項4】
セメント、骨材、水、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含むポリマーセメントコンクリートの製造方法であって、当該ポリマーセメントコンクリートは、セメント混和用ポリマーをセメントに対して固形分換算で5~27質量%、消泡剤をセメントに対して0.0005~0.10質量%含むことを特徴とするポリマーセメントコンクリートの製造方法。
【請求項5】
前記消泡剤が粉末型消泡剤である請求項4に記載のポリマーセメントコンクリートの製造方法。
【請求項6】
前記粉末型消泡剤を除く材料を含むポリマーセメントコンクリートを製造した後に、前記粉末型消泡剤を後添加することを特徴とする請求項5に記載のポリマーセメントコンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和用ポリマーを含むポリマーセメントコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーセメントモルタルあるいはポリマーセメントコンクリートは、セメントと骨材と樹脂エマルジョン等のポリマーを含むモルタルコンクリートであり、耐摩耗性、耐薬品性等の物理的・化学的耐久性や良好な付着性等を有するため、コンクリート構造物の表面仕上げや表面欠損部の補修等に使用されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
ところでポリマーをコンクリートに添加すると、空気が巻き込まれやすくなるため、コンクリート中の空気量が多くなることが指摘されている。空気量が多くなりすぎると、コンクリートの強度が低下する虞がある。このため、コンクリートに使用されるセメント混和用ポリマーには、あらかじめ安定剤や消泡剤が添加され、成分調製されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-256668号公報
【特許文献2】特開2013-119498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンクリートの配合や使用する材料の組み合わせによっては、セメント混和用ポリマーを添加した場合、どうしてもコンクリート中の空気量が多くなり、所定の空気量に調製できない場合がある。
【0006】
本発明は、所定の空気量を確保することが可能であり、また安定したフレッシュ性状が得られるポリマーセメントコンクリートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、前記課題を解決できるポリマーセメントコンクリートが得られることを見出した。本発明は、以下の〔1〕~〔6〕を提供するものである。
〔1〕セメント、骨材、水、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含むポリマーセメントコンクリート。
〔2〕前記消泡剤が粉末型消泡剤である〔1〕のポリマーセメントコンクリート。
〔3〕前記粉末型消泡剤は、5μm以下の粒子含有率が25体積%以下である〔2〕のポリマーセメントコンクリート。
〔4〕セメント、骨材、水、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含むポリマーセメントコンクリートの製造方法であって、当該ポリマーセメントコンクリートは、セメント混和用ポリマーをセメントに対して固形分換算で5~27質量%、消泡剤をセメントに対して0.0005~0.10質量%含むことを特徴とするポリマーセメントコンクリートの製造方法。
〔5〕前記消泡剤が粉末型消泡剤である〔4〕のポリマーセメントコンクリートの製造方法。
〔6〕前記粉末型消泡剤を除く材料を含むポリマーセメントコンクリートを製造した後に、前記粉末型消泡剤を後添加することを特徴とする〔5〕のポリマーセメントコンクリートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セメント混和用ポリマーを使用した場合でも、所定の空気量に調製でき、またフレッシュ性状の安定したコンクリートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ポリマーセメントコンクリート>
本発明のポリマーセメントコンクリートは、セメント、骨材、水、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含む。以下に、詳しく説明する。
【0010】
本発明で用いるセメントは、種々のものを使用することができる。例えばポルトランドセメントや混合セメント等である。ポルトランドセメントとしては、普通、早強、低熱、中庸熱等、各種ポルトランドセメントが挙げられる。混合セメントとしては、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフュームまたは石灰石微粉末等が混合された各種混合セメント等が挙げられる。また、上記以外のセメントとして、エコセメント、急硬性セメントなども使用できる。これらのセメントは、いずれか1種類を用いて使用することもできるが、2種類以上のセメントを組み合わせて使用してもよい。セメント量(単位セメント量)としては、250~500kg/m3が好ましく、300~450kg/m3がより好ましい。
【0011】
本発明で用いるセメント混和用ポリマーは、JIS A 6203で規定するセメント混和用ポリマーディスパージョンおよびセメント混和用再乳化形粉末樹脂である。具体的には、合成ゴム系,天然ゴム系,ゴムアスファルト系などのゴムラテックス、エチレン酢酸ビニル系,アクリル酸エステル系,樹脂アスファルト系などの樹脂エマルション、ゴムラテックス及び樹脂エマルションに安定剤などを加えたものを乾燥して得られる再乳化可能な粉末状樹脂である。この中で、ゴムラテックスが好ましく、特に、曲げ強度、接着強度、耐久性向上の点からスチレンブタジエン系ゴムラテックスが好ましい。
【0012】
セメント混和用ポリマーの添加量は、セメントに対して、固形分換算で5~27質量%が好ましく、10~22質量%がより好ましい。
【0013】
本発明で用いる消泡剤は、一般にコンクリート用として使用されている消泡剤を使用することができる。また液体型のもの、粉末型のものいずれも使用できる。具体的には、粉末型消泡剤としては、ポリエーテル、鉱物油、エステル、アミン、アミド、シリコーン等が挙げられる。特にポリエーテル系が好ましい。また、液体型消泡剤としては、ポリエーテル、シリコーン、界面活性剤、高級アルコール等が挙げられる。
【0014】
粉末型消泡剤を用いる場合は、所定の粒度分布を有するものが好ましい。泡の破壊には、泡膜の厚みに応じて消泡剤が適切な粒子径で分散していることが重要である。微粉末が多いと比較的泡膜の厚い大きな泡の破壊が効果的に行われず、その結果、流動性に影響することが考えられる。具体的には、5μm以下の粒子含有率が25体積%以下であることが好ましい。粉末型消泡剤の粒度については、レーザー回折式乾式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0015】
また、粉末型消泡剤は、105℃乾燥後の重量減少率が25質量%以上であることが好ましい。105℃乾燥減量が25質量%に満たない場合は、コンクリートの製造の際、消泡剤が凝集しやすくなる虞がある。
【0016】
消泡剤の添加量は、セメントに対して、0.0005~0.10質量%が好ましく、0.001~0.075質量%がより好ましい。さらに詳しくは、粉末型消泡剤としては、セメントに対して、0.001~0.10質量%が好ましく、0.005~0.075質量%がより好ましく、0.01~0.06質量%がさらに好ましい。液体型消泡剤としては、セメントに対して、0.0005~0.10質量%が好ましく、0.001~0.05質量%がより好ましく、0.002~0.02質量%がさらに好ましい。
【0017】
本発明で用いる骨材は、一般的にコンクリートで使用される細骨材、粗骨材を使用できる。具体的には、川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、再生粗骨材等である。骨材量としては、1300~2200kg/m3が好ましく、1500~2000kg/m3がより好ましい。
【0018】
本発明で用いる水は、特に限定されるものではなく、水道水などを使用することができる。水量(単位水量)としては、75~200kg/m3が好ましく、85~185kg/m3がより好ましい。
【0019】
本発明のポリマーセメントコンクリートは、さらに減水剤を含むことが好ましい。減水剤としては、一般にコンクリートに使用されるコンクリート用の各種剤が使用できる。例えば、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。減水剤の成分としては、メラミン系、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系等が挙げられる。
【0020】
本発明のポリマーセメントコンクリートには、上記以外に、本発明の効果を実質失わない範囲で、コンクリートに一般に使用されている各種混和剤(材)を添加することができる。この混和剤(材)として、例えば、AE剤、凝結調整剤、急硬材、凍結防止剤、防水材、防錆剤、収縮低減剤、増粘剤、保水材、顔料、撥水剤、白華防止剤、繊維、膨張材等が挙げられる。これらの一種又は二種以上を本発明による効果を阻害しない範囲で使用することができる。
【0021】
<ポリマーセメントコンクリートの製造方法>
本発明のポリマーセメントコンクリートの製造方法は、セメント、セメント混和用ポリマー及び消泡剤を含むポリマーセメントコンクリートの製造方法であり、当該ポリマーセメントコンクリートが、セメント混和用ポリマーをセメントに対して固形分換算で5~27質量%、消泡剤をセメントに対して0.0005~0.10質量%含むものである。
【0022】
製造方法としては、特に限定されるものではなく、一般的なポリマーセメントコンクリートと同様な方法で製造することができる。例えばコンクリートミキサに水、セメント混和用ポリマー、消泡剤、ポルトランドセメントおよび骨材を投入し、一括練りで製造する方法である。コンクリートミキサとしては、傾胴ミキサ、パン型ミキサ、二軸ミキサ、オムニミキサ、などを用いることができる。なお、粉末型消泡剤の添加方法については、粉末型消泡剤以外の材料を使用してポリマーセメントコンクリートを製造した後に、粉末型消泡剤を後添加することが好ましい。
【実施例0023】
以下、本発明の実施例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
<使用材料>
実施例で使用した材料を表1に示す。
なお、粉末型消泡剤の粒度については、レーザー回折式乾式粒子径分布測定装置(HELOS、株式会社日本レーザー社製)を用いて測定し、粒子含有率を求めた。また、105℃乾燥減少率は、粉末型消泡剤7gを105℃の乾燥機内に静置し、24時間乾燥後の質量減少量を測定して算出した。
【0025】
【表1】
【0026】
(ポリマーセメントコンクリートの製造)
コンクリートの配合を表2に示す。なお、表中のセメント混和用ポリマー(P)の値は固形分換算の値である。固形分以外は水として、表中のWに含めて記載した。
粉末型消泡剤を使用する場合、消泡剤を除く全ての使用材料を傾胴ミキサに投入し、3分間練り混ぜた後、消泡剤を投入し、1分間練り混ぜてポリマーセメントコンクリートを製造した。
液体型消泡剤を使用する場合、消泡剤を含む全ての使用材料を傾胴ミキサに投入し、3分間練り混ぜてポリマーセメントコンクリートを製造した。
なお、空気量の目標値を3.0±1.5%に設定した。また、スランプの目標値は18.0±2.5cmとした。
【0027】
【表2】
【0028】
(試験方法)
製造したポリマーセメントコンクリートの試験方法を以下に示す。
(1)スランプ
JIS A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)に準じて、コンクリートのスランプを測定した。
(2)空気量
JIS A 1128(フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法‐空気室圧力方法)に準じて、コンクリートの空気量を測定した。
【0029】
(試験結果)
まず、消泡剤無添加のポリマーセメントコンクリートについて試験した結果、空気量が5%以上と多くなり、どうしても目標値である3.0±1.5%に調製することができなかった。
次に、消泡剤として、粉末型消泡剤1(DF1)を用い、セメントに対して0.025質量%、0.05質量%を添加して評価した。スランプ及び空気量の試験結果を表3に示す。空気量は、それぞれ2.0%、2.1%、スランプは19.0cmであり、いずれも目標値を満たすポリマーセメントコンクリートが得られた。
次に、消泡剤として、粉末型消泡剤2(DF2)を用い、セメントに対して0.013質量%、0.025質量%添加して評価した。試験結果を表3に示す。空気量は、それぞれ2.8%、1.9%であり、目標値を満たすポリマーセメントコンクリートが得られたが、スランプは目標値よりも小さくなった。粉末型消泡剤1に比べると、スランプの調整がやや難しい傾向であった。
最後に、消泡剤として、液体型消泡剤3(DF3)を用い、セメントに対して0.004質量%、0.010質量%添加して評価した。試験結果を表3に示す。空気量は、それぞれ2.8%、2.9%、スランプは、それぞれ16.5cm、17.5cmであり、目標値とするポリマーセメントコンクリートが得られた。
【0030】
【表3】