(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147039
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/08 20210101AFI20220929BHJP
【FI】
G03B9/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048123
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
【テーマコード(参考)】
2H081
【Fターム(参考)】
2H081AA23
2H081AA24
2H081BB26
2H081BB38
2H081BB39
(57)【要約】
【課題】耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置を提供する。
【解決手段】羽根駆動装置1は、地板10と、羽根31~38と、地板10に取り付けられる回転軸21と、羽根31~34に連結される連結部45を有し、回転軸21を中心として回転することで連結部45を移動経路に沿って移動させて羽根31~34を駆動する駆動レバー50と、地板10に取り付けられる支軸63と、支軸63を中心として回転可能な摩擦ブレーキ部材67と、摩擦ブレーキ部材67との間で摩擦が生じるように支軸63に取り付けられるワッシャ70とを備える。摩擦ブレーキ部材67は、連結部45の移動経路上で連結部45に接触可能に構成される。ワッシャ70は、支軸63を挿通させるための円形孔700を規定する内周縁710と、内周縁710から半径方向外側に向かって広がる円板部730とを有する。円板部730には、Z方向に円板部730を貫通する複数の潤滑剤保持孔701,702が形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地板と、
少なくとも1つの羽根と、
前記地板に取り付けられる回転軸と、
前記少なくとも1つの羽根に連結される連結部を有し、前記回転軸を中心として回転することで前記連結部を移動経路に沿って移動させて前記少なくとも1つの羽根を駆動する駆動レバーと、
前記地板に取り付けられる支軸と、
前記支軸を中心として回転可能な摩擦ブレーキ部材であって、前記連結部の前記移動経路上で前記連結部に接触可能な摩擦ブレーキ部材と、
前記摩擦ブレーキ部材との間で摩擦が生じるように前記支軸に取り付けられるワッシャと
を備え、
前記ワッシャは、
前記支軸を挿通させるための円形孔を規定する内周縁と、
前記内周縁から半径方向外側に向かって広がる円板部であって、厚さ方向に該円板部を貫通する少なくとも1つの潤滑剤保持孔が形成された円板部と
を有する、
羽根駆動装置。
【請求項2】
前記ワッシャの前記少なくとも1つの潤滑剤保持孔は、周方向に沿って延びる複数の潤滑剤保持孔を含む、請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記ワッシャの前記複数の潤滑剤保持孔は、互いに周方向に重ならないように配置される、請求項2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記ワッシャの前記複数の潤滑剤保持孔は、
第1の半径位置に形成された少なくとも1つの第1の潤滑剤保持孔と、
前記第1の半径位置よりも外側の第2の半径位置に形成された少なくとも1つの第2の潤滑剤保持孔と
を含む、請求項2又は3に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の羽根駆動装置と、
前記羽根駆動装置の前記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子と
を備える、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置及びこれを備えた撮像装置に係り、特にカメラなどの撮像装置におけるシャッタ羽根を駆動するための羽根駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの撮像装置においては、シャッタ羽根を高速で移動させることによって露光開口を開閉し、撮像素子に対する露光を行っている。従来から、このようなシャッタ羽根を駆動する羽根駆動装置として、シャッタ羽根に連結された駆動レバーをアクチュエータによって移動させるものが知られている。近年、シャッタ動作がより高速になるにつれ、シャッタ羽根が移動終端位置で大きくバウンドして破損などしないように、移動終端位置近傍でシャッタ羽根を制動するブレーキ部材を設けることも考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなブレーキ部材は摩擦部材との間で生じる摩擦力によってシャッタ羽根を制動するものであるが、部材の摩耗を低減して耐久性を向上するために、ブレーキ部材と摩擦部材との間にグリースなどの潤滑剤を塗布することがある。しかしながら、シャッタ動作を繰り返すうちに、ブレーキ部材と摩擦部材の間から潤滑剤が外部に漏れ出して、ブレーキ部材と摩擦部材の間の潤滑剤が少なくなって十分な潤滑作用が得られなくなることも考えられる。この場合には、シャッタ動作の繰り返しにより部材の摩耗が進み、装置の耐久性が低下してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、地板と、少なくとも1つの羽根と、上記地板に取り付けられる回転軸と、上記少なくとも1つの羽根に連結される連結部を有し、上記回転軸を中心として回転することで上記連結部を移動経路に沿って移動させて上記少なくとも1つの羽根を駆動する駆動レバーと、上記地板に取り付けられる支軸と、上記支軸を中心として回転可能な摩擦ブレーキ部材と、上記摩擦ブレーキ部材との間で摩擦が生じるように上記支軸に取り付けられるワッシャとを備える。上記摩擦ブレーキ部材は、上記連結部の上記移動経路上で上記連結部に接触可能に構成される。上記ワッシャは、上記支軸を挿通させるための円形孔を規定する内周縁と、上記内周縁から半径方向外側に向かって広がる円板部とを有する。上記円板部には、厚さ方向に該円板部を貫通する少なくとも1つの潤滑剤保持孔が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す羽根駆動装置の一部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す羽根駆動装置が露光動作を完了したときの状態を示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す羽根駆動装置における先羽根を駆動及び制動する機構を説明するための斜視図である。
【
図7】
図7は、露光動作が完了するときの羽根駆動装置の一部を示す背面図である。
【
図8】
図8は、
図4に示す制動機構の一部を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る羽根駆動装置の実施形態について
図1から
図9Cを参照して詳細に説明する。
図1から
図9Cにおいて、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図9Cにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置1を示す正面図である。本実施形態における羽根駆動装置1は、カメラなどの光学機器に組み込まれるフォーカルプレーンシャッタであるものとして説明するが、これは例示に過ぎず、本発明に係る羽根駆動装置はこのようなシャッタの用途に限られるもいのではない。
図1は、カメラによるセット動作が完了したときの状態を示している。
【0010】
図1に示すように、本実施形態における羽根駆動装置1は、矩形状の開口が形成された地板10と、地板10の開口と略同一の形状の開口が形成されたカバー板12と、地板10とカバー板12との間に形成される空間に収容される8枚の羽根31~38とを含んでいる。地板10の開口とカバー板12の開口により露光開口部Sが形成されている。この羽根駆動装置1は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子(図示せず)を備えた撮像装置に組み込まれるものである。
図1の羽根駆動装置1の紙面手前側に撮像素子が位置しており、被写体からの光は、地板10及びカバー板12の露光開口部Sを通過して、撮像素子に入射するようになっている。
【0011】
図2は、羽根駆動装置1の一部を示す分解斜視図である。
図2に示すように、羽根31~38のそれぞれは、全体としてX方向に延びる薄板状の部材である。本実施形態では、羽根31~38のうち、順番に重ねられる羽根31~34が、フォーカルプレーンシャッタの先幕を構成する先羽根となり、順番に重ねられる羽根35~38が後幕を構成する後羽根となる。地板10とカバー板12との間には図示しない中間板が配置されており、先羽根31~34は中間板とカバー板12の間に形成される空間内に収容され、後羽根35~38は中間板と地板10との間に形成される空間内に収容される。
【0012】
また、羽根駆動装置1は、先羽根31~34に連結される先羽根アーム41,42と、後羽根35~38に連結される後羽根アーム43,44とを含んでいる。先羽根31~34は、リベットなどによりそれぞれ先羽根アーム41,42と連結され、先羽根31~34と先羽根アーム41,42とが互いに回転可能となっている。したがって、それぞれの先羽根31~34と先羽根アーム41,42とによってリンク機構が構成される。また、後羽根35~38は、リベットなどによりそれぞれ後羽根アーム43,44と連結され、後羽根35~38と後羽根アーム43,44とが互いに回転可能となっている。したがって、それぞれの後羽根35~38と後羽根アーム43,44とによってリンク機構が構成される。
【0013】
先羽根アーム41は回転軸21を中心として回転可能に構成され、先羽根アーム42は回転軸22を中心として回転可能に構成される。
図2に示すように、地板10の+Z方向側には先羽根駆動レバー50が配置されている。この先羽根駆動レバー50は、回転軸21を中心として回転可能に構成されており、先羽根駆動レバー50の先端には連結部45が設けられている。地板10には、回転軸21を中心とする円弧に沿った円弧孔11が形成されており、先羽根駆動レバー50の連結部45はこの円弧孔11を通って先羽根アーム41の連結孔41Aに連結されている。
【0014】
また、後羽根アーム43は回転軸23を中心として回転可能に構成され、後羽根アーム44は回転軸24を中心として回転可能に構成される。
図2に示すように、地板10の+Z方向側には後羽根駆動レバー53が配置されている。この後羽根駆動レバー53は、回転軸23を中心として回転可能に構成されており、後羽根駆動レバー53の先端には連結部46が設けられている。地板10には、回転軸23を中心とする円弧に沿った円弧孔13が形成されており、後羽根駆動レバー53の連結部46はこの円弧孔13を通って後羽根アーム43の連結孔43Aに連結されている。
【0015】
このような構成において、図示しない駆動機構によって先羽根駆動レバー50を回転軸21周りに回転させると、先羽根駆動レバー50の連結部45が移動経路としての円弧孔11に沿って移動し、この連結部45に連結された先羽根アーム41が回転軸21を中心として回転する。先羽根アーム41が回転軸21を中心として回転すると、上述したリンク機構によって、先羽根アーム42も回転軸22を中心として回転し、先羽根31~34が互いに重なる領域を変化させつつ、XY平面(移動平面)上を主としてY方向に移動するようになっている。
【0016】
同様に、図示しない駆動機構によって後羽根駆動レバー53を回転軸23周りに回転させると、後羽根駆動レバー53の連結部46が円弧孔13に沿って移動し、この連結部46に連結された後羽根アーム43が回転軸23を中心として回転する。後羽根アーム43が回転軸23を中心として回転すると、上述したリンク機構によって、後羽根アーム44も回転軸24を中心として回転し、後羽根35~38が互いに重なる領域を変化させつつ、XY平面(移動平面)上を主としてY方向に移動するようになっている。
【0017】
図1に示すセット動作の完了状態から駆動機構によって先羽根駆動レバー50及び後羽根駆動レバー53を駆動させると、先羽根31~34及び後羽根35~38はXY平面上を主として-Y方向に移動する。このとき、後羽根35は先羽根34からY方向に離れた状態で-Y方向に移動するようになっている。したがって、先羽根34と後羽根35との間には露光用のスリットが形成され。このスリットが先羽根31~34及び後羽根35~38の移動とともに-Y方向に移動し、撮像面に対する露光が行われる。
図3は、この露光動作が完了したときの状態を示している。
【0018】
以下では、主として先羽根31~34に関連する部材に関して説明を行い、後羽根35~38に関連する部材については説明を省略するが、後羽根35~38に関連する部材についても先羽根31~34に関連する部材と同様に本発明を適用できることは言うまでもない。
【0019】
ここで、
図4に示すように、円弧孔11の終端近傍には、先羽根31~34が移動終端位置で大きくバウンドして破損などしないように、連結部45(ひいては先羽根31~34)を制動する制動機構60が設けられている。
図5は、この制動機構60の分解斜視図である。なお、本実施形態では、便宜的に、
図5における+Z方向を「上」又は「上方」といい、-Z方向を「下」又は「下方」ということとする。
【0020】
図5に示すように、制動機構60は、ブレーキシャフト61とスリーブ62とから構成される支軸63と、スリーブ62のバネ保持部62Aに巻回されるねじりコイルバネ64と、スリーブ62の下方に配置されるバネブレーキ部材65と、バネブレーキ部材65の下方に配置されるスリーブ66と、スリーブ66の下方に配置されるワッシャ70Aと、ワッシャ70Aの下方に配置される摩擦ブレーキ部材67と、摩擦ブレーキ部材67の下方に配置されるワッシャ70Bとを含んでいる。ブレーキシャフト61は、地板10に形成された円形孔16に嵌入されている。
【0021】
バネブレーキ部材65は、支軸63に取り付けられる基部650と、ねじりコイルバネ64の一方の腕部64Aが係合するバネ保持部651と、地板10から+Z方向に延びる規制ピン14に係合可能なストッパ部652と、連結部45に接触可能な制動部653とを含んでいる。ねじりコイルバネ64の他方の腕部64Bは、地板10に固定的に設けられた係合部(図示せず)に係合している。このねじりコイルバネ64は、腕部64A,64Bの間の開き角度がねじりコイルバネ64の自由角度よりも小さくなるように構成されており、
図5においてバネブレーキ部材65を反時計回りの方向に付勢するようになっている。なお、地板10の円弧孔11の-Y方向側の端部には衝撃吸収用のダンパ15が設けられている。
【0022】
摩擦ブレーキ部材67は、例えば金属から形成される部材であり、支軸63に取り付けられる基部670と、基部670から外側に延びて連結部45に接触可能な制動部671とを含んでいる。この摩擦ブレーキ部材67は、上下のワッシャ70A,70Bにより軸方向に押圧された状態で支軸63に取り付けられている。また、摩擦ブレーキ部材67とワッシャ70との間にはグリースなどの潤滑剤が塗布されている。
【0023】
このような構成において、露光動作前には、図示しない駆動機構が先羽根駆動レバー50のローラ51を押し、これにより、先羽根駆動レバー50が
図6に示すように回転軸21を中心として反時計回りに回転し、連結部45が円弧孔11の+Y方向側の端部に移動する。このとき、先羽根駆動レバー50のプッシャ52が摩擦ブレーキ部材67の制動部671の側面671Aに接触し、先羽根駆動レバー50が反時計回りに回転すると、摩擦ブレーキ部材67が支軸63を中心として時計回りに回転する。これにより、摩擦ブレーキ部材67の制動部671の一部が連結部45の移動経路(円弧孔11)上に位置する。
【0024】
このとき、バネブレーキ部材65は、ねじりコイルバネ64によって反時計回りの方向に付勢されているため、ストッパ部652が規制ピン14に係合した状態で保持される。この状態では、バネブレーキ部材65の制動部653の一部が連結部45の移動経路(円弧孔11)上に位置している。
【0025】
露光動作が開始すると、バネの力などにより先羽根駆動レバー50が回転軸21を中心として時計回りに回転し、連結部45が円弧孔11に沿って移動する。これに伴い、連結部45に連結された先羽根アーム41も回転軸21を中心として回転するとともに、上述したリンク機構を介して先羽根アーム41も回転軸21を中心として回転する。これによって、先羽根31~34が互いに重なる領域を変化させつつ主として-Y方向に移動する。
【0026】
図7に示すように、連結部45が移動終端位置に近づくと、連結部45が移動経路上に位置している摩擦ブレーキ部材67の制動部671とバネブレーキ部材65の制動部653とに接触する。そして、連結部45は、摩擦ブレーキ部材67とワッシャ70との間に生じる摩擦力に抗して摩擦ブレーキ部材67を反時計回りに回転させるとともに、ねじりコイルバネ64による付勢力に抗してバネブレーキ部材65を時計回りに回転させることで移動速度を落として最終的に停止する。このようにして、制動機構60により先羽根駆動レバー50の連結部45及び先羽根31~34が制動される。
【0027】
図8は、制動機構60の一部を拡大して示す縦断面図である。
図8に示すように、本実施形態においては、摩擦ブレーキ部材67の基部670とスリーブ66との間及び摩擦ブレーキ部材67の基部670と地板10との間にそれぞれワッシャ70(70A,70B)が配置されている。以下、このワッシャ70について説明する。
【0028】
図9Aはワッシャ70の斜視図、
図9Bは背面図、
図9Cは
図9BのA-A線断面図である。
図9Aから
図9Cに示すように、ワッシャ70は、例えば金属や樹脂からなるもので、支軸63(ブレーキシャフト61)を挿通させるための円形孔700を規定する内周縁710と、内周縁の半径方向外側に位置する外周縁720とを有している。内周縁710と外周縁720の間には略円環状の円板部730が形成されている。また、円板部730には、周方向に沿って延びる複数の潤滑剤保持孔701,702が形成されている。これらの潤滑剤保持孔701,702は円板部730を厚さ方向(Z方向)に貫通している。
【0029】
本実施形態では、潤滑剤保持孔701(第1の潤滑剤保持孔)は半径方向内側に配置され、潤滑剤保持孔702(第2の潤滑剤保持孔)が半径方向外側に配置されている。これらの潤滑剤保持孔701,702は、互いに周方向に重ならないように配置されており、半径方向内側の潤滑剤保持孔701と半径方向外側の潤滑剤保持孔702とが周方向に沿って互い違いに位置している。
【0030】
上述したように、摩擦ブレーキ部材67を先羽根駆動レバー50の連結部45に接触させて、摩擦ブレーキ部材67とワッシャ70との間の摩擦力によって連結部45を制動することを繰り返すと、摩擦ブレーキ部材67とワッシャ70との間から徐々に潤滑剤が外部に漏れ出すことが考えられるが、摩擦ブレーキ部材67とワッシャ70との間から多少の潤滑剤が外部に漏れ出したとしても、ワッシャ70の潤滑剤保持孔701,702に十分な潤滑剤を保持することができるため、この潤滑剤保持孔701,702から摩擦ブレーキ部材67とワッシャ70との間に潤滑剤を供給することができる。したがって、羽根31~38を高速で動作させた場合であっても、摩擦ブレーキ部材67とワッシャ70との間の潤滑剤の量が減少して潤滑作用が低下してしまうことを抑制することができる。このように、本実施形態によれば、羽根駆動装置1の耐久性の低下を抑制しつつ、羽根31~38を高速動作させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、複数の潤滑剤保持孔701,702が互いに周方向に重ならないように配置されている。このようにすることで、ワッシャ70の円板部730の周方向の少なくとも一部において潤滑剤保持孔701,702が形成されていない部分730A(
図9B参照)を作ることができるので、複数の潤滑剤保持孔701,702を形成することによってワッシャ70の強度が過度に低下してしまうことを防止することができる。
【0032】
同一の半径位置に複数の潤滑剤保持孔を形成する場合には、ワッシャ70の強度を保持しつつそれぞれの潤滑剤保持孔のサイズを大きくすることが難しいが、本実施形態のように異なる半径位置に複数の潤滑剤保持孔701,702を形成することで、ワッシャ70の強度を保持しつつ、それぞれの潤滑剤保持孔701,702のサイズを大きくすることができる。
【0033】
上述した実施形態では、潤滑剤保持孔701,702がいずれも周方向に延びているが、潤滑剤保持孔701,702の形状はこれに限られるものではなく、例えば円形孔であってもよい。また、上述した実施形態では、摩擦ブレーキ部材67の上側及び下側の双方にワッシャ70(70A,70B)が配置されているが、このようなワッシャ70を摩擦ブレーキ部材67の上側及び下側の一方にのみ配置してもよい。
【0034】
なお、本明細書において使用した用語「上」、「下」、「上方」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0035】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、耐久性の低下を抑制しつつ高速動作が可能な羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、地板と、少なくとも1つの羽根と、上記地板に取り付けられる回転軸と、上記少なくとも1つの羽根に連結される連結部を有し、上記回転軸を中心として回転することで上記連結部を移動経路に沿って移動させて上記少なくとも1つの羽根を駆動する駆動レバーと、上記地板に取り付けられる支軸と、上記支軸を中心として回転可能な摩擦ブレーキ部材と、上記摩擦ブレーキ部材との間で摩擦が生じるように上記支軸に取り付けられるワッシャとを備える。上記摩擦ブレーキ部材は、上記連結部の上記移動経路上で上記連結部に接触可能に構成される。上記ワッシャは、上記支軸を挿通させるための円形孔を規定する内周縁と、上記内周縁から半径方向外側に向かって広がる円板部とを有する。上記円板部には、厚さ方向に該円板部を貫通する少なくとも1つの潤滑剤保持孔が形成される。
【0036】
このような構成において、摩擦ブレーキ部材を駆動レバーの連結部に接触させて、摩擦ブレーキ部材とワッシャとの間の摩擦力によって連結部を制動することを繰り返すと、摩擦ブレーキ部材とワッシャとの間から潤滑剤が徐々に外部に漏れ出すことが考えられるが、摩擦ブレーキ部材とワッシャとの間から多少の潤滑剤が漏れ出したとしても、ワッシャの潤滑剤保持孔に十分な潤滑剤を保持することができるため、この潤滑剤保持孔から摩擦ブレーキ部材とワッシャとの間に潤滑剤を供給することができる。したがって、羽根を高速で動作させた場合であっても、摩擦ブレーキ部材とワッシャとの間の潤滑剤の量が減少して潤滑作用が低下してしまうことを抑制することができる。このように、本発明によれば、羽根駆動装置の耐久性の低下を抑制しつつ、羽根を高速動作させることが可能となる。
【0037】
上記ワッシャの上記少なくとも1つの潤滑剤保持孔は、周方向に沿って延びる複数の潤滑剤保持孔を含むことが好ましい。この場合において、上記ワッシャの上記複数の潤滑剤保持孔は、互いに周方向に重ならないように配置されることが好ましい。このように、複数の潤滑剤保持孔を互いに周方向に重ならないようにすることで、ワッシャの円板部の周方向の少なくとも一部において潤滑剤保持孔が形成されていない部分を作ることができるので、複数の潤滑剤保持孔を形成することによってワッシャの強度が過度に低下してしまうことを防止することができる。
【0038】
上記ワッシャの上記複数の潤滑剤保持孔は、第1の半径位置に形成された少なくとも1つの第1の潤滑剤保持孔と、上記第1の半径位置よりも外側の第2の半径位置に形成された少なくとも1つの第2の潤滑剤保持孔とを含むことが好ましい。同一の半径位置に複数の潤滑剤保持孔を形成する場合には、ワッシャの強度を保持しつつそれぞれの潤滑剤保持孔のサイズを大きくすることが難しいが、このように異なる半径位置に複数の潤滑剤保持孔を形成することで、ワッシャの強度を保持しつつ、それぞれの潤滑剤保持孔のサイズを大きくすることができる。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、上述した羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記地板に形成された開口部を透過した光が結像する面に配置された撮像素子とを備える撮像装置が提供される。
【0040】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 羽根駆動装置
10 地板
11,13 円弧孔
12 カバー板
16 円形孔
14 規制ピン
21~24 回転軸
31~34 先羽根
35~38 後羽根
41,42 先羽根アーム
43,44 後羽根アーム
45,46 連結部
50 先羽根駆動レバー
60 制動機構
61 ブレーキシャフト
62 スリーブ
63 支軸
64 ねじりコイルバネ
65 バネブレーキ部材
66 スリーブ
67 摩擦ブレーキ部材
70 ワッシャ
650 基部
651 バネ保持部
652 ストッパ部
653 制動部
670 基部
671 制動部
700 円形孔
701 (第1の)潤滑剤保持孔
702 (第2の)潤滑剤保持孔
710 内周縁
720 外周縁
730 円板部
S 露光開口部