(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147061
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】浴室暖房乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F24D 15/00 20220101AFI20220929BHJP
F26B 9/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F24D15/00 B
F26B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048158
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐史
(72)【発明者】
【氏名】向井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】梶 兼輔
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 窓
【テーマコード(参考)】
3L072
3L113
【Fターム(参考)】
3L072AA05
3L072AB06
3L072AC01
3L072AC02
3L113AA01
3L113AB02
3L113AC03
3L113AC08
3L113AC48
3L113AC49
3L113AC67
3L113BA14
3L113DA21
(57)【要約】
【課題】ファン用のモータの配線取出し部の発熱・発火による延焼を適切に防止または抑制することが可能な浴室暖房乾燥装置を提供する。
【解決手段】ファン2用のモータMを備えており、このモータMは、周壁部60を有するモータケース6、および周壁部60に設けられている配線取出し部61を備えており、かつモータケース6の中心軸CLが上下高さ方向に対して交差する方向に延びる横置きの態様に設定されている、浴室暖房乾燥装置Aであって、モータMは、配線取出し部61がモータケース6の左右横幅方向の一端部に位置して略水平方向を向く特定の姿勢とされており、配線取出し部61を覆い、かつ難燃性を有する延焼防止用カバー4を、さらに備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン用のモータを備えており、
このモータは、周壁部を有するモータケース、および前記周壁部に設けられている配線取出し部を備えており、かつ前記モータケースの中心軸が上下高さ方向に対して交差する方向に延びる横置きの態様に設定されている、浴室暖房乾燥装置であって、
前記モータは、前記配線取出し部が前記モータケースの左右横幅方向の一端部に位置して略水平方向を向く特定の姿勢とされており、
前記配線取出し部を覆い、かつ難燃性を有する延焼防止用カバーを、さらに備えていることを特徴とする、浴室暖房乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浴室暖房乾燥装置であって、
前記延焼防止用カバーは、前記配線取出し部の前方、上方、および左右両側方に位置して前記配線取出し部を覆う壁部を有している、浴室暖房乾燥装置。
【請求項3】
請求項2に記載の浴室暖房乾燥装置であって、
前記延焼防止用カバーの下部と前記モータの周壁部との相互間には、前記モータの配線を前記延焼防止用カバーの内側からその下方外側に引き出すことが可能な開口部が設けられている、浴室暖房乾燥装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の浴室暖房乾燥装置であって、
前記延焼防止用カバーには、前記配線取出し部の位置合わせ用の目印が設けられており、前記配線取出し部を前記目印に位置合わせすることにより、前記モータを前記特定の姿勢に設定可能とされている、浴室暖房乾燥装置。
【請求項5】
請求項4に記載の浴室暖房乾燥装置であって、
前記延焼防止用カバーは、樹脂成形品であり、前記目印は、前記延焼防止用カバーに一体成形された立体的な目印である、浴室暖房乾燥装置。
【請求項6】
請求項5に記載の浴室暖房乾燥装置であって、
前記目印は、前記延焼防止用カバーの内面部に設けられて上下高さ方向に延びるリブであり、このリブの上下高さ方向の端部に対し、前記配線取出し部の所定箇所の高さを合わせることにより、前記モータを前記特定の姿勢に設定可能とされている、浴室暖房乾燥装置。
【請求項7】
請求項6に記載の浴室暖房乾燥装置であって、
前記延焼防止用カバーは、前記リブの前記端部よりも下方に延びている、浴室暖房乾燥装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の浴室暖房乾燥装置であって、
前記モータの延焼防止対象領域には、金属箔テープ上にガラスクロスが積層して接着されたラミネートテープが貼付されている、浴室暖房乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室暖房乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室暖房乾燥装置の具体例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の浴室暖房乾燥装置は、浴室の天井裏などに設置して使用されるものであり、下部開口状のケース内に、ファン、このファンを駆動するためのモータ、および加熱用の熱交換器を備えている。浴室の空気は、前記ファンによって前記ケース内に吸い込まれて前記熱交換器の設置箇所に送られ、前記熱交換器によって加熱されてから浴室に戻される。
【0003】
このような浴室暖房乾燥装置においては、ファン(羽根車)として、たとえばクロスフロータイプのものを利用し、このファンをその中心軸が水平方向に延びる姿勢とした上で、その横にモータを配置し、モータの出力軸を羽根車と連結する場合が多い。ここで、モータは、その運転時に高温の発熱体となり易く、浴室暖房乾燥装置は、高湿度の環境に設置され、長期間にわたって使用されるため、その傾向はより強い。そこで、特許文献1においては、モータを収容している樹脂製ケースの内面に、金属蒸着膜を形成し、モータから発火を生じた場合の延焼防止を図っている。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、ファン用のモータは、その全体が均一に発熱・発火し易い訳ではなく、モータの配線取出し部は、モータの各部のうち、とくに発熱・発火し易い箇所であると言える。ところが、従来においては、そのような配線取出し部に対する特別な対応措置は採られていないのが実情である。このため、配線取出し部の発熱・発火による延焼が懸念され、このようなことを適切に解消することが望まれる。
なお、モータは、たとえば円盤状のモータケースを備え、かつその周壁部に配線取出し部が設けられているのが一般的である。ただし、配線取出し部がモータケースの上側、下側などのいずれの位置に存在するかによって、配線取出し部から発火を生じた場合の火炎の拡がり方は相違したものとなる。したがって、このようことも適切に対応する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、ファン用のモータの配線取出し部の発熱・発火による延焼を適切に防止または抑制することが可能な浴室暖房乾燥装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明により提供される浴室暖房乾燥装置は、ファン用のモータを備えており、このモ
ータは、周壁部を有するモータケース、および前記周壁部に設けられている配線取出し部を備えており、かつ前記モータケースの中心軸が上下高さ方向に対して交差する方向に延びる横置きの態様に設定されている、浴室暖房乾燥装置であって、前記モータは、前記配線取出し部が前記モータケースの左右横幅方向の一端部に位置して略水平方向を向く特定の姿勢とされており、前記配線取出し部を覆い、かつ難燃性を有する延焼防止用カバーを、さらに備えていることを特徴としている。
ここで、「難燃性」とは、火炎に対して抵抗性を示し、発火までの時間を遅延させたり、あるいは燃焼量や燃焼速度を抑制し得る機能を有している意である。したがって、必ずしも特定の規格に適合することを意味しない。また、本発明でいう「難燃性」には、不燃性も含まれる。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ファン用のモータは、所定の横置きの態様であるが、モータケースの周壁部に設けられた配線取出し部がモータケースの左右横幅方向の一端部に位置して略水平方向を向く姿勢とされている。このため、仮に、配線取出し部が発火したとしても、火炎は、モータケースに多く接しない状態で配線取出し部の前方および上方に拡がるシンプルな形状となる。本発明とは異なり、配線取出し部が、たとえばモータケースの下部またはその近辺にある場合、上向きの火炎はモータケースに当たり、シンプルな形状にはならない。
一方、延焼防止用カバーは、難燃性を有し、かつ配線取出し部を覆っているため、前記した配線取出し部からの火炎の拡がりを抑えることが可能であるが、本発明においては、既述したように、配線取出し部が発火した場合、その火炎は、モータケースの左右横幅方向の一端部に位置する配線取出し部からその前方および上方にシンプルな形状で拡がるものとなる。したがって、延焼防止用カバーをモータケースに沿わせるように配置させる簡易な構成によって、前記した火炎を延焼防止用カバーにより適切に遮り、火炎の拡がりを確実に抑制することが可能である。その結果、モータの配線取出し部の発熱・発火による延焼を適切に防止または抑制する効果が得られる。
本発明とは異なり、配線取出し部が、モータケースの下部またはその近辺にある場合には、既述したように、火炎はモータケースに当たりシンプルな形状とはならないため、このような火炎の全体を延焼防止用カバーによって適切に遮ることは難しい。また、配線取出し部が、モータケースの上部またはその近辺にある場合には、火炎がモータケースに当たることは回避されるものの、延焼防止用カバーをモータケースの上方に設置する必要が生じ、そのための構造が複雑となる。本発明によれば、そのような不具合を回避することが可能である。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記延焼防止用カバーは、前記配線取出し部の前方、上方、および左右両側方に位置して前記配線取出し部を覆う壁部を有している。
【0012】
このような構成によれば、配線取出し部が発火した場合に、この配線取出し部から拡がろうとする火炎を延焼防止用カバーの前記壁部によって一層適切に遮ることができる。したがって、延焼防止効果をより高めることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記延焼防止用カバーの下部と前記モータの周壁部との相互間には、前記モータの配線を前記延焼防止用カバーの内側からその下方外側に引き出すことが可能な開口部が設けられている。
【0014】
このような構成によれば、モータの配線を延焼防止用カバーの内側からその外側に適切に引き出すことができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記延焼防止用カバーには、前記配線取出し部の位置合わせ用の目印が設けられており、前記配線取出し部を前記目印に位置合わせすることによ
り、前記モータを前記特定の姿勢に設定可能とされている。
【0016】
このような構成によれば、浴室暖房乾燥装置の組立作業時において、延焼防止用カバーに設けられた前記目印を利用することにより、モータを前記特定の姿勢(配線取出し部がモータケースの左右横幅方向の一端部に位置して略水平方向を向く姿勢)に設定する作業を、迅速かつ適切に行なうことが可能となる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記延焼防止用カバーは、樹脂成形品であり、前記目印は、前記延焼防止用カバーに一体成形された立体的な目印である。
【0018】
このような構成によれば、前記目印を、たとえば延焼防止用カバーに塗装を施したたり、あるいは不燃の印刷物を貼付するなどして設ける必要はなく、延焼防止用カバーを樹脂成形する際に設けることが可能である。したがって、生産性がよく、製造コストを廉価にすることが可能である。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記目印は、前記延焼防止用カバーの内面部に設けられて上下高さ方向に延びるリブであり、このリブの上下高さ方向の端部に対し、前記配線取出し部の所定箇所の高さを合わせることにより、前記モータを前記特定の姿勢に設定可能とされている。
【0020】
このような構成によれば、前記リブの端部を目印として認識し易く、この位置に対し、モータの配線取出し部を位置合わせする作業は容易である。また、そのような位置合わせ作業を行なう際には、モータが前記リブに当接するなどの虞もあるが、前記リブは強度が高い部位とし、容易に破損しないようにすることもできる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記延焼防止用カバーは、前記リブの前記端部よりも下方に延びている。
【0022】
このような構成によれば、延焼防止用カバーを、モータの配線取出し部よりも下方に延びるサイズとすることにより、延焼防止効果をより高めることが可能である。
【0023】
本発明において、好ましくは、前記モータの延焼防止対象領域には、金属箔テープ上にガラスクロスが積層して接着されたラミネートテープが貼付されている。
【0024】
このような構成によれば、モータの延焼防止対象領域からの発火を、前記ラミネートテープによって効果的に抑制することが可能である。前記ラミネートテープは、金属箔テープ上にガラスクロスが積層して接着されているため、金属箔テープがもつ優れた難燃性(不燃性)を有するとともに、ガラスクロスがもつ柔軟性、取り扱い容易性をも有することとなる。金属箔テープは、難燃性(不燃性)に優れるものの、それ単独では、取り扱い時に破れ易く、また作業者が指に怪我を負い易い。これに対し、ガラスクロステープを積層して接着させれば、そのような虞が解消する。したがって、テープ貼付作業の効率化、仕上げ品質の向上を図ることができる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る浴室暖房乾燥装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】
図1および
図2に示す浴室暖房乾燥装置の要部概略斜視図である。
【
図5】(a)は、
図3の矢視Vaの側面図であり、(b)は、(a)の一部破断側面断面図である。
【
図8】(a)は、延焼防止用カバーの斜視図であり、(b)は、(a)の延焼防止用カバーを上下反転させた状態の斜視図である。
【
図9】(a)は、
図3および
図4に示すモータの斜視図であり、(b)は、(a)のモータにラミネートテープを貼付する前の状態の斜視図である。
【
図10】(a)は、
図9のX-X要部断面図であり、(b)は、(a)に示すラミネートテープをモータに貼付する場合の一例を示す要部断面図である。
【
図11】(a),(b)は、対比例1,2をそれぞれ示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0028】
図1および
図2に示す浴室暖房乾燥装置Aは、下部開口状の本体ケース1内に、ファン2(羽根車)、このファン2を回転駆動させるためのモータM(ファンモータ)、空気加熱手段としての熱交換器3(
図2のみに示す)、および延焼防止用カバー4が組み込まれた構成である。
【0029】
本実施形態の浴室暖房乾燥装置Aは、後述するように、モータMおよび延焼防止用カバー4に関する構成に特徴がある。浴室暖房乾燥装置Aの全体の基本的な構成自体は、既知のものと同様であるため、この点については簡単に説明する。
すなわち、浴室暖房乾燥装置Aは、
図2に示すように、浴室の天井パネル90上に取付けられて使用される。ファン2がモータMにより回転されると、浴室の空気は、吸い込み口91から本体ケース1内に吸い込まれて熱交換器3を通過して加熱される。この加熱された空気は、ファン2を通過して吹き出し口92から浴室に戻される。熱交換器3は、たとえば給湯器から供給される湯水を利用して空気を加熱可能なものである。
本体ケース1の側壁部10には、開口部11が形成されているが、この開口部11に対応する箇所には、換気用送風機95が別途取付けられる。この換気用送風機95の運転により、浴室の空気を外部に排気し、浴室換気を行なうことが可能である。
【0030】
図3および
図4に示すように、ファン2は、たとえばクロスフロータイプであり、支持部材5に支持されて、本体ケース1内において水平方向に延びた姿勢に設定される。ファン2には、モータMの出力軸66が連結される(
図6,
図7を参照)。図示説明は省略するが、支持部材5は、本体ケース1にたとえばビス止め手段を用いて組み付けられている。この支持部材5は、ファン2の両端部を回転可能に支持するための一対の支持壁部50a,50bに加え、ファン2用の送風路を形成する壁部51、ならびにモータMの保持用のブラケット部52も備えている。このブラケット部52は、たとえば支持壁部50aに連設された枠状であり、このブラケット部52には、後述するように、延焼防止用カバー4も取付けられる。
【0031】
モータMは、それ自体は従来既知のものであり、
図9(b)によく表れているように、全体が略円盤状をなすモータケース6内に、不図示のロータ、ステータ、軸受などが収容され、かつモータケース6の略円筒状の周壁部60に、リード線としての配線Cがモータケース6の内側から外側に引き出されている配線取出し部61が設けられている。
【0032】
モータケース6の周壁部60のうち、配線取出し部61の周辺部は、本発明でいう延焼防止対象領域の一例に相当し、モータMの各部のうち、発熱・発火を生じ易い部位である
。これに対し、本実施形態においては、
図9(a)によく表れているように、前記した部位にラミネートテープ7(網点模様の部分であり、他の図においても網点模様を適宜付している)が貼付されている。
【0033】
図10(a)に示すように、ラミネートテープ7は、アルミテープ70上に、アルミガラスクロス71が積層して接着されたテープである。アルミテープ70、およびアルミガラスクロス71は、本発明でいう金属箔テープ、およびガラスクロスの具体例にそれぞれ相当する。このラミネートテープ7は、モータケース6に貼付する前の段階で、アルミテープ70とアルミガラスクロス71とが積層して接着され、かつアルミテープ70は、剥離紙(不図示)によって覆われた粘着剤層72を備えた仕様とされている。したがって、
図10(b)に示すように、モータケース6ヘの貼付作業においては、アルミテープ70とアルミガラスクロス71とを同時に貼付することが可能である。
本実施形態においては、配線取出し部61の周辺部にラミネートテープ7が貼付されているが、これに代えて、または加えて、モータMの他の部位にラミネートテープ7を貼付してもよい。
【0034】
モータMは、横置きの態様であり、かつ
図5(b)によく表れているように、配線取出し部61がモータケース6の左右横幅方向の一端部(
図5(b)の右端部)に位置して略水平を向く特定の姿勢とされている。
ここで、「横置きの態様」とは、モータケース6の中心軸(
図3,
図4,および
図9に示す中心軸CL)が上下高さ方向(鉛直方向)に対して交差する方向に延びる態様である。本実施形態では、モータMの中心軸CLは、水平方向に延びる態様に設定されている。
図示説明は省略するが、モータMは、中心軸CL周りに回転して配線取出し部61の位置がズレを生じないように、回転止め状態に固定されている。この固定手段としては、たとえばモータケース6の両側面部に突設されている凸状段部67,68(
図6,
図7参照)の少なくとも一方を、ブラケット部52と本体ケース1との両者により、あるいはこれらとは異なる部材により回転不能な状態にクランプする手段を採用することができる。
【0035】
延焼防止用カバー4は、たとえば難燃性を有する樹脂製であり、
図8に示すように、前壁部4a、左右両側壁部4b,4c、上壁部4d、リブ40、および一対の取付け片部41a,41bを備えている。その難燃性グレードは、たとえばUL94規格の5VAである。
ここで、難燃性とは、「課題を解決するための手段」の欄において、既に述べたように、火炎に対して抵抗性を示し、発火までの時間を遅延させたり、あるいは燃焼量や燃焼速度を抑制し得ればよく、必ずしも特定の規格に適合することを意味せず、また不燃性の概念も含む。
前壁部4aおよび両側壁部4b,4cは、上下高さ方向に起立して延びる平板状であり、これらは平面断面視コ字状に繋がっている。上壁部4dは、前壁部4aおよび両側壁部4b,4cによって囲まれた空間部の上方を塞ぐようにそれら前壁部4aおよび両側壁部4b,4cの上端部に繋がった板状である。
【0036】
図5~
図7に示すように、延焼防止用カバー4は、モータMの横に起立し、かつ配線取出し部61を覆うように、支持部材5のブラケット部52に取付けられている。この取付けは、取付け片部41a,41bに挿通するビス98を用いたビス止め手段により図られている。延焼防止用カバー4は、その前壁部4aが、モータMの配線取出し部61の前方に比較的接近した配置にあり、かつ左右両側壁部4b,4cが、配線取出し部61およびその付近の左右両側に位置するように設けられている。また、上壁部4dは、配線取出し部61およびその付近の上方に位置するように設けられている。
延焼防止用カバー4は、下部に開口部49が形成されており、配線Cは、その開口部49を介して延焼防止用カバー4の内側から外側に引き出されている。
【0037】
リブ40は、延焼防止用カバー4の内面部に一体的に設けられ、たとえば断面L字状の形態で上下高さ方向に一様に延びている。このリブ40は、モータMを前記した特定の姿勢に設定するための位置合わせ用の目印の具体例に相当する。より具体的には、リブ40の下端部40aの高さHaに、モータMの配線取出し部61の特定の部位(たとえば下端部61b)の高さHbを合わせると、モータMが前記特定の姿勢となるように設定されている。また、本体ケース1への各部材の組み付けは、本体ケース1を上下逆さまにした状態でその上側から行なわれる。
延焼防止用カバー4は、リブ40の下端部40aよりも適当な寸法Laだけ下方に延びたサイズに形成されている。これは、延焼防止用カバー4のサイズを大きくし、配線取出し部61から発生した火炎をより確実に遮る上で好ましい。
【0038】
次に、前記した浴室暖房乾燥装置Aの作用について説明する。
【0039】
ファン2用のモータMは、横置きの態様であり、かつ
図5~
図7などを参照して説明したとおり、配線取出し部61がモータケース6の左右横幅方向の一端部に位置して略水平方向を向く姿勢とされている。このため、仮に、配線取出し部61において発火が生じたとしても、火炎は、モータケース6には多く接しない状態で、主に配線取出し部61の前方および上方に拡がるシンプルな形状となる。これに対し、延焼防止用カバー4は、難燃性を有し、かつ配線取出し部61を覆っており、前記した火炎を適切に遮る。このため、延焼防止を図ることが可能である。
【0040】
本実施形態とは異なり、たとえば
図11(a)に示すように、配線取出し部61が、モータケース6の下部近辺にある場合には、上方に立ち上がろうとする火炎はモータケース6に当たりシンプルな形状とはならない。このような火炎の全体を延焼防止用カバーを利用して遮ることは難しい。また、
図11(b)に示すように、配線取出し部61が、モータケース6の上部近辺にある場合には、火炎がモータケース6に多く当たらないようにし得るものの、モータケース6の上方に延焼防止用カバー4’を設置する必要が生じ、そのための構造は複雑となる。これに対し、本実施形態によれば、前記したような不具合を回避することが可能であり、延焼防止用カバー4は、モータMに接近して上下高さ方向に起立した姿勢に設ければよく、その取付けも容易である。
【0041】
延焼防止用カバー4には、モータMを前記特定の姿勢に設定するための目印となるリブ40を設けているため、モータMを特定の姿勢に設定する作業の容易化・迅速化を図ることも可能である。リブ40が、断面L字状に形成されているため、このリブ40の強度を高くすることができ、たとえばモータMの取付け作業時に、配線取出し部61がリブ40に当接したとしても、リブ40が容易に破損するといったことはない。また、リブ40が断面L字状であれば、リブ40の端面の面積を大きくとることができるため、この端面をモータMの組み付け作業者が見易くなる利点も得られる。リブ40は、延焼防止用カバー4に一体成形されているため、延焼防止用カバー4に目印を設けるための手段として、塗料を塗布したり、あるいはテープを貼付するといった必要はなく、便利である。
【0042】
モータMの延焼防止対象領域に相当する配線取出し部61の周辺部には、既述したように、ラミネートテープ7が貼付されている。ラミネートテープ7は、アルミテープ70上にアルミガラスクロス71が積層して接着された構成であるため、アルミテープ70がもつ優れた難燃性(不燃性)を有するとともに、アルミガラスクロス71がもつ柔軟性、取り扱い容易性をも有する。アルミテープ70は、それ単独では、取り扱い時に破れ易いとった不利があるが、ガラスクロステープ71を積層して接着させれば、そのような虞は解消する。
【0043】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴室暖房乾燥装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0044】
ファンは、クロスフロータイプのものに限定されず、たとえばシロッコファンタイプなど、他の種類・形態のものとすることができる。また、ファンは、いわゆる循環ファンと、換気ファンのいずれであってもよい。モータは、ファンを駆動させるモータであって、本発明が意図する横置きの態様であれば、その具体的な種類(駆動・制御方式など)は問わない。モータは、配線取出し部が前記モータケースの左右横幅方向の一端部に位置して略水平方向を向く特定の姿勢とされるが、その具体的な取付け手段や取付け位置などは限定されない。
【0045】
延焼防止用カバーは、難燃性を有し、かつモータの配線取出し部を覆う部材であればよく、上述の実施形態の延焼防止用カバーとは相違した形状、サイズ、材質とすることができる。延焼防止用カバーを、金属製とすることもできる。
モータを特定の姿勢に設定するのに利用される目印は、延焼防止用カバーに設けられた断面L字状のリブとは異なる構成とすることができる。リブとして構成する場合、その断面形状は、L字とは別の形状、たとえばT字状、あるいは単なる矩形状などとすることが可能である。また、リブ以外の立体形状、たとえば単なる突起状、あるいは目盛り線のような形態のものとすることもできる。さらに、目印は、延焼防止用カバーに一体的に設けることが好ましいものの、これに限らない。たとえば、延焼防止用カバーの所定部位に、難燃性の塗料を塗布したり、あるいは難燃性のテープを貼るなどして、これらの部位を、モータを特定の姿勢にするための目印とすることもできる。
【0046】
上述の実施形態においては、ラミネートテープが、アルミテープ上にアルミガラスクロスが積層して接着されたテープとして構成されているが、これに限定されない。本発明でいうラミネートテープは、アルミテープ以外の金属箔テープ上に、アルミガラスクロスとは別のガラスクロスが接着して積層された構成とすることもできる。
【0047】
浴室暖房乾燥装置は、浴室を暖房し、乾燥させる機能を備えた装置であり、浴室の空気を加熱するための手段としては、たとえば温水式の熱交換器とは異なる加熱手段を用いることもできる。
【符号の説明】
【0048】
A 浴室暖房乾燥装置
C 配線(モータの)
M モータ
2 ファン
4 延焼防止用カバー
4a 前壁部(延焼防止用カバーの)
4b,4c 側壁部(延焼防止用カバーの)
4d 上壁部(延焼防止用カバーの)
40 リブ(目印)
49 開口部
6 モータケース
60 周壁部
61 配線取出し部
7 ラミネートテープ
70 アルミテープ(金属箔テープ)
71 アルミガラスクロス(ガラスクロス)