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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147189
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ダンプトラック
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/04 20060101AFI20220929BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20220929BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60P1/04 B
F15B11/02 F
F15B15/14 380Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048336
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 幹洋
(72)【発明者】
【氏名】福西 政樹
【テーマコード(参考)】
3H081
3H089
【Fターム(参考)】
3H081AA01
3H081BB02
3H081CC23
3H081DD33
3H081DD37
3H081HH08
3H089AA25
3H089BB27
3H089CC01
3H089CC11
3H089DA02
3H089DB03
3H089DB33
3H089DB45
3H089DB49
3H089GG02
3H089JJ07
(57)【要約】
【課題】組み立て工数を低減することができるダンプトラックを提供する。
【解決手段】ダンプトラック1は、車体2に対して傾動可能に設けられた荷箱3と、荷箱3を傾動させるダンプシリンダ23と、車体2に対して回動可能に設けられ荷箱3側に係合可能なフック8と、フック8を回動させるロックシリンダ9と、ロックシリンダ9の作動油室14に接続されたメイン油路36と、ロックシリンダ9の伸長作動が終了したときにロックシリンダ9の作動油室14とダンプシリンダ23の作動油室23aとを連通する連通油路38と、連通油路38から分岐してメイン油路36に接続された分岐油路39と、分岐油路39において連通油路38側からメイン油路36側への作動油の流れを許容し、メイン油路36側から連通油路38側への作動油の流れを規制するチェック弁41と、を備える。チェック弁41は、ロックシリンダ9と一体に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して傾動可能に設けられた荷箱と、
作動油が給排される第1油室を有し、前記荷箱を傾動させるダンプシリンダと、
前記車体に対して回動可能に設けられ、前記荷箱側に係合可能なフックと、
作動油が給排される第2油室を有し、前記フックを回動させるロックシリンダと、
前記第2油室に接続されたメイン油路と、
前記ロックシリンダの伸長作動又は収縮作動が終了したときに前記第1油室と前記第2油室とを連通する連通油路と、
前記連通油路から分岐し、前記第1油室から前記連通油路に排出された作動油の一部を前記メイン油路へ戻すための分岐油路と、
前記分岐油路において、前記連通油路側から前記メイン油路側への作動油の流れを許容し、前記メイン油路側から前記連通油路側への作動油の流れを規制するチェック弁と、を備え、
前記チェック弁は、前記ロックシリンダと一体に設けられている、ダンプトラック。
【請求項2】
前記ロックシリンダは、内部に前記第2油室が形成される筒状のシリンダ本体を有し、
前記シリンダ本体の壁部には、
前記メイン油路の一部を構成する第1油孔と、
前記連通油路の一部を構成する第2油孔と、
前記第2油孔の途中部から分岐して前記第1油孔の途中部に接続され、前記分岐油路を構成する第3油孔と、が形成されており、
前記チェック弁は、前記第3油孔に設けられている、請求項1に記載のダンプトラック。
【請求項3】
前記ロックシリンダは、筒状のシリンダ本体と、前記シリンダ本体の内部において軸方向に往復移動可能に設けられたピストンと、を有し、
前記シリンダ本体の内部には、前記ピストンよりも軸方向一方側に前記第2油室が形成され、前記ピストンを前記軸方向一方側に付勢するスプリングが設けられている、請求項1又は請求項2に記載のダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されたダンプトラックは、車体に対して傾動可能に設けられた荷箱と、荷箱を傾動させるダンプシリンダと、走行中に荷箱が浮き上がるのを防止する浮き上がり防止装置とが設けられている。この浮き上がり防止装置は、車体側に回動可能に設けられ荷箱側に係合可能な係合部材と、その係合部材を回動させるロックシリンダとを備えている。ダンプトラックの走行中は、ロックシリンダがばね力により伸長した状態で保持されることで、係合部材は荷箱側に係合した状態で保持されるので、車体に対して荷箱が浮き上がるのを防止することができる。荷箱を傾動させる際には、ロックシリンダに作動油を供給してロックシリンダをばね力に抗して収縮させると、係合部材が荷箱側との係合が解除される方向へ回動することで、ダンプシリンダによる荷箱の傾動が可能となる。
【0003】
特許文献1のダンプトラックでは、ロックシリンダを収縮させて係合部材と荷箱側との係合を解除した後に、ダンプシリンダを伸長させて荷箱を傾動させる必要がある。このため、ダンプトラックの油圧回路には、油圧ポンプから吐出される作動油をロックシリンダに供給するメイン油路(管路16)と、メイン油路から供給された作動油によりロックシリンダの収縮が終了したときに、ロックシリンダとダンプシリンダとが連通する連通油路(連通管路18)が設けられている。これにより、ロックシリンダの収縮が終了すると、ロックシリンダから連通油路を通過してダンプシリンダに作動油が供給されることで、ダンプシリンダを伸長させることができる。
【0004】
また、特許文献1のダンプトラックでは、ロックシリンダが収縮した状態(係合部材と荷箱側との係合が解除された状態)を保持しながら、ダンプシリンダを収縮させて荷箱を倒伏させる必要がある。このため、ダンプトラックの油圧回路には、ダンプシリンダから排出された作動油の一部を連通油路を介してロックシリンダに供給しながら、前記排出された作動油の残りを連通油路の途中から分岐してメイン油路へ戻すための分岐油路(管路21)が設けられている。これにより、ロックシリンダを収縮した状態で保持させながら、ダンプシリンダを収縮させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭46-1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記油圧回路における分岐油路の途中には、メイン油路側から連通油路側への作動油の流れを規制するチェック弁が設けられている。これにより、ロックシリンダの収縮途中(係合部材と荷箱側との係合を解除している途中)に、ダンプシリンダが伸長して荷箱が傾動するのを防止することができる。しかし、油圧回路にチェック弁を別途取り付ける必要があるので、ダンプトラックの組み立て工数が増加するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、組み立て工数を低減することができるダンプトラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のダンプトラックは、車体に対して傾動可能に設けられた荷箱と、作動油が給排される第1油室を有し、前記荷箱を傾動させるダンプシリンダと、前記車体に対して回動可能に設けられ、前記荷箱側に係合可能なフックと、作動油が給排される第2油室を有し、前記フックを回動させるロックシリンダと、前記第2油室に接続されたメイン油路と、前記ロックシリンダの伸長作動又は収縮作動が終了したときに前記第1油室と前記第2油室とを連通する連通油路と、前記連通油路から分岐し、前記第1油室から前記連通油路に排出された作動油の一部を前記メイン油路へ戻すための分岐油路と、前記分岐油路において、前記連通油路側から前記メイン油路側への作動油の流れを許容し、前記メイン油路側から前記連通油路側への作動油の流れを規制するチェック弁と、を備え、前記チェック弁は、前記ロックシリンダと一体に設けられている。
【0009】
本発明によれば、連通油路から分岐している分岐油路においてメイン油路側から連通油路側への作動油の流れを規制するチェック弁が、ロックシリンダと一体に設けられているので、チェック弁と一体化されたロックシリンダを油圧回路に取り付けることで、チェック弁を別途取り付ける作業が不要になる。これにより、ダンプトラックの組み立て工数を低減することができる。
【0010】
(2)前記ロックシリンダは、内部に前記第2油室が形成される筒状のシリンダ本体を有し、前記シリンダ本体の壁部には、前記メイン油路の一部を構成する第1油孔と、前記連通油路の一部を構成する第2油孔と、前記第2油孔の途中部から分岐して前記第1油孔の途中部に接続され、前記分岐油路を構成する第3油孔と、が形成されており、前記チェック弁は、前記第3油孔に設けられているのが好ましい。
この場合、ロックシリンダにおけるシリンダ本体の壁部に分岐油路が一体に形成されるので、ロックシリンダを油圧回路に取り付けることで、油圧回路に分岐油路を別途設ける作業も不要になる。これにより、ダンプトラックの組み立て工数をさらに低減することができる。
【0011】
(3)前記ロックシリンダは、筒状のシリンダ本体と、前記シリンダ本体の内部において軸方向に往復移動可能に設けられたピストンと、を有し、前記シリンダ本体の内部には、前記ピストンよりも軸方向一方側に前記第2油室が形成され、前記ピストンを前記軸方向一方側に付勢するスプリングが設けられているのが好ましい。
【0012】
この場合、スプリングの付勢力によりピストンが軸方向一方側に移動するようにロックシリンダを作動させたときにフックを荷箱側に係合させるようにすれば、ロックシリンダに内蔵されたスプリングの付勢力により間接的にフックを荷箱側に係合させることができる。これにより、ロックシリンダを油圧回路に取り付けることで、フックを荷箱側に係合させるためのスプリングをフックに別途取り付ける作業が不要になるので、ダンプトラックの組み立て工数をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダンプトラックの組み立て工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るダンプトラックの後側を示す側面図である。
図2】ダンプトラックの機能を説明するための側面図である。
図3】ダンプトラックの油圧回路図である。
図4】ロックシリンダの内部構成を示す概略断面図である。
図5】荷箱の傾動時における作動油の流れを説明する油圧回路図である。
図6】ロックシリンダの伸長作動が終了した状態を示す油圧回路図である。
図7】ダンプシリンダの伸長作動が終了した状態を示す油圧回路図である。
図8】荷箱の倒伏時における作動油の流れを説明する油圧回路図である。
図9】ダンプシリンダの収縮作動が終了した状態を示す油圧回路図である。
図10】ロックシリンダの収縮作動が終了した状態を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係るダンプトラックの後側を示す側面図である。図2は、ダンプトラック1の機能を説明するための側面図である。以下、本明細書において、前後方向、上下方向、及び左右方向は、それぞれダンプトラックの前後方向、上下方向、及び左右方向をいう。図1及び図2において、ダンプトラック1は、車体2、荷箱3、ダンプ装置5、及び浮き上がり防止装置6を備えている。
【0016】
車体2は、シャシフレーム2aと、シャシフレーム2a上に固定されたサブフレーム2bと、を有している。荷箱3は、車体2上に搭載され、車体2に対して傾動可能に設けられている。具体的には、荷箱3は、サブフレーム2bの後端部においてヒンジ軸4を介して傾動可能に設けられている。
【0017】
ダンプ装置5は、サブフレーム2bと荷箱3との間に配置されている。ダンプ装置5は、三角形状のリフトアーム21と、棒状のテンションリンク22と、ダンプシリンダ23と、を備えている。リフトアーム21の一の頂部は、連結軸24を介してサブフレーム2bに回動可能に取り付けられている。リフトアーム21の他の一の頂部には、テンションリンク22の一端部が連結軸25を介して回動可能に取り付けられている。テンションリンク22の他端部は、連結軸26を介して荷箱3の底部に回動可能に取り付けられている。
【0018】
リフトアーム21の残りの頂部には、ダンプシリンダ23の一端部が連結軸27を介して回動可能に取り付けられている。ダンプシリンダ23の他端部は、連結軸28を介して荷箱3の底部に回動可能に取り付けられている。ダンプシリンダ23は、荷箱3を傾動及び倒伏させる油圧シリンダであり、その伸縮作動時に作動油が給排される作動油室(第1油室)23aを有している(図3参照)。
【0019】
図1に示す状態からダンプシリンダ23の作動油室23aに作動油を供給すると、ダンプシリンダ23は伸長作動する。ダンプシリンダ23が伸長作動すると、図2に示すようにリフトアーム21が連結軸24を中心として上方回動することで、荷箱3は車体2に対して前上がりに傾動したダンプ状態となる。図2に示すダンプ状態から、ダンプシリンダ23の作動油室23aから作動油を排出してダンプシリンダ23を収縮作動させると、リフトアーム21が連結軸24を中心として下方回動することで、図1に示すように荷箱3は、車体2上に倒伏した着床状態となる。
【0020】
浮き上がり防止装置6は、ダンプ装置5よりも前方においてサブフレーム2bと荷箱3との間に配置されており、ダンプトラック1の走行中に荷箱3が振動等によって車体2に対して浮き上がるのを防止する。浮き上がり防止装置6は、荷箱3側に設けられたロックピン7と、車体2に対して回動可能に設けられロックピン7に係合可能なフック8と、フック8を回動させるロックシリンダ9と、を備えている。
【0021】
ロックピン7は、荷箱3の底部に固定されている。フック8の基端部は、ヒンジ軸10を介してサブフレーム2bに回動可能に取り付けられている。フック8の先端部は、ロックピン7と係合する係合位置(図1)と、ロックピン7との係合が解除される解除位置(図2)との間で回動するようになっている。
【0022】
ロックシリンダ9は、フック8を係合位置と解除位置との間で回動させる油圧シリンダである。ロックシリンダ9は、筒状のシリンダ本体11と、シリンダ本体11の内部において軸方向に往復移動可能に設けられたピストン12(図3参照)と、ピストン12に一端が固定されたロッド13と、を有している。ロッド13の他端は、シリンダ本体11の端壁を貫通し、フック8に接続されている。
【0023】
シリンダ本体11は、サブフレーム2bに取り付けられている。シリンダ本体11の内部においてピストン12のロッド13側と反対側(軸方向一方側)には、作動油が給排される作動油室(第2油室)14(図3参照)が形成されている。図1に示す状態から、シリンダ本体11の作動油室14に作動油が供給されると、ロックシリンダ9は伸長作動する。これにより、図2に示すように、フック8は解除位置まで回動する。
【0024】
図2に示す状態からシリンダ本体11の作動油室14から作動油が排出されると、ロックシリンダ9は、後述するスプリング18の付勢力によって収縮作動する。これにより、図1に示すように、フック8は係合位置まで回動する。フック8は、スプリング18の付勢力により係合位置に保持されるので、荷箱3は、浮き上がり防止装置6によって着床状態に保持される。
【0025】
[油圧回路の構成]
図3は、ダンプトラック1の油圧回路図である。この油圧回路は、主として、油タンク31、油圧ポンプ32、吐出油路33、戻り油路34、切換弁35、メイン油路36、バイパス油路37、連通油路38、及び分岐油路39を備えている。以下の説明において、油圧ポンプ32に近い側を「上流側」といい、油圧ポンプ32から遠い側を「下流側」という。また、各油路33,34,36~39において、油圧ポンプ32に近い側の路端を「上流端」といい、油圧ポンプ32から遠い側の路端を「下流端」という。
【0026】
油圧ポンプ32は、油タンク31内の作動油を吸引して吐出する。吐出油路33は、油圧ポンプ32に接続されており、油圧ポンプ32から吐出された作動油は吐出油路33に流れる。戻り油路34は、油タンク31に接続されており、作動油を油タンク31に戻す油路である。
【0027】
切換弁35は、例えば3ポート三位置の切換弁であり、各ポートに、吐出油路33の下流端、戻り油路34の下流端、及びメイン油路36の上流端が接続されている。切換弁35は、作業者がスイッチ操作したときに切り換わるようになっている。切換弁35が中立位置(図3の中央の位置)にあるときは、吐出油路33は戻り油路34と連通し、メイン油路36は吐出油路33及び戻り油路34のいずれとも連通していない。切換弁35が中立位置から第1位置(図3の左側の位置)に切り換わると、各油路33~35は、他のいずれの油路とも連通しない状態となる。切換弁35が中立位置から第2位置(図3の右側の位置)に切り換わると、各油路33~35は、他の油路とそれぞれ連通した状態となる。
【0028】
バイパス油路37は、吐出油路33の途中から分岐し、メイン油路36の第1途中部36cに接続されている。バイパス油路37には、チェック弁40が設けられている。チェック弁40は、バイパス油路37の上流側から下流側への作動油の流れを許容し、バイパス油路37の下流側から上流側への作動油の流れを規制している。
【0029】
メイン油路36の下流端36bは、ロックシリンダ9のシリンダ本体11の基端側(ピストン12の軸方向一方側)において、シリンダ本体11の内部と連通するように接続されている。メイン油路36の下流端36bは、ロックシリンダ9の収縮作動が終了した状態(図3に示す状態)でピストン12よりも基端側に位置している。これにより、メイン油路36の下流端36bは、ロックシリンダ9の伸縮状態に関わらず常に作動油室14と連通している。
【0030】
連通油路38の下流端38bは、ダンプシリンダ23の作動油室23aと常に連通するようにダンプシリンダ23に接続されている。連通油路38の上流端38aは、ロックシリンダ9のシリンダ本体11において、メイン油路36の下流端36bよりも先端側(図3の左側)で、シリンダ本体11の内部と連通するように接続されている。連通油路38の上流端38aは、ロックシリンダ9の収縮作動が終了した状態ではピストン12の外周面によって塞がれた状態となるように位置し、ロックシリンダ9の伸長作動が終了したときに(図6参照)ピストン12よりも基端側に位置するようになっている。
【0031】
したがって、連通油路38の上流端38aは、ロックシリンダ9の伸長作動中及び収縮作動中には、ロックシリンダ9の作動油室14と連通しておらず、ロックシリンダ9の伸長作動が終了したときに、ロックシリンダ9の作動油室14と連通する。これにより、連通油路38は、ロックシリンダ9の伸長作動が終了したときに、ロックシリンダ9の作動油室14とダンプシリンダ23の作動油室23aとを連通する。
【0032】
分岐油路39は、連通油路38の途中部38cから分岐し、メイン油路36の第2途中部36dに接続されている。第2途中部36dは、第1途中部36cよりも下流側に位置している。分岐油路39には、チェック弁41が設けられている。チェック弁41は、分岐油路39の下流側から上流側への作動油の流れを許容し、分岐油路39の上流側から下流側への作動油の流れを規制している。チェック弁41は、ロックシリンダ9と一体に設けられている。その詳細については後述する。
【0033】
[ロックシリンダの構成]
図4は、ロックシリンダ9の内部構成を示す概略断面図である。図4は、ロックシリンダ9が収縮作動を終了した状態を示している。ロックシリンダ9のシリンダ本体11の内部において、ピストン12よりも先端側のロッド13にはスプリング18が装着されている。スプリング18は、圧縮コイルスプリングからなり、ピストン12をシリンダ本体11の基端側に付勢している。スプリング18の付勢力は、作動油室14内に充填された作動油がピストン12を押圧するときの油圧よりも小さい。これにより、ロックシリンダ9は、作動油室14から作動油が排出されると、スプリング18の付勢力により収縮作動するようになっている。したがって、スプリング18は、その付勢力により、間接的にフック8を係合位置まで回動させることができる。
【0034】
ピストン12及びロッド13には、ピストン12の軸方向一方側と軸方向他方側とを連通する連通孔19が形成されている。連通孔19の一端は、ピストン12の作動油室14側の端面において開口している。連通孔19の他端は、ロッド13の外周面において開口している。ピストン12の軸方向一方側となる作動油室14内の作動油は、連通孔19を通過してピストン12の軸方向他方側に流れ込むようになっている。これにより、スプリング18は作動油に浸されるので、スプリング18が錆びるのを抑制することができる。
【0035】
連通孔19の前記一端の開口面積は、ロッド13のピストン12側の端部における断面積よりも小さい。この面積差によって、ピストン12の軸方向一方側(作動油室14側)の端面における作動油の受圧面積は、ピストン12の軸方向他方側の端面における作動油の受圧面積よりも大きくなる。したがって、図4に示す状態からロックシリンダ9を伸長させる際には、作動油室14に供給される作動油が連通孔19を介してピストン12の軸方向他方側にも流れ込むが、ピストン12の前記受圧面積の差によってロックシリンダ9を伸長させることができる。
【0036】
なお、連通油路38の上流端38a(図4では後述する第2油孔16の内端)は、上記のようにロックシリンダ9の収縮作動が終了した状態(図4)で、ピストン12の外周面により塞がれている。このため、図4に示す状態からロックシリンダ9を伸長させる際に、作動油室14内の作動油が連通孔19を介してピストン12の軸方向他方側にも流れ込んでも、その流れ込んだ作動油が連通油路38(第2油孔16)に流出するのを防止することができる。これにより、連通油路38への作動油の流出に起因してピストン12の前記受圧面積の差が生じなくなるのを防止できるので、ロックシリンダ9を確実に伸長させることができる。
【0037】
図3及び図4において、シリンダ本体11の外周側の壁部11aには、第1油孔15、第2油孔16、及び第3油孔17がそれぞれ形成されている。
第1油孔15は、メイン油路36の下流側部分(一部)を構成している。第1油孔15の内端(図4の下端)は、メイン油路36の下流端36bであり、上記のようにシリンダ本体11の内部と連通している。第1油孔15の外端(図4の上端)は、シリンダ本体11の壁部11aの外面で開口する第1接続ポート15aとされている。第1接続ポート15aには、メイン油路36の上流側部分(他部)を構成する油圧配管等が接続される。
【0038】
第2油孔16は、連通油路38の上流側部分(一部)を構成している。第2油孔16の内端は、連通油路38の上流端38aであり、上記のようにシリンダ本体11の内部と連通している。第2油孔16の外端は、シリンダ本体11の壁部11aの外面で開口する第2接続ポート16aとされている。第2接続ポート16aには、連通油路38の下流側部分(他部)を構成する油圧配管等が接続される。
【0039】
第3油孔17は、第2油孔16の途中部から分岐して第1油孔15の途中部に接続されている。第2油孔16の途中部は連通油路38の途中部38cであり、第1油孔15の途中部はメイン油路36の第2途中部36dである。これにより、第3油孔17は、分岐油路39の全体を構成している。
【0040】
第3油孔17の途中には、前記チェック弁41が設けられている。チェック弁41は、例えばボールチェック弁からなり、ボール41aと、ボール41aを付勢するスプリング41bと、を有している。ボール41aは、スプリング41bの付勢力により第3油孔17の一方向(図4の左方向)に押圧されることで、第3油孔17を閉塞している。これにより、第3油孔17において第1油孔15から第2油孔16への作動油の流れが規制される。
【0041】
ボール41aは、第3油孔17における第2油孔16側の作動油の油圧がボール41aに作用することで、スプリング41bの付勢力に抗して第3油孔17の他方向(図4の右方向)へ移動する。これにより、ボール41aによる第3油孔17の閉塞が解除され、第3油孔17において第2油孔16から第1油孔15への作動油の流れが許容される。
【0042】
[走行時の油圧回路]
ダンプトラック1を走行させるとき、図3に示すように、切換弁35は中立位置にあり、メイン油路36は、吐出油路33及び戻り油路34のいずれとも連通していない。ダンプシリンダ23及びロックシリンダ9は、いずれも収縮が終了した状態にある。すなわち、荷箱3は着床状態にあり、浮き上がり防止装置6のフック8は係合位置にある。ダンプトラック1の走行中に振動が発生すると、車体2に対して荷箱3が浮き上がろうとする。しかし、荷箱3は浮き上がり防止装置6により着床状態に保持されているので、車体2に対して荷箱3が浮き上がるのを防止することができる。
【0043】
[荷箱の傾動時の油圧回路]
図5は、荷箱3の傾動時における作動油の流れを説明する油圧回路図である。ダンプトラック1を停車させた状態(図1参照)で、作業者により荷箱3を傾動させるスイッチ操作が行われると、図5に示すように、切換弁35は中立位置から第1位置に切り換わる。この状態で油圧ポンプ32が駆動されると、油圧ポンプ32から吐出油路33に吐出された作動油は、切換弁35の第1位置を通過することができないので、バイパス油路37を通過してメイン油路36に流れる。
【0044】
メイン油路36に流れた作動油は、ロックシリンダ9の作動油室14に流れ込む。その際、メイン油路36の作動油の一部は、第2途中部36dから分岐油路39にも流れ込むが、チェック弁41により下流側への流れが規制される。このため、メイン油路36の作動油が、分岐油路39を介してダンプシリンダ23の作動油室23aに供給されることはない。
【0045】
ロックシリンダ9の作動油室14に作動油が供給されると、ピストン12は、スプリング18の付勢力に抗してシリンダ本体11の先端側へ移動する。これにより、ロックシリンダ9は伸長作動を開始し、フック8は係合位置から解除位置側へ回動し始める。ロックシリンダ9の伸長作動中において、ピストン12は、連通油路38の上流端38aよりもシリンダ本体11の基端側で移動するので、ロックシリンダ9の作動油室14内の作動油が、連通油路38に流れ込むことはない。このため、ロックシリンダ9の伸長作動中に、その作動油室14内の作動油が連通油路38を介してダンプシリンダ23の作動油室23aに供給されることはない。
【0046】
図6は、ロックシリンダ9の伸長作動が終了した状態を示す油圧回路図である。図6に示すように、ロックシリンダ9の伸長作動が終了すると、フック8は、解除位置となってロックピン7との係合が解除される。また、ピストン12は、連通油路38の上流端38aよりもシリンダ本体11の先端側に位置するので、連通油路38は、ロックシリンダ9の作動油室14と連通する。これにより、作動油室14内の作動油は、連通油路38を通過してダンプシリンダ23の作動油室23aに供給される。
【0047】
ダンプシリンダ23の作動油室23aに作動油が供給されると、図7に示すようにダンプシリンダ23が伸長作動し、荷箱3が傾動する(図2参照)。ダンプシリンダ23の伸長作動中において、ロックシリンダ9の作動油室14には、油圧ポンプ32により作動油が供給されるので、ロックシリンダ9のピストン12には、作動油室14内に充填された作動油の油圧が作用し続ける。これにより、ロックシリンダ9は伸長作動が終了した状態で保持されるので、フック8は解除位置で保持される。
【0048】
[荷箱の倒伏時の油圧回路]
図8は、荷箱3の倒伏時における作動油の流れを説明する油圧回路図である。荷箱3が傾動した状態(図2参照)で、作業者により荷箱3を倒伏させるスイッチ操作が行われると、図8に示すように、切換弁35は中立位置から第2位置に切り換わる。これにより、戻り油路34とメイン油路36が連通する。
【0049】
戻り油路34とメイン油路36が連通すると、切換弁35よりも下流側の各油路36,38,39における作動油の油圧が開放される。これにより、伸長状態のダンプシリンダ23は荷箱3の自重により収縮作動を開始する。ダンプシリンダ23が収縮作動することで、その作動油室23a内の作動油は連通油路38に排出される。
【0050】
連通油路38に排出された作動油の一部は、連通油路38の途中部38cから分岐油路39に流れ込み、チェック弁41を通過してメイン油路36に流れる。また、連通油路38に排出された作動油の残りは、連通油路38の上流端38aからロックシリンダ9の作動油室14を通過してメイン油路36に流れ、上記作動油の一部と合流する。このようにしてメイン油路36に流れた作動油は、切換弁35の第2位置、戻り油路34を通過して油タンク31に戻る。
【0051】
ダンプシリンダ23の収縮作動中において、ロックシリンダ9の作動油室14には、上記のようにダンプシリンダ23の作動油室23aから作動油が供給されるので、ロックシリンダ9のピストン12には、作動油室14内に充填された作動油の油圧が作用し続ける。これにより、ロックシリンダ9は伸長作動が終了した状態で保持されるので、フック8は解除位置で保持される。
【0052】
図9は、ダンプシリンダ23の収縮作動が終了した状態を示す油圧回路図である。図9に示すように、ダンプシリンダ23の収縮作動が終了して荷箱3が着床状態になると(図2参照)、ダンプシリンダ23の作動油室23aからロックシリンダ9の作動油室14へ作動油が供給されなくなる。これにより、作動油室14内の作動油の油圧は開放される。
【0053】
作動油室14内の作動油の油圧が開放されると、ロックシリンダ9のピストン12は、スプリング18の付勢力によりシリンダ本体11の基端側へ移動する。これにより、ロックシリンダ9は収縮作動を開始し、フック8は解除位置から係合位置側へ回動し始める。ロックシリンダ9の収縮作動により、その作動油室14内の作動油は、メイン油路36、切換弁35の第2位置、戻り油路34を通過して油タンク31に戻る。図10に示すように、ロックシリンダ9の収縮作動が終了すると、フック8は係合位置となり、荷箱3側のロックピン7に係合する。
【0054】
[作用効果]
本実施形態のダンプトラック1によれば、連通油路38から分岐している分岐油路39において上流側から下流側への作動油の流れを規制するチェック弁41が、ロックシリンダ9と一体に設けられているので、チェック弁41と一体化されたロックシリンダ9を油圧回路に取り付けることで、チェック弁41を別途取り付ける作業が不要になる。これにより、ダンプトラック1の組み立て工数を低減することができる。
【0055】
また、ロックシリンダ9のシリンダ本体11の壁部11aに、分岐油路39を構成する第3油孔17が形成され、その第3油孔17にチェック弁41が設けられている。これにより、ロックシリンダ9に分岐油路39が一体に形成されるので、ロックシリンダ9を油圧回路に取り付けることで、油圧回路に分岐油路39を別途設ける作業も不要になる。その結果、ダンプトラック1の組み立て工数をさらに低減することができる。
【0056】
また、ロックシリンダ9のシリンダ本体11の内部には、ピストン12をシリンダ本体11の基端側に付勢するスプリング18が設けられているので、スプリング18の付勢力により間接的にフック8を係合位置まで回動させることができる。これにより、フック8を係合位置まで回動させるためのスプリング18をフック8に別途取り付ける作業が不要になる。その結果、ダンプトラック1の組み立て工数をさらに低減することができる。
【0057】
[その他]
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、本実施形態のロックシリンダ9には、分岐油路39とチェック弁41が一体に設けられているが、少なくともチェック弁41が一体に設けられていればよい。また、ロックシリンダ9には、分岐油路39の一部のみが形成されていてもよい。
【0058】
また、本実施形態においてロックシリンダ9に内蔵されるスプリング18は、ピストン12よりもシリンダ本体11の先端側に設けられているが、ピストン12よりもシリンダ本体11の基端側(作動油室14)に設けられていてもよい。その場合、スプリング18は、ピストン12をシリンダ本体11の基端側に付勢する引張コイルスプリングとすればよい。
【0059】
また、本実施形態のスプリング18は、ピストン12を軸方向一方側に付勢するために、ピストン12をシリンダ本体11の基端側に付勢しているが、ピストン12をシリンダ本体11の先端側に付勢してもよい。その場合、スプリング18は、ピストン12よりもシリンダ本体11の基端側に設けられる圧縮コイルスプリングとしてもよいし、ピストン12よりもシリンダ本体11の先端側に設けられる引張コイルスプリングとしてもよい。このようにスプリング18が、ピストン12をシリンダ本体11の先端側に付勢する場合には、ピストン12よりもシリンダ本体11の先端側に、ロックシリンダ9の作動油室14を形成すればよい。また、連通油路38は、ロックシリンダ9の収縮作動が終了したときにロックシリンダ9の作動油室14とダンプシリンダ23の作動油室23aとを連通すればよい。さらに、スプリング18の付勢力によってロックシリンダ9が伸長作動するので、その伸長作動によりフック8が回動した位置が係合位置となるように、フック8の形状およびロックピン7の位置を変更すればよい。
【0060】
また、本実施形態のスプリング18は、ロックシリンダ9に内蔵されているが、ロックシリンダ9と別体に設けられていてもよい。また、本実施形態における分岐油路39の上流端は、メイン油路36の第2途中部36dに接続されているが、上記特許文献1と同様に、ロックシリンダ9の作動油室14に常に連通するように接続されていてもよい。また、本実施形態のフック8は、係合位置において荷箱3に固定されたロックピン7に係合されるが、荷箱3に直接係合されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ダンプトラック
2 車体
3 荷箱
8 フック
9 ロックシリンダ
11 シリンダ本体
11a 壁部
12 ピストン
14 作動油室(第2油室)
15 第1油孔
16 第2油孔
17 第3油孔
18 スプリング
23 ダンプシリンダ
23a 作動油室(第1油室)
36 メイン油路
38 連通油路
39 分岐油路
41 チェック弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10