(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147199
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220929BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20220929BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20220929BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20220929BHJP
B29C 48/505 20190101ALI20220929BHJP
B29C 48/68 20190101ALI20220929BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20220929BHJP
B29C 55/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08J5/18 CEZ
B29C48/08
B29C48/305
B29C48/395
B29C48/505
B29C48/68
B29C48/88
B29C55/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048351
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 圭太
(72)【発明者】
【氏名】安井 章文
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA51
4F071AA86
4F071AF31Y
4F071AF62Y
4F071AH13
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F207AA34
4F207AG01
4F207AR20
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KK64
4F207KL01
4F207KL31
4F207KL84
4F207KM15
4F207KW21
4F210AA34
4F210AG01
4F210AR06
4F210QC06
4F210QD25
4F210QG01
(57)【要約】
【課題】本発明は、他の樹脂成分を混合しなくても溶融成形を可能とし、熱寸法安定性等の優れた特性を有するポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム、およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、本発明によれば、ポリフェニレンエーテルを高いスクリュー回転数で溶融押出することで、転位反応が生じ、流動性が向上するため、ポリフェニレンエーテルを高含有率で含む場合であってもポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを得ることが可能となり、さらに二軸延伸により熱寸法安定性がさらに向上したフィルムを得ることが可能となる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で接続する転位構造を有し、その転位構造量が全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して0.1モル%以上であることを特徴とするポリフェニレンエーテル成分を含み、且つ前記ポリフェニレンエーテル成分の含有率が全成分中の90重量%以上であることを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム。
【請求項2】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位が、下記一般式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)
で表される繰り返し単位であり、前記転位構造が、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3’は、前記R3から水素原子が1個除かれた2価の基を表す)
で表される構造であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム。
【請求項3】
前記転位構造が、核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)測定において、6.8~7.0ppmの範囲と3.8~4.0ppmの範囲にピークを示すことを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム。
【請求項4】
MD方向の線膨張係数が100ppm/K以下、かつTD方向の線膨張係数が100ppm/K以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム。
【請求項5】
下記一般式(3)で定義されるフィルムMD方向の複屈折をΔNx、下記一般式(4)で定義されるTD方向の複屈折をΔNyとしたとき、ΔNxまたはΔNyの少なくとも一方が0.0~0.3にあることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム。
ΔNx=Nx-(Ny+Nz)/2 (3)
ΔNy=Ny-(Nx+Nz)/2 (4)
ここで、Nx、Ny、NzはそれぞれMD方向の屈折率、TD方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。
【請求項6】
ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法であって、原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー及びスクリューを備えた押出機により、Tダイから溶融樹脂を溶融押出する押出工程と、押出した溶融樹脂を冷却ロールで固化させる冷却工程を有する、ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程の後、フィルムを延伸する延伸工程を有する、請求項6に記載のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記延伸工程の延伸温度が、300℃以下であることを特徴とする、請求項7に記載のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム、及びポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル(以下、PPEと表記することもある)は耐熱性、難燃性、強度、耐薬品性に優れるため、ポリフェニレンエーテルから形成される成形体は幅広い分野で利用されている。またポリフェニレンエーテルは低誘電特性、低吸水性を有する。しかしながらポリフェニレンエーテルは、一般的に高い溶融粘度を有しているため、ポリフェニレンエーテル単独やポリフェニレンエーテルが高含有量の場合には溶融成形は難しく、特に溶融押出フィルムを製造することは困難であった。
【0003】
ポリフェニレンエーテルを含むフィルムとしては、ポリエステル、ポリスチレンを含有するポリフェニレンエーテル組成物からなるもの(例えば、特許文献1参照)、末端に反応性官能基を有する変性ポリフェニレンエーテルと架橋剤、硬化促進剤を含有する組成物を硬化させたもの(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4787547号公報
【特許文献2】特開2019-44090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、ポリフェニレンエーテルに、ポリエステルやポリスチレンなどの熱可塑性樹脂を添加して加工性を向上させたものであり、ポリフェニレンエーテル含有量が低く、ポリフェニレンエーテルの優れた特徴を活かしきれないものであった。さらに、特許文献2においては、末端に反応性官能基を有するポリフェニレンエーテルに、架橋剤、硬化促進剤を添加してフィルムを得るものであった。すなわち、これらの文献においては、ポリフェニレンエーテルに、何らかの材料を加えることで加工性や流動性を改善するものであった。
【0006】
本発明の目的は、原料であるポリフェニレンエーテルを高含有率で含む場合であっても、溶融製膜を可能とし、ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリフェニレンエーテルの溶融押出成形について鋭意検討を行った結果、特定の転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、全成分中90質量%以上であることを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムに関する。
【0009】
また本発明は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有し、その転位構造量が全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して0.1モル%以上であることを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムに関する。
【0010】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位が、下記一般式(1):
【化1】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)で表される繰り返し単位であり、前記転位構造が、下記一般式(2):
【化2】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3’は、前記R
3から水素原子が1個除かれた2価の基を表す)で表される構造であることが好ましい。
【0011】
前記転位構造が、核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)測定において、6.8~7.0ppmの範囲と3.8~4.0ppmの範囲にピークを示すことが好ましい。
【0012】
前記ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムのMD(Machine Direction) 方向の線膨張係数が100ppm/K以下、かつTD(Transverse Direction)方向の線膨張係数が100ppm/K以下であることが好ましい。
【0013】
下記一般式(3)で定義されるフィルムMD方向の複屈折をΔNx、下記一般式(4)で定義されるTD方向の複屈折をΔNyとしたとき、ΔNxまたはΔNyの少なくとも一方が0.0~0.3にあることが好ましい。
ΔNx=Nx-(Ny+Nz)/2 (3)
ΔNy=Ny-(Nx+Nz)/2 (4)
ここで、Nx、Ny、NzはそれぞれMD方向の屈折率、TD方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表す。
【0014】
また、本発明は、ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法であって、原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー及びスクリューを備えた押出機により、スクリューの周速が3.6m/min以上で溶融押出する工程を有することを特徴とするポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法に関する。
【0015】
前記冷却工程の後、フィルムを延伸する延伸工程を有する、ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法に関する。
【0016】
前記延伸工程の延伸温度は、300℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を用いるため、溶融成形が可能となり、機械的強度等に優れた高純度なポリフェニレンエーテル溶融押出フィルムを形成できるものであり、製造が難しい連続フィルム状物の溶融押出も可能としたものである。また、本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出フィルムは、機械的強度のみならず、難燃性、耐熱性、耐薬品性、熱寸法安定性等に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムは、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むことを特徴とする。ここで、「オルト位の結合で連続する転位構造」とは、主鎖のパラ位の結合で連続する繰り返し単位中の一部に、オルト位で結合して、連続する側鎖を形成した構造であり、側鎖は、パラ結合で連続する繰り返し単位から形成されていてもよく、また、その中に部分的にオルト位で結合する部分を有していてもよい。
【0019】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位としては、下記一般式(1):
【化3】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基を表す)で表される繰り返し単位であることが好ましい。また、前記転位構造は、下記一般式(2):
【化4】
(式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、R
3’は、前記R
3から水素原子が1個除かれた2価の基を表す)で表される転位構造を有することが好ましい。前記一般式(2)中の「~」は、その先の構造は特に限定されないことを示す。「~」の部分は、パラ結合で連続するフェニレンエーテル単位から形成されていてもよく、また、その中に部分的にオルト位で結合する部分を有していてもよい。
【0020】
前記転位反応とは、例えば、以下の式:
【化5】
で示すような反応であり、メチレンブリッジ転位と呼ばれることもある。
【0021】
一般的に、ポリフェニレンエーテルは、高い溶融粘度を有しており、ポリフェニレンエーテルを高含有率で含む場合や、それ単独では溶融成形が難しいとされていた。本発明においては、前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分を含むため、溶融成形が可能な程度に流動性が向上し、溶融押出成形体とすることができるものであり、より製造が難しい溶融製膜フィルムの製造も可能としたものである。以下、本発明の各構成について説明する。
【0022】
<ポリフェニレンエーテル成分>
本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分は、パラ位の結合で連続する繰り返し単位中に、オルト位の結合で連続する転位構造を有するポリフェニレンエーテルを含むものである。
【0023】
前記パラ位の結合で連続する繰り返し単位としては、前記一般式(1)で表される繰り返し単位であることが好ましく、前記転位構造は、前記一般式(2)で表される転位構造を有することが好ましい。
【0024】
前記一般式(1)、(2)中のR1、R2としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルエチル基等の炭素数7~10のアラルキル基等も挙げることができる。
【0025】
前記炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。置換基を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0026】
これらの中でも、R1、R2としては、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0027】
前記一般式(1)、(2)中のR3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基、フェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルエチル基等の炭素数7~10のアラルキル基等も挙げることができる。
【0028】
前記炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。置換基を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。
【0029】
これらの中でも、R3としては、メチル基が好ましい。
【0030】
前記R3’は、前記R3から水素原子が1個除かれた2価の基を表し、メチレン基であることが好ましい。
【0031】
前記一般式(1)の繰り返し単位としては、具体的には、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル、2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル、2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル、2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテルから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。これらの中でも、2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテルから誘導される繰り返し単位が好ましい。
【0032】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分は、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、又は異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体中に、前記一般式(2)で表される転位構造を有するものが好ましい。
【0033】
また、前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記一般式(1)以外の繰り返し単位を含むことができ、その場合は、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を含む共重合体中に前記一般式(2)で表される転位構造を有するものとすることができる。このような一般式(1)以外の繰り返し単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、例えば、前記共重合体中に5モル%以下程度であることが好ましく、含まないことがより好ましい。
【0034】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテルの分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)が40,000~100,000であることが好ましく、50,000~80,000であることがより好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、7,000~30,000であることが好ましく、8,000~20,000であることがより好ましい。また、分子量分散(Mw/Mn)は、3.5~8.0であることが好ましく、4.0~6.0であることがより好ましい。前記重量平均分子量、数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
前記転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位構造量は、前記ポリフェニレンエーテル成分中の全ポリフェニレンエーテル構造単位に対して、0.1モル%以上であることが好ましく、0.2モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましい。さらに安定して吐出させるためには1.0モル%以上が特に好ましい。また、転位構造量の上限値は特に限定されないが、10モル%以下であることが好ましく、9モル%以下であることがより好ましい。転位構造を有するポリフェニレンエーテル成分における転位構造量が前記範囲にあることで、溶融成形が可能な程度に流動性が向上し、溶融押出成形体とすることができる傾向にあり、好ましい。
【0036】
前記転位構造は、核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)測定において、3.8~4.0ppmの範囲と6.8~7.0ppmの範囲にピークを示すことが好ましい。通常、ポリフェニレンエーテルは、6.4~6.6ppm付近にピークを示し、これは、ポリフェニレンエーテル主鎖中のベンゼン環の3、5位の水素原子に由来するピークである。前記転移構造を有するポリフェニレンエーテルは、前記6.4~6.6ppm付近のピークに加え、3.8~4.0ppmの範囲と6.8~7.0ppmの範囲にピークを示す。前記3.8~4.0ppmの化学シフトは、前記転移構造中のR3’で示される2価の基(例えば、メチレン基等)のプロトンに由来するものであり、前記6.8~7.0ppmの化学シフトは、前記転位構造中のポリフェニレンエーテルの3、5位のR1、R2基のプロトン(例えば、オルト位にメチレン基を介して結合しているベンゼン環の3位と5位の水素原子)に由来するものである。
【0037】
本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分には、転位構造を有さないポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。転位構造を有さないポリフェニレンエーテルとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体や、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を有する共重合体等を挙げることができる。前記共重合体における一般式(1)以下の繰り返し単位の含有量としては、前述のものを挙げることができる。
【0038】
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分には、低分子量のポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。低分子量のポリフェニレンエーテルの分子量としては、例えば、重量平均分子量が2,000~8,000程度を挙げることができる。
【0039】
ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、成形体を形成する全成分中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体における前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が前記範囲にあることで、得られた成形体の機械的強度に優れるのみならず、耐熱性、耐薬品性、難燃性等に優れるものであり、好ましい。
【0040】
ポリフェニレンエーテル成分の含有量が、成形体を形成する全成分中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。ポリフェニレンエーテル溶融押出成形体における前記ポリフェニレンエーテル成分の含有量が前記範囲にあることで、得られた成形体の機械的強度に優れるのみならず、耐熱性、耐薬品性、難燃性等に優れるものであり、好ましい。
【0041】
また、本発明で用いるポリフェニレンエーテル成分には、低分子量のポリフェニレンエーテルを含んでいてもよい。低分子量のポリフェニレンエーテルの分子量としては、例えば、重量平均分子量が2,000~8,000程度を挙げることができる。但し、上記樹脂成分の含有量が多いと目ヤニが発生するため、その含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、実質上含まない(0.1質量%以下)ことが特に好ましい。
<ポリフェニレンエーテル成分以外の成分>
【0042】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融押出成形体には、前記ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分を含むことができる。ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分としては、スチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンやポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド11、ポリアミド66、ポリアミド6T、ポリアミド6T/11等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。但し、上記樹脂成分の含有量が多いと目ヤニが発生するため、その含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、
実質上含まない(0.1質量%以下)ことが特に好ましい。
【0043】
また、本発明のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ダル剤、静電防止剤等の添加剤も添加することができるが、その含有量は上記樹脂成分と同程度のレベルで少ない方が望ましい。
【0044】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの製造方法は、原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー及びスクリューを備えた押出機により、スクリューの周速を3.6m/min以上で溶融押出する工程を有することを特徴とするものである。
【0045】
原料であるポリフェニレンエーテルとしては、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体、又は異なる2種以上の一般式(1)の繰り返し単位を含有する共重合体や、前記一般式(1)の繰り返し単位と一般式(1)以外の繰り返し単位を有する共重合体を挙げることができる。前記共重合体における一般式(1)以外の繰り返し単位の含有量としては、前述のものを挙げることができる。これらの中でも、前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体が好ましい。
【0046】
前記一般式(1)の繰り返し単位を有する単独重合体としては、具体的には、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレンエーテル)等を挙げることができるが、これらの中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。
【0047】
前記ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)としては、市販品も好適に用いることができ、具体的は、例えば、SABIC Innovative Plastic製のPPO640、PPO646、PPOSA120、旭化成ケミカルズ(株)製のザイロンS201A、ザイロンS202A等を挙げることができる。
【0048】
前記原料であるポリフェニレンエーテルのガラス転移点温度は、170℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、210℃以上であることさらに好ましい。また、ガラス転移点温度の上限値は特に限定されないが、230℃以下であることが好ましい。原料であるポリフェニレンエーテルのガラス転移点温度が前記範囲にあることで、高い耐熱性を有するポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムが得られるため、好ましい。
【0049】
また、本発明で用いる原料には、異なるガラス転移点温度を有するポリフェニレンエーテルを2種以上含んでいてもよく、具体的には、前記ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルに加えて、ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを含むことができる。ガラス転移点温度が170℃未満のポリフェニレンエーテルを加えることで、溶融粘度が低下して、流動性が向上するものの、ポリフェニレンエーテル中の転位量が低下する傾向にある。
【0050】
原料であるポリフェニレンエーテル中、前記ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルの含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルのみからなることが特に好ましい。また、ガラス転移点温度が170℃以上であるポリフェニレンエーテルの含有量の上限値は特に限定されるものではないが、100質量%以下であることが好ましい。本発明においては、ガラス転移点温度が高い(すなわち高分子量)のポリフェニレンエーテルを前記範囲で含むことが、得られるポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの機械的強度、耐熱性、耐薬品性、難燃性等に優れるため、好ましい。
【0051】
また、原料であるポリフェニレンエーテルと共に、ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分や添加剤を含むことができる。ポリフェニレンエーテル成分以外の樹脂成分や添加剤としては、前述の通りである。
【0052】
前記シリンダー及びスクリューを備えた押出機としては、本分野で通常用いることができる単軸押出機や二軸押出機を用いることができるが、これに限定されるものではなく、ポリマーに対してせん断を効果的に行うという目的が達成できるものであればよい。本発明においては、二軸押出機を用いることが好ましい。
【0053】
前記スクリューの周速は、原料であるポリフェニレンエーテルの転位反応が起こるスクリューの周速が必要であり、3.6m/min以上であり、3.7m/min以上であることが好ましく、3.8m/min以上であることがより好ましい。また、スクリューの周速の上限値は、特に限定されないが、94.2m/min以下であることが好ましい。本発明においては、スクリュー回転数上げてスクリューの周速を3.6m/min以上とすることで、シリンダー内の原料ポリフェニレンエーテルに高剪断力を付与することができ、その結果、ポリフェニレンエーテルの分子鎖を切断して、転位構造を有するポリフェニレンエーテルが形成できるものである。前記転位構造を有するポリフェニレンエーテルが形成することで、ポリフェニレンエーテルの溶融製膜を可能にしたものである。
【0054】
前記スクリューの形状としては、特に限定されるものではなく、原料であるポリフェニレンエーテルの転位反応が起こる程度に剪断力を加えることができるものであればよい。
【0055】
シリンダー内の温度は、低すぎると樹脂の流動性が悪く、高すぎると流動性は改善されるものの、樹脂の熱分解による発泡現象が発生するため、そのバランスが取れる加工温度を選択する必要がある。シリンダー内の温度としては、例えば250~350℃であることが好ましく、280~330℃であることがより好ましい。シリンダー内の温度を前記範囲にすることで、発泡現象を抑制しつつ、高分子鎖切断が起こりやすいため好ましい。
【0056】
本発明の製造方法により得られたポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの厚みの上限は特に限定されないが、0.2mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。厚みの下限については特に限定されないが、0.005mm以上であることが好ましく、0.01mm以上であることがより好ましい。フィルムの厚みを前記範囲にすることで、フィルム形状を保ちつつ、次工程での加工性が向上するため好ましい。
【0057】
<ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルム>
本発明のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムは、前記ポリフェニレンエーテル成分を含むものであり、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば原料であるポリフェニレンエーテルを、シリンダー、及びスクリューを備えた押出機により、Tダイから溶融樹脂を溶融押出し、押出した溶融樹脂を冷却ロールで固化させることにより製造することが可能である。Tダイの形状はスリットから溶融樹脂をフィルム状に押し出すことが可能であれば特に制限されない。冷却ロールの形状は押出樹脂を冷却し固化することが可能であれば特に制限されない。冷却ロールの温度は、特に制限はないが、原料であるポリフェニレンエーテルの融点未満の温度であり、ガラス転移点温度以下の温度である。
【0058】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムは、冷却工程のあと延伸してもよい。延伸温度の上限は特に限定されないが、300℃以下であることが好ましく、270℃以下であることがより好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。延伸温度の下限は特に限定されないが、150℃以上であることが好ましいい。延伸温度を前記範囲とすることで、熱寸法安定性が向上したポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムが得られる。
【0059】
前記ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを延伸する場合の延伸倍率の下限は特に制限はないが、1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることが更に好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、10倍以下であることが好ましい。
【0060】
前記ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムのMD(Machine Direction) 方向の線膨張係数が100ppm/K以下が好ましく、80ppm/K以下であることがより好ましく、50ppm/K以下であることが更に好ましい。線膨張係数の下限は特に限定されないが10ppm/K以上が好ましい。
また同時にTD(Transverse Direction)方向の線膨張係数が100ppm/K以下が好ましく、80ppm/K以下であることがより好ましく、50ppm/K以下であることが更に好ましい。線膨張係数の下限は特に限定されないが10ppm/K以上が好ましい。
【0061】
本発明のポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムの複屈折率は、下記一般式(3)で定義されるフィルムMD方向の複屈折をΔNx、下記一般式(4)で定義されるTD方向の複屈折をΔNyと規定する。
ΔNx=Nx-(Ny+Nz)/2 (3)
ΔNy=Ny-(Nx+Nz)/2 (4)
NxまたはΔNyの少なくとも一方は、0以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることが更に好ましい。NxまたはΔNyの少なくとも一方が、前記範囲にあれば、他方は負の値となっても構わない。ΔNx及びΔNyの上限は特に制限されないが、0.3以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.05以下であることが更に好ましい。ΔNx、ΔNyを前記範囲とすることで、分子鎖の配向が強くなり、線膨張係数を低減させることが可能となる。
【実施例0062】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性等の評価方法は以下の通りである。
【0063】
(1)線膨張係数
TAインスツルメンツ(株)製の熱機械分析装置(形式:TMA-Q400)を用いて、フィルムのMD方向およびTD方向のそれぞれについて、窒素雰囲気下で、昇降温速度を5℃/minとし、30℃から150℃まで昇温(1回目昇温)し、150℃から30℃まで降温し、再び30℃から150℃まで昇温(2回目昇温)したときの、2回目昇温の70℃から120℃までの平均寸法変化率を線膨張係数として算出した。
【0064】
(2)屈折率
アタゴ製のアッベ屈折率計(測定波長589nm)により、MD方向の屈折率Nx、TD方向の屈折率Ny、厚み方向の屈折率Nzを測定し、下記式によって複屈折ΔNx、ΔNyを算出した。
ΔNx=Nx-(Ny+Nz)/2
ΔNy=Ny-(Nx+Nz)/2
【0065】
(3)スクリュー周速
スクリューの周速は以下の式により求めた。
スクリューの周速(m/min)=スクリュー直径(mm)×0.00314×スクリュー回転数(rpm)
【0066】
(4)ガラス転移点温度
TAインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(型式:DSC-Q100)を用いて、成形体(繊維)2mgを、窒素雰囲気下において30℃から250℃まで、昇温速度10℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0067】
(5)成形体中の転位構造量
共鳴周波数600MHzの1H-NMR測定にて行った。測定装置は、BRUKER社製のNMR装置(装置名:AVANCE-NEO600)を用い、測定は以下の通りに行った。
実施例及び比較例で得られた成形体(試料)10mgを重クロロホルムに溶解後、その溶液をNMRチューブに充填し測定を行った。前記測定は溶解後、速やかに(1時間以内)に測定を開始した。ロック溶媒には重クロロホルムを用い、待ち時間を1秒、データ取り込み時間を4秒、積算回数を64回とし、重クロロホルム中のクロロホルムを7.28ppmとし測定を実施した。
転位構造量の解析は以下の通り実施した。
ポリフェニレンエーテルの3、5位のR1、R2基のプロトンに由来するピークと、転位構造中のR3’で示される2価の基(メチレン基等)のプロトンに由来するピークのそれぞれのピーク積分値をA、Bとし、転位構造量は以下の式により求めた。
転位構造量(mol%)=B/(A+B)×100
【0068】
(6)重量平均分子量(Mw)
測定装置として、東ソー(株)製のHLC-8320GPCを用いた。カラムはTSKgel SuperHM-Hを2本、TSKgel SuperH2000を直列につなぎ、使用した。移動相にクロロホルムを使用し、流速は0.6ml/分、カラムオーブンの温度を40℃とした。成形体から1g/Lの濃度のクロロホルム溶液を調製して溶液調整後1時間後に測定を行った。重量平均分子量と数平均分子量は標準ポリスチレンにより検量線を作成して算出した。検出器のUV波長は、評価対象物の場合は283nm、標準ポリスチレンの場合は254nmとした。
【0069】
(7)比重
乾式自動密度計(製品名:アキュピックII1340、(株)島津製作所製)を用い、10cm3のセルにサンプルが8割程度になるように詰めて、ヘリウムガスにて測定した。
【0070】
実施例1
ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)(PPO640、ガラス転移点温度(Tg):221℃、SABIC Innovative Plastic製)を、(株)テクノベル製2軸押出機(製品名:KZW15TW-45MG)を用いて押出した。前記2軸押出機は、シリンダーが6ゾーンを有しており、ホッパー側からシリンダーをそれぞれ、シリンダー1、2、3、4、5、6とし、シリンダー1は280℃に設定し、シリンダー2~6は320℃に設定し、Tダイは300℃に設定した。吐出量30g/min、スクリュー回転数は700rpmに設定してスクリューの周速を33.0m/minとした。原料フィーダは定容量式コイルフィーダーφ17mmを用い、Tダイは、コートハンガー型Tダイ:幅150mm、リップギャップ1mmとした。Tダイから押し出された樹脂を冷却ロールにキャストし、ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを得た。
【0071】
実施例2、3、4、5、6
製膜条件を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にしてポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを得た。
【0072】
実施例7
実施例1で得たフィルムを、延伸倍率1.5倍、延伸温度265℃に設定して逐次二軸延伸することにより、二軸延伸ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを得た。
【0073】
実施例8、9
延伸条件を表1に記載のように変更した以外は実施例4と同様にして二軸延伸ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを得た。
【0074】
実施例10
実施例1で得たフィルムを、延伸倍率1.5倍、延伸温度240℃に設定して同時二軸延伸することにより、二軸延伸ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを得た。
【0075】
比較例1
比較例1では、シリンダー2~6を250℃に設定した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを製造しようとしたが、流動性が極めて低く、Tダイからポリマーを押出すことができなかった。
【0076】
比較例2
比較例2では、スクリュー回転数を50rpm、すなわちスクリューの周速を2.4m/minとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを製造しようとしたが、流動性が極めて低く、Tダイからポリマーを押出すことができなかった。
【0077】
本発明によれば、ポリフェニレンエーテルを高いスクリュー回転数で溶融押出することで、ポリフェニレンエーテルの分子鎖が切断されて転位反応が生じ、流動性が向上するため、ポリフェニレンエーテルを高含有率で含む場合であってもポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムを得ることが可能となる。さらに、二軸延伸ポリフェニレンエーテル溶融製膜フィルムとすることで、熱寸法安定性がさらに向上したフィルムを得ることが可能となる。本発明により得られるフィルムは、優れた耐熱性、難燃性、強度、耐薬品性、高平滑性、熱寸法安定性が要求される分野、例えばFPC基板、カバーレイ、粘着テープ基材、積層基板成形用離型フィルム、透明耐熱保護フィルム、耐熱基板用特殊離型フィルム等に好適に利用することができる。