(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147145
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】プロジェクタ、投影システム、補正値修正方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20220929BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20220929BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20220929BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20220929BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
G09G5/00 550C
G09G5/00 510B
G09G5/00 530H
G09G5/36 520D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048276
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】高浜 徹
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
5C182
【Fターム(参考)】
2K203FA25
2K203GC26
2K203HB05
2K203KA56
2K203MA21
5C058BA23
5C058BA27
5C058BB14
5C058BB25
5C058EA02
5C058EA27
5C182AA03
5C182AA04
5C182AB02
5C182AB08
5C182AC03
5C182BA03
5C182BA06
5C182BA14
5C182BA46
5C182BA47
5C182BC02
5C182BC03
5C182CA01
5C182CA02
5C182CC26
5C182DA41
(57)【要約】
【課題】動的に投影方向が変わる状況であっても、投影面との位置関係を把握し補正値を修正することが可能なプロジェクタ、投影システム、補正値修正方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】プロジェクタは、載置部材に対し移動可能に配置された筐体と、筐体に配置され、載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影する撮影部と、制御部150と、を備える。制御部150は、画像データを取得し、撮影部が撮影したマーカ画像により特定された前記筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部材に対し移動可能に配置された筐体と、
前記筐体に配置され、前記載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影する撮影部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
画像データを取得し、
前記撮影部が撮影した前記マーカ画像により特定された前記筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行う、
ことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記補正値は、前記マーカ画像上での前記マーカ位置の変化により特定される前記筐体位置の変化に基づいて決定されるものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記筐体の位置の変化は、
第一の時点において前記撮影部により撮影された第一マーカ画像が含む前記マーカの位置と、前記第一の時点とは異なる第二の時点において前記撮影部により撮影された第二マーカ画像が含む前記マーカの位置との比較結果により特定され、
前記制御部は、
前記筐体の位置の変化に基づく補正値で取得した前記画像データの画像補正を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記制御部は、前記撮影部が撮影した前記マーカ画像を解析することで前記マーカ画像上での前記マーカの位置を特定し、前記マーカの位置の変化から前記筐体の位置の変化量を決定する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記マーカ画像上での前記マーカ位置の変化に基づいて前記補正値を決定する、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記載置部材は前記プロジェクタを固定する台座である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記筐体は前記載置部材に対し2軸について回転可能に配置され、
前記制御部は、前記マーカの位置の変化から前記筐体の仰角又は方位角の変化の少なくとも一方を算出する、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
投影画像を光線として出力する投影部を備え、
前記制御部は、前記画像データを前記投影部に出力し、前記投影部を制御して前記画像データを前記投影画像として出力させる、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項9】
面の上を移動する移動体に搭載され、
前記投影部は前記投影画像を前記面に投影する、
ことを特徴とする請求項8に記載のプロジェクタ。
【請求項10】
前記撮影部は、前記マーカを含む前記載置部材の画像をマーカ画像として撮影する、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項11】
前記制御部は、外部装置から入力された画像に関するアナログ情報又はデジタル情報を前記画像データとして取得する、
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項12】
載置部材に対し移動可能に配置された筐体と、前記筐体に配置され前記載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影する撮影部と、画像データによって画定される投影画像を光線として出力する投影部と、を含むプロジェクタと、
前記プロジェクタと通信して前記撮影部が撮影した前記マーカ画像を取得する通信部と、制御部と、を含む情報処理装置と、を備え、
前記制御部は、
前記通信部が取得した前記マーカ画像により特定された前記筐体の位置の変化に基づいて、前記画像データの画像補正を行う補正値を算出する、
ことを特徴とする投影システム。
【請求項13】
載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影し、
画像データを取得し、
撮影した前記マーカ画像により特定された、前記載置部材に対し移動可能に配置された筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行う、
ことを特徴とする補正値修正方法。
【請求項14】
コンピュータに、
載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影させ、
画像データを取得させ、
撮影した前記マーカ画像により特定された、前記載置部材に対し移動可能に配置された筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行わせる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ、投影システム、補正値修正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の画像に応じて投影面に投影される画像の台形補正を行うために、第1の画像を変形した第2の画像を、補間フィルタを用いた補間処理によって生成する台形補正部と、第2の画像を表す光を射出する光変調装置と、光変調装置からの光を投影面に投影する投影光学系と、を備えるプロジェクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、投影面上での画像の歪みを補正する台形補正を行うプロジェクタにおいて、正確な補正値を求めるためには投影面とプロジェクタとの位置関係を正確に把握する必要がある。位置関係を把握する方法の一つとして、投影面にパターンを投影し、投影されたパターンを測定して傾きを算出する方法がある。しかし、この方法によれば一定の測定時間を必要とし、画像の投影中にプロジェクタの位置が動くと再度測定し直さなければならず、動的に投影方向が変わる状況に対応できないという課題があった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、動的に投影方向が変わる状況であっても、投影面との位置関係を把握し補正値を修正することが可能なプロジェクタ、補正値修正方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るプロジェクタの一態様は、
載置部材に対し移動可能に配置された筐体と、
前記筐体に配置され、前記載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影する撮影部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
画像データを取得し、
前記撮影部が撮影した前記マーカ画像により特定された前記筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行う、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動的に投影方向が変わる状況であっても、投影面との位置関係を把握し補正値を修正することが可能なプロジェクタ、投影システム、補正値修正方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るプロジェクタの構成を示すブロック図。
【
図2】実施の形態に係るプロジェクタの外観を示す斜視図。
【
図3】実施の形態の制御部の機能構成を示すブロック図。
【
図4】実施の形態の筐体が台座と平行な状態のプロジェクタの側面図。
【
図5】実施の形態の筐体が台座と平行な状態で撮影されたマーカ画像を示す図。
【
図6】実施の形態の筐体が台座について正の仰角を付けられた状態のプロジェクタの側面図。
【
図7】実施の形態の筐体が台座について正の仰角を付けられた状態で撮影されたマーカ画像を示す図。
【
図8】実施の形態の筐体が台座について正面を向いた状態のプロジェクタの上面図。
【
図9】実施の形態の筐体が台座について正面を向いた状態で撮影されたマーカ画像を示す図。
【
図10】実施の形態の筐体が台座について正の方位角を付けられた状態のプロジェクタの上面図。
【
図11】実施の形態の筐体が台座について正の方位角を付けられた状態で撮影されたマーカ画像を示す図。
【
図12】実施の形態の制御部が実行する補正値修正処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態)
実施の形態に係るプロジェクタ1について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。実施の形態に係るプロジェクタ1は、画像をスクリーンに投影して表示する画像投影装置である。
【0010】
図1は、実施の形態に係るプロジェクタ1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、プロジェクタ1は、投影部110と、入力部120と、操作部130と、撮影部140と、制御部150と、記憶部160とを備える。
【0011】
投影部110は、投影画像データによって確定される投影画像を光線として出力し、スクリーンに投影する。投影部110は、DMD(Digital Micromirror Device)、DMDコントローラ、レンズ、レンズ駆動モータ、光源を含む。
【0012】
入力部120は、外部の装置に接続され、外部の装置からアナログ情報又はデジタル情報として入力された入力画像データを制御部150に伝達する。入力部120は、アナログRGB端子、S端子、及びHDMI(High-Definition Multimedia Interface、登録商標)端子を含み得る画像入力端子と、入力制御部と、を含み得るが、これに限られるものではない。
【0013】
操作部130は、プロジェクタ1を操作しようとするユーザの操作を受け付け、操作に対応する信号を制御部150に伝達する。操作部130は、例えば電源オン又はオフ、投影開始又は終了、明るさ調整を含む操作を受け付けるが、これに限られるものではない。操作部130は、ボタン、タッチパネル、及びリモートコントローラ並びにリモートコントローラ受信部を含み得るが、これに限られるものではない。
【0014】
撮影部140は、後述するマーカ240を含む台座230を継続的に撮影し、撮影した画像をマーカ画像として順次制御部150に伝達する。撮影部140は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、レンズを含み得るが、これに限られるものではない。
【0015】
制御部150は、記憶部160に記憶されたプログラムを実行することによりプロジェクタの全体を制御する処理装置である。制御部150は、CPU(Central Processing Unit)を含み得るが、これに限られるものではない。
【0016】
記憶部160は、制御部150が実行するプログラム又は制御部150が利用するデータを記憶する記憶媒体である。記憶部160は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含み得るが、これに限られるものではない。
【0017】
図2は、プロジェクタ1の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、プロジェクタ1は、筐体210と、支持部220と、台座230と、マーカ240と、を備える。
【0018】
筐体210は、投影部110と、入力部120と、操作部130と、撮影部140と、が外部に露出した状態で配置され、内部に制御部150と、記憶部160と、が配置される。投影部110と、入力部120と、操作部130と、撮影部140と、が配置される箇所は、
図2に示す箇所に限られず、筐体210の任意の箇所であって良い。筐体210は例えば金属、樹脂を含み得るが、これに限られるものではない。
【0019】
支持部220は、筐体210の撮影部140が配置された一面と、台座230と、にそれぞれ接続され、筐体210を台座230に対して方位角及び仰角の2軸について回転可能に支持する。ユーザは、筐体210を把持して動かすことで、プロジェクタ1が画像を投影する方向を変更することができる。支持部220は例えば金属、樹脂を含み得るが、これに限られるものではない。
【0020】
台座230は、支持部220の一端に接続される。台座230の筐体210に対して向かい合う一面には、マーカ240が配置される。マーカ240は、例えば台座230に印刷された丸形の印であるが、これに限られるものではなく、形状、色及び大きさについても任意である。
【0021】
制御部150について詳細に説明する。
図3は、制御部150の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部150は、入力画像データ取得部151と、マーカ画像取得部152と、角度算出部(算出部)153と、補正部154と、出力部155と、を備える。
【0022】
入力画像データ取得部151は、外部の装置から入力部120に入力された入力画像データを取得し、補正部154に伝達する。
【0023】
マーカ画像取得部152は、撮影部140が撮影したマーカ画像を取得し、取得したマーカ画像について撮影部140のレンズによる歪曲を補正する処理を行い、補正したマーカ画像を角度算出部153に伝達する。
【0024】
角度算出部153は、マーカ画像取得部152から伝達されたマーカ画像を解析し、マーカ画像上のマーカ240の中心位置を算出し、マーカ画像上のマーカ240の中心位置の変化から、プロジェクタ1の仰角及び方位角の変化を算出する。
【0025】
補正部154は、角度算出部153からプロジェクタ1の仰角及び方位角の変化を取得し、プロジェクタ1の仰角及び方位角の変化に応じて入力画像データに台形補正を行う際の補正値を修正する。補正部154は、入力画像データ取得部151から入力画像データを取得し、修正した補正値に基づいて、入力画像データに台形補正を行う。補正部154が台形補正を行う方法としては、任意の既知の方法を用いることができる。補正部154は、台形補正を行った入力画像データを、投影画像データとして出力部155に伝達する。
【0026】
出力部155は、補正部154から伝達された入力画像データを投影部110に出力し、投影部110を制御して投影画像を光線として出力させ、スクリーンに投影させる。
【0027】
角度算出部153がプロジェクタ1の仰角及び方位角の変化を算出する方法について、具体的に説明する。
【0028】
角度算出部153がプロジェクタ1の仰角の変化を算出する方法について説明する。
図4は、筐体210が台座230と平行な状態のプロジェクタ1の側面図であり、
図5は、
図4に示すように筐体210が台座230と平行な状態で撮影されたマーカ画像を示す図である。
図4において、紙面に垂直な方向にx軸が伸び、縦方向にy軸が伸びている。
図5において、横方向にx軸が伸び、縦方向にy軸が伸びている。原点は接続部の回転軸である。マーカ240と原点との間の距離をrとする。
【0029】
図4に示す状態において、プロジェクタ1は図示しないスクリーンに対し平行に配置されており、投影画像の台形補正は必要でない状態であるものとして説明する。
【0030】
図6は、筐体210が台座230について正の仰角を付けられた状態のプロジェクタ1の側面図であり、
図7は、
図6のように筐体210が台座230について正の仰角を付けられた状態で撮影されたマーカ画像を示す図である。
【0031】
図4-
図7に示すように、筐体210が台座230について正の仰角を付けられると、マーカ画像上でマーカ240は下に向かって移動する。即ち、マーカ240と原点との間の距離rが小さくなる。
【0032】
角度算出部153は、記憶部160に記憶された距離rと仰角との関係を取得し、画像データから算出した距離rを、距離rと仰角との関係に当てはめることで、画像データから仰角を算出する。距離rと仰角との関係については、例えば事前に仰角を測定し、その仰角において撮影した画像データの距離rの値を仰角と対応させて記憶させることで取得できるが、距離rと仰角との関係について取得する方法はこれに限られるものではない。
【0033】
角度算出部153は、第一の時点に例えば
図5に示すマーカ画像(第一マーカ画像)を取得し、第一の時点より後の第二の時点に例えば
図7に示すマーカ画像(第二マーカ画像)を取得する。角度算出部153は、第一マーカ画像のマーカ240の位置と第二マーカ画像のマーカ240の位置とを比較し、距離rの変化から対応する仰角の変化を取得することで、第一の時点と第二の時点との間での仰角の変化を算出する。なお、このような方法の他に、
図5に示すマーカ画像(第一マーカ画像)の位置については、マーカ画像を撮影するのではなく、例えばマーカの位置に関する座標といった情報をあらかじめ記憶部160に記憶させておいてもよい。
【0034】
角度算出部153がプロジェクタ1の方位角の変化を算出する方法について説明する。
図8は、筐体210が台座230について正面を向いた状態のプロジェクタ1の上面図であり、
図9は、
図8に示すように筐体210が台座230について正面を向いた状態で撮影されたマーカ画像を示す図である。
図8及び
図9において、横方向にx軸が伸び、縦方向にy軸が伸びている。原点は接続部の回転軸である。マーカ240と原点とを結ぶ直線と、y軸とがなす角の角度をθとする。
【0035】
図4の場合と同様に、
図8に示す状態において、プロジェクタ1は図示しないスクリーンに対し平行に配置されており、投影画像の台形補正は必要でない状態であるものとして説明する。
【0036】
図10は、筐体210が台座230について正の方位角を付けられた状態のプロジェクタ1の上面図であり、
図11は、
図10のように筐体210が台座230について正の方位角を付けられた状態で撮影されたマーカ画像を示す図である。
【0037】
図8-
図11に示すように、筐体210が台座230について正の方位角を付けられると、マーカ画像上でマーカ240は負の方位角の向きに移動する。即ち、角度θが負の値を取る。
【0038】
角度算出部153は、第一の時点に例えば
図9に示すマーカ画像(第一マーカ画像)を取得し、第一の時点より後の第二の時点に例えば
図11に示すマーカ画像(第二マーカ画像)を取得する。角度算出部153は、第一マーカ画像のマーカ240の位置と第二マーカ画像のマーカ240の位置とを比較し、マーカ240と原点とを結ぶ直線とy軸とがなす角度の差分θを算出し、符号を逆転した-θを、第一の時点と第二の時点との間での方位角の変化として算出する。なお、このような方法の他に、
図9に示すマーカ画像(第一マーカ画像)の位置については、マーカ画像を撮影するのではなく、例えばマーカの位置に関する座標といった情報をあらかじめ記憶部160に記憶させておいてもよい。
【0039】
以上のように、角度算出部153は、画像データから距離r及び角度θを算出することで、プロジェクタ1の仰角及び方位角の変化を算出する。
【0040】
図12は、実施の形態に係るプロジェクタ1の制御部150が実行する補正値修正処理のフローチャートである。
図12のフローチャートを参照して、補正値修正処理について説明する。
【0041】
補正値修正処理が開始されると、制御部150のマーカ画像取得部152は、撮影部140が撮影したマーカ画像を取得し、取得したマーカ画像について撮影部140のレンズによる歪曲を補正する処理を行い、補正したマーカ画像を角度算出部153に伝達する(ステップS101)。
【0042】
補正したマーカ画像が伝達されると、角度算出部153は、マーカ画像に変化があるかどうか判断する(ステップS102)。変化がない場合(ステップS102:NO)、ステップS101に戻る。
【0043】
マーカ画像に変化がある場合(ステップS102:YES)、角度算出部153は、マーカ画像を解析し、マーカ画像上のマーカ240の中心位置を算出する(ステップS103)。
【0044】
マーカ画像上のマーカ240の中心位置を算出すると、角度算出部153は、マーカ画像上における距離r及び角度θを算出する(ステップS104)。
【0045】
距離r及び角度θを算出すると、角度算出部153は、距離r及び角度θに基づいてプロジェクタ1の仰角及び方位角の変化を算出し、算出した仰角及び方位角を補正部154に伝達する(ステップS105)。
【0046】
仰角及び方位角が伝達されると、補正部154は、プロジェクタ1の仰角及び方位角の変化に応じて入力画像データに台形補正を行う際の補正値を修正する(ステップS106)。
【0047】
補正値を修正すると、制御部150は、操作部130を介して補正値修正処理の終了が指示されたかどうかを判断する(ステップS107)。指示されていないと判断した場合(ステップS107:NO)、ステップS101に戻る。
【0048】
補正値修正処理の終了が指示されたと判断した場合(ステップS107:YES)、補正値修正処理を終了する。
【0049】
以上の構成を備え、補正値修正処理を実行することで、実施の形態に係るプロジェクタ1は、動的に投影方向が変わる状況であっても、投影面との位置関係を把握し補正値を修正することが可能になる。
【0050】
台形補正を行うためにプロジェクタと投影面との位置関係を把握する方法の一つとして、ユーザインターフェースを介してユーザが位置関係を指定するという方法がある。しかし、この方法は煩雑になる上、特に仰角と方位角との両方を指定する必要がある場合では、ユーザが指定に失敗してしまうこともある。実施の形態に係るプロジェクタ1によれば、ユーザが位置関係を直接指定しなくとも、プロジェクタ1が投影中に位置関係を把握し、補正値を修正することができる。
【0051】
アミューズメントの分野においては、複数の投影面、又は広い投影面の複数の部分に対し、一つのプロジェクタが投影箇所を切り換えて投影を行う場合がある。この場合、投影箇所を切り換える毎に、投影を中断して補正値の修正のための測定を行うことは困難である。実施の形態に係るプロジェクタ1によれば、投影を続行しながら補正値を修正することができる。
【0052】
実施の形態に係るプロジェクタ1によれば、画像を撮影することによって角度を測定しているため、角度を測定するために歯車のような摩耗しやすい部品を必要とせず、支持構造の簡易化及び寿命の延長を行うことができる。
【0053】
(変形例)
以上に本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施の形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0054】
補正部154は、入力画像データに台形補正を行う際の補正値を修正し、修正した補正値に基づいて入力画像データに台形補正を行うとしたが、これに限られるものではない。台形補正に限らない任意の画像補正を入力画像データに対して行っても良い。
【0055】
ユーザは、筐体210を把持して動かすことで、プロジェクタ1が画像を投影する方向を変更することができるとしたが、これに限られるものではない。支持部220が動力を備え、制御部150の制御に従ってユーザの手によらず動作しても良い。例えば、制御部150が記憶部160に記憶されたプログラムに従って支持部220を制御し、筐体210の方位角を経時的に変化させる動作、即ち首振り動作を行わせても良い。このように動作することで、プロジェクタ1は例えば広いスクリーンの異なる部分に投影を行うことができ、その間適切に台形補正を行うことができる。
【0056】
マーカ240は台座230の筐体210に対して向かい合う一面に配置されるとしたが、これに限られるものではない。撮影部140によって撮影可能な位置に配置されていれば良く、プロジェクタ1上に配置されていなくても良い。
【0057】
マーカ240は、台座230に印刷された丸形の印であるとしたが、これに限られるものではない。マーカ240はLED(Light Emitting Diode)を含む光源であっても良い。プロジェクタ1が投影を行う際に、投影画像がよく見えるように部屋を暗くする場合がある。このような場合であっても、マーカ240を光源とすることで、マーカ画像上でマーカ240の位置を正確に把握することが可能となる。
【0058】
また、マーカ240は台座230に印刷された印及び光源に限られず、台座230の模様又は傷なども含む。制御部150は、プロジェクタ1の仰角及び方位角の変化に応じた当該模様や傷の位置関係の変化に基づいて投影画像の補正値を変えてもよい。
【0059】
プロジェクタ1は台座230を備えるとしたが、これに限られるものではない。台座230を備えず、机、壁、床、天井を含む、台座230として機能する載置部材に載置されても良い。この場合、支持部220の一端が載置部材に接続される。プロジェクタ1は、載置部材に印刷されたマーカ240を利用しても良く、載置部材の模様又は傷をマーカ240として利用しても良い。
【0060】
プロジェクタ1が台座230又は載置部材の模様或いは傷をマーカ240として利用する場合、撮影部140で台座230又は載置部材を撮影し、撮影した画像からマーカ240として利用できる模様又は傷の位置を、例えば二値化法を用いて特定し、特定した模様又は傷の位置関係を利用して補正値を決定しても良い。
【0061】
支持部220は、筐体210を台座230に対して方位角及び仰角の2軸について回転可能に支持するとしたが、これに限られるものではない。支持部220は、筐体210を台座230に対して水平方向又は鉛直方向に摺動可能に支持しても良い。この場合、算出部153は、マーカ画像上のマーカ240の中心位置の変化から、プロジェクタ1の水平方向又は鉛直方向の移動量を算出する。
【0062】
実施の形態に係るプロジェクタ1は、画像をスクリーンに投影して表示する画像投影装置であるとしたが、これに限られるものではない。曲面、平面を含む面の上を移動する移動体に搭載され、当該面に画像を投影しても良い。移動体は、床の上を移動する車輌を含むが、これに限られるものではない。プロジェクタ1は、移動体に搭載されることで、例えば進行方向や地図を含む情報を操縦者に提示することができ、筐体210と移動体との位置関係が変化しても、投影を中断することなく台形補正を行うことができる。
【0063】
制御部150は、入力画像データ取得部151と、マーカ画像取得部152と、角度算出部153と、補正部154と、を備えるとしたが、これに限られるものではない。制御部150がマーカ画像取得部152と、角度算出部153と、補正部154と、の一部又は全部を備えず、プロジェクタ1でない外部装置が、マーカ画像取得部152と、角度算出部153と、補正部154と、のうち制御部150が備えないものの機能を有していてもよい。この場合、プロジェクタ1及び外部装置は、相互に通信し入力画像データ、マーカ画像、又は補正値のデータをやりとりする通信部を備える。
【0064】
プロジェクタ1及び外部装置は、投影システムを構成する。筐体210の位置変化の算出、補正値の修正、及び入力画像データの補正は、プロジェクタ1及び外部装置のどちらで行っても良い。外部装置はパーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンを含み得るが、これに限られるものではない。
【0065】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えたプロジェクタとして提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存のプロジェクタを、本発明に係るプロジェクタとして機能させることもできる。すなわち、実施の形態及び変形例で例示したプロジェクタによる機能を実現させるためのプログラムを、既存のプロジェクタを制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係るプロジェクタとして機能させることができる。また、本発明に係る補正値修正方法は、プロジェクタを用いて実施できる。
【0066】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信しても良い。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成しても良い。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0068】
(付記1)
載置部材に対し移動可能に配置された筐体と、
前記筐体に配置され、前記載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影する撮影部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
画像データを取得し、
前記撮影部が撮影した前記マーカ画像により特定された前記筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行う、
ことを特徴とするプロジェクタ。
【0069】
(付記2)
前記補正値は、前記マーカ画像上での前記マーカ位置の変化により特定される前記筐体位置の変化に基づいて決定されるものである、
ことを特徴とする付記1に記載のプロジェクタ。
【0070】
(付記3)
前記筐体の位置の変化は、
第一の時点において前記撮影部により撮影された第一マーカ画像が含む前記マーカの位置と、前記第一の時点とは異なる第二の時点において前記撮影部により撮影された第二マーカ画像が含む前記マーカの位置との比較結果により特定され、
前記制御部は、
前記筐体の位置の変化に基づく補正値で取得した前記画像データの画像補正を行う、
ことを特徴とする付記1または2に記載のプロジェクタ。
【0071】
(付記4)
前記制御部は、前記撮影部が撮影した前記マーカ画像を解析することで前記マーカ画像上での前記マーカの位置を特定し、前記マーカの位置の変化から前記筐体の位置の変化量を決定する、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【0072】
(付記5)
前記制御部は、前記マーカ画像上での前記マーカ位置の変化に基づいて前記補正値を決定する、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【0073】
(付記6)
前記載置部材は前記プロジェクタを固定する台座である、
ことを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【0074】
(付記7)
前記筐体は前記載置部材に対し2軸について回転可能に配置され、
前記制御部は、前記マーカの位置の変化から前記筐体の仰角又は方位角の変化の少なくとも一方を算出する、
ことを特徴とする付記1~6のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【0075】
(付記8)
投影画像を光線として出力する投影部を備え、
前記制御部は、前記画像データを前記投影部に出力し、前記投影部を制御して前記画像データを前記投影画像として出力させる、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【0076】
(付記9)
面の上を移動する移動体に搭載され、
前記投影部は前記投影画像を前記面に投影する、
ことを特徴とする付記8に記載のプロジェクタ。
【0077】
(付記10)
前記撮影部は、前記マーカを含む前記載置部材の画像をマーカ画像として撮影する、
ことを特徴とする付記1~9のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【0078】
(付記11)
前記制御部は、外部装置から入力された画像に関するアナログ情報又はデジタル情報を前記画像データとして取得する、
ことを特徴とする付記1~10のいずれか一つに記載のプロジェクタ。
【0079】
(付記12)
載置部材に対し移動可能に配置された筐体と、前記筐体に配置され前記載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影する撮影部と、画像データによって画定される投影画像を光線として出力する投影部と、を含むプロジェクタと、
前記プロジェクタと通信して前記撮影部が撮影した前記マーカ画像を取得する通信部と、制御部と、を含む情報処理装置と、を備え、
前記制御部は、
前記通信部が取得した前記マーカ画像により特定された前記筐体の位置の変化に基づいて、前記画像データの画像補正を行う補正値を算出する、
ことを特徴とする投影システム。
【0080】
(付記13)
載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影し、
画像データを取得し、
撮影した前記マーカ画像により特定された、前記載置部材に対し移動可能に配置された筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行う、
ことを特徴とする補正値修正方法。
【0081】
(付記14)
コンピュータに、
載置部材が有するマーカを含む画像をマーカ画像として撮影させ、
画像データを取得させ、
撮影した前記マーカ画像により特定された、前記載置部材に対し移動可能に配置された筐体の位置の変化に基づく補正値で、取得した前記画像データの画像補正を行わせる、
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0082】
1…プロジェクタ、110…投影部、120…入力部、130…操作部、140…撮影部、150…制御部、151…入力画像データ取得部、152…マーカ画像取得部、153…角度算出部(算出部)、154…補正部、155…出力部、160…記憶部、210…筐体、220…支持部、230…台座、240…マーカ