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特開2022-147029間隔調整締結具及びこれを用いたユニット
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  • 特開-間隔調整締結具及びこれを用いたユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147029
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】間隔調整締結具及びこれを用いたユニット
(51)【国際特許分類】
   F16B 1/02 20060101AFI20220929BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20220929BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20220929BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16B1/02 N
F16B5/02 Y
F16B37/04 Q
F16B5/02 A
F16B37/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048111
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 直己
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 尚廣
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GB01
3J001HA02
3J001JA04
3J001KB06
(57)【要約】
【課題】微細な隙間の間隔調整が可能であり、しかも金属粉を発生させることもない間隔調整締結具と、これを用いたユニットを提供する。
【解決手段】本発明の間隔調整締結具は、被固定物21に埋め込まれるインサートナット22と、カラー23と、ボルト24とからなる。インサートナット22の内部には袋構造のボルト孔26が形成され、インサートナット22の入口側にはボルト孔26よりも大径の逆ねじめねじ部29が形成され、カラー23はその外周に逆ねじおねじ部31が形成される。カラー23の中心部にはボルト24を挿通できる中心孔32と、ボルト24の回転をカラー23に伝達するトルク伝達部33が形成されている。この間隔調整締結具を用いれば、ユニット内に微小な隙間を持たせて部品を固定することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定物に埋め込まれるインサートナットと、カラーと、ボルトとからなり、
インサートナットの内部にはインサートナットの底部を貫通しない袋構造のボルト孔が形成されるとともに、インサートナットの入口側には前記ボルト孔よりも大径の逆ねじめねじ部が形成され、
カラーはその外周に前記逆ねじ部に螺合される逆ねじおねじ部が形成されるとともに、カラーの中心部にはボルトを挿通できる中心孔と、ボルトの回転をカラーに伝達するトルク伝達部が形成されていることを特徴とする間隔調整締結具。
【請求項2】
インサートナットの外周に、被固定物に対する固着力を高めるローレットを形成したことを特徴とする請求項1に記載の間隔調整締結具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の間隔調整締結具を用いてケースの内部に配置された部品をケースに固定したユニットあって、
インサートナットを被固定物である部品の内部に埋め込み、ケースの外側からボルトを回転させることによりカラーをケースの内面に密着させた状態で、ボルトをインサートナットに締め付けたことを特徴とするユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な間隔を持つ2部材を締結することができる間隔調整締結具と、これを組み込んだユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2部材を小間隔を隔てて締結することができる間隔調整締結具は、アジャストスクリュー等の名称で従来から知られており、例えば特許文献1に示すように、自動車や鉄道車両等の分野で広く用いられている。
【0003】
図6図7は特許文献1に記載された従来の間隔調整締結具の説明図であり、1は第1部材、2は第1部材1から間隔を隔てた位置にある第2部材である。3は第2部材に固定されたスリーブ、4はカラー、5はおねじ6を備えたボルトである。スリーブ3にはボルト5のおねじ6に対応するめねじ7と、逆ねじ(左ねじ)8が形成され、カラー4の外周にも逆ねじ9が形成されている。さらにカラー4の中心にはボルト5のおねじ6を通過させることができるが、粘着剤が塗布された中心孔10が形成されている。
【0004】
ボルト5を第1部材側からカラー4の中心孔10に挿入して右回転させると、粘着剤によりボルト5からカラー4に回転トルクが伝達され、カラー4も右回転する。カラー4とスリーブ3との間には逆ねじ8、9が形成されているので、カラー4は図2のようにスリーブ3から抜け出す方向に移動し、第1部材1に当接する。この状態から更にボルト5を押し込みながら右回転させると、カラー4はそれ以上は回転できないため、粘着剤の粘着力に打ち勝ってボルト5のみを前進させることができ、最終的にボルト5のおねじ6をスリーブ3のめねじ7に螺合させて締結する。このように、カラー4を第1部材1に当接するまで移動させた状態で、第1部材1と第2部材2とをボルト5で締結することができる。特許文献1では、第1部材1は自動車の車体であり、第2部材2はフロントピラーであり、両者を10mmから数10mm程度の間隔で固定することができる。
【0005】
しかしこのような従来型の間隔調整締結具は、第1部材1と第2部材2との間に配置したスリーブ3からカラー4を突出させる構造であるため、第1部材1と第2部材2との間隔が1~3mm程度の微細な間隔である場合には使用することができなかった。また、ボルト5をスリーブ3のめねじ7に螺合させる際にめっきカスなどの微細な金属粉が発生するおそれがあるため、コンタミを嫌う電子機器の技術分野には適用することができなかった。
【0006】
一方、ハイブリッドカーや電気自動車にはモータの駆動制御のためのユニットが搭載されている。このようなユニットは例えば図8に示すように、ケース12の内部に各種の電子・電気部品13を収納したものであり、ブラケット14に支持された部品15とケース12との間に1~3mm程度の微細な間隔が生ずることがある。この部品15に振動による入力が入ると締結部のゆるみやブラケット14の疲労破壊が懸念されるため、部品15とケース12との間の隙間を埋めておくことが好ましい。しかし従来型の間隔調整締結具はこのような微細な隙間に入れることができず、また前記したように金属粉が発生するおそれがあるため、電子・電気部品13を収納したユニットには使用することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-347656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、微細な隙間の間隔調整が可能であり、しかも金属粉を発生させることもない間隔調整締結具と、これを用いたユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明の間隔調整締結具は、被固定物に埋め込まれるインサートナットと、カラーと、ボルトとからなり、インサートナットの内部にはインサートナットの底部を貫通しない袋構造のボルト孔が形成されるとともに、インサートナットの入口側には前記ボルト孔よりも大径の逆ねじめねじ部が形成され、カラーはその外周に前記逆ねじ部に螺合される逆ねじおねじ部が形成されるとともに、カラーの中心部にはボルトを挿通できる中心孔と、ボルトの回転をカラーに伝達するトルク伝達部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
なお、インサートナットの外周に、被固定物に対する固着力を高めるローレットを形成することが好ましい。
【0011】
また本発明のユニットは、上記の間隔調整締結具を用いてケースの内部に配置された部品をケースに固定したユニットあって、インサートナットを被固定物である部品の内部に埋め込み、ケースの外側からボルトを回転させることによりカラーをケースの内面に密着させた状態で、ボルトをインサートナットに締め付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の間隔調整締結具は、従来のスリーブに替えて被固定物に埋め込まれるインサートナットを用いたことにより、被固定物とのすきまが微小である場所にも組み込むことができる。しかもインサートナットの内部にインサートナットの底部を貫通しない袋構造のボルト孔を形成したので、ボルトをこのボルト孔に締結したときに金属粉が発生しても、ボルト孔の内部に留まる。このためコンタミを嫌う電子機器にも用いることができる。
【0013】
また本発明のユニットは、インサートナットを被固定物である部品の内部に埋め込み、ケースの外側からボルトを回転させることによりカラーをケースの内面に密着させた状態で、ボルトをインサートナットに締め付けたものであるから、部品とケースとの微細な隙間を本発明の間隔調整締結具により固定することができる。このため、部品の締結部のゆるみやブラケットの疲労破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の間隔調整締結具を示す中央縦断面図である。
図2】カラーが移動中の状態を示す中央縦断面図である。
図3】カラーが第1部材に当接した状態を示す中央縦断面図である。
図4】締結状態を示す中央縦断面図である。
図5】本発明の間隔調整締結具を用いたユニットの断面図である。
図6】従来の間隔調整締結具を示す中央縦断面図である。
図7】従来の間隔調整締結具の締結状態を示す中央縦断面図である。
図8】ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の間隔調整締結具の実施形態を示す中央縦断面図であり、20は第1部材、21は第2部材である被固定物である。22は被固定物21に埋め込まれるインサートナット、23はカラー、24はボルトであり、本発明の間隔調整締結具はこれらの3部材により構成されている。
【0016】
インサートナット22の外周面には、被固定物21に対する固着力を高めるためのローレット25が形成されている。インサートナット22の内部にはインサートナット22の底部を貫通しない袋構造のボルト孔26が形成されている。このボルト孔26には、ボルト24の軸部に形成されたおねじ27に対応するめねじ28が形成されている。なお、これらのおねじ27とめねじ28は一般的な右ねじである。ボルト孔26の深さは最終締結状態においてもボルト24の先端が当たることがないように設定しておく。インサートナット22の入口側には、ボルト孔26よりも大径の逆ねじめねじ部29が形成されている。
【0017】
カラー23はインサートナット22の上面、すなわち第1部材20と第2部材21との間の空間に位置するフランジ部30を備えるとともに、その本体部の外周には、インサートナット22の逆ねじめねじ部29に螺合される逆ねじおねじ部31が形成されている。さらにカラー23の中心部には、ボルト24の軸部を挿通できる中心孔32が形成されているとともに、この中心孔32の周囲にはボルト24の回転をカラー23に伝達するトルク伝達部33が形成されている。この実施形態ではトルク伝達部33は板ばねであり、その弾性力によりボルト24の回転をカラー23に伝達する機能を持つ。しかしトルク伝達部33は板ばねに限定されるものではなく、特許文献1と同様の粘着剤としてもよい。
【0018】
図1の初期状態からボルト24を右回転させると、トルク伝達部33によりトルクを伝達されたカラー23も右回転するが、カラー23の逆ねじおねじ部31がインサートナット22の逆ねじめねじ部29と噛み合っているため、図2に示すようにカラー23はインサートナット22から離れて第1部材20の方向に移動し、図3のように第1部材20に当接する。
【0019】
図3の状態に達すると、カラー23はそれ以上は移動も回転もできなくなるため、さらにボルト24を押し込みながら右回転させると、ボルト24だけが前進し、ボルト24のおねじ部27がインサートナット22のめねじ28と噛み合って図4に示すように第1部材20と第2部材21とを締結する。カラー23により第1部材20と第2部材21との間隔は初期状態のまま保たれる。またボルト24のおねじ部27がインサートナット22のめねじ28に喰い込むときに金属粉が発生することがあるが、インサートナット22のボルト孔26は底部を貫通しない袋構造であるので、金属粉はボルト孔26の内部に留まり、外部に流出することはない。
【0020】
このように、本発明の間隔調整締結具は被固定物21に埋め込まれるインサートナット22を用いたことにより、第1部材20と被固定物21とのすきまが微小である場所にも組み込むことができる。しかもインサートナット22の内部に袋構造のボルト孔26を形成したので、ボルト24をこのボルト孔26に締結したときに金属粉が発生しても、外部に漏れることがない。
【0021】
図5は本発明の間隔調整締結具を部品15とケース12との間に組み込み、部品15をケース12に固定したユニットを示す。図5に示すようにインサートナット22を被固定物である部品15の内部に埋め込み、ケース12の外側からボルト24を回転させることによりカラー23をケース12の内面に密着させ、この状態でボルト24をインサートナット22に締め付けている。これにより部品15の振動を防止し、部品15を取り付けているブラケット14の疲労破壊を防止することができる。また前記したように、ボルト24の締め込み時に金属粉が発生してもケース12に内部に持ち込まれるおそれもないため、ユニット内に収納された電子・電気部品13に悪影響が発生することもない。
【0022】
前記したようにユニットにおける部品15とケース12との間隔は1~3mm程度と微細であるが、本発明の間隔調整締結具を用いれば、間隔に応じてカラー23を移動させたうえで、ボルト24により強固に締結することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 第1部材
2 第2部材
3 スリーブ
4 カラー
5 ボルト
6 おねじ
7 めねじ
8 逆ねじ
9 逆ねじ
10 中心孔
12 ケース
13 電子・電気部品
14 ブラケット
15 部品
20 第1部材
21 第2部材である被固定物
23 カラー
24 ボルト
25 ローレット
26 袋構造のボルト孔
27 おねじ
28 めねじ
29 逆ねじめねじ部
30 フランジ部
31 逆ねじおねじ部
32 中心孔
33 トルク伝達部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8