(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147223
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】光学測定システム、光学測定方法および測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048379
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 史朗
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一八
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】前田 吾郎
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB17
2F065CC19
2F065DD15
2F065EE01
2F065FF01
2F065FF41
2F065FF61
2F065GG03
2F065GG07
2F065GG24
2F065JJ02
2F065JJ03
2F065JJ25
2F065JJ26
2F065LL02
2F065LL30
2F065LL42
2F065LL67
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065RR08
(57)【要約】
【課題】分光検出器などに生じる温度変化などによる誤差を低減する手法を提供する。
【解決手段】光学測定システムは、光源と、分光検出器と、温度変化に対して特性を維持するように構成された基準試料と、光源からの光を測定対象の試料に照射するとともに、試料で生じる光を分光検出器へ導く第1の光学経路と、光源からの光を基準試料に照射するとともに、基準試料で生じる光を分光検出器へ導く第2の光学経路とを切り換える切換機構と、第1の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力した第1の検出結果と、第2の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力した第2の検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、第2の時刻と時間的に近接した第3の時刻に、光源からの光を試料に照射して分光検出器が出力した第3の検出結果から試料の測定値を算出する算出部とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
分光検出器と、
温度変化に対して特性を維持するように構成された基準試料と、
前記光源からの光を測定対象の試料に照射するとともに、前記試料で生じる光を前記分光検出器へ導く第1の光学経路と、前記光源からの光を前記基準試料に照射するとともに、前記基準試料で生じる光を前記分光検出器へ導く第2の光学経路とを切り換える切換機構と、
第1の時刻に、前記光源からの光を前記基準試料に照射して前記分光検出器が出力した第1の検出結果と、第2の時刻に、前記光源からの光を前記基準試料に照射して前記分光検出器が出力した第2の検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、前記第2の時刻と時間的に近接した第3の時刻に、前記光源からの光を前記試料に照射して前記分光検出器が出力した第3の検出結果から前記試料の測定値を算出する算出部とを備える、光学測定システム。
【請求項2】
前記補正処理は、前記第1の検出結果を基準とした前記第2の検出結果の変化に基づく、請求項1に記載の光学測定システム。
【請求項3】
前記算出部は、
前記分光検出器が出力した検出結果に基づいて膜厚を算出する手段と、
前記第1の検出結果から算出された第1の膜厚に対する前記第2の検出結果から算出された第2の膜厚の変化率を、前記第3の検出結果から算出された第3の膜厚に反映することで、前記試料の測定値を算出する手段とを備える、請求項1または2に記載の光学測定システム。
【請求項4】
前記算出部は、
波長校正情報を参照して、前記分光検出器が出力した検出結果に波長を対応付ける手段と、
前記第1の検出結果に波長を対応付けた結果と前記第2の検出結果に波長を対応付けた結果との差に基づいて、前記波長校正情報を補正する手段とを備える、請求項1または2に記載の光学測定システム。
【請求項5】
前記基準試料の周囲には断熱構造が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項6】
前記基準試料は、温度依存性を実質的に無視できる材質で構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項7】
前記切換機構は、前記光源と前記試料および前記基準試料との間の光学経路上に設けられた光スイッチを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項8】
前記切換機構は、前記光源から前記試料までの光学経路、および、前記光源から前記基準試料までの光学経路のいずれか一方を選択的に遮光する光学シャッタを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学測定システム。
【請求項9】
第1の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力する第1の検出結果を取得するステップを備え、前記基準試料は、温度変化に対して特性を維持するように構成されており、
第2の時刻に、前記光源からの光を前記基準試料に照射して前記分光検出器が出力する第2の検出結果を取得するステップと、
前記第2の時刻と時間的に近接した第3の時刻に、前記光源からの光を試料に照射して前記分光検出器が出力した第3の検出結果を取得するステップと、
前記第1の検出結果と前記第2の検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、前記第3の検出結果から前記試料の測定値を算出するステップとを備える、光学測定方法。
【請求項10】
試料を測定するための測定プログラムであって、コンピュータに、
第1の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力する第1の検出結果を取得するステップを実行させ、前記基準試料は、温度変化に対して特性を維持するように構成されており、
第2の時刻に、前記光源からの光を前記基準試料に照射して前記分光検出器が出力する第2の検出結果を取得するステップと、
前記第2の時刻と時間的に近接した第3の時刻に、前記光源からの光を前記試料に照射して前記分光検出器が出力した第3の検出結果を取得するステップと、
前記第1の検出結果と前記第2の検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、前記第3の検出結果から前記試料の測定値を算出するステップとを実行させる、測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光検出器を含む光学測定システム、光学測定方法および測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に光を照射することで生じる干渉を分光検出器で観測することで、当該試料の膜厚や表面形状などを測定する光学測定システムが知られている。このような光学測定システムは、分光干渉式とも称される。
【0003】
光学的な測定における測定精度を低下させる要因は複数存在する。そのため、測定精度を向上させるためのさまざまな工夫が提案されている。
【0004】
例えば、特開2002-039955号公報(特許文献1)は、サンプル測定中、リファレンスとなる基準反射物を測定光路にセットすることなくリファレンス光量の推定ができ、もって測定精度を上げることができる光学自動測定方法を開示する。
【0005】
また、特開2011-117777号公報(特許文献2)は、経時変化や温度変化などによって波長と検出位置との対応関係が変化した場合であっても、検出位置と波長との対応関係を適切に取得することができる校正装置などを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-039955号公報
【特許文献2】特開2011-117777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
分光検出器は、温度変化の影響を受けて検出結果に誤差を生じ得る。上述の特許文献1に開示される光学自動測定方法は、温度変化の影響について考慮するものではない。また、上述の特許文献2に開示される校正装置は、経時変化や温度変化などの影響を考慮するものであるが、輝線を含む入射光を用いた校正に向けられており、測定中に生じる温度変化の影響を補正等するようなことはできない。
【0008】
本発明の一つの目的は、分光検出器を含む光学測定システムにおいて、分光検出器などに生じる温度変化などによる誤差を低減する手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面に従う光学測定システムは、光源と、分光検出器と、温度変化に対して特性を維持するように構成された基準試料と、光源からの光を測定対象の試料に照射するとともに、試料で生じる光を分光検出器へ導く第1の光学経路と、光源からの光を基準試料に照射するとともに、基準試料で生じる光を分光検出器へ導く第2の光学経路とを切り換える切換機構と、第1の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力した第1の検出結果と、第2の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力した第2の検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、第2の時刻と時間的に近接した第3の時刻に、光源からの光を試料に照射して分光検出器が出力した第3の検出結果から試料の測定値を算出する算出部とを含む。
【0010】
補正処理は、第1の検出結果を基準とした第2の検出結果の変化に基づくものであってもよい。
【0011】
算出部は、分光検出器が出力した検出結果に基づいて膜厚を算出する手段と、第1の検出結果から算出された第1の膜厚に対する第2の検出結果から算出された第2の膜厚の変化率を、第3の検出結果から算出された第3の膜厚に反映することで、試料の測定値を算出する手段とを含んでいてもよい。
【0012】
算出部は、波長校正情報を参照して、分光検出器が出力した検出結果に波長を対応付ける手段と、第1の検出結果に波長を対応付けた結果と第2の検出結果に波長を対応付けた結果との差に基づいて、波長校正情報を補正する手段とを含んでいてもよい。
【0013】
基準試料の周囲には断熱構造が設けられてもよい。
基準試料は、温度依存性を実質的に無視できる材質で構成されてもよい。
【0014】
切換機構は、光源と試料および基準試料との間の光学経路上に設けられた光スイッチを含んでいてもよい。
【0015】
切換機構は、光源から試料までの光学経路、および、光源から基準試料までの光学経路のいずれか一方を選択的に遮光する光学シャッタを含んでいてもよい。
【0016】
本発明の別の局面に従う光学測定方法は、第1の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力する第1の検出結果を取得するステップを含む。基準試料は、温度変化に対して特性を維持するように構成されている。光学測定方法は、第2の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力する第2の検出結果を取得するステップと、第2の時刻と時間的に近接した第3の時刻に、光源からの光を試料に照射して分光検出器が出力した第3の検出結果を取得するステップと、第1の検出結果と第2の検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、第3の検出結果から試料の測定値を算出するステップとを含む。
【0017】
本発明のさらに別の局面に従えば、試料を測定するための測定プログラムが提供される。測定プログラムは、コンピュータに、第1の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力する第1の検出結果を取得するステップを実行させる。基準試料は、温度変化に対して特性を維持するように構成されている。測定プログラムは、コンピュータに、第2の時刻に、光源からの光を基準試料に照射して分光検出器が出力する第2の検出結果を取得するステップと、第2の時刻と時間的に近接した第3の時刻に、光源からの光を試料に照射して分光検出器が出力した第3の検出結果を取得するステップと、第1の検出結果と第2の検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、第3の検出結果から試料の測定値を算出するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のある実施の形態によれば、分光検出器を含む光学測定システムにおいて、分光検出器などに生じる温度変化などによる誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態に従う光学測定システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】
図1に示す光学測定システムの測定時の動作を説明するための図である。
【
図3】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を説明するための図である。
【
図4】本実施の形態に従う光学測定システムの構成例を示す模式図である。
【
図5】本実施の形態に従う光学測定システムの構成例を示す模式図である。
【
図6】本実施の形態に従う光学測定システムの構成例を示す模式図である。
【
図7】本実施の形態に従う光学測定システムの構成例を示す模式図である。
【
図8】本実施の形態に従う光学測定システムの構成例を示す模式図である。
【
図9】本実施の形態に従う光学測定システムに含まれる処理装置の構成例を示す模式図である。
【
図10】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を含む測定処理を実現するための機能構成の一例を示す模式図である。
【
図11】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理の実験例を示すタイムチャートである。
【
図12】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理の実験例を示すタイムチャートである。
【
図13】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を含む測定処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】本実施の形態に従う光学測定システムにおける別の補正処理を含む測定処理を実現するための機能構成の一例を示す模式図である。
【
図15】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理で用いられる干渉波形の一例を示す図である。
【
図16】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理で用いられる干渉波形の一例を示す図である。
【
図17】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理で用いられる干渉波形の一例を示す図である。
【
図18】本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理で用いられる干渉波形の一例を示す図である。
【
図19】本実施の形態に従う光学測定システムにおける別の補正処理を含む測定処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0021】
本実施の形態に従う光学測定システムの典型例として、分光干渉式の膜厚測定システムについて主として説明するが、分光検出器を用いる構成であれば、どのような光学系を採用してもよい。また、以下の説明では、測定対象の試料(後述の試料50)に光を照射してその反射光を観測する光学系(反射光観測系)を例示するが、測定対象の試料に光を照射してその透過光を観測する光学系(透過光観測系)にも当然に適用可能である。
【0022】
<A.概要>
図1は、本実施の形態に従う光学測定システム1Aの構成例を示す模式図である。
図1を参照して、光学測定システム1Aは、試料50を照射する光を発生する光源10と、試料50で生じる光(反射光または透過光)を受光する分光検出器20とを含む。
【0023】
光源10は、所定の波長範囲を有する光を発生する発光部12と、集光レンズ14と、アパーチャ16とを含む。発光部12が発生する光の波長範囲は、測定範囲や試料50の材質などに応じて任意に決定される。例えば、発光部12として、ハロゲンランプや白色LEDなどを採用してもよい。あるいは、発光部12として、近赤外域の成分を含む測定光を発生するASE(Amplified Spontaneous Emission)光源を採用してもよい。ASE光源を採用した場合には、光源10は、アイソレータやカプラなどの光学素子を介して光ファイバと接続されるため、集光レンズ14およびアパーチャ16を省略できる。
【0024】
分光検出器20は、入射する光を回折する回折格子22と、回折格子22に対応付けて配置される複数チャネルを有する受光素子24と、回折格子22に入射する光を絞るスリット26とを含む。受光素子24は、ラインセンサあるいは2次元センサなどで構成され、波長毎の強度を検出結果として出力する。すなわち、検出結果は、受光素子24の受光面の各位置における光の強度を示す。なお、回折格子22に代えて、プリズム分光器を採用してもよい。
【0025】
カプラ30の一端には、光源10および分光検出器20が接続されている。より具体的には、光源10は、コネクタ18および光ファイバ42を介して、カプラ30に接続されている。分光検出器20は、コネクタ28および光ファイバ44を介して、カプラ30に接続されている。
【0026】
カプラ30の他端には、光ファイバ46を介して、光スイッチ32の一端が接続されている。
【0027】
光スイッチ32の他端には、光ファイバ34を介して、投受光ヘッド38が接続されるとともに、光ファイバ36を介して、投受光ヘッド40が接続されている。
【0028】
光スイッチ32は、光源10と試料50および基準試料60との間の光学経路上に設けられる。より具体的には、光スイッチ32は、処理装置200などからの切換指令に従って、一端に接続された光ファイバ46と、他端に接続された光ファイバ34および光ファイバ36の一方とを光学的に接続する。
【0029】
なお、本実施の形態に従う光学測定システムを構成する光学素子としては、図示するものに限らず目的の機能を果たす任意の光学素子を採用できる。例えば、カプラ30に代えて、サーキュレータやビームスプリッタを採用してもよい。以下に説明する各実施の形態においても同様である。
【0030】
図2は、
図1に示す光学測定システム1Aの測定時の動作を説明するための図である。
図2を参照して、試料50を測定する測定モードでは、光スイッチ32において、光ファイバ46と光ファイバ34とが光学的に接続される。これによって、光源10が発生した光は、コネクタ18および光ファイバ42を介してカプラ30に入射し、さらに、光ファイバ46、光スイッチ32、光ファイバ34を通過して、投受光ヘッド38から試料50へ照射される。
【0031】
試料50に光が照射されることで生じる反射光は、投受光ヘッド38に入射した後、光ファイバ34、光スイッチ32および光ファイバ46を通過して、カプラ30に到達する。さらに、試料50からの反射光は、カプラ30において、光ファイバ44およびコネクタ28へ導かれ、分光検出器20へ入射する。
【0032】
最終的に、分光検出器20の検出結果は、処理装置200へ与えられる。処理装置200は、分光検出器20から検出結果に基づいて、試料50の膜厚などの測定値を算出する。
【0033】
本明細書において、「膜厚」は、任意の試料(または、基準試料)に含まれる特定の層の厚さを意味する。但し、試料(または、基準試料)がウェハのような均一な材質で構成されている場合には、単一の層のみを有している構造と等価であるので、測定される膜厚は試料(または、基準試料)全体の厚さを意味することになる。すなわち、本明細書において、「膜厚」は、積層構造を有する試料に含まれる各層の厚さのみを意味するのではなく、試料全体の厚さを意味することもある。
【0034】
図1および
図2に示す光学測定システム1Aにおいて、例えば、分光検出器20を含む測定系に対する温度変化の影響が生じ得る。分光干渉式を採用した光学測定システムにおいては、測定される光学距離の精度維持が重要である。すなわち、光学距離の測定結果が変動することで、出力される膜厚などの測定値に誤差が生じることになる。このような測定される光学距離への影響は、典型的には、分光検出器20を含む測定系の設置環境における温度変化の影響が大きい。
【0035】
そこで、本実施の形態に従う光学測定システムにおいては、分光検出器20を含む測定系に生じる温度変化の影響を補正するために、基準試料60(あるいは、後述の基準試料60S)を用いる。
【0036】
図1および
図2に示す光学測定システム1Aにおいては、基準試料60は、投受光ヘッド40から光が照射されるように配置される。さらに、基準試料60の周囲には、温度変化の影響を可能な限り低減するための断熱構造62が設けられている。断熱構造62を設けることで、基準試料60に対する温度変化の影響を無視できる程度に抑制する。すなわち、光学測定システム1Aの環境温度が変化しても、基準試料60は、初期状態(基準状態)における膜厚などの特性を維持する。このように、基準試料60は、温度変化に対して特性を維持するように構成される。光学測定システム1Aは、基準試料60についての検出結果を用いて、温度変化の影響を低減するための補正処理を実行する。
【0037】
基準試料60を測定する補正モードでは、光スイッチ32において、光ファイバ46と光ファイバ36とが光学的に接続される。これによって、光源10が発生した光は、光ファイバ34および投受光ヘッド38ではなく、光ファイバ36および投受光ヘッド40を通過することになる。そして、光源10からの光は、投受光ヘッド40から基準試料60へ照射される。
【0038】
基準試料60に光が照射されることで生じる反射光は、投受光ヘッド40に入射した後、光ファイバ36、光スイッチ32および光ファイバ46を通過して、カプラ30に到達する。さらに、光源10からの反射光は、カプラ30において、光ファイバ44およびコネクタ28へ導かれ、分光検出器20へ入射する。基準試料60からの光から取得された検出結果は、処理装置200へ与えられる。処理装置200は、基準試料60についての検出結果に基づく補正処理によって、試料50の膜厚などの測定値を補正する。
【0039】
図2に示すように、光学測定システム1Aは、光源10からの光を測定対象の試料50に照射するとともに、試料50で生じる光を分光検出器20へ導く測定モードでの光学経路(第1の光学経路)と、光源10からの光を基準試料60に照射するとともに、基準試料60で生じる光を分光検出器20へ導く補正モードでの光学経路(第2の光学経路)とを切り換える切換機構を有している。
【0040】
図3は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を説明するための図である。
図3を参照して、光学測定システムは、測定開始前に設定される基準時刻t0において、基準試料60を測定する(ステップS1:基準試料測定)。基準試料60の測定によって、基準時刻t0における検出結果251を取得できる。
【0041】
その後、光学測定システムは、任意の測定時刻t1において、基準試料60を測定する(ステップS2:基準試料測定)とともに、任意の測定時刻t1’(=t1±Δt)において、試料50を測定する(ステップS3:試料測定)。基準試料60の測定によって、測定時刻t1における検出結果252を取得でき、試料50の測定によって、測定時刻t1’における検出結果253を取得できる。なお、測定時刻t1と測定時刻t1’との間は、時間的に近接しているとする。
【0042】
本明細書において、「時間的に近接」とは、温度が時間的に変化し得る任意の環境において、環境温度の差が無視できる時間範囲内であることを意味する。すなわち、「時間的に近接」する時間範囲内において取得された、基準試料60についての検出結果および試料50についての検出結果は、実質的に同一の環境温度における検出結果とみなすことができる。そのため、基準試料60についての検出結果を用いることで、基準試料60についての検出結果に含まれる温度変化の影響(すなわち、試料50についての検出結果に含まれる温度変化の影響)を補正できる。
【0043】
光学測定システムは、基準時刻t0における基準試料60についての検出結果251と、測定時刻t1における基準試料60についての検出結果252とに基づく補正処理250によって、測定時刻t1’における試料50についての検出結果253から温度変化の影響を低減した上で、試料50の膜厚などの測定値254を算出する。補正処理250は、基準時刻t0における検出結果251を基準とした測定時刻t1における検出結果252の変化に基づいて実行される。
【0044】
このように、本実施の形態に従う光学測定システムは、基準時刻t0(第1の時刻)に光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力した検出結果251(第1の検出結果)と、測定時刻t1(第2の時刻)に光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力した検出結果252(第2の検出結果)との変化に基づく補正処理250を実行することで、測定時刻t1(第2の時刻)と時間的に近接した測定時刻t1’(第3の時刻)に光源10からの光を試料50に照射して分光検出器20が出力した検出結果253(第3の検出結果)から試料50の測定値254を算出する。
【0045】
本実施の形態に従う光学測定システムは、温度変化の影響を無視できる程度に抑制された環境(例えば、断熱構造62)に配置された基準試料60、および/または、温度変化の影響を無視できる材質で構成された基準試料60S(後述する)を用いて、試料50についての検出結果を補正することで、分光検出器20を含む測定系に対する温度変化の影響を相殺し、試料50の測定精度を向上させる。
【0046】
なお、基準試料60を配置する位置は、測定装置の内部であってもよいし、外部であってもよい。
【0047】
図3においては、任意の測定時刻t1において基準試料60を測定した後に、試料50を測定する例を示したが、時間的に近接していれば、試料50および基準試料60の測定順序はいずれであってもよい。
【0048】
さらに、任意の測定時刻t1において基準試料60を測定して取得された検出結果252を用いて、複数の試料50を測定して取得された複数の検出結果253を補正処理するようにしてもよい。例えば、所定の測定回数毎に、あるいは、所定の測定期間毎に、補正処理250に用いる基準試料60を測定するようにしてもよい。
【0049】
さらにあるいは、基準試料60を複数回測定して取得された複数の検出結果252を用いて補正処理250を行ってもよい。
【0050】
環境温度の変化による測定値の相対的な変化を補正することで足りる場合には、測定開始前などの任意の時点を基準時刻t0として設定すればよい。一方、環境温度の変化による測定値の絶対的な変化を補正する必要がある場合には、分光検出器20を波長校正した環境と同様の環境に維持するとともに、分光検出器20が安定した状態において、検出結果251(第1の検出結果)を取得する必要がある。すなわち、基準時刻t0は、分光検出器20を波長校正した環境と同様の環境に維持するとともに、分光検出器20が安定した状態の任意の時刻に設定される。
【0051】
上述したように、本実施の形態に従う光学測定システムは、温度変化の影響を無視できる状態で取得された基準試料60(あるいは、基準試料60S)についての検出結果を用いて、分光検出器20を含む測定系に対する温度変化の影響を相殺して、試料50の測定精度を向上する。なお、補正処理250の詳細については後述する。
【0052】
<B.光学測定システムの構成例>
次に、
図1に示す光学測定システム1Aに加えて、本実施の形態に従う光学測定システムのいくつかの構成例について説明する。
【0053】
(b1:光学測定システム1B)
図4は、本実施の形態に従う光学測定システム1Bの構成例を示す模式図である。
図4に示す光学測定システム1Bは、
図1に示す光学測定システム1Aに比較して、基準試料60が基準試料60Sに変更されるとともに、断熱構造62が取り除かれている。
【0054】
基準試料60Sは、温度変化に対して特性を維持するように構成される。より具体的には、基準試料60Sは、試料50の測定中に生じ得る温度変化の影響を無視できる材質で構成されている。すなわち、基準試料60Sは、温度依存性を実質的に無視できる材質で構成され、特性についての温度依存性が極めて小さい。そのため、
図1に示すような断熱構造62を設ける必要性がない。
【0055】
光学測定システム1Bの環境温度が変化しても、基準試料60Sは、初期状態(基準状態)における膜厚などの特性を維持する。光学測定システム1Bは、基準試料60Sについての検出結果を用いて、温度変化の影響を低減するための補正処理を実行する。
【0056】
光学測定システム1Bのその他の構成および処理は、
図1に示す光学測定システム1Aと同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0057】
(b2:光学測定システム1C)
図5は、本実施の形態に従う光学測定システム1Cの構成例を示す模式図である。
図5に示す光学測定システム1Cは、
図1に示す光学測定システム1Aに比較して、光ファイバ34および投受光ヘッド38の組が複数配置されている。すなわち、光スイッチ32の他端には、光ファイバ34-1を介して、試料50-1に光を照射するための投受光ヘッド38-1が接続されるとともに、光ファイバ34-2を介して、試料50-2に光を照射するための投受光ヘッド38-2が接続されている。
【0058】
光スイッチ32は、投受光ヘッド38-1,38-2および投受光ヘッド40のうち任意の一つと光ファイバ46とを光学的に接続できるようになっている。
【0059】
光学測定システム1Cのその他の構成および処理は、
図1に示す光学測定システム1Aと同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0060】
(b3:光学測定システム1D)
図6は、本実施の形態に従う光学測定システム1Dの構成例を示す模式図である。
図6に示す光学測定システム1Dは、
図1に示す光学測定システム1Aに相当する構成を複数有しており、当該複数の光学測定システムの間で基準試料60を共通的に使用する。
【0061】
より具体的には、光学測定システム1Dは、複数の光ファイバ36が接続される光スイッチ33を含んでいる。光スイッチ33についても光源10と試料50および基準試料60との間の光学経路上に設けられる。より具体的には、光スイッチ33は、処理装置200などからの切換指令に従って、一端に接続された複数の光ファイバ36のうち一つと、光ファイバ37とを光学的に接続する。すなわち、複数の光ファイバ36のうち選択された一つの光ファイバ36が基準試料60を測定することができる。
【0062】
光学測定システム1Dのその他の構成および処理は、
図1に示す光学測定システム1Aと同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0063】
(b4:光学測定システム1A~1Dの変形例)
上述の
図1および
図4~
図6に示す光学測定システムの構成に限らず、以下のような変形例を採用してもよい。
【0064】
上述の
図5および
図6には、基準試料60および断熱構造62を用いる構成を例示するが、
図4に示すような基準試料60Sを採用してもよい。
【0065】
上述の
図5には、試料50に光を照射する投受光ヘッド38を2つ含む構成例を示すが、より多くの投受光ヘッド38を配置してもよい。
【0066】
上述の
図6には、光源10と分光検出器20とからなる組を2つ含む構成例を示すが、より多くの光源10と分光検出器20とからなる組を配置してもよい。あるいは、光源10と分光検出器20とからなる組ではなく、光源10のみ、または、分光検出器20のみを複数配置してもよい。
【0067】
上述の
図6に示す構成においても、
図5に示す光学測定システム1Cのように、試料50に光を照射する投受光ヘッド38を複数配置してもよい。
【0068】
いずれの構成においても、複数の光源10または分光検出器20が基準試料60または基準試料60Sを測定するための構成を共用できるようにすることで、構成を簡素化するとともに、コストを低減できる。
【0069】
(b5:光学測定システム1E)
図7は、本実施の形態に従う光学測定システム1Eの構成例を示す模式図である。
図7に示す光学測定システム1Eは、光源10および分光検出器20に加えて、測定筐体80を含む。
【0070】
光源10は、コネクタ18、光ファイバ42およびコネクタ96を介して、測定筐体80の一面に接続されている。分光検出器20は、コネクタ28、光ファイバ44およびコネクタ98を介して、測定筐体80の別の面に接続されている。
【0071】
測定筐体80は、測定室80Aと、基準試料室80Bとを含む。測定筐体80の測定室80Aには、コネクタ96の開口部に対応付けてアパーチャ92が設けられるとともに、コネクタ98の開口部に対応付けてアパーチャ94が設けられている。測定筐体80は、ビームスプリッタ82を含む。アパーチャ92およびアパーチャ94の各々は、ビームスプリッタ82の中心と対応する位置に配置されている。
【0072】
ビームスプリッタ82の中心を通る光軸に対応して、集光レンズ86および集光レンズ90が配置されている。集光レンズ86の焦点位置に合わせて試料50が配置されるとともに、集光レンズ90の焦点位置に合わせて基準試料60が配置される。基準試料60は、測定筐体80の基準試料室80Bに収納されている。
【0073】
測定筐体80の基準試料室80Bは、温度変化の影響を可能な限り低減するための断熱構造を採用する。すなわち、基準試料60の周囲には断熱構造が設けられている。
【0074】
ビームスプリッタ82から集光レンズ86および集光レンズ90までの光学経路上に、光学シャッタ84が設けられる。光学シャッタ84は、光源10から試料50までの光学経路、および、光源10から基準試料60までの光学経路のいずれか一方を選択的に遮光する。
【0075】
より具体的には、光学シャッタ84は、処理装置200などからの切換指令に従って、ビームスプリッタ82から集光レンズ86までの光学経路、および、ビームスプリッタ82から集光レンズ90までの光学経路のいずれか一方を遮光する。すなわち、光学シャッタ84は、コネクタ96およびアパーチャ92を介して照射される光源10からの光を、試料50および基準試料60のいずれか一方へ導く。
【0076】
試料50を測定する測定モードでは、光学シャッタ84が集光レンズ90側へ駆動される。これによって、光源10が発生した光は、コネクタ18、光ファイバ42およびコネクタ96を介して測定筐体80に入射し、さらに、ビームスプリッタ82で反射されて集光レンズ86へ導かれる。そして、光源10からの光は、集光レンズ86で集光されて試料50へ照射される。
【0077】
試料50に光が照射されることで生じる反射光は、集光レンズ86で収束光に変換された後、ビームスプリッタ82およびアパーチャ94、コネクタ98、光ファイバ44およびコネクタ28を通過して、分光検出器20へ入射する。試料50からの光から取得された検出結果は、処理装置200へ与えられる。
【0078】
一方、基準試料60を測定する補正モードでは、光学シャッタ84が集光レンズ86側へ駆動される。これによって、光源10が発生した光は、コネクタ18、光ファイバ42およびコネクタ99を介して測定筐体80に入射し、さらに、ビームスプリッタ82を通過して集光レンズ90へ導かれる。そして、光源10からの光は、集光レンズ90で集光されて基準試料60へ照射される。
【0079】
基準試料60に光が照射されることで生じる反射光は、集光レンズ90で収束光に変換された後、ビームスプリッタ82で反射された、さらにアパーチャ94、コネクタ98、光ファイバ44およびコネクタ28を通過して、分光検出器20へ入射する。基準試料60からの光から取得された検出結果は、処理装置200へ与えられる。
【0080】
処理装置200は、後述するような処理によって、基準試料60についての検出結果に基づいて、試料50の膜厚などの測定値を補正する。
【0081】
(b6:光学測定システム1F)
図8は、本実施の形態に従う光学測定システム1Fの構成例を示す模式図である。
図8に示す光学測定システム1Fは、
図7に示す光学測定システム1Eに比較して、基準試料60が基準試料60Sに変更されるとともに、断熱構造を採用した基準試料室80Bに代えて、断熱構造が省略された基準試料室80Cが設けられている。
【0082】
基準試料60Sは、試料50の測定中に生じ得る温度変化の影響を無視できる材質で構成されている。すなわち、基準試料60Sの温度依存性が極めて小さい。そのため、
図7に示すような断熱構造を採用して基準試料室80Bを設ける必要性がない。光学測定システム1Fの環境温度が変化しても、基準試料60Sは、初期状態(基準状態)における膜厚などの特性を維持する。
【0083】
光学測定システム1Fのその他の構成および処理は、
図7に示す光学測定システム1Eと同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0084】
(b7:光学測定システム1Eおよび1Fの変形例)
上述の
図7および
図8に示す光学測定システムの構成に限らず、以下のような変形例を採用してもよい。
【0085】
上述の
図7および
図8に示す光学測定システムにおいては、測定筐体80と光源10との間、および、測定筐体80と分光検出器20との間は、それぞれ光ファイバを介して接続されているが、光ファイバのいずれか一方または両方を省略して、測定筐体80と光源10とを直接接続、あるいは、測定筐体80と分光検出器20とを直接接続してもよい。
【0086】
(b8:断熱構造についての変形例)
断熱構造に用いる断熱材としては、任意の材質を用いることができる。要求される断熱性能、重量、体積、コストなどを考慮して、適宜設計されてもよい。
【0087】
図2、
図5、
図6および
図7などに示される断熱構造に加えて、あるいは、断熱構造に代えて、温度調整機構を採用してもよい。温度調整機構としては、例えば、ペルチェ素子を用いる構成やヒートポンプを用いる構成などの任意の構成を採用できる。
【0088】
<C.処理装置200の構成例>
図9は、本実施の形態に従う光学測定システムに含まれる処理装置200の構成例を示す模式図である。
図9を参照して、処理装置200は、プロセッサ202と、主メモリ204と、入力部206と、表示部208と、ストレージ210と、ローカル通信インターフェイス220と、上位通信インターフェイス222と、メディアドライブ224とを含む。
【0089】
プロセッサ202は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理部であり、ストレージ210に格納されている1または複数のプログラムを主メモリ204に読み出して実行する。主メモリ204は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)といった揮発性メモリであり、プロセッサ202がプログラムを実行するためのワーキングメモリとして機能する。
【0090】
入力部206は、キーボードやマウスなどを含み、ユーザからの操作を受け付ける。表示部208は、プロセッサ202によるプログラムの実行結果などをユーザへ出力する。
【0091】
ストレージ210は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなり、各種プログラムやデータを格納する。より具体的には、ストレージ210は、オペレーティングシステム212(OS:Operating System)と、測定プログラム214と、検出結果216と、測定結果218とを保持する。
【0092】
オペレーティングシステム212は、プロセッサ202がプログラムを実行する環境を提供する。測定プログラム214は、プロセッサ202によって実行されることで、本実施の形態に従う光学測定方法などを実現する。検出結果216は、分光検出器20から出力されるデータを含む。測定結果218は、測定プログラム214の実行によって取得される1または複数の測定値を含む。
【0093】
ローカル通信インターフェイス220は、処理装置200と分光検出器20との間でのデータ伝送を仲介する。
【0094】
上位通信インターフェイス222は、製造装置などの上位装置との間でのデータ伝送を仲介する。例えば、上位通信インターフェイス222は、上位装置に対して与えられたユーザからの操作を受け付けるとともに、プロセッサ202によるプログラムの実行結果などを上位装置を介してユーザへ出力することもできる。
【0095】
メディアドライブ224は、プロセッサ202で実行されるプログラムなどを格納した記録媒体226(例えば、光学ディスクなど)から必要なデータを読出して、ストレージ210に格納する。なお、処理装置200において実行される測定プログラム214などは、記録媒体226などを介してインストールされてもよいし、上位通信インターフェイス222などを介してサーバ装置からダウンロードされてもよい。
【0096】
測定プログラム214は、オペレーティングシステム212の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼び出して処理を実行させるものであってもよい。そのような場合、当該モジュールを含まない測定プログラム214についても本発明の技術的範囲に含まれる。測定プログラム214は、他のプログラムの一部に組み込まれて提供されるものであってもよい。
【0097】
処理装置200のプロセッサ202がプログラムを実行することで提供される機能の全部または一部をハードワイヤードロジック回路(例えば、FPGA(field-programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)など)によって実現してもよい。
【0098】
処理装置200が必要なすべての処理を実行するのではなく、複数の処理装置で処理を分担してもよいし、一部の処理を分光検出器20が担当するようにしてもよい。さらに、図示しないネットワーク上のコンピューティングリソース(いわゆるクラウド)が必要な処理の全部または一部を実現するようにしてもよい。
【0099】
<D.補正処理を含む測定処理:測定値の補正>
次に、本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を含む測定処理の一例について説明する。以下に説明する補正処理の例では、試料50の膜厚(測定値)そのものを補正する。
【0100】
(d1:機能構成)
図10は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を含む測定処理を実現するための機能構成の一例を示す模式図である。
図10に示す各モジュールは、典型的には、処理装置200のプロセッサ202が測定プログラム214を実行することで実現されてもよい。なお、
図10に示す機能構成を実現するハードウェアは各時代に応じて適切なものが選択される。
【0101】
図10を参照して、処理装置200は、測定処理に係る機能構成として、前処理モジュール260と、膜厚算出モジュール264と、補正モジュール266とを含む。
【0102】
前処理モジュール260は、波長校正テーブル262を有しており、分光検出器20からの検出結果に波長を対応付けて、スペクトル(波長毎の強度)として出力する。
【0103】
膜厚算出モジュール264は、分光検出器20が出力した検出結果に基づいて膜厚を算出する。より具体的には、膜厚算出モジュール264は、前処理モジュール260から出力されるスペクトルに基づいて、試料50の膜厚を算出する。試料50の膜厚の算出方法は、スペクトルをフーリエ変換して算出されるパワースペクトルを用いる方法を採用してもよいし、予め用意されたモデルとのフィッティングを用いる方法を採用してもよい。
【0104】
補正モジュール266は、膜厚算出モジュール264から出力される膜厚に対して、温度変化の影響を低減するための補正処理を行う。より具体的には、補正モジュール266は、補正係数算出モジュール268と、除算部270とを含む。
【0105】
補正係数算出モジュール268は、基準時刻t0において、基準試料60を測定して取得された膜厚ds0(基準試料膜厚256)と、試料50の膜厚を測定した測定時刻t1’と時間的に近接した任意の測定時刻t1において、基準試料60を測定して取得された膜厚ds1(基準試料膜厚257)とに基づいて、補正係数Kを算出する。
【0106】
例えば、基準時刻t0において取得された基準試料60の膜厚ds0(基準試料膜厚256)に対する、任意の測定時刻t1において取得された基準試料60の膜厚ds1(基準試料膜厚257)の比率を補正係数Kとして算出することができる。基準試料膜厚256(膜厚ds0)に対する基準試料膜厚257(膜厚ds1)の変化率を補正係数Kとして用いることができる。すなわち、補正係数K=ds1/ds0として算出できる。
【0107】
上述したように、測定値の相対的な変化および絶対的な変化のうちいずれを補正する必要があるのかに応じて、膜厚ds0を取得する基準時刻t0は、測定開始前などの任意の時刻、あるいは、分光検出器20を波長校正した環境と同様の環境に維持するとともに、分光検出器20が安定した状態の任意の時刻に設定される。
【0108】
除算部270は、膜厚算出モジュール264から出力される膜厚を補正係数Kで除して、補正後の膜厚を算出する。すなわち、測定時刻t1’において取得された試料50の膜厚d1は、膜厚(補正後)d1a=d1/K=d1/(ds1/ds0)=d1×(ds0/ds1)に従って補正される。
【0109】
このように、補正モジュール266は、基準試料60の測定値の変化に基づいて、試料50の測定値を補正する。すなわち、補正モジュール266は、基準時刻t0において取得された基準試料60の検出結果251から算出された膜厚ds0(第1の膜厚)に対する、測定時刻t1において取得された基準試料60の検出結果252から算出された膜厚ds1(第2の膜厚)の変化率(補正係数K)を、測定時刻t1’において取得された試料50の検出結果253から算出された膜厚d1(第3の膜厚)に反映することで、試料50の測定値(膜厚(補正後)d1a)を算出する。
【0110】
補正モジュール266は、上述した補正処理の実行に応じて、基準試料膜厚257(膜厚ds1)を取得するために切換指令を出力する。上述したように、切換指令に応じて、光源10からの光が基準試料60へ導かれる。
【0111】
(d2:実験例)
本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理の実験例について説明する。
【0112】
図11および
図12は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理の実験例を示すタイムチャートである。
図11および
図12には、光学測定システムの環境温度を5℃変化させた場合の結果の一例を示す。
【0113】
図11(A)には、光学測定システムが同一の試料50を繰り返し測定して取得された測定値(試料膜厚)の時間変化を示す。
図11(B)には、光学測定システムが同一の基準試料60を繰り返し測定して取得された測定値(基準試料膜厚)の時間変化を示す。
【0114】
図11(A)および
図11(B)に示すように、経過時間が8~11[h]の区間で環境温度が大きく変化しており、これに伴って、同一の試料50および基準試料60の測定値であっても変化していることが分かる。より具体的には、
図11(A)の例では、0.08[μm]を超える変動が発生している。
【0115】
図12(A)には、初期状態(経過時間が0[hr])において取得された基準試料60の測定値(
図10の膜厚ds0に相当)を基準として、その後に取得された基準試料60の測定値(
図10の膜厚ds1に相当)の比率(基準試料膜厚変化率:補正係数Kに相当)を示す。
【0116】
図12(B)には、
図11(A)に示される試料50の測定値(試料膜厚)を
図12(A)に示される基準試料膜厚変化率の対応する時刻の値で除した結果を示す。
【0117】
図11(A)に示されるように、環境温度の変化によって、試料50の測定値には誤差が発生するが、本実施の形態に従う補正処理を適用することで、発生する誤差を低減できていることが分かる。
【0118】
(d3:処理手順)
図13は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を含む測定処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
図13に示す各ステップは、典型的には、処理装置200のプロセッサ202が測定プログラム214を実行することで実現されてもよい。
【0119】
図13を参照して、まず、処理装置200は、切換指令を出力して、基準試料60を測定対象に選択し(ステップS100)、分光検出器20から出力される基準試料60についての検出結果に基づいて膜厚を算出し、膜厚ds0(基準試料膜厚256)として格納する(ステップS102)。このように、処理装置200は、光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力する検出結果を取得する処理を実行する。なお、基準試料60の膜厚ds0を膜厚ds1の初期値として設定してもよい。
【0120】
続いて、処理装置200は、基準試料60の測定条件が成立したか否かを判断する(ステップS104)。基準試料60の測定条件は、基準試料60の膜厚ds1の測定要否を判断するための条件であり、例えば、前回の膜厚ds1の測定から所定回数の測定が実施された、あるいは、前回の膜厚ds1の測定から所定期間が経過した、などの条件を用いることができる。
【0121】
基準試料60の測定条件が成立していれば(ステップS104においてYES)、処理装置200は、切換指令を出力して、基準試料60を測定対象に選択し(ステップS106)、分光検出器20から出力される基準試料60についての検出結果に基づいて膜厚を算出し、新たな膜厚ds1(基準試料膜厚257)として更新する(ステップS108)。このように、処理装置200は、光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力する検出結果を取得する処理を実行する。
【0122】
一方、基準試料60の測定条件が成立していなければ(ステップS104においてNO)、ステップS106およびS108の処理はスキップされる。
【0123】
続いて、処理装置200は、試料50の測定条件が成立したか否かを判断する(ステップS110)。試料50の測定条件は、例えば、図示しない試料50の搬送機構などからのトリガを受信したといった条件を用いることができる。試料50の測定条件が成立していなければ(ステップS110においてNO)、ステップS110の処理が繰り返される。
【0124】
試料50の測定条件が成立すると(ステップS110においてYES)、処理装置200は、切換指令を出力して、試料50を測定対象に選択し(ステップS112)、分光検出器20から出力される試料50についての検出結果に基づいて膜厚を算出する(ステップS114)。このように、処理装置200は、基準試料60の測定時刻と時間的に近接した時刻に、光源10からの光を試料50に照射して分光検出器20が出力した検出結果を取得する処理を実行する。
【0125】
そして、処理装置200は、予め格納している膜厚ds0と現在の膜厚d1とに基づいて補正係数Kを算出し(ステップS116)、算出した補正係数Kを用いて、算出された膜厚を補正して出力する(ステップS118)。このように、処理装置200は、ステップS102において取得された検出結果とステップS108において取得された検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、ステップS114において取得された検出結果から試料50の測定値を算出する。以下、ステップS104以下の処理が繰り返される。
【0126】
以上のような処理手順によって、試料50の膜厚などの測定値が順次算出される。なお、ステップS100およびS102の処理は、光学測定システムの工場出荷段階などで実行されてもよい。
【0127】
<E.補正処理を含む測定処理:波長校正情報の補正>
次に、本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理を含む測定処理の別の一例について説明する。以下に説明する補正処理の例では、試料50のスペクトルを算出するための波長校正情報を補正する。
【0128】
(e1:機能構成)
図14は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける別の補正処理を含む測定処理を実現するための機能構成の一例を示す模式図である。
図14に示す各モジュールは、典型的には、処理装置200のプロセッサ202が測定プログラム214を実行することで実現されてもよい。なお、
図14に示す機能構成を実現するハードウェアは各時代に応じて適切なものが選択される。
【0129】
図14を参照して、処理装置200は、測定処理に係る機能構成として、前処理モジュール260と、膜厚算出モジュール264と、波長校正補正モジュール272とを含む。
【0130】
前処理モジュール260は、波長校正テーブル262および補正関数263を有している。補正関数263は、予め用意された波長校正テーブル262の特性を補正するための関数である。以下の説明では、波長校正テーブル262および補正関数263を「波長校正情報」とも総称する。このように、前処理モジュール260は、波長校正情報を参照して、分光検出器20が出力した検出結果に波長を対応付けて、スペクトルを出力する。
【0131】
膜厚算出モジュール264は、
図10に示す膜厚算出モジュール264と同様である。
波長校正補正モジュール272は、前処理モジュール260が参照する波長校正情報を温度変化の影響を低減するように補正する。より具体的には、波長校正補正モジュール272は、基準時刻t0において、基準試料60を測定して取得された基準干渉波形λs0(基準試料スペクトル276)と、補正対象の膜厚を測定した時刻と時間的に近接した任意の測定時刻t1において、基準試料60を測定して取得された基準干渉波形λs1(基準試料スペクトル277)とに基づいて、補正関数263を算出あるいは更新する。以下、説明の便宜上、前処理モジュール260が出力するスペクトルを干渉波形あるいは基準干渉波形とも称す。
【0132】
波長校正情報を補正するためには、波長校正テーブル262を決定した際の基準干渉波形λs0(基準試料スペクトル276)を取得しておく必要がある。そのため、基準時刻t0は、分光検出器20を波長校正した時点に設定されることが好ましい。この場合には、分光検出器20の波長校正とともに、基準試料60の測定を行う必要がある。
【0133】
あるいは、基準時刻t0は、分光検出器20の波長校正後であって、当該波長校正した環境と同様の環境に維持されるとともに、分光検出器20が安定した状態にある任意の時点に設定されてもよい。このような環境において基準試料60を測定して取得される基準干渉波形λs0(基準試料スペクトル276)は、波長校正時に取得されるものと実質的に同一であるとみなすことができる。
【0134】
このように、波長校正補正モジュール272は、基準時刻t0(第1の時刻)に光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力した検出結果251(第1の検出結果)に波長を対応付けて得られる基準干渉波形λs0(基準試料スペクトル276)と、測定時刻t1(第2の時刻)に光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力した検出結果252(第2の検出結果)に波長を対応付けて得られる基準干渉波形λs1(基準試料スペクトル277)との差に基づいて、波長校正情報(補正関数263および/または波長校正テーブル262)を補正する。
【0135】
波長校正補正モジュール272は、上述した補正処理の実行に応じて、基準干渉波形λs1(基準試料スペクトル277)を取得するために切換指令を出力する。上述したように、切換指令に応じて、光源10からの光が基準試料60へ導かれる。
【0136】
このように、波長校正補正モジュール272は、基準試料60についての検出結果の変化に基づいて、試料50の測定値を補正する。
【0137】
以下、波長校正補正モジュール272が波長校正情報を補正する処理についてより詳細に説明する。
【0138】
図15~
図18は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける補正処理で用いられる干渉波形の一例を示す図である。なお、
図15~
図18には、同一の試料50および基準試料60を測定した結果を示す。
【0139】
図15(A)には、基準時刻t0において、基準試料60を測定して取得された基準干渉波形λs0(基準試料スペクトル276)の一例を示す。また、
図15(B)には、基準時刻t0と時間的に近接した測定時刻t0’において、試料50を測定して取得された干渉波形λ0の一例を示す。
【0140】
図16(A)には、任意の測定時刻t1において、基準試料60を測定して取得された基準干渉波形λs1(基準試料スペクトル277)の一例を示す。また、
図16(B)には、測定時刻t1と時間的に近接した測定時刻t1’において、試料50を測定して取得された干渉波形λ1の一例を示す。
【0141】
図17(A)には、
図15(A)に示す基準干渉波形λs0と
図16(A)に示す基準干渉波形λs1とを重ねた波形を示し、
図17(B)には、
図15(B)に示す干渉波形λ0と
図16(B)に示す干渉波形λ1とを重ねた波形を示す。
【0142】
図17(A)に示すように、分光検出器20の環境温度が変化することで、回折格子22と受光素子24との位置関係、および、回折格子22自体に変化が生じて、分光検出器20の検出結果と波長との対応関係にズレが生じ得る。
【0143】
一例として、
図15(B)に示される干渉波形λ0から算出される試料50の膜厚は、100.000955[μm]であるのに対して、
図16(B)に示される干渉波形λ1から算出される試料50の膜厚は、101.276985[μm]となる。すなわち、干渉波形のズレによって、約1.27[μm]の誤差が生じることになる。
【0144】
波長校正補正モジュール272は、基準時刻t0において取得された基準干渉波形λs0と、測定時刻t1において取得された基準干渉波形λs1とが一致するように、波長校正情報(実体としては、補正関数263)を補正する。
【0145】
波長校正情報の補正方法としては、例えば、基準干渉波形λs0に現れる複数のピークの波長位置、および、基準干渉波形λs1に現れる複数のピークの波長位置を抽出し、抽出した波長位置が一致するように、多項数近似式の係数を決定する。決定された多項数近似式を、波長校正テーブル262を補正するための補正関数263として決定する。
【0146】
波長位置を一致させるための計算方法として、複数のピークの波長位置についての重心を計算するようにしてもよい。また、抽出するピークは、近接する所定数(例えば、3個)であってもよいし、離散的に存在する所定数であってもよいし、すべてのピークを抽出するようにしてもよい。さらに、多項数近似式ではなく、任意の補正関数を採用できる。
【0147】
図18(A)には、
図17(A)に示される基準干渉波形λs0および基準干渉波形λs1から算出された波長校正テーブル262を用いて出力された、試料50についての干渉波形λ1a(干渉波形λ1を補正した結果)を示す。なお、
図17(A)に示される干渉波形λ1aから算出される試料50の膜厚は、100.034616[μm]となり、誤差が大きく低減されていることが分かる。
【0148】
図18(B)には、
図18(A)に示す測定時刻t1において取得された干渉波形λ1aと、
図15(B)に示す測定時刻t0’において取得された干渉波形λ0とを重ねた波形を示す。同一の試料50を測定した結果であるので、測定時刻に依らず同一の結果を示すのが理想であるが、
図18(B)に示すように、干渉波形λ1aと干渉波形λ0とはほぼ同一の波形を示していることが分かる。
【0149】
上述したように、環境温度の変化によって、分光検出器20の検出結果と波長との対応関係にズレが生じ得るが、本実施の形態に従う補正処理を適用することで、発生する誤差を低減できていることが分かる。
【0150】
なお、上述の説明では、波長校正テーブル262そのものではなく、補正関数263を補正する処理例を示すが、波長校正テーブル262に補正関数263を反映して、波長校正テーブル262そのものを更新するようにしてもよい。
【0151】
(e2:処理手順)
図19は、本実施の形態に従う光学測定システムにおける別の補正処理を含む測定処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
図19に示す各ステップは、典型的には、処理装置200のプロセッサ202が測定プログラム214を実行することで実現されてもよい。
【0152】
図19を参照して、まず、処理装置200は、切換指令を出力して、基準試料60を測定対象に選択し(ステップS200)、分光検出器20から出力される基準試料60についての検出結果から算出されるスペクトルを基準干渉波形λs0(基準試料スペクトル276)として格納する(ステップS202)。このように、処理装置200は、光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力する検出結果を取得する処理を実行する。
【0153】
なお、波長校正テーブル262については、事前の校正処理により予め用意されている。また、基準試料60の基準干渉波形λs0を基準干渉波形λs1(基準試料スペクトル277)の初期値として設定してもよい。
【0154】
続いて、処理装置200は、基準試料60の測定条件が成立したか否かを判断する(ステップS204)。基準試料60の測定条件は、補正関数263の更新要否を判断するための条件であり、例えば、前回の補正関数263の算出から所定回数の測定が実施された、あるいは、前回の補正関数263の算出から所定期間が経過した、などの条件を用いることができる。
【0155】
基準試料60の測定条件が成立していれば(ステップS204においてYES)、処理装置200は、切換指令を出力して、基準試料60を測定対象に選択し(ステップS206)、分光検出器20から出力される基準試料60についての検出結果から算出されるスペクトルを基準干渉波形λs1(基準試料スペクトル277)として格納する(ステップS208)。このように、処理装置200は、光源10からの光を基準試料60に照射して分光検出器20が出力する検出結果を取得する処理を実行する。そして、処理装置200は、基準干渉波形λs0(基準試料スペクトル276)と基準干渉波形λs1(基準試料スペクトル277)とに基づいて、補正関数263を更新する(ステップS210)。
【0156】
一方、基準試料60の測定条件が成立していなければ(ステップS204においてNO)、ステップS206~S210の処理はスキップされる。
【0157】
続いて、処理装置200は、試料50の測定条件が成立したか否かを判断する(ステップS212)。試料50の測定条件は、例えば、図示しない試料50の搬送機構などからのトリガを受信したといった条件を用いることができる。試料50の測定条件が成立していなければ(ステップS212においてNO)、ステップS212の処理が繰り返される。
【0158】
試料50の測定条件が成立すると(ステップS212においてYES)、処理装置200は、切換指令を出力して、試料50を測定対象に選択し(ステップS214)、分光検出器20から出力される試料50についての検出結果に基づいて膜厚を算出して出力する(ステップS216)。このとき、補正関数263を用いて波長校正テーブル262が補正された上で、干渉波形λ1が算出される。このように、処理装置200は、基準試料60の測定時刻と時間的に近接した時刻に、光源10からの光を試料50に照射して分光検出器20が出力した検出結果を取得する処理を実行する。そして、ステップS204以下の処理が繰り返される。
【0159】
以上のような処理手順によって、試料50の膜厚などの測定値が順次算出される。上述したように、処理装置200は、ステップS202において取得された検出結果とステップS208において取得された検出結果との変化に基づく補正処理を実行することで、ステップS216において取得された検出結果から試料50の測定値を算出する。
【0160】
なお、ステップS200およびS202の処理は、光学測定システムの工場出荷段階などで実行されてもよい。
【0161】
<F.まとめ>
本実施の形態に従う光学測定装置は、温度変化に対して特性を維持するように構成された基準試料60についての検出結果に生じる変化に基づいて、分光検出器20を含む測定系に対する温度変化の影響を推定および補正する。これによって、比較的長時間に亘り測定する場合や、環境温度が比較的大きく変化するような設置環境に配置された場合であっても、温度変化の測定に対する影響を抑制して誤差を低減できる。
【0162】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
1A,1B,1C,1D,1E,1F 光学測定システム、10 光源、12 発光部、14,86,90 集光レンズ、16,92,94 アパーチャ、18,28,96,98,99 コネクタ、20 分光検出器、22 回折格子、24 受光素子、26 スリット、30 カプラ、32,33 光スイッチ、34,36,37,42,44,46 光ファイバ、38,40 投受光ヘッド、50 試料、60,60S 基準試料、62 断熱構造、80 測定筐体、80A 測定室、80B,80C 基準試料室、82 ビームスプリッタ、84 光学シャッタ、200 処理装置、202 プロセッサ、204 主メモリ、206 入力部、208 表示部、210 ストレージ、212 オペレーティングシステム、214 測定プログラム、216,251,252,253 検出結果、218 測定結果、220 ローカル通信インターフェイス、222 上位通信インターフェイス、224 メディアドライブ、226 記録媒体、250 補正処理、254 測定値、256,257 基準試料膜厚、260 前処理モジュール、262 波長校正テーブル、263 補正関数、264 膜厚算出モジュール、266 補正モジュール、268 補正係数算出モジュール、270 除算部、272 波長校正補正モジュール、276,277 基準試料スペクトル、K 補正係数。