(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147076
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】メタン発酵システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20220929BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20220929BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B09B3/00 C ZAB
B09B3/00 A
C02F11/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048178
(22)【出願日】2021-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】ハルディ フラビアヌス
(72)【発明者】
【氏名】水谷 洋
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA03
4D004AC04
4D004BA03
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA18
4D004CA19
4D004CB04
4D004CB13
4D004CB44
4D004CB46
4D004CC03
4D004DA01
4D004DA02
4D059AA01
4D059AA07
4D059BA15
4D059BA17
4D059BA21
4D059BE08
4D059BE16
4D059BE26
4D059BE37
4D059BE49
4D059BE53
4D059BK11
4D059BK12
4D059BK17
4D059CA22
4D059CA28
(57)【要約】
【課題】有機物含有廃棄物に含まれる内容物の比率によらず、メタンガスの生成効率、発酵残渣の処理効率、処分効率を改善でき、運転コストを削減できるメタン発酵システムを提供する。
【解決手段】開示のメタン発酵システム1は、前処理装置21と、メタン発酵装置24と、脱水機26と、第一ポンプ23と、第二ポンプ25と、し尿貯留槽31と、所定流量のし尿を二方向に分岐させ、分岐した一方のし尿を第一ポンプ23の上流で発酵適物に供給し、分岐した他方のし尿をメタン発酵装置24の下流、かつ、脱水機26の上流で発酵残渣に供給するし尿供給装置40とを有する。し尿供給装置40は、第一ポンプ23のトルクT
1が第一閾値T
TH1以上の場合は一方のし尿の流量を増加させ、第一ポンプ23のトルクT
1が第一閾値T
TH1未満の場合は一方のし尿の流量を減少させて、一方のし尿と他方のし尿の各々の流量を相補的に変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有廃棄物から発酵不適物を除去し、発酵適物の性状を整える前処理装置と、
前記発酵適物をメタン発酵してメタンガスを生成し、かつ、発酵残渣を排出するメタン発酵装置と、
前記発酵残渣を脱水して濾液と残余物とに分離する脱水機と、
前記前処理装置から前記メタン発酵装置へ前記発酵適物を移送する第一ポンプと、
前記メタン発酵装置から前記脱水機へ前記発酵残渣を移送する第二ポンプと、
し尿を貯留した貯留槽と、
所定流量の前記し尿を二方向に分岐させ、前記分岐した一方のし尿を前記第一ポンプの上流で前記発酵適物に供給し、前記分岐した他方のし尿を前記メタン発酵装置の下流、かつ、前記脱水機の上流で前記発酵残渣に供給するし尿供給装置と
を有し、
前記し尿供給装置は、前記第一ポンプのトルクが第一閾値以上の場合は前記一方のし尿の流量を増加させ、前記第一ポンプのトルクが前記第一閾値未満の場合は前記一方のし尿の流量を減少させて、前記一方のし尿と前記他方のし尿の各々の流量を相補的に変更するメタン発酵システム。
【請求項2】
前記メタン発酵装置が、湿式メタン発酵装置である場合は、前記濾液の一部を前記メタン発酵装置へ返送する濾液返送配管をさらに備え、
前記メタン発酵装置が、乾式メタン発酵装置である場合は、前記発酵残渣の一部を前記メタン発酵装置へ循環する発酵残渣循環配管をさらに備え、あるいは、前記発酵残渣循環配管と前記濾液返送配管とをさらに備える請求項1に記載のメタン発酵システム。
【請求項3】
前記し尿供給装置は、
一端が前記貯留槽に接続された第一配管と、
前記第一配管の他端に一端が接続され、他端から前記一方のし尿を供給する第二配管と、
前記第一配管の他端に一端が接続され、他端から前記他方のし尿を供給する第三配管と、
前記第二配管に配置された第一弁と
を備え、
前記第一ポンプのトルクが前記第一閾値以上の場合に、前記第一弁を開くことで前記一方のし尿の流量を増加させ、前記第一ポンプのトルクが前記第一閾値未満の場合に、前記第一弁を閉じることで前記一方のし尿の流量を減少させる請求項2に記載のメタン発酵システム。
【請求項4】
前記第二ポンプと前記脱水機との間に配置され、前記第二ポンプのトルクが第二閾値未満の場合は前記発酵残渣を前記脱水機へ移送し、前記第二ポンプのトルクが前記第二閾値以上の場合は前記発酵残渣をごみ貯留槽へ移送する切替装置をさらに有し、
前記し尿供給装置は、
一端が前記第三配管に接続され、他端が前記脱水機の下流に接続された第四配管と、
前記第三配管において、前記第四配管の接続点より下流に配置された第二弁と、
前記第四配管に配置された第三弁と
をさらに備え、
前記第二ポンプのトルクが前記第二閾値未満の場合に、前記第二弁を全開し、かつ、前記第三弁を全閉し、前記第二ポンプのトルクが前記第二閾値以上の場合に、前記第二弁を全閉し、かつ、前記第三弁を全開する請求項3に記載のメタン発酵システム。
【請求項5】
前記第一ポンプ並びに前記第二ポンプのそれぞれのトルクの大小は、各々を駆動する電流値の大小で判定する請求項4に記載のメタン発酵システム。
【請求項6】
ごみ焼却施設が備えるごみピットと、
水処理施設が備える生物処理槽と、
前記し尿供給装置及び前記切替装置を制御する制御装置と
をさらに有し、
前記残余物が移送される前記ごみピットは、前記ごみ貯留槽であり、
前記濾液は前記生物処理槽で処理され、
前記制御装置は、前記第一ポンプのトルク並びに前記第二ポンプのトルクに対応して、前記第一弁、前記第二弁、前記第三弁、及び前記切替装置を制御する請求項4または請求項5のいずれか一項に記載のメタン発酵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有廃棄物からメタンガスを生成するメタン発酵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭から排出される厨芥(生ゴミ)、紙ごみ、草木といった木質系廃棄物、家畜糞尿、汚泥などの有機物含有廃棄物(原料)をメタン発酵させて、メタンガスを生成する技術が知られている。メタンの発酵方式は、原料の固形分濃度に応じて乾式と湿式とに分類される。乾式では原料の発酵槽内濃度が比較的高く調整され、湿式では比較的低く調整される。また、乾式では比較的高温で活性化するメタン生成菌が使用されるのに対し、湿式では乾式よりもやや低温で活性化するメタン生成菌が使用される。いずれの発酵方式においても、原料の性状に応じてメタン発酵装置に水が供給され、各々の方式に適した水分量に調整される(特許文献1、2参照)。また、このような水分供給に際し、メタン発酵装置に原料を移送するためのポンプの駆動電流値から原料の流動化状態を検知して、水の供給量を調整する技術も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-212860号公報
【特許文献2】特開2019-130486号公報
【特許文献3】特開2018-167258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタン発酵装置で効率よくメタン発酵を行うためには、メタン発酵装置に投入される原料中の有機物由来の窒素量が約1000~約3000mg/Lであることが望ましいとされている。一方、メタン発酵装置に投入される原料には多種多様な廃棄物が含まれ、廃棄物に含まれる内容物の比率が必ずしも一定ではないため、当該比率に応じて窒素量が変動してしまい、良好なメタン発酵効率が得られない場合がある。例えば、原料全体に占める紙ごみの割合が大きい場合には、原料中の炭素量が増加するとともに窒素量が減少し、メタン発酵効率が低下する。
【0005】
また、メタン発酵装置では、発酵効率を向上させるべく原料に水を供給して水分量を調整することがある。一方、メタンガスを生成した後に生じる残物である発酵残渣は、脱水機で脱水された後に水処理施設などへ移送されて生物処理される。この生物処理の負荷を低減するには、脱水助剤を供給して脱水機による脱水を効果的に行うのが望ましく、このため、システムの運転費用が増加してしまう。
【0006】
したがって、運転コストを安価にしつつも、効率よくメタン発酵並びにメタン発酵で生じる発酵残渣の処理または処分を行うシステムが求められていた。
本発明は、上記のような課題に鑑み案出されたものであって、有機物含有廃棄物に含まれる内容物の比率によらず、メタンガスの生成効率、発酵残渣の処理効率、処分効率を改善でき、運転コストを削減できるメタン発酵システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のメタン発酵システムは、有機物含有廃棄物から発酵不適物を除去し、発酵適物の性状を整える前処理装置と、前記発酵適物をメタン発酵してメタンガスを生成し、かつ、発酵残渣を排出するメタン発酵装置と、前記発酵残渣を脱水して濾液と残余物とに分離する脱水機と、前記前処理装置から前記メタン発酵装置へ前記発酵適物を移送する第一ポンプと、前記メタン発酵装置から前記脱水機へ前記発酵残渣を移送する第二ポンプと、し尿(屎尿)を貯留した貯留槽と、所定流量の前記し尿を二方向に分岐させ、前記分岐した一方のし尿を前記第一ポンプの上流で前記発酵適物に供給し、前記分岐した他方のし尿を前記メタン発酵装置の下流、かつ、前記脱水機の上流で前記発酵残渣に供給するし尿供給装置とを有する。前記し尿供給装置は、前記第一ポンプのトルクが第一閾値以上の場合は前記一方のし尿の流量を増加させ、前記第一ポンプのトルクが前記第一閾値未満の場合は前記一方のし尿の流量を減少させて、前記一方のし尿と前記他方のし尿の各々の流量を相補的に変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のメタン発酵システムによれば、第一ポンプのトルクが高い場合(例えば、紙ごみの比率が高い場合)に、メタン発酵装置の上流側に供給されるし尿が増加し、水分及び窒素分が供給される。また、脱水機の上流側にも、脱水助剤として作用するし尿が供給される。これにより、メタンガスの生成効率及び発酵残渣の脱水効率を改善できる。さらに、水や一般的な脱水助剤の代わりに廃棄対象のし尿を使用することで、運転コストを削減できる。このように、有機物含有廃棄物に含まれる内容物の比率によらず、メタンガスの生成効率、発酵残渣の処理効率、処分効率を改善でき、運転コストを削減できるメタン発酵システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係るメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図2】(A)、(B)はトルクと流量割合との関係を例示するグラフである。
【
図3】制御装置で実施される制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図4】第一変形例に係るメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図5】第二変形例に係るメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図6】(A)、(B)はトルクと流量割合との関係を例示するグラフである。
【
図7】制御装置で実施される制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図7を参照して、実施例及び変形例に係るメタン発酵システムについて説明する。以下に示す実施例及び変形例はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、以下の各構成は、本発明に必須の構成を除き、必要に応じて取捨選択でき、あるいは公知の構成と組み合わせ可能である。
【0011】
[1.実施例]
(1)構成
図1は、実施例としてのメタン発酵システム1の構造を説明するための模式図である。
図1に示すメタン発酵システム1は、ごみ焼却施設10と、バイオガスプラント20と、水処理施設30と、し尿供給装置40とを有する。
【0012】
ごみ焼却施設10は廃棄物を焼却するための施設であり、ごみピット11(ごみ貯留槽)及びコンベヤ12のほか、図示しない焼却炉を有する。
ごみピット11は、焼却炉で焼却される廃棄物を一時的に貯留するための貯留槽である。ごみピット11内の廃棄物は、例えばクレーンで撹拌・混合された後、定量供給装置で自動的に一定量ずつ焼却炉へと移送される。本実施例では、有機物を含有する廃棄物がごみピット11に貯留され、その廃棄物の少なくとも一部がバイオガスプラント20へ移送される。
また、コンベヤ12は、バイオガスプラント20で生じた残余物や水処理施設30で生じたし渣(屎渣)をごみピット11へ搬送するための移送装置である。ここでは、移送装置の一例としてコンベヤ12を用いて説明しているが、コンベヤ12の代わりに、自動車など他の移送装置を用いてもよい。
【0013】
バイオガスプラント20は、微生物の働きを利用して有機物含有廃棄物を発酵させ、バイオガス(例えば、メタンガスや二酸化炭素など)を生成する設備である。メタン発酵のプロセスは、複数の段階からなる。最初の段階では、加水分解菌の作用により、高分子有機物(例えば、炭水化物、タンパク質、脂質)が加水分解され、低分子の有機物(例えば、単糖類、アミノ酸、高級脂肪酸)が生成される。次に、酸生成細菌の作用により、低級アルコールや低級脂肪酸などが生成される。また、水素生成細菌の作用により、酢酸、ギ酸、水素などが生成される。その後、メタン生成菌群の作用によりメタンが生成される。
【0014】
図1に示すバイオガスプラント20は、前処理装置21と、ホッパ22と、第一ポンプ23と、メタン発酵装置24と、第二ポンプ25と、脱水機26とを有する。
前処理装置21は、原料である有機物含有廃棄物から発酵不適物を除去し、発酵適物の性状を整える前処理を実施する装置である。
図1に示す前処理装置21に導入される原料は、ごみピット11から移送される。前処理装置21では、例えば、原料が粗破砕機や微破砕機で破砕されるとともに、原料中に含まれる不純物が選別機によって除去される。前処理装置21には、例えば、回転破砕機、回転選別機、ブレード破砕選別機、圧縮選別機、粉砕選別機、混合調整機、蒸気加圧機といった複数の機器が含まれうる。
【0015】
また、必要に応じて原料に可溶化処理が施されてスラリー化(可溶化)される。可溶化処理においては、例えば、希釈水や工業用水、消化液などが添加される。これらの前処理により、原料の性状が適正化され、バイオガスプラント20でのバイオガスの生成効率が向上する。メタン発酵装置24での発酵方式が乾式である場合、投入固形物濃度(TS)は、約15~60%程度の範囲内で調整される。また、発酵方式が湿式である場合、投入固形物濃度は、約10~20%に調整される。
【0016】
前処理装置21で前処理が施された原料は、ホッパ22の内部に投入された後、第一ポンプ23によってメタン発酵装置24へと移送される。
ホッパ22では、後述するし尿貯留槽31に貯留されたし尿の一部が原料に混合される。
第一ポンプ23は、ホッパ22の内部の発酵適物をメタン発酵装置24へ移送する圧送装置である。メタン発酵装置24での発酵方式が乾式である場合、例えば、ピストンポンプなどの粘性の高い物質を移送する高圧力型のポンプが第一ポンプ23として用いられる。また、発酵方式が湿式である場合、例えば、一軸ネジポンプなどの比較的粘性の低い物質を移送する低圧力型のポンプが第一ポンプ23として用いられる。
【0017】
メタン発酵装置24は、発酵適物をメタン発酵してメタンガスを生成し、発酵残渣を排出する装置である。発酵方式の種類は不問であり、乾式でもよいし湿式でもよい。メタン発酵装置24の内部では、微生物の働きによりメタンガスを含むバイオガスが生成される。バイオガスは、例えば、図示しない脱硫装置で脱硫された後に、ガスタンクやガス利用施設(例えば、発電プラントや都市ガス生成施設)などに送給される。一方、メタン発酵装置24の内部に残留する発酵残渣は、第二ポンプ25によって脱水機26へと移送される。なお、メタン発酵装置24での発酵方式が乾式である場合、例えば、ピストンポンプなどの高圧力型のポンプが第二ポンプ25として用いられる。また、発酵方式が湿式である場合、例えば、一軸ネジポンプなどの低圧力型のポンプが第二ポンプ25として用いられる。
【0018】
脱水機26は、発酵残渣を脱水して濾液と残余物(脱水汚泥)とに分離する装置である。脱水機26には、例えば、遠心脱水機、ベルトプレス型脱水機、スクリュープレス型脱水機、フィルタプレス型脱水機といった複数の機器が含まれうる。ここで分離された濾液は、水処理施設30へと移送されて除渣装置32に導入される。また、脱水機26で分離された残余物は、コンベヤ12でごみピット11へと搬送される。
【0019】
水処理施設30は、し尿や浄化槽汚泥などを処理する施設であり、し尿貯留槽31と、除渣装置32と、生物処理槽33とを有する。
し尿貯留槽31は、し尿収集車両によって搬入されたし尿や浄化槽汚泥などが投入される水槽である。し尿貯留槽31に貯留されているし尿のC/N比は約3~5である。し尿貯留槽31に貯留されたし尿は、し尿処理用配管34を介して除渣装置32へと供給される。本実施例では、し尿貯留槽31に貯留されたし尿の一部がし尿供給装置40にも供給され、バイオガスプラント20に導入される。し尿供給装置40に供給されるし尿には、水分や窒素分が含まれているほか、脱水助剤として機能する繊維分も含まれている。
【0020】
除渣装置32は、し尿に含まれるし渣が除去された被処理液を生成する装置である。除渣装置32には、例えば、ドラムスクリーン装置や遠心分離装置といった複数の機器が含まれうる。し尿から除去されたし渣は、コンベヤ12でごみピット11へと搬送される。また、し尿からし渣を除去した後に残る被処理液は、生物処理槽33へと移送される。
【0021】
生物処理槽33は、被処理液に生物処理を施して浄化するための槽である。生物処理槽33には、例えば、調整槽、硝化槽、脱窒素槽、滅菌槽といった複数の槽が含まれうる。調整槽は、被処理液に無機凝集剤(鉄系凝集剤など)や有機炭素源としての薬剤を添加して、その成分を調整する槽である。また、硝化槽は、好気性硝化細菌群の作用により、被処理液中のアンモニアを硝化する槽であり、脱窒素槽は、嫌気性脱窒細菌群の作用により、被処理液を脱窒する槽であり、滅菌槽は、滅菌処理を施すための槽である。生物処理槽33で、これらの各種生物処理を施された後の被処理液は、水処理施設30の外部へと放流される。
【0022】
し尿供給装置40は、し尿貯留槽31に貯留されたし尿の一部をバイオガスプラント20に供給する装置である。ここでは、し尿貯留槽31から導入されたし尿が少なくとも二方向に分岐するように流路が形成される。一方の流路のし尿は、第一ポンプ23の上流で発酵適物に供給され、発酵適物に水分や窒素分を補充するように作用する。また、他方の流路のし尿は、メタン発酵装置24の下流、かつ、脱水機26の上流で発酵残渣に供給され、発酵残渣の脱水効率を向上させるように作用する。
【0023】
し尿供給装置40は、第一配管41と、第二配管42と、第三配管43と、総流量調節弁44と、第一弁45と、制御装置46とを有する。
第一配管41は、し尿貯留槽31に一端(上流端)が接続された管路である。第一配管41の他端(下流端)は、例えば、三方継手を介して第二配管42及び第三配管43の双方に接続される。これにより、二手に分岐する管路が形成される。
第二配管42は、第一配管41から導入されるし尿を第一ポンプ23の上流側に供給するための管路である。第二配管42の一端(上流端)は、第一配管41の他端に接続される。また、第二配管42の他端(下流端)は、ホッパ22の上方に配置される。これにより、第二配管42の他端から流出するし尿は、ホッパ22の内部で発酵適物と混合される。
【0024】
第三配管43は、第一配管41から導入されるし尿をメタン発酵装置24の下流側であって脱水機26の上流側に供給するための管路である。第三配管43の一端(上流端)は、第一配管41の他端に接続される。また、第三配管43の他端(下流端)は、第二ポンプ25と脱水機26とを繋ぐ管路に接続される。これにより、第三配管43の他端から流出するし尿は、脱水機26の上流側で発酵残渣と混合される。
【0025】
総流量調節弁44は、し尿貯留槽31から導入されるし尿の総流量を制御するための弁であり、第一配管41の中途に介装される。総流量調節弁44の開閉状態や開度は、総流量調節弁44が手動弁である場合は作業員の手動操作によって変更され、電磁制御弁である場合は制御装置46によって電気的に自動制御される。
また、第一弁45は、第一ポンプ23の上流側に供給されるし尿の流量を制御するための電磁制御弁であり、第二配管42の中途に介装される。第一弁45の開閉状態や開度は、制御装置46によって電気的に制御される。
【0026】
ここで、第一弁45よりも下流側の管路を流路Aと呼び、第三配管43の管路を流路Bと呼ぶ。流路Aの流量と流路Bの流量との和は、総流量調節弁44を通過するし尿の流量に等しい。また、総流量調節弁44の開閉状態や開度が固定された状態において、第一弁45の開度を絞るにつれて流路Aの流量が減少し、その減少分だけ流路Bの流量が増加する。反対に、第一弁45の開度を開くにつれて流路Aの流量が増加し、その増加分だけ流路Bの流量が減少する。このように、流路A及び流路Bの各々の流量は、第一弁45の開度変化に対して相補的に変化する。なお、流路A及び流路Bの流量割合を適正化すべく、第二配管42及び第三配管43の流路断面積をあらかじめ相違させておいてもよいし、適宜の位置に絞り(オリフィス)を設けて、し尿の流れやすさを相違させておいてもよい。
【0027】
制御装置46は、少なくとも第一弁45の開閉状態を制御する電子制御装置(コンピュータ)である。制御装置46には、プロセッサとメモリとが搭載される。プロセッサには、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などのマイクロプロセッサが含まれ、メモリには、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリなどが含まれる。制御装置46で実施される制御の内容は、ファームウェアやアプリケーションプログラムとしてメモリに記録・保存される。また、プログラムの実行時には、プログラムの内容がメモリ空間内に展開され、プロセッサに読み込まれて実行される。
【0028】
(2)制御
制御装置46は、第一ポンプ23のトルクT1に応じて第一弁45の開閉状態を制御する機能を持つ。トルクT1の大きさは、例えば、第一ポンプ23を駆動するための電流値(駆動用モータの電流値)に基づいて推定してもよいし、駆動電力(電流値及び電圧値)に基づいて推定してもよい。あるいは、第一ポンプ23の内部圧力や吐出圧に基づいて推定してもよい。
トルクT1の値は、例えば、第一ポンプ23によって圧送される発酵適物中に紙ごみが多く発酵適物中の水分量が低い場合に上昇する。反対に、発酵適物中に紙ごみが少なく水分量が高い場合には、トルクT1が低下する。
【0029】
ここで、トルクT1が第一閾値TTH1以上である場合、制御装置46は、トルクT1が第一閾値TTH1未満である場合と比較して流路Aの流量が増加するように(流路Bの流量が減少するように)第一弁45の開閉状態を制御する。言い換えると、トルクT1が第一閾値TTH1未満である場合には、トルクT1が第一閾値TTH1以上である場合と比較して流路Aの流量が減少するように(流路Bの流量が増加するように)、第一弁45の開閉状態が制御される。
【0030】
図2(A)は、流路A及び流路Bを流れるし尿の割合(百分率)と第一ポンプ23のトルクT
1との関係を例示するグラフである。ここでは、トルクT
1が第一閾値T
TH1以上であるときに流路Aを流れるし尿の割合をR
A1とし、トルクT
1が第一閾値T
TH1未満であるときに流路Aを流れるし尿の割合をR
A2として、0%≦R
A2<R
A1<100%の関係が成立している。
【0031】
また、トルクT1が第一閾値TTH1以上であるときに流路Bを流れるし尿の割合をRB1とし、トルクT1が第一閾値TTH1未満であるときに流路Bを流れるし尿の割合をRB2として、0%<RB1<RB2≦100%の関係が成立している。なお、流路A及び流路Bの各々の流量は相補的に変化するため、RA1+RB1=RA2+RB2=100である。例えば、割合RA1が70%であるとき、割合RB1は30%となる。また、割合RA2が10%であるとき、割合RB2は90%となる。
【0032】
トルクT
1が第一閾値T
TH1以上であるときの流路Bの割合R
B1は、0%にしないことが好ましい。これにより、トルクT
1の大小に依存することなく常にし尿がメタン発酵装置24の下流側に供給され、し尿の脱水助剤としての機能が確保される。また、トルクT
1が第一閾値T
TH1未満であるときの流路Aの割合R
A1は、
図2(B)に示すように0%にしてもよい。つまり、トルクT
1が第一閾値T
TH1未満であるときの流路Bの割合R
B2は100%にしてもよい。これにより、総流量調節弁44を通過したし尿の全量が脱水機26の上流側に供給され、し尿の脱水助剤としての機能が十分に発揮される。
【0033】
具体的な数値を例示すると、ホッパ22内の発酵適物(原料)10トン中の内訳が、紙ごみ9トン、厨芥1トンである場合、有機物由来の窒素量は約500mg/Lである。一方、メタン発酵装置24で効果的にメタン発酵を実施するには、発酵適物中の有機物由来の窒素量が約1000~約3000mg/Lであることが好ましく、窒素量が約2000mg/Lのし尿を少なくとも5トン用意すれば、窒素量が確保される。したがって、5トンのし尿が流路Aからホッパ22内へと導入されるように、第一弁45の開閉状態を制御すればよい。
【0034】
また、ホッパ22内の発酵適物10トン中の内訳が、紙ごみ10トンである場合には、有機物由来の窒素量は約0mg/Lであり、窒素量が約2000mg/Lのし尿を少なくとも10トン用意すれば、窒素量が確保される。そこで、10トンのし尿が流路Aからホッパ22内へと導入されるように、第一弁45の開閉状態を制御すればよい。
【0035】
(3)フローチャート
図3は、制御装置46で実施される第一弁45の制御の流れを説明するためのフローチャートである。ステップA1では、第一ポンプ23のトルクT
1が算出される。トルクT
1の値は、第一ポンプ23によって圧送される発酵適物中の紙ごみが多いほど上昇する。また、発酵適物中に紙ごみが多い状態は、発酵適物中の窒素量が炭素量に比して相対的に少ない状態であるといえる。
【0036】
ステップA2では、第一ポンプ23のトルクT1が第一閾値TTH1以上であるか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップA3に進み、流路Aを流れるし尿の割合がRA1に設定される。一方、ステップA2の条件が成立しない場合にはステップA4に進み、流路Aを流れるし尿の割合がRA2に設定される。割合RA1の値は、少なくとも割合RA2よりも大きな値に設定される。また、ステップA5では、ステップA3及びA4で設定された流量割合が実現されるように、第一弁45の開度が制御される。
【0037】
上記の制御では、第一ポンプ23のトルクT1に基づいて第一弁45が制御され、流路A及び流路Bの各々を流れるし尿の割合が相補的に変更される。例えば、第一ポンプ23のトルクT1が高いときには、発酵適物中に紙ごみが多く窒素量が相対的に少ない状態であると判断されて、ホッパ22に導入されるし尿の流量が増量される。これにより、発酵適物中の窒素量が増加し、メタン発酵装置24でのメタン発酵効率が向上する。
【0038】
また、ステップA3で設定される割合RA1の値は、100%未満の値に設定される。つまり、流路Bを流れるし尿の割合が0%にならないように第一弁45が制御される。これにより、少なくとも総流量調節弁44が開放されている状態であれば、し尿が常にメタン発酵装置24の下流側の発酵残渣に供給される。ここで供給されるし尿に含まれる繊維分は、脱水機26での脱水時に脱水助剤として機能するため、他の脱水助剤を添加する必要がなく、あるいは他の脱水助剤の添加量が大幅に削減される。
【0039】
(4)効果
上記のメタン発酵システム1では、発酵適物中に紙ごみが多く、第一ポンプ23のトルクT1が第一閾値TTH1以上である場合に、比較的多量のし尿が第一ポンプ23の上流側に供給されて、水分及び窒素分が導入される。これにより、発酵適物中の水分及び窒素量をともに増加させて適正化することができ、メタン発酵装置24でのメタンガスの生成効率を改善できる。
【0040】
また、上記のメタン発酵システム1では、メタン発酵装置24の下流側であって脱水機26の上流側にも、脱水助剤として作用するし尿が供給される。これにより、脱水機26による脱水効率を改善できる。さらに、水や一般的な脱水助剤の代わりに廃棄対象のし尿を再利用することで、運転コストを削減できる。このように、有機物含有廃棄物に含まれる内容物の比率によらず、メタンガスの生成効率、発酵残渣の処理効率、処分効率を改善でき、運転コストを削減できるメタン発酵システム1を提供できる。
【0041】
[2.第一変形例]
図4は、第一変形例としてのメタン発酵システム2の構造を説明するための模式図である。上記実施例で説明した要素と同等の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
第一変形例のバイオガスプラント20は、実施例のバイオガスプラント20に発酵残渣循環配管27及び濾液返送配管28を追加したものに相当する。メタン発酵装置24での発酵方式が乾式である場合には、例えば、発酵残渣循環配管27のみが設けられ、あるいは、発酵残渣循環配管27と濾液返送配管28とが併設される。また、発酵方式が湿式である場合には、例えば、濾液返送配管28のみが設けられる。
【0043】
発酵残渣循環配管27は、メタン発酵装置24から排出される発酵残渣の一部をホッパ22へ循環させる管路である。ここでは、第三配管43を介してし尿が供給される前の発酵残渣が、ホッパ22に戻される。発酵残渣循環配管27の一端(上流端)は、第二ポンプ25と脱水機26とを繋ぐ管路のうち、第三配管43の他端が接続される位置よりも上流側(第二ポンプ25側)に接続される。また、発酵残渣循環配管27の他端(下流端)は、ホッパ22の上方に配置される。これにより、メタン菌を含む発酵残渣が、メタン発酵装置24で再利用される。したがって、このメタン発酵システム2によれば、発酵残渣を再利用しない場合と比較してメタン菌の含有量を増加させることができ、メタン発酵効率を改善できる。
【0044】
濾液返送配管28は、脱水機26から排出される濾液の一部をホッパ22へ返送する管路である。濾液返送配管28の一端(上流端)は、脱水機26と除渣装置32とを繋ぐ管路に接続される。また、濾液返送配管28の他端(下流端)は、ホッパ22の上方に配置される。なお、前処理装置21が可溶化処理用の可溶化槽を有する場合には、濾液返送配管28の他端をその可溶化槽に接続してもよい。少なくとも濾液をメタン発酵装置24よりも上流側に返送する構造にすることで、水分やアンモニアを含む濾液がメタン発酵装置24で再利用される。したがって、このメタン発酵システム2によれば、濾液を再利用しない場合と比較して水分及び窒素の含有量を増加させることができ、メタン発酵効率を改善できる。また、水処理施設30へ移送される濾液の量を削減でき、結果的に生物処理槽33における生物処理の負荷を軽減できる。
【0045】
[3.第二変形例]
(1)構成
図5は、第二変形例としてのメタン発酵システム3の構造を説明するための模式図である。上記実施例及び第一変形例で説明した要素と同等の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。第二変形例のバイオガスプラント20は、第一変形例のバイオガスプラント20に切替装置29を追加したものに相当する。また、第二変形例のし尿供給装置40は、実施例または第一変形例のし尿供給装置40に、第四配管47と、第二弁48と、第三弁49とを追加したものに相当する。
【0046】
切替装置29は、第二ポンプ25による発酵残渣の移送先を移送路αと移送路βとのいずれか一方に択一的に切り替える装置である。移送路αは脱水機26へ向かう経路であり、移送路βはコンベヤ12を介してごみピット11へ向かう経路である。切替装置29の内部には、発酵残渣の移送先を変更するためのアクチュエータが内蔵される。このアクチュエータの作動状態(発酵残渣の移送先)は、第二ポンプ25の作動状態に基づき制御装置46によって電気的に制御される。なお、第三配管43の他端(下流端)は、第二ポンプ25と切替装置29とを繋ぐ管路に接続される。
【0047】
第四配管47は、第一配管41から導入されるし尿を脱水機26の下流側に供給するための管路であり、第三配管43から分岐するように形成される。第四配管47の一端(上流端)は、第三配管43の中途に接続される。また、第四配管47の他端(下流端)は、脱水機26と水処理施設30(除渣装置32)とを繋ぐ管路に接続される。これにより、第四配管47の他端から流出するし尿は、濾液と混合されて除渣装置32に導入される。
【0048】
図5に示す例では、第一変形例と同様に、発酵残渣循環配管27及び濾液返送配管28が設けられている。発酵残渣循環配管27の一端(上流端)は、第二ポンプ25と切替装置29とを繋ぐ管路のうち、第三配管43の他端が接続される位置よりも上流側(第二ポンプ25側)に接続される。また、濾液返送配管28の一端(上流端)は、脱水機26と水処理施設30(除渣装置32)とを繋ぐ管路のうち、第四配管47の他端が接続される位置よりも下流側(除渣装置32側)に接続される。これらの発酵残渣循環配管27及び濾液返送配管28は省略してもよい。
【0049】
第二弁48は、切替装置29の上流側に供給されるし尿の流量を制御するための電磁制御弁であり、第三弁49は、脱水機26の下流側に供給されるし尿の流量を制御するための電磁制御弁である。第二弁48は、第三配管43の中途であって第四配管47との分岐位置よりも下流側に介装され、第三弁49は、第四配管47の中途に介装される。第二弁48及び第三弁49の開閉状態や開度は、制御装置46によって電気的に制御される。
【0050】
ここで、第一弁45よりも下流側の管路を流路Aと呼ぶ。第三配管43のうち、第三配管43と第四配管47との接続点よりも上流側の管路を流路Bと呼ぶ。また、第二弁48よりも下流側の管路を流路Cと呼ぶ。そして、第三弁49よりも下流側の管路を流路Dと呼ぶ。
流路Aの流量と流路Bの流量との和は、総流量調節弁44を通過するし尿の流量に等しく、流路Cの流量と流路Dの流量との和は、流路Bの流量に等しい。
【0051】
また、流路Bが一定であると仮定すれば、第二弁48の開度を開くにつれて流路Cの流量が増加し、その増加分だけ流路Dの流量が減少する。同様に、第三弁49の開度を開くにつれて流路Dの流量が増加し、その増加分だけ流路Cの流量が減少する。このように、流路C及び流路Dの各々の流量は、第二弁48及び第三弁49の開度変化に対して相補的に変化する。なお、流路C及び流路Dの流量割合を調整すべく、第三配管43及び第四配管47の流路断面積を相違させてもよいし、適宜の位置に絞りを設けてもよい。
【0052】
(2)制御
制御装置46は、第二ポンプ25のトルクT2に応じて第二弁48及び第三弁49の開閉状態と切替装置29の作動状態とを制御する機能を持つ。トルクT2の大きさは、例えば、第二ポンプ25を駆動するための電流値(駆動用モータの電流値)に基づいて推定してもよいし、駆動電力(電流値及び電圧値)に基づいて推定してもよい。あるいは、第二ポンプ25の内部圧力や吐出圧に基づいて推定してもよい。トルクT2の値は、第二ポンプ25によって圧送される発酵残渣中の水分量が低い場合に上昇し、水分量が高い場合に低下する。
【0053】
ここで、トルクT2が第二閾値TTH2以上である場合、発酵残渣をそのまま焼却処分することが可能であり、脱水機26に供給する必要がないと判断される。制御装置46は、トルクT2が第二閾値TTH2未満である場合と比較して流路Cの流量が減少するように(流路Dの流量が増加するように)、第二弁48及び第三弁49の開閉状態を制御する。
例えば、制御装置46は第二弁48を全閉に制御し、第三弁49を全開に制御するとともに、切替装置29を制御して発酵残渣の移送先として移送路βを選択する。これにより、第二ポンプ25に圧送された発酵残渣はコンベヤ12に供給され、ごみピット11に移送される。また、トルクT2が第二閾値TTH2未満である場合、制御装置46は第二弁48を全開に制御し、第三弁49を全閉に制御するとともに、切替装置29を制御して発酵残渣の移送先として移送路αを選択する。これにより、脱水助剤として作用するし尿が発酵残渣に供給され、脱水機26による脱水効率が改善される。
【0054】
図6(A)は、流路C及び流路Dを流れるし尿の割合(百分率)と第二ポンプ25のトルクT
2との関係を例示するグラフである。ここでは、トルクT
2が第二閾値T
TH2未満であるときに流路Cを流れるし尿の割合が100%であり、流路Dを流れるし尿の割合が0%となっている。一方、トルクT
2が第二閾値T
TH2以上であるときに流路Cを流れるし尿の割合が0%であり、流路Dを流れるし尿の割合が100%となっている。
【0055】
図6(B)は、トルクT
2が第二閾値T
TH2以上であるときに第二弁48を全閉にする代わりに、わずかに開放しておく(半開きにする)場合を例示するグラフである。ここでは、トルクT
2が第二閾値T
TH2以上であるときに流路Cを流れるし尿の割合をR
C1として、0%<R
C1≦100%の関係が成立している。また、トルクT
2が第二閾値T
TH2以上であるときに流路Dを流れるし尿の割合をR
D1として、0%≦R
D1<100%の関係が成立している。
【0056】
なお、
図6(B)の場合においても、
図6(A)の場合と同様、流路C及び流路Dの各々の流量は相補的に変化するため、R
C1+R
D1=100である。
また、
図6(B)に示す制御により、トルクT
2が第二閾値T
TH2以上であるとき、コンベヤ12でごみピット11に移送される発酵残渣中の水分量が若干上昇する。したがって、その後の焼却時における発熱量が低減され、ごみ焼却施設10の焼却炉の過昇温が抑制される。また、このとき、水分量が若干上昇するのはし尿によるものであるため、焼却炉で無触媒脱硝を行うアンモニアの量を低減することができる。さらに、このとき、発酵残渣に若干の水分が添加されるため、第二ポンプ25から切替装置29までの管路での摩擦損失が若干小さくなり、移送が比較的容易となる。
【0057】
(3)フローチャート
図7は、制御装置46で実施される制御(切替装置29、第二弁48、第三弁49の制御)の流れを説明するためのフローチャートである。ステップB1では、第二ポンプ25のトルクT
2が算出される。トルクT
2の値は、第二ポンプ25によって圧送される発酵残渣中の水分量が少ないほど上昇する。また、ステップB2では、第二ポンプ25のトルクT
2が第二閾値T
TH2以上であるか否かが判定される。この条件が成立する場合にはステップB3に進み、流路Cを流れるし尿の割合がR
C1に設定される。このとき、流路Dを流れるし尿の割合R
D1は、100-R
C1に設定されることになる。
【0058】
続くステップB4では、設定された流量割合が実現されるように、第二弁48及び第三弁49の開度が制御される。また、ステップB5では、発酵残渣の移送先が移送路βになるように切替装置29が制御される。これにより、発酵残渣はコンベヤ12を介してごみピット11へ移送される。このとき、ごみピット11へ移送される発酵残渣は十分に水分量が少ない状態であり、そのまま焼却路で焼却することが可能である。
【0059】
一方、ステップB2で判定される条件が不成立の場合にはステップB6に進み、第二弁48が全開に制御されるとともに、第三弁49が全閉に制御される。これにより、第三配管43を通る全てのし尿が流路Cを介して発酵残渣に添加され、流路Dは遮断される。また、ステップB7では、発酵残渣の移送先が移送路αになるように切替装置29が制御される。これにより、発酵残渣は脱水機26へ移送され、適切に脱水された後に水処理施設30へ移送される。
【0060】
(4)効果
上記のメタン発酵システム3では、メタン発酵装置24から排出される発酵残渣中の水分量が少なく、第二ポンプ25のトルクT2が第二閾値TTH2以上である場合に、その発酵残渣が直接的にごみピット11へと移送される。これにより、脱水機26の動力を省力化でき、運転コストを削減できる。また、水処理施設30で処理される発酵残渣の量を減少させることができ、生物処理の負荷を軽減できる。
【0061】
また、上記のメタン発酵システム3では、第二ポンプ25のトルクT2が第二閾値TTH2以上である場合に、し尿供給装置40の導入されたし尿の多くが流路Dを通って脱水機26の下流側に供給される。これにより、し尿を水処理施設30へと還流させて適切に処理することができる。なお、第二ポンプ25のトルクT2が比較的高い場合には、発酵残渣に水分を添加しなくても、そのまま発酵残渣を焼却処分することが可能である。したがって、第二弁48を全閉にしても差し支えない。
【0062】
一方、水分量が少なくそのまま焼却処分が可能な発酵残渣にあえて若干の水分を添加することで、第二ポンプ25から切替装置29までの管路での摩擦損失を削減でき、圧送効率や第二ポンプ25の駆動にかかるエネルギー効率を改善できる。また、このとき、発酵残渣中の水分量を若干増加させることで、焼却時における発熱量を減少させることができ、焼却炉の過昇温を抑制できる。さらに、このとき、水分量の上昇はし尿によるものであるため、焼却炉で無触媒脱硝を行うアンモニアの量を低減することができる。したがって、例えば、焼却炉の運転条件に応じて流路Cから供給されるし尿の添加量を調節することで、ごみ焼却施設10での焼却処理効率を改善できる。
【0063】
また、上記のメタン発酵システム3では、第二ポンプ25のトルクT2が第二閾値TTH2未満である場合に、メタン発酵装置24から排出される発酵残渣が脱水機26へと移送される。このとき、し尿供給装置40に導入されたし尿が流路Cを通って発酵残渣に供給される。これにより、し尿が脱水助剤として機能するので脱水機26による脱水効率を改善できる。また、水や一般的な脱水助剤の代わりに廃棄対象のし尿を再利用することで、運転コストを削減できる。
【0064】
なお、以上の説明では、実施例並びに第一変形例の第一弁45、第二変形例の第一弁45、第二弁48、及び第三弁49は、制御装置46が制御する電磁制御弁として説明したが、作業員が手動操作して開閉状態や開度を調整する手動弁でもよい。また、第二変形例の切替装置29は、制御装置46によって制御されると説明したが、作業員の手動操作によって移送路αと移送路βのいずれか一方に択一的に切り替えられる構成としてもよい。
このように手動操作とする場合は、制御装置46の代わりに、例えば、上述した電流値、駆動電力、内部圧力、吐出圧などを用いて演算し第一ポンプ23や第二ポンプ25のトルクの大きさを表示する表示装置(ノート型パーソナルコンピュータなど)を設置すればよい。表示装置の画面を確認することで、第一ポンプ23や第二ポンプ25のトルクに応じて、作業員は、上述した各弁や切替装置29を適切に操作して制御装置46と同様の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3 メタン発酵システム
10 ごみ焼却施設
11 ごみピット
12 コンベヤ
20 バイオガスプラント
21 前処理装置
22 ホッパ
23 第一ポンプ
24 メタン発酵装置
25 第二ポンプ
26 脱水機
27 発酵残渣循環配管
28 濾液返送配管
29 切替装置
30 水処理施設
31 し尿貯留槽(貯留槽)
32 除渣装置
33 生物処理槽
34 し尿処理用配管
40 し尿供給装置
41 第一配管
42 第二配管
43 第三配管
44 総流量調節弁
45 第一弁
46 制御装置
47 第四配管
48 第二弁
49 第三弁
TTH1 第一閾値
TTH2 第二閾値
【手続補正書】
【提出日】2021-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有廃棄物から発酵不適物を除去し、発酵適物の性状を整える前処理装置と、
前記発酵適物をメタン発酵してメタンガスを生成し、かつ、発酵残渣を排出するメタン発酵装置と、
前記発酵残渣を脱水して濾液と残余物とに分離する脱水機と、
前記前処理装置から前記メタン発酵装置へ前記発酵適物を移送する第一ポンプと、
前記メタン発酵装置から前記脱水機へ前記発酵残渣を移送する第二ポンプと、
し尿を貯留した貯留槽と、
所定流量の前記し尿を二方向に分岐させ、前記分岐した一方のし尿を前記第一ポンプの上流で前記発酵適物に供給し、前記分岐した他方のし尿を前記メタン発酵装置の下流、かつ、前記脱水機の上流で前記発酵残渣に供給する配管と、前記配管に配置されて制御装置または手動操作により開閉状態または開度が制御または調整される弁とを備えたし尿供給装置と
を有し、
前記し尿供給装置は、前記制御装置による前記弁の制御または前記手動操作による前記弁の調整により、前記第一ポンプのトルクが第一閾値以上の場合は前記一方のし尿の流量を増加させ、前記第一ポンプのトルクが前記第一閾値未満の場合は前記一方のし尿の流量を減少させて、前記一方のし尿と前記他方のし尿の各々の流量を相補的に変更するメタン発酵システム。
【請求項2】
前記メタン発酵装置が、湿式メタン発酵装置である場合は、前記濾液の一部を前記メタン発酵装置よりも上流側へ返送する濾液返送配管をさらに備え、
前記メタン発酵装置が、乾式メタン発酵装置である場合は、前記発酵残渣の一部を前記メタン発酵装置よりも上流側へ循環する発酵残渣循環配管をさらに備え、あるいは、前記発酵残渣循環配管と前記濾液返送配管とをさらに備える請求項1に記載のメタン発酵システム。
【請求項3】
前記し尿供給装置は、
前記配管として、
一端が前記貯留槽に接続された第一配管と、
前記第一配管の他端に一端が接続され、他端から前記一方のし尿を供給する第二配管と、
前記第一配管の他端に一端が接続され、他端から前記他方のし尿を供給する第三配管と、
前記弁として、
前記第二配管に配置された第一弁と
を備え、
前記第一ポンプのトルクが前記第一閾値以上の場合に、前記制御装置または前記手動操作により前記第一弁を開くことで前記一方のし尿の流量を増加させ、前記第一ポンプのトルクが前記第一閾値未満の場合に、前記制御装置または前記手動操作により前記第一弁を閉じることで前記一方のし尿の流量を減少させる請求項2に記載のメタン発酵システム。
【請求項4】
前記第二ポンプと前記脱水機との間に配置された切替装置をさらに有し、
前記し尿供給装置は、
前記配管として、一端が前記第三配管に接続され、他端が前記脱水機の下流に接続された第四配管と、
前記弁として、前記第三配管において、前記第四配管の接続点より下流に配置された第二弁と、
前記第四配管に配置された第三弁と
をさらに備え、
前記第二ポンプのトルクが第二閾値未満の場合に、前記制御装置または前記手動操作により前記第二弁を全開し、かつ、前記第三弁を全閉し、
前記第二ポンプのトルクが前記第二閾値以上の場合に、前記制御装置または前記手動操作により前記第二弁を全閉し、かつ、前記第三弁を全開し、
前記第二ポンプのトルクが前記第二閾値未満の場合に、前記制御装置または手動操作により前記切替装置は前記発酵残渣を前記脱水機へ移送し、
前記第二ポンプのトルクが前記第二閾値以上の場合に、前記制御装置または手動操作により前記切替装置は前記発酵残渣をごみ貯留槽へ移送する請求項3に記載のメタン発酵システム。
【請求項5】
前記第一ポンプ並びに前記第二ポンプのそれぞれのトルクの大小は、各々を駆動する電流値の大小で判定する請求項4に記載のメタン発酵システム。
【請求項6】
ごみ焼却施設が備えるごみピットと、
水処理施設が備える生物処理槽と
をさらに有し、
前記残余物が移送される前記ごみピットは、前記ごみ貯留槽であり、
前記濾液は前記生物処理槽で処理され、
前記第一ポンプのトルク並びに前記第二ポンプのトルクに対応して、前記第一弁、前記第二弁、前記第三弁、及び前記切替装置が、前記制御装置または前記手動操作により制御される請求項4または請求項5のいずれか一項に記載のメタン発酵システム。