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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147180
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】水中機器
(51)【国際特許分類】
   F04D 7/06 20060101AFI20220929BHJP
   F04D 13/08 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F04D7/06 D
F04D13/08 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048326
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 博文
(72)【発明者】
【氏名】小寺 恭平
(72)【発明者】
【氏名】大川 英次
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB23
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA24A
3H130CA06
3H130CA21
3H130CA22
3H130CA29
(57)【要約】
【課題】水中機器における防食部材の取付構造を改良する。
【解決手段】水中機器(水中ポンプ1)は、第1ケーシング(モータケーシング33、ポンプケーシング22)と、第2ケーシング(モータカバー34、オイルケーシング4)と、第1ケーシングに埋め込まれた埋込ボルト553、563と、埋込ボルトに締結されることによって、第1ケーシングと第2ケーシングとを結合させる第1ナット551,561と、埋込ボルトに締結されることによって、第1ナットとの間に防食部材5の取付用ブラケット(第1ブラケット53、第2ブラケット54)を狭持し、防食部材を第1ケーシング及び第2ケーシングに対して電気的に接続させる第2ナット552、562と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防食部材が電気的に接続されるよう取り付けられた水中機器であって、
第1ケーシングと、
前記第1ケーシングに結合されかつ、前記第1ケーシングと共に前記水中機器の一部を構成する第2ケーシングと、
前記第1ケーシングに埋め込まれた埋込ボルトと、
前記埋込ボルトに締結されることによって、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを結合させる第1ナットと、
前記埋込ボルトに締結されることによって、前記第1ナットとの間に前記防食部材の取付用ブラケットを狭持し、前記防食部材を前記第1ケーシング及び前記第2ケーシングに対して電気的に接続させる第2ナットと、を備えている、
水中機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、水中機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水中機器の一つである水中ポンプが記載されている。この水中ポンプは、ポンプ設備に設置される水中ポンプであって、例えば海水を含む水中に浸漬されて使用される場合がある。特許文献1に記載された水中ポンプには、電解液中での金属の腐食を防止するために、防食部材が取り付けられている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、棒状の防食部材を、取付用ブラケットを介して、水中ポンプの外部ハウジングに取り付ける構造が記載されている。取付用ブラケットは板状であって、外部ハウジング同士を締結固定するボルトによって共締めされている。これにより、防食部材は、取付用ブラケットを介して、外部ハウジングに電気的に接続された状態で取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-310194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている防食部材の取付構造は、ボルトの共締めを利用しているため、ボルトの緩みが発生しやすい。ボルトが緩むと、外部ハウジング同士の結合が緩んでしまうと共に、防食部材と外部ハウジングとの電気的な接続状態も確保できなくなる。防食部材と外部ハウジングとの電気的な接続状態も確保できなくなると、防食部材による防食効果が低下する。
【0006】
また、特許文献1に記載されている取付構造では、取付用ブラケットが外部ハウジングに直接、接触している。取付用ブラケットを外部ハウジングに対し、後付けで取り付ける際に、取付用ブラケットの縁が、外部ハウジングの表面の防食用塗膜を削ってしまう恐れがある。仮に防食用塗膜が削られてしまうと、水中ポンプの外部ハウジングの腐食を招く恐れがある。
【0007】
ここに開示する技術は、水中機器における防食部材の取付構造を改良する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的にここに開示する技術は、防食部材が電気的に接続されるよう取り付けられた水中機器に係る。
【0009】
この水中機器は、
第1ケーシングと、
前記第1ケーシングに結合されかつ、前記第1ケーシングと共に前記水中機器の一部を構成する第2ケーシングと、
前記第1ケーシングに埋め込まれた埋込ボルトと、
前記埋込ボルトに締結されることによって、前記第1ケーシングと前記第2ケーシングとを結合させる第1ナットと、
前記埋込ボルトに締結されることによって、前記第1ナットとの間に前記防食部材の取付用ブラケットを狭持し、前記防食部材を前記第1ケーシング及び前記第2ケーシングに対して電気的に接続させる第2ナットと、を備えている。
【0010】
この構成によると、水中機器には、防食部材が電気的に接続されている。防食部材は、水中機器の一部を構成する第1ケーシング及び第2ケーシングよりも、低電位の金属から構成すればよい。防食部材は、いわゆる犠牲陽極となって防食電流を発生するから、水中機器の、第1ケーシング及び第2ケーシングの腐食が防止される。
【0011】
第1ケーシングと第2ケーシングとは、第1ケーシングに埋め込まれた埋込ボルトと、埋込ボルトに締結された第1ナットとによって結合される。また、防食部材の取付用ブラケットは、埋込ボルトと埋込ボルトに締結された第2ナットとによって、水中機器に固定されると共に、第1ケーシング及び第2ケーシングに電気的に接続される。
【0012】
この取付構造は、従来の取付構造とは異なり、取付用ブラケットを、ケーシング結合用のボルトによって共締めしない。このため、従来の取付構造のような締結部材の緩み(本取付構造においてはナットの緩み)が発生しにくい。第1ケーシングと第2ケーシングとの結合状態は、安定的に維持される。
【0013】
また、取付用ブラケットは、埋込ボルトに締結された第1ナットと第2ナットとに狭持されるため、防食部材と、第1ケーシング及び第2ケーシングとの電気的な接続状態も安定的に維持される。
【0014】
そして、前記の取付構造では、取付用ブラケットと、第1ケーシング及び第2ケーシングとの間に第1ナットが介在するから、取付用ブラケットは、第1ケーシング及び第2ケーシングの表面とは、直接に接触しない。その結果、取付用ブラケットを水中機器に取り付ける際に、取付用ブラケットの縁が、第1ケーシング及び/又は第2ケーシングの表面の防食用塗膜を削ってしまうことが回避される。
【0015】
従って、前記の取付構造は、ケーシング同士を結合させるための第1ナットと、防食部材の取付用ブラケットを固定させるための第2ナットとの二つの締結部材を備えていることにより、第1ケーシングと第2ケーシングとの結合状態、及び、防食部材の取付用ブラケットと、第1ケーシング及び第2ケーシングとの電気的な接続状態をそれぞれ安定的に維持しつつ、取付用ブラケットが、第1ハウジング及び/又は第2ハウジング表面の防食用塗膜を削ってしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、前述の取付構造は、従来の防食部材の取付構造における不具合を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に係る水中機器である水中ポンプを例示する断面図である。
図2図2は、水中ポンプに対する防食部材の取付構造を比較する図であり、(a)は従来構成、(b)は改良構成である。
図3図3は、実施形態2に係る水中機器である水中ばっ気撹拌装置を例示する図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は防食部材の取付構造の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、水中機器の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する水中機器は例示である。
【0019】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る水中機器を例示している。この水中機器は、水中ポンプ1である。水中ポンプ1は、ポンプ設備に設置される。この水中ポンプ1は、例えば海水を含む水(つまり、電解液)の中に浸漬される。水中ポンプ1には、腐食を防止するための防食部材5が取り付けられている。防食部材5は、電気防食により水中ポンプ1のハウジング10の腐食を防止する。
【0020】
(水中ポンプの全体構成)
水中ポンプ1は、羽根車21を有するポンプ部20と、電気モータ31を有するモータ部30とを備えている。ポンプ部20とモータ部30とは、ポンプ部20が下側にモータ部30が上側になるように上下方向に並んで配置されている。
【0021】
モータ部30は、電気モータ31を収容するモータケーシング33を備えている。モータケーシング33は、その上端及び下端が開口した概略円筒状を有している。電気モータ31のシャフト32は、上下方向に延びている。シャフト32は、モータケーシング33の下端から下方に突出している。
【0022】
モータケーシング33の上端開口は、モータカバー34によって閉塞されている。モータケーシング33とモータカバー34とは、モータカバー34のフランジ341において、周方向に間隔を空けて設けられた複数の締結部材55によって、結合されている。尚、モータケーシング33とモータカバー34との結合構造の詳細は、後述する。
【0023】
モータカバー34は、有底筒状であり、モータカバー34の上端開口には、ヘッドカバー36が取り付けられている。ヘッドカバー36は、ボルトによってモータカバー34に固定されている。モータカバー34とヘッドカバー36とによって形成される空間内には、基板35が配設されている。また、ヘッドカバー36には、電気モータ31に給電等を行うためのケーブル類361が貫通配置されている。
【0024】
モータ部30はまた、アウターケーシング37を備えている。アウターケーシング37は、モータケーシング33の外周囲を囲むように配置されている。アウターケーシング37は、両端開口の概略円筒状であり、その上端部がモータカバー34に固定されている。アウターケーシング37の下端部は、後述するオイルケーシング4に固定されている。モータケーシング33の外周面と、アウターケーシング37の内周面とによって、円周状の冷却流路371が形成されている。冷却流路371は、電気モータ31を囲んでいる。冷却流路371は、ポンプ部20の渦形室23に連通している。水中ポンプ1が吸い込んだ水の一部は、冷却流路371を流れる。冷却流路371を流れる水は、電気モータ31を冷却する。
【0025】
羽根車21は、シャフト32の下端に取り付けられている。羽根車21は、水中に浸漬される。羽根車21は、遠心羽根車であり、その下端部に吸込口211が設けられている。電気モータ31の動力によって回転する羽根車21は、吸込口211から吸い込んだ水を、径方向の外方へ吐き出す。
【0026】
ポンプ部20は、羽根車21を収容するポンプケーシング22を備えている。ポンプケーシング22は、その内部に羽根車21を収容する渦形室23を有している。ポンプケーシング22の底部には開口24が設けられている。羽根車21の吸込口211は、開口24に位置している。
【0027】
渦形室23は、ポンプケーシング22の側方に突出する接続部25に連通している。接続部25は、図示省略の排出管に連結される。尚、接続部25には、ガイド26が取り付けられている。ガイド26は、ポンプ設備において、水中ポンプ1を支柱に沿って昇降させるために用いられる。また、ガイド26には、係止部261が設けられている。係止部261は、接続部25を、排出管に対して連結した状態に係止させる。
【0028】
モータケーシング33とポンプケーシング22との間には、オイルケーシング4が介設している。シャフト32は、オイルケーシング4を上下方向に貫通している。
【0029】
シャフト32にはメカニカルシール41が取り付けられている。メカニカルシール41は、シャフト32を軸封する。メカニカルシール41は、オイルケーシング4によって形成される油室40内に配設されている。油室40内には、油が充填されている。油はメカニカルシール41の潤滑液及び冷却液として機能する。メカニカルシール41は、ポンプケーシング22側から油室40へ水が浸入することを防止すると共に、油室40からポンプケーシング22側へ油が漏れることを防止する。メカニカルシール41はまた、油室40からモータケーシング33へ油や水が漏れることを防止する。
【0030】
オイルケーシング4の上端は、モータケーシング33の下端に、ボルトによって結合されている。オイルケーシング4の下端は、ポンプケーシング22の上端に結合されている。オイルケーシング4とポンプケーシング22とは、オイルケーシング4のフランジ43において、周方向に間隔を空けて設けられた複数の締結部材56によって、結合されている。尚、オイルケーシング4とポンプケーシング22との結合構造の詳細は、後述する。
【0031】
前述した水中ポンプ1において、ヘッドカバー36、モータカバー34、モータケーシング33、アウターケーシング37、オイルケーシング4、ポンプケーシング22はそれぞれ、金属製であり、より詳細には、鋳鉄(例えば、FC200、FC250等)製の鋳物からなる。ヘッドカバー36、モータカバー34、モータケーシング33、アウターケーシング37、オイルケーシング4、ポンプケーシング22は、互いに結合されていることによって、電気的にも接続された状態である。また、これらヘッドカバー36、モータカバー34、モータケーシング33、アウターケーシング37、オイルケーシング4、ポンプケーシング22の表面には、防食用の塗膜が設けられている。水中ポンプ1のハウジング10は、ヘッドカバー36、モータカバー34、モータケーシング33、アウターケーシング37、オイルケーシング4、ポンプケーシング22の総称である。
【0032】
(防食部材の構成及びその取付構造)
防食部材5は、モータカバー34とモータケーシング33とを結合する締結部材55、及び、オイルケーシング4とポンプケーシング22とを結合する締結部材56に対応して、一つ、又は、複数、水中ポンプ1に取り付けられている。防食部材5は、水中ポンプ1に対して電気的に接続状態となることで犠牲陽極となり、水中ポンプ1のハウジング10の腐食を防止する。尚、防食部材5は、組み立てられた水中ポンプ1に対して、後付けで取り付けられる。
【0033】
防食部材5は、図2に拡大して示すように、本体部51と、支持部52と、第1ブラケット53と、第2ブラケット54とを備えている。本体部51は、水中ポンプ1のヘッドカバー36、モータカバー34、モータケーシング33、アウターケーシング37、オイルケーシング4、ポンプケーシング22よりもイオン化傾向の大きい低電位の金属(アルミニウム、亜鉛等)からなる。ここに開示する構成例において、本体部51は、アルミニウム製である。本体部51は、上下方向に伸びる細長い円筒状である。
【0034】
支持部52は、円筒状の本体部51に内挿された状態で、本体部51に固定されている。支持部52は、導電性部材である鋼材(例えば、SS400)等からなり、支持部52と本体部51とは、電気的に接続されている。支持部52は、本体部51の上端から上方に突出すると共に、本体部51の下端から下方に突出している。支持部52における、少なくとも上端部及び下端部にはネジ山が形成されている。
【0035】
第1ブラケット53は、支持部52の上端部を、モータカバー34に固定する。第1ブラケット53は、取付用ブラケットの一例である。第1ブラケット53は、厚みの薄い板状であり、モータカバー34のフランジ341から外方に向かって伸びている。第1ブラケット53は、導電性部材であるステンレス鋼(例えば、SUS304)等からなる。
【0036】
第1ブラケット53の先端部には厚み方向に貫通する取付孔、又は、第1ブラケット53の先端縁から内方へ切欠状に形成された取付溝が設けられている。支持部52の上端部は、この取付孔又は取付溝内に配設されており、支持部52の上端部に螺合する一対のナット521が、第1ブラケット53を上下に挟むことにより、支持部52の上端部が第1ブラケット53の先端部に支持されると共に、支持部52と第1ブラケット53とが、電気的に接続される。尚、第1ブラケット53と支持部52との固定は、ナット521以外の手段を用いることもできる。
【0037】
第2ブラケット54は、支持部52の下端部を、オイルケーシング4に固定する。第2ブラケット54は、取付用ブラケットの一例である。第2ブラケット54も、厚みの薄い板状であり、オイルケーシング4のフランジ43から外方に向かって伸びている。図例の第2ブラケット54は、中間位置でクランク状に屈曲しているが、第2ブラケット54の形状は、図例の形状に限定されない。
【0038】
第2ブラケット54の先端部にも、第1ブラケット53と同様に、取付孔、又は、取付溝が設けられている。支持部52の下端部は、この取付孔又は取付溝内に配設されており、支持部52の下端部に螺合する一対のナット522が、第2ブラケット54を上下に挟むことにより、支持部52の下端部が第2ブラケット54の先端部に支持される。尚、第2ブラケット54と支持部52との固定も、ナット522以外の手段を用いることができる。
【0039】
ここで、図2の(a)は、防食部材5の従来の取付構造を例示している。従来の取付構造において、モータカバー34とモータケーシング33とは、締結部材55としての六角ボルト591により結合されている。つまり、モータケーシング33の上端部には、上向きに開口するボルト孔が形成されており、モータカバー34のフランジ341に形成された貫通孔を貫通する六角ボルト591が、ボルト孔に螺合することによって、モータカバー34とモータケーシング33とは互いに結合している。第1ブラケット53の基端部には、先端部と同様に、取付孔又は取付溝が形成されている。第1ブラケット53の基端部は、モータカバー34のフランジ341の上面に直接置かれて、六角ボルト591の共締めにより、モータカバー34に固定されていると共に、第1ブラケット53は、モータカバー34に対して電気的に接続されている。
【0040】
オイルケーシング4とポンプケーシング22とは、締結部材56としての埋込ボルト592とナット593とにより結合されている。つまり、ポンプケーシング22の上端部には、埋込ボルト592が取り付けられており、埋込ボルト592は、オイルケーシング4のフランジ43に設けられた貫通孔を貫通して、フランジ43から上方に突出している。ナット593が、埋込ボルト592に螺合することによって、オイルケーシング4とポンプケーシング22とは互いに結合している。第2ブラケット54の基端部には、先端部と同様に、取付孔又は取付溝が形成されている。第2ブラケット54の基端部は、オイルケーシング4のフランジ43の上面に直接置かれて、ナット593の共締めにより、オイルケーシング4に固定されていると共に、第2ブラケット54は、オイルケーシング4に対して電気的に接続されている。
【0041】
図2(b)は、改良された、新しい取付構造を示している。新しい取付構造において、モータカバー34とモータケーシング33とは、埋込ボルト553と第1ナット551とにより結合されている。つまり、埋込ボルト553は、モータケーシング33の上端部に、上向きに突出するように取り付けられている。埋込ボルト553は、モータカバー34のフランジ341に形成された貫通孔を貫通して、モータカバー34のフランジ341の上面から上方に突出している。後述するように、埋込ボルト553には、第1ナット551と第2ナット552との二つのナットが螺合される。埋込ボルト553は、モータカバー34のフランジ341の上面から上方に、十分な長さが確保できるように突出している。
【0042】
第1ナット551が埋込ボルト553に螺合することによって、モータカバー34とモータケーシング33とは互いに結合している。新しい取付構造において、第1ナット551とモータカバー34のフランジ341の上面との間に、第1ブラケット53は介在しない。第1ナット551は、モータカバー34とモータケーシング33とを結合させるためのナットである。
【0043】
新しい取付構造には、第2ナット552も用いる。第2ナット552も、埋込ボルト553に螺合される。第1ブラケット53の基端部の取付孔又は取付溝内に、埋込ボルト553が配設されると共に、第1ブラケット53は、第1ナット551の上に置かれる。第1ブラケット53が、第1ナット551と第2ナット552とに狭持されることによって、第1ブラケット53の基端部は、モータカバー34に固定されると共に、第1ブラケット53は、モータカバー34に対して電気的に接続される。第2ナット552は、第1ブラケット53をモータカバー34に固定するためのナットである。
【0044】
また、新しい取付構造において、オイルケーシング4とポンプケーシング22とは、埋込ボルト563と第1ナット561とにより結合されている。つまり、埋込ボルト563は、ポンプケーシング22の上端部に、上向きに突出するように取り付けられている。埋込ボルト563は、オイルケーシング4のフランジ43に形成された貫通孔を貫通して、フランジ43の上面から上方に突出している。この埋込ボルト563にも、第1ナット561と第2ナット562との二つのナットが螺合される。埋込ボルト563は、オイルケーシング4のフランジ43の上面から上方に、十分な長さが確保できるように突出している。
【0045】
第1ナット561が埋込ボルト563に螺合することによって、オイルケーシング4とポンプケーシング22とは互いに結合している。新しい取付構造において、第1ナット561とオイルケーシング4のフランジ43の上面との間に、第2ブラケット54は介在しない。
【0046】
第2ナット562も、埋込ボルト563に螺合される。第2ブラケット54の基端部の取付孔又は取付溝内に埋込ボルト563が配設されると共に、第2ブラケット54は、第1ナット561の上に置かれる。第2ブラケット54が、第1ナット561と第2ナット562とに狭持されることによって、第2ブラケット54の基端部は、オイルケーシング4に固定されると共に、第2ブラケット54は、オイルケーシング4に対して電気的に接続される。
【0047】
新しい取付構造では、第1ブラケット53及び第2ブラケット54がそれぞれ、共締めによってハウジング10に固定されていない。第1ナット551、561の緩みが発生しにくいため、モータカバー34とモータケーシング33、及び、オイルケーシング4とポンプケーシング22との結合状態が安定的に維持される。
【0048】
また、第1ブラケット53及び第2ブラケット54はそれぞれ、第1ナット551、561と、第2ナット552、562とに狭持されているため、第1ブラケット53及び第2ブラケット54はそれぞれ、モータカバー34又はオイルケーシング4に対する電気的な接続状態も、安定的に維持される。
【0049】
また、第1ブラケット53とモータカバー34との間、及び、第2ブラケット54とオイルケーシング4との間に、第1ナット551、561が介在しているため、第1ブラケット53及び第2ブラケット54はそれぞれ、モータカバー34及びオイルケーシング4の表面とは接触しない。その結果、第1ブラケット53又は第2ブラケット54を水中ポンプ1のハウジング10に取り付ける際に、第1ブラケット53又は第2ブラケット54の縁が、モータカバー34及び/又はオイルケーシング4の表面の防食用塗膜を削ってしまうことが回避される。
【0050】
従って、水中ポンプ1のハウジング10の防食効果が、長期間に亘って、安定的に維持される。
【0051】
尚、図1に示す水中ポンプ1の構造は一例であり、ここに開示する技術は、様々な形式及び構造の水中ポンプに、広く適用することができる。
【0052】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る水中機器を例示している。この水中機器は、水中ばっ気撹拌装置6である。水中ばっ気撹拌装置6は、例えば排水処理施設の水槽中に設置され、水槽内の水を吸い込んで水を水槽内に吐出する、又は、水槽内の水を吸い込むと共に、吸い込んだ水を、別途供給される空気と共に水槽内に吐出するよう構成されている。
【0053】
水中ばっ気撹拌装置6は、吸込ケーシング61と、吐出ケーシング62と、水中モータ63とを備えている。
【0054】
吸込ケーシング61は、吸込口611を有している。吸込口611は、上向きに開口している。吸込ケーシング61には、羽根車が配設されている。羽根車は、その回転軸が上下方向に伸びるように、吸込ケーシング61内に配置されている。
【0055】
水中モータ63は、吸込ケーシング61の上方に配設されている。水中モータ63は、吸込ケーシング61に取り付けられたブラケット631に支持されている。水中モータ63は、羽根車に連結されていて、羽根車を回転させる。
【0056】
吐出ケーシング62は、吸込ケーシング61の下側に配設されている。吐出ケーシング62は、複数の吐出口621を有している。複数の吐出口621は、周方向に間隔を空けて配設されていると共に、それぞれ径方向の外方に向かって開口している。各吐出口621は、水、又は、水及び空気を、放射状に吐出する。
【0057】
吸込ケーシング61及び吐出ケーシング62は、例えば鋳鉄(FC200、FC250等)製の鋳物からなる。吸込ケーシング61及び吐出ケーシング62の表面には、防食用の塗膜が設けられている。
【0058】
吸込ケーシング61と吐出ケーシング62とは、締結部材7によって結合されている。より詳細に、吸込ケーシング61の下端、及び、吐出ケーシング62の上端にはそれぞれフランジ612、622が形成されている。締結部材7は、フランジ612、622において、周方向に間隔を空けて複数、設けられている。締結部材7は、図3(c)に拡大して示すように、埋込ボルト73、第1ナット71、及び、第2ナット72を有している。
【0059】
埋込ボルト73は、吐出ケーシング62のフランジ622に取り付けられている。埋込ボルト73は、吸込ケーシング61のフランジ612に形成された貫通孔を貫通して、フランジ612の上面から上方に向かって突出している。
【0060】
第1ナット71は、埋込ボルト73に螺合している。第1ナット71が、埋込ボルト73に螺合することによって、吸込ケーシング61と吐出ケーシング62とは互いに結合している。吸込ケーシング61と吐出ケーシング62とはまた、電気的な接続状態である。
【0061】
第2ナット72も、埋込ボルト73に螺合される。第1ナット71と第2ナット72との間には、防食部材8のブラケット81が介在している。防食部材8は、図3(a)に示すように、複数の締結部材7のそれぞれに対して、取り付けられている。尚、防食部材8は、一部の締結部材7に対してのみ、取り付けられてもよい。
【0062】
ブラケット81は、導電性部材であるステンレス鋼(例えば、SUS304)等からなる。ブラケット81は、厚みの薄い板状であり、その基端部には、前述したような取付孔又は取付溝が形成されている。ブラケット81の取付孔又は取付溝内に埋込ボルト73が配設された状態で、ブラケット81が第1ナット71と第2ナット72とに狭持されることによって、ブラケット81の基端部は、吸込ケーシング61に固定されると共に、ブラケット81は、吸込ケーシング61に対して電気的に接続される。
【0063】
ブラケット81は、中間位置で斜め下方に折れ曲がっている。ブラケット81の先端部には、吸込ケーシング61及び吐出ケーシング62よりも低電位の金属(例えばアルミニウム等)からなる犠牲陽極部82が取り付けられている。犠牲陽極部82とブラケット81とは、電気的に接続されている。
【0064】
この取付構造においても、ブラケット81は共締めされていない。ナットの緩みが発生しにくいため、吸込ケーシング61と吐出ケーシング62との結合状態が安定的に維持される。
【0065】
また、ブラケット81は、第1ナット71と第2ナット72とに狭持されているため、ブラケット81は、吸込ケーシング61に対する電気的な接続状態も、安定的に維持される。
【0066】
また、ブラケット81と吸込ケーシング61との間に、第1ナット71が介在しているため、ブラケット81が吸込ケーシング61の表面とは接触しない。その結果、ブラケット81の縁が、吸込ケーシング61の表面の防食用塗膜を削ってしまうことが回避される。
【0067】
尚、図3に示す水中ばっ気撹拌装置6の構造は例示であり、ここに開示する技術は、様々な形式、構造の水中ばっ気撹拌装置に、広く適用することができる。
【0068】
(他の実施形態)
尚、ここに開示する技術が適用可能な水中機器は、前述した水中ポンプ1、又は、水中ばっ気撹拌装置6に限らない。ここに開示する技術は、様々な水中機器に対して適用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 水中ポンプ(水中機器)
22 ポンプケーシング
33 モータケーシング
34 モータカバー
4 オイルケーシング
5 防食部材
53 第1ブラケット(取付用ブラケット)
54 第2ブラケット(取付用ブラケット)
551 第1ナット
552 第2ナット
553 埋込ボルト
561 第1ナット
562 第2ナット
563 埋込ボルト
6 水中ばっ気撹拌装置(水中機器)
61 吸込ケーシング
62 吐出ケーシング
71 第1ナット
72 第2ナット
73 埋込ボルト
8 防食部材
81 ブラケット(取付用ブラケット)
図1
図2
図3