(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147106
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷方法、印刷プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
B41J 2/055 20060101AFI20220929BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220929BHJP
B41J 2/015 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B41J2/055
B41J2/01 451
B41J2/015 101
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048222
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】奥島 智靖
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB27
2C056EB42
2C056EC07
2C056EC37
2C056FA04
2C056FA13
2C056KB16
2C057AF40
2C057AL36
2C057AL37
2C057AM17
2C057AN05
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】駆動素子によって圧力室内のインクに圧力変動を与えてノズルからインクを吐出する吐出ヘッドを用いて印刷を実行するにあたって、残留振動の影響を抑制する。
【解決手段】印刷媒体WPの搬送速度Vに応じた周期Csを空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングTc(I)が設定される。禁止区間Pw外にI番目の候補タイミングTc(I)が設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングTc(I)をI番目の出力タイミングTd(I)に決定する。一方、禁止区間Pw内にI番目の候補タイミングTc(I)が設定されている場合には、禁止区間Pwより後のタイミングをI番目の出力タイミングTd(I)に決定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留する圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内のインクに圧力変動を与える駆動素子とを有する吐出ヘッドと、
前記ノズルに対向する印刷媒体を前記吐出ヘッドに対して相対的に移動させる駆動部と、
時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の出力タイミングを決定して、前記N個の出力タイミングのそれぞれで前記駆動素子に吐出信号を出力する制御部と
を備え、
前記駆動素子は、前記制御部から受信した前記吐出信号に応じて前記圧力室内のインクに圧力変動を与えることで、前記ノズルからインクを吐出させ、
前記制御部は、前記吐出ヘッドに対する前記印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングを設定して、起点タイミングから所定時間を経過した所定範囲に設けられる禁止区間と前記N個の候補タイミングとに基づき、前記N個の出力タイミングを決定するタイミング決定動作を実行し、
前記N個の候補タイミングのうちの1番目の候補タイミングは、前記N個の出力タイミングのうちの1番目の出力タイミングとして設定され、
前記タイミング決定動作では、(I-1)番目(Iは2以上でN以下の整数)の出力タイミングを前記起点タイミングとする前記禁止区間外にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングをI番目の出力タイミングに決定する一方、(I-1)番目の出力タイミングを前記起点タイミングとする前記禁止区間内にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、前記禁止区間より後のタイミングをI番目の出力タイミングに決定する演算を、2番目以後の前記候補タイミングに対して時系列順に実行する印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、(I-1)番目の候補タイミングとI番目の候補タイミングとの間の時間間隔をK(Kは2以上の整数)で除算した値を単位時間とし、I番目の候補タイミングから単位時間ずつタイミングを遅らせて最初に禁止区間から外れるタイミングをI番目の出力タイミングに決定する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷媒体に着弾したインクを検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記タイミング決定動作で決定した前記出力タイミングで前記吐出信号を前記駆動素子に出力して前記印刷媒体にテスト画像を印刷する動作を、前記禁止区間を変更しつつ繰り返し実行し、前記テスト画像を前記検出部により検出した結果に基づき、前記禁止区間を決定する請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
インクを貯留する圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内のインクに圧力変動を与える駆動素子とを有する吐出ヘッドの前記ノズルから、印刷媒体にインクを吐出する印刷方法において、
時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の出力タイミングを決定する工程と、
前記ノズルに対向する印刷媒体を前記吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、前記N個の出力タイミングのそれぞれで前記駆動素子に吐出信号を出力して、前記駆動素子が前記吐出信号に応じて前記圧力室内のインクに圧力変動を与えて前記ノズルからインクを吐出させる工程と
を備え、
前記出力タイミングを決定する工程では、前記吐出ヘッドに対する前記印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングを設定して、起点タイミングから所定時間を経過した所定範囲に設けられる禁止区間と前記N個の候補タイミングとに基づき、前記N個の出力タイミングを決定するタイミング決定動作を実行し、
前記N個の候補タイミングのうちの1番目の候補タイミングは、前記N個の出力タイミングのうちの1番目の出力タイミングとして設定され、
前記タイミング決定動作では、(I-1)番目(Iは2以上でN以下の整数)の出力タイミングを前記起点タイミングとする前記禁止区間外にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングをI番目の出力タイミングに決定する一方、(I-1)番目の出力タイミングを前記起点タイミングとする前記禁止区間内にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、前記禁止区間より後のタイミングをI番目の出力タイミングに決定する演算を、2番目以後の前記候補タイミングに対して時系列順に実行する印刷方法。
【請求項5】
インクを貯留する圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内のインクに圧力変動を与える駆動素子とを有する吐出ヘッドの前記ノズルからの印刷媒体へのインクの吐出を、コンピュータに制御させる印刷プログラムにおいて、
時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の出力タイミングを決定する工程と、
前記ノズルに対向する印刷媒体を前記吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、前記N個の出力タイミングのそれぞれで前記駆動素子に吐出信号を出力して、前記駆動素子が前記吐出信号に応じて前記圧力室内のインクに圧力変動を与えて前記ノズルからインクを吐出させる工程と
を、前記コンピュータに実行させ、
前記出力タイミングを決定する工程では、前記吐出ヘッドに対する前記印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングを設定して、起点タイミングから所定時間を経過した所定範囲に設けられる禁止区間と前記N個の候補タイミングとに基づき、前記N個の出力タイミングを決定するタイミング決定動作を実行し、
前記N個の候補タイミングのうちの1番目の候補タイミングは、前記N個の出力タイミングのうちの1番目の出力タイミングとして設定され、
前記タイミング決定動作では、(I-1)番目(Iは2以上でN以下の整数)の出力タイミングを前記起点タイミングとする前記禁止区間外にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングをI番目の出力タイミングに決定する一方、(I-1)番目の出力タイミングを前記起点タイミングとする前記禁止区間内にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、前記禁止区間より後のタイミングをI番目の出力タイミングに決定する演算を、2番目以後の前記候補タイミングに対して時系列順に実行する印刷プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷プログラムを、コンピュータにより読み出し可能に記録する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力室に貯留されるインクに圧力変動を与えることで、圧力室に連通するノズルからインクを吐出するインクジェット技術に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出ヘッドに対して印刷媒体を相対的に移動させつつ、吐出ヘッドのノズルからインクジェット方式でインクを吐出することで、印刷媒体に画像を印刷する印刷装置が知られている。かかる印刷装置では、吐出ヘッドに対する印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔で、インクが吐出される。つまり、印刷媒体の相対速度が高くなるのに応じて、インクの吐出間隔を短くすることで、印刷媒体の目標位置にインクを的確に着弾させる。
【0003】
この吐出ヘッドは、インクを貯留する圧力室と、圧力室に連通するノズルとを有し、圧力室に対して設けられた駆動素子によって圧力室内のインクに圧力変動を与えることで、ノズルからインクを吐出する。特許文献1で指摘されているように、このような吐出ヘッドでは、インクの吐出に伴って、ノズルに形成されるインクのメニスカスに振動が生じ、この振動は時間経過とともに減衰する。つまり、インクの吐出から所定の減衰時間が経過するまでは、インクのメニスカスに残留振動が存在する。
【0004】
インクの吐出間隔が残留振動の減衰時間より長い場合には、一のインク吐出から次のインク吐出までの間に残留振動が減衰する。そのため、残留振動の影響を受けることなく、ノズルからインクを吐出することができる。一方、インクの吐出間隔が残留振動の減衰時間より短い場合には、一のインク吐出から次のインク吐出までの間に残留振動が減衰しない。そのため、次のインク吐出のために圧力室内のインクに与えられた圧力変動に残留振動が影響する。その結果、ノズルからのインクの吐出速度が著しく低下して、インクが印刷媒体に着弾する位置が大きくずれてしまう場合があった。
【0005】
そこで、特許文献1では、2周期を1セットとして考えて、インクを吐出する周期(換言すれば、間隔)が、残留振動の影響が生じる周期の2倍に相当する場合には、2周期目の開始タイミングを遅らせることで、残留振動の影響を抑制している。また、特許文献2では、互いに異なるインクの出力タイミングを与える複数種類の吐出信号を準備しておき、これらを使い分けることで、残留振動の影響を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-013391号公報
【特許文献2】特開2015-139915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、特許文献1では2周期を1セットとした制御が求められ、特許文献2では複数種類の吐出信号を使い分けるといった制御が求められる。このような制御は必ずしも簡便であるとは言えず、残留振動の影響を抑制する異なる手法が求められていた。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、駆動素子によって圧力室内のインクに圧力変動を与えてノズルからインクを吐出する吐出ヘッドを用いて印刷を実行するにあたって、残留振動の影響を抑制することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る印刷装置は、インクを貯留する圧力室と、圧力室に連通するノズルと、圧力室内のインクに圧力変動を与える駆動素子とを有する吐出ヘッドと、ノズルに対向する印刷媒体を吐出ヘッドに対して相対的に移動させる駆動部と、時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の出力タイミングを決定して、N個の出力タイミングのそれぞれで駆動素子に吐出信号を出力する制御部とを備え、駆動素子は、制御部から受信した吐出信号に応じて圧力室内のインクに圧力変動を与えることで、ノズルからインクを吐出させ、制御部は、吐出ヘッドに対する印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングを設定して、起点タイミングから所定時間を経過した所定範囲に設けられる禁止区間とN個の候補タイミングとに基づき、N個の出力タイミングを決定するタイミング決定動作を実行し、N個の候補タイミングのうちの1番目の候補タイミングは、N個の出力タイミングのうちの1番目の出力タイミングとして設定され、タイミング決定動作では、(I-1)番目(Iは2以上でN以下の整数)の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間外にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングをI番目の出力タイミングに決定する一方、(I-1)番目の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間内にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、禁止区間より後のタイミングをI番目の出力タイミングに決定する演算を、2番目以後の候補タイミングに対して時系列順に実行する。
【0010】
本発明に係る印刷方法は、インクを貯留する圧力室と、圧力室に連通するノズルと、圧力室内のインクに圧力変動を与える駆動素子とを有する吐出ヘッドのノズルから、印刷媒体にインクを吐出する印刷方法において、時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の出力タイミングを決定する工程と、ノズルに対向する印刷媒体を吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、N個の出力タイミングのそれぞれで駆動素子に吐出信号を出力して、駆動素子が吐出信号に応じて圧力室内のインクに圧力変動を与えてノズルからインクを吐出させる工程とを備え、出力タイミングを決定する工程では、吐出ヘッドに対する印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングを設定して、起点タイミングから所定時間を経過した所定範囲に設けられる禁止区間とN個の候補タイミングとに基づき、N個の出力タイミングを決定するタイミング決定動作を実行し、N個の候補タイミングのうちの1番目の候補タイミングは、N個の出力タイミングのうちの1番目の出力タイミングとして設定され、タイミング決定動作では、(I-1)番目(Iは2以上でN以下の整数)の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間外にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングをI番目の出力タイミングに決定する一方、(I-1)番目の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間内にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、禁止区間より後のタイミングをI番目の出力タイミングに決定する演算を、2番目以後の候補タイミングに対して時系列順に実行する。
【0011】
本発明に係る印刷プログラムは、インクを貯留する圧力室と、圧力室に連通するノズルと、圧力室内のインクに圧力変動を与える駆動素子とを有する吐出ヘッドのノズルからの印刷媒体へのインクの吐出を、コンピュータに制御させる印刷プログラムにおいて、時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個(Nは2以上の整数)の出力タイミングを決定する工程と、ノズルに対向する印刷媒体を吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、N個の出力タイミングのそれぞれで駆動素子に吐出信号を出力して、駆動素子が吐出信号に応じて圧力室内のインクに圧力変動を与えてノズルからインクを吐出させる工程とを、コンピュータに実行させ、出力タイミングを決定する工程では、吐出ヘッドに対する印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングを設定して、起点タイミングから所定時間を経過した所定範囲に設けられる禁止区間とN個の候補タイミングとに基づき、N個の出力タイミングを決定するタイミング決定動作を実行し、N個の候補タイミングのうちの1番目の候補タイミングは、N個の出力タイミングのうちの1番目の出力タイミングとして設定され、タイミング決定動作では、(I-1)番目(Iは2以上でN以下の整数)の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間外にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングをI番目の出力タイミングに決定する一方、(I-1)番目の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間内にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、禁止区間より後のタイミングをI番目の出力タイミングに決定する演算を、2番目以後の候補タイミングに対して時系列順に実行する。
【0012】
本発明に係る記録媒体は、上記の印刷プログラムを、コンピュータにより読み出し可能に記録する。
【0013】
このように構成された本発明(印刷装置、印刷方法、印刷プログラムおよび記録媒体)では、時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の出力タイミングが決定される。詳細には、吐出ヘッドに対する印刷媒体の相対速度に応じた時間間隔を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングが設定される。そして、起点タイミングから所定時間を経過した所定範囲に設けられる禁止区間と、N個の候補タイミングとに基づき、N個の出力タイミングが決定される(タイミング決定動作)。このタイミング決定動作では、(I-1)番目の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間外にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングをI番目の出力タイミングに決定する一方、(I-1)番目の出力タイミングを起点タイミングとする禁止区間内にI番目の候補タイミングが設定されている場合には、禁止区間より後のタイミングをI番目の出力タイミングに決定する演算を、2番目以後の候補タイミングに対して時系列順に実行する。つまり、I番目の候補タイミングが禁止区間内にあって、残留振動の影響を受けるタイミングに相当する場合には、この禁止区間より後のタイミングにI番目の出力タイミングが決定される。これによって、残留振動の影響が抑制されたタイミングに、N個の出力タイミングを決定することができる。こうして、駆動素子によって圧力室内のインクに圧力変動を与えてノズルからインクを吐出する吐出ヘッドを用いて印刷を実行するにあたって、残留振動の影響を抑制することが可能となっている。
【0014】
また、制御部は、(I-1)番目の候補タイミングとI番目の候補タイミングとの間の時間間隔をK(Kは2以上の整数)で除算した値を単位時間とし、I番目の候補タイミングから単位時間ずつタイミングを遅らせて最初に禁止区間から外れるタイミングをI番目の出力タイミングに決定するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、単位時間ずつタイミングをずらすといった簡便な演算によって、残留振動の影響が抑制されたタイミングに出力タイミングを決定することができる。
【0015】
なお、禁止区間は、理論的に求めてもよいし、実験的に求めてもよい。後者の場合には、例えば次のように構成することができる。すなわち、印刷媒体に着弾したインクを検出する検出部をさらに備え、制御部は、タイミング決定動作で決定した出力タイミングで吐出信号を駆動素子に出力して印刷媒体にテスト画像を印刷する動作を、禁止区間を変更しつつ繰り返し実行し、テスト画像を検出部により検出した結果に基づき、禁止区間を決定するように、印刷装置を構成してもよい。これによって、残留振動の影響の程度に応じて、禁止区間を適切化することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、駆動素子によって圧力室内のインクに圧力変動を与えてノズルからインクを吐出する吐出ヘッドを用いて印刷を実行するにあたって、残留振動の影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】は本発明に係る印刷装置の一例を装備する印刷システムを模式的に示す正面図。
【
図2】吐出ヘッドの構成を模式的に示す部分断面図。
【
図3】
図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図4】吐出ヘッドの圧電素子に出力される吐出信号の波形を模式的に示す図。
【
図5】吐出信号に応じてインクが出力されるのに伴って生じる残留振動を模式的に示す図。
【
図6】印刷媒体の搬送速度の時間変化の一例を模式的に示す図。
【
図7】吐出信号を出力する周期を調整しつつ実行される印刷方法の一例を示すフローチャート。
【
図8】
図7のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図。
【
図9】候補タイミングが禁止区間に含まれる場合の出力タイミングの設定方法の一例を模式的に示す図。
【
図10】吐出タイミング調整印刷を実行する対象速度領域を決定する処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】禁止区間を決定する処理の第1例を示すフローチャート。
【
図12】禁止区間を決定する処理の第2例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を装備する印刷システム100を模式的に示す正面図である。
図1および以下に示す図では、装置各部の配置関係を明確にするために、印刷システム100を構成する給紙部1、印刷装置3および排紙部4を配列する水平方向であるX方向、X方向と直交する水平方向であるY方向を適宜示す。
【0019】
本実施例に係る印刷システム100は、給紙部1と、印刷装置3と、排紙部4とを備えている。給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持している。給紙部1は、印刷装置3に対して連続紙からなる印刷媒体WPを巻き出して供給する。印刷装置3は、印刷媒体WPに対してインクを吐出して画像を形成することによって印刷を行い、印刷媒体WPを排紙部4に対して送り出す。排紙部4は、印刷装置3で印刷された印刷媒体WPを水平軸周りに巻き取る。
【0020】
ここでは、給紙部1によって連続紙である印刷媒体WPが送り出されて搬送される方向を搬送方向Xとする。また、搬送方向Xに直交する水平方向を幅方向Yとする。上述した給紙部1は、搬送方向Xにおける印刷装置3の上流側に配置されている。上述した排紙部4は、搬送方向Xにおける印刷装置3の下流側に配置されている。
【0021】
なお、上述した連続紙からなる印刷媒体WPが本発明における「印刷媒体」に相当する。
【0022】
印刷装置3は、給紙部1からの印刷媒体WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から取り込まれた印刷媒体WPは、複数個の搬送ローラ9によって搬送方向Xに送られ、下流側の排紙部4に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と排紙部4との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9上を搬送されている印刷媒体WPを排紙部4に向かって送り出す。
【0023】
印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、印刷部13と、乾燥部15と、ラインスキャナ17とを上流側から搬送方向Xに沿ってその順に備えている。印刷部13は、印刷媒体WPに印刷を行う。乾燥部15は、印刷部13によって印刷された印刷媒体WPの乾燥を行う。ラインスキャナ17は、印刷媒体WPに印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査する。
【0024】
印刷部13は、インクを印刷媒体WPに対して吐出する複数個のノズルを有する吐出ヘッド5を備えている。印刷部13は、一般的に、印刷媒体WPの搬送方向Xに沿って複数個配置されている。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の合計4個の印刷部13を備えている。但し、以下の説明においては印刷装置3が、1個の印刷部13だけを備えている構成を例にとって説明する。また、印刷部13は、印刷媒体WPの幅方向Yに、印刷媒体WPの幅を超える長さを有する。印刷部13は、幅方向Yに移動することなく印刷媒体WPの幅方向における印刷領域を印刷できるだけの吐出ヘッド5を備えている。
【0025】
図2は吐出ヘッドの構成を模式的に示す部分断面図である。上述のように、印刷部13は複数の吐出ヘッド5を有し、各吐出ヘッド5はインクジェット方式でインクを吐出する。
図2に示すように、吐出ヘッド5は、ハウジング51と、ハウジング51の底部で所定方向に配列された複数のノズル52を有し、複数のノズル52のそれぞれは下方へ開口する。ハウジング51の内部には、複数のノズル52にそれぞれ連通する複数のキャビティ53と、複数のキャビティ53に連通するインク供給室54とが設けられている。さらに、ハウジング51には、インク供給室54に連通する流入口511および流出口512が開口しており、図示を省略するインク循環機構によって流入口511からインク供給室54に供給されたインクが流出口512から回収されることで、インク供給室54に対してインクが循環的に供給される。かかるインク供給室54から各キャビティ53にインクが供給される。
【0026】
複数のキャビティ53のそれぞれに対しては、圧電素子55が設けられている。圧電素子55は、例えばピエゾ素子であり、印加された電気信号に応じて変形する。そして、圧電素子55の変形に応じて、キャビティ53内のインクの圧力が変動する。後述するように、この圧電素子55には、互いに異なる電気信号である吐出信号と微駆動信号とが印加される。吐出信号が圧電素子55に印加されると、圧電素子55は、ノズル52からインクの吐出に要する圧力変動(吐出圧力変動)をキャビティ53内のインクに与える。一方、微駆動信号が圧電素子55に印加されると、圧電素子55は、ノズル52からインクを吐出させない程度の圧力変動(微駆動圧力変動)をキャビティ53内のインクに与える。
【0027】
図3は
図1の印刷装置3が備える電気的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、印刷装置3は、印刷媒体WPを搬送するために駆動ローラ7を駆動する搬送モータ341と、搬送モータ341の回転位置(換言すれば、印刷媒体WPの搬送位置)を検出するエンコーダ342とを備える。搬送モータ341は、駆動ローラ7を回転させるサーボモータである。また、印刷装置3は、ラインスキャナ17(ラインカメラ)を備える。このラインスキャナ17は、印刷媒体WPの搬送方向に対して垂直に配置され、例えば、印刷部13の下流側であって、乾燥部15と排紙部4との間の撮像位置を通過する印刷媒体WPの記録面に印刷された画像を撮像する。
【0028】
さらに、印刷装置3は、装置全体を統括的に制御する制御部39を備える。この制御部39は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサで構成された演算部391と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置で構成された記憶部392とを有する。演算部391は、搬送モータ341、エンコーダ342、ラインスキャナ17および圧電素子55を制御し、記憶部392は、演算部391によって実行される印刷プログラム393を記憶する。この印刷プログラム393は、制御部39とは別に設けられた記録媒体399によって例えば提供される。この記録媒体399は、印刷プログラム393をコンピュータ(制御部39)によって読み出し可能に記録する。かかる記録媒体399としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードあるいは外部のサーバコンピュータの記憶装置などが挙げられる。そして、印刷プログラム393は、制御部39によって実行される制御の内容を規定する。続いては、印刷プログラム393に従って演算部391により実行される制御について説明する。
【0029】
図4は吐出ヘッドの圧電素子に出力される吐出信号の波形を模式的に示す図である。
図4において横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。
図4に示すように、吐出信号Sdは、時間経過とともに電圧が変化する振幅Adの電圧信号であり、演算部391が圧電素子55に吐出信号Sdを出力すると、圧電素子55は、吐出信号Sdが示す電圧の変化に応じて、キャビティ53内のインクに与える圧力を変動させる。この圧力変動によって、キャビティ53に連通するノズル52からインクが吐出される。かかる吐出信号Sdは、印刷媒体WPの搬送速度に応じて周期的に出力される。
【0030】
詳述すると、演算部391は、エンコーダ342が検出した印刷媒体WPの搬送位置に基づき、印刷媒体WPが搬送される速度を算出する。演算部391は、こうして算出された印刷媒体WPの搬送速度に基づき、吐出信号Sdを圧電素子55に出力する周期Cs(すなわち、時間間隔)を決定する。つまり、印刷媒体WPの搬送速度によらず、印刷媒体WPに一定の分解能でインクを着弾させるには、印刷媒体WPの搬送速度に応じて吐出信号Sdを出力する周期Csを調整する必要がある。具体的には、演算部391は、印刷媒体WPの搬送速度が高くなるのに応じて吐出信号Sdの周期Csを短くし、印刷媒体WPの搬送速度が低くなるのに応じて吐出信号Sdの周期Csを長くする。つまり、周期Csは搬送速度Vに反比例する。
【0031】
図5は吐出信号に応じてインクが出力されるのに伴って生じる残留振動を模式的に示す図である。
図5において横軸は時間を表し、縦軸はメニスカス圧を表す。ノズル52からインクが吐出されると、ノズル52に形成されるインクのメニスカスに振動が生じる。インクの吐出に伴って発生したメニスカスの残留振動は時間経過とともに減衰する。そのため、吐出信号Sdの周期Csが残留振動の減衰時間より長ければ、吐出信号Sdに応じたインクの吐出に対するメニスカスの残留振動の影響はない。一方、吐出信号Sdの周期Csがメニスカスの残留振動の減衰時間より短いと、メニスカスが振動している状態で吐出信号Sdに応じたインクの吐出が行われることとなる。そのため、インクの吐出速度が著しく低下して、印刷媒体WPへのインクの着弾位置が大きくずれる場合があった。
【0032】
このメニスカスの残留振動がインクの吐出に与える影響は、メニスカスの残留振動の位相とインクの吐出タイミングとの関係に依存する。ここで、吐出信号Sdに応じたインクの吐出タイミングが、残留振動の一方側のピーク(時刻t11、t13)に一致あるいは近接すると、インクの吐出速度が著しく低下する場合を考える。この場合では、例えば吐出信号Sdに応じたインクの吐出タイミングが、残留振動の一方側のピークに対して逆の位相を有する他方側のピーク(t12、t14)に一致あるいは近接しても、残留振動がインクの吐出に与える影響は僅少である。つまり、残留振動の一方側のピークを含む所定の残留振動影響期間Pvにインクの吐出タイミングが含まれる場合に、残留振動がインクの吐出に影響し、インクの吐出タイミングが残留振動影響期間Pvから外れている場合には、残留振動がインクの吐出与える影響は無視できる。これに対して、インクを吐出する周期Cs(すなわち、吐出タイミング)は、印刷媒体WPの搬送速度に応じて変化する。したがって、メニスカスの残留振動の影響が顕著となるか無視できるかは、印刷媒体WPの搬送速度に依存する。
【0033】
図6は印刷媒体の搬送速度の時間変化の一例を模式的に示す図である。
図6において横軸は時間を表し、縦軸は印刷媒体WPの搬送速度Vを表す。同図の例では、加速期間Paにおいて、印刷媒体WPの搬送速度Vは、ゼロから所定の定常速度Vtまで上昇する。加速期間Paに続く定常期間Pbでは、印刷媒体WPの搬送速度Vは、定常速度Vtで一定となる。また、定常期間Pbに続く減速期間Pcでは、印刷媒体WPの搬送速度Vは、定常速度Vtからゼロまで下降する。
【0034】
上述の通り、吐出信号Sdの出力周期Csは、搬送速度Vが高いほど短く、搬送速度Vが低いほど長く設定される。したがって、
図6に示す搬送速度Vの変化に応じて、吐出信号Sdの出力周期Csが変化する。その結果、速度ゼロから速度Vlまでの低速度領域Rvlの搬送速度Vで印刷媒体WPが搬送されている場合は、吐出信号Sdに応じたインクの吐出タイミングは残留振動影響期間Pvから外れる。また、速度Vlから当該速度Vlより高い速度Vmまでの中速度領域Rvmの搬送速度Vで印刷媒体WPが搬送されている場合は、吐出信号Sdに応じたインクの吐出タイミングが残留振動影響期間Pvに重なる。さらに、速度Vmから当該速度Vmより高い速度Vhまでの高速度領域Rvhの搬送速度Vで印刷媒体WPが搬送されている場合は、吐出信号Sdに応じたインクの吐出タイミングが残留振動影響期間Pvから外れる。なお、ここの例では、定常速度Vtは速度Vmより高くて速度Vhより低い。
【0035】
そこで、搬送速度Vが低速度領域Rvl、中速度領域Rvmおよび高速度領域Rvhのいずれに属するかに応じて、異なる制御が実行される。つまり、低速度領域Rvlあるいは高速度領域Rvhの搬送速度Vで印刷媒体WPが搬送される場合には、
図4に示すように、搬送速度Vに対応する周期Csで複数の吐出信号Sdを圧電素子55に出力して、印刷が実行される。一方、中速度領域Rvmの搬送速度で印刷媒体WPが搬送される場合には、圧電素子55への吐出信号Sdの出力間隔を、搬送速度Vに応じた周期Csから適宜変更しつつ、印刷媒体WPに画像を印刷する。かかる印刷方法について、
図7および
図8を用いて説明する。
【0036】
図7は吐出信号を出力する周期を調整しつつ実行される印刷方法の一例を示すフローチャートであり、
図8は
図7のフローチャートに従って実行される動作の一例を模式的に示す図である。上述の通り、
図8のタイムチャートは、印刷媒体WPが中速度領域Rvmの搬送速度Vで搬送されている場合に実行される。
【0037】
ステップS101では、吐出信号Sdを出力するタイミングの候補となる候補タイミングTc(I)が搬送速度Vに基づき生成される。具体的には、エンコーダ342が示す印刷媒体WPの搬送位置から印刷媒体WPの搬送速度Vが求められる。そして、
図4を用いて上述したように、搬送速度Vに応じた周期Cs(時間間隔)で候補タイミングTc(I)が繰り返し生成される。ここで、Iは候補タイミングTcの順番を示す1以上の整数である。まずは、このステップS101において、候補タイミングTc(1)が生成される(I=1)。
【0038】
ステップS102では、ステップS101で生成された候補タイミングTc(I)が1番目の候補タイミングTc(1)であるか、すなわち最初に生成された候補タイミングTc(1)であるかが判断される。ここでは、候補タイミングTc(I)が1番目であるため(I=1)、ステップS102で「YES」と判断される。したがって、候補タイミングTc(1)がそのまま出力タイミングTd(1)に設定され(ステップS104)、吐出信号Sdが出力タイミングTd(1)で圧電素子55に出力されて、ノズル52からインクが吐出される(ステップS106)。
【0039】
ステップS107では、候補タイミングTc(I)がN番目の候補タイミングTc(N)であるか、すなわち最後の候補タイミングTc(N)であるかが判断される。つまり、Nは画像の印刷に要する吐出信号Sdの個数(換言すれば、インクの吐出回数)を示す2以上の整数であり、例えば、画像の印刷に1000回のインクの吐出が必要あるとすると、N=1000となる。ここでは、候補タイミングTc(1)は候補タイミングTc(N)でないため(I<N)、ステップS107で「NO」と判断され、ステップS101に戻る。
【0040】
ステップS101では、候補タイミングTc(1)から周期Csが経過した時刻を示す候補タイミングTc(2)が生成される。つまり、ステップS101は、Iが2以上の状況において、候補タイミングTc(I-1)から周期Csを経過した時刻を示す候補タイミングTc(I)を生成する。ステップS102では、候補タイミングTc(2)が1番目の候補タイミングTc(1)でないため、「NO」と判断されて、ステップS103に進む。
【0041】
ステップS103では、候補タイミングTc(2)が禁止区間Pwにあるか否かが判断される。具体的には、候補タイミングTc(I)に対しては、出力タイミングTd(I-1)を起点として所定の経過時間Pfを経過した所定範囲ΔPwに禁止区間Pwが設定される。禁止区間Pwは残留振動の影響が生じる区間を示し、上述の残留振動影響期間Pvに対応して設定される。これら禁止区間Pwおよび経過時間Pfは、理論的にあるいは実験的に予め求められて、記憶部392に記憶されている。
図8の「I=2」の欄に示すように、候補タイミングTc(2)は、出力タイミングTd(1)から経過時間Pfを経過した禁止区間Pwに含まれる。そのため、ステップS103で「YES」と判断されて、ステップS105に進む。
【0042】
ステップS105では、候補タイミングTc(I)に対して設定された禁止区間Pwの終了タイミングTweから遅延時間Dyだけ遅らせたタイミングが、出力タイミングTd(I)に設定される。こうして、出力タイミングTd(I)が禁止区間Pwより後に設定される。その結果、
図8の「I=2」の欄に示すように、出力タイミングTd(2)が設定される。そして、吐出信号Sdが出力タイミングTd(2)で圧電素子55に出力されて、ノズル52からインクが吐出される(ステップS106)。
【0043】
続くステップS107では、I<Nであるため、「NO」と判断されて、ステップS101に戻る。ステップS101では、候補タイミングTc(2)から周期Csが経過した時刻を示す候補タイミングTc(3)が生成される。そして、ステップS102では、I≠1であるため、「NO」と判断されて、ステップS103に進む。
【0044】
ステップS103では、候補タイミングTc(3)が禁止区間Pwにあるか否かが判断される。
図8の「I=3」の欄に示すように、候補タイミングTc(3)は、出力タイミングTd(2)から経過時間Pfを経過した禁止区間Pwに含まれる。そのため、ステップS105において、候補タイミングTc(3)に対する禁止区間Pwの終了タイミングTweから遅延時間Dyだけ遅らせたタイミングが、出力タイミングTd(3)に設定される。そして、吐出信号Sdが出力タイミングTd(3)で圧電素子55に出力されて、ノズル52からインクが吐出される(ステップS106)。
【0045】
続くステップS107では、I<Nであるため、「NO」と判断されて、ステップS101に戻る。ステップS101では、候補タイミングTc(3)から周期Csが経過した時刻を示す候補タイミングTc(4)が生成される。そして、ステップS102では、I≠1であるため、「NO」と判断されて、ステップS103に進む。
【0046】
ステップS103では、候補タイミングTc(4)が禁止区間Pwにあるか否かが判断される。
図8の「I=4」の欄に示すように、候補タイミングTc(4)は、出力タイミングTd(3)から経過時間Pfを経過した禁止区間Pwから外れている。したがって、候補タイミングTc(4)がそのまま出力タイミングTd(4)に設定され(ステップS104)、吐出信号Sdが出力タイミングTd(4)で圧電素子55に出力されて、ノズル52からインクが吐出される(ステップS106)。
【0047】
かかるステップS101~S106の動作が、ステップS107においてI=Nと判断されるまで繰り返される。そして、ステップS107でI=N(YES)と判断されると、
図7のフローチャートが終了する。
【0048】
以上に説明した実施形態では、時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の出力タイミングTd(I)(I=1、2、…、N)が決定される(ステップS104、S105)。詳細には、印刷媒体WPの搬送速度Vに応じた周期Cs(時間間隔)を空けて時系列で並ぶ1番目からN番目までのN個の候補タイミングTc(I)が設定される(ステップS101)。そして、ステップS103~S105では、起点タイミングから経過時間Pfを経過した所定範囲ΔPwに設けられる禁止区間Pwと、N個の候補タイミングTc(I)とに基づき、N個の出力タイミングTd(I)が決定される(タイミング決定動作)。このタイミング決定動作(ステップS103~S105)では、(I-1)番目の出力タイミングTd(I-1)を起点タイミングとする禁止区間Pw外にI番目の候補タイミングTc(I)が設定されている場合には、当該I番目の候補タイミングTc(I)をI番目の出力タイミングTd(I)に決定する(ステップS104)。一方、(I-1)番目の出力タイミングTd(I-1)を起点タイミングとする禁止区間Pw内にI番目の候補タイミングTc(I)が設定されている場合には、禁止区間Pwより後のタイミングをI番目の出力タイミングTd(I)に決定する(ステップS105)。かかる演算(ステップS103~S105)は、2番目以後の候補タイミングTc(I)に対して時系列順に実行する。つまり、I番目の候補タイミングTc(I)が禁止区間Pw内にあって、残留振動の影響を受けるタイミングに相当する場合には、この禁止区間Pwより後のタイミングにI番目の出力タイミングTd(I)が決定される。これによって、残留振動の影響が抑制されたタイミングに、N個の出力タイミングTd(I)を決定することができる。こうして、圧電素子55(駆動素子)によってキャビティ53(圧力室)内のインクに圧力変動を与えてノズル52からインクを吐出する吐出ヘッド5を用いて印刷を実行するにあたって、残留振動の影響を抑制することが可能となっている。
【0049】
ちなみに、候補タイミングTc(I)が禁止区間Pwに含まれる場合には、この禁止区間Pwより後に出力タイミングTd(I)が設定される。続いては、この設定方法の一例について説明する。
【0050】
図9は候補タイミングが禁止区間に含まれる場合の出力タイミングの設定方法の一例を模式的に示す図である。この設定方法では、出力タイミングTd(I)の設定は、所定の単位時間tuに基づき設定される。この単位時間tuは、候補タイミングTcの周期CsをKで除算した値に設定される。ここで、Kは2以上の整数であり、例えば「32」である。そして、出力タイミングTd(I-1)を起点タイミングとする禁止区間Pwに候補タイミングTc(I)が含まれる場合には、候補タイミングTc(I)から単位時間tuずつタイミングを遅延させて最初に禁止区間Pwから外れる、すなわち終了タイミングTweより後になるタイミングが出力タイミングTd(I)に決定される。
【0051】
すなわち、(I-1)番目の候補タイミングTc(I-1)とI番目の候補タイミングTc(I)との間の時間間隔(周期Cs)をKで除算した時間間隔を単位時間tuとし、禁止区間Pwが終わるタイミングを終了タイミングTweと、次の不等式満たす0以上の整数をmとしたとき、
m×tu+Tc(I)<Twe<(m+1)×tu+Tc(I)
I番目の出力タイミングをTd(I)は、次式
Td(I)=(m+1)×tu+Tc(I)
で与えられる。
【0052】
かかる設定方法では、演算部391は、(I-1)番目の候補タイミングTc(I-1)とI番目の候補タイミングTc(I)との間の周期Cs(時間間隔)をKで除算した値を単位時間tuとし、I番目の候補タイミングTc(I)から単位時間tuずつタイミングを遅らせて最初に禁止区間から外れるタイミングをI番目の出力タイミングTd(I)に決定する。かかる構成では、単位時間tuずつタイミングをずらすといった簡便な演算によって、残留振動の影響が抑制されたタイミングに出力タイミングTd(I)を決定することができる。
【0053】
ところで、
図7および
図8の印刷方法では、吐出信号Sdの出力タイミングTd(I)を適宜遅延させることでインクの吐出タイミングを調整しつつ画像を印刷している(吐出タイミング調整印刷)。特に、吐出タイミング調整印刷は、印刷媒体WPの搬送速度Vが中速度領域Rvmに属する場合に限って実行される。続いては、吐出タイミング調整印刷の対象となる対象速度領域(中速度領域Rvm)を決定する方法の一例について説明する。
【0054】
図10は吐出タイミング調整印刷を実行する対象速度領域を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、
図6で示した中速度領域Rvmを決定する。ステップS201では、搬送速度Vを識別するQvをゼロにリセットし、ステップS202では、Qvを1だけインクリメントする。ここの例では、値の大きなQvほど高い搬送速度Vを示す。そして、ステップS203では、印刷媒体WPが搬送速度V(Qv)で搬送される。また、ステップS204では、吐出信号Sdを出力する周期Csが搬送速度V(Qv)に応じて設定される。
【0055】
ステップS205では、一定の搬送速度V(Qv)で搬送される印刷媒体WPにパッチ画像が印刷される。ステップS205では、演算部391は、
図7および
図8に示した制御(出力タイミングTd(I)の調整)を実行することなく、搬送速度Vによって決まる周期Csで吐出信号Sdを圧電素子55に出力することで、パッチ画像を印刷する。こうして、各吐出信号Sdに応じてノズル52から吐出されたインクによってパッチ画像が印刷される。なお、上述の通り、印刷部13は複数の吐出ヘッド5を有する。ただし、印刷装置3に設けられた各吐出ヘッド5の構成は共通する。したがって、パッチ画像の印刷は、一の吐出ヘッド5を用いて実行すればよい。
【0056】
こうして印刷媒体WPに印刷されたパッチ画像は、印刷媒体WPの搬送に伴ってラインスキャナ17の撮像位置に向けて移動する。そして、ラインスキャナ17は、撮像位置に到達したパッチ画像を撮像することで、撮像画像IM(Qv)を取得して、記憶部392に保存する(ステップS206)。
【0057】
ステップS207は、QvがQvxに一致するか否かが判断される。QvがQvxに一致しない場合(ステップS207で「NO」)には、ステップS202でQvが1だけインクリメントされて、搬送速度V(Qv)が1段階だけ上昇する。ステップS203では、搬送速度V(Qv)で印刷媒体WPが搬送され、ステップS204では、搬送速度V(Qv)に応じた吐出信号Sdの出力タイミングが設定される。そして、パッチ画像の印刷、撮像および保存が実行される(ステップS205~S206)。
【0058】
このように、搬送速度V(Qv)を上昇させながらステップS203~S206を繰り返すことで、互いに異なる搬送速度Vで印刷媒体WPを搬送しつつ印刷媒体WPに印刷したパッチ画像の撮像画像IM(Qv)が取得される。そして、ステップS207で、QvがQvxに一致する(YES)と判断されると、演算部391は、撮像画像IM(Qv)を解析する(ステップS208、S209)。
【0059】
詳述すると、ステップS208では、互いに異なる搬送速度Vで搬送された印刷媒体WPに対して印刷されたパッチ画像を示す複数の撮像画像IM(Qv)(Qv=1、2、…、Qvx)それぞれの濃度ムラが算出される。ステップS209では、この濃度ムラに基づき、中速度領域Rvm(対象速度領域)が決定される。具体的には、所定の閾値よりも大きな濃度ムラを有する撮像画像IM(Qv)が特定される。つまり、残留振動の影響を受けた状態ではインクの吐出が安定せずに、印刷されたパッチ画像に大きな濃度ムラが生じる。換言すれば、大きな濃度ムラを示す撮像画像IM(Qv)は、残留振動の影響を受けつつ吐出されたインクにより構成される。よって、この撮像画像IM(Qv)を印刷した際の印刷媒体WPの搬送速度Vに基づき、中速度領域Rvm(対象速度領域)を特定できる。また、中速度領域Rvmの特定に伴って、中速度領域Rvmより低い速度領域が低速度領域Rvlに特定され、中速度領域Rvmより高い速度領域が高速度領域Rvhに特定される。
【0060】
なお、濃度ムラの算出方法は、種々考えられ得る。例えば、撮像画像IM(Qv)を複数の微小領域に分割して、複数の微小領域それぞれの濃度の分散あるいは標準偏差を濃度ムラとして算出すればよい。
【0061】
このように、
図10の対象速度領域決定処理では、演算部391は、吐出ヘッド5のノズル52から吐出されたインクによって印刷媒体WPにパッチ画像(テスト画像)を印刷するテスト印刷動作(ステップS202~S205)と、パッチ画像をラインスキャナ17により(検出部)により撮像した結果に基づき、吐出タイミング調整印刷を実行する条件(中速度領域Rvm)を決定する条件決定動作(ステップS206~S209)とを実行する。これによって、吐出タイミング調整印刷を実行する条件(中速度領域Rvm)を適切化することができる。
【0062】
特にステップS202~S205では、出力タイミングの調整を実行しない状態で、搬送モータ341(駆動部)により搬送速度Vを変更しつつ搬送速度Vに応じた周期Cs(時間間隔)で吐出信号Sdを圧電素子55に出力してパッチ画像を印刷する。そして、ステップS206~S209では、パッチ画像をラインスキャナ17により撮像した結果に基づき、低速度領域Rvl、中速度領域Rvmおよび高速度領域Rvhが決定される。これによって、吐出タイミング調整印刷を実行すべきでない低速度領域Rvlおよび高速度領域Rvhと、吐出タイミング調整印刷を実行すべき中速度領域Rvmとを適切化することができる。
【0063】
図11は禁止区間を決定する処理の第1例を示すフローチャートである。このフローチャートは、禁止区間Pwを定義するパラメータである経過時間Pfと範囲ΔPwのうち、経過時間Pfを決定する。ステップS301では、搬送速度Vが中速度領域Rvmに設定される。例えば、
図10の対象速度領域決定処理で決定された中速度領域Rvmの中央値に搬送速度Vを設定することができる。ステップS302では、こうして設定された搬送速度Vで印刷媒体WPが搬送される。
【0064】
ステップS303では、経過時間Pfを識別するQfをゼロにリセットし、ステップS304では、Qfを1だけインクリメントする。ここの例では、値の大きなQfほど長い経過時間Pfを示す。そして、ステップS305では、この経過時間Pf(Qf)に基づき、禁止区間Pwが設定される。なお、禁止区間Pwの設定に際して、範囲ΔPwとしては記憶部392に記憶されたデフォルトが用いられる。
【0065】
ステップS306では、一定の搬送速度Vで搬送される印刷媒体WPにパッチ画像が印刷される。このステップS306では、
図7および
図8で示した吐出タイミング印刷処理によって、パッチ画像が印刷される。なお、上述の対象速度領域決定処理の場合と同様に、パッチ画像の印刷は、一の吐出ヘッド5を用いて実行すればよい。
【0066】
こうして印刷媒体WPに印刷されたパッチ画像は、印刷媒体WPの搬送に伴ってラインスキャナ17の撮像位置に向けて移動する。そして、ラインスキャナ17は、撮像位置に到達したパッチ画像を撮像することで、撮像画像IM(Qf)を取得して、記憶部392に保存する(ステップS307)。
【0067】
ステップS308では、QfがQfxに一致するか否かが判断される。QfがQfxに一致しない場合(ステップS308で「NO」)には、ステップS304でQfが1だけインクリメントされて、経過時間Pf(Qf)が1段階だけ長くなる。こうして変更された経過時間Pf(Qf)に基づき、ステップS305~S307が実行される。
【0068】
このように、経過時間Pf(Qf)を増加させながらステップS305~S307を繰り返すことで、互いに異なる経過時間Pfに基づき設定された禁止区間Pwに応じて出力タイミングTd(I)を調整しつつ印刷媒体WPに印刷したパッチ画像の撮像画像IM(Qf)が取得される。そして、ステップS308で、QfがQfxに一致する(YES)と判断されると、演算部391は、撮像画像IM(Qf)を解析する(ステップS309、S310)。
【0069】
詳述すると、ステップS309では、互いに異なる経過時間Pfに基づき設定された禁止区間Pwに応じて出力タイミングTd(I)を調整しつつ印刷媒体WPに印刷されたパッチ画像を示す複数の撮像画像IM(Qf)(Qf=1、2、…、Qfx)それぞれの濃度ムラが算出される。ステップS310では、この濃度ムラに基づき、経過時間Pfが決定される。具体的には、複数の撮像画像IM(Qf)のうち、最小の濃度ムラを有する撮像画像IM(Qf)が特定される。つまり、経過時間Pfが不適切であって残留振動の影響を抑え込めていない状態ではインクの吐出が安定せずに、印刷されたパッチ画像に大きな濃度ムラが生じる一方、経過時間Pfが適切であって残留振動の影響を抑え込めている状態ではインクの吐出が安定して、印刷されたパッチ画像の濃度ムラが小さく抑えられる。換言すれば、最小の濃度ムラを示す撮像画像IM(Qf)は、残留振動の影響を抑え込みつつ吐出されたインクにより構成される。よって、この撮像画像IM(Qf)を印刷した際の経過時間Pf(Qf)が特定される。
【0070】
かかる禁止区間決定処理の第1例では、演算部391は、タイミング決定動作(ステップS103~S105)により決定した出力タイミングTd(I)で吐出信号Sdを圧電素子55に出力して印刷媒体WPにパッチ画像(テスト画像)を印刷する動作を、禁止区間Pw(経過時間Pf)を変更しつつ繰り返し実行する(ステップS304~S306)。そして、パッチ画像をラインスキャナ17により検出した結果に基づき、禁止区間Pw(経過時間Pf)を決定する(ステップS307~S310)。これによって、残留振動の影響の程度に応じて、禁止区間Pw(経過時間Pf)を適切化することができる。
【0071】
図12は禁止区間を決定する処理の第2例を示すフローチャートである。このフローチャートは、禁止区間Pwを定義するパラメータである経過時間Pfと範囲ΔPwのうち、範囲ΔPwを決定する。ステップS401では、搬送速度Vが中速度領域Rvmに設定される。例えば、
図10の対象速度領域決定処理で決定された中速度領域Rvmの中央値に搬送速度Vを設定することができる。ステップS402では、こうして設定された搬送速度Vで印刷媒体WPが搬送される。また、ステップS403では、経過時間Pfが設定される。例えば、
図11の禁止区間決定処理の第1例のステップS310で決定された値を、経過時間Pfに設定することができる。
【0072】
ステップS404では、範囲ΔPwを識別するQwをゼロにリセットし、ステップS405では、Qwを1だけインクリメントする。ここの例では、値の大きなQwほど広い範囲ΔPwを示す。そして、ステップS406では、この範囲ΔPw(Qw)とステップ403の経過時間Pfとに基づき、禁止区間Pwが設定される。
【0073】
ステップS407では、一定の搬送速度Vで搬送される印刷媒体WPにパッチ画像が印刷される。このステップS407では、
図7および
図8で示した吐出タイミング印刷処理によって、パッチ画像が印刷される。なお、上述の対象速度領域決定処理の場合と同様に、パッチ画像の印刷は、一の吐出ヘッド5を用いて実行すればよい。
【0074】
こうして印刷媒体WPに印刷されたパッチ画像は、印刷媒体WPの搬送に伴ってラインスキャナ17の撮像位置に向けて移動する。そして、ラインスキャナ17は、撮像位置に到達したパッチ画像を撮像することで、撮像画像IM(Qw)を取得して、記憶部392に保存する(ステップS408)。
【0075】
ステップS409では、QwがQwxに一致するか否かが判断される。QwがQwxに一致しない場合(ステップS409で「NO」)には、ステップS405でQwが1だけインクリメントされて、経過時間Pf(Qw)が1段階だけ長くなる。こうして変更された経過時間Pf(Qw)に基づき、ステップS406~S408が実行される。
【0076】
このように、範囲ΔPw(Qw)を増加させながらステップS406~S408を繰り返すことで、互いに異なる範囲ΔPwに基づき設定された禁止区間Pwに応じて出力タイミングTd(I)を調整しつつ印刷媒体WPに印刷したパッチ画像の撮像画像IM(Qw)が取得される。そして、ステップS409で、QwがQwxに一致する(YES)と判断されると、演算部391は、撮像画像IM(Qw)を解析する(ステップS410、S411)。
【0077】
詳述すると、ステップS410では、互いに異なる範囲ΔPwに基づき設定された禁止区間Pwに応じて出力タイミングTd(I)を調整しつつ印刷媒体WPに印刷されたパッチ画像を示す複数の撮像画像IM(Qw)(Qw=1、2、…、Qwx)それぞれの濃度ムラが算出される。ステップS411では、この濃度ムラに基づき、範囲ΔPwが決定される。具体的には、複数の撮像画像IM(Qw)のうち、最小の濃度ムラを有する撮像画像IM(Qw)が特定される。つまり、範囲ΔPwが不適切であって残留振動の影響を抑え込めていない状態ではインクの吐出が安定せずに、印刷されたパッチ画像に大きな濃度ムラが生じる一方、範囲ΔPwが適切であって残留振動の影響を抑え込めている状態ではインクの吐出が安定して、印刷されたパッチ画像の濃度ムラが小さく抑えられる。換言すれば、最小の濃度ムラを示す撮像画像IM(Qw)は、残留振動の影響を抑え込みつつ吐出されたインクにより構成される。よって、この撮像画像IM(Qw)を印刷した際の範囲ΔPwが特定される。
【0078】
かかる禁止区間決定処理の第2例では、演算部391は、タイミング決定動作(ステップS103~S105)により決定した出力タイミングTd(I)で吐出信号Sdを圧電素子55に出力して印刷媒体WPにパッチ画像(テスト画像)を印刷する動作を、禁止区間Pw(範囲ΔPw)を変更しつつ繰り返し実行する(ステップS405~S407)。そして、パッチ画像をラインスキャナ17により検出した結果に基づき、禁止区間Pw(範囲ΔPw)を決定する(ステップS408~S411)。これによって、残留振動の影響の程度に応じて、禁止区間Pw(範囲ΔPw)を適切化することができる。
【0079】
以上に説明したように、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、駆動ローラ7、複数個の搬送ローラ9および駆動ローラ11が本発明の「駆動部」の一例に相当し、ラインスキャナ17が本発明の「検出部」の一例に相当し、制御部39が本発明の「制御部」および「コンピュータ」の一例に相当し、印刷プログラム393が本発明の「印刷プログラム」の一例に相当し、記録媒体399が本発明の「記録媒体」の一例に相当し、吐出ヘッド5が本発明の「吐出ヘッド」に相当し、ノズル52が本発明の「ノズル」の一例に相当し、キャビティ53が本発明の「圧力室」の一例に相当し、圧電素子55が本発明の「駆動素子」の一例に相当し、吐出信号Sdが本発明の「吐出信号」の一例に相当し、候補タイミングTc(I)が本発明の「候補タイミング」の一例に相当し、出力タイミングTd(I)が本発明の「出力タイミング」の一例に相当し、禁止区間Pwが本発明の「禁止区間」の一例に相当し、経過時間Pfが本発明の「所定時間」の一例に相当し、範囲ΔPwが本発明の「所定範囲」の一例に相当し、ステップS103~S105が本発明の「タイミング決定動作」の一例に相当する。
【0080】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、インクを吐出する方法は、上記の圧電素子55による方法に限られない。
【0081】
また、吐出ヘッド5に対して印刷媒体WPを相対的に移動させる具体的機構は上記の例に限られない。つまり、駆動ローラ7、複数個の搬送ローラ9および駆動ローラ11により印刷媒体WPを搬送するのに代えて、キャリッジによって吐出ヘッド5を移動させてもよい。
【0082】
また、上記のパッチ画像の印刷は、一個の吐出ヘッド5を用いて実行されている。ただし、複数の吐出ヘッド5を用いてパッチ画像を印刷してもよい。
【0083】
また、
図10、
図11および
図12の対象速度領域決定処理、禁止区域決定処理の第1例および第2例の実行は必須ではなく、吐出タイミング調整印刷を実行するための条件を他の方法によって決定してもよい。
【0084】
また、印刷媒体WPの搬送速度Vの可変範囲の全域において残留振動の影響が生じる場合には、速度領域によらずに
図7および
図8に示した吐出タイミング調整印刷を常に実行してもよい。
【0085】
また、上記した印刷媒体WPの素材は、連続紙であったが、それに限られるものではなく、例えば、枚葉の紙であってもよい。また、印刷媒体の素材は、必ずしも紙に限られるものではなく、例えば、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene
terephthalate)等のフィルムであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、圧力室に貯留されるインクに圧力変動を与えることで、圧力室に連通するノズルからインクを吐出するインクジェット技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
3…印刷装置
7…駆動ローラ(駆動部)
9…搬送ローラ(駆動部)
11…駆動ローラ(駆動部)
17…ラインスキャナ(検出部)
39…制御部(コンピュータ)
393…印刷プログラム
399…記録媒体
5…吐出ヘッド
52…ノズル
53…キャビティ(圧力室)
55…圧電素子(駆動素子)
Sd…吐出信号
Tc(I)…候補タイミング
Td(I)…
Pw…禁止区間
Pf…経過時間(所定時間)
ΔPw…範囲(所定範囲)
S103~S105…タイミング決定動作