IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力供給システム 図1
  • 特開-電力供給システム 図2
  • 特開-電力供給システム 図3
  • 特開-電力供給システム 図4
  • 特開-電力供給システム 図5
  • 特開-電力供給システム 図6
  • 特開-電力供給システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147226
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20220929BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220929BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20220929BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20220929BHJP
   H01M 8/04 20160101ALN20220929BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J3/38 170
H01M8/04313
H01M8/04858
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048384
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小山 義彦
【テーマコード(参考)】
5G066
5H127
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066HA15
5G066HB01
5G066HB07
5H127AB03
5H127AB11
5H127AC14
5H127DB49
5H127DB66
5H127DB69
5H127DC42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の分散型発電装置のメンテナンス実施時期を近づけ易い電力供給システムを提供する。
【解決手段】電力融通システムにおいて、システム全体を制御する全体制御装置30は、複数の分散型発電装置から運転状態値を取得する取得部31と、取得部が取得した運転状態値に基づいて、複数の分散型発電装置のそれぞれに設定された個別目標電力を、複数の分散型発電装置の相互間で入れ替える出力入替制御を実行する出力入替制御部と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設に電力を供給する電力供給システムであって、
システム全体を制御する全体制御装置を備え、
分散型発電装置と、前記分散型発電装置を制御する個別制御装置と、前記分散型発電装置により発電された電力を消費する負荷とが、複数の前記施設のそれぞれに設けられ、
複数の前記分散型発電装置のそれぞれは、対応する前記負荷が必要とする負荷電力を賄うことを目標として、発電可能電力の範囲内で設定される個別目標電力を出力するように構成され、
複数の前記個別制御装置のそれぞれは、対応する前記分散型発電装置の運転に伴って増加又は減少する運転状態値が所定のメンテナンス基準値に達すると、当該分散型発電装置のメンテナンス実施時期が到来したと判定するように構成され、
前記全体制御装置は、複数の前記分散型発電装置から前記運転状態値を取得する取得部を備え、前記取得部により取得した前記運転状態値に基づいて、複数の前記分散型発電装置のそれぞれに設定された前記個別目標電力を、複数の前記分散型発電装置の相互間で入れ替える出力入替制御を実行可能に構成されている、電力供給システム。
【請求項2】
前記全体制御装置は、前記運転状態値に基づいて複数の前記分散型発電装置の健全度を評価し、複数の前記分散型発電装置のうち前記健全度が最も低いと評価された前記分散型発電装置を前記出力入替制御の第1対象として決定し、その他の分散型発電装置を前記出力入替制御の第2対象として決定し、
前記出力入替制御では、前記第1対象である前記分散型発電装置の前記個別目標電力と、前記第2対象である前記分散型発電装置の前記個別目標電力と、を入れ替える、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記全体制御装置は、前記第1対象を除く複数の前記分散型発電装置のうち前記健全度が最も高いと評価された前記分散型発電装置を前記第2対象として決定する、請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記全体制御装置は、前記負荷電力に基づいて複数の前記分散型発電装置の負荷度を評価し、前記第1対象を除く複数の前記分散型発電装置のうち前記負荷度が最も低いと評価された前記分散型発電装置を前記第2対象として決定する、請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記全体制御装置は、前記負荷電力に基づいて複数の前記分散型発電装置の負荷度を評価し、前記健全度と前記負荷度との双方に基づいて算出される決定値により、前記第1対象を除く複数の前記分散型発電装置のうち前記第2対象となる前記分散型発電装置を決定する、請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記決定値は、前記健全度が前記負荷度よりも優位な状態で、前記健全度と前記負荷度との双方に基づいて算出される、請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記全体制御装置は、複数の前記分散型発電装置間で電力を融通させる融通制御を実行可能に構成され、
前記融通制御では、前記負荷電力が前記発電可能電力を超えることで不足電力が生じる施設が存在する場合、前記負荷電力が前記発電可能電力に満たないことで余剰電力が生じる施設に設けられる前記分散型発電装置に、融通目標電力に応じた電力を出力する旨の指令を行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記全体制御装置は、前記出力入替制御の実行前または実行後において、前記融通制御を実行する、請求項7に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設に電力を供給する電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池発電装置や太陽光発電装置などの分散型発電装置を用いた電力供給システムが普及している。分散型発電装置を備える施設では、当該施設での電力需要を、系統電源からの系統電力だけでなく、分散型発電装置での発電電力によって賄うことができる。例えば、特許第4718133号公報(特許文献1)には、分散型発電装置として燃料電池発電装置を用いた電力供給システムが開示されている。
【0003】
特許文献1の電力供給システムでは、燃料電池の特性、及び、その発電効率の特性が経時的に変動することに着目し、燃料電池が備えられた複数の施設それぞれについて、発電電力毎に発電効率を算出している。そして、複数の燃料電池の全体の発電効率が最大となるように、複数の燃料電池それぞれの発電電力量を、それぞれの発電効率に基づいて制御している。これにより、特許文献1の電力供給システムでは、各燃料電池の発電効率を向上させつつ、複数の施設間で電力を融通できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4718133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、燃料電池は、定期的なメンテナンスが行われる。燃料電池の運転(使用)に伴って増加又は減少する値が、メンテナンス実施時期を決める基準となる。この基準として、例えば、燃料電池の運転に伴って増加する累積発電電力量が挙げられる。上述のように、特許文献1の電力供給システムでは、燃料電池が発電した電力を複数の施設間で融通できるようになっているが、この場合、電力を融通するためにより多くの発電を行った燃料電池の累積発電電力量が、電力の融通を行っていない燃料電池の累積発電電力量よりも多くなり易い。従って、電力の融通をより多く行った燃料電池のメンテナンス実施時期が早期におとずれることになり、複数の燃料電池のメンテナンス実施時期にばらつきが生じ得る。また、このようなメンテナンス実施時期のばらつきは、電力の融通が行われるか否かに関わらず、複数の施設に電力を供給する電力供給システムにおいて生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、複数の分散型発電装置のメンテナンス実施時期を近づけ易い電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、複数の施設に電力を供給する電力供給システムの特徴構成は、
システム全体を制御する全体制御装置を備え、
分散型発電装置と、前記分散型発電装置を制御する個別制御装置と、前記分散型発電装置により発電された電力を消費する負荷とが、複数の前記施設のそれぞれに設けられ、
複数の前記分散型発電装置のそれぞれは、対応する前記負荷が必要とする負荷電力を賄うことを目標として、発電可能電力の範囲内で設定される個別目標電力を出力するように構成され、
複数の前記個別制御装置のそれぞれは、対応する前記分散型発電装置の運転に伴って増加又は減少する運転状態値が所定のメンテナンス基準値に達すると、当該分散型発電装置のメンテナンス実施時期が到来したと判定するように構成され、
前記全体制御装置は、複数の前記分散型発電装置から前記運転状態値を取得する取得部を備え、前記取得部により取得した前記運転状態値に基づいて、複数の前記分散型発電装置のそれぞれに設定された前記個別目標電力を、複数の前記分散型発電装置の相互間で入れ替える出力入替制御を実行可能に構成されている点にある。
【0008】
各分散型発電装置が出力する電力は個別目標電力の値に依存しており、この値が高くなるほど、分散型発電装置は多くの電力を出力することになり、分散型発電装置の特性の低下が進む。本特徴構成によれば、運転状態値に基づいて、複数の分散型発電装置それぞれの特性の低下具合を評価することができる。そして、出力入替制御の実行により、特性の低下が著しいと予想される分散型発電装置の個別目標電力と、当該分散型発電装置以外の分散型発電装置の個別目標電力とを入れ替えることができる。そのため、例えば、特性の低下が著しいと予想される分散型発電装置に対して、元の個別目標電力よりも低い値に設定された個別目標電力を割り当てることができる。これにより、合計の目標出力電力を維持しつつ、特性の低下が著しいと予想される分散型発電装置の負担を緩和することができ、当該分散型発電装置のメンテナンス実施時期を遅らせることができる。以上より、本特徴構成によれば、複数の分散型発電装置のメンテナンス実施時期を近づけ易くなる。
【0009】
本発明に係る電力供給システムの更なる特徴構成は、
前記全体制御装置は、前記運転状態値に基づいて複数の前記分散型発電装置の健全度を評価し、複数の前記分散型発電装置のうち前記健全度が最も低いと評価された前記分散型発電装置を前記出力入替制御の第1対象として決定し、その他の分散型発電装置を前記出力入替制御の第2対象として決定し、
前記出力入替制御では、前記第1対象である前記分散型発電装置の前記個別目標電力と、前記第2対象である前記分散型発電装置の前記個別目標電力と、を入れ替える点にある。
【0010】
複数の分散型発電装置のうち健全度が最も低いと評価された分散型発電装置は、特性の低下が最も著しいと予想できる。本特徴構成によれば、分散型発電装置の健全度に基づいて、特性の低下が最も著しいと予想される分散型発電装置を出力入替制御の第1対象として決定することができる。そして、第1対象である分散型発電装置の個別目標電力と、第2対象である他の分散型発電装置の個別目標電力と、を入れ替えることで、第1対象である分散型発電装置の負担を緩和することができ、当該分散型発電装置のメンテナンス実施時期を遅らせることができる。
【0011】
本発明に係る電力供給システムの更なる特徴構成は、
前記全体制御装置は、前記第1対象を除く複数の前記分散型発電装置のうち前記健全度が最も高いと評価された前記分散型発電装置を前記第2対象として決定する点にある。
【0012】
複数の分散型発電装置のうち健全度が最も高いと評価された分散型発電装置は、特性の低下が最も少ないと予想できる。本特徴構成によれば、特性の低下が最も少ないと予想される分散型発電装置を出力入替制御の第2対象として決定することができる。従って、特性の低下が最も著しいと予想される分散型発電装置を出力入替制御の第1対象とし、特性の低下が最も少ないと予想される分散型発電装置を出力入替制御の第2対象として、両者の個別目標電力を入れ替えることができるため、システム全体としてバランスの良い運用を図ることができる。
【0013】
本発明に係る電力供給システムの更なる特徴構成は、
前記全体制御装置は、前記負荷電力に基づいて複数の前記分散型発電装置の負荷度を評価し、前記第1対象を除く複数の前記分散型発電装置のうち前記負荷度が最も低いと評価された前記分散型発電装置を前記第2対象として決定する点にある。
【0014】
複数の分散型発電装置のうち負荷度が最も低いと評価された分散型発電装置は、特性の低下が最も少ないと予想できる。本特徴構成によれば、特性の低下が最も少ないと予想される分散型発電装置を出力入替制御の第2対象として決定することができる。従って、特性の低下が最も著しいと予想される分散型発電装置を出力入替制御の第1対象とし、特性の低下が最も少ないと予想される分散型発電装置を出力入替制御の第2対象として、両者の個別目標電力を入れ替えることができるため、システム全体としてバランスの良い運用を図ることができる。
【0015】
本発明に係る電力供給システムの更なる特徴構成は、
前記全体制御装置は、前記負荷電力に基づいて複数の前記分散型発電装置の負荷度を評価し、前記健全度と前記負荷度との双方に基づいて算出される決定値により、前記第1対象を除く複数の前記分散型発電装置のうち前記第2対象となる前記分散型発電装置を決定する点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、より出力入替制御の第2対象としてふさわしい分散型発電装置を選択することができる。
【0017】
本発明に係る電力供給システムの更なる特徴構成は、
前記決定値は、前記健全度が前記負荷度よりも優位な状態で、前記健全度と前記負荷度との双方に基づいて算出される点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、健全度を重視して、より出力入替制御の第2対象としてふさわしい分散型発電装置を選択することができる。
【0019】
本発明に係る電力供給システムの更なる特徴構成は、
前記全体制御装置は、複数の前記分散型発電装置間で電力を融通させる融通制御を実行可能に構成され、
前記融通制御では、前記負荷電力が前記発電可能電力を超えることで不足電力が生じる施設が存在する場合、前記負荷電力が前記発電可能電力に満たないことで余剰電力が生じる施設に設けられる前記分散型発電装置に、融通目標電力に応じた電力を出力する旨の指令を行う点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、ある施設で不足電力が発生しても、その不足電力は、電力系統からの受電電力ではなく、他の施設から融通される電力で優先的に賄われるため、複数の施設全体で見ると分散型発電装置の稼働率が上昇し、電力系統からの受電電力が減少する点で好ましい。
【0021】
本発明に係る電力供給システムの更なる特徴構成は、
前記全体制御装置は、前記出力入替制御の実行前または実行後において、前記融通制御を実行する点にある。
【0022】
本特徴構成によれば、複数の分散型発電装置の間での個別目標電力の入れ替え前、又は入れ替え後であっても、複数の施設間で電力を融通させることができる。従って、より効率的な運用を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電力供給システムの一例である電力融通システムの全体構成図である。
図2】全体制御装置の機能構成図である。
図3】電力融通システムの具体的運用を示す説明図である。
図4】全体制御装置が行う制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5】出力入替制御の処理手順を示すフローチャートである。
図6】決定値の算出に用いる表である。
図7】出力入替制御の処理の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
電力供給システムは、複数の施設に電力を供給するシステムである。以下では、電力供給システムの一例として、複数の施設間で電力を互いに融通可能な電力融通システムを示しつつ、電力供給システムの実施形態について説明する。
【0025】
図1は、電力融通システム100の全体構成図である。電力融通システム100は、分散型発電装置40及び負荷50を有する複数の施設間で電力を互いに融通可能に構成されている。
【0026】
図1に示す例では、電力融通システム100は、受電盤20を介して電力系統10に接続されている。これにより、電力融通システム100は、電力系統10から系統電力の供給を受けることが可能となっている。
【0027】
電力融通システム100は、システム全体を制御する全体制御装置30を備えている。また、複数の施設のそれぞれには、分散型発電装置40と、分散型発電装置40を制御する個別制御装置45と、分散型発電装置40により発電された電力を消費する負荷50と、が設けられている。
【0028】
全体制御装置30、及び、複数の個別制御装置45のそれぞれは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0029】
図1では、4つの施設が電力融通システム100の適用対象とされている場合を例示しているが、施設の数は2以上であれば良く、任意に定められる。以下では、説明の便宜のため、4つの施設のそれぞれを、「第1施設A」、「第2施設B」、「第3施設C」、「第4施設D」と称する。第1施設Aには、第1分散型発電装置40A、第1個別制御装置45A、及び第1負荷50Aが設けられている。第2施設Bには、第2分散型発電装置40B、第2個別制御装置45B、及び第2負荷50Bが設けられている。第3施設Cには、第3分散型発電装置40C、第3個別制御装置45C、及び第3負荷50Cが設けられている。第4施設Dには、第4分散型発電装置40D、第4個別制御装置45D、及び第4負荷50Dが設けられている。なお、以下では、第1~4施設A~Dを特に区別しない場合には、これらを「施設」と総称する場合がある。第1~4分散型発電装置40A~40Dを特に区別しない場合には、これらを「分散型発電装置40」と総称する場合がある。第1~4個別制御装置45A~45Dを特に区別しない場合には、これらを「個別制御装置45」と総称する場合がある。第1~4負荷50A~50Dを特に区別しない場合には、これらを「負荷50」と総称する場合がある。
【0030】
複数の分散型発電装置40のそれぞれは、対応する負荷50が必要とする負荷電力を賄うことを目標として、発電可能電力の範囲内(即ち、上限電力値以下の範囲内)で設定される個別目標電力を出力するように構成されている。例えば、発電可能電力(上限電力値)は、定格発電電力である。本実施形態では、分散型発電装置40は、燃料電池を用いて発電する燃料電池発電装置として構成されている。
【0031】
複数の負荷50のそれぞれは、自身の施設の分散型発電装置40からその発電電力の供給を受けるように構成されている。各施設において、負荷50が必要とする負荷電力が分散型発電装置40の発電可能電力を超える場合、その超える分の電力がその施設での不足電力となる。各施設で不足電力が発生する場合、その不足電力は、他の施設の分散型発電装置40の発電電力の融通を受けること及び電力系統10から電力の供給を受けることの少なくとも一方によって賄われる。各施設において、負荷50が必要とする負荷電力が分散型発電装置40の発電可能電力に満たない場合、その満たない分の電力はその施設での余剰電力となる。電力融通システム100は、この余剰電力を、他の施設に融通するための電力として利用するように構成されている。
【0032】
複数の個別制御装置45のそれぞれは、自身の施設の分散型発電装置40を制御するように構成されている。個別制御装置45は、自身の施設の負荷50が必要とする負荷電力を賄うことを目標として発電可能電力の範囲内で決定される個別目標電力を出力するように、自身の施設の分散型発電装置40を制御する。また、個別制御装置45は、全体制御装置30からの指令に基づいて、所望の電力を出力するように、自身の施設の分散型発電装置40を制御する。
【0033】
複数の個別制御装置45のそれぞれは、対応する分散型発電装置40の運転に伴って増加又は減少する運転状態値が所定のメンテナンス基準値に達すると、当該分散型発電装置40のメンテナンス実施時期が到来したと判定するように構成されている。
【0034】
「運転状態値」としては、例えば、分散型発電装置40の累積発電電力量、累積発電時間、累積起動回数、累積停止回数、分散型発電装置40での発電に伴って排出された排ガスとの熱交換に用いられる冷却水を脱イオン化するイオン交換樹脂を通過した冷却水の累積水通過量、発電に用いる燃料ガスの脱硫を行う脱硫器を通過した燃料ガスの累積ガス通過量、発電に用いる空気に含まれる異物を除去するためのエアフィルタを通過した空気の累積空気通過量、施設管理者が自身の施設の不足電力を賄うために購入した融通電力等の購入金額、及び、分散型発電装置40が燃料電池である場合における発電を行うセルが積層されたセルスタックのスタック電圧、などが挙げられる。累積発電電力量、累積発電時間、累積起動回数、累積停止回数、累積水通過量、累積ガス通過量、累積空気通過量及び、融通電力等の購入金額は、分散型発電装置40の運転が行われるのに伴って増加する。スタック電圧は分散型発電装置40の運転が行われるのに伴って減少する。
【0035】
例えば、運転状態値が累積発電電力量に基づく値である場合には、メンテナンス基準値も累積発電電力量に基づく値となる。この場合のメンテナンス基準値を例えば25000kWhとして、特定の施設における分散型発電装置40の現状の累積発電電力量が例えば12000kWhであった場合、両者の差分は13000kWhとなる。この場合、13000kWhの電力を分散型発電装置40が更に発電した場合に、運転状態値が25000kWhとなってメンテナンス基準値に達する。このとき、個別制御装置45は、上記分散型発電装置40にメンテナンス実施時期が到来したと判定する。個別制御装置45は、分散型発電装置40にメンテナンス実施時期が到来したと判定した場合には、その旨を施設管理者等に報知するように構成されていると良い。
【0036】
全体制御装置30は、システム全体を制御するように構成されている。全体制御装置30は、複数の個別制御装置45のそれぞれに対して、各種指令を行うように構成されている。上述のように、全体制御装置30からの指令を受けた個別制御装置45は、当該指令に基づいて自身の施設の分散型発電装置40を制御する。
【0037】
全体制御装置30は、特定の施設から他の施設へと融通させる融通目標電力を決定する。例えば、全体制御装置30は、不足電力が生じている電力不足施設が存在する場合、当該電力不足施設に電力が融通されるように融通目標電力を決定して、余剰電力を発電可能な電力余剰施設に設けられる個別制御装置45に対して、当該融通目標電力に応じた電力を出力する旨の指令(以下、「融通電力出力指令」と称する。)を行う。そして、融通電力出力指令を受けた個別制御装置45は、この全体制御装置30が決定した融通目標電力と、自身の施設の負荷50が必要とする負荷電力を賄うことを目標として発電可能電力の範囲内で決定される個別目標電力との、合計の電力を出力するように、自身の施設の分散型発電装置40を制御する。
【0038】
図2に示すように、全体制御装置30は、複数の分散型発電装置40から運転状態値を取得する取得部31を備えている。本実施形態では、全体制御装置30は、各施設に関する各種情報を記憶する記憶部33と、各分散型発電装置40間で電力を融通させる融通制御を実行する融通制御部35と、を更に備えている。
【0039】
取得部31は、分散型発電装置40の運転の状態を示す運転状態値、分散型発電装置40の発電可能電力(定格発電電力)、現在の発電電力、負荷50の要求電力(負荷電力)、施設での不足電力及び余剰電力等を、各施設の個別制御装置45から随時取得する。
【0040】
記憶部33は、取得部31が取得した運転状態値を記憶する。本実施形態では、記憶部33は、各施設について、所定の日時ごとに、取得部31が取得した運転状態値を記憶する。記憶部33は、運転状態値の他にも、取得部31が取得した各種情報を記憶する。具体的には、記憶部33は、分散型発電装置40の発電可能電力(定格発電電力)、現在の発電電力、負荷50の要求電力(負荷電力)、施設での不足電力及び余剰電力等を、各施設について、所定の日時ごとに記憶する。
【0041】
融通制御部35は、電力融通システム100に含まれる複数の分散型発電装置40をグループ化する。グループ化の基準としては、複数の分散型発電装置40が、1つの建物に設けられていること、複数の階を有する1つの建物における同一の階に設けられていること、或いは、同じ地域に設けられていること等が挙げられる。ここでは、第1分散型発電装置40A、第2分散型発電装置40B、第3分散型発電装置40C、及び第4分散型発電装置40Dが、融通制御部35によってグループ化されている場合を例示している。グループ化の基準は、予め記憶部33に記憶されていると良い。
【0042】
融通制御部35は、各施設での不足電力及び余剰電力の情報を記憶部33から参照して、不足電力が生じている電力不足施設と、余剰電力を発電可能な電力余剰施設と、を特定する。図3に示す例では、第3施設Cにおいて、第3負荷50Cが要求する負荷電力(1000W)が、第3分散型発電装置40Cが発電する電力(700W)を超えており、不足電力が生じている。従って、この例では、融通制御部35は、第3施設Cを電力不足施設として特定し、不足電力が生じていない第1施設A、第2施設B、又は第4施設Dを電力余剰施設として特定する。そして、融通制御部35は、電力余剰施設が複数ある場合には、複数の電力余剰施設の中から、実際に電力不足施設に電力を融通する施設を特定する。本実施形態では、融通制御部35は、各施設での運転状態値(本例では累積発電電力量)を記憶部33から参照して、運転状態値とメンテナンス基準値との差分の絶対値が最も大きい分散型発電装置40が設置されている電力余剰施設を、実際に電力不足施設に電力を融通する施設として特定する。図3に示す例では、融通制御部35は、4つの分散型発電装置40の中で累積発電電力量が最も低い(すなわち、メンテナンス基準値との差分が最も大きい)第4分散型発電装置40Dが設定されている第4施設Dを、実際に電力不足施設に電力を融通する施設として特定する。なお、融通制御部35は、各施設における分散型発電装置40について運転状態値とメンテナンス基準値との差分の絶対値を算出し、これらの絶対値の大きさに基づいて、電力不足施設に発電電力を融通する電力余剰施設に優先順位を定めても良い。
【0043】
融通制御部35は、電力不足施設で生じている不足電力と、前記差分の絶対値が最も大きい電力余剰施設の分散型発電装置40において発電可能な余剰電力とに基づいて、電力余剰施設から電力不足施設へ電力を融通させる目標となる融通目標電力を決定する。そして、融通制御部35は、当該融通目標電力に応じた電力を出力するように、電力余剰施設の個別制御装置45に対して融通電力出力指令を行う。融通制御部35は、融通電力出力指令を、前記差分の絶対値が最も大きい電力余剰施設の個別制御装置45に対して優先的に行う。図3に示す例では、融通制御部35は、第4個別制御装置45Dに対して融通電力出力指令を行う。融通電力出力指令を受けた第4個別制御装置45Dは、融通目標電力に応じた電力と、個別目標電力に応じた電力、すなわち第4負荷50Dが要求する負荷電力(300W)との、合計の電力(負荷電力300Wよりも大きな電力)を出力するように、第4分散型発電装置40Dを制御する。なお、融通制御部35は、単一または複数の電力余剰施設の個別制御装置45に対して、融通電力出力指令を行っても良い。
【0044】
全体制御装置30は、以上のようにして融通制御を実行することで、各分散型発電装置40間で電力を融通させる。
【0045】
ここで、電力を融通するためにより多くの発電を行った分散型発電装置40の累積発電電力量が、電力の融通を行っていない分散型発電装置40の累積発電電力量よりも多くなり易い。そのため、メンテナンス実施時期を決める基準となる運転状態値が累積発電電力量とされている場合には、電力の融通をより多く行った分散型発電装置40のメンテナンス実施時期が早期におとずれることになり、複数の分散型発電装置40のメンテナンス実施時期にばらつきが生じ得る。また、このようなメンテナンス実施時期のばらつきは、電力の融通が行われるか否かに関わらず、複数の施設に電力を供給する電力供給システムにおいて生じ得る。本開示に係る電力融通システム100(電力供給システム)は、複数の分散型発電装置40のメンテナンス実施時期を近づけることが可能に構成されている。以下、具体的に説明する。
【0046】
例えば図3は、電力融通システム100が所定期間運用された状態を示している。ここでは、第2施設Bの第2分散型発電装置40Bが他の施設に電力融通を行った結果、第2分散型発電装置40Bの累積発電電力量(19000kWh)が複数の分散型発電装置40の累積発電電力量の中で最も多くなった場合を想定するものとする。この場合、複数の分散型発電装置40の中で、第2分散型発電装置40Bの特性の低下が最も著しいと予想することができる。すなわち、第2分散型発電装置40Bのメンテナンス実施時期が、その他の分散型発電装置40のメンテナンス実施時期に比べて早期におとずれると予想することができる。
【0047】
また、各分散型発電装置40が出力する電力は個別目標電力の値に依存しており、この値が高くなるほど、分散型発電装置40は多くの電力を出力することになり、分散型発電装置40の特性の低下が進む。図3に示す例では、第1分散型発電装置40Aには、個別目標電力として700Wが設定されており、第1分散型発電装置40Aは700Wの電力を出力(発電)するように制御されている。第2分散型発電装置40Bには、個別目標電力として500Wが設定されており、第2分散型発電装置40Bは500Wの電力を出力(発電)するように制御されている。第3分散型発電装置40Cには、個別目標電力として700Wが設定されており、第3分散型発電装置40Cは700Wの電力を出力(発電)するように制御されている。第4分散型発電装置40Dには、個別目標電力として300Wが設定されており、第4分散型発電装置40Dは300Wの電力を出力(発電)するように制御されている。
【0048】
全体制御装置30は、取得部31により取得した運転状態値に基づいて、複数の分散型発電装置40のそれぞれに設定された個別目標電力を、複数の分散型発電装置40の相互間で入れ替える出力入替制御を実行可能に構成されている。本実施形態では、全体制御装置30は、出力入替制御を実行する入替制御部37(図2参照)を備えている。上記構成によれば、出力入替制御の実行により、特性の低下が著しいと予想される分散型発電装置40の個別目標電力と、当該分散型発電装置40以外の分散型発電装置40の個別目標電力とを入れ替えることができる。そのため、例えば、特性の低下が著しいと予想される分散型発電装置40に対して、元の個別目標電力よりも低い値に設定された個別目標電力を割り当てることができる。これにより、システム全体としての合計の目標出力電力を維持しつつ、特性の低下が著しいと予想される分散型発電装置40の負担を緩和することができ、当該分散型発電装置40のメンテナンス実施時期を遅らせることができる。
【0049】
本実施形態では、図4に示すように、全体制御装置30は、運転状態値に基づいて複数の分散型発電装置40の健全度を評価し(ステップ#1)、複数の分散型発電装置40のうち健全度が最も低いと評価された分散型発電装置40を出力入替制御の第1対象T1として決定する。なお、本例では、健全度には、第1対象T1を決定するための所定の基準値が設定されており、全体制御装置30は、健全度が基準値よりも下回る分散型発電装置40がある場合に、当該分散型発電装置40を第1対象T1として決定する(ステップ#2:Yes)。健全度が基準値よりも下回る分散型発電装置40がない場合には(ステップ#2:No)、ステップ#2の処理を繰り返し行う。全体制御装置30は、第1対象T1ありと判断した場合には(ステップ#2:Yes)、出力入替制御を実行する(ステップ#3)。
【0050】
全体制御装置30は、第1対象T1とされた分散型発電装置40以外の他の分散型発電装置40を出力入替制御の第2対象T2として決定する。本実施形態では、図5に示すように、全体制御装置30は、運転状態値に基づいて複数の分散型発電装置40の健全度を評価すると共に負荷電力に基づいて複数の分散型発電装置40の負荷度を評価し(ステップ#31)、健全度と負荷度との双方に基づいて算出される決定値により、第1対象T1を除く複数の分散型発電装置40のうち第2対象T2となる分散型発電装置40を決定する(ステップ#32;第2対象決定処理)。そして、出力入替制御では、第1対象T1である分散型発電装置40の個別目標電力と、第2対象T2である分散型発電装置の個別目標電力と、を入れ替える。本例では、全体制御装置30は、第1対象T1である分散型発電装置40に対応する個別制御装置45及び第2対象T2である分散型発電装置40に対応する個別制御装置45のそれぞれに、入れ替えた個別目標電力に関する個別目標電力出力指令Coを行う(ステップ#33)。
【0051】
ここで、「健全度」とは、現時点での分散型発電装置40の特性の低下具合を示す指標であり、運転状態値に基づいて評価される。本実施形態では、健全度は、累積発電電力量に基づいて評価される。すなわち、累積発電電力量が少ないほど健全度は高くなり、分散型発電装置40の特性の低下が少ないと予想できる。反対に、累積発電電力量が多いほど健全度は低くなり、分散型発電装置40の特性の低下が著しいと予想できる。
【0052】
「負荷度」とは、将来に向けての分散型発電装置40の特性の低下の進み具合を示す指標であり、本実施形態では、現時点で負荷50から要求されている負荷電力に基づいて評価される。すなわち、負荷50が要求する負荷電力が小さいほど負荷度は低くなり、将来に向けて分散型発電装置40の特性の低下が進み難いと予想できる。反対に、負荷50が要求する負荷電力が大きいほど負荷度は高くなり、将来に向けて分散型発電装置40の特性の低下が進み易いと予想できる。
【0053】
「決定値」とは、健全度と負荷度との双方に基づいて算出される値である。健全度が高い分散型発電装置40ほど第2対象T2として優先的に特定され、また、負荷度が低い分散型発電装置40ほど第2対象T2として優先的に特定される。本実施形態では、第2対象T2の候補とされる複数の分散型発電装置40、すなわち、健全度が最も低いと評価された分散型発電装置40(第1対象T1)以外の分散型発電装置40が、健全度に基づいて順位付けされると共に、負荷度に基づいて順位付けされる。そして、各順位に応じて配点が設定されており、第2対象T2の候補とされる複数の分散型発電装置40のそれぞれは、健全度及び負荷度のそれぞれに関する順位に応じて配点される。本実施形態では、決定値は、健全度が負荷度よりも優位な状態で、健全度と負荷度との双方に基づいて算出される。詳細は後述する。
【0054】
図3に示す例では、全体制御装置30は、複数の分散型発電装置40のうち健全度が最も低い分散型発電装置40、すなわち累積発電電力量が最も多い第2分散型発電装置40Bを、出力入替制御の第1対象T1として決定する。
【0055】
これにより、第1分散型発電装置40A、第3分散型発電装置40C、及び第4分散型発電装置40Dが、出力入替制御の第2対象T2の候補となる。
【0056】
これらの第2対象T2の候補となる分散型発電装置40を健全度に応じて順位付けすると、累積発電電力量が10000kWhと最も少ない第4分散型発電装置40Dが、最も健全度が高い。次に健全度が高いのは、累積発電電力量が12000kWhの第1分散型発電装置40Aである。その次に健全度が高いのは、累積発電電力量が14000kWhの第3分散型発電装置40Cである。図6に示す例では、健全度が高いものから順に、6点、4点、2点、を配点する。すなわち、第4分散型発電装置40Dに6点、第1分散型発電装置40Aに4点、第3分散型発電装置40Cに2点、がそれぞれ配点される。なお、図6では、分散型発電装置40A、40C、40D単位ではなく、施設A、C、D単位で表示している。
【0057】
また、図3に示すように、上記の第2対象T2の候補となる分散型発電装置40を負荷度に応じて順位付けすると、第4負荷50Dによる要求電力(負荷電力)が300Wと最も少ない第4施設Dの第4分散型発電装置40Dが、最も負荷度が低い。次に負荷度が低いのは、第1負荷50Aによる要求電力(負荷電力)が700Wである第1施設Aの第1分散型発電装置40Aである。その次に負荷度が低いのは、第3負荷50Cによる要求電力(負荷電力)が1000Wである第3施設Cの第3分散型発電装置40Cである。図6に示す例では、負荷度が低いものから順に、3点、2点、1点、を配点する。すなわち、第4分散型発電装置40Dに3点、第1分散型発電装置40Aに2点、第3分散型発電装置40Cに1点、がそれぞれ配点される。
【0058】
本例では、上記配点の合計が決定値となる。すなわち図6に示すように、健全度と負荷度との双方に基づいて算出される決定値は、第4分散型発電装置40Dが9点となり、第1分散型発電装置40Aが6点となり、第3分散型発電装置40Cが3点となる。従って、本例においては、全体制御装置30は、第4分散型発電装置40Dを、出力入替制御の第2対象T2として決定する。
【0059】
このように、本実施形態では、健全度に応じた配点(6点、4点、2点)が、負荷度に応じた配点(3点、2点、1点)よりも大きくなっている。すなわち、上述のように、決定値は、健全度が負荷度よりも優位な状態で、健全度と負荷度との双方に基づいて算出される。
【0060】
全体制御装置30は、出力入替制御の第1対象T1と第2対象T2とを特定した後、第1対象T1である分散型発電装置40の個別目標電力と、第2対象T2である分散型発電装置の個別目標電力と、を入れ替える。本例においては、第2分散型発電装置40B(第1対象T1)の個別目標電力と、第4分散型発電装置40D(第2対象T2)の個別目標電力と、を入れ替える。
【0061】
具体的には図7に示すように、全体制御装置30は、第2個別制御装置45Bに対して、第4分散型発電装置40D(第2対象T2)の個別目標電力である300W(図3参照)を出力する旨の個別目標電力出力指令Coを行う。当該個別目標電力出力指令Coを受けた第2個別制御装置45Bは、全体制御装置30から個別目標電力として指定された300Wを第2分散型発電装置40B(第1対象T1)に出力させる。
【0062】
また、全体制御装置30は、第4個別制御装置45Dに対して、第2分散型発電装置40B(第1対象T1)の個別目標電力である500W(図3参照)を出力する旨の個別目標電力出力指令Coを行う。当該個別目標電力出力指令Coを受けた第4個別制御装置45Dは、全体制御装置30から個別目標電力として指定された500Wを第4分散型発電装置40D(第2対象T2)に出力させる。
【0063】
これにより、累積発電電力量が最も多く、健全度が最も低いと評価された第2分散型発電装置40B(第1対象T1)が、元の個別目標電力(500W)よりも低い電力(300W)を出力することになる。そのため、500Wを出力目標としていた以前に比べて、第2分散型発電装置40B(第1対象T1)の特性の低下が進み難くなる。従って、第2分散型発電装置40B(第1対象T1)のメンテナンス実施時期を遅らせることができ、ひいては、複数の分散型発電装置40のメンテナンス実施時期を近づけることができる。また、第2分散型発電装置40B(第1対象T1)の元の個別目標電力(500W)は、第4分散型発電装置40D(第2対象T2)が代わりに出力することになる。従って、システム全体としての合計の目標出力電力を維持することもできる。
【0064】
〔その他の実施形態〕
次に、電力供給システムのその他の実施形態について説明する。
【0065】
(1)上記の実施形態では、第2対象T2を決定するための決定値が、健全度が負荷度よりも優位な状態で、健全度と負荷度との双方に基づいて算出される例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、決定値は、健全度と負荷度とに優劣が無い状態で、或いは、負荷度が健全度よりも優位な状態で、健全度と負荷度との双方に基づいて算出されても良い。換言すれば、健全度に応じた配点と負荷度に応じた配点とが同じであっても良いし、負荷度に応じた配点の方が健全度に応じた配点より高くても良い。
【0066】
(2)上記の実施形態では、全体制御装置30が、健全度と負荷度との双方に基づいて算出される決定値により、第1対象T1を除く複数の分散型発電装置40のうち第2対象T2となる分散型発電装置40を決定する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、全体制御装置30は、複数の分散型発電装置40のうち健全度が最も高いと評価された分散型発電装置40を第2対象T2として決定しても良い。或いは、全体制御装置30は、複数の分散型発電装置40のうち負荷度が最も低いと評価された分散型発電装置40を第2対象T2として決定しても良い。
【0067】
(3)上記の実施形態では、運転状態値が、累積発電電力量に基づく値である例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、運転状態値は、累積発電時間、累積起動回数、累積停止回数、累積水通過量、累積ガス通過量、累積空気通過量及び、融通電力等の購入金額、及びスタック電圧の何れか基づく値、或いは、これらを組み合わせた値であっても良い。
【0068】
(4)上記の実施形態では、電力供給システムとして、複数の施設間で電力を互いに融通可能な電力融通システムを例示して説明した。しかし、このような例に限定されることなく、電力供給システムは、複数の施設に電力を供給するシステムであれば良く、複数の施設間で電力を互いに融通しないシステムにも適用できる。
【0069】
(5)上記の実施形態では、分散型発電装置40が、燃料電池を用いて発電する燃料電池発電装置として構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、分散型発電装置40は、例えば、太陽光を利用して発電する太陽光発電装置、或いは、エンジンを用いて発電するエンジン発電装置として構成されていても良い。
【0070】
(6)上記で説明した融通制御は、出力入替制御と異なる時期に実行される。すなわち、全体制御装置30は、出力入替制御の実行前または実行後において、融通制御を実行することができる。但し、これに限らず、全体制御装置30は、出力入替制御と同時期に融通制御を実行しても良い。
【0071】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
100 :電力融通システム(電力供給システム)
30 :全体制御装置
31 :取得部
40 :分散型発電装置
45 :個別制御装置
50 :負荷
300W :負荷電力
A~D :施設
T1 :第1対象
T2 :第2対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7