IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人株式会社の特許一覧

特開2022-147093カットファイバーの梱包体および梱包方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147093
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】カットファイバーの梱包体および梱包方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/00 20060101AFI20220929BHJP
   D01F 6/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B65D77/00 C
D01F6/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048203
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小宮 直也
【テーマコード(参考)】
3E067
4L035
【Fターム(参考)】
3E067AA18
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB26A
3E067CA04
3E067FA02
3E067FC01
4L035CC13
4L035CC20
(57)【要約】
【課題】ファイバーボール発生の少ないカットファイバーの梱包体を提供する。
【解決手段】包材内にカットファイバーを封入してなる梱包体において、カットファイバーを封入した包材内の空気の体積と、カットファイバーの体積との比を6.0以下とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包材内にカットファイバーを封入してなる梱包体であって、下記式(I)で表される、カットファイバーを封入した包材内の空気の体積と、カットファイバーの体積との比が6.0以下であることを特徴とするカットファイバーの梱包体。
空気の体積(cm)/繊維の体積(cm)≦6.0 (I)
【請求項2】
カットファイバーを包材に入れた後、下記式(I)で表されるカットファイバーを封入した包材内の空気の体積と、カットファイバーの体積との比が6.0以下となるように包材を封止することを特徴とするカットファイバーの梱包方法。
空気の体積(cm)/繊維の体積(cm)≦6.0 (I)
【請求項3】
カットファイバーを包材に入れた後、カットファイバーが入った包材から空気を吸引あるいは圧力をかけ空気を押し出して包材を封止する、請求項2記載のカットファイバーの梱包方法。
【請求項4】
カットファイバーを包材に入れる際、カットファイバーに圧力を加えた状態で包材に詰めた後、包材を封止する、請求項2記載のカットファイバーの梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバーボールの少ないカットファイバーの梱包体および梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カットファイバーは、樹脂、コンクリート、ゴムなどの様々な基材に投入して力学的特性の向上や調整を担っている。カットファイバーを基材中に均一に分散させることが、製品の品質を安定に維持するために重要であるが、投入したカットファイバーに所謂ファイバーボールと呼ばれる繊維が交絡したものが存在すると基材中で分散しないため、クラックなどの原因となり、品質の悪化を招いている。
【0003】
これらファイバーボールは、せん断力が加わることにより、カットされた繊維束が開繊し交絡することで発生する。特に輸送時に加わる振動は長時間カットファイバーにせん断力が加わるため、ファイバーボールを発生させる大きな原因となっている。
【0004】
一般的には繊維のOPUや水分率を上げることで、ファイバーボールの発生を抑制させることが考えられるが、こうすると基材との親和性が低下し補強性能が低下する課題があった。
【0005】
また、例えばゴム補強用途では、特許文献1に記載の如く、樹脂系の表面処理剤により基材との親和性を保ちつつ集束させる方法もあるが、集束している繊維束を開繊し、基材に分散させるために強いせん断力を加える必要があり、この際カットファイバーにダメージを与えてしまい補強性能が低下するといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-148033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ファイバーボール発生の少ないカットファイバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、輸送中の梱包体におけるカットファイバーの挙動とファイバーボール発生量との関連性について鋭意検討を行った結果、カットファイバーの輸送時に加わる振動は、カットファイバーの体積に対する包材内の空気量を可及的に減少させ、振動に起因するカットファイバー同士の接触を極力減少させるとき、その影響を最小限にできることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明によれば、
1.包材内にカットファイバーを封入してなる梱包体であって、下記式(I)で表される、カットファイバーを封入した包材内の空気の体積と、カットファイバーの体積との比が6.0以下であることを特徴とするカットファイバーの梱包体、
空気の体積(cm)/繊維の体積(cm)≦6.0 (I)
2.カットファイバーを包材に入れた後、下記式(I)で表されるカットファイバーを封入した包材内の空気の体積と、カットファイバーの体積との比が6.0以下となるように
包材を封止することを特徴とするカットファイバーの梱包方法、
空気の体積(cm)/繊維の体積(cm)≦6.0 (I)
3.カットファイバーを包材に入れた後、カットファイバーが入った包材から空気を吸引あるいは圧力をかけ空気を押し出して包材を封止する、上記2記載のカットファイバーの梱包方法、
4.カットファイバーを包材に入れる際、カットファイバーに圧力を加えた状態で包材に詰めた後、包材を封止する、上記2記載のカットファイバーの梱包方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカットファイバーの梱包体は、ファイバーボールの少ないカットファイバーを得ることができ、樹脂、コンクリート、ゴムなどの基材への分散や抄紙する際の水への分散に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<梱包方法>
本発明におけるカットファイバーの梱包体は、包材内にカットファイバーを封入してなる梱包体であって、式(I)で表されるカットファイバーを封入した包材内の空気の体積とカットファイバーの体積との比が6.0以下である。カットファイバーを封入した包材内の空気の体積とカットファイバーの体積との比は4.0以下が好ましく、3.0以下が最も好ましい。この比が6.0より大きいと包材内の繊維が動き易く、振動などのせん断力によりカットファイバーが開繊し、ファイバーボールが形成され易くなる。
空気の体積(cm)/繊維の体積(cm)≦6.0 (I)
ここで、包材内にカットファイバーを「封入する」とは、後述の包材内の空気の体積の測定において、包材を水に沈めた際、水が包材内に侵入しない程度に包材を密閉する状態を言う。
【0012】
尚、カットファイバーを封入した包材内の空気の体積とカットファイバーの体積との比は、できるだけ小さい方が包材内の繊維が動き難くなるが、この比が2.0より小さい場合、繊維同士が密着し過ぎて繊維が損傷される場合があるので、2.0以上に留めるのが好ましい。
【0013】
本発明における包材内の空気の体積を調整する方法は、特に限定されるものではない。例えば、カットファイバーが入った包材から空気を吸引し、或いはカットファイバーが入った包材に人力又は機械的手段により圧力をかけ空気を押し出して封をしてもよい。さらにカットファイバーに圧力を加えた状態で包材に詰め封をしてもよい。
【0014】
[包材]
本発明で使用するカットファイバーを梱包する包材は、通気性の低い袋状のフィルム等でヒートシールにより密閉できるものが好ましいが、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの袋あるいは通気性を改善するためにアルミが蒸着されたものでもよい。さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、PTFE、ナイロン、ABS、アクリル、塩化ビニルなどの樹脂ケースを使用してもよい。
【0015】
<カットファイバー>
本発明で使用するカットファイバーは、公知のもので特に限定されるものではない。例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、カーボン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸繊維、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリアクリロニトリル系、セルロース系、レーヨン系繊維
あるいはガラス繊維、金属繊維、岩石繊維などが使用可能である。
【0016】
[カット方法]
本発明で使用するカットファイバーのカット方法は、公知のもので特に限定されるものではない。例えばギロチンカット、ロータリーカッターあるいははさみや裁断機を用いたハンドカットでもよい。
【0017】
[ファイバーボールの割合]
本発明で使用するカットファイバー中のファイバーボールの割合は5.0%以下である。ファイバーボールの割合は4.0%以下が好ましく、3.5%以下がさらに好ましく、3.0以下が最も好ましい。この割合が5.0%より大きい場合は、基材中でのカットファイバーの分散が不均一となり、製品の外観不良やクラックなどが生じ歩留まりの悪化を招く。
【実施例0018】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例および比較例は本発明の理解を助けるためのものであって、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0019】
<測定・評価方法>
実施例および比較例においては、下記の項目について、下記の方法によって測定・評価を行った。
【0020】
(1)カットファイバーの体積
カットファイバーの重量を測り、その重量にカットファイバーの比重を除して算出した。
【0021】
(2)包材内の空気の体積
はかりに水の入った容器を準備し、風袋引きを行う。ついでカットファイバーや空気のない状態の包材を、容器の壁面および底面に触れないように水に沈め、その重量(浮力)から包材の体積を算出した。また、包材の体積の測定と同様に、包材にカットファイバーを封入した梱包体ごと、容器の壁面および底面に触れないように水中に沈め、その重量からカットファイバー、包材、空気を全て含む体積を算出し、全ての体積からカットファイバーと包材の体積を減じることで空気の体積を算出した。
【0022】
(3)カットファイバー中のファイバーボールの割合
カットファイバーの入った包材を田中化学機械製ロータップ篩振盪器の容器に入れて、当該振盪器に設置し、横290cpm、縦156cpmの条件で振動を1時間与えた。
【0023】
次いで熊谷利機工業製標準型フラットスクリーンにスリット6/1000”(1000分の6インチ)のスクリーンプレート(スリット幅49mm、スリット数94×4列)をセットし、上記の振動1時間で得たカットファイバーを10.0g投入した。その後ダイヤフラム振動数700rpm、振巾の高さ3.2mm、ゲートの高さ3.2mm、水量17.0L/min条件で3分間振動を与え、スクリーン上に残った繊維を乾燥し重量を測定した。そして、スクリーン上に残った繊維の重量をフラットスクリーンに投入した繊維の重量で除し、カットファイバー中のファイバーボールの割合を算出した。
【0024】
<実施例1>
まず、繊度2.2dtexのメタアラミド繊維(帝人製コーネックス)をギロチンカットにて3mmにカットしたカットファイバーを準備した。この時のカットファイバー中の
ファイバーボールの割合は2.46%であった。このカットファイバーを、セイニチ製ユニパックF-4(チャック付き)に入れ、人力により圧力をかけて空気を押し出して密封をした。この時の梱包体におけるカットファイバーの体積は7.3cm、包材内の空気の体積は17.3cmであり、式(I)における空気の体積/繊維の体積の比は2.4であった。
【0025】
次いで、振盪器にてカットファイバーが入った包材に振動を与えた。最後に、包材内のカットファイバーを全量フラットスクリーンに投入し、カットファイバー中のファイバーボールの割合を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0026】
<実施例2>
包材内の空気の体積を31.6cm、空気の体積/繊維の体積の比を4.4とした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた結果を表1に示す。
【0027】
<実施例3>
包材内の空気の体積を35.5cm、空気の体積/繊維の体積の比を4.9とした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた結果を表1に示す。
【0028】
<実施例4>
繊維種を繊度1.7dtexのポリエチレンテレフタレートとし、包材内の空気の体積を28.7cm、空気の体積/繊維の体積の比を3.8とした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた結果を表1に示す。
【0029】
<実施例5>
繊維種を繊度1.7dtexのポリエチレンテレフタレートとし、包材内の空気の体積を40.3cm、空気の体積/繊維の体積の比を5.4とした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた結果を表1に示す。
【0030】
<比較例1>
包材内の空気の体積を44.5cm、空気の体積/繊維の体積の比を6.2とした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた結果を表2に示す。
【0031】
<比較例2>
繊維種を繊度1.7dtexのポリエチレンテレフタレートとし、包材内の空気の体積を51.2cm、空気の体積/繊維の体積の比を6.8とした以外は、実施例1と同様の方法で実施した。得られた結果を表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、ファイバーボールの少ないカットファイバーを得ることができ、樹脂、コンクリート、ゴムなどの基材への分散や抄紙する際の水への分散性が可及的に向上するので、産業上の利用可能性は高く、その工業的価値は極めて大きい。