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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147092
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】封入液の封止装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/02 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01L13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048202
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】別府 永志
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA40
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD05
2F055EE13
2F055FF43
2F055GG01
2F055GG11
(57)【要約】
【課題】封入液の温度上昇を抑えるとともに、封入液が封入孔の開口部に浸入することを防いで耐圧強度を高くすることができる封入液の封止装置を提供する。
【解決手段】封入液6で満たされる封入孔5が開口する通路形成部材2(装置本体)と、封入孔5の凹部5a(開口部)を封止する封止材4とを備える。封入孔5は、凹部5a(開口部)と、封入液6が満たされる孔部5bと、凹部5aと孔部5bとを連通する連通部5cとを有する。孔部5b中の封入液6が凹部5aに到達することを防止する第2の封止材4b(閉塞部材)を連通部5cに装着した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入液で満たされる封入孔が開口する装置本体と、
前記封入孔の開口部を封止する封止材とを備え、
前記封入孔は、前記開口部と、前記封入液が満たされる孔部と、前記開口部と前記孔部とを連通する連通部とを有し、
前記孔部中の封入液が前記開口部に到達することを防止する閉塞部材を前記連通部に装着したことを特徴とする封入液の封止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の封入液の封止装置において、
前記閉塞部材は、前記封止材と同一の材料によって形成されていることを特徴とする封入液の封止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の封入液の封止装置において、
前記閉塞部材は、前記封止材と一体に形成されていることを特徴とする封入液の封止装置。
【請求項4】
請求項3に記載の封入液の封止装置において、
前記開口部の内径をd1とし、前記連通部の内径をd2とし、前記孔部の内径をd3としたとき、d1≧d2=d3
であることを特徴とする封入液の封止装置。
【請求項5】
請求項1に記載の封入液の封止装置において、
前記閉塞部材は、前記封止材とは異種の材料によって形成されていることを特徴とする封入液の封止装置。
【請求項6】
請求項2、3または5に記載の封入液の封止装置において、
前記開口部の内径をd1とし、前記連通部の内径をd2とし、前記孔部の内径をd3としたとき、d1>d2>d3
であることを特徴とする封入液の封止装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一つに記載の封入液の封止装置において、
前記連通部は、前記開口部に向かうにしたがって内径が次第に大きくなるテーパ形状に形成されていることを特徴とする封入液の封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入孔の開口部を封止する封止材を備えた封入液の封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種プロセス系において2以上の流体圧力の差を計測する機器として、差圧発信器が知られている。差圧発信器においては、一方のダイアフラムに加えられた圧力を他方のダイアフラムに伝達させるために、ダイアフラム毎の2つの圧力室と、これらの圧力室どうしを連通する連通路とを圧力伝達物質としての封入液で満たしている。
【0003】
封入液は、連通路に接続された封入孔の開口部から注入される。封入孔から連通路を経て2つの圧力室に至る空間の全域が封入液で満たされた後、封入孔の開口部が封止材によって封止される。封入孔の開口部を封止する封止材を備えた従来の封止装置は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。
特許文献1には、封入液が封入された封入孔の開口部に封止材としてボールをマウントし、抵抗溶接でボールを封入孔の開口部に溶着する封止装置が開示されている。
特許文献2には、封止材の溶接時に封入液の温度が上昇することを抑制するために、封止材の一部が溶融し、封止材の封入液に接する部分は溶融しない封止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6703850号公報
【特許文献2】特開2020-197469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された封止装置では、封入された封入液が溶接時の熱で高温になり気化することで内部の圧力が変わったり、気泡が混ざることで圧力の伝達が正しくできなくなることでセンサの性能を低下させるという問題があった。
特許文献2に記載された封止装置では、封止材の一部が溶融しないので封入孔の開口部の一部に封入液が浸入する。特許文献2に示す封入孔の開口部は、封入孔の孔部より内径が大きくなるように形成されているから、開口部内に浸入した封入液と封止材との接触面積が大きく、封入液の圧力が封止材の広い範囲に加えられる。このため、特許文献2に示す封止装置では、封止部の耐圧強度が低くなるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、封入液の温度上昇を抑えるとともに、封入液が封入孔の開口部に浸入することを防いで耐圧強度を高くすることができる封入液の封止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る封入液の封止装置は、封入液で満たされる封入孔が開口する装置本体と、前記封入孔の開口部を封止する封止材とを備え、前記封入孔は、前記開口部と、前記封入液が満たされる孔部と、前記開口部と前記孔部とを連通する連通部とを有し、前記孔部中の封入液が前記開口部に到達することを防止する閉塞部材を前記連通部に装着したものである。
【0008】
本発明は、前記封入液の封止装置において、前記閉塞部材は、前記封止材と同一の材料によって形成されていてもよい。
【0009】
本発明は、前記封入液の封止装置において、前記閉塞部材は、前記封止材と一体に形成されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記封入液の封止装置において、前記開口部の内径をd1とし、前記連通部の内径をd2とし、前記孔部の内径をd3としたとき、d1≧d2=d3であってもよい。
【0011】
本発明は、前記封入液の封止装置において、前記閉塞部材は前記封止材と異種の材料によって形成されていてもよい。
【0012】
本発明は、前記封入液の封止装置において、前記開口部の内径をd1とし、前記連通部の内径をd2とし、前記孔部の内径をd3としたとき、d1>d2>d3であってもよい。
【0013】
本発明は、前記封入液の封止装置において、前記連通部は、前記開口部に向かうにしたがって内径が次第に大きくなるテーパ形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、閉塞部材が実質的に断熱体およびシール部材として機能するから、封入液の温度上昇を抑えるとともに、封入液が封入孔の開口部に浸入することを防いで耐圧強度を高くすることが可能な封入液の封止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1の実施の形態による封入液の封止装置を説明するための断面図である。
図2図2は、第1の実施の形態による封入液の封止装置を説明するための断面図である。
図3図3は、第2の実施の形態による封入液の封止装置を説明するための断面図である。
図4図4は、第3の実施の形態による封入液の封止装置を説明するための断面図である。
図5図5は、連通部の変形例を示す断面図である。
図6図6は、連通部の変形例を示す断面図である。
図7図7は、連通部の変形例を示す断面図である。
図8図8は、本発明に係る封入液の封止装置を有する差圧センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る封入液の封止装置の一実施の形態を図1(A)~(C)および図2(A)~(C)を参照して詳細に説明する。
図1(A)に示す封入液の封止装置1は、図1(A)において下側に位置する通路形成部材2と、この通路形成部材2の一端側(図1においては上側)の主面3に溶着された封止材4とを備えている。通路形成部材2は、本発明でいう「装置本体」を構成するもので、一端側の主面3と他端側の主面(図示せず)とに開口して通路形成部材2を貫通する封入孔5を有している。封入孔5は、開口部を有し封入液6が満たされる空間である。
【0017】
封入孔5は、図1(B)に示すように、通路形成部材2の一端側の主面3に開口する凹部5aと、通路形成部材2内で導圧路を構成するように封入液6{図1(A)参照}が満たされる孔部5bと、凹部5aと孔部5bとを連通する連通部5cとを有している。孔部5bの凹部5aとは反対側の端部は、図示していない部材によって閉塞されている。
【0018】
凹部5aは、開口形状が円形で、深さが内径より浅い穴である。この実施の形態においては、凹部5aが本発明でいう「開口部」に相当する。凹部5aの壁面は、メタル膜7で覆われている。メタル膜7は、図1(B)に示すように、凹部5a内から通路形成部材2の一端側の主面3上に伸びるように形成されている。
凹部5aの底部分に連通部5cが接続されている。
【0019】
連通部5cは、凹部5aと略同心円状に開いた穴である。連通部5cの開口形状は円形である。また、連通部5cの内径は凹部5aより小さく、深さが内径と略同一である。孔部5bは、連通部5cの中心部に開口している。
この実施の形態による封止装置においては、凹部5aの内径をd1とし、連通部5cの内径をd2とし、孔部5bの内径をd3としたとき、d1>d2>d3である。
【0020】
この実施の形態による封止材4は、図1(A)に示すように、主面3から突出する第1の封止材4aと、連通部5c内に装着された第2の封止材4bとによって構成されている。第2の封止材4bは、連通部5cの内径と略同一の直径の球状に形成されている。このため、第2の封止材4bは、連通部5cに嵌合状態で挿入され、孔部5b中の封入液6が開口部(凹部5a)に到達することを防止する。この実施の形態においては、第2の封止材4bが本発明でいう「閉塞部材」に相当する。
図1(A)に示す第1の封止材4aは、図2(B)に示す球状の母材8が溶融、凝固したものである。母材8は、第2の封止材4bより大きく、凹部5aに安定して搭載できる大きさの直径の球状に形成されている。
【0021】
次に、この実施の形態による封入液の封止装置1によって封入孔5の封止を行う手順を図1(C)~図2(C)を参照して説明する。
封止を行う際は、先ず、図1(C)に示すように、封入孔5に封入液6を満たし、図2(A)に示すように、第2の封止材4bを凹部5aから連通部5cに挿入する。このとき、第2の封止材4bは、連通部5cの孔部5bとの境界の近傍に嵌合させる。次に。図2(B)に示すように、第1の封止材4aの母材8を凹部5aに搭載する。
【0022】
そして最後に、母材8を例えばレーザー光によって溶融させ、しかる後に凝固させる。このように母材8が溶融し凝固することによって、図1(A)に示すように、通路形成部材2に溶着された第1の封止材4aが得られ、封入孔5の開口が封止される。ここでいう「溶着」とは、第1の封止材4aが溶融して通路形成部材2の主面3および凹部5aに濡れ拡がり、この濡れ拡がった溶融部分が冷えて凝固することにより通路形成部材2の主面3および凹部5aに密着する現象である。
【0023】
第1の封止材4aは、金属材料によって形成されており、図1(A)に示すように、通路形成部材2の主面3側に位置する一部が主面3に溶着してなる溶融凝固部11と、凹部5aの内部に溶着した溶融凝固部12とを有している。第2の封止材4bは、連通部5cの内部に挿入された未溶融部13を有している。すなわち、第2の封止材4bは、封入液6に接液され、封入液6に接液する部分の少なくとも一部は溶融していない。
第1の封止材4aの溶融凝固部12と第2の封止材4bの接液部は、第2の封止材4bの直径だけ離れていることから、第1の封止材4aが凹部5aに溶着する際に高温となるにもかかわらず、第2の封止材4bの接液部の温度は、封入液6を変質する温度以上に上昇することはない。
【0024】
第2の封止材4bを形成する材料は、第1の封止材4aと同じ材料でもよいし、異種の材料でもよい。第1の封止材4aと第2の封止材4bの材料が同一である場合は、第1の封止材4aが溶融し、凝固する際に、図2(C)に示すように、第2の封止材4bの上部の一部に溶着し、第1の封止材4aと第2の封止材4bとが一体となってもよい。
【0025】
第2の封止材4bを形成する材料は、金属材料の他に、例えば樹脂やセラミックなどの非金属材料を用いることができる。第2の封止材4bを熱伝導率が低い材料によって形成することにより、第1の封止材4aの溶融凝固部12と第2の封止材4bの接液部とが第2の封止材4bの直径だけ離れていることと相俟って、第1の封止材4aの溶着時の熱が第2の封止材4bの接液部により一層伝わり難くなる。この場合は、封入液6の温度を変質する温度より十分低い温度に保つことができる。
【0026】
以上のことから、第1の封止材4aが完全に溶融し、これを凹部5aの壁面のメタル膜7の全面に溶着させたとしても、第2の封止材4bの未溶融部13の接液部において封入液6が耐熱温度を越えることを防ぐことができる。このため、封入液6は、第1の封止材4aが溶着される過程で変質していない状態を維持することができる。また、第1の封止材4aを凹部5aの壁面のメタル膜7の全面に溶着させることができるため、封入液6が凹部5a内まで侵入することはなく、例えば封止装置1が差圧センサあるいは絶対圧センサである場合、耐圧強度の低下を抑えることができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
封入孔と封止材は、図3(A)~(D)に示すように構成することができる。図3(A)~(D)において、図1(A)~(C)および図2(A)~(C)によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
この実施の形態による封入液の封止装置21は、第1の実施の形態とは異なる封入孔22と封止材23とを用いて構成されている。
封入孔22は、図3(B)に示すように、通路形成部材2の一端側の主面3に開口する凹部22aと、導圧路となる孔部22bと、凹部22aと孔部22bとを連通する連通部22cとを有している。連通部22cと孔部22bの内径は略同一である。この実施の形態においても、凹部22aが本発明でいう「開口部」に相当する。
【0028】
孔部22bの凹部22aとは反対側の端部は、図示していない部材によって閉塞されている。封入孔22の中には封入液6が充填されている。
凹部22aは、開口形状が円形で、深さが内径より浅い穴である。連通部22cと孔部22bは、凹部22aの中心部に開口している。凹部22aの壁面は、メタル膜7で覆われている。メタル膜7は、図3(B)に示すように、凹部22a内から通路形成部材2の一端側の主面3上に伸びるように形成されている。
この実施の形態による封止装置21においては、図3(B)に示すように、凹部22aの内径をd1とし、連通部22cの内径をd2とし、孔部22bの内径をd3としたとき、d1>d2=d3である。
【0029】
図3(A)に示す封止材23は、図3(C)に示す母材24を通路形成部材2に搭載してその一部を溶融、凝固させたものである。母材24は、略球状の封止材本体24aと、この封止材本体24aの外面から突出した円柱状の突出部24bとによって構成されている。封止材本体24aは、突出部24bより直径が大きい略球状に形成されている。
突出部24bは、先端が半球状の円柱となるように封止材本体24aに一体に形成されている。突出部24bは、連通部22cに挿入される。突出部24bの外径は、連通部22cの内径と略同一である。このため、突出部24bは、連通部22cに嵌合状態で挿入され、孔部22b中の封入液6が開口部(凹部22a)に到達することを防止する。この実施の形態においては、突出部24bが本発明でいう「閉塞部材」に相当する。
【0030】
この実施の形態による封入液6の封止装置21によって封入孔22の封止を行う際は、図3(C)に示すように封入孔22に封入液6を満たした状態で、封止材23の母材24を突出部24bが下方に向けて突出する姿勢として凹部22a内に挿入する。このように母材24を凹部22aに挿入することにより、図3(D)に示すように、突出部24bが連通部22cに挿入され、封止材本体24aが凹部22aに収まるように搭載される。
【0031】
次に、封止材本体24aを例えばレーザー光によって溶融させ、しかる後に凝固させる。封止材本体24aが溶融して凝固することにより、図3(A)に示すように、封止材本体24aが通路形成部材2に溶着されて封止材23が封入孔22の開口を封止するようになる。母材24の封止材本体24aが溶融、凝固して形成された封止材23は、金属材料によって形成されており、通路形成部材2の主面3側に位置する一部が主面3に溶着してなる溶融凝固部25と、凹部22aの内部に溶着した溶融凝固部26と、連通部22cの内部に挿入された未溶融部27とを有している。すなわち、封止材23となる母材24の突出部24bは、封入液6に接液され、封入液6に接液する部分の少なくとも一部は溶融していない。封止材本体24aの溶融凝固部26と突出部24bの接液部は突出部24bの長さL1{図3(C)参照}だけ離れているので、封止材本体24aが凹部22aに溶着する際に高温となったとしても、突出部24bの接液部の温度は封入液6を変質する温度以上に上昇することはない。
【0032】
以上のことから、封止材本体24aが完全に溶融し、凹部22aの壁面のメタル膜7の全面に溶着しても、突出部24bの未溶融部27の接液部において封入液6が耐熱温度を越えることを防ぐことができる。このため、封入液6は、封止材本体24aが溶着される過程で変質していない状態を維持することができる。また、封止材本体24aを凹部22aの壁面のメタル膜7の全面に溶着させることができるため、封入液6が凹部22aまで侵入することはなく、例えば封止装置21が差圧センサあるいは絶対圧センサである場合、耐圧強度の低下を抑えることができる。
【0033】
(第3の実施の形態)
封入孔と封止材は、図4(A)~(D)に示すように構成することができる。図4(A)~(D)において、図1(A)~(C)および図2(A)~(C)によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
この実施の形態による封入液の封止装置31は、第1の実施の形態とは異なる封入孔32と封止材33とを用いて構成されている。
【0034】
封入孔32は、図4(B)に示すように、通路形成部材2の一端側の主面3に開口する開口部32aから導圧路を構成する孔部32bまで内径が略同一となるように形成されている。すなわち、開口部32aと孔部32bとを連通する連通部32cは、開口部32aおよび孔部32bと内径が略同一となるように形成されている。この実施の形態においても、孔部32bの開口部32aとは反対側の端部は、図示していない部材によって閉塞されている。封入孔32の中には封入液6が充填されている。
この実施の形態による封止装置31においては、図4(B)に示すように、開口部32aの内径をd1とし、連通部32cの内径をd2とし、孔部32bの内径をd3としたとき、d1=d2=d3である。開口部32aの内面および開口部32aを囲む主面3上は、メタル膜7で覆われている。
【0035】
図4(A)に示す封止材33は、図4(C)に示す母材34を通路形成部材2に搭載してその一部を溶融、凝固させたものである。母材34は、図4(C)において上に位置する封止材本体34aと、封止材本体24aの中心部から突出する突出部34bとによって形成されている。封止材本体34aは、突出部34bより直径が大きい略円板状に形成されている。突出部34bは、連通部32cの内径と略同一の直径となる円柱状となるように封止材本体34a24aに一体に形成されている。このため、突出部34bは、連通部32cに嵌合状態で挿入され、孔部32b中の封入液6が開口部32aに到達することを防止する。この実施の形態においては、突出部34bが本発明でいう「閉塞部材」に相当する。
【0036】
この実施の形態による封入液6の封止装置31によって封入孔32の封止を行う際は、先ず、図4(C)に示すように、封入孔32に封入液6を満たした状態で、突出部34bを開口部32aから連通部32cに挿入する。そして、図4(D)に示すように、封止材本体34aが主面3上に接するように通路形成部材2に母材34を搭載する。そして、封止材本体34aを例えばレーザー光によって溶融させ、しかる後に凝固させることによって、図4(A)に示すように、封止材本体34aが通路形成部材2に溶着されて封止材33が封入孔32の開口を封止するようになる。
【0037】
封止材33は、金属材料によって形成されており、図4(A)に示すように、通路形成部材2の主面3側に位置する一部が主面3に溶着してなる溶融凝固部35と、連通部32cの内部に挿入された未溶融部36とを有している。すなわち、突出部34bは、封入液6に接液され、封入液6に接液する部分の少なくとも一部は溶融していない。封止材本体34aの溶融凝固部35と突出部34bの接液部は突出部34bの長さL2{(図4C)参照}だけ離れているので、封止材本体34aが溶着する際に高温となっても突出部34bの接液部は封入液6を変質する温度以上に上昇することがない。
【0038】
以上のことから、封止材本体34aが完全に溶融し、封止材本体34aを主面3上のメタル膜7の全面に溶着させたとしても、突出部34bの未溶融部36の接液部において封入液6が耐熱温度を越えることを防ぐことができる。このため、封入液6は、封止材本体34aが溶着される過程で変質していない状態を維持することができる。また封止材本体34aを主面3上のメタル膜7の全面に溶着させることができるため、封入液6と封止材33との接液部は連通部32cと孔部32bの内径以上に広がることはなく、例えば封止装置31が差圧センサあるいは絶対圧センサである場合、耐圧強度の低下を抑えることができる。
【0039】
(封入孔の変形例)
封入孔の連通部は図5図7に示すように構成することができる。これらの図において、図1図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
第1の実施の形態を採るときの封入孔5の連通部5cは、図5(A)~(C)に示すように、テーパ形状に形成することができる。連通部5cのテーパ部41は、凹部5a(開口部)に向かうにしたがって内径が次第に大きくなるように形成されている。
【0040】
第1の実施の形態においては、第2の封止材4bの直径と連通部5cの内径は略同一であり隙間が無い。そのため図2(A)に示すように第2の封止材4bを連通部5cに搭載する際に、封入孔5内部の封入液6が連通部5cの深さだけ圧縮されて封入孔5の内圧が上昇する。封入孔5全体の容積が十分大きければ内圧の上昇は無視できるが、容積が小さい場合、例えば対象が圧力センサである場合は、圧力センサの特性に影響を及ぼす。連通部5cが図5(A)に示すようにテーパ形状であれば、図5(B)に示すように、第2の封止材4bを搭載する際に余分な封入液6は隙間から上部に移動するため、内圧の上昇を抑えることができる。連通部5cの底部の内径は第2の封止材4bの直径と略同一となっており、図5(C)に示すように封止状態においては隙間が無い。
【0041】
これと同様に、第2、第3の実施の形態を採る場合であっても、連通部22c,32cをテーパ形状に形成することができる。
第2の実施の形態を採るときの封入孔22の連通部22cは、図6に示すように、テーパ部42を有するテーパ形状に形成することができる。
第3の実施の形態を採るときの封入孔32の連通部32cは、図7に示すように、テーパ部43を有するテーパ形状に形成することができる。テーパ部42とテーパ部43は、封入孔22,32の開口部に向かうにしたがって次第に内径が大きくなるように形成されている。
【0042】
本発明に係る封入液6の封止装置1,21,31は、図8に示すように差圧センサに用いることができる。図8において、図1図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0043】
図8に示す封入液の封止装置51は、図8において最も上に位置する差圧センサ52の一部を構成している。封入液の封止装置51を構成する通路形成部材2の他端側(図8においては下側)の主面53には、第1の凹部54と第2の凹部55とが形成されている。これらの第1および第2の凹部54,55は、通路形成部材2の中に形成された連通路56を介して互いに連通されている。連通路56は、封入孔5の孔部5bに接続されている。第1および第2の凹部54,55と、連通路56と、封入孔5の中には、圧力伝達媒体となる封入液6が充填されている。この封入液6は、圧力伝達媒体であるオイルであり、封入孔5を通して注入されている。封入孔5は、封入液6が注入された後に封止材4によって閉塞される。
【0044】
通路形成部材2の他端側の主面53には、封入液6(オイル)により伝達される圧力を受けて撓む板状のセンサダイアフラム57の一方の主面57aが接合されている。通路形成部材2の第1の凹部54の開口部分と第2の凹部55の開口部分は、センサダイアフラム57によって閉塞されている。センサダイアフラム57は、厚み方向とは直交する方向において、通路形成部材2より突出するように形成されている。センサダイアフラム57における、第1の凹部54と対向する部分と、第2の凹部55と対向する部分には、それぞれセンサダイアフラム57の変位を電気信号に変換するブリッジ回路58が設けられている。これらのブリッジ回路58は、センサダイアフラム57の変化に基づいて圧力を検出する検出部材を構成している。また、これらのブリッジ回路58は、センサダイアフラム57の側部に設けられた電極パッド59に接続されている。
【0045】
センサダイアフラム57の他方の(図8においては下側の)主面57bには、支持部材61の一方の主面61aが接合されている。センサダイアフラム57と支持部材61は、それぞれシリコンによって所定の形状に形成されている。支持部材61は、センサダイアフラム57を通路形成部材2と協働して挟んで支持している。この実施の形態による差圧センサ52は、通路形成部材2と、センサダイアフラム57と、支持部材61などによって構成されている。また、差圧センサ52は、後述する絶縁部材62を介して差圧発信器63のダイアフラムベース64に搭載されている。
【0046】
差圧センサ52の支持部材61は、通路形成部材2の第1および第2の凹部54,55にセンサダイアフラム57を挟んで対向する一対の圧力室65,66を有している。これらの圧力室65,66は、それぞれ支持部材61を一方の主面61aと他方の主面61bとに開口しており、支持部材61と、センサダイアフラム57と絶縁部材62とによって囲まれて形成されている。支持部材61は、絶縁部材62の一方の主面62aに接合されている。
【0047】
絶縁部材62は、ガラスによって形成されており、差圧センサ52とダイアフラムベース64とを電気的に絶縁している。絶縁部材62の他方の主面62bは、ダイアフラムベース64の一方の主面64aに接着剤67によって接着されている。絶縁部材62には、支持部材61の一方の圧力室65に開口する第1の貫通孔68と、支持部材61の他方の圧力室66に開口する第2の貫通孔69とが形成されている。
【0048】
ダイアフラムベース64は、例えばステンレス鋼などの金属材料によって所定の形状に形成されている。ダイアフラムベース64の一方の主面64aには、差圧センサ52と隣接するように中継基板71が設けられている。中継基板71には、電極パッド72と、図示していない複数の外部出力ピンなどが設けられている。電極パッド72は、図示していない配線によって外部出力ピンに接続されている。また、電極パッド72は、ボンディングワイヤ73を介してセンサダイアフラム57の電極パッド59に接続されている。これにより、差圧センサ52は、センサダイアフラム57側の電極パッド59と、ボンディングワイヤ73と、中継基板71側の電極パッド72と、外部出力ピンなどを介して図示していない信号処理回路や電源回路等のその他の回路に電気的に接続される。
【0049】
ダイアフラムベース64の他方(図8において下側)の主面64bには、絶縁部材62とは反対方向に向けて開口する凹部からなる第1の受圧室74と第2の受圧室75とが形成されている。第1の受圧室74の開口部は第1のバリアダイアフラム76によって閉塞されている。第2の受圧室75の開口部は、第2のバリアダイアフラム77によって閉塞されている。第1のバリアダイアフラム76は、図示していないが、被計測流体が流れる低圧側流体通路の壁の一部となるように構成されており、ダイアフラムベース64に接合されている。第2のバリアダイアフラムは、被計測流体が流れる高圧側流体通路の壁の一部となるように構成され、ダイアフラムベース64に接合されている。
【0050】
また、ダイアフラムベース64には、絶縁部材62の第1の貫通孔68と第1の受圧室74とを連通する第3の貫通孔78と、絶縁部材62の第2の貫通孔69と第2の受圧室75とを連通する第4の貫通孔79とが形成されている。第1の受圧室74と、第3の貫通孔78と、第1の貫通孔68と、支持部材61の一方の圧力室65とは、第1のバリアダイアフラム76に加えられた圧力をセンサダイアフラムに57に伝達する第1の導圧路81を構成し、圧力伝達媒体としてのオイル82が充填されている。このオイル82は、ダイアフラムベース64の一側部に設けられた第1のオイル導入孔83から第1の受圧室74内に注入される。第1のオイル導入孔83は、オイル注入後に第1の栓部材84によって閉塞されている。
【0051】
また、第2の受圧室75と、第4の貫通孔79と、第2の貫通孔69と、絶縁部材62の他方の圧力室66とは、第2のバリアダイアフラム77に加えられた圧力をセンサダイアフラム57に伝達する第2の導圧路85を構成し、第1の導圧路81内と同様に圧力伝達媒体としてのオイル82が充填されている。第2の導圧路85内のオイル82は、ダイアフラムベース64の他側部に設けられた第2のオイル導入孔86から第2の受圧室75内に注入される。第2のオイル導入孔86は、オイル注入後に第2の栓部材87によって閉塞されている。
【0052】
このように構成された差圧発信器63においては、第1のバリアダイアフラム76に加えられた被計測流体の圧力がオイル82を介して支持部材61の一方の圧力室65に伝達される。また、第2のバリアダイアフラム77に加えられた被計測流体の圧力がオイル82を介して支持部材61の他方の圧力室66に伝達される。このように一方の圧力室65と他方の圧力室66とに圧力が伝達されることによりセンサダイアフラム57が変位し、差圧センサ52によって差圧が検出される。
【0053】
図8に示す封入液の封止装置51は、差圧センサ52の第1の凹部54内と第2の凹部55内との間で圧力を伝達する封入液6を封止するものである。このため、この封止装置51を用いることにより、通路形成部材2内の封入液6が変質していない差圧センサ52が得られる。なお、封入液6の変質の有無は、差圧センサ52の0点が封止材4の溶着前と溶着後とで変化しているか否かで判別することができる。
【符号の説明】
【0054】
1,21,31,51…封止装置、2…通路形成部材(装置本体)、4,23,33…封止材、4b…第2の封止材(閉塞部材)、5…封入孔、5a,22a…凹部(開口部)、5b,22b,32b…孔部、5c,22c,32c…連通部、6…封入液、24b,34b…突出部(閉塞部材)、32a…開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8