IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-印刷用ラベル 図1
  • 特開-印刷用ラベル 図2
  • 特開-印刷用ラベル 図3
  • 特開-印刷用ラベル 図4
  • 特開-印刷用ラベル 図5
  • 特開-印刷用ラベル 図6
  • 特開-印刷用ラベル 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147110
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】印刷用ラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/00 20060101AFI20220929BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20220929BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G09F3/00 Q
G09F3/02 A
B65D25/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048227
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 彩佳
(72)【発明者】
【氏名】池上 大輔
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB01
3E062AC02
3E062DA07
3E062JA03
3E062JA08
3E062JB04
3E062JC07
3E062JC10
3E062JD02
(57)【要約】
【課題】本発明は、高温高湿度環境下であっても、貼付した際のラベル形状を保持することが可能な、物品から外側へ突き出した状態で貼付される印刷用ラベルを提供する。
【解決手段】物品から外部へ露出した状態で貼付される印刷用ラベルであって、紙系基材と、粘着剤層と、前記紙系基材の前記粘着剤層側の面に隣接するように配置され、かつ少なくとも前記物品から露出した露出部に配置される樹脂層と、を有する印刷用ラベル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品から外部へ露出した状態で前記物品に貼付される印刷用ラベルであって、
紙系基材と、
粘着剤層と、
前記紙系基材の前記粘着剤層側の面に隣接するように配置され、かつ少なくとも前記物品から露出した露出部に配置される樹脂層と、を有する印刷用ラベル。
【請求項2】
前記樹脂層に含まれる樹脂が非水溶性樹脂である、請求項1に記載の印刷用ラベル。
【請求項3】
前記樹脂層は、樹脂および溶媒を含む塗布液を紙系基材に塗布することにより形成される、請求項1または2に記載の印刷用ラベル。
【請求項4】
前記樹脂層が前記紙系基材上の全面に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷用ラベル。
【請求項5】
前記紙系基材が湿潤増強剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の印刷用ラベル。
【請求項6】
さらに、バインダー樹脂を有する印刷受理層を、前記紙系基材の前記粘着剤層が設けられる側と反対側に有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の印刷用ラベル。
【請求項7】
前記印刷受理層がカオリンを含有する、請求項6に記載の印刷用ラベル。
【請求項8】
前記樹脂層に含まれる樹脂がスチレン-ブタジエン樹脂である、請求項1~7のいずれか1項に記載の印刷用ラベル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の印刷用ラベルに印刷が施された、ラベル。
【請求項10】
請求項9に記載のラベルと、
前記ラベルが突き出した状態で貼付された物品と、を有する、ラベル付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品の販売促進に有効な手段として、商品に関するキャッチコピー等を表示するPOPラベルまたはアイキャッチラベルと称されるラベル(以下、このようなラベルを単にPOPラベルと称する)が用いられている。このようなラベルは、通常、物品に貼着可能な粘着部と、物品から突き出した非粘着部と、を有する。そして、粘着部を物品に貼付することにより、非粘着部が商品から突き出した状態となり、商品が陳列された際に消費者の目を引くことができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-191522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年環境への配慮から、脱プラスチック化の動きが加速している。上記のようなラベルでは、耐久性の観点から、樹脂基材が用いられてきたが、脱プラスチック化の動きに合わせて、紙基材を用いることが検討されている。
【0005】
しかしながら、紙基材は、湿潤強度が低く、水に濡れると容易に基材破壊するため、使用用途が限定される。POPラベルは、例えば、シャンプーボトルなど浴室で用いられる用途の容器に貼付されることもあり、また、夏場など高温高湿度環境下で保存されることもあり、高温高湿度環境下でも消費者への訴求効果が発揮されることが求められる。このため、高温高湿度環境下であっても、貼付した際のラベル形状を保持している(スタンディング性を保持する)ことが求められる。
【0006】
そこで本発明は、高温高湿度環境下であっても、貼付した際のラベル形状を保持することが可能な、物品から外側へ突き出した状態で貼付される印刷用ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、物品から外部へ露出した状態で前記物品に貼付される印刷用ラベルであって、紙系基材と、粘着剤層と、前記紙系基材の前記粘着剤層側の面に隣接するように配置され、かつ少なくとも前記物品から露出した露出部に配置される樹脂層と、を有する印刷用ラベルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温高湿度環境下であっても、貼付した際のラベル形状を保持することが可能な、物品から外側へ突き出した状態で貼付される印刷用ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】POPラベルが印刷面側に曲がる現象を示す写真である。
図2】POPラベルがラベリングマシンを用いて被着体(物品)に貼付される製造工程を示す模式図である。
図3】物品に貼付された実施形態のラベルを示す斜視図である。
図4図3の符号2から見た側面図である。
図5】印刷用ラベルの一実施形態を示す断面概略図である。
図6】印刷用ラベルの他の一実施形態を示す断面概略図である。
図7】印刷用ラベルの他の一実施形態を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性の測定等は、室温(20~25℃)/相対湿度45~55%の条件で行う。さらに、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。
【0011】
本発明の第一実施形態は、物品から外部へ露出した状態で前記物品に貼付される印刷用ラベルであって、紙系基材と、粘着剤層と、前記紙系基材の前記粘着剤層側の面に隣接するように配置され、かつ少なくとも前記物品から露出した露出部に配置される樹脂層と、を有する印刷用ラベルである。
【0012】
本実施形態によれば、高温高湿度環境下(例えば、60℃、95%RH)であっても、貼付した際のラベル形状を保持することが可能な、物品から外側へ突き出した状態で貼付される印刷用ラベルを提供することができる。
【0013】
POPラベルは、例えば、シャンプーボトルなど浴室で用いられる用途の容器に貼付されることもあり、高温高湿度環境下でも消費者への訴求効果が発揮されることが求められる。このような高温高湿度環境下では、図1に示すように、POPラベルの前方向におじぎをするようにラベルが曲がる現象がみられることを本発明者らは見出した。このようにラベルが前方向に曲がる現象は以下のようにして起こると推定される。
【0014】
通常、POPラベルは、図2のように、ロール体として製造された後、ラベリングマシンによって被着体に貼付されるが、ラベリングマシンの都合上、通常、POPラベルのMD方向が被着体からみて横方向になるように貼付される。また、紙系基材のパルプ繊維は製造上、ロール体の流れ方向(MD方向)に配向しているパルプ繊維が多い。高温高湿環境下にPOPラベルが置かれると、パルプ繊維が水を吸い繊維幅が太くなり、紙系基材は(MD方向と垂直の)幅方向(CD方向)に伸びる。一方で、POPラベルの印刷面(表面)側の紙系基材は、印刷(インキ)に含まれる樹脂や印刷受理層に含まれる樹脂によって、紙系基材が高温高湿環境下で水を吸った場合であっても、幅方向の伸びがある程度抑制される。ゆえに、ラベルは、幅方向に曲がり易くなるものと考えられる。また、POPラベルは突き出した露出部が粘着剤層による拘束がないために、自重でたわみやすくなる。このような課題を知見した後、検討した結果、樹脂層を設けることで、紙系基材の裏面(印刷面と反対の面)の伸びを抑制し、裏面の伸びに起因するたわみを抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。樹脂層は紙系基材の伸びを拘束する拘束層とも言える。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図3に示すように、実施形態のラベル100は、物品10に貼付して使用される。ラベル100は、POPラベルまたはアイキャッチラベルと称され、物品10にラベル100が貼付されたラベル付き物品20が店で陳列された際に、消費者の目を引く役割を果たす。
【0017】
物品10は、店で陳列される商品であり、例えば、化粧品、医薬品、日用品等であるが、どのような商品であるかは特に限定されない。従って、図示した物品10の形状は、例に過ぎず、どのような商品であるかによって異なり、例えば箱やボトルのような形状であってもよい。
【0018】
ラベル100は、物品10から突き出した状態で貼付され、情報を表示する印刷部101を有する。
【0019】
印刷部101は、例えば、物品10に関する情報として、販売実績や効能等を謳ったキャッチコピーを表示するが、印刷部101がどのような情報を表示するかは特に限定されず、例えば懸賞案内や新製品の告知等を表示してもよい。また、印刷部101が表示する情報は、文字、数字に限定されず、例えば、イラスト、写真、グラフ等であってもよく、または、それらの組み合わせ等であってもよい。
【0020】
図4に示すように、ラベル100は、物品10に対して粘着性を有する粘着剤層110、樹脂層120、紙系基材130、および印刷受理層140を有する。粘着剤層110、樹脂層120、紙系基材130、印刷受理層140で構成される印刷用ラベルに、印刷部101が印刷されてラベル100が形成される。
【0021】
ラベル100は、物品10から突き出す側である露出部104において、粘着性を有していてもよいが、本実施形態では、物品10から突き出す側である露出部104の粘着剤層110の表面に、例えばニス等からなる非粘着性のマスキング層106が形成された、いわゆる糊殺し処理が施されており、ラベル100は、物品10から突き出す側である露出部104において粘着性を有さない。このため、本実施形態では、貼付部103だけが、物品10に付着可能である。
【0022】
これと異なり、物品10から突き出す露出部104に粘着剤層110を形成せず、貼付部103だけに粘着剤層110を形成することによっても、貼付部103だけを物品10に付着可能にすることができる(図6参照)。
【0023】
粘着剤層110は、物品10に対し粘着性を有する。ラベル100が、物品10に貼付された後でも剥離可能なように粘着剤層110は再剥離性を有していてもよい。また、粘着剤層110は、ラベル100の剥離後に物品10に糊残りを生じさせないことが好ましい。
【0024】
紙系基材130には、印刷部の密着性を向上させるために易接着層を有していてもよい。紙系基材130の厚みは、適宜設計され、特に限定されないが、例えば10μm~250μmである。
【0025】
ラベル100の大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、50mm×50mmであり、貼付部は、25mm×50mmである。また、露出部の大きさは、特に限定されるものではないが、物品への貼付を考慮すると、例えば、ラベル面積の10~90%であり、20~80%であってもよい。
【0026】
例えば、本発明のラベルが貼付される物品は、商品に限定されず、商品以外の物品に貼付されて何らかの情報を示すラベルも、本発明の範囲に含まれる。
【0027】
また、本発明のラベルがどのような形状を有するかは、特に限定されず、上記実施形態のラベル100のように矩形形状でなくてもよく、それ以外の他の形状であってもよい。
【0028】
図5は、印刷用ラベルの一実施形態を示す断面模式図である。印刷用ラベル200は、ラベル100の物品貼付前であって、印刷部101を印刷するためのラベルである。すなわち、印刷用ラベルは、印刷が施されるための基材である。図5で示される印刷用ラベル200は、剥離ライナー150、粘着剤層110、樹脂層120、紙系基材130、および印刷受理層140がこの順に積層されてなる。各層は、面方向において略同一の大きさである。また、粘着剤層110上の一部は、例えばニス等からなる非粘着性のマスキング層106を有する。剥離ライナー150は、粘着剤層を保護し、粘着性の低下を防止する機能を有する部材である。そして、剥離ライナー150は、被着体に貼付する際にラベルから剥離される。図5の印刷用ラベル200においては、樹脂層120が紙系基材130上の全面に配置される。このように樹脂層120が紙系基材130上の全面に配置される形態は、裏面の伸びを抑制するという本発明の効果が一層奏されることから、好ましい。
【0029】
図6は、印刷用ラベルの他の一実施形態を示す断面模式図である。図6で示される印刷用ラベル210は、剥離ライナー150、粘着剤層110、樹脂層120、紙系基材130、および印刷受理層140を有する。図6では、紙系基材130上に粘着剤層110、樹脂層120が配置されてなる。そして、粘着剤層110は、物品に貼付される部分であり、樹脂層120は露出部104に配置される。このように樹脂層120が紙系基材130上の一部に配置される形態であってもよい。
【0030】
図7は、印刷用ラベルの他の一実施形態を示す断面模式図である。図7で示される印刷用ラベル220は、剥離ライナー150、粘着剤層110、樹脂層120、紙系基材130、および印刷受理層140を有する。当該形態では、例えば、露出部104に相当する粘着剤層面に、印刷部101を印刷する際に、ニス等からなる非粘着性のマスキング層106が形成される。そのため、本形態の印刷用ラベル220にはマスキング層106が形成されていない。
【0031】
以下、印刷用ラベルを構成する各部材について説明する。
【0032】
[印刷受理層]
好適な一実施形態として、印刷用ラベルは、さらに、バインダー樹脂を有する印刷受理層を、前記紙系基材の前記粘着剤層が設けられる側と反対側に有する。印刷受理層を備えることにより、印刷部の密着性が向上する。また、印刷受理層はバインダー樹脂を含有するため、高温高湿環境下であっても、紙系基材の伸びを抑制するため、伸びやすい裏面との長さの差が生じやすく、ラベルのたわみが起きやすくなる。ゆえに、印刷受理層を設けた形態において、本発明の効果(たわみ抑制)が一層得られやすいため、好ましい。
【0033】
印刷受理層を構成するバインダー樹脂は、印刷部との間において所定の密着性を発揮できる限り特に限定されず、水溶性樹脂、非水溶性樹脂のどちらであってもよい。バインダー樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体(スチレン-ブタジエン樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メタクリル酸-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、アクリル酸エステル共重合体などのアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニルなどの非水溶性樹脂;ポリビニルアルコール、酸化デンプンなどの水溶性樹脂を挙げることができる。耐水性の観点からは、バインダー樹脂は非水溶性樹脂であることが好ましい。中でも、印刷適性を考慮すると、印刷受理層を構成するバインダー樹脂は、アクリル樹脂およびスチレン-ブタジエン樹脂の少なくとも一方であることが好ましく、スチレン-ブタジエン樹脂であることがより好ましい。スチレン-ブタジエン樹脂のガラス転移温度は、-50℃以上50℃以下であるのが好ましく、-20℃以上20℃以下であるのがより好ましい。また、スチレン-ブタジエン樹脂(スチレン-ブタジエン共重合体)は、印刷適性の観点から、ラテックス型(スチレンブタジエンゴムラテックス)であることが好ましい。このようなスチレンブタジエンゴムラテックスとしては、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、スマーテックス(登録商標)SN-309R(日本エイアンドエル社製)、スマーテックス(登録商標)SN-307R(日本エイアンドエル社製)などが挙げられる。また、必要に応じて、バインダー樹脂は、イソシアネート系やエポキシ系の架橋剤等によって架橋された架橋体であってもよい。
【0034】
バインダー樹脂の印刷受理層中における含有量は、印刷適性を考慮すると、例えば、5~30質量%であり、10~20質量%であってもよい。
【0035】
また、必要に応じて、印刷受理層には、バインダー樹脂に加えて、カオリンなどのクレー、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等の填料や、イソシアネート系やエポキシ系の架橋剤、酸化デンプン、染料、顔料等の着色剤、定着剤、凝集剤、消泡剤、分散剤等を配合することができる。
【0036】
中でも、印刷適性が向上することから、印刷受理層は、カオリンを含むことが好ましい。カオリンの形状は、特に限定されないが、扁平板状であるのが好ましい。これにより、印刷受理層の表面の平滑度をより優れたものとすることができ、印刷用ラベルの印刷適性をより優れたものとすることができる。カオリンの平均粒径は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上10μm以下である。平均粒径は、体積基準であり、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。カオリンの印刷受理層中の含有量は、例えば、20~90質量%であり、60~90質量%である。
【0037】
印刷受理層を形成する方法は特に限定されず、例えば、印刷受理層の材料、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗布液を、紙系基材の片面側に対して、塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、印刷受理層を形成することができる。
【0038】
印刷受理層の厚さ(目付量)は、特に限定されるものではないが、印刷適性を考慮すると、例えば、3~20g/mであることが好ましい。
【0039】
[紙系基材]
紙系基材は、通常、パルプを主成分として含んでいる。なお、本明細書において「主成分」とは、50質量%超の濃度を有する成分を意味する。紙系基材におけるパルプの含有率は、特に限定されないが、60質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、65質量%以上98質量%以下であるのがより好ましく、70質量%以上97質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0040】
紙系基材としては、パルプを含むものであれば特に限定されない。パルプとしては、天然パルプであることが好ましい。天然パルプとしては、例えば、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、亜麻、大麻、楮、三椏等の靭皮繊維が挙げられる。中でも、紙系基材は、少なくとも、針葉樹晒クラフトパルプおよび広葉樹晒クラフトパルプを含むことが好ましい。針葉樹晒クラフトパルプを含むことにより、パルプの繊維同士(特に、針葉樹晒クラフトパルプの繊維同士)を効率的に絡み合わせることができ、紙系基材の強度を高めることができる。また、広葉樹晒クラフトパルプを含むことにより、表面の平滑性を高めることができ、印刷適性の向上に大きく寄与する。
【0041】
紙系基材のパルプ繊維の長径の方向と、ラベルのMD方向とは、略一致することが、本発明の効果が一層得られやすいことから好ましい。
【0042】
また、紙系基材は、湿潤増強剤を含むことが好ましい。湿潤増強剤は、紙が水に濡れたときに紙力の低下を抑えるための薬剤であり、水に対してほぐれやすいパルプ繊維に添加することにより、水に濡れてもパルプ繊維の結合を保持してほぐれにくくし、強度を高める効果を有する。このため、紙系基材が湿潤増強剤を含むことで、高温高湿条件下でのPOPラベルの形状保持(スタンディング性の向上)に一層効果を奏する。
【0043】
湿潤増強剤としては、ポリアミン樹脂、ポリアクリルアミド(PAM)樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が例示される。中でも、湿潤増強剤は、ポリアミン樹脂、ポリアクリルアミド(PAM)樹脂であることが好ましく、ポリアミン樹脂であることが好ましい。
【0044】
ポリアミン樹脂は、通常、パルプ間で架橋構造を形成している。なお、ポリアミン樹脂は、ポリアミン樹脂同士で架橋構造を形成していてもよいし、紙系基材中に含まれるポリアミン樹脂以外の樹脂材料と架橋構造を形成していてもよい。
【0045】
ポリアミン樹脂は、分子内にアミノ基またはイミノ基を2つ以上持つ化合物であり、ポリアミン樹脂としては、例えば、いわゆるポリアミン類とエピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンから得られる樹脂やその誘導体が挙げられる。このようなポリアミン樹脂は、反応基としてエポキシ基を有している。ポリアミン樹脂としては、星光PMC社よりWS-4011(ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂)として市販されているもの等を使用できる。また、ポリアミドポリアミンエピハロ(クロロ)ヒドリン樹脂も使用できる。
【0046】
ポリアクリルアミド(PAM)としては、例えば、荒川化学工業社よりポリストロンシリーズとして市販されているもの等を使用できる。
【0047】
紙系基材中における湿潤増強剤の含有量は、特に限定されないが、効果の発現およびその効果の飽和を考慮すると、紙系基材に対して0.5~3.0質量%であることが好ましい。
【0048】
紙系基材は、その他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、酸化デンプン、ロジン系サイズ剤、AKD(アルキルケテンダイマー)系サイズ剤等のサイズ剤、湿潤増強剤以外の樹脂材料(例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリビニルアルコール等)、染料、顔料等の着色剤、定着剤、抄紙助剤、凝集剤等が挙げられる。これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記樹脂材料は、サイズ剤として機能するものを用いてもよい。
【0049】
[樹脂層]
樹脂層は、露出部に配置されるが、露出部の少なくとも一部に配置されればよい。好適には露出部の全面に配置される。また、露出部の他、物品と接する部分(物品に貼付される部分)に配置されてもよい。
【0050】
樹脂層は、樹脂を含む。樹脂層に含まれる樹脂としては、特に限定されるものではなく、水溶性樹脂、非水溶性樹脂のどちらであってもよい。樹脂としては、例えば、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、スチレン樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂などの非水溶性樹脂;ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を挙げることができる。耐水性の観点からは、樹脂層に含まれる樹脂は非水溶性樹脂であることが好ましい。
【0051】
好適な非水溶性樹脂としては、限定されるものではないが、スチレン-ブタジエン(スチレン-ブタジエン共重合体)樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0052】
非水溶性樹脂は、市販品を用いてもよく、例えば、スマーテックス(登録商標)SN-309R(スチレンブタジエンゴムラテックス、日本エイアンドエル社製、ガラス転移温度4℃))、スマーテックス(登録商標)SN-307R(スチレンブタジエンゴムラテックス、日本エイアンドエル社製、ガラス転移温度10℃)、JSR0693(スチレンブタジエンゴムラテックス、JSR社製、ガラス転移温度20℃)、PRIMAL HA-16(アクリル樹脂、ダウ・ケミカル日本社製、ガラス転移温度35℃)などが挙げられる。
【0053】
中でも、高温高湿条件下でのたわみ抑制という本願効果が一層得られやすいことから、樹脂はスチレン-ブタジエン樹脂であることが好ましい。スチレン-ブタジエン樹脂のガラス転移温度は、-50℃以上50℃以下であるのが好ましく、-20℃以上20℃以下であるのがより好ましい。これにより、スチレン-ブタジエン樹脂を好適に溶融させることができ、塗布の際に紙系基材と絡まりやすくなり、たわみ抑制の効果が一層発揮されやすくなる。また、スチレン-ブタジエン(スチレン-ブタジエン共重合体)樹脂は、紙基材の裏面の伸び抑制という本発明の効果が一層奏されることから、ラテックス型(スチレンブタジエンゴムラテックス)であることが好ましい。このようなスチレンブタジエンゴムラテックスとしては、上述のような市販品を用いてもよい。
【0054】
樹脂層の厚み(目付量)は、本願発明の効果(高温高湿条件下でのラベルの形状保持)を考慮すると、1g/m以上であることが好ましく、2g/m以上であることがより好ましい。また、印刷受理層とのバランスの観点からは、20g/m以下であることが好ましく、30g/m以下であることがより好ましい。
【0055】
なお、樹脂層を構成する樹脂は、非粘着性樹脂であることが好ましい。非粘着性樹脂は粘着性樹脂よりもガラス転移温度が高い。樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度は、例えば、-20℃以上であり、-10℃以上であり、-5℃以上である。
【0056】
樹脂層に含まれる樹脂の含有量は、1~10g/mであることが好ましく、2~6g/mであることがより好ましい。
【0057】
樹脂層は、少なくとも、樹脂を含んでいればよいが、その他の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、填料(例えば、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等)、上記紙系基材の欄で挙げた湿潤増強剤、酸化デンプン、染料、顔料等の着色剤、定着剤、凝集剤、消泡剤、分散剤等が挙げられる。
【0058】
樹脂層は、少なくとも物品から突き出した露出部に配置されることが好ましい。より好ましくは、本発明の効果が一層奏され、また、製造工程も簡便であることから、樹脂層は、ラベル(の面方向)全体に配置される。
【0059】
樹脂層の形成方法は、特に限定されるものではないが、樹脂および溶媒を含む塗布液を紙系基材に塗布することにより形成することが好ましい。すなわち、本発明の好適な形態は、前記樹脂および溶媒を含む塗布液を紙系基材に塗布することにより形成される。塗布により紙系基材に塗布液が含浸され、パルプ繊維に樹脂が絡み合うことができ、紙系基材表面の拘束の効果が一層発揮されやすくなる。塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、ダイコート、バーコート等の方法を用いることができる。
【0060】
塗布液に用いられる溶媒としては特に限定されるものではないが、樹脂が好適な形態であるスチレンブタジエンゴムラテックスの場合には、水系溶媒であることが好ましい。水系溶媒は環境負荷が少ないという観点からも好ましい。水系溶媒としては、水が好ましい。また、水に溶解可能な有機溶媒(例えば、低級アルコール)と水との混合溶媒であってもよい。塗布液中における固形分濃度は、例えば、5~70質量%である。
【0061】
塗布の際の塗布量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を考慮すると、例えば、2g/m~20g/mである。
【0062】
[粘着剤層]
粘着剤層を構成する粘着剤としては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等の合成ゴム系、アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の粘着剤から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0063】
粘着剤層を構成する粘着剤は、特に限定されず、例えば、溶剤系粘着剤、エマルション系粘着剤、ホットメルト型粘着剤等が挙げられるが、エマルション系粘着剤であるのが好ましい。これにより、ラベルの被着体に対する粘着力や、ラベルの生産性を優れたものとしつつ、ラベルの製造過程で用いられる有機溶媒の量を抑制することができ、環境負荷を低減することができる。粘着剤層がエマルション系粘着剤を含む材料で構成されている場合、特に、架橋剤による架橋処理が施されたエマルション系粘着剤を含む材料で構成されているのが好ましい。
【0064】
粘着剤層は、粘着剤以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、乳化剤、粘着付与剤、可塑剤等が挙げられる。
【0065】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン、ロジンフェノール樹脂、およびそのエステル化合物、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂等の粘着付与剤等を使用できる。
【0066】
粘着剤の厚みは、粘着性が発揮されれば特に限定されるものではないが、粘着性および薄膜化の観点から、例えば、通常10~100μmである。
【0067】
[剥離ライナー]
剥離ライナーとしては、特に限定されるものではないが、上質紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルム;などが挙げられる。
【0068】
剥離ライナーの厚みは、通常10~400μm程度である。また、剥離ライナーの表面には、粘着剤層の剥離性を向上させるためのシリコーンなどから構成される剥離剤からなる層が設けられてもよい。かような層が設けられる場合の当該層の厚みは、通常0.01~5μm程度である。
【0069】
[製造方法]
印刷用ラベルは、例えば、以下のような方法で製造することができる。
【0070】
1.紙系基材の製造
まず、パルプ原料を水中で叩解処理してパルプスラリーを生成する。そのパルプスラリーに、湿潤増強剤を添加し、必要に応じて、その他の内添剤も添加する。
【0071】
次に、上記のようにして得られたパルプおよび湿潤増強剤を含むスラリーを抄紙することにより紙系基材を得る。また、必要に応じて、抄紙後に、サイズ剤を塗布してもよい。
【0072】
2.印刷受理層形成用組成物および樹脂層形成用組成物の紙系基材への塗布
バインダー樹脂、必要に応じてカオリン等の添加剤、さらに溶媒を混合して印刷受理層形成用組成物を準備する。溶媒は、バインダー樹脂の形態によって適宜選択され、バインダー樹脂がエマルション系樹脂である場合には、溶媒は、例えば、水である。
【0073】
その後、上記のようにして得られた紙系基材に対して、例えば、エアナイフ等により、印刷受理層形成用組成物を塗布して、印刷受理層を形成する。同様に、紙系基材の印刷受理層形成面と反対側の紙系基材に対して、例えば、エアナイフ等により、樹脂層形成用組成物を塗布して、樹脂層を形成する。印刷受理層形成用組成物および樹脂層形成用組成物を塗布した後、乾燥工程に供してもよい。乾燥条件は適宜設定されるが、例えば、80~160℃で10~60秒である。
【0074】
その後、印刷受理層面は、必要に応じて、スーパーカレンダー処理によって、紙の表面を平滑化してもよい。
【0075】
3.粘着剤層の形成
粘着剤層の形成方法は特に限定されないが、通常粘着剤を剥離ライナー上に塗布し乾燥した後に、上記で2.で形成された積層体の樹脂層面に転写する方法が採られる。塗布方法は特に限定されず、例えばロールコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ブレードコーター、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布装置を用いて塗布することができる。乾燥条件としては特に限定されず、通常60~150℃にて10~60秒の条件で行われる。
【0076】
また、粘着剤層が形成された後に、糊殺し処理を行ってもよい。糊殺し処理は所望の位置に例えば、ニスを印刷することで行われる。また、糊殺し処理は、印刷用ラベルで行うのではなく、ラベルを形成するための印刷工程と同時またはその後に行ってもよい。
【0077】
<ラベル>
本発明の第二実施形態は、第一実施形態の印刷用ラベルに印刷が施された、ラベルである。
【0078】
[印刷部]
印刷部は、どのように形成されるか特に限定されず、例えば、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等によって形成され、これらは、一定の図柄等を大量に作製するのに適する。一方、熱転写方式、インクジェット方式、電子写真(静電)方式等は、例えばシリアル番号のような可変情報を印すのに適する。
【0079】
印刷部を形成するのに用いるインクは、特に限定されず、例えば、油性インク、水性インク、光硬化型インク(紫外線硬化型インク、電子線硬化型インク)等が挙げられる。
【0080】
印刷部は、印刷受理層または紙系基材の全面に設けられていてもよいし、表面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0081】
<ラベル付き物品>
本発明の第三実施形態は、第二実施形態のラベルが突き出した状態で貼付された物品と、を有する、ラベル付き物品である。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【符号の説明】
【0083】
10 物品、
20 ラベル付き物品、
100 ラベル、
101 印刷部、
103 物品に貼付される側、
104 物品から突き出す側である露出部、
105 ラベルの縁、
106 マスキング層、
110 粘着剤層、
120 樹脂層、
130 紙系基材、
140 印刷受理層、
150 剥離ライナー、
200、210、220 印刷用ラベル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7