(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147153
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】印字ユニット及びサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/00 20060101AFI20220929BHJP
B41J 2/32 20060101ALI20220929BHJP
B41J 11/70 20060101ALI20220929BHJP
B41J 11/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B41J11/00 A
B41J2/32 Z
B41J11/70
B41J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048289
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 史高
【テーマコード(参考)】
2C058
2C065
【Fターム(参考)】
2C058AB12
2C058AC06
2C058AC12
2C058AE04
2C058AF06
2C058AF31
2C058AF51
2C058BA08
2C058DA10
2C058DA31
2C058LA03
2C058LB06
2C058LB24
2C065AA01
2C065AB01
2C065CZ09
(57)【要約】
【課題】駆動機構と戻し機構とで、それぞれ高い自由度で設計を行うことができる印字ユニット及びサーマルプリンタを提供する。
【解決手段】印字ユニットは、ヘッドユニット及びプラテンユニットのうちの一方に設けられた固定刃と、ヘッドユニット及びプラテンユニットのうちの他方に設けられ、固定刃に対して相対移動可能な可動刃と、可動刃に連結され、可動刃と一体に移動可能なラック部材300と、を備え、ラック部材300は、駆動ピニオン78に噛み合う複数の駆動ラック歯71aを有した駆動ラック71と、駆動ラック71とは別に独立して形成され、戻しピニオン131に噛み合う複数の戻しラック歯130aを有した戻しラック130と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に印字するサーマルヘッドを有するヘッドユニットと、
前記記録紙を搬送するプラテンローラを有し、前記ヘッドユニットに分離可能に組み合わされるプラテンユニットと、
前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの一方のユニットに設けられた固定刃と、
前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの他方のユニットに設けられ、前記固定刃に対して相対移動可能な可動刃と、を備え、
前記他方のユニットは、
前記可動刃に連結され、前記可動刃と一体に移動可能なラック部材と、
前記ラック部材に噛み合う駆動ピニオンを有し、前記固定刃から離れた待機位置と、前記固定刃に乗り上げた切断位置との間で前記可動刃を移動させる駆動機構と、
前記ラック部材に噛み合う戻しピニオンを有し、前記可動刃が前記切断位置に止められた状態において、前記可動刃を前記切断位置から前記待機位置側に移動させる戻し機構と、を備え、
前記ラック部材は、
前記駆動ピニオンに噛み合う複数の駆動ラック歯を有した駆動ラックと、
前記駆動ラックとは別に独立して形成され、前記戻しピニオンに噛み合う複数の戻しラック歯を有した戻しラックと、を備える
印字ユニット。
【請求項2】
前記駆動ラックと前記戻しラックは並列して設けられ、
前記駆動ラックの前記駆動ラック歯と前記戻しラックの前記戻しラック歯とは、位相、及びピッチの少なくとも一方が異なる
請求項1に記載の印字ユニット。
【請求項3】
前記ヘッドユニットに対して前記プラテンユニットをロックするロック位置と、前記ヘッドユニットに対する前記プラテンユニットのロックを解除する解除位置との間で回動可能な操作レバーと、
前記操作レバーの回動にともなって回動可能に設けられ、前記戻しピニオンに噛み合い可能な複数のギア歯部を有した戻しギアと、を備える
請求項1又は2に記載の印字ユニット。
【請求項4】
前記複数のギア歯部は、前記戻しギアの周方向の一部に亘る範囲で形成されている
請求項3に記載の印字ユニット。
【請求項5】
前記戻しラックの前記戻しラック歯は、前記可動刃が前記切断位置にあるときに、前記複数のギア歯部のうち、前記ロック位置から前記ロック解除位置に向けた前記操作レバーの操作によって前記操作レバーの回動に伴って回動する前記戻しギアの回動方向の最も前方に位置する前記ギア歯部と、前記戻しピニオンとが噛み合うように形成されている
請求項4に記載の印字ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の印字ユニットと、
前記記録紙を収容する記録紙収納部を有すると共に、前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの一方のユニットが取り付けられたプリンタ本体と、
前記プリンタ本体に対して回動可能に連結され、前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの他方が取り付けられたプリンタカバーと、を備えている
サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字ユニット及びサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サーマルプリンタには印字ユニットが備えられている。印字ユニットは、可動刃を待機位置から切断位置まで移動させることにより、可動刃と固定刃との間で紙を切断するユニットである。可動刃を切断位置まで移動させて紙の切断を行う際、可動刃と固定刃との間に紙ジャム(すなわち、紙詰まり)が発生する場合があり、可動刃が固定刃に乗り上げた位置で止まってしまうことが考えられる。
【0003】
特許文献1には、可動刃を移動させる駆動機構と、プラテンユニットの操作レバーと、可動刃の戻し機構と、を備える構成が開示されている。この構成において、駆動機構は、可動刃に連結された駆動ラックを有し、固定刃から離れた待機位置と、固定刃に乗り上げた切断位置との間で可動刃を移動させる。操作レバーは、プラテンユニットをロックするロック位置と、プラテンユニットのロックを解除する解除位置との間で移動可能である。戻し機構は、可動刃が切断位置に止められた状態において、操作レバーと連動して、駆動ラックを介して可動刃を切断位置から待機位置側に移動させる。特許文献1では、このような戻し機構により、可動刃が切断位置で停止している状態において、ロック位置から解除位置に向けた操作レバーの操作に伴う動力を駆動機構に伝達し、可動刃を待機位置に向けて移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成では、可動刃を移動させるための駆動機構のピニオンギアと、可動刃を待機位置に戻すための戻し機構のピニオンギアとが、同じ駆動ラックに噛み合っている。このため、駆動機構のピニオンギアと戻し機構のピニオンギアとが同位相で駆動される。つまり、駆動機構の動作と戻し機構の動作とが同期したものとなる。このため、駆動機構と戻し機構とで、それぞれ最適な設計とするには制限を受けることがある。
本発明は、駆動機構と、戻し機構とで、それぞれ高い自由度で設計を行うことができる印字ユニット及びサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る印字ユニットは、記録紙に印字するサーマルヘッドを有するヘッドユニットと、前記記録紙を搬送するプラテンローラを有し、前記ヘッドユニットに分離可能に組み合わされるプラテンユニットと、前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの一方のユニットに設けられた固定刃と、前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの他方のユニットに設けられ、前記固定刃に対して相対移動可能な可動刃と、を備え、前記他方のユニットは、前記可動刃に連結され、前記可動刃と一体に移動可能なラック部材と、前記ラック部材に噛み合う駆動ピニオンを有し、前記固定刃から離れた待機位置と、前記固定刃に乗り上げた切断位置との間で前記可動刃を移動させる駆動機構と、前記ラック部材に噛み合う戻しピニオンを有し、前記可動刃が前記切断位置に止められた状態において、前記可動刃を前記切断位置から前記待機位置側に移動させる戻し機構と、を備え、前記ラック部材は、前記駆動ピニオンに噛み合う複数の駆動ラック歯を有した駆動ラックと、前記駆動ラックとは別に独立して形成され、前記戻しピニオンに噛み合う複数の戻しラック歯を有した戻しラックと、を備える。
【0007】
この構成によれば、駆動機構によって駆動ピニオンを回転させると、駆動ピニオンに噛み合うラック部材とともに可動刃が待機位置と切断位置との間で移動する。可動刃が切断位置で固定刃に乗り上げることで、記録紙が切断される。記録紙を切断した可動刃は、切断位置から待機位置に戻る。切断位置で固定刃と可動刃との間で発生した紙ジャムによって可動刃が切断位置に停止した場合、戻し機構で戻しピニオンを回転させることで、戻しピニオンを回転させることによって、戻りピニオンに噛み合う戻しラックを移動させ、ラック部材とともに可動刃を切断位置から待機位置側に移動させることができる。
このような構成において、駆動ラックと戻しラックとば別々に独立して形成されている。このため、駆動ラックは、戻し機構によって可動刃を戻すときの動作を考慮することなく、駆動機構で可動刃を移動させるのに適した設計とすることができる。また、戻しラックも、駆動機構によって可動刃を移動させるときの動作を考慮することなく、戻し機構で可動刃を戻すのに適した設計とすることができる。このようにして、駆動機構と、駆動機構と戻し機構とで、それぞれ高い自由度で設計を行うことが可能となる。
【0008】
本発明の一態様に係る印字ユニットにおいて、前記駆動ラックと前記戻しラックは並列して設けられ、前記駆動ラックの前記駆動ラック歯と前記戻しラックの前記戻しラック歯とは、位相、及びピッチの少なくとも一方が異なるようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、駆動ラック歯と戻しラック歯とで、位相、及びピッチの少なくとも一方を異ならせることによって、駆動機構と戻し機構とで動作を異ならせることができる。このため、駆動ラック歯と戻しラック歯とを、駆動ラック歯、戻しラック歯に噛み合う駆動ピニオン、戻しピニオンの径方向で位置を異ならせることなく、駆動機構と戻し機構とで動作を異ならせることが可能となる。したがって、駆動ラック歯、戻しラック歯の周辺部品のレイアウトの変更が生じにくく、設計を容易に行うことができる。
【0010】
本発明の一態様に係る印字ユニットにおいて、前記ヘッドユニットに対して前記プラテンユニットをロックするロック位置と、前記ヘッドユニットに対する前記プラテンユニットのロックを解除するロック解除位置との間で回動可能な操作レバーと、前記操作レバーの回動に伴って回動可能に設けられ、前記戻しピニオンに噛み合い可能な複数のギア歯部を有した戻しギアと、を備えるようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、操作レバーをロック位置と解錠位置との間で回動させると、操作レバーの回動に伴って戻しギアが回動する。戻しギアの複数のギア歯部を戻しピニオンに噛み合わせることによって、戻しギアの回動を戻しピニオンを介して戻しラックに伝達することができる。これにより、操作レバーの操作によって、戻しラックを移動させ、可動刃を切断位置から待機位置側に移動させることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る印字ユニットにおいて、前記複数のギア歯部は、前記戻しギアの周方向の一部に亘る範囲で形成されているようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、操作レバーを回転させて、戻しギアの周方向の一部に亘る範囲に形成された複数のギア歯部が戻しピニオンに噛み合っている間のみ、戻しラックを移動させることができる。つまり、複数のギア歯部が戻しピニオンに噛み合っていないときには、戻しピニオンが回転せず、戻しラックも移動しない。これにより、操作レバーの回動角度に応じて、戻しラックを移動させるタイミングを適宜設定することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る印字ユニットにおいて、前記戻しラックの前記戻しラック歯は、前記可動刃が前記切断位置にあるときに、前記複数のギア歯部のうち、前記ロック位置から前記ロック解除位置に向けた前記操作レバーの操作によって前記操作レバーの回動にともなって回動する前記戻しギアの回動方向の最も前方に位置する前記ギア歯部と、前記戻しピニオンとが噛み合うように形成されているようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、戻しラックの戻しラック歯は、可動刃が切断位置にあるときに、複数のギア歯部のうち、ロック位置からロック解除位置に向けた操作レバーの操作によって操作レバーの回動にともなって回動する戻しピニオンの回動方向の最も前方に位置するギア歯部と、戻しピニオンとが噛み合う。これにより、切断歯が切断位置にあるときに操作レバーを回動させた場合に、戻しピニオンの回動方向の最も前方に位置するギア歯部が、戻しピニオンに噛み合うタイミングを統一することができる。したがって、操作レバーを回動させたときの戻しラックの移動タイミング、移動量を安定させることができ、可動刃を切断位置から待機位置に確実に戻すことができる。
【0016】
この発明に係るサーマルプリンタは、上記したような印字ユニットと、前記記録紙を収容する記録紙収納部を有すると共に、前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの一方のユニットが取り付けられたプリンタ本体と、前記プリンタ本体に対して回動可能に連結され、前記ヘッドユニット及び前記プラテンユニットのうちの他方が取り付けられたプリンタカバーと、を備えている。
【0017】
この構成によれば、駆動機構と戻し機構とで、それぞれ高い自由度で設計を行うことができる印字ユニットを備えたサーマルプリンタを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、駆動機構と戻し機構とで、それぞれ高い自由度で設計を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るサーマルプリンタの斜視図であって、プリンタカバーを閉じた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すプリンタカバーが開いた状態におけるサーマルプリンタの斜視図である。
【
図4】
図3に示す状態からギアカバー等を除去した状態を示す印字ユニットの斜視図である。
【
図5】
図4に示す状態からプラテンフレーム等を除去した状態を示す印字ユニットの斜視図である。
【
図6】
図4に示すプラテンユニットの斜視図である。
【
図7】
図5に示す矢印A方向から見た側面図であって、収容溝とプラテン軸受との関係を示す図である。
【
図8】固定刃と可動刃との間で記録紙を切断する状態を示す斜視図である。
【
図9】
図5に示す矢印A方向から見た側面図である。
【
図12】ラック部材と、駆動ピニオン、戻しピニオンを示す斜視図である。
【
図13】
図9に示す状態から、戻しギア等を除去した状態を示す側面図である。
【
図14】操作レバー、及び戻し機構周辺を反対側から見た斜視図である。
【
図16】
図13に示す状態から操作レバーを除去した状態を示す斜視図である。
【
図17】操作レバーの周辺を反対側から見た斜視図である。
【
図18】
図9に示す状態からロック位置から操作レバーを押下げ操作した状態を示す側面図である。
【
図19】戻しギアが戻しピニオンに噛み合った状態を示す図である。
【
図20】比較のため、駆動ラックと戻しラックとが同位相である場合において、戻しギアが戻しピニオンに噛み合った第一の状態を示す図である。
【
図21】比較のため、駆動ラックと戻しラックとが同位相である場合において、戻しギアが戻しピニオンに噛み合った第二の状態を示す図である。
【
図22】
図18に示す状態から、操作レバーをさらに押下げ操作した状態を示す側面図である。
【
図23】
図22に示す状態から、操作レバーをさらに押下げ操作し、操作レバーの突き当たり面を離脱アームのボスに突き当てた状態を示す側面図である。
【
図24】
図23に示す状態から、操作レバーをさらに押下げ操作してロック解除位置に位置させ、プラテン軸受を収容溝の開放口に押上げた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明による印字ユニット及びサーマルプリンタを実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。
図1及び
図2に示すように、サーマルプリンタ1は、ロール紙状の記録紙(感熱紙)Pに印刷を行って、記録紙Pを例えばチケットやレシート等として利用することが可能なプリンタである。
【0021】
サーマルプリンタ1は、例えば店舗の店頭に設置され、図示しない情報処理装置によって動作が制御されている。そのため、サーマルプリンタ1は、情報処理装置から送信された各種の情報を記録紙Pに印刷すると共に、印刷した記録紙Pを排出するように制御されている。
【0022】
サーマルプリンタ1は、例えば店頭の設置面S上に設置され、全体としてはキューブ状に形成されている。本実施形態では、
図1及び
図2に示す状態において、設置面Sに対して垂直な方向を上下方向L1といい、設置面Sに対して平行な面内において互いに直交する方向を前後方向(第二方向)L2及び左右方向(第一方向)L3という。なお、前後方向L2のうち、前方を矢印FWで示し、後方を矢印BKで示す。従って、
図1及び
図2では、紙面に対して左下側が前方FW、右上側が後方BKとされている。
【0023】
サーマルプリンタ1は、ケーシング(本発明に係るプリンタ本体)2と、プリンタカバー3と、ヘッドユニット5及びプラテンユニット6で構成される印字ユニット4と、を備え、記録紙Pが前方FWに排出される、いわゆる前出しタイプとされている。図示の例では、プリンタカバー3側にプラテンユニット6が設けられ、ケーシング2側にヘッドユニット5が設けられている。
ただし、この場合に限定されるものではなく、例えばプリンタカバー3側にヘッドユニット5を設け、ケーシング2側にプラテンユニット6を設けても構わない。
【0024】
(ケーシング)
ケーシング2は、合成樹脂材料や金属材料或いはこれらを適宜組み合わせることで、前方FWに開口部を有するキューブ状に形成され、設置面Sに対向する底面11を含む複数の外面10を有している。ただし、ケーシング2の形状は、この場合に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0025】
複数の外面10のうち、底面11に対して上下方向L1に向い合う外面を天面12という。また複数の外面10のうち、前方FW側に位置する外面を前面13といい、後方BK側に位置する外面を後面14という。これら前面13及び後面14は、前後方向L2に向かい合っている。さらに、複数の外面10のうち、左右方向L3に向かい合う外面を一対の側面15という。
【0026】
ケーシング2の内部には、ケーシング2の前面13に形成された開口部を通じてロール状の記録紙Pを収納可能な記録紙収納部16が形成されている。これにより、プリンタカバー3が開いたときに、記録紙収納部16内に前方FWからロール状の記録紙Pを投入することが可能とされている。
【0027】
プリンタカバー3は、ケーシング2の前面13側の下部に、回転軸部17を介して連結されており、開口部を開放可能に閉塞している。なお、プリンタカバー3は、回転軸部17回りに略90度の角度範囲で回転するように連結されている。
図1に示すように、プリンタカバー3を閉じた際、該プリンタカバー3の先端とケーシング2との間には、若干の隙間があくように設計されている。記録紙Pは、この隙間を利用してケーシング2の内部から前方FWに引き出されて排出される。よって、この隙間は記録紙Pの排出口18として機能する。
【0028】
上述のように構成されたケーシング2及びプリンタカバー3は、プリンタカバー3が閉じた際、プラテンユニット6とヘッドユニット5との組み合わせに伴ってロックされる。これによって、プリンタカバー3は閉状態でロックされる。
【0029】
さらにケーシング2には、
図1に示すように、前面13と天面12と一方の側面15とが交差する角部に、プラテンユニット6とヘッドユニット5との組み合わせ(ロック)を解除するためのレバー19が設けられている。これにより、
図2に示すようにプリンタカバー3のロックについても解除でき、プリンタカバー3の開操作を行うことが可能となる。なお、レバー19は、例えば下方に向けて押下げ操作可能とされている。
【0030】
なお、プリンタカバー3には、例えば電源ボタンや紙送りボタンとされた操作ボタン3aが設けられている。操作ボタン3aは、プリンタカバー3の外面に押下可能に露出した状態で配置されている。図示の例では、操作ボタン3aはレバー19の下方に上下方向L1に一列に並ぶように配置されている。
【0031】
(印字ユニット)
図2~
図5に示すように、印字ユニット4は、ケーシング2側に設けられたヘッドユニット5と、プリンタカバー3側に設けられ、ヘッドユニット5に対して分離可能に組み合わされるプラテンユニット6と、を備えている。
【0032】
ヘッドユニット5は、該ヘッドユニット5の基本骨格を形成する例えば合成樹脂製のヘッドフレーム20と、ヘッドフレーム20を前方FW及び左右方向L3から覆うようにヘッドフレーム20に組み合わされた例えば金属製のヘッドカバープレート21と、ヘッドフレーム20を左右方向L3から覆うようにヘッドフレーム20に組み合わされた例えば金属製のギアカバー22、23と、を備えている。
【0033】
さらにヘッドユニット5は、サーマルヘッド25、可動刃26、駆動機構27、操作レバー28、戻し機構29及びプラテンロック機構30を少なくとも備えている。これらサーマルヘッド25、可動刃26、駆動機構27、操作レバー28、戻し機構29及びプラテンロック機構30は、主にヘッドフレーム20を利用して取り付けられ、ヘッドカバープレート21及びギアカバー22、23によって覆われている。
【0034】
上述のように構成されたヘッドユニット5は、ケーシング2の内部に取り付けられている。具体的には、ヘッドユニット5は、記録紙収納部16の上方であって、ケーシング2の前面13寄りに配置され、主にヘッドフレーム20のネジ締結によってケーシング2に取り付けられている。
本実施形態では、ヘッドユニット5は、可動刃26の刃先26aが下方を向くように取り付けられている。なお、ヘッドユニット5については、後に詳細に説明する。
【0035】
プラテンユニット6は、該プラテンユニット6の基本骨格を形成する例えば合成樹脂製のプラテンフレーム40と、プラテンフレーム40を前方FW及び左右方向L3から覆うようにプラテンフレーム40に組み合わされた例えば金属製のプラテンカバープレート41と、を備えている。
さらにプラテンユニット6は、プラテンローラ45及び固定刃46を少なくとも備えている。これらプラテンローラ45及び固定刃46は、主にプラテンフレーム40を利用して取り付けられ、プラテンカバープレート41によって覆われている。
【0036】
上述のように構成されたプラテンユニット6は、主にプラテンカバープレート41を介してプリンタカバー3の内面に取り付けられている。この際、プラテンユニット6は、プリンタカバー3の開閉動作に伴ってヘッドユニット5に分離可能に組み合わされる位置に取り付けられている。
本実施形態では、プラテンユニット6は固定刃46の刃先46aが上方を向くように取り付けられている。
【0037】
プラテンユニット6について、詳細に説明する。
図3~
図6に示すように、固定刃46は、ヘッドユニット5とプラテンユニット6とが組み合わされた際に、刃先46aがヘッドユニット5側に向くようにプラテンフレーム40に支持されている。
図6に示すように、プラテンフレーム40には、固定刃46よりも後方BKに位置する部分にプラテンローラ45を収納するプラテン収納空間47が形成されていると共に、プラテン収納空間47を間にして左右方向L3に向かい合うように配置され、プラテンローラ45を支持する支持壁48が形成されている。
【0038】
プラテンローラ45は、記録紙Pをプリンタカバー3の外部に搬送するゴムローラであって、左右方向L3に延びるプラテン軸50に巻回されている。プラテンローラ45は、ヘッドユニット5側に外周面の一部が露出した状態でプラテン収納空間47内に収納されていると共に、支持壁48によって回転可能に支持されている。
具体的には、プラテンローラ45よりも左右方向L3の外側に延びたプラテン軸50の両端部には、円筒状のプラテン軸受51がそれぞれ被せられている。これにより、一対のプラテン軸受51を押さえ付けたとしても、プラテンローラ45を回転させることが可能とされている。なお、プラテン軸50の一端部には、プラテン軸受51よりも左右方向L3の外側に従動ギア52が固定されている。
【0039】
支持壁48は、例えばスリット孔を利用してプラテン軸受51を挟み込んで固定している。これにより、プラテンローラ45は、プラテン収納空間47内に収納された状態で一対のプラテン軸受51を介して一対の支持壁48に回転可能に支持されている。
一対のプラテン軸受51は、支持壁48よりも左右方向L3の外側に向けて延びており、プリンタカバー3を閉じた際に
図5に示すように、ヘッドユニット5側に設けられた一対の収容溝62内にそれぞれ収容される。
なお、
図5では、プラテンユニット6のうち主にプラテンローラ45及びプラテン軸受51について図示している。
【0040】
次に、ヘッドユニット5について詳細に説明する。
図3~
図5に示すように、ヘッドユニット5は、サーマルヘッド25、可動刃26、駆動機構27、操作レバー28、戻し機構29及びプラテンロック機構30を少なくとも備えている。
【0041】
図5に示すように、サーマルヘッド25は、左右方向L3に沿ってライン状に並んだ複数の図示しない発熱素子を有し、プリンタカバー3が閉位置に位置しているときに、プラテンローラ45に対向するようにヘッドフレーム20に取り付けられている。なお、記録紙Pは、プラテンローラ45とサーマルヘッド25との間を通過可能とされている。
サーマルヘッド25とヘッドフレーム20との間には、サーマルヘッド25をプラテンローラ45側に向けて付勢する図示しないコイルばねが介在されている。これにより、プラテンローラ45によって送り出される記録紙Pに対してサーマルヘッド25を確実に押し付けることができ、印字ユニット4による良好な印刷が可能とされている。
【0042】
ヘッドフレーム20は、プラテンユニット6におけるプラテンフレーム40の支持壁48よりも左右方向L3の外側に位置する一対の側壁部60、61を有している。
一対の側壁部60、61には、一対のプラテン軸受51を各別に内部に嵌め込み可能な一対の収容溝62がそれぞれ形成されている。
収容溝62は、
図7に示すように、前後方向L2の後方BK(第二方向の一方側)に窪む側面視U字状に形成され、プラテンユニット6側に向かう前方FWに開放口62aを向けた状態で形成されている。収容溝62における溝底部62bは、平坦に形成されている。
なお、
図7は、一方の側壁部60に形成された収容溝62を図示し、その他の各構成品に図示を適宜省略している。
【0043】
収容溝62の内側面には、開放口62a側から溝底部62b側に向かうにしたがって開口幅を狭めるように形成され、プラテン軸受51を溝底部62b側に向けて案内する傾斜した案内突起63が形成されている。これにより、収容溝62は、開放口62aが最も開口幅が大きくなるように形成されていると共に、案内突起63における頂点部63a付近で開口幅が最も狭くなるように形成されている。
収容溝62に案内突起63が形成されていることで、プラテン軸受51を案内突起63に沿って溝底部62b側に落とし込むように案内することが可能とされている。
【0044】
上述のように一対の側壁部60、61に収容溝62がそれぞれ形成されているので、ヘッドユニット5とプラテンユニット6とを組み合わせた際に、
図5及び
図7に示すように、一対のプラテン軸受51は一対の収容溝62内に嵌め込まれて、内部に収容された状態となる。この際、プラテン軸受51は、溝底部62bに接した状態で収容溝62内に収容される。
【0045】
図4に示すように、可動刃26は、ヘッドユニット5とプラテンユニット6とが組み合わされた際に、刃先26aがプラテンユニット6側に向くように駆動機構27を介してヘッドフレーム20に取り付けられている。この際、可動刃26は固定刃46に対して上下方向L1に向かい合うように配置されていると共に、切断位置P1に移動したときに、固定刃46に対して前後方向L2に重なるように配置されている。
可動刃26は、
図8に示すように、根元から刃先26aまでの長さが両端から中央に向かって漸次短くなるように形成されたV字状の板状刃とされている。なお、
図8は可動刃26を切断位置P1に移動させて、固定刃46と可動刃26との間で記録紙Pを切断する状態を示す斜視図である。
【0046】
図4に示すように、可動刃26は、可動刃ホルダ70を介してラック部材300に取り付けられている。可動刃26は、駆動機構27の動作によってヘッドフレーム20に対して上下方向L1に移動可能に構成されている。これにより、可動刃26は固定刃46に対して上下方向L1に移動可能に支持されている。
【0047】
図4、
図9及び
図10に示すように、駆動機構27は、切断位置P1と待機位置P2とに可動刃26を移動させる機構である。切断位置P1とは、可動刃26が固定刃46に乗り上げることで、可動刃26が固定刃46と共に記録紙Pを切断する位置(
図8参照)である。待機位置P2とは、固定刃46から可動刃26が適切に離れた位置(
図4参照)である。
駆動機構27は、駆動用モータ75、駆動中間車76、二段中間車77、駆動ピニオン78及び駆動ラック71を備えている。
【0048】
図10に示すように、駆動用モータ75は正逆回転可能なモータとされ、ヘッドフレーム20における一方の側壁部60の内側に固定されている。駆動用モータ75の駆動軸は、減速機構75aに接続されている。さらに、減速機構75aの出力軸75bは、ヘッドフレーム20における一方の側壁部60よりも左右方向L3の外側に突出している。駆動中間車76は、一方の側壁部60よりも左右方向L3の外側に配置され、減速機構75aの出力軸75bに連結されている。従って、駆動中間車76は、減速機構75aを介した駆動用モータ75の回転に伴って回転する。
【0049】
図9及び
図10に示すように、二段中間車77は、駆動中間車76と駆動ピニオン78との間に配置され、中間支持軸80に回転可能に支持されている。
二段中間車77は、大径中間車77a、及び大径中間車77aよりも小径に形成された小径中間車77bを備えている。大径中間車77aは、操作レバー28がロック位置P3に位置している際、駆動中間車76に噛み合っている。これにより、二段中間車77の全体は、駆動中間車76の回転に伴って回転する。なお、小径中間車77bは、大径中間車77aよりも左右方向L3の外側に配置され、駆動ピニオン78に対して噛み合っている。
【0050】
駆動ピニオン78は、小径中間車77bよりも操作レバー28側に位置し、且つ駆動ラック71側に位置するように配置されると共に、ピニオン支持軸81に対して同軸に配置された状態で該ピニオン支持軸81に固定されている。これにより、駆動ピニオン78及びピニオン支持軸81は、一体に回転する。
また、駆動ピニオン78は、小径中間車77bに噛み合っていると共に、駆動ラック71における駆動ラック歯71aに噛み合っている。
【0051】
駆動ラック71は、ラック部材300に設けられている。ラック部材300は、
図4に示すように、ヘッドフレーム20における一方の側壁部60側だけでなく、他方の側壁部61側にも配置され、ヘッドフレーム20を挟んで左右方向L3の両側に配置されている。ピニオン支持軸81は、ヘッドフレーム20を左右方向L3に貫くように形成され、左右方向L3の両側に配置された一対の駆動ピニオン78同士を連結している。これにより、一対の駆動ピニオン78は、ピニオン支持軸81を介して、同期した状態で共回り可能とされている。
【0052】
ラック部材300は、可動刃ホルダ70の左右方向L3に沿う両端部に取り付けられ、上下方向L1に沿って延在されている。これにより、ラック部材300は、可動刃ホルダ70を介して可動刃26に対して組み合わされている。ラック部材300は、可動刃26と一体に移動可能である。
図11に示すように、ラック部材300は、駆動ラック71と、後に詳述する戻しラック130と、を備えている。
【0053】
駆動ラック71には、上下方向L1の全域に亘って、複数の駆動ラック歯71aが所定のピッチで等間隔に形成されている。
図12に示すように、一対の駆動ピニオン78は、この駆動ラック歯71aに対して噛み合っている。従って、一対の駆動ピニオン78の回転に伴って、駆動ラック71を介して可動刃26を待機位置P2と切断位置P1との間で移動させることが可能とされている。
【0054】
以下、構成の理解を容易にするために、一方の側壁部60側(駆動用モータ75側)に位置する駆動ピニオン78及び駆動ラック71について詳細に説明し、他方の側壁部61側に位置する駆動ピニオン78及び駆動ラック71については説明を省略する。
【0055】
上述のように駆動機構27が構成されているので、
図4及び
図9に示すように、駆動用モータ75の回転によって駆動中間車76及び二段中間車77(大径中間車77a及び小径中間車77b)を介して駆動ピニオン78を回転させることができる。そのため、駆動ラック71を、戻し機構29の後述する戻しラック130と共に矢印F1方向に移動させることができ、同方向に可動刃26を移動させることができる。これにより、可動刃26を待機位置P2から切断位置P1まで移動させることができる。
【0056】
一方、駆動用モータ75を逆回転させることで、駆動中間車76及び二段中間車77を介して駆動ピニオン78を逆回転させることができる。そのため、駆動ラック71を戻しラック130と共に矢印F2方向に移動させることができ、同方向に可動刃26を移動させることができる。これにより、可動刃26を切断位置P1から待機位置P2まで移動させて復帰させることができる。
【0057】
ところで、上述した二段中間車77を支持する中間支持軸80は、ピニオン支持軸81を中心として揺動可能に配置されたスイングプレート90に固定されている。
図7、
図9、
図13に示すように、スイングプレート90には、該スイングプレート90を左右方向L3に貫通すると共にピニオン支持軸81を挿通させる挿通孔(図示せず)が形成されている。スイングプレート90は、挿通孔(図示せず)内にピニオン支持軸81を挿通させた状態で、一方の側壁部60の壁面に沿って揺動可能に配置されている。
【0058】
スイングプレート90は、駆動中間車76と駆動ラック71との間に向けて延びた第1プレート部92と、後述するロックアーム140の揺動軸線O2に向けて延びた第2プレート部93とを備えている。
【0059】
中間支持軸80は、第1プレート部92から左右方向L3の外側に向けて延びるように形成されている。これにより、中間支持軸80に支持されている二段中間車77は、スイングプレート90に伴ってピニオン支持軸81を中心として揺動可能とされている。
第2プレート部93には、左右方向L3の外側に向けて突出するように係合ピン95が形成されている。
【0060】
このように構成されたスイングプレート90は、第1付勢部材100による付勢力によって、二段中間車77の大径中間車77aが駆動中間車76に対して噛み合う方向に常に付勢されている。
第1付勢部材100は、例えばコイルばねであって、一方の側壁部60に突設されたコイル支持軸105に支持されたコイル部100aと、ヘッドフレーム20に係止された第1コイル端部100bと、スイングプレート90の係止突起94に係止された第2コイル端部100cと、を有する。
【0061】
これにより、スイングプレート90は、第1付勢部材100の付勢力(弾性復元力)によって、第2プレート部93が操作レバー28側に向けて付勢されるので、大径中間車77aが駆動中間車76に対して押し付けられた状態で位置決めされる。
なお、第1付勢部材100は、コイルばねに限定されるものではなく、例えば板ばね等であっても構わない。
【0062】
また、スイングプレート90は、操作レバー28の操作に伴って、係合ピン95が後述する押上げカム113によって押し上げられることで、第1付勢部材100の付勢力に抗してピニオン支持軸81を中心として揺動し、二段中間車77が駆動中間車76から離間するように構成されている。これにより、二段中間車77と駆動中間車76との噛み合いを解除することが可能とされている。
【0063】
図4、
図9及び
図10に示すように、操作レバー28は、ヘッドフレーム20における一方の側壁部60側に配置されていると共に、左右方向L3に延びてプラテンローラ45と平行に配置されたレバー支持軸106を介して回転可能に支持されている。
操作レバー28は、レバー支持軸106を中心として、ロック位置P3から後述する噛合解除位置P4やロック解除位置P5へ向けて、一方の側壁部60を左右方向L3の外側から見た側面視で反時計方向に押込み操作可能に構成されている。
【0064】
レバー支持軸106は、ギアカバー22の内面から一方の側壁部60側に向けて突設されている。なお、レバー支持軸106の中心軸線が操作レバー28の回転軸線O1となる。
【0065】
ロック位置P3とは、ヘッドユニット5に対してプラテンユニット6がロックされる位置をいう。噛合解除位置P4とは、操作レバー28における後述する押上げカム113によってスイングプレート90が揺動して、二段中間車77の大径中間車77aと駆動中間車76との噛み合いが解除された位置をいう。ロック解除位置P5とは、ヘッドユニット5に対するプラテンユニット6のロックが解除される位置をいう。
【0066】
図5、
図9、
図10、
図13に示すように、操作レバー28の基端部には、側面視扇状に形成されたレバープレート110が形成されている。
レバープレート110の外面には、左右方向L3の外側に向けてプラネタリ軸111が突設されている。レバープレート110には、径方向外側に向けて膨らんだ押上げカム113及び規制突片114が形成されている。
【0067】
プラネタリ軸111は、レバー支持軸106に対してオフセットされた位置に形成されている。押上げカム113は、スイングプレート90に形成された係合ピン95よりも時計方向側に配置され、操作レバー28がロック位置P3からロック解除位置P5側に向けて回転したときに、係合ピン95に対して接触可能とされている。さらに押上げカム113の外面には、左右方向L3の外側に向けて突設された係止突起115が形成されている。
【0068】
規制突片114は、押上げカム113よりも時計方向側に配置され、操作レバー28がロック位置P3に位置しているときに、ヘッドフレーム20に形成された規制壁部116に対して時計方向側から接触している。
そのため、操作レバー28の全体は、これ以上時計方向に回転することが規制され、これによってロック位置P3に位置決めされている。
なお、操作レバー28は、ロック解除位置P5に移動し、さらに下方に押下げ操作されたときに、
図3に示すギアカバー22の規制壁部117に対して反時計方向側から接触可能とされている。従って、操作レバー28は、ロック解除位置P5を超えてさらに大きく押下げ操作されることが規制されている。
【0069】
操作レバー28の先端部は、ケーシング2に設けられたレバー19における連結体19a(
図2参照)の内側に嵌合されている。そのため、操作レバー28は、レバー19の操作に連動して操作される。これにより、レバー19を操作することにより、これに連動して操作レバー28をロック位置P3からロック解除位置P5に向けて操作することが可能とされている。
【0070】
上述のように構成された操作レバー28は、
図9及び
図10に示すように、第2付勢部材120による付勢力によって、ロック位置P3に向かう方向(時計方向)に常に付勢されている。
第2付勢部材120は、例えばコイルばねであって、ギアカバー22の内面に突設された図示しないコイル支持軸に支持されたコイル部120aと、ギアカバー22の内面に係止された第1コイル端部120bと、操作レバー28の係止突起115に係止された第2コイル端部120cと、を有する。
【0071】
これにより、操作レバー28は、第2付勢部材120の付勢力(弾性復元力)によって、時計方向に付勢されるので、操作レバー28の先端部がロック位置P3に向かう方向に付勢されている。なお、先に述べたように、操作レバー28の規制突片114がヘッドフレーム20の規制壁部116に対して接触するので、これ以上の回転が規制され、ロック位置P3に位置決めされる。
なお、第2付勢部材120は、コイルばねに限定されるものではなく、例えば板ばね等であっても構わない。
【0072】
図4に示すように、戻し機構29は、例えば紙ジャムの発生等によって可動刃26が切断位置P1で停止している状態において、ロック位置P3からロック解除位置P5に向けた操作レバー28に伴う操作力(回転力)を利用して、プラテンロック機構30がプラテンローラ45をロック解除状態に切り換える前に、可動刃26を切断位置P1から待機位置P2に移動させる機構である。
【0073】
図10、
図14、
図15に示すように、戻し機構29は、ラック部材300に形成された戻しラック130と、戻しラック130の戻しラック歯130aに噛み合う戻しピニオン131と、操作レバー28の回転軸線O1と同軸に配置された状態で、回転軸線O1回りに回転可能に支持された戻しギア132と、戻しギア132と一体に設けられたサンギア133に噛み合うと共に操作レバー28の移動に伴って公転するプラネタリギア134と、プラネタリギア134が噛み合うインターナルギア135と、を備えている。なお、サンギア133、プラネタリギア134及びインターナルギア135は、加速機構136(
図14参照)を構成している。
【0074】
戻しピニオン131は、駆動ピニオン78よりも左右方向L3の外側に配置された状態で、ピニオン支持軸81に回転可能に支持されている。これにより、戻しピニオン131は、駆動ピニオン78と同軸上に配置されている。なお、戻しピニオン131は、操作レバー28の操作に連動して回転する戻しギア132と噛み合い可能とされ、戻しギア132からの回転力によって回転する。
さらに、戻しピニオン131は、戻しラック130における戻しラック歯130aに噛み合い可能とされている。
【0075】
戻しラック130は、
図10~
図12、
図15に示すように、駆動機構27における駆動ラック71よりも左右方向L3の外側に配置された状態で、ラック部材300に形成されている。つまり、ラック部材300は、駆動ラック71と、戻しラック130と、を備えている。戻しラック130は複数の戻しラック歯130aを有している。複数の戻しラック歯130aは、複数の駆動ラック歯71aと左右方向L3に並列して形成されている。複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、左右方向L3に隙間Sをあけて形成されている。これにより、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、それぞれ独立して形成されている。なお、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、後述するように、例えば位相を異ならせてそれぞれ独立して形成されているのであれば、隙間Sを設けない構成としてもよい。
【0076】
複数の戻しラック歯130aは、上下方向L1に所定のピッチで等間隔に設けられている。本実施形態において、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、ピッチ及びモジュールが同一である。本実施形態において、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、位相が異なっている。本実施形態において、「ピッチ」とは、同一のラックにおいて、複数の駆動ラック歯71a、戻しラック歯130aの配列方向(上下方向L1)において隣り合う歯(駆動ラック歯71a同士、又は戻しラック歯130a同士)の中心間距離である。「位相」とは、歯の配列方向(上下方向L1)における各駆動ラック歯71aの中心位置と、各戻しラック歯130aの中心位置である。すなわち、複数の戻しラック歯130aと複数の駆動ラック歯71aとで位相が異なっている、とは、戻しラック130と駆動ラック71とで、駆動ラック歯71aの中心位置と戻しラック歯130aの中心位置とが、歯の配列方向(上下方向L1)で異なっていることを指す。図示の例では、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aと、の位相が複数の戻しラック歯130a(複数の駆動ラック歯71a)の半ピッチ分異なっている。
これら複数の戻しラック歯130aは、可動刃26の刃先26a側ではなく、根元側に位置するように形成されている。これにより、戻しラック130は、可動刃26が切断位置P1に位置したときに戻しピニオン131と噛み合い、且つ可動刃26が待機位置P2に位置したときに戻しピニオン131との噛み合いが解除される。
また、複数の戻しラック歯130aのうち、少なくとも一部の戻しラック歯130a(上下方向D1において最も上方に位置する戻しラック歯130a)は、複数の駆動ラック歯71aに対し、上下方向L1の上方に突出して配置されている。
【0077】
複数の戻しラック歯130aのうち、可動刃26の刃先26a側に位置する戻しラック歯130aは、変位可能な戻しラック歯130bとされている。
この戻しラック歯130bは、ラックアーム139の先端部に形成されている。ラックアーム139の基端部は、戻しラック130のうち可動刃26の刃先26a側に位置する端部に連結されている。そのため、ラックアーム139は、基端部を支点にして戻しピニオン131から離れる方向に弾性変形可能な片持ちアームとされている。
これにより、ラックアーム139を戻しピニオン131から離間する方向に弾性変形させることができ、戻しラック歯130bを戻しピニオン131の径方向外側へ退避させることが可能とされている。
【0078】
戻しラック130の戻しラック歯130bを戻しピニオン131の径方向外側へ退避可能に形成した理由について、簡単に説明する。
例えば、戻しラック130が
図9に示す矢印F1方向に移動する際に、戻しラック130の戻しラック歯130bが戻しピニオン131における歯部の歯先に当接することが考えられる。この場合、戻しラック130の移動が戻しピニオン131の歯先で阻止されるおそれがある。
このことを考慮して、戻しラック歯130bをラックアーム139の先端部に形成することで、ラックアーム139の弾性変形によって戻しラック歯130bを戻しピニオン131の径方向外側へ退避させ、戻しピニオン131の歯先を乗り越え可能に構成している。そのため、戻しラック歯130bが戻しピニオン131の歯先を乗り越えた後、ラックアーム139の弾性復元力を利用して戻しラック歯130bを元の位置に復帰させ、復帰した戻しラック歯130bを戻しピニオン131における次の歯部に適切に噛み合わせることが可能とされている。これにより、戻しラック130の移動が阻害されてしまう不都合を生じさせることなく、戻しラック130の戻しラック歯130bと戻しピニオン131とを適切に噛み合わせることが可能となる。
【0079】
図9及び
図10、
図15に示すように、戻しギア132は、操作レバー28におけるレバープレート110よりも左右方向L3の外側に配置された状態で、レバー支持軸106に回転可能に支持されている。これにより、戻しギア132は、操作レバー28の回転軸線O1と同軸上に配置され、操作レバー28の回動にともなって回動する。
【0080】
戻しギア132は、ギアプレート132aと、ギアプレート132aの外周縁に沿って形成された複数のギア歯部132bと、を備えている。複数のギア歯部132bは、ギアプレート132aの全周ではなく、周方向の一部の亘る範囲に形成されている。本実施形態において、複数のギア歯部132bは、ギアプレート132aの略半周に亘る範囲で形成されている。これら複数のギア歯部132bは、戻しピニオン131に対して噛み合い可能とされている。
【0081】
複数のギア歯部132bのうち、ロック位置P3からロック解除位置P5に向けた操作レバー28の操作によって、戻しピニオン131に対して最初に噛み合うギア歯部132bは、戻しギア132の径方向内側に向けて変位可能とされ、戻しピニオン131の歯部から退避することが可能とされている。戻しピニオン131に対して最初に噛み合うギア歯部132bは、複数のギア歯部132bのうち、操作レバー28の回動にともなって回動する戻しギア132の回動方向Drの最も前方に位置するギア歯部132bである。
【0082】
ギア歯部132bは、弾性アーム部132cの先端部に形成されている。弾性アーム部132cは、基端部がギアプレート132aの外周縁のうちギア歯部132bの未形成部分に一体に形成され、ギアプレート132aの外周縁に沿って時計方向に円弧状に延びている。これにより、弾性アーム部132cは、ギアプレート132aの外周縁に基端部を介して片持ち支持されていると共に、基端部を支点にして径方向に弾性変形可能とされている。
これにより、弾性アーム部132cがギアプレート132a側に向けて弾性変形することにより、ギア歯部132bを戻しギア132の径方向内側に向けて変位させることができ、戻しピニオン131の歯部から退避することが可能とされている。
【0083】
図14に示すように、サンギア133は、ギアプレート132aの内面に一体形成され、操作レバー28の回転軸線O1と同軸上に配置されている。これにより、サンギア133は戻しギア132と共に回転軸線O1回りを回転可能とされている。
【0084】
プラネタリギア134は、サンギア133に噛み合った状態で、操作レバー28にプラネタリ軸111を介して回転可能に支持されている。これにより、プラネタリギア134は、操作レバー28が回転軸線O1回りに回転することにより、操作レバー28の移動に追従して回転軸線O1を中心にして公転する。
ギアカバー22の内面には、プラネタリギア134が噛み合うインターナルギア135が形成されている。従って、プラネタリギア134は、操作レバー28の移動に伴って公転することで、インターナルギア135に噛み合いながら自転することが可能とされている。
【0085】
このようにプラネタリギア134が自転することで、サンギア133及び戻しギア132を回転軸線O1回りに回転させることができると共に、戻しギア132のギア歯部132bを戻しピニオン131に対して噛み合わせることが可能とされている。
【0086】
ここで、複数のギア歯部132bのうち、ロック位置P3からロック解除位置P5に向けた操作レバー28の操作(プリンタカバー3の開操作)によって操作レバー28の回動にともなって回動する戻しギア132の回動方向Drの最も前方に位置するギア歯部132bに対し、戻しピニオン131の所定の歯131tが噛み合うよう、戻しラック130の戻しラック歯130aは、可動刃26が切断位置P1にあるときの戻しピニオン131の角度を規定する。
【0087】
図5に示すように、プラテンロック機構30は、プラテンローラ45と平行な揺動軸線O2回りに揺動可能なロックアーム140、150を備え、プラテンローラ45をロックするロック状態と、該ロックを解除するロック解除状態とを切り換える機構とされている。
【0088】
図5、
図9及び
図10に示すように、一方のロックアーム140はヘッドフレーム20における一方の側壁部60側に配置され、他方のロックアーム150は他方の側壁部61側に配置されている。
これら一対のロックアーム140、150は、操作レバー28がロック位置P3に位置しているときに、収容溝62内に収容されたプラテン軸受51を開放口62a側から押さえ、且つ操作レバー28がロック位置P3からロック解除位置P5側に向けて移動することに伴って、プラテンユニット6からヘッドユニット5側に向けて揺動軸線O2回りを揺動し、プラテン軸受51から離間して収容溝62内からのプラテン軸受51の離脱を許容する。
【0089】
従って、本実施形態のプラテンロック機構30は、一対のロックアーム140、150を利用して、一対のプラテン軸受51を同時にロックすることができると共に、同時にロック解除することが可能とされている。
【0090】
一方のロックアーム140及び他方のロックアーム150は、左右方向L3に沿って延び、プラテンローラ45と平行に配置された長尺な連結軸部141を介して連結されている。
連結軸部141は、
図10に示すように円柱状のシャフトであり、ヘッドフレーム20を左右方向L3に貫通するように形成されていると共に、一方の側壁部60及び他方の側壁部61に回転可能に支持されている。なお、連結軸部141の中心軸線が揺動軸線O2とされている。
【0091】
そして、一方のロックアーム140及び他方のロックアーム150は、連結軸部141の両端部にそれぞれ連結されている。これにより、一方のロックアーム140及び他方のロックアーム150は、連結軸部141を介して揺動軸線O2回りに同期した状態で揺動可能とされている。
【0092】
なお、連結軸部141は、上下方向L1において収容溝62と戻しギア132との間に位置し、且つ前後方向L2において収容溝62よりも後方BKに位置するように配置されている。
【0093】
なお、本実施形態では、左右方向L3に配置された一対のロックアーム140、150同士を、連結軸部141を介して揺動可能に連結している場合を例にしているが、この場合に限定されるものではない。例えば、一対のロックアーム140、150及び連結軸部141を、1枚の板金等を折り曲げて一体形成することで、一部材で構成しても良い。
【0094】
一方のロックアーム140について詳細に説明する。
図16に示すように、ロックアーム140は、収容溝62よりも上方側に配置され、前後方向L2に延びるように形成されている。ロックアーム140の基端部が連結軸部141の端部に連結されている。ロックアーム140の先端部には、収容溝62内に収容されたプラテン軸受51を収容溝62の開放口62a側から覆うロック爪部145が形成されている。これにより、ロック爪部145と収容溝62における溝底部62bとの間でプラテン軸受51を挟み込むように、プラテン軸受51を保持することが可能とされている。
【0095】
なお、ロック爪部145の外側面は、プラテン軸受51を収容溝62内にセットする際にプラテン軸受51を収容溝62内に案内する傾斜した案内面145bとされている。この案内面145bは、収容溝62側の案内突起63との間に側面視でV字状のV溝が画成されるように形成されている。
【0096】
さらにロックアーム140の基端部には、左右方向L3の外側に向けて突設された係合壁部146が形成されている。係合壁部146は、操作レバー28をロック位置P3からロック解除位置P5に向けて操作した際、押上げカム113が係合ピン95を介してスイングプレート90を揺動させた後に、操作レバー28に設けられたレバー突部112(
図17参照)が接触する壁部とされている。
【0097】
これにより、ロックアーム140の全体は、操作レバー28の操作に伴って係合壁部146を介してレバー突部112から押され、揺動軸線O2を中心に時計方向に揺動するように構成されている。つまり、ロックアーム140は、プラテンユニット6側からヘッドユニット5側に向かうように、揺動軸線O2を中心に上方に向けて揺動するように構成されている。
そのため、ロックアーム140のロック爪部145は、操作レバー28の操作に伴ってプラテン軸受51から徐々に離れ、操作レバー28がロック位置P3に達したときに、収容溝62からヘッドユニット5側に退避して開放口62aを開放する。これにより、収容溝62内からのプラテン軸受51の離脱を許容することが可能とされている。
【0098】
図5、
図13、
図16に示すように、プラテンロック機構30は、離脱アーム200を備えている。本実施形態において、離脱アーム200は、左右方向L3の一方側の側壁部60に設けられている。離脱アーム200は、側壁部60から左右方向L3の外側に突出するアーム支持軸210に揺動可能に設けられている。アーム支持軸210は、左右方向L3に延びてプラテンローラ45と平行に配置されている。
【0099】
アーム支持軸210は、ロックアーム140を揺動可能に支持する連結軸部141、及び操作レバー28を揺動可能に支持するレバー支持軸106とは異なる位置に配置されている。
図13に示すように、アーム支持軸210は、前後方向L2において、その少なくとも一部が、プラテンローラ45の最大外径部に重なっている。さらに、アーム支持軸210は、前後方向L2において、その少なくとも一部が、プラテン軸受51に重なっている。また、上下方向L1において、アーム支持軸210は、レバー支持軸106に対してプラテン軸受51を挟んで反対側に配置されている。
【0100】
図5に示すように、離脱アーム200は、操作レバー28に対して左右方向L3で隣り合って配置されている。離脱アーム200は、操作レバー28に対して、左右方向L3の内側に配置されている。
図16に示すように、離脱アーム200は、アーム本体201と、ボス203と、離脱押圧面205と、を備えている。
【0101】
アーム本体201は、左右方向L3に直交する面に沿ったプレート状を成している。アーム本体201は、アーム支持軸210が左右方向L3に貫通することで、アーム支持軸210周りに揺動自在に設けられている。
【0102】
ボス203は、アーム本体201において、アーム支持軸210に対して径方向外側に形成されている。ボス203は、アーム本体201から左右方向L3の外側、つまり操作レバー28側に突出している。
図13、
図17に示すように、操作レバー28には、ボス203が挿入可能なボス収容溝118が形成されている。ボス収容溝118は、アーム支持軸210を中心とし、アーム支持軸210及びボス203間を曲率半径とする仮想円の接線方向に延びるように窪んでいる。ボス収容溝118は、操作レバー28がロック位置P3からロック解除位置P5に向けて回動したときにボス203の外周面に突き当たる突き当たり面118fを有している。操作レバー28の突き当たり面118fは、操作レバー28がロック位置P3からロック解除位置P5に向けて定められた角度移動したときに、ボス203の外周面に突き当たるように形成されている。操作レバー28が、突き当たり面118fがボス203の外周面に突き当たるボス突き当たり位置P6(
図17参照)に到達するタイミングとしては、例えば、プラテン軸受51が収容溝62から離脱するときの移動軌跡からロックアーム140が退避した状態となったときである。操作レバー28がボス突き当たり位置P6に到達するタイミングは、これに限らず、少なくとも、ロックアーム140がロック状態からロック解除状態に移行しはじめ、ロックアーム140によってプラテン軸受51が収容溝62内から離脱するのを拘束していない状態であればよい。アーム本体201は、操作レバー28をさらにロック解除位置P5に向けて回動させると、突き当たり面118fによってボス203が押圧されることで、アーム本体201がアーム支持軸210周りに回動する。
【0103】
ここで、
図13に示すように、ボス203は、上下方向L1において、プラテン軸受51に対してアーム支持軸210を挟んで反対側に配置されている。これにより、操作レバー28の回転中心であるレバー支持軸106から、ボス203までの距離を長く確保することができる。したがって、操作レバー28をロック位置P3からロック解除位置P5に向けて回動させたときに、ボス203を効率良く押圧することができる。
【0104】
図16に示すように、離脱押圧面205は、アーム本体201において、アーム支持軸210を挟んでボス203とは上下方向L1で反対側に形成されている。離脱押圧面205は、前方FWを向いて形成されている。離脱押圧面205は、アーム本体201がアーム支持軸210周りに回動することによって、収容溝62の内部に収容されたプラテン軸受51を、前方FWに押圧する。このとき、離脱押圧面205は、収容溝62の溝底部62bに接触したプラテン軸受51に突き当たった状態で、溝底部62bに対し、なるべく直交する角度に近くなるように形成するのが好ましい。つまり、離脱押圧面205は、収容溝62の溝底部62bに接触したプラテン軸受51に突き当たった状態で、上下方向L1に延びるように形成するのが好ましい。これにより、収容溝62内のプラテン軸受51に対し、離脱押圧面205による押圧力を効率良く伝達することができる。
【0105】
上述したような離脱アーム200は、操作レバー28がロック位置P3からロック解除位置P5に向けて回動することに伴って、アーム支持軸210周りに回動し、プラテン軸受51を収容溝62の内部から開放口62a側に向けて押圧し、プラテン軸受51を収容溝62から離脱させる。
【0106】
なお、本実施形態のプラテンユニット6は、
図5に示すように、ヘッドユニット5に組み合わされた際、従動ギア52が、ヘッドフレーム20における他方の側壁部61側に配置された図示しないプラテン輪列機構に噛み合い可能とされている。プラテン輪列機構は、プラテンローラ45を駆動するための図示しない駆動用モータからの動力を受けて作動し、該動力を従動ギア52に伝達する役割を果たしている。
これにより、ヘッドユニット5とプラテンユニット6とを組み合わせた際、プラテンローラ45を回転させて記録紙Pの紙送りを行うことが可能とされている。
【0107】
(サーマルプリンタの作用)
次に、上述のように構成されたサーマルプリンタ1の作用について説明する。
はじめに、ヘッドユニット5とプラテンユニット6を組み合わせる場合について説明する。
この場合には、
図2に示すように、ロール状の記録紙Pをケーシング2の記録紙収納部16内に投入してセットした後、プリンタカバー3を閉操作することで、プラテンユニット6をヘッドユニット5に対して接近させることができる。そして、
図1に示すように、プリンタカバー3を完全に閉めることで、記録紙Pをサーマルヘッド25とプラテンローラ45との間に挟んだ状態で、ヘッドユニット5とプラテンユニット6を組み合わせることができる。
【0108】
なお、プリンタカバー3の閉操作に伴って、プラテンローラ45のプラテン軸受51が収容溝62の案内突起63及びロック爪部145の案内面145bで案内されながら収容溝62内に嵌まり込むように案内され、収容溝62内に収容される。
【0109】
ロックアーム140、150は、プラテン軸受51によって押された後、戻しばね(図示せず)の付勢力によって揺動軸線O2回りを揺動して元の位置に復帰し、ロック爪部145を利用してプラテン軸受51を収容溝62の開放口62a側から押さえ付ける。
これにより、
図5に示すように、一対のロックアーム140、150を利用して、一対の収容溝62内に収容された一対のプラテン軸受51のそれぞれを押さえることができるので、収容溝62内からプラテン軸受51が抜け出てしまうことを防止することができる。従って、プラテンロック機構30を利用して、プラテンローラ45をロック状態に維持することができる。なお、プリンタカバー3の閉操作において、ロックアーム140、150がプラテン軸受51によって押された状態では、突き当たり面118fはボス203には当接しないことが好ましい。これにより、プリンタカバー3の閉操作において、離脱アーム200が移動するのを抑制できる。但し、ロックアーム140、150が戻しばねによって復帰するまでの間にプラテン軸受51が離脱押圧面205に当接しない構成であれば、離脱アーム200が僅かに移動してもよい。
【0110】
これにより、ヘッドユニット5とプラテンユニット6との組み合わせをロックすることができると同時にケーシング2に対するプリンタカバー3のロックも行うことができる。
なお、ヘッドユニット5とプラテンユニット6とが組み合わされることで、記録紙Pを間に挟んだ状態でサーマルヘッド25とプラテンローラ45とが所定の圧力で圧接される。また、記録紙Pは、可動刃26と固定刃46との間を通過した後、排出口18からケーシング2の外側に引き出された状態となる。さらに、プラテンローラ45の従動ギア52が、ヘッドユニット5側のプラテン輪列機構に噛み合った状態となる。
【0111】
次に、記録紙Pに対して各種情報の印刷を行う場合について簡単に説明する。
この場合には、駆動用モータを駆動して、プラテン輪列機構を介して従動ギア52を回転させる。これにより、プラテンローラ45を回転させることができ、サーマルヘッド25との間で挟みこまれた記録紙Pを排出口18に向けて紙送りさせることができる。
また、これと同時にサーマルヘッド25に印字データに応じた制御信号を出力して発熱素子を適宜発熱させる。これにより、紙送りされる記録紙Pに対して、各種の文字や図形等を明瞭に印刷することができる。
なお、印刷された記録紙Pは固定刃46と可動刃26との間を通過する。
【0112】
次に、記録紙Pを切断する場合について簡単に説明する。
この場合には、駆動用モータ75を駆動して
図9に示す駆動中間車76を回転させる。これにより、二段中間車77(大径中間車77a及び小径中間車77b)を介して駆動ピニオン78を回転させることができ、駆動ラック71を戻しラック130と共に矢印F1方向に移動させることができる。そのため、可動刃26を待機位置P2から切断位置P1まで移動させることができ、
図8に示すように記録紙Pを固定刃46との間で挟み込んで切断することができる。その結果、切断した記録紙Pを例えばレシートやチケット等として使用することが可能である。
【0113】
なお、記録紙Pの切断後、駆動用モータ75を逆回転させる。これにより、駆動中間車76及び二段中間車77を介して駆動ピニオン78を逆回転させることができ、
図9に示すように、駆動ラック71を戻しラック130と共に矢印F2方向に移動させることができる。そのため、可動刃26を切断位置P1から待機位置P2まで移動させて復帰させることができる。
【0114】
また、記録紙Pの切断の際、戻しピニオン131は、戻しギア132におけるギア歯部132bとの噛み合いが解除された状態となっており、空転が許容されている。そのため、可動刃26が切断位置P1に移動したときに、戻しラック130の戻しラック歯130a、130bが戻しピニオン131が噛み合った場合であっても、戻しピニオン131を空転させることができる。従って、戻しピニオン131に影響されることなく、駆動ラック71及び戻しラック130を移動させることができ、記録紙Pの切断を行うことができる。
【0115】
次に、可動刃26と固定刃46との間に紙ジャムが発生した場合に、操作レバー28を操作することで、紙ジャムの解消を行いながら、プラテンユニット6のロック解除を行って、プリンタカバー3を開放する場合の一連の動作について説明する。
なお、記録紙Pの切断中に紙ジャムが発生した場合には、
図18に示すように、第2付勢部材120の付勢力に抗して、操作レバー28をロック位置P3からロック解除位置P5側に向けて操作する。これにより、回転軸線O1を中心として操作レバー28を反時計方向に回転するように移動させることができ、操作レバー28の移動に伴って、インターナルギア135に噛み合っているプラネタリギア134を、プラネタリ軸111を中心として時計方向に自転させながら回転軸線O1を中心として反時計方向に公転させることができる。
そして、プラネタリギア134の回転に伴って、サンギア133及び戻しギア132を、回転軸線O1を中心として反時計方向に回転させることができる。
【0116】
ここで、可動刃26と固定刃46との間に紙ジャムが発生し、可動刃26が切断位置P1に止められている場合、操作レバー28をロック位置P3からロック解除位置P5側に向けて回動させていくと、
図19に示すように、複数のギア歯部132bのうち、戻しギア132の最初のギア歯部132bが、戻しピニオン131の所定の歯131tに噛み合う。ここで、戻しラック130の複数の戻しラック歯130aは、駆動ラック71の複数の駆動ラック歯71aとは位相が異なっている。これにより、駆動ピニオン78と戻しピニオン131とが、その中心軸回りの周方向でギア歯の位置(角度)が異なっている。可動刃26が切断位置P1にあるときに、複数のギア歯部132bのうち、戻しギア132の最初のギア歯部132bと、戻しピニオン131の所定の歯131tとが、安定して同じ位置関係で噛み合うような角度に、戻しピニオン131の周方向の角度が規定される。
【0117】
比較のため、
図20、
図21に示すように、戻しラック130の複数の戻しラック歯130aと、駆動ラック71の複数の駆動ラック歯71aとが、同位相、かつ同ピッチ、同モジュールで、左右方向L3から見てその全体が重なっている場合について検討する。この場合、可動刃26が切断位置P1にあるときに、複数のギア歯部132bのうち、戻しギア132の最初のギア歯部132bが、戻しピニオン131の所定の歯131tと互いに対向するように位置していると、
図20に示すように、戻しギア132の最初のギア歯部132bが、戻しピニオン131の所定の歯131tに対して、戻しピニオン131の回動方向Drの前方側に噛み合う場合と、
図21に示すように、戻しピニオン131の所定の歯131tに対して、戻しピニオン131の回動方向Drの後方側に噛み合う場合と、の双方が生じ得る。つまり、
図20に示した場合と、
図21に示した場合とでは、操作レバー28がロック解除位置P5に到達したときに、可動刃26の移動量が、異なってしまう。このように、戻しピニオン131の所定の歯131tに対してギア歯部132bが噛み合う際の戻しギア132の回転位置が異なると、噛み合った後、操作レバー28がP5まで移動する際の26の移動量が異なる。なお、戻しピニオン131の回動方向Drの前方側に噛み合う場合とは、所定の歯131tと、所定の歯131tの前方に位置する前方歯131fと、の間にギア歯部132bが進入した状態である。回動方向Drの後方側に噛み合う場合とは、所定の歯131tの頂部にギア歯部132bが接触した状態(所定の歯131tと、所定の歯131tの後方に位置する後方歯131rと、の間にギア歯部132bが進入しきらない状態)である。
【0118】
上述のようにして、駆動ラック71とは位相を異ならせた戻しラック130により、戻しピニオン131の角度が、戻しギア132の最初のギア歯部132bと、戻しピニオン131の所定の歯131tとが、安定して同じ位置関係で噛み合うように規定される。
【0119】
図22に示すように、操作レバー28が反時計方向に回転することで、押上げカム113が係合ピン95に対して接触し、係合ピン95を介してスイングプレート90に対して外力を付与する。そのため、さらなる操作レバー28の操作によって、押上げカム113でスイングプレート90を押上げることができ、第1付勢部材100の付勢力に抗して、ピニオン支持軸81を中心としてスイングプレート90を時計方向に揺動させることができる。
【0120】
これにより、スイングプレート90に取り付けられている二段中間車77を駆動中間車76から離間させることができ、二段中間車77と駆動中間車76との噛み合いを解除することができる。
従って、このときの操作レバー28の位置が噛合解除位置P4に相当する。
【0121】
また、スイングプレート90の揺動と同時に、操作レバー28の操作に伴ってサンギア133及び戻しギア132が反時計方向に回転するので、二段中間車77と駆動中間車76との噛み合いが解除されたタイミングで、戻しギア132の最初のギア歯部132bを戻しピニオン131に噛み合わせることができる。これにより、戻しピニオン131を時計方向に回転させることができる。
【0122】
そのため、
図22に示す噛合解除位置P4からロック解除位置P5側に向けて操作レバー28をさらに操作することで、
図23に示すように、戻しギア132の残りのギア歯部132bを戻しピニオン131に順次噛み合わせることができ、戻しピニオン131を継続的に時計方向に回転させることができる。
そのため、戻しピニオン131に噛み合っている戻しラック130を矢印F2方向に移動させることができ、可動刃26を切断位置P1から待機位置P2に強制的に復帰させることができる。これにより、固定刃46に対して可動刃26が重なった状態を解消することができ、紙ジャムを解除することができる。
【0123】
なお、戻しピニオン131を利用して可動刃26を待機位置P2に復帰させる際、戻しラック130と共に駆動ラック71も移動するので、駆動ピニオン78が回転する。このとき、先に述べたように、二段中間車77と駆動中間車76との噛み合いが解除されているので、駆動ピニオン78及びこれに噛み合っている二段中間車77をそれぞれ空転させることができる。そのため、駆動ピニオン78及び二段中間車77に影響されることなく、可動刃26を待機位置P2に復帰させることができる。
【0124】
なお、可動刃26が待機位置P2に復帰することで、戻しラック130の戻しラック歯130a、130bが戻しピニオン131から外れた状態となる。従って、可動刃26を待機位置P2に復帰させて紙ジャムの解除を行った段階で、戻しラック130の戻しラック歯130a、130bと戻しピニオン131との噛み合いを解除することができる。
【0125】
また、可動刃26が待機位置P2に復帰したタイミングで、操作レバー28のレバー突部112が一方のロックアーム140の係合壁部146に対して接触し、係合壁部146を介してロックアーム140に対して外力を付与する。これにより、ロックアーム140を、プラテンユニット6側からヘッドユニット5側に向かうように、揺動軸線O2を中心に揺動させることができる。そのため、ロックアーム140の揺動に伴って、ロック爪部145をプラテン軸受51から徐々に離間させることができる。
【0126】
また、
図23に示すように、操作レバー28をロック位置P3からロック解除位置P5に向けて所定角度回動させてボス突き当たり位置P6に到達した時点で、突き当たり面118fがボス203の外周面に突き当たる。操作レバー28を、さらにロック解除位置P5に向けて回動させると、アーム支持軸210の径方向外側に設けられたボス203が押圧され、離脱アーム200がアーム支持軸210周りに回動し、プラテン軸受51を収容溝62の内部から開放口62a側に向けて押圧する。
【0127】
図24に示すように、操作レバー28を、ロック解除位置P5まで回動させると、ロックアーム140がロック状態から回動してロック解除状態となり、離脱アーム200によってプラテン軸受51が収容溝62から離脱される。このとき、離脱アーム200は、案内突起63の頂点部63aよりも、開放口62a側にプラテンローラ45のローラ中心が移動するまで、プラテン軸受51を押圧する。
【0128】
このように、操作レバー28をロック解除位置P5に位置させることで、プラテンロック機構30を利用してプラテンローラ45をロック解除状態に切り換えることができ、ヘッドユニット5とプラテンユニット6とを分離させることができる。その結果、プラテンユニット6が取り付けられたプリンタカバー3を開放することができる。
【0129】
以上説明したように、本実施形態の印字ユニット4及びサーマルプリンタ1によれば、駆動機構27によって駆動ピニオン78を回転させると、駆動ピニオン78に噛み合うラック部材300とともに可動刃26が待機位置P2と切断位置P1との間で移動する。可動刃26が切断位置P1で固定刃46に乗り上げることで、記録紙Pが切断される。記録紙Pを切断した可動刃26は、切断位置P1から待機位置P2に戻る。切断位置P1で固定刃46と可動刃26との間で発生した紙ジャムによって可動刃26が切断位置P1に停止した場合、戻し機構29で戻しピニオン131を回転させることで、戻しピニオン131を回転させることによって、戻りピニオンに噛み合う戻しラック130を移動させ、ラック部材300とともに可動刃26を切断位置P1から待機位置P2側に移動させることができる。
このような構成において、駆動ラック71と戻しラック130とは別々に独立して形成されている。このため、駆動ラック71は、戻し機構29によって可動刃26を戻すときの動作を考慮することなく、駆動機構27で可動刃26を移動させるのに適した設計とすることができる。また、戻しラック130も、駆動機構27によって可動刃26を移動させるときの動作を考慮することなく、戻し機構29で可動刃26を戻すのに適した設計とすることができる。このようにして、駆動機構27と、駆動機構27と戻し機構29とで、それぞれ高い自由度で設計を行うことが可能となる。
【0130】
また、駆動ラック歯71aと戻しラック歯130aとで、位相、及びピッチの少なくとも一方を異ならせることによって、駆動機構27と戻し機構29とで動作を異ならせることができる。このため、駆動ラック歯と戻しラック歯とを、駆動ラック歯、戻しラック歯に噛み合う駆動ピニオン、戻しピニオンの径方向で位置を異ならせることなく、駆動機構と戻し機構とで動作を異ならせることが可能となる。したがって、駆動ラック歯、戻しラック歯の周辺部品のレイアウトの変更が生じにくく、設計を容易に行うことができる。
【0131】
さらに、操作レバー28をロック位置P3とロック解錠位置P5との間で回動させると、操作レバー28の回動に伴い、操作レバー28(プラネタリ軸111)に設けられたプラネタリギア134を介して戻しギア132が回動する。戻しギア132の複数のギア歯部132bを戻しピニオン131に噛み合わせることによって、戻しギア132の回動を戻しピニオン131を介して戻しラック130に伝達することができる。これにより、操作レバー28の操作によって、戻しラック130を移動させ、可動刃26を切断位置P1から待機位置P2側に移動させることができる。
【0132】
さらに、操作レバー28を回転させて、戻しギア132の周方向の一部に亘る範囲に形成された複数のギア歯部132bが戻しピニオン131に噛み合っている間のみ、戻しラック130を移動させることができる。つまり、複数のギア歯部132bが戻しピニオン131に噛み合っていないときには、戻しピニオン131が回転せず、戻しラック130も移動しない。これにより、操作レバー28の回動角度に応じて、戻しラック130を移動させるタイミングを適宜設定することができる。
【0133】
また、戻しラック130の戻しラック歯130aは、可動刃26が切断位置P1にあるときに、複数のギア歯部132bのうち、ロック位置P3からロック解除位置P5に向けた操作レバー28の操作によって操作レバー28の回動にともなって回動する戻しギア132の回動方向Drの最も前方に位置するギア歯部132bと、戻しピニオン131とが噛み合う。これにより、切断歯が切断位置P1にあるときに操作レバー28を回動させた場合に、戻しピニオン131の回動方向Drの最も前方に位置するギア歯部132bが、戻しピニオン131に噛み合うタイミングを統一することができる。したがって、操作レバー28を回動させたときの戻しラック130の移動タイミング、移動量を安定させることができ、可動刃26を切断位置P1から待機位置P2に確実に戻すことができる。
【0134】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0135】
例えば、上記実施形態では、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、ピッチ(戻しラック歯130a、複数の駆動ラック歯71aの間隔)が異なっていてもよい。また、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、位相、モジュール及びピッチの全てが異なっていてもよい。また、複数の戻しラック歯130aと、複数の駆動ラック歯71aとは、前後方向L2における位置を異ならせ、駆動ピニオン78と戻しピニオン131との外径寸法を異ならせるようにしてもよい。また、戻しラック歯130a及び駆動ラック歯71aの歯幅や歯たけ(歯底から歯先までの寸法)が異なっていてもよい。すなわち、戻しラック歯130aは、例えば駆動ラック歯71aと並列に設けられた場合に、並列方向から見て少なくとも一部が突出するような構成であればよい。
【0136】
また、上記実施形態では、ラック部材300を、ヘッドフレーム20を挟んで左右方向L3の両側に配置するようにしたが、ヘッドフレーム20を挟んで左右方向L3の一方のみに配置するようにしてもよい。
上述した実施形態では、可動刃26等がヘッドユニット5(他方のユニット)に設けられ、固定刃46がプラテンユニット6(一方のユニット)に設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。可動刃26等がプラテンユニット6(一方のユニット)に設けられ、固定刃46がヘッドユニット5(他方のユニット)に設けられていてもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、戻しラック130と駆動ラック71とを並列して設ける構成としたが、戻しラック130と駆動ラック71とは、並列させずに、適宜他の配置としてもよい。
【0138】
さらに、上記実施形態では、各部の構成を詳細に説明したが、その構成は適宜変更可能である。例えば、可動刃26とともにラック部材300を移動させるための構成は、上記実施形態で示したものに限らず、適宜他の構成に変更可能である。
【符号の説明】
【0139】
1…サーマルプリンタ
2…ケーシング(プリンタ本体)
3…プリンタカバー
4…印字ユニット
5…ヘッドユニット(他方のユニット、一方のユニット)
6…プラテンユニット(一方のユニット、他方のユニット)
16…記録紙収納部
25…サーマルヘッド
26…可動刃
27…駆動機構
28…操作レバー
29…戻し機構
45…プラテンローラ
46…固定刃
71…駆動ラック
71a…駆動ラック歯
78…駆動ピニオン
121…戻しピニオン
130…戻しラック
130a…戻しラック歯
130b…戻しラック歯
131…戻しピニオン
131t…歯
132…戻しギア
132b…ギア歯部
300…ラック部材
P…記録紙
P1…切断位置
P2…待機位置
P3…ロック位置
P5…ロック解除位置