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  • 特開-水中沈殿物回収ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147083
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】水中沈殿物回収ロボット
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/90 20060101AFI20220929BHJP
   E02F 3/88 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E02F3/90 Z
E02F3/88 E
E02F3/88 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048191
(22)【出願日】2021-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年9月16日に2020年度 オンライン技術開発報告会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】阪上 知己
(72)【発明者】
【氏名】西沢 孝壽
(72)【発明者】
【氏名】永喜多 徹
(72)【発明者】
【氏名】花岡 草
(72)【発明者】
【氏名】鎌原 健志
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 茂男
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】四ツ田 裕嗣
(72)【発明者】
【氏名】松平 昌之
(57)【要約】
【課題】内容物が土嚢に収容された状態であっても内容物を沈殿物として効率的に回収することができ、沈殿物の回収作業を迅速に行うことが可能な水中沈殿物回収ロボットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる水中沈殿物回収ロボット100の構成は、水中を走行可能なロボット本体110と、ロボット本体110に対して装着されたコンテナ150と、ロボット本体110に搭載されコンテナ150を通じて沈殿物を吸引する内蔵ポンプ120と、ロボット本体110の下部の前方に縦向きに軸支され自由回転可能なチップソー160と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を走行可能なロボット本体と、
前記ロボット本体に対して装着されたコンテナと、
前記ロボット本体に搭載され前記コンテナを通じて沈殿物を吸引する内蔵ポンプと、
前記ロボット本体の下部の前方に縦向きに軸支され自由回転可能なチップソーと、
を備えることを特徴とする水中沈殿物回収ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の沈殿物を回収する水中沈殿物回収ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水質汚染を防止するためや、水中に沈殿している有害物を除去するために、水中の沈殿物を回収することが行われている。沈殿物を回収する手段としては、例えば特許文献1に汚泥回収装置および方法が開示されている。特許文献1の汚泥回収装置は、水中を移動可能であると共に水底の汚泥を吸引して回収可能な浚渫装置と、水中を移動可能であると共に浚渫装置により回収された汚泥から水分を除去した回収物を回収物受槽に貯蔵する処理装置と、処理装置に電力や高圧空気などを供給する設備車とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-125754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば原子力発電所建屋では、水中の放射線量を低減するために、放射線物質を吸着する吸着材(例えばゼオライト)を袋に収納した土嚢を水中に載置することがある。この土嚢の内容物を回収する場合、内容物が土嚢に収容されたままであると、特許文献1の汚泥回収装置では、沈殿物を回収することができない。このため、特許文献1の技術であると回収効率が低く、更なる改良の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、内容物が土嚢に収容された状態であっても内容物を沈殿物として効率的に回収することができ、沈殿物の回収作業を迅速に行うことが可能な水中沈殿物回収ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
吸着材はいずれ効果を失うため交換する必要がある。原子力発電所建屋の水中に沈められた土嚢は高線量下におかれるため、設置期間が長くなると土嚢の繊維が崩壊してやぶれやすくなったり、自然に破れてしまったりする。単純に土嚢を回収することを考えるとフォークリフトのフォークやロボットハンドのような対象物を持ち上げる装置を用いることが考えられるが、持ち上げた拍子に土嚢が破れて中身の吸着材が散逸してしまうことが予想されるし、自然に破れて漏洩してしまっているものは持ち上げることができない。すると、持ち上げる装置と吸引する装置を両方使えばよいとも考えられるが、装置が大がかりになり、各装置が作業場を動き回ることも難しくなってしまう。
【0007】
そこで発明者らは、いっそ土嚢を総て破いてしまい、漏洩した中身の内容物を吸引して回収することを考えた。しかしフォークのような爪を用いると土嚢に刺さってしまい、破けもしなければ抜けもしない状態になり、作業が進まなかった。そこでさらに検討を行い、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる水中沈殿物回収ロボットの代表的な構成は、水中を走行可能なロボット本体と、ロボット本体に対して装着されたコンテナと、ロボット本体に搭載されコンテナを通じて沈殿物を吸引する内蔵ポンプと、ロボット本体の下部の前方に縦向きに軸支され自由回転可能なチップソーと、を備えることを特徴とする。なおチップソーとは、円盤状の鋸である。
【0009】
上記構成によれば、チップソーを押し当ててロボット本体が左右に回転運動することで土嚢の袋が破かれ、内容物が土嚢からその外に流出する。チップソーは土嚢の表面に引っかかるが、突き刺さってしまうことはない。これにより、土嚢から流出した内容物をロボット本体の内蔵ポンプによって吸引して回収することができる。したがって、内容物が土嚢に収容された状態であっても内容物を効率的に回収することができ、沈殿物の回収作業を迅速に行うことが可能となる。
【0010】
またチップソーが自由回転可能に軸支されていることから、ロボットが土嚢や瓦礫などの障害物を乗り越えて進もうとするときのガイドとしても機能することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内容物が土嚢に収容された状態であっても内容物を沈殿物として効率的に回収することができ、沈殿物の回収作業を迅速に行うことが可能な水中沈殿物回収ロボットができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態にかかる沈殿物回収ロボットの全体斜視図である。
図2図1のロボット本体の全体斜視図である。
図3図1のコンテナの全体斜視図である。
図4】本実施形態の回収ロボットの使用態様図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態にかかる沈殿物回収ロボットの全体斜視図である。図2は、図1のロボット本体の全体斜視図である。図3は、図1のコンテナの全体斜視図である。図1に示すように、本実施形態の回収ロボット100は主に、ロボット本体110、およびロボット本体110に対して装着されたコンテナ150を含んで構成される。なお、以下の説明ではロボット本体に対して着脱可能なコンテナ150を備えた形式のロボットを例として説明するが、本発明はロボット本体110に対して固定されたコンテナ150を備えた形式のロボットにも適用可能である。
【0015】
図1および図2に示すように、ロボット本体110は、下部にクローラ112を有し、設備の床面に沿って水中を走行可能である。ロボット本体110のうち、コンテナ150が着脱される側には、傾斜させたコンテナ150を支持する支持板116が設けられている。一方、ロボット本体110のうち、コンテナ150が着脱される側とは反対側には、沈殿物を含んだ水をコンテナ150内に吸引する内蔵ポンプ120が搭載されている。ロボット本体110の下部には、かかる内蔵ポンプ120と連通しているポンプ吸引口114が設けられている。
【0016】
図1および図3に示すように、コンテナ150では、コンテナ本体152の上部にハンガー154が配置されている。またコンテナ150(コンテナ本体152)の下部には、コンテナ150内に貯蔵された沈殿物を外部に排出するための開口156が設けられている。なおコンテナ150の下面中央に、沈殿物を吸引するための開口が設けられている(不図示)。
【0017】
また図1および図2に示すように、ロボット本体110には、フック132およびアーム134が設けられている。フック132は、コンテナ150のハンガー154を引っ掛ける部材である。アーム134は、上下方向に回動するように移動する。アーム134が回動することからフック132の軌跡は円弧を描くため、アーム134はコンテナ150のハンガー154が引っ掛けられたフック132をロボット本体110に引き寄せる方向に斜めに上昇させる。
【0018】
上記構成によれば、ロボット本体110に着脱可能なコンテナに沈殿物を貯留する。そして、コンテナ150内に沈殿物が回収されたら、ロボット本体110はそのコンテナ150を下し、新たな空のコンテナ150を装着する。これにより、途中で装置(ロボット本体110)を地上に戻すことなく沈殿物の回収作業を行うことができ、作業効率を大幅に向上することが可能となる。
【0019】
ここで、図1および図2に示すように、本実施形態の100は、ロボット本体の下部の前方に縦向きに軸支され自由回転可能なチップソー160を有する。本実施形態の100ではかかるチップソー160を用いて土嚢10の袋を破く。
【0020】
図4は、本実施形態の回収ロボット100の使用態様図である。作業場(水中)には、放射線物質を吸着する吸着材(例えばゼオライト)が収納された土嚢10が積み上げられている。土嚢10の中身を内容物12と称する。
【0021】
まず図4(a)に示すように、ロボット本体110は、土嚢10に向かって前進し、土嚢10にチップソー160を食い込ませる。チップソー160は円盤状の鋸であるから、土嚢10の表面に引っかかるが、深く刺さってしまうことはない。
【0022】
そして図4(b)に示すように、ロボット本体110が左右に揺れ動くことで土嚢10の袋を破き、内容物12を外部に流出させる。なおロボット本体110は、左右のクローラ112を逆方向に回転させることで局地旋回することができるので、交互に回転方向を切り替えることによって全体的に左右に揺れ動くことができる。
【0023】
そして回収ロボット100は、外部に流出した内容物12を沈殿物として内蔵ポンプ120によってコンテナ150に吸引する。すなわち、土嚢10が自然崩壊していればそのまま吸引し、まだ土嚢10に収容された状態だったらこれを破いて内容物12を吸引する。これにより、袋のまま持ち上げる装置を必要とすることなく、総ての内容物を吸引によって回収することができる。したがって、内容物12を沈殿物として効率的に回収することができ、沈殿物の回収作業を迅速に行うことが可能となる。
【0024】
またチップソー160が自由回転可能に軸支されていることから、車輪と同様の機能も有する。すなわち、刺さった状態で左右に揺れ動けば破くことができるが、単にさらに前進すれば、破くというよりも乗り上げることになる。したがって回収ロボット100が単に前進すれば、まずチップソー160が土嚢や瓦礫などの障害物に乗り上げてガイドすることによりロボット本体110が上に向き、クローラ112が障害物に乗り上げることができ、そして回収ロボット100が障害物を乗り越えて進むことができる。
【0025】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0026】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、水中の沈殿物を回収する水中沈殿物回収ロボットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10…土嚢、12…内容物、100…回収ロボット、110…ロボット本体、112…クローラ、114…ポンプ吸引口、116…支持板、120…内蔵ポンプ、132…フック、134…アーム、150…コンテナ、152…コンテナ本体、154…ハンガー、156…開口、160…チップソー
図1
図2
図3
図4