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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147035
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】紡糸設備
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/092 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
D01D5/092 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048119
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】豊田 海
(72)【発明者】
【氏名】日野 宏一
【テーマコード(参考)】
4L045
【Fターム(参考)】
4L045AA05
4L045BA03
4L045DA23
4L045DA24
(57)【要約】
【課題】紡出される糸の数が多い場合でも、徐冷空間の上下方向における長さを少ない数の部材で変更可能にする。
【解決手段】紡糸設備1は、複数の紡糸口金13を有する紡糸装置2と、複数の紡糸口金13からそれぞれ紡出された複数の糸Yを冷却するように構成された冷却装置3と、上下方向において紡糸装置2と冷却装置3との間に配置された徐冷部4とを備える。冷却装置3は、複数の糸Yに冷却風を導くように構成された複数の冷却筒21を有する。徐冷部4は、ブロック部材30と調節部40とを有する。ブロック部材30は、複数の冷却筒21の上下方向における少なくとも一部をそれぞれ囲うように構成された複数の囲い面33を有し、複数の囲い面33のうち複数の冷却筒21よりも上側の部分によって複数の徐冷空間Ssを形成する。調節部40は、ブロック部材30と複数の冷却筒21との上下方向における相対位置を調節可能に構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸をそれぞれ紡出するための複数の紡糸口金を有する紡糸装置と、
前記紡糸装置の下側に配置され、前記複数の紡糸口金からそれぞれ紡出された複数の前記糸を冷却するように構成された冷却装置と、
上下方向において前記紡糸装置と前記冷却装置との間に配置された徐冷部と、を備える紡糸設備であって、
前記冷却装置は、
上下方向に延び且つ前記複数の糸をそれぞれ囲うように配置され、前記複数の糸に冷却風を導くように構成された複数の冷却筒を有し、
前記徐冷部は、
前記複数の冷却筒の上下方向における少なくとも一部をそれぞれ囲うように構成された複数の囲い面を有し、前記複数の囲い面のうち前記複数の冷却筒よりも上側の部分によって、前記複数の糸をそれぞれ徐冷するための複数の徐冷空間を形成するブロック部材と、
前記ブロック部材と前記複数の冷却筒との上下方向における相対位置を調節可能に構成された調節部と、を有することを特徴とする紡糸設備。
【請求項2】
上下方向において前記紡糸装置と前記ブロック部材との間に挟まれるように配置されたシール部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の紡糸設備。
【請求項3】
前記シール部材は、断熱部材であることを特徴とする請求項2に記載の紡糸設備。
【請求項4】
前記冷却装置を、前記紡糸装置から前記複数の糸が紡出されるときの第1位置と、前記第1位置よりも下側の第2位置との間で移動させるように構成された移動機構を備え、
前記冷却装置が前記第2位置に位置しているときに、上下方向において、前記紡糸装置と前記冷却装置との間に、前記複数の紡糸口金、前記複数の冷却筒及び前記調節部に対する作業が行われることが可能な作業空間が形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項5】
前記ブロック部材は、前記移動機構の動作時に前記冷却装置と一体的に移動するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の紡糸設備。
【請求項6】
前記調節部は、
前記ブロック部材が載置されるように構成され且つ前記冷却装置に対して上下方向に移動可能に構成された1以上の載置部、を有することを特徴とする請求項5に記載の紡糸設備。
【請求項7】
前記調節部は、
前記1以上の載置部をそれぞれ支持する、上下方向に延びた1以上のボルトを有し、
前記1以上のボルトが回転することにより前記載置部が上下方向に移動させられるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の紡糸設備。
【請求項8】
前記1以上のボルトが螺合されたベース部を備え、
前記1以上のボルトは、回転することにより前記ベース部に対してそれぞれ上下方向に移動可能に構成され、
前記1以上の載置部は、前記1以上の前記ボルトとそれぞれ一体的に上下方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の紡糸設備。
【請求項9】
前記1以上の載置部は、
前記ブロック部材と接触する載置面がそれぞれ形成された1以上のナット、を有し、
前記1以上のナットは、前記1以上の前記ボルトにそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項8に記載の紡糸設備。
【請求項10】
前記ブロック部材は、
前記ブロック部材が前記1以上の載置部に載置された状態で前記1以上のボルトに対する作業を行うための1以上の作業孔を有することを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項11】
前記調節部は、前記1以上の載置部として複数の載置部を有することを特徴とする請求項6~10のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項12】
前記複数の冷却筒の各々は、
前記冷却装置に着脱可能なフィルタ部材と、
前記フィルタ部材を上側から押さえるように構成された押え部材と、を有し、
前記押え部材は、
前記冷却装置が前記第2位置に位置しているときに、
前記フィルタ部材を上側から押さえている押え状態と、前記押え状態が解除され、前記フィルタ部材が持ち上げられることが可能な解除状態と、の間で状態を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項5~11のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項13】
前記複数の押え部材の各々は、
前記複数の冷却筒の上面に着脱可能なリング部材であることを特徴とする請求項12に記載の紡糸設備。
【請求項14】
前記複数の冷却筒は、前記ブロック部材の下面よりも下側に延びた複数の延在部をそれぞれ有し、
前記複数の延在部に対して少なくとも上下方向に移動可能に構成され、前記複数の冷却筒と前記複数の囲い面との間に形成された複数の隙間を覆う1以上の覆い部材、を備えることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項15】
前記1以上の覆い部材は、前記複数の延在部に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項14に記載の紡糸設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成繊維からなる糸を生成する紡糸設備が開示されている。紡糸設備は、糸材料である高温の溶融ポリマーを紡糸口金から吐出する(紡出する)紡糸装置と、紡糸装置の下方に配置された冷却装置とを備える。特許文献1には図示されていないが、紡糸装置は複数の紡糸口金を有する。複数の紡糸口金の各々から吐出された糸材料は、冷却装置で冷却されることにより固化して、1以上のフィラメントからなる糸になる。つまり、紡糸口金の数と同じ数の糸が生成される。また、上下方向において、紡糸装置と冷却装置との間には、紡糸口金から吐出されて降下する糸材料を徐冷するための空間(徐冷空間)が形成されている。徐冷空間の上下方向における適切な長さ(すなわち、紡糸口金と冷却装置との上下方向における適切な距離)は、糸材料の種類(以下、糸種)、並びに、フィラメントの太さ及び数等によって異なる。つまり、糸種等が変わる場合、徐冷空間の上下方向における長さ(特許文献1では口金面深度と呼ばれる)を変更する必要が生じうる。
【0003】
これについて、特許文献1には、口金面深度を変更可能に構成された口金面深度可変装置が設けられている。具体的には、口金面深度可変装置は、紡糸装置の下面に固定された筒状の上側フードと、冷却装置の上面に固定された筒状の下側フードとを有する。上側フードは、下側フードの少なくとも上側部分を囲うように構成されている。また、冷却装置は上下方向に移動可能に構成されている。冷却装置及び下側フードが上下方向に移動することにより、徐冷空間に外気が流れ込むことを防止しつつ、口金面深度を変更することが図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-108698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、紡糸装置が一度に紡出可能な糸の数はますます増加する傾向にある。このような状況において、上述した上側フード及び下側フードを各糸に対応して設けるのでは、必要な部材の数が増加し、紡糸設備のコスト増大の問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、紡出される糸の数が多い場合でも、徐冷空間の上下方向における長さを少ない数の部材で変更可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の紡糸設備は、糸をそれぞれ紡出するための複数の紡糸口金を有する紡糸装置と、前記紡糸装置の下側に配置され、前記複数の紡糸口金からそれぞれ紡出された複数の前記糸を冷却するように構成された冷却装置と、上下方向において前記紡糸装置と前記冷却装置との間に配置された徐冷部と、を備える紡糸設備であって、前記冷却装置は、上下方向に延び且つ前記複数の糸をそれぞれ囲うように配置され、前記複数の糸に冷却風を導くように構成された複数の冷却筒を有し、前記徐冷部は、前記複数の冷却筒の上下方向における少なくとも一部をそれぞれ囲うように構成された複数の囲い面を有し、前記複数の囲い面のうち前記複数の冷却筒よりも上側の部分によって、前記複数の糸をそれぞれ徐冷するための複数の徐冷空間を形成するブロック部材と、前記ブロック部材と前記複数の冷却筒との上下方向における相対位置を調節可能に構成された調節部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、1つのブロック部材で複数の冷却筒を囲うことができる。さらに、調節部によってブロック部材と複数の冷却筒との上下方向における相対位置を調節することにより、紡糸口金と冷却装置との上下方向における距離(つまり、徐冷空間の上下方向における長さ)を変更できる。したがって、紡糸設備において紡出可能な糸の数が多い場合でも、徐冷空間の上下方向における長さを少ない数の部材で変更できる。
【0009】
第2の発明の紡糸設備は、前記第1の発明において、上下方向において前記紡糸装置と前記ブロック部材との間に挟まれるように配置されたシール部材を備えることを特徴とする。
【0010】
紡糸口金の温度が変動すると、糸品質が低下するおそれがある。本発明では、シール部材によって、紡糸装置とブロック部材との隙間から徐冷空間に外気が侵入することを確実に抑制できる。このため、外気による紡糸口金の温度変動を抑制できる。
【0011】
第3の発明の紡糸設備は、前記第2の発明において、前記シール部材は、断熱部材であることを特徴とする。
【0012】
本発明では、紡糸装置とブロック部材との間で熱が移動することを抑制できる。これにより、紡糸口金の温度変動をさらに抑制できる。
【0013】
第4の発明の紡糸設備は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記冷却装置を、前記紡糸装置から前記複数の糸が紡出されるときの第1位置と、前記第1位置よりも下側の第2位置との間で移動させるように構成された移動機構を備え、前記冷却装置が前記第2位置に位置しているときに、上下方向において、前記紡糸装置と前記冷却装置との間に、前記複数の紡糸口金、前記複数の冷却筒及び前記調節部に対する作業が行われることが可能な作業空間が形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明では、冷却装置を第2位置に移動させることによって、作業空間において紡糸口金、冷却筒及び調節部に対する作業を行うことができる。したがって、良好な作業性を確保できる。
【0015】
第5の発明の紡糸設備は、前記第4の発明において、前記ブロック部材は、前記移動機構の動作時に前記冷却装置と一体的に移動するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
冷却装置が第2位置に移動する際に、ブロック部材が冷却装置に対して移動する場合、ブロック部材と複数の冷却筒とが一時的に離隔することとなる。このため、冷却装置を第2位置から第1位置に移動させる際に、複数の囲い面と複数の冷却筒との位置合わせを行う必要が生じ、手間がかかるおそれがある。本発明では、冷却装置を移動させる際、複数の囲い面が複数の冷却筒をそれぞれ囲っている状態を維持できる。したがって、上記位置合わせの必要が生じることを回避できる。
【0017】
第6の発明の紡糸設備は、前記第5の発明において、前記調節部は、前記ブロック部材が載置されるように構成され且つ前記冷却装置に対して上下方向に移動可能に構成された1以上の載置部、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明では、必要に応じてブロック部材を載置部から容易にどけることができる。
【0019】
第7の発明の紡糸設備は、前記第6の発明において、前記調節部は、前記1以上の載置部をそれぞれ支持する、上下方向に延びた1以上のボルトを有し、前記1以上のボルトが回転することにより前記載置部が上下方向に移動させられるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明では、ボルトを用いた簡単な構造によって、載置部の上下方向における位置を精密に調節できる。言い換えれば、簡単な構造によって、ブロック部材と複数の冷却筒との相対位置を精密に調節できる。
【0021】
第8の発明の紡糸設備は、前記第7の発明において、前記1以上のボルトが螺合されたベース部を備え、前記1以上のボルトは、回転することにより前記ベース部に対してそれぞれ上下方向に移動可能に構成され、前記1以上の載置部は、前記1以上の前記ボルトとそれぞれ一体的に上下方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明では、簡単な構造によって、載置部を上下方向に移動させることができる。
【0023】
第9の発明の紡糸設備は、前記第8の発明において、前記1以上の載置部は、前記ブロック部材と接触する載置面がそれぞれ形成された1以上のナット、を有し、前記1以上のナットは、前記1以上の前記ボルトにそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【0024】
本発明では、一般的に安価なナットを用いて載置部を形成できる。したがって、部材のコストを低減できる。
【0025】
第10の発明の紡糸設備は、前記第7~第9のいずれかの発明において、前記ブロック部材は、前記ブロック部材が前記1以上の載置部に載置された状態で前記1以上のボルトに対する作業を行うための1以上の作業孔を有することを特徴とする。
【0026】
本発明では、載置部にブロック部材が載置された状態で、ボルトを回すための工具を作業孔に通すことにより、工具をボルトにアクセスさせることができる。このため、ブロック部材を載置部に載せたままの状態でボルトを回転させることができる。つまり、ボルトを回転させる際に、ブロック部材を載置部からどける必要が無い。したがって、ブロック部材と冷却筒との相対位置を手動調節する際の手間を軽減できる。
【0027】
第11の発明の紡糸設備は、前記第6~第10のいずれかの発明において、前記調節部は、前記1以上の載置部として複数の載置部を有することを特徴とする。
【0028】
載置部が1つのみ設けられている構成では、載置部とブロック部材との大小関係によっては、ブロック部材がバランスを崩して水平方向に対して傾くおそれがある。このような場合、例えば、ブロック部材が冷却筒に当接して、ブロック部材と冷却筒との相対位置を調節するための作業に支障が生じるおそれがある。この点、本発明では、複数の載置部にブロック部材が載置される。このため、ブロック部材のバランスを良好に維持することができる。
【0029】
第12の発明の紡糸設備は、前記第5~第11のいずれかの発明において、前記複数の冷却筒の各々は、前記冷却装置に着脱可能なフィルタ部材と、前記フィルタ部材を上側から押さえるように構成された押え部材と、を有し、前記押え部材は、前記冷却装置が前記第2位置に位置しているときに、前記フィルタ部材を上側から押さえている押え状態と、前記押え状態が解除され、前記フィルタ部材が持ち上げられることが可能な解除状態と、の間で状態を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0030】
ブロック部材が冷却装置と一体的に移動可能な構成では、押え部材とブロック部材との位置関係によっては、フィルタ部材を冷却装置から取り外す際に、ブロック部材を冷却装置に対して動かす必要が生じうる。本発明では、押え部材の状態を押え状態から解除状態に変更することにより、ブロック部材を冷却装置に対して移動させなくても、フィルタ部材を持ち上げて冷却装置から取り外すことができる。
【0031】
第13の発明の紡糸設備は、前記第12の発明において、前記複数の押え部材の各々は、前記複数の冷却筒の上面に着脱可能なリング部材であることを特徴とする。
【0032】
本発明では、簡単な構造の押え部材によってフィルタ部材を上側から押さえることができ、且つ、フィルタ部材を冷却装置から取外し可能にすることができる。
【0033】
第14の発明の紡糸設備は、前記第1~第13のいずれかの発明において、前記複数の冷却筒は、前記ブロック部材の下面よりも下側に延びた複数の延在部をそれぞれ有し、前記複数の延在部に対して少なくとも上下方向に移動可能に構成され、前記複数の冷却筒と前記複数の囲い面との間に形成された複数の隙間を覆う1以上の覆い部材、を備えることを特徴とする。
【0034】
ブロック部材の囲い面と冷却筒の外周面との隙間が大きいと、外気が徐冷空間に流入してしまいやすくなり、糸品質に悪影響を及ぼしうる。このため、当該隙間はできる限り小さい方が好ましい。しかしながら、当該隙間が小さすぎると、ブロック部材と冷却筒との上下方向における相対位置の調節時に、ブロック部材と囲い面と冷却筒の外周面とが当接しやすくなる。このため、ブロック部材と冷却筒とが相対移動できなくなってしまい、調節動作が困難になるおそれがある。本発明では、糸が生産されるときに、覆い部材によって、ブロック部材の囲い面と冷却筒の外周面との隙間を覆うことができる。このため、当該隙間が大きい場合でも、外気が徐冷空間に流入することを防止できる。したがって、ブロック部材の位置調節のしやすさと良好な糸品質とを両立できる。
【0035】
第15の発明の紡糸設備は、前記第14の発明において、前記1以上の覆い部材は、前記複数の延在部に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする。
【0036】
本発明では、ブロック部材の囲い面と冷却筒との相対位置が調節されるときに、覆い部材が邪魔になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本実施形態に係る紡糸設備の概略図である。
図2】冷却装置及び徐冷部が第2位置に位置している状態を示す説明図である。
図3】徐冷部及びその近傍部分の斜視図である。
図4】ブロック部材が調節部から持ち上げられた状態を示す斜視図である。
図5】徐冷部及びその近傍の部材の拡大図である。
図6】(a)、(b)は、ブロック部材の高さ調節の手順を示す説明図である。
図7】(a)、(b)は、フィルタ部材の取り外しの手順を示す説明図である。
図8】調節後の徐冷部及びその近傍の部材の拡大図である。
図9】変形例に係る徐冷部及びその近傍の部材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施の形態について説明する。説明の便宜上、図1に示す方向を上下方向及び前後方向とする。上下方向(図1の紙面上下方向)は、重力が作用する鉛直方向である。前後方向(図1の紙面左右方向)は、上下方向と直交する方向である。上下方向及び前後方向の両方と直交する方向(図1の紙面垂直方向)を左右方向とする。
【0039】
(紡糸設備)
本実施形態に係る紡糸設備1の概略について、図1の概略図を参照しつつ説明する。紡糸設備1は、合成繊維からなる糸Yを生成するための設備である。紡糸設備1は、紡糸装置2と、冷却装置3と、徐冷部4と、油剤付与部5とを備える。
【0040】
紡糸装置2は、溶融ポリマーからなる複数の糸Yを紡出するように構成された溶融紡糸装置である。紡糸装置2は、概ね直方体形状のフレーム10と、フレーム10に形成された複数のパックハウジング11と、複数のパックハウジング11にそれぞれ装着された複数の紡糸パック12とを有する。複数の紡糸パック12は、例えば、左右方向に沿ってジグザグ状に配列されている(図示省略。水平方向における配置については、例えば図4に示す後述の冷却筒21及び第1貫通孔31を参照)。各紡糸パック12には、図示しない配管から、高温の液状の溶融ポリマー(糸材料)が供給される。各紡糸パック12の下端部には、紡糸口金13が配置されている。紡糸口金13は、例えば複数のノズル(不図示)を有する。紡糸パック12は、糸材料を紡糸口金13の複数のノズルからそれぞれ吐出する(言い換えると、糸Yを紡出する)。複数のノズルから吐出された糸材料は、冷却装置3で冷却されて、複数のフィラメントfからなる糸Yとなる。つまり、1つの紡糸口金13から1本の糸Yが紡出される。或いは、各紡糸口金13はノズルを1つのみ有していても良い。この場合、糸Yはモノフィラメント糸として生成される。なお、紡糸口金13から吐出された直後の(冷却されて固化される前の)糸材料も、本発明の糸に相当する。
【0041】
冷却装置3は、複数の紡糸口金13から吐出された糸材料を冷却風により冷却して固化させるように構成されている。冷却装置3は、紡糸装置2の下側に配置されている。図1に示すように、冷却装置3は、中空の箱体20と、冷却筒21とを有する。なお、図1においては、冷却筒21は1つのみ図示されている。
【0042】
箱体20は、本体20aと、本体20aの上側に配置されたカバー部材20bとを有する。本実施形態においては、カバー部材20bの水平方向における端部が下方に屈曲している。なお、カバー部材20bの形状はこれに限られない。カバー部材20bは、例えばシンプルに平板状に形成されていても良い。この場合、カバー部材20bの加工の手間を軽減できる。 カバー部材20bは、例えば不図示のねじによって本体20aにねじ止めされている。ねじを外すことにより、カバー部材20bが本体20aから分離されることが可能である。箱体20の内部空間は、例えば、図1に示すように、略水平に配置された整流板26によって上下に仕切られている。整流板26は、パンチングメタルなどの整流機能を有する材料で形成されている。
【0043】
複数の冷却筒21は、糸材料に冷却風を導くように構成されている。複数の冷却筒21は、箱体20に固定されている。複数の冷却筒21は、上下方向に延びている。複数の冷却筒21は、複数の紡糸口金13の真下にそれぞれ配置されている。つまり、冷却筒21は、上下方向から見たときに、紡糸口金13から紡出された糸材料を囲うように配置されている。各冷却筒21は、フィルタ部材22と、上筒部材23とを有する。
【0044】
フィルタ部材22は、対応する冷却筒21の径方向において冷却風を内側に導くための部材である。フィルタ部材22は、パンチングフィルタ22aと冷却フィルタ22bとを有する。パンチングフィルタ22aは、略円筒状の部材である。パンチングフィルタ22aは、整流板26と同様、パンチングメタル等の整流機能を有する材料で形成されている。パンチングフィルタ22aは、箱体20の上部空間(整流板26よりも上側の空間)の下端部の位置から上方に延び、カバー部材20bの上端よりも上側に突出している。パンチングフィルタ22aの上端部は、冷却筒21の径方向において上筒部材23の内側に配置されている。冷却フィルタ22bは、略円筒状の部材である。冷却フィルタ22bの周壁部は、例えば、整流機能を有するメッシュ状の材料で形成されている。冷却フィルタ22bは、パンチングフィルタ22aの径方向内側に配置されている。冷却フィルタ22bは、パンチングフィルタ22aと同様に、カバー部材20bの上端よりも上側に突出している。
【0045】
上筒部材23は、略円筒状の部材である。上筒部材23は、例えば、カバー部材20bのうち最も上側に配置された上板部に固定されている。例えば、上筒部材23の下端部にフランジが形成されており、フランジがカバー部材20bの上板部の下面に固定されている。上筒部材23は、フィルタ部材22を囲い、且つフィルタ部材22を上側から押さえるように配置されている。上筒部材23は、空気を冷却筒21の径方向に透過させないように構成されている。これにより、冷却筒21の径方向において外気が冷却筒21の内側に流れ込むことが抑制される。冷却筒21は、冷却風を上側へ(冷却筒21の上端部近傍まで)導くように構成されている。
【0046】
箱体20の下部空間(整流板26よりも下側の空間)の、複数のフィルタ部材22の真下の位置には、複数の仕切筒24が配置されている。仕切筒24は、空気を仕切筒24の径方向に透過させないように構成されている。ある紡糸口金13から吐出されて降下する糸材料は、当該紡糸口金13の真下に配置されたフィルタ部材22の内部空間及び仕切筒24の内部空間をこの順に通過する。
【0047】
箱体20の下部の後側部分には、ダクト27が接続されている。ダクト27は、圧空源(図示省略)に接続されている。圧空源によって、糸材料を冷却するための空気がダクト27内に送られる。冷却用の空気は、ダクト27内を通って箱体20の下部空間内に供給される。以下、箱体20内における空気の流れについて説明する(図1に記載された矢印を併せて参照されたい)。箱体20の下部空間に流入した空気は、整流板26を通過して上向きに整流され、箱体20の上部空間へ流れる。なお、仕切筒24の壁は空気を透過させないため、箱体20の下部空間から仕切筒24内には、空気は直接的には流れ込まない。箱体20の上部空間に流入した空気は、フィルタ部材22(パンチングフィルタ22a及び冷却フィルタ22b)を通過する際に整流されて、フィルタ部材22の径方向内側へ流れ込む。これにより、フィルタ部材22の外側全周から糸材料に空気が吹き付けられ、糸材料が冷却されて糸Yになる。
【0048】
冷却装置3は、エアシリンダ28(本発明の移動機構)によって昇降移動可能に構成されている。より詳細には、エアシリンダ28は、例えば工場の床面に立設されている。ピストンロッド28aは上下方向に延びている。箱体20の下端には、下側へ延びたカバー部材29が固定されている。カバー部材29の側面には、ピストンロッド28aの先端部が固定されている。このような構成において、冷却装置3全体が、エアシリンダ28の動作によって、紡糸設備1が稼働しているときの第1位置(図1参照)と、第1位置よりも下側の第2位置(図2参照)との間で移動可能である。冷却装置3が第1位置に位置しているとき、糸Yが生成されることが可能である。冷却装置3が第1位置に位置しているとき、冷却装置3及び徐冷部4は、エアシリンダ28によって上側(紡糸装置2側)に向かう力を加えられている。冷却装置3が第2位置に位置しているとき、上下方向において紡糸装置2と冷却装置3との間に作業空間Sw(詳細は後述)が形成されている。
【0049】
徐冷部4は、上下方向において紡糸装置2と冷却装置3との間に配置されている。徐冷部4は、紡糸装置2から吐出された糸材料が冷却装置3によって冷却されるまでの間に、糸材料を徐々に冷やす(徐冷する)ように構成されている。徐冷部4には、糸材料を徐冷するための徐冷空間Ssが形成されている。徐冷部4の詳細については後述する。
【0050】
油剤付与部5は、複数の糸Yに油剤を付与するためのものである。油剤付与部5は、冷却装置3の下側に配置される。油剤付与部5は、冷却装置3で冷却された複数の糸Yがそれぞれ接触する複数の油剤ガイド(不図示)を有する。複数の油剤ガイドは、複数の糸Yに対してそれぞれ油剤を吐出して、糸Yに油剤を付与する。油剤付与部5によって油剤が付与された複数の糸Yは、引取ローラ(不図示)によって引き取られる。さらに、複数の糸Yは巻取装置(不図示)へ送られる。複数の糸Yは、巻取装置において複数のボビン(不図示)にそれぞれ巻き取られる。
【0051】
(徐冷部の詳細構成)
次に、徐冷部4の詳細構成について、図3図5を参照しつつ説明する。図3は、徐冷部4及びその近傍部分の斜視図である。図4は、ブロック部材30(後述)が調節部40(後述)から持ち上げられた状態を示す斜視図である。図5は、徐冷部4及びその近傍の部材の拡大図である。上述した徐冷空間Ssの上下方向における適切な長さ(より具体的には、紡糸口金13の下面と冷却筒21の上端との上下方向における適切な距離)は、生成される糸Yの種類、並びに、フィラメントfの太さ及び数等によって異なる。徐冷部4等は、紡糸設備1において紡出可能な糸Yの数が多い場合でも、徐冷空間Ssの上下方向における長さを少ない数の部材で変更可能にするため、以下のように構成されている。
【0052】
徐冷部4は、ブロック部材30と、調節部40とを有する。ブロック部材30は、徐冷空間Ssを形成するための部材である。調節部40は、ブロック部材30と冷却筒21との上下方向における位置関係を調節可能に構成されている。これにより、調節部40は、後述するように、紡糸口金13の下面13a(図5参照)と冷却筒21の上端との上下方向における距離(すなわち、徐冷空間Ssの上下方向における長さL。図5参照)を調節可能に構成されている。
【0053】
図3及び図4に示すように、ブロック部材30は、略直方体形状の部材である。ブロック部材30は、例えばアルミニウム合金からなる金属部材である。ブロック部材30は、調節部40の複数の載置部41(後述)の上に載置されている。ブロック部材30は、箱体20の上側に配置されている。ブロック部材30には、上下方向に貫通する複数の第1貫通孔31と、同じく上下方向に貫通する複数の第2貫通孔32(本発明の作業孔)とが形成されている。ブロック部材30は、例えば、複数の第1貫通孔31及び複数の第2貫通孔32が形成された部分を除いて、中実である。複数の第1貫通孔31は、水平方向において、複数の冷却筒21に対応する位置に形成されている。本実施形態では、複数の第1貫通孔31は、左右方向に沿ってジグザグ状に配置されている(図3及び図4参照)。複数の第1貫通孔31は、複数の冷却筒21(より具体的には、複数の上筒部材23のうち、下端部に形成されたフランジ及びその近傍を除いた部分)がそれぞれ上下方向に挿通されることが可能に形成されている。言い換えれば、ブロック部材30は、複数の第1貫通孔31を形成する複数の囲い面33を有する。複数の囲い面33は、上下方向から見たときに略円形状である。複数の囲い面33は、複数の冷却筒21の少なくとも上側の一部(上下方向における少なくとも一部)をそれぞれ囲うように構成されている(図5参照)。複数の囲い面33のうち、複数の冷却筒21よりも上側の部分によって、徐冷空間Ssが形成されている。複数の第2貫通孔32は、水平方向において、後述する複数の載置部41に対応する位置に形成されている。第2貫通孔32は、例えば、小径部32aと大径部32bとを有する。小径部32aは、ブロック部材30の上端から上下方向における途中まで延びている。大径部32bは、小径部32aの下側に配置され且つブロック部材30の下端まで延びている。大径部32bは、小径部32aよりも径が大きい。これにより、小径部32aと大径部32bとの境目に、下向きの接触面32cが形成されている。接触面32cは、後述する載置部41と接触可能な面である。ブロック部材30は、複数の載置部41に載置されることが可能である。また、ブロック部材30は、作業者によって複数の載置部41に対して移動させられることが可能である。
【0054】
複数の囲い面33と複数の冷却筒21の外周面(上筒部材23の外周面23a)との間には、隙間34が形成されている。隙間34は、後述する調節作業の際に、囲い面33と冷却筒21(上筒部材23)とが互いに当接して動かなくなってしまうことを極力抑制するために形成されている。その一方で、隙間34は、外気が徐冷空間Ssに侵入することを抑制するため、できる限り狭いことが好ましい。
【0055】
図3図5に示すように、ブロック部材30の上面には、略水平に配置された板状のパッキン35が載置されている。パッキン35は、紡糸装置2の下面とブロック部材30の上面との隙間を塞ぐためのシール部材である。パッキン35は、例えば、弾性及び耐熱性を有するゴム部材であることが好ましい。パッキン35は、断熱性を有する断熱部材であることが好ましい。パッキン35は、冷却装置3及び徐冷部4が第1位置に位置しているときに、上下方向において紡糸装置2とブロック部材30との間に挟まれるように配置されている。パッキン35は、例えば、ブロック部材30と分離可能に構成されている。パッキン35は、上下方向から見たときに、ブロック部材30と概ね同様の大きさを有する。パッキン35の上面のほぼ全体が、紡糸装置2のフレーム10の下面に接触している。パッキン35には、上下方向に貫通する複数の第1貫通孔36及び複数の第2貫通孔37が形成されている。複数の第1貫通孔36は、水平方向において複数の第1貫通孔31と略同じ位置に配置されている。上下方向から見たとき、複数の第1貫通孔36の各々は、複数の第1貫通孔31の各々と同等の大きさであり、又はわずかに小さい。複数の第2貫通孔37は、水平方向において複数の第2貫通孔32と略同じ位置に配置されている。
【0056】
調節部40は、例えば、ブロック部材30が載置されるように構成された複数の載置部41と、複数の載置部41をそれぞれ上下方向に移動させるための複数のボルト42と、上述のカバー部材20bとを有する。カバー部材20bは、複数のボルト42を支持する。カバー部材20bは、本発明のベース部に相当する。複数の載置部41は、以下で述べるように、箱体20に上下方向に移動可能に支持されている。これにより、ブロック部材30と冷却筒21の上下方向における相対位置が変更されることが可能である。複数の載置部41のうち一部の載置部41は、例えば、ブロック部材30の水平方向における四隅を支持するように配置されている。また、複数の載置部41のうち別の載置部41は、例えば、左右方向において2つの第1貫通孔31の間に挟まれるように配置されていても良い(図3及び図4参照)。
【0057】
各載置部41は、ナット44を有する。ナット44は、不図示の雌ネジを有し、ボルト42と螺合されている。さらに、ナット44は、ボルト42と螺合された状態で、例えば溶接によりボルト42に固定されている。これにより、ナット44は、ボルト42と一体的に回転可能に構成されている。ナット44の上面44a(本発明の載置面)は、ブロック部材30に形成された上述の接触面32cと接触可能である。
【0058】
本実施形態のボルト42は、例えば、頭部を有しない公知の全ねじであり、又は公知のスタッドボルトである。ボルト42は、上下方向に延びている。ボルト42の下側部分は、カバー部材20bに支持されている。ボルト42の上側部分には、ナット44が固定されている。ボルト42は、ナット44と一体的に回転可能である。ボルト42の上端部には、ねじ穴42a(図4参照)が形成されている。ねじ穴42aは、例えば六角穴である。
【0059】
カバー部材20bは、複数のボルト42が螺合されるように構成されている。より具体的には、例えば、カバー部材20bの上面部に、ボルト42を挿通させることが可能な挿通孔43aが形成されている。挿通孔43aのすぐ下側には、例えばナット43bが配置されている。ナット43bは、例えば溶接によりカバー部材20bに固定されている。本実施形態では、ナット43bはカバー部材20bに含まれる。ボルト42の下側部分は、ナット43bと螺合されている。ボルト42(及び載置部41)が回転させられることにより、ボルト42及び載置部41がカバー部材20bに対して(すなわち、冷却装置3に対して)上下方向に移動可能である。
【0060】
載置部41及びボルト42は、冷却装置3がエアシリンダ28(図1及び図2参照)によって上下方向に移動させられるとき、カバー部材20b(箱体20)と一体的に上下方向に移動する。したがって、複数の載置部41に載置されたブロック部材30は、エアシリンダ28の動作時に、冷却装置3と一体的に上下方向に移動する。
【0061】
(冷却筒の詳細構成)
次に、複数の冷却筒21のより詳細な構成について、図5を参照しつつ説明する。複数の冷却筒21の各々は、上述したように、フィルタ部材22(パンチングフィルタ22a及び冷却フィルタ22b)と、上筒部材23とを有する。パンチングフィルタ22aの上端部と冷却フィルタ22bの上端部は、パッキン53によって連結されている。また、図示は省略するが、パンチングフィルタ22aの下端部と冷却フィルタ22bの下端部も、パッキン(不図示)によって連結されている。上筒部材23は、外周部材51と、蓋部材52(本発明の押え部材)とを有する。外周部材51は、例えば不図示のねじによって箱体20に固定された略円筒状の部分である。外周部材51は、フィルタ部材22の径方向において、フィルタ部材22の外側に配置されている。すなわち、フィルタ部材22は、外周部材51の径方向内側に配置されている。言い換えれば、上下方向から見たときに、フィルタ部材22は、外周部材51に囲われるように配置されている。蓋部材52は、リング状の部材である。蓋部材52は、例えばパッキン53を介してフィルタ部材22を上側から押さえることが可能に構成されている。つまり、蓋部材52によって、フィルタ部材22が意図せず上下方向に動くことが防止される。蓋部材52は、例えば不図示のねじによって、外周部材51の上面に固定されている。つまり、蓋部材52は、外周部材51に対して着脱可能に構成されている。言い換えれば、蓋部材52は、外周部材51の上面にねじ止めされている押え状態と、外周部材51から取り外された解除状態との間で状態が変更されることが可能に構成されている。蓋部材52の状態が押え状態であるとき、蓋部材52はフィルタ部材22を上側から押さえている。蓋部材52の状態が解除状態であるとき、蓋部材52がフィルタ部材22を上側から押さえている状態が解除され、フィルタ部材22が箱体20に対して持ち上げられることが可能になる。パッキン53は、蓋部材52の下面と接触するシール部材である。パッキン53は、上述したように、パンチングフィルタ22aと冷却フィルタ22bとを連結している。
【0062】
(作業方法)
次に、上記のような構成を有する紡糸設備1において、作業者によって行われる作業方法について、図6(a)~図8を参照しつつ説明する。図6(a)、(b)は、ブロック部材30の高さ調節の手順を示す説明図である。図7(a)、(b)は、フィルタ部材22の取り外しの手順を示す説明図である。図8は、ブロック部材30の高さ調節後の徐冷部4及びその近傍の部材の拡大図である。作業者は、以下に述べるように、徐冷部4の調節作業と、フィルタ部材22の着脱作業とを行うことが可能である。
【0063】
まず、作業者は、紡糸装置2から糸Y(糸材料)が紡出されていない状態で、エアシリンダ28を動作させるための操作を行う。より具体的には、作業者は、エアシリンダ28を動作させることにより、冷却装置3及び徐冷部4を下降させ、第1位置(図1参照)から第2位置(図2及び図6(a)参照)に移動させる。これにより、上述した作業空間Swが形成される。作業空間Swは、複数の紡糸口金13、複数の冷却筒21及び調節部40に作業者がアクセス可能な空間である。つまり、作業者は、作業空間Swにおいて複数の紡糸口金13、複数の冷却筒21及び調節部40に対する作業を行うことが可能である。
【0064】
冷却装置3及び徐冷部4が第2位置に移動した後、ブロック部材30は載置部41の上に載置されており、パッキン35はブロック部材30の上に載置されている。以下、このような状態を載置状態と呼ぶ。載置状態においては、複数の囲い面33が複数の冷却筒21の上側部分をそれぞれ囲っている状態が維持されている。
【0065】
載置状態において、作業者は、徐冷部4の高さ調節(調節作業)を行うことが可能である。具体的には、図6(b)に示すように、作業者は、作業空間Swにおいて、例えば六角レンチHwをパッキン35の第2貫通孔37及びブロック部材30の第2貫通孔32に挿通し、六角レンチHwの先端部をボルト42のねじ穴42aに差し込む。そして、作業者は、上下方向を回転軸方向として六角レンチHwを回転させることにより、ボルト42を上下方向に移動させる(すなわち、載置部41を上下方向に移動させる)。これにより、載置部41上のブロック部材30が上下方向に移動し、囲い面33と冷却筒21との上下方向における相対位置が変更される。
【0066】
なお、ブロック部材30を上下方向に移動させる際に1つの載置部41のみを上下方向に移動させると、当該1つの載置部41によってのみブロック部材30が支持されうる。この場合、ブロック部材30がバランスを崩して水平方向に対してわずかに傾くおそれがある。そうすると、複数の囲い面33が複数の冷却筒21に当接して動かなくなってしまうおそれがある。このようにブロック部材30が動かなくなってしまうことを回避するため、ブロック部材30を略水平状態に維持することが求められる。そこで、ブロック部材30のバランスを維持するために、2つ以上の載置部41が同時に上下方向に移動させられることが好ましい。つまり、2つ以上の六角レンチHwが、2つ以上のねじ穴42aにそれぞれ差し込まれ、同時に回転させられることが好ましい。例えば、1人の作業者が、2つの六角レンチHwを同時に回転させても良い。或いは、2人以上の作業者が、2つ以上の六角レンチHwを同時に回転させても良い。
【0067】
また、作業者は、上述した載置状態において、フィルタ部材22の着脱作業を行うことが可能である。作業者は、例えば不図示のドライバを用いて、蓋部材52を外周部材51に固定している不図示のねじを外す。これにより、蓋部材52の状態が上述した押え状態から解除状態に変更される。その後、作業者は、蓋部材52を持ち上げて、ブロック部材30の第1貫通孔31の中から取り出す。これにより、フィルタ部材22を上側から押さえていた蓋部材52が取り外される(図7(a)参照)。その後、作業者は、フィルタ部材22(パッキン53によって連結されたパンチングフィルタ22a及び冷却フィルタ22b)を持ち上げて冷却装置3から取り外すことができる(図7(b)参照)。フィルタ部材22は、例えば清掃された後に冷却装置3に再び装着されても良い。或いは、別の新しいフィルタ部材22が冷却装置3に装着されても良い。このようにして、フィルタ部材22の着脱作業が行われる。
【0068】
また、作業者は、作業空間Swにおいて、徐冷部4の調節作業及び/又はフィルタ部材22の着脱作業と併せて、例えば紡糸口金13の清掃作業等を行うことも可能である。
【0069】
その後、作業者は、エアシリンダ28を動作させることにより、冷却装置3及び徐冷部4を第2位置から第1位置に戻す。これにより、徐冷空間Ssの上下方向における長さLが、例えば、調節前の長さL1(図5参照)から調節後の長さL2(図8参照)に変更される。なお、ブロック部材30及びパッキン35は、エアシリンダ28によって上側に力を加えられている。したがって、ブロック部材30と紡糸装置2の下面との隙間がパッキン35によって効果的にシールされている。また、パッキン35の上面のほぼ全体が紡糸装置2のフレーム10の下面に接触している。冷却装置3及び徐冷部4を第2位置から第1位置に戻す際に、パッキン35の精密な位置合わせを行う必要は無い。
【0070】
以上のように、1つのブロック部材30で複数の冷却筒21を囲うことができる。さらに、調節部40によってブロック部材30と複数の冷却筒21との上下方向における相対位置を調節することにより、紡糸口金13と冷却装置3との上下方向における距離(つまり、徐冷空間Ssの上下方向における長さ)を変更できる。したがって、紡糸設備1において紡出可能な糸Yの数が多い場合でも、徐冷空間Ssの上下方向における長さLを少ない数の部材で変更できる。
【0071】
また、シール部材であるパッキン35によって、紡糸装置2とブロック部材30との隙間から徐冷空間Ssに外気が侵入することを確実に抑制できる。このため、外気による紡糸口金13の温度変動を抑制できる。
【0072】
また、パッキン35が断熱部材である。このため、紡糸装置2とブロック部材30との間で熱が移動することを抑制できる。これにより、紡糸口金13の温度変動をさらに抑制できる。
【0073】
また、冷却装置3を第2位置に移動させることによって、作業空間Swにおいて紡糸口金13、冷却筒21及び調節部40に対する作業を行うことができる。したがって、良好な作業性を確保できる。
【0074】
また、冷却装置3が第2位置に移動する際に、仮にブロック部材30が冷却装置3に対して移動するように構成されている場合、ブロック部材30と複数の冷却筒21とが一時的に離隔することとなる。このため、冷却装置3を第2位置から第1位置に移動させる際に、複数の囲い面33と複数の冷却筒21との位置合わせを行う必要が生じ、手間がかかるおそれがある。この点、本実施形態では、ブロック部材30が冷却装置3と一体的に移動する。このため、冷却装置3を移動させる際、複数の囲い面33が複数の冷却筒21をそれぞれ囲っている状態を維持できる。したがって、上記位置合わせの必要が生じることを回避できる。
【0075】
また、本実施形態では、必要に応じてブロック部材30を載置部41から容易にどけることができる。
【0076】
また、ボルト42を用いた簡単な構造によって、載置部41の上下方向における位置を精密に調節できる。言い換えれば、簡単な構造によって、ブロック部材30と複数の冷却筒21との相対位置を精密に調節できる。
【0077】
また、調節部40は、複数のボルト42が螺合されたベース部(カバー部材20b)を有する。複数の載置部41の各々は、対応するボルト42と一体的に、カバー部材20bに対して上下方向に移動可能に構成されている。したがって、簡単な構造によって、載置部41を上下方向に移動させることができる。
【0078】
また、一般的に安価なナット44を用いて載置部41を形成できる。したがって、部材のコストを低減できる。
【0079】
また、載置部41にブロック部材30が載置された状態で、ボルト42を回すための工具(本実施形態では六角レンチHw)を第2貫通孔32に通すことにより、工具をボルト42にアクセスさせることができる。このため、ブロック部材30を載置部41に載せたままの状態でボルト42を回転させることができる。つまり、ボルト42を回転させる際に、ブロック部材30を載置部41からどける必要が無い。したがって、ブロック部材30と冷却筒21との相対位置を手動調節する際の手間を軽減できる。
【0080】
また、複数の載置部41にブロック部材30が載置される。このため、ブロック部材30のバランスを良好に維持することができる。
【0081】
また、蓋部材52の状態を押え状態から解除状態に変更することにより、ブロック部材30を冷却装置3に対して移動させなくても、フィルタ部材22を持ち上げて冷却装置3から取り外すことができる。
【0082】
また、簡単な構造の蓋部材52によってフィルタ部材22を上側から押さえることができ、且つ、フィルタ部材22を冷却装置3から取外し可能にすることができる。
【0083】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0084】
(1)紡糸設備1は、図9に示すような複数の覆い部材60を備えていても良い。覆い部材60は、ブロック部材30の囲い面33と、冷却筒21(より具体的には、上筒部材23の外周面23a)との間に形成された隙間34の下端部を覆う部材である。覆い部材60は、冷却筒21(上筒部材23)のうちブロック部材30の下面よりも下側に延びた延在部23Eに対して、少なくとも上下方向に移動可能に構成されている。つまり、複数の覆い部材60の各々は、例えば延在部23Eを囲うように構成されたゴムリングであっても良い。これにより、糸Yが生産されるときに、覆い部材60によって隙間34を覆うことができる。このため、隙間34が大きい場合でも、外気が徐冷空間Ssに流入することを防止できる。したがって、ブロック部材30の位置調節のしやすさと良好な糸品質とを両立できる。或いは、複数の覆い部材60の各々は、冷却筒21(上筒部材23)に対して着脱可能に構成されていても良い。つまり、覆い部材60は、例えば周方向に分割可能に構成された複数のリング片(不図示)を有するリング部材であっても良い。これにより、調節作業時に覆い部材60が邪魔になることを防止できる。なお、この変形例では、複数の隙間34全てを覆うように構成された1つの覆い部材(不図示)が設けられていても良い。あるいは、複数の隙間34のうちいくつかの隙間34を覆うように構成された覆い部材(不図示)が、複数設けられていても良い。
【0085】
(2)前記までの実施形態において、冷却筒21の蓋部材52は外周部材51にねじ止めされているものとしたが、これには限られない。蓋部材52及び外周部材51が、例えば不図示の磁石を有していても良い。これにより、蓋部材52が磁力によって外周部材51着脱可能に取り付けられていても良い。また、蓋部材52がリング状であるものとしたが、これには限られない。蓋部材52は、上述した押え状態と解除状態との間で状態が変更されるように構成されていれば、どのような形状を有していても良い。
【0086】
(3)前記までの実施形態において、蓋部材52が外周部材51に着脱可能であるものとしたが、これには限られない。蓋部材52が、例えば溶接により外周部材51に着脱不能に固定されていても良い。或いは、冷却筒21は、1つの部材によって成型されていても良い。なお、これらの場合においては、フィルタ部材22の着脱作業の際、箱体20のカバー部材20bを本体20aから分離させる必要がある。そのための準備作業として、ブロック部材30を持ち上げて複数の載置部41からどける必要が生じる。
【0087】
(4)複数の載置部41の水平方向における位置は、上述したものに限られない。ブロック部材30の高さ調節の作業性を考慮し、複数の載置部41が最適な位置に配置されるように設計されていると良い。
【0088】
(5)ブロック部材30の第2貫通孔32は、必ずしもブロック部材30を上下方向に貫通していなくても良い。第2貫通孔32は、ボルト42に工具をアクセスさせることができるように形成されていれば、例えば斜め方向に延びていても良い。或いは、第2貫通孔32は必ずしも形成されていなくても良い。但し、この場合、調節作業時にブロック部材30を複数の載置部41からどける必要がある。
【0089】
(6)前記までの実施形態において、調節部40が複数の載置部41を有するものとしたが、これには限られない。調節部40は、1つの大きな載置部(不図示)を有していても良い。このような載置部は、1又は複数のボルト42によって支持されていても良い。
【0090】
(7)前記までの実施形態において、載置部41はナット44を有するものとしたが、これには限られない。載置部41は、ナット44以外の部材によって構成されていても良い。例えば、前記までの実施形態において、ボルト42が頭部を有しないものとしたが、これには限られない。ボルト42は、例えば六角穴が形成された頭部を有していても良い。当該頭部によって、本発明の載置部が構成されていても良い。なお、ボルト42には、六角穴以外の形状のねじ穴(不図示)が形成されていても良い。また、ボルト42が頭部を有する場合、頭部にねじ穴が必ずしも形成されていなくても良い。つまり、例えば、略六角柱形状の頭部を有する公知の六角ボルトが、本発明の載置部及びボルトの両方に相当していても良い。但し、この場合、調節作業時にブロック部材30を複数の載置部41からどける必要がある。
【0091】
(8)ベース部(カバー部材20b)の構成は、上述したものに限られない。上述した例では、ナット43bがカバー部材20bに固定されているものとしたが、これには限られない。例えば、カバー部材20bに形成された挿通孔43aに雌ねじが形成されていても良い。これにより、ボルト42が挿通孔43aに螺合されていても良い。或いは、ベース部は、カバー部材20bとは別の部材(不図示)によって形成されていても良い。
【0092】
(9)前記までの実施形態において、調節部40は、上下方向に延びたボルト42を有するものとし、載置部41がボルト42と一体的に上下方向に移動するものとした。しかしながら、これには限られない。調節部(不図示)は、例えば、ラック(不図示)とピニオンギア(不図示)からなるラックアンドピニオン機構を有していても良い。より具体的には、上下方向に延びたラックに載置部(不図示)が設けられていても良い。この場合、ピニオンギアは上下方向と略直交していても良い。ピニオンギアが回転させられることにより、ラック(載置部)が上下方向に移動させられても良い。或いは、調節部(不図示)は、例えば不図示のジャッキ(パンタグラフジャッキ等)を有していても良い。例えば2つのパンタグラフジャッキ(不図示)が、上下方向においてブロック部材30と箱体20(カバー部材20b)との間に設けられていても良い。2つのパンタグラフジャッキは、ブロック部材30の長手方向(左右方向)における両端部を支持するようにそれぞれ配置されていても良い。
【0093】
(10)前記までの実施形態において、調節部40が載置部41を有し、ブロック部材30が載置部41に載っているものとした。すなわち、ブロック部材30を調節部40及び冷却装置3と容易に分離させることができるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、ブロック部材30と調節部40とが分離困難又は分離不能に構成されていても良い。
【0094】
(11)前記までの実施形態において、エアシリンダ28が動作するときに、ブロック部材30が冷却装置3と一体的に移動するように構成されているものとした。しかしながら、これには限られない。ブロック部材30は、例えば、紡糸装置2に固定されていても良い。つまり、エアシリンダ28が冷却装置3を第1位置から第2位置に移動させたときに、調節部40とブロック部材30が互いに分離するように、徐冷部4が構成されていても良い。また、紡糸装置2とブロック部材30との間にパッキン35が必ずしも設けられていなくても良い。
【0095】
(12)前記までの実施形態において、エアシリンダ28が冷却装置3を第1位置から第2位置に移動させたときに、作業空間Swが形成されるものとした。すなわち、作業空間Swにおいて、複数の紡糸口金13、複数の冷却筒21及び調節部40に対する作業が行われることが可能であるものとした。しかしながら、これには限られない。例えば、作業空間Swにおいて、複数の冷却筒21及び調節部40に対する作業のみが可能であっても良い。
【0096】
(13)前記までの実施形態において、冷却装置3を上下方向に移動させるための移動機構としてエアシリンダ28が設けられているものとした。しかしながら、これには限られない。エアシリンダ28の代わりに、例えば油圧シリンダ(不図示)或いはボールねじ機構(不図示)等が設けられていても良い。
【0097】
(14)前記までの実施形態において、調節部40は作業者によって手動で操作されるものとした。しかしながら、これには限られない。調節部40は、例えば、不図示の電動式のリニアアクチュエータを有していても良い。この場合、冷却装置3を上下方向に移動させるための移動機構は必ずしも設けられていなくても良い。このような場合でも、徐冷空間Ssの上下方向における長さをリニアアクチュエータによって変更できる。さらに、リニアアクチュエータを制御するための不図示の制御装置が設けられていても良い。
【0098】
(15)前記までの実施形態において、ブロック部材30の材料はアルミニウム合金であるものとしたが、これには限られない。ブロック部材30はアルミニウム合金以外の金属材料で形成されていても良い。或いは、ブロック部材30は非金属材料で形成されていても良い。また、ブロック部材30は必ずしも中実でなくても良い。ブロック部材30は中空でも良い。
【0099】
(16)フィルタ部材22の着脱作業時の作業性を向上させるため、冷却装置3は以下のように構成されていても良い。例えば、箱体20の本体20aの前面に1以上の開口(不図示)が設けられ、1以上の開口をそれぞれ塞ぐ1以上のカバー(不図示)が取り付けられていても良い。各カバーは、左右方向(複数の冷却筒21が配列されている方向)に延びていると好ましい。各カバーは、開閉可能又は箱体20から取り外し可能であると好ましい。このような構成において、各カバーによって塞がれている開口に対して各カバーが移動させられることにより、作業者が箱体20の内部空間に前側から手を入れることが可能になる。これにより、例えば、フィルタ部材22が箱体20に装着されるときに、作業者がフィルタ部材22の側面に容易にアクセスできる。したがって、フィルタ部材22の位置を容易に微調整できる。
【符号の説明】
【0100】
1 紡糸設備
2 紡糸装置
3 冷却装置
4 徐冷部
13 紡糸口金
20b カバー部材(ベース部)
21 冷却筒
22 フィルタ部材
23E 延在部
28 エアシリンダ(移動機構)
30 ブロック部材
32 第2貫通孔(作業孔)
33 囲い面
35 パッキン(シール部材)
40 調節部
41 載置部
42 ボルト
44 ナット
52 蓋部材(押え部材)
60 覆い部材
Ss 徐冷空間
Sw 作業空間
Y 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸をそれぞれ紡出するための複数の紡糸口金を有する紡糸装置と、
前記紡糸装置の下側に配置され、前記複数の紡糸口金からそれぞれ紡出された複数の前記糸を冷却するように構成された冷却装置と、
上下方向において前記紡糸装置と前記冷却装置との間に配置された徐冷部と、を備える紡糸設備であって、
前記冷却装置は、
上下方向に延び且つ前記複数の糸をそれぞれ囲うように配置され、前記複数の糸に冷却風を導くように構成された複数の冷却筒を有し、
前記徐冷部は、
前記複数の冷却筒の上下方向における少なくとも一部をそれぞれ囲うように構成された複数の囲い面を有し、前記複数の囲い面のうち前記複数の冷却筒よりも上側の部分によって、前記複数の糸をそれぞれ徐冷するための複数の徐冷空間を形成するブロック部材と、
前記ブロック部材と前記複数の冷却筒との上下方向における相対位置を調節可能に構成された調節部と、を有することを特徴とする紡糸設備。
【請求項2】
上下方向において前記紡糸装置と前記ブロック部材との間に挟まれるように配置されたシール部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の紡糸設備。
【請求項3】
前記シール部材は、断熱部材であることを特徴とする請求項2に記載の紡糸設備。
【請求項4】
前記冷却装置を、前記紡糸装置から前記複数の糸が紡出されるときの第1位置と、前記第1位置よりも下側の第2位置との間で移動させるように構成された移動機構を備え、
前記冷却装置が前記第2位置に位置しているときに、上下方向において、前記紡糸装置と前記冷却装置との間に、前記複数の紡糸口金、前記複数の冷却筒及び前記調節部に対する作業が行われることが可能な作業空間が形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項5】
前記ブロック部材は、前記移動機構の動作時に前記冷却装置と一体的に移動するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の紡糸設備。
【請求項6】
前記調節部は、
前記ブロック部材が載置されるように構成され且つ前記冷却装置に対して上下方向に移動可能に構成された1以上の載置部、を有することを特徴とする請求項5に記載の紡糸設備。
【請求項7】
前記調節部は、
前記1以上の載置部をそれぞれ支持する、上下方向に延びた1以上のボルトを有し、
前記1以上のボルトが回転することにより前記載置部が上下方向に移動させられるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の紡糸設備。
【請求項8】
前記1以上のボルトが螺合されたベース部を備え、
前記1以上のボルトは、回転することにより前記ベース部に対してそれぞれ上下方向に移動可能に構成され、
前記1以上の載置部は、前記1以上のボルトとそれぞれ一体的に上下方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の紡糸設備。
【請求項9】
前記1以上の載置部は、
前記ブロック部材と接触する載置面がそれぞれ形成された1以上のナット、を有し、
前記1以上のナットは、前記1以上のボルトにそれぞれ固定されていることを特徴とする請求項8に記載の紡糸設備。
【請求項10】
前記ブロック部材は、
前記ブロック部材が前記1以上の載置部に載置された状態で前記1以上のボルトに対する作業を行うための1以上の作業孔を有することを特徴とする請求項7~9のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項11】
前記調節部は、前記1以上の載置部として複数の載置部を有することを特徴とする請求項6~10のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項12】
前記複数の冷却筒の各々は、
前記冷却装置に着脱可能なフィルタ部材と、
前記フィルタ部材を上側から押さえるように構成された押え部材と、を有し、
前記押え部材は、
前記冷却装置が前記第2位置に位置しているときに、
前記フィルタ部材を上側から押さえている押え状態と、前記押え状態が解除され、前記フィルタ部材が持ち上げられることが可能な解除状態と、の間で状態を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項5~11のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項13】
記押え部材は
前記複数の冷却筒の各々の上面に着脱可能なリング部材であることを特徴とする請求項12に記載の紡糸設備。
【請求項14】
前記複数の冷却筒は、前記ブロック部材の下面よりも下側に延びた複数の延在部をそれぞれ有し、
前記複数の延在部に対して少なくとも上下方向に移動可能に構成され、前記複数の冷却筒と前記複数の囲い面との間に形成された複数の隙間を覆う1以上の覆い部材、を備えることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の紡糸設備。
【請求項15】
前記1以上の覆い部材は、前記複数の延在部に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項14に記載の紡糸設備。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
第8の発明の紡糸設備は、前記第7の発明において、前記1以上のボルトが螺合されたベース部を備え、前記1以上のボルトは、回転することにより前記ベース部に対してそれぞれ上下方向に移動可能に構成され、前記1以上の載置部は、前記1以上のボルトとそれぞれ一体的に上下方向に移動可能に構成されていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
第9の発明の紡糸設備は、前記第8の発明において、前記1以上の載置部は、前記ブロック部材と接触する載置面がそれぞれ形成された1以上のナット、を有し、前記1以上のナットは、前記1以上のボルトにそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
第13の発明の紡糸設備は、前記第12の発明において、前記押え部材は、前記複数の冷却筒の各々の上面に着脱可能なリング部材であることを特徴とする。