(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014703
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】被処理液の膜処理方法および装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220113BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20220113BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20220113BHJP
B01D 61/06 20060101ALI20220113BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/00 500
B01D61/02
B01D61/06
B01D61/58
C02F1/44 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117207
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】早水 基頼
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006JA57Z
4D006JA58Z
4D006JA71
4D006KA14
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA57
4D006KE06Q
4D006MA01
4D006MA03
4D006PA02
4D006PB03
(57)【要約】
【課題】 被処理液を高濃度で効率良く濃縮することができる被処理液の膜処理装置を提供する。
【解決手段】 被処理液をナノろ過膜11に通水して透過液を生成するNF膜ユニット10と、生成された透過液の少なくとも一部を被処理液に半透膜21を介して接触させることにより被処理液を濃縮する膜濃縮装置20とを備える被処理液の膜処理装置である。NF膜ユニット10は、膜濃縮装置20で濃縮前の被処理液をナノろ過膜11に通水して、ナノろ過膜11を透過せずに濃縮された被処理液を膜濃縮装置20で濃縮することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液をナノろ過膜に通水して透過液を生成するNF膜通水工程と、
生成された透過液の少なくとも一部を被処理液に半透膜を介して接触させることにより被処理液を濃縮する膜濃縮工程とを備える被処理液の膜処理方法。
【請求項2】
前記NF膜通水工程は、前記膜濃縮工程で濃縮前の被処理液をナノろ過膜に通水する工程を備え、
前記ナノろ過膜を透過せずに濃縮された被処理液に対して前記膜濃縮工程が行われる請求項1に記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項3】
前記NF膜通水工程は、前記膜濃縮工程で濃縮後の被処理液をナノろ過膜に通水する工程を備える請求項1に記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項4】
前記NF膜通水工程は、前記膜濃縮工程で濃縮前の被処理液を第1のナノろ過膜に通水する工程と、前記膜濃縮工程で濃縮後の被処理液を第2のナノろ過膜に通水する工程とを備え、
前記第1のナノろ過膜を透過せずに濃縮された被処理液に対して前記膜濃縮工程が行われる請求項1に記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項5】
被処理液を昇圧して逆浸透膜に通水するRO膜通水工程を更に備え、
前記RO膜通水工程で濃縮後の被処理液に対して前記NF膜通水工程および前記膜濃縮工程が行われる請求項1から4のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項6】
前記膜濃縮工程は、前記半透膜を備える膜濃縮装置を複数配置して、前記各膜濃縮装置に対して、被処理液を直列に供給すると共に透過液を直列または並列に供給する工程を備える請求項1から5のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項7】
前記NF膜通水工程および前記膜濃縮工程により濃縮された被処理液を追加濃縮する追加濃縮工程を更に備え、
前記追加濃縮工程は、追加濃縮後の被処理液の一部を、追加濃縮前の被処理液に半透膜を介して接触させて追加濃縮を行った後、前記膜濃縮工程で使用される透過液に合流させる工程を備える請求項1から6のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項8】
前記膜濃縮工程は、前記NF膜通水工程で前記ナノろ過膜を透過せずに濃縮された被処理液の一部を透過液に合流させて被処理液の濃縮に使用する工程を備える請求項1から7のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項9】
前記NF膜通水工程と前記膜濃縮工程とを交互に複数繰り返す請求項1から8のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項10】
前記膜濃縮工程は、前記NF膜通水工程で生成された透過液の一部を前記半透膜に供給せずにバイパスさせ、前記半透膜をバイパスさせる透過液の流量を調節して前記半透膜への透過液の供給流量を制御する工程を備える請求項1から9のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項11】
前記NF膜通水工程は、被処理液を前記ナノろ過膜への通水前に減圧する工程を備える請求項1から10のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項12】
前記膜濃縮工程は、濃縮前の被処理液を昇圧する工程を備える請求項1から11のいずれかに記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項13】
濃縮前の被処理液の昇圧が、濃縮後の被処理液との圧力交換により行われる請求項12に記載の被処理液の膜処理方法。
【請求項14】
被処理液をナノろ過膜に通水して透過液を生成するNF膜ユニットと、
生成された透過液の少なくとも一部を被処理液に半透膜を介して接触させることにより被処理液を濃縮する膜濃縮装置とを備える被処理液の膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液の膜処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水等の被処理液を膜処理する装置として、特許文献1には、海水を第1逆浸透膜モジュールに供給することにより淡水を分離して濃縮塩水を排出する一方、低浸透圧水を第2逆浸透膜モジュールに供給することにより淡水を分離して濃縮低浸透圧水を排出し、排出された濃縮塩水および濃縮低浸透圧水を正浸透膜モジュールに供給して、正浸透膜を介して濃縮低浸透圧水から供給される水により濃縮塩水を希釈する造水システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の造水システムは、造水量の増加を主な目的としており、第1逆浸透膜モジュールで生成された濃縮海水を正浸透膜モジュールにおいて希釈させるように構成されているため、被処理液を濃縮して回収する際の濃縮率を高める上で検討の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、被処理液を高濃度で効率良く濃縮することができる被処理液の膜処理方法および装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、被処理液をナノろ過膜に通水して透過液を生成するNF膜通水工程と、生成された透過液の少なくとも一部を被処理液に半透膜を介して接触させることにより被処理液を濃縮する膜濃縮工程とを備える被処理液の膜処理方法により達成される。
【0007】
この被処理液の膜処理方法において、前記NF膜通水工程は、前記膜濃縮工程で濃縮前の被処理液をナノろ過膜に通水する工程を備えることができ、前記ナノろ過膜を透過せずに濃縮された被処理液に対して前記膜濃縮工程を行うことができる。
【0008】
あるいは、前記NF膜通水工程は、前記膜濃縮工程で濃縮後の被処理液をナノろ過膜に通水する工程を備えることができる。
【0009】
あるいは、前記NF膜通水工程は、前記膜濃縮工程で濃縮前の被処理液を第1のナノろ過膜に通水する工程と、前記膜濃縮工程で濃縮後の被処理液を第2のナノろ過膜に通水する工程とを備えることができ、前記第1のナノろ過膜を透過せずに濃縮された被処理液に対して前記膜濃縮工程を行うことができる。
【0010】
上記の被処理液の膜処理方法においては、被処理液を昇圧して逆浸透膜に通水するRO膜通水工程を更に備えることができ、前記RO膜通水工程で濃縮後の被処理液に対して前記NF膜通水工程および前記膜濃縮工程を行うことができる。
【0011】
前記膜濃縮工程は、前記半透膜を備える膜濃縮装置を複数配置して、前記各膜濃縮装置に対して、被処理液を直列に供給すると共に透過液を直列または並列に供給する工程を備えることができる。
【0012】
前記NF膜通水工程および前記膜濃縮工程により濃縮された被処理液を追加濃縮する追加濃縮工程を更に備えることが可能であり、前記追加濃縮工程は、追加濃縮後の被処理液の一部を、追加濃縮前の被処理液に半透膜を介して接触させて追加濃縮を行った後、前記膜濃縮工程で使用される透過液に合流させる工程を備えることができる。
【0013】
前記膜濃縮工程は、前記NF膜通水工程で前記ナノろ過膜を透過せずに濃縮された被処理液の一部を透過液に合流させて被処理液の濃縮に使用する工程を備えることができる。
【0014】
前記NF膜通水工程と前記膜濃縮工程とは、交互に複数繰り返してもよい。
【0015】
前記膜濃縮工程は、前記NF膜通水工程で生成された透過液の一部を前記半透膜に供給せずにバイパスさせ、前記半透膜をバイパスさせる透過液の流量を調節して前記半透膜への透過液の供給流量を制御する工程を備えることができる。
【0016】
前記NF膜通水工程は、被処理液を前記ナノろ過膜への通水前に減圧する工程を備えることができる。
【0017】
前記膜濃縮工程は、濃縮前の被処理液を昇圧する工程を備えることができる。濃縮前の被処理液の昇圧は、濃縮後の被処理液との圧力交換により行うことができる。
【0018】
また、本発明の前記目的は、被処理液をナノろ過膜に通水して透過液を生成するNF膜ユニットと、生成された透過液の少なくとも一部を被処理液に半透膜を介して接触させることにより被処理液を濃縮する膜濃縮装置とを備える被処理液の膜処理装置により達成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被処理液を高濃度で効率良く濃縮することができる被処理液の膜処理方法および装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図3】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図4】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図5】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図6】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図7】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図8】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図9】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図10】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図11】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図12】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図13】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図14】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の概略構成図である。
【
図15】本発明の更に他の実施形態に係る被処理液の膜処理装置の要部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る被処理液の膜処理装置(以下、単に「膜処理装置」という)の概略構成図である。
図1に示すように、膜処理装置1-1は、NF膜ユニット10および膜濃縮装置20を主な構成要素として備えている。
【0022】
NF膜ユニット10は、ケーシング内にNF膜(ナノろ過膜)11を備えるNF膜モジュールからなり、被処理液をNF膜11に通水することにより透過液を生成する。NF膜の形状としては、平膜や中空糸膜等を例示することができる。
【0023】
膜濃縮装置20は、ケーシング内が半透膜21で仕切られることにより高圧室22および低圧室23が形成されている。高圧室22には、NF膜ユニット10においてNF膜11を透過せずに濃縮された被処理液が導入される一方、低圧室23には、NF膜ユニット10において生成された透過液が導入される。高圧室22および低圧室23にそれぞれ導入された被処理液および透過液は、半透膜21を介して接触した後に外部に排出される。半透膜は、平膜以外に中空糸膜であってもよい。半透膜は、RO膜(逆浸透膜)を好適に使用することができるが、FO膜(正浸透膜)などの他の半透膜であってもよい。
【0024】
次に、上記の構成を備える膜処理装置1-1による被処理液の膜処理方法(以下、単に「膜処理方法」という)を説明する。まず、海水等の被処理液を高圧ポンプ2によりNF膜ユニット10に供給することにより、被処理液をNF膜11に通水して透過液を生成するNF膜通水工程を行う。高圧ポンプ2は、例えばインバータ制御が可能なポンプとすることで、省エネルギー化を図ることができる。
【0025】
NF膜通水工程で生成された透過液は、膜濃縮装置20の低圧室23に供給される一方、NF膜通水工程で濃縮された被処理液は、昇圧部6で昇圧された後、高圧室22に供給される。高圧室22の圧力を低圧室23の圧力よりも高く維持することで、半透膜21を介した高圧室22から低圧室23への水の移動が促され、高圧室22を通過する被処理液を濃縮する膜濃縮工程を行うことができる。膜濃縮工程で濃縮前の被処理液を昇圧する昇圧部6としては、昇圧ポンプやエネルギー回収装置等を例示することができる。昇圧ポンプは、インバータ制御が可能なポンプであることが好ましく、モータ回転数の制御によって被処理液の流量や圧力を容易に制御することができると共に、流路の絞りが不要になるため省エネルギー化を図ることができる。高圧室22と低圧室23との間で必要になる圧力差は、例えば半透膜21の面積を増大させることで低減可能であり、昇圧部6が無い状態で必要な圧力差を確保できる場合には、昇圧部6を備えない構成にすることもできる。NF膜ユニット10および膜濃縮装置20で濃縮された被処理液は、濃縮液として回収することができ、例えば、正浸透発電、製塩蒸発濃縮による淡水化などの他のプロセスで利用することができる。
【0026】
昇圧部6としてエネルギー回収装置を使用する場合、例えば、
図10に示す膜処理装置1-10の構成にすることができる。
図10に示すエネルギー回収装置8は、昇圧部6と減圧部7との間で圧力交換が行われるターボチャージャからなり、膜濃縮装置20の高圧室22を通過して減圧部7に供給された被処理液によりタービンを回転させ、この動力を利用して昇圧部6に供給される被処理液を昇圧する。
図10に示す膜処理装置1-10によれば、被処理液を減圧部7で減圧して、低圧で回収することができる。エネルギー回収装置8の構成は、膜濃縮装置20での濃縮後に減圧部7に供給される被処理液のエネルギーを回収して、膜濃縮装置20での濃縮前に昇圧部6に供給される被処理液を昇圧可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、タービン型以外にロータ型やピストン型などの他のエネルギー回収装置であってもよい。
【0027】
図1に示す膜処理装置1-1において、NF膜11は、海水等の被処理液に含まれる2価以上のイオンの透過を抑制する一方で、1価イオンは透過し易い性質を有するため、NF膜ユニット10で生成された透過液は、特に1価イオンの濃度低下が抑制される。したがって、膜濃縮装置20の高圧室22および低圧室23にそれぞれ供給される被処理液および透過液の浸透圧差を小さくすることができるので、高圧室22の圧力を過度に高めることなく被処理液の濃縮を確実に行うことができる。
【0028】
NF膜ユニット10から膜濃縮装置20に透過液を供給する供給ライン3にはバイパスライン4が分岐接続されており、バイパスライン4に流量制御弁5が設けられている。膜濃縮装置20への透過液の供給流量は、流量制御弁5の開度変化によりバイパスライン4にバイパスさせる透過液の流量を調節して、制御することができ、これによって膜濃縮工程を確実に行うことができる。NF膜通水工程で生成された透過液は、少なくとも一部が膜濃縮工程において使用されればよく、流量制御弁5を全閉にした状態でも高圧室22と低圧室23との間で所望の圧力差が生じる場合には、バイパスライン4および流量制御弁5を設けずに、NF膜ユニット10で生成された透過液の全量を膜濃縮装置20に供給してもよい。
【0029】
図1に示す膜処理装置1-1による膜処理方法は、NF膜通水工程が、膜濃縮工程で濃縮される前の被処理液をNF膜11に通水する工程を備えており、NF膜11を透過せずに濃縮された被処理液に対して膜濃縮工程が行われる。これに対し、
図2に示す膜処理装置1-2による膜処理方法は、NF膜通水工程が、膜濃縮工程で濃縮後の被処理液をNF膜11に通水する工程を備えることができる。以下の各図においては、図面間で同様の構成部分に同一の符号を付している。
【0030】
図2に示す膜処理装置1-2は、
図1に示す膜処理装置1-1と同様にNF膜ユニット10および膜濃縮装置20を備えるものであるが、
図1に示す膜処理装置1-1とは異なり、海水等の被処理液が膜濃縮装置20の高圧室22に供給された後、減圧弁等からなる減圧部7で減圧されて、NF膜ユニット10に供給される。減圧部7は、減圧弁以外にエネルギー回収装置であってもよい。減圧部7としてエネルギー回収装置を使用する場合、例えば、
図11に示す膜処理装置1-11の構成にすることができる。
図11に示すエネルギー回収装置8-1は、
図10に示すエネルギー回収装置8と同様に昇圧部6-1と減圧部7-1との間で圧力交換が行われる構成であり、昇圧部6-1で昇圧された被処理液が、膜濃縮装置20の高圧室22を通過した後、減圧部7-1で減圧される。減圧部7-1により被処理液の圧力が低くなり過ぎる場合には、昇圧ポンプ等からなる昇圧部6’を適宜設けることにより被処理液の圧力を回復することが可能であり、エネルギー回収装置8-2の昇圧部6-2で被処理液を更に昇圧して、NF膜ユニット10に供給することができる。NF膜ユニット10で濃縮された被処理液は、減圧部7-2で減圧された後、濃縮液として回収される。
【0031】
図2に示す膜処理装置1-2の減圧部7としては、発電機能を有するタービンを使用することも可能であり、回収した電気エネルギーを高圧ポンプ2等の動力として利用することができる。NF膜ユニット10で生成された透過液は、膜濃縮装置20の低圧室23に供給されて、高圧室22を通過する被処理液を濃縮する。低圧室23に供給される透過液の流量は、バイパスライン4にバイパスさせる透過液の流量を流量制御弁5の開度変化により調節して、制御することができる。バイパスライン4および流量制御弁5は必須の構成ではなく、NF膜ユニット10で生成された透過液の全量を膜濃縮装置20に供給してもよい。減圧部7はNF膜ユニット10の運転圧力に応じて所望の減圧を行うことができる一方、NF膜ユニット10の下流側に背圧をかける等して減圧部7を備えない構成にすることもできる。NF膜ユニット10および膜濃縮装置20の運転圧力は、被処理液に含まれる1価イオンおよび2価イオンのバランス等によって異なるが、例えば、NF膜ユニット10の運転圧力を10~30barとすることができ、あるいは、NF膜11の最高使用圧力まで昇圧することができる。膜濃縮装置20の運転圧力は、例えば40~70barである。昇圧部6および減圧部7は、NF膜ユニット10や膜濃縮装置20の運転圧力を考慮して被処理液を昇圧または減圧するように、必要に応じて配置される(以下の各実施形態においても同様)。
【0032】
図3に示す膜処理装置1-3は、
図1に示す膜処理装置1-1と、
図2に示す膜処理装置1-2とを組み合わせた構成であり、第1のNF膜ユニット10-1、第2のNF膜ユニット10-2、および膜濃縮装置20とを備えている。第1のNF膜ユニット10-1および第2のNF膜ユニット10-2は、
図1および
図2に示すNF膜ユニット10と同様に構成されており、それぞれ第1のNF膜11-1および第2のNF膜11-2を備えている。
【0033】
図3に示す膜処理装置1-3による膜処理方法は、NF膜通水工程が、膜濃縮装置20で濃縮される前の被処理液を第1のNF膜11-1に通水する工程と、膜濃縮装置20で濃縮された後の被処理液を第2のNF膜11-2に通水する工程とを備えることができ、第2のNF膜11-2の通水によって生成された透過液を、膜濃縮装置20の低圧室23に供給することができる。膜濃縮装置20に供給される透過液の流量は、供給ライン3からバイパスライン4にバイパスさせる透過液の流量を流量制御弁5の開度変化により調節して、制御することができる。バイパスライン4および流量制御弁5は必須の構成ではなく、第2のNF膜ユニット10-2で生成された透過液の全量を膜濃縮装置20に供給してもよい。膜濃縮装置20の低圧室23に供給される透過液は、第1のNF膜ユニット10-1で生成された透過液の少なくとも一部であってもよい。
【0034】
第1のNF膜ユニット10-1で濃縮された被処理液は、昇圧部6-1と減圧部7-1との間で圧力交換が行われるエネルギー回収装置8-1の昇圧部6-1で昇圧された後、膜濃縮装置20の高圧室22を通過して、減圧部7-1で減圧される。減圧部7-1で減圧された被処理液は、必要に応じて設けられる昇圧部6’により圧力が回復した後、エネルギー回収装置8-2の昇圧部6-2で更に昇圧されて、第2のNF膜ユニット10-2に供給される。第2のNF膜ユニット10-2で濃縮された被処理液は、減圧部7-2で減圧された後、濃縮液として回収される。
【0035】
図4に示す膜処理装置1-4は、
図1に示す膜処理装置1-1において、RO膜ユニット30を更に備えるものであり、海水等の被処理液が高圧ポンプ2により昇圧されてRO膜ユニット30に供給される。RO膜ユニット30は、ケーシング内にRO膜(逆浸透膜)31を備えるRO膜モジュールからなり、被処理液をRO膜31に通水することにより製造水(淡水)を生成する。RO膜31の形状は、平膜や中空糸膜等を例示することができる。RO膜ユニット30のRO膜31を透過せずに濃縮された被処理液は、減圧部7で減圧された後、NF膜ユニット10に供給される。
【0036】
図4に示す膜処理装置1-4による膜処理方法は、被処理液を昇圧してRO膜に通水するRO膜通水工程を備えることができ、RO膜通水工程で濃縮後の被処理液に対して、NF膜通水工程および膜濃縮工程を行うことができるので、回収される濃縮液の濃縮率をより高めることができる。RO膜ユニット30は、
図2に示す膜処理装置1-2に設けてもよく、この場合は、RO膜ユニット30で濃縮された被処理液が、膜濃縮装置20の高圧室22に供給される構成にすることができる。
【0037】
図5に示す膜処理装置1-5は、
図2に示す膜処理装置1-2において、RO膜ユニット30を更に備えると共に、膜濃縮装置20を複数配置して、第1の膜濃縮装置20-1と、第2の膜濃縮装置20-2とを備える構成にしたものである。RO膜ユニット30で濃縮された被処理液は、第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2の高圧室22-1,22-2を直列に通過した後、減圧部7で減圧されて、NF膜ユニット10に供給される。NF膜ユニット10で生成された透過液は、第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2の低圧室23-1,23-2を並列に通過した後、被処理液に合流されて、RO膜ユニット30に再び供給される。
【0038】
図5に示す膜処理装置1-5による膜処理方法は、膜濃縮工程が、第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2に対して被処理液を直列に供給し透過液を並列に供給する工程を備えることができ、それぞれの膜濃縮装置20-1,20-2において、被処理液を濃縮することができる。低圧室23-1,23-2に供給される透過液の流量は、低圧室23-1,23-2をバイパスさせる透過液の流量を流量制御弁5-1,5-2の開度変化により調節して個別に制御することができ、低圧室23-1を通過する透過液については濃度制御を行うこともできる。NF膜ユニット10で生成された透過液は、低圧室23-1,23-2に直列に供給してもよく、この場合は、低圧室23-2,23-1の順で透過液が通過することが好ましい。また、低圧室23-1,23-2をバイパスさせずに、透過液の全量を各低圧室23-1,23-2に直列または並列に供給してもよい。流量制御弁5-1,5-2の個数や配置は特に限定されず、各低圧室23-1,23-2に対する流量制御や濃度制御を容易に行えるように適宜設定すればよい。
【0039】
図5に示す第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2は、
図1に示す膜処理装置1-1に適用することも可能であり、
図1に示す膜処理装置1-1において、膜濃縮装置20を複数配置した構成にすることができる。
【0040】
図5に示すRO膜ユニット30は、例えば
図11に示す膜処理装置1-11に設けて、
図12に示す膜処理装置1-12の構成にすることができる。
図12の膜処理装置1-12は、エネルギー回収装置8-1の昇圧部6-1で昇圧された被処理液が、RO膜ユニット30に供給されて濃縮された後、膜濃縮装置20の高圧室22を通過して、減圧部7-1で減圧されるように構成されている。
【0041】
図13に示す膜処理装置1-13は、
図5に示す膜処理装置1-5の減圧部7にエネルギー回収装置8を使用したものであり、このエネルギー回収装置8の昇圧部6は、第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2の高圧室22-1,22-2に供給される前の被処理液の昇圧に利用される。
【0042】
図6に示す膜処理装置1-6は、
図1に示す膜処理装置1-1において、膜濃縮装置20で濃縮された被処理液を更に濃縮する追加濃縮装置40を更に備えるものである。追加濃縮装置40は、ケーシング内が半透膜41で仕切られることにより高圧室42および低圧室43が形成されている。半透膜41の形状は、平膜や中空糸膜等を例示することができる。
【0043】
図6に示す膜処理装置1-6による膜処理方法は、NF膜ユニット10および膜濃縮装置20で濃縮された被処理液を追加濃縮装置40の高圧室42に供給すると共に、高圧室42を通過した被処理液の一部を低圧室43に供給することにより、高圧室42と低圧室43との間で生じる圧力差を利用して被処理液の追加濃縮を行う追加濃縮工程を備えることができる。追加濃縮工程は、高圧室42を通過して追加濃縮された被処理液の一部を、高圧室42で追加濃縮される前の被処理液に半透膜41を介して接触させて追加濃縮を行った後、膜濃縮装置20に供給される透過液に合流させる工程を備えることができる。高圧室42で追加濃縮された被処理液の残部は、濃縮液として回収される。
【0044】
追加濃縮装置40は、
図2に示す膜処理装置1-2に適用することも可能である。すなわち、
図2に示す膜処理装置1-2において、膜濃縮装置20で濃縮された被処理液を追加濃縮装置40の高圧室42に供給し、高圧室42を通過して追加濃縮された被処理液の一部が低圧室43を通過して、膜濃縮装置20に供給される透過液に合流する構成にすることができる。高圧室42で追加濃縮された被処理液の残部は、NF膜ユニット10に供給して濃縮液を回収することができる。
【0045】
図7に示す膜処理装置1-7は、
図5に示す膜処理装置1-5において、NF膜ユニット10を複数設けて第1のNF膜ユニット10-1および第2のNF膜ユニット10-2を備えると共に、第3の膜濃縮装置20-3を追加したものである。第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2で濃縮された被処理液は、第1のNF膜ユニット10-1に供給されて濃縮された後、第3の膜濃縮装置20-3および第2のNF膜ユニット10-2に供給されて更に濃縮される。
【0046】
図7に示す膜処理装置1-7による膜処理方法は、膜濃縮工程が、第2のNF膜ユニット10-2で濃縮された被処理液の一部を、減圧弁等からなる減圧部7’で減圧させた後、第2のNF膜ユニット10-2で生成された透過液に合流させて、第3の膜濃縮装置20-3に供給し、被処理液の濃縮に使用する工程を備えることができる。透過液に合流させる被処理液の流量を調節することで、透過液の流量や濃度を制御することができる。
【0047】
上記のように、膜濃縮工程において、NF膜通水工程で濃縮された被処理液の一部を透過液に合流させて被処理液の濃縮に使用する工程は、
図7に示す膜処理装置1-7以外でも行うことができる。例えば、
図1に示す膜処理装置1-1や、
図2に示す膜処理装置1-2において、NF膜ユニット10で生成された透過液に、NF膜ユニット10で濃縮された被処理液の一部を合流させて、膜濃縮装置20に供給する構成にすることができる。
図1に示す膜処理装置1-1においては、NF膜ユニット10で濃縮された被処理液の一部を、膜濃縮装置20に供給する前に透過液に合流させてもよく、あるいは、膜濃縮装置20の通過後に透過液に合流させてもよい。
【0048】
図7に示す膜処理装置1-7は、第1のNF膜ユニット10-1で生成された透過液を第1の膜濃縮装置20-1に供給し、第2のNF膜ユニット10-2で生成された透過液を第2の膜濃縮装置20-2および第3の膜濃縮装置20-3に供給しているが、例えば、第1のNF膜ユニット10-1の透過液を第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2に供給し、第2のNF膜ユニット10-2の透過液を第3の膜濃縮装置20-3に供給してもよい。あるいは、第2のNF膜ユニット10-2の透過液を、第1の膜濃縮装置20-1、第2の膜濃縮装置20-2および第3の膜濃縮装置20-3に供給してもよい。
【0049】
図7に示す膜処理装置1-7において、配置するNF膜ユニット10および膜濃縮装置20の個数は、特に限定されるものではない。この場合、各NF膜ユニット10で生成された透過液の供給先となる膜濃縮装置20についても特に制限はないが、各NF膜ユニット10から前段側の膜濃縮装置20(すなわち、NF膜ユニット10において透過液の生成に使用される被処理液が当該NF膜ユニット10に導入される前に通過した膜濃縮装置20)に透過液を供給することが好ましい。NF膜ユニット10から複数の膜濃縮装置20への透過液の供給は、並列または直列のいずれであってもよく、あるいは、並列と直列とを組み合わせてもよい。
【0050】
図8に示す膜処理装置1-8は、第1のNF膜ユニット10-1、第2のNF膜ユニット10-2、第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2を備えており、
図1に示す膜処理装置1-1を1つのユニットとして、このユニットを2段に配置したものである。すなわち、第1のNF膜ユニット10-1で濃縮された被処理液は、昇圧部6-1で昇圧されて第1の膜濃縮装置20-1で濃縮された後、減圧部7で減圧されて第2のNF膜ユニット10-2で更に濃縮され、昇圧部6-2で昇圧されて第2の膜濃縮装置20-2で更に濃縮されて、濃縮液として回収される。
図8に示す昇圧部6-2および減圧部7は、
図9に示す膜処理装置1-9のように、昇圧部6と減圧部7との間で圧力交換を行うエネルギー回収装置8を使用してもよい。
図8および
図9に示す膜処理装置1-8,1-9により回収される濃縮液は、昇圧部(6-2または6)で昇圧されて高圧になることから、例えば、浸透圧発電等の用途に好適に利用することができる。
【0051】
図14に示す膜処理装置1-14は、
図8に示す昇圧部6-1,6-2の双方に、エネルギー回収装置8-1,8-2を使用したものであり、エネルギー回収装置8-1,8-2の減圧部7-1,7-2には、それぞれ第1の膜濃縮装置20-1および第2の膜濃縮装置20-2で濃縮後の被処理液が供給される。第1の膜濃縮装置20-1、NF膜ユニット10および第2の膜濃縮装置20-2の所望の運転圧力が得られるように、それぞれの上流側に昇圧部6’-1,6’-2,6’-3を必要に応じて設けてもよい。
【0052】
図8に示す膜処理装置1-8による膜処理方法は、NF膜通水工程と膜濃縮工程とを交互に繰り返し行うことで、回収される濃縮液の濃縮率を効率良く高めることができる。
図1に示す膜処理装置1-1からなるユニットは、3段以上の多段に配置して、濃縮率をより高めてもよい。また、
図2に示す膜処理装置1-2や、
図3に示す膜処理装置1-3等についても、これを1つのユニットとして、2段以上の多段に配置することができる。
【0053】
最後段に配置されたNF膜ユニット10(
図8においては、第2のNF膜ユニット10-2)で生成される透過液は、各NF膜ユニット10で生成される透過液の中で最も高濃度であり、この透過液を各膜濃縮装置20に対して後段側から直列に供給(
図8においては、第2の膜濃縮装置20-2に供給した後に、第1の膜濃縮装置20-1に供給)することで、各膜濃縮装置20における被処理液の濃縮を容易且つ確実に行うことができる。
【0054】
第2のNF膜ユニット10-2で生成されて第2の膜濃縮装置20-2を通過した透過液には、第1のNF膜ユニット10-1で生成された透過液、および、第2のNF膜ユニット10-2で生成されて第2の膜濃縮装置20-2を通過する前の透過液の、いずれか一方または両方を合流させてもよい。流量制御弁5-1,5-2の開度調節によりこれらの透過液の混合割合を変えることで、第1の膜濃縮装置20-1に供給される透過液の流量や濃度を制御することができる。
【0055】
上記の各実施形態における昇圧部6は、種々の構成を採用することができるが、例えば、
図14に示す昇圧部6’-2に対して、
図15に示す昇圧部6を適用することができる。
図15に示す昇圧部6は、PX型と呼ばれる圧力変換型のエネルギー回収装置6aを備えており、NF膜ユニット10に供給される被処理液の一部が、NF膜ユニット10で濃縮された被処理液とエネルギー回収装置6aで圧力交換することにより昇圧され、ブースターポンプ6bで更に昇圧されて、ブースターポンプ6cで昇圧された残部の被処理液に合流される。ブースターポンプ6bの作動は、インバータ制御により流量を精度良く調整して行われることが好ましい。ブースターポンプ6cは、本実施形態ではインバータ制御を行わずに、ブースターポンプ6cの下流側とブースターポンプ6bからの合流部との間に配置した圧力制御弁9で圧力制御を行うことにより、流量調整を行っているが、ブースターポンプ6cについてもインバータ制御を行ってもよく、この場合は、圧力制御弁9を備えない構成にすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 膜処理装置
5 流量制御弁
6 昇圧部
7 減圧部
10 NF膜ユニット
11 ナノろ過膜
20 膜濃縮装置
21 半透膜
30 RO膜ユニット
31 逆浸透膜
40 追加濃縮装置