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特開2022-147229クライミングクレーン及びクライミングクレーンを用いた工事方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147229
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】クライミングクレーン及びクライミングクレーンを用いた工事方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/32 20060101AFI20220929BHJP
   B66C 23/76 20060101ALI20220929BHJP
   B66C 23/74 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B66C23/32 A
B66C23/76 A
B66C23/74 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048391
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】前谷 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】野島 昌芳
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA03
3F205AB01
3F205GA01
3F205GA03
3F205GA04
(57)【要約】
【課題】マストの高床化に伴う転倒のリスクを低減可能なクライミングクレーン等を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、クライミングクレーンが提供される。このクライミングクレーンは、クレーン本体と、マストと、基礎構造部とを備える。クレーン本体は、ジブと、カウンターフレームとを備える。ジブは、前後に延在するとともに、起伏可能に構成される。カウンターフレームは、ジブの延在する側と逆側に設けられ、少なくとも1つのウェイトを設置可能に構成される。マストは、クレーン本体を支持するように構成される。クレーン本体の高さを調節可能に、上下方向に順次立設されるように構成される。基礎構造部は、マストを支持するように構成される。ウェイトを設置可能なベースフレームを備える。マストの高さに応じて、カウンターフレームとベースフレームとの間でウェイトを移載可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライミングクレーンであって、
クレーン本体と、マストと、基礎構造部とを備え、
前記クレーン本体は、ジブと、カウンターフレームとを備え、
前記ジブは、前後に延在するとともに、起伏可能に構成され、
前記カウンターフレームは、前記ジブの延在する側と逆側に設けられ、少なくとも1つのウェイトを設置可能に構成され、
前記マストは、
前記クレーン本体を支持するように構成され、
前記クレーン本体の高さを調節可能に、上下方向に順次立設されるように構成され、
前記基礎構造部は、
前記マストを支持するように構成され、
前記ウェイトを設置可能なベースフレームを備え、
前記マストの高さに応じて、前記カウンターフレームと前記ベースフレームとの間で前記ウェイトを移載可能に構成される、もの。
【請求項2】
請求項1に記載のクライミングクレーンにおいて、
前記カウンターフレームは、前記クレーン本体に対して着脱可能に構成される、もの。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のクライミングクレーンにおいて、
前記基礎構造部は、地盤に対して固定具無しに接地することで、前記マストを支持するように構成される、もの。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のクライミングクレーンにおいて、
前記ウェイトは、
略平板の形状を有し、前記略平板の各頂点において被懸吊部が設けられ、
懸吊される前記被懸吊部の組合せに基づいて、揚重の際に維持姿勢を可変に構成される、もの。
【請求項5】
請求項4に記載のクライミングクレーンにおいて、
ウェイト支持機構をさらに備え、
前記ウェイト支持機構は、
前記カウンターフレーム及び前記ベースフレームの少なくとも一方に設けられ、
複数の凹部を有し、
前記ウェイトは、
前記略平板の側部に突起を有し、
前記突起が前記凹部に入り込むことで、前記ウェイト支持機構に支持される、もの。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のクライミングクレーンにおいて、
揚重機構をさらに備え、
前記揚重機構は、前記被懸吊部を直接又は間接に懸吊することで前記ウェイトを揚重し、前記カウンターフレームと前記ベースフレームとの間で前記ウェイトを移載するように構成される、もの。
【請求項7】
請求項6に記載のクライミングクレーンにおいて、
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記マストの高さに応じて、前記カウンターフレームと前記ベースフレームとの間で前記ウェイトを移載するように、前記揚重機構を制御可能に構成される、もの。
【請求項8】
クライミングクレーンを用いた工事方法であって、
次の各工程を備え、
第1の取外し工程では、ウェイトをカウンターフレームから取り外し、
取付工程では、取り外した前記ウェイトをベースフレームに取り付け、
高床化工程では、マストの高さを高床化させるように、前記マストを順次立設する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の工事方法において、
第2の取外し工程では、前記クライミングクレーンのクレーン本体から前記カウンターフレームを取り外す、方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9の何れか1つに記載の工事方法において、
前記クライミングクレーンは、請求項1~請求項7の何れか1つに記載のクライミングクレーンである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングクレーン及びクライミングクレーンを用いた工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物を建造する工事にあたって、例えば特許文献1に記載のクライミングクレーンが用いられている。このようなクライミングクレーンは、建造中の建造物の高さに応じて、マストを継ぎ足す(順次立設する)ことで、適切な高さで工事を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-312607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、クライミングクレーンの転倒を防止するために、クレーンのジブが延在する側と逆側にウェイトを設置して、全体の均衡を保つことが行われている。しかし、マストを継ぎ足していくと、クライミングクレーン全体の重心が高くなり、特に日本等の地震の多い地域では、万が一の転倒のリスクが大きくなる。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、マストの高床化に伴う転倒のリスクを低減可能なクライミングクレーン等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、クライミングクレーンが提供される。このクライミングクレーンは、クレーン本体と、マストと、基礎構造部とを備える。クレーン本体は、ジブと、カウンターフレームとを備える。ジブは、前後に延在するとともに、起伏可能に構成される。カウンターフレームは、ジブの延在する側と逆側に設けられ、少なくとも1つのウェイトを設置可能に構成される。マストは、クレーン本体を支持するように構成される。クレーン本体の高さを調節可能に、上下方向に順次立設されるように構成される。基礎構造部は、マストを支持するように構成される。ウェイトを設置可能なベースフレームを備える。マストの高さに応じて、カウンターフレームとベースフレームとの間でウェイトを移載可能に構成される。
【0007】
このような態様によれば、クライミングクレーンの、マストの高床化に伴う転倒のリスクを低減可能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】クライミングクレーン1の低床時の態様を示す模式図である。
図2図1に示されたカウンターフレーム4の細部を説明するための部分拡大図である。
図3】クライミングクレーン1の高床時の態様を示す模式図である。
図4】コンピュータ6のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】ウェイト7の形状を示す模式図である。
図6】ウェイト7を支持するウェイト支持機構42の形状を示す模式図である。
図7】揚重機構45を用いてウェイト7を揚重する態様を示す模式図であり、特に、被懸吊部73a,73bの2点で懸吊されている態様が示されている。
図8】揚重機構45を用いてウェイト7を揚重する態様を示す模式図であり、特に、被懸吊部73a,73b,73c,74dの4点で懸吊されている態様が示されている。
図9】工事方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.全体構成
1.1 基本構成
まず、本実施形態に係るクライミングクレーン1の基本構成を説明する。図1は、クライミングクレーン1の低床時の態様を示す模式図である。
【0014】
クライミングクレーン1は、建造物の高さの増加に伴ってそれ自身の機構によってクライミングを行うものである。図1に示されるように、クライミングクレーン1は、マスト2と、クレーン本体3と、基礎構造部5とを備える。換言すると、クライミングクレーン1は、基礎構造部5の上にマスト2を有し、その頂部にクレーン本体3が設置されている。
【0015】
(マスト2)
マスト2は、後述のクレーン本体3を支持するように構成される。特に、クライミングクレーン1においては、マスト2は、クレーン本体3の高さを調節可能に、建造中の建造物の高さに合わせて、上下方向に順次立設されるように構成されるとよい。
【0016】
(クレーン本体3)
クレーン本体3は、旋回体31と、ジブ32と、巻上ウィンチ33と、巻上ロープ34と、フック35とを備えている。旋回体31は、マスト2の頂部に設けた旋回ベアリング(図示せず)に回転自在に支持される。ジブ32は、旋回体31に支持され、前後に延在するとともに、起伏可能に構成される。巻上ウィンチ33は、旋回体31に固定され、巻上ロープ34を巻上又は巻下可能に構成される。巻上ロープ34の先端には、フック35が設けられている。
【0017】
(カウンターフレーム4)
さらに、クレーン本体3は、カウンターフレーム4を備えている。カウンターフレーム4は、ジブ32の延在する側と逆側(ここでは、旋回体31に設置)に設けられ、少なくとも1つのウェイト7を設置可能に構成される。
【0018】
図2は、図1に示されたカウンターフレーム4の細部を説明するための部分拡大図である。図2に示されるように、カウンターフレーム4は、下側延在部41と、ウェイト支持機構42と、立設部43と、上側延在部44と、揚重機構45とを備える。下側延在部41は、旋回体31に接続され、ジブ32の延在側と逆側に延在するように構成されている。ウェイト支持機構42は、下側延在部41に設けられ、複数のウェイト7を支持可能に構成されている。立設部43は、下側延在部41に対して略垂直に上向きに立設され、その先端に上側延在部44が設けられる。上側延在部44は、下側延在部41よりも上方に位置し、下側延在部41と同じくジブ32の延在側と逆側に延在するように構成されている。揚重機構45は、上側延在部44において、これに対して下向きに設けられ、フック451を上下に移動させることができる。
【0019】
(基礎構造部5)
基礎構造部5は、マスト2を支持するように構成される。より詳細には、マスト2の基端(下側)には、基礎構造部5が固定されており、基礎構造部5はクレーン本体3を、マスト2を介して間接的に支えるための架台となっている。なお、基礎構造部5は、地盤Gに対して固定具無しに接地することで、マスト2を支持するように構成されてもよい。これについて以下補足する。
【0020】
一般的にクライミングクレーン1は、コンクリート基礎から突出したアンカーボルトと、基礎構造部5とをボルト締結することで転倒不能に設置されるが、環境を維持するために等、設置場所によっては、コンクリート基礎を用いることができず、水平レベルを出した地盤Gに直接設置する場合がある。その場合、基礎構造部5を地盤Gに直接設置してしまうと、地盤Gの地耐力が不足するケースがある。したがって、クライミングクレーン1が発生する鉛直荷重を分散させ、それによって地盤Gの地耐力が不足しない構造を採用することが好ましい。
【0021】
さらに、基礎構造部5は、ウェイト7を設置可能なベースフレーム51を備えている。ベースフレーム51に取り付けられるウェイト7は、前述のカウンターフレーム4に取り付けられるウェイト7と同一のものである。ウェイト7は、例えばベースフレーム51における取付領域52に取り付けられる。なお、取り付けるための機構は特に限定されず、カウンターフレーム4におけるウェイト支持機構42が適宜採用されるとよい。換言すると、ウェイト支持機構42は、カウンターフレーム4及びベースフレーム51の少なくとも一方に設けられる。
【0022】
1.2 工事を管理するコンピュータ6
続いて、コンピュータ6について説明する。図3は、クライミングクレーン1の高床時の態様を示す模式図である。図4は、コンピュータ6のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態では、図3に示されるように、クライミングクレーン1がマスト2を継ぎ足して高床化すると、ウェイト7がカウンターフレーム4から取り外されるとともに、基礎構造部5におけるベースフレーム51の取付領域52に移載される。つまり、クライミングクレーン1は、マスト2の高さに基づいて、カウンターフレーム4とベースフレーム51との間でウェイト7を移載可能に構成されている。このように、ウェイト7を移載することによって、マスト2の高床化に伴う転倒のリスクを低減可能することができる。さらに好ましくは、カウンターフレーム4は、クレーン本体3に対して着脱可能に構成される。図3に示されるように、カウンターフレーム4がクレーン本体3における旋回体31から取り外されている。高床時にカウンターフレーム4ごと取り外すことで、さらに転倒のリスクを低減することができる。このような、態様に関して、コンピュータ6が使用されている。
【0024】
コンピュータ6は、例えばクライミングクレーン1に搭載され、工事の進捗や工程を管理するように構成されている。コンピュータ6は、例えば、専用の制御装置であり、図4に示されるように、通信部61と、記憶部62と、制御部63とを有し、これらの構成要素が通信バス60を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0025】
通信部61は、コンピュータ6から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成される。また、通信部61は、外部の構成要素からコンピュータ6への種々の電気信号を受信可能に構成される。さらに好ましくは、通信部61がネットワーク通信機能を有し、これによりインターネット等のネットワークを介して、外部機器との間で種々の情報を通信可能に実施してもよい。例えば、通信部61は、クライミングクレーン1の一部に設けられた不図示のセンサから、現在の高度に関するデータを取得するとよい。
【0026】
記憶部62は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部63によって実行されるクライミングクレーン1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部62は、制御部63によって実行されるクライミングクレーン1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。特に好ましくは、クライミングクレーン1を用いて行う工事計画に関する情報が記憶されている。
【0027】
制御部63は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部63は、記憶部62に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、クライミングクレーン1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部62に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部63によって具体的に実現される。なお、制御部63は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部63を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0028】
好ましくは、制御部63は、マスト2の高さに応じて、カウンターフレーム4とベースフレーム51との間でウェイト7を移載するように、揚重機構45を制御可能に構成されている。これについて具体的に説明する。本実施形態では、制御部63は、予め記憶部62に記憶された専用プログラムに基づいて、工事の進捗を管理している。また、制御部63は、揚重機構45におけるフック451の揚重動作を制御することができる。制御部63は、通信部61が取得した現在の高度に関する情報と、記憶部62に記憶された工事計画に関する情報とに基づいて、必要なマスト2の高さを見積もることができる。この高さが閾値を超える場合は、制御部63は、カウンターフレーム4におけるウェイト支持機構42に支持されたウェイト7を、ベースフレーム51における取付領域52に移載するように、揚重機構45を制御するとよい。
【0029】
1.3 ウェイト7の移載
続いて、ウェイト7と、この移載について説明する。
【0030】
図5は、ウェイト7の形状を示す模式図である。図6は、ウェイト7を支持するウェイト支持機構42の形状を示す模式図である。図7は、揚重機構45を用いてウェイト7を揚重する態様を示す模式図であり、特に、被懸吊部73a,73bの2点で懸吊されている態様が示されている。図8は、揚重機構45を用いてウェイト7を揚重する態様を示す模式図であり、特に、被懸吊部73a,73b,73c,74dの4点で懸吊されている態様が示されている。まず、図5に示されるように、ウェイト7は、略平板の形状を有し、主面71と、側面72とを備えている。
【0031】
主面71は、四隅が切り取られた形状を有し、切り取られた領域711から突出するように、被懸吊部73が視認されている。側面72の一部には、側面721が含まれる。四隅に位置する側面721には、4つの被懸吊部73である被懸吊部73a,73b,73c,73dがそれぞれ設けられている。つまり換言すると、ウェイト7には略平板の各頂点において被懸吊部73が設けられている。そして、それぞれの被懸吊部73には、挿通孔74が設けられ、これをワイヤW(図7及び図8参照)が挿通可能に構成されている。つまり、揚重機構45は、被懸吊部73を直接又は間接に懸吊することでウェイト7を揚重し、カウンターフレーム4とベースフレーム51との間でウェイト7を移載するように構成されている。
【0032】
さらに、ウェイト7は、略平板の側面72(側部)に突起75を有している。突起75は、被懸吊部73の延在方向とは略垂直方向に延在し、具体的には、一対の突起75L,75Rとして構成されている。図6に示されるように、ウェイト7を支持するウェイト支持機構42は、複数の凹部421を有する。図6の例では、4つの凹部421が設けられており、これらに、4つのウェイト7それぞれの突起75を入り込ませて、ウェイト7が支持されている。換言すると、ウェイト7における突起75が凹部421に入り込むことで、ウェイト7がウェイト支持機構42に支持される。もちろん、固定されずに単に凹部421に突起75が入り込んで支持されてもよいし、突起75が凹部421に、ある程度強固に嵌合されて支持されてもよい。また、図6に示される突起75は、突起75L,75Rの一方であるが、不図示である他方も同様に支持されている。このような構成によって、略平板状のウェイト7を立てた状態で、クライミングクレーン1のおもりとして設置することができる。
【0033】
また、ウェイト7を立てた状態で、ウェイト支持機構42に支持させるため、好ましくは、揚重機構45が、略平板状のウェイト7を立てた状態で揚重可能に構成されるとよい。
【0034】
具体的には、図7に示されるように、被懸吊部73a,73bの2つにワイヤWを挿通させて、揚重機構45におけるフック451を用いて、ウェイト7をカウンターフレーム4からベースフレーム51に移載することができる。このように、2点で支えることで、略平板状のウェイト7が立った状態で移載されるため、移載時にウェイト7の姿勢を変更することなく、効率的な作業を実現することができる。
【0035】
一方、図8に示されるように、被懸吊部73a,73b,73c,73dの4つにワイヤWを挿通させて、揚重機構45’におけるフック451’を用いて、ウェイト7を揚重することもできる。なお、図8における揚重機構45’は、クライミングクレーン1に搭載された揚重機構45とは異なる外部の機構であってよく、フック451’は、揚重機構45’における懸吊部材であってよい。例えば、ウェイト7を、管理している工場からトラックの荷台等に積み込む際、安定化のため、略平板状のウェイト7を寝かせて搬送することが好ましい。このため、図8に示されるように、4点で支えることで、略平板状のウェイト7が寝かされた状態で揚重され、トラックの荷台等に搭載されるとよい。
【0036】
すなわち、ウェイト7は、懸吊される被懸吊部73の組合せに基づいて、揚重の際に維持姿勢を可変に構成されている。このような態様によれば、状況やニーズに応じて、揚重の際のウェイト7の維持姿勢を決定することができる。
【0037】
1.4 構成のまとめ
以上をまとめると、クライミングクレーン1は、クレーン本体3と、マスト2と、基礎構造部5とを備える。クレーン本体3は、ジブ32と、カウンターフレーム4とを備える。ジブ32は、前後に延在するとともに、起伏可能に構成される。カウンターフレーム4は、ジブ32の延在する側と逆側に設けられ、少なくとも1つのウェイト7を設置可能に構成される。マスト2は、クレーン本体3を支持するように構成される。マスト2は、クレーン本体3の高さを調節可能に、上下方向に順次立設されるように構成される。基礎構造部5は、マスト2を支持するように構成される。基礎構造部5は、ウェイト7を設置可能なベースフレーム51を備える。クライミングクレーン1は、マスト2の高さに基づいて、カウンターフレーム4とベースフレーム51との間でウェイト7を移載可能に構成される。
【0038】
このような構成によれば、クライミングクレーン1の、マスト2の高床化に伴う転倒のリスクを低減可能することができる。なお、ベースフレーム51にウェイト7を設置する場合は、カウンターフレーム4に設置する場合と比べて、クライミングクレーン1の転倒モーメントを効果的に減らすことができず、より質量の大きなウェイト7が必要である。本構成では、低床時にカウンターフレーム4に設けられていたウェイト7を、そのまま転用することができるため、低床時/高床時ともにベースフレーム51に設置しているウェイト7と合わせることで、わざわざ別途に質量の大きなウェイト7を準備する必要がなくなり、好適である。すなわち、予め準備するウェイト7の個数を少なくすることができ、効率面でもコスト面でも向上が図られる。
【0039】
2.クライミングクレーン1を用いた工事方法
本節では、前述のクライミングクレーン1を用いた工事方法について説明する。図9は、工事方法の流れを示すフローチャートである。以下、図9に示される各ステップに沿って説明をする。
【0040】
まず、建造中の建築物に対して、クライミングクレーン1を用いて工事を進行させる(ステップS001)。工事が進むにつれて建造物の高さが高層化するため、これに合わせて適宜マスト2を継ぎ足していくこととなる。そのため、必要なマスト2の高さをコンピュータ6を用いて適宜見積もる(ステップS002)。
【0041】
このとき、前述したマスト2の高さが基準値を超えているかを検討し(ステップS003)、超えていない場合(ステップS003におけるNOの場合)は、見積もった高さとなるようにマスト2を継ぎ足して(ステップS004)、工事を継続する。一方、超えている場合(ステップS003におけるYESの場合)は、地震等の際にクライミングクレーン1が転倒するリスクを考慮し、カウンターフレーム4に設けられたウェイト7を、揚重機構45を用いて揚重して取り外す(ステップS005:第1の取外し工程)。取り外されたウェイト7は、ベースフレーム51が位置する下方に向かって運搬される。
【0042】
続いて、ステップS005において取り外されたウェイト7をベースフレーム51における取付領域52に取り付ける(ステップS006:取付工程)。これにより、地震等の際にクライミングクレーン1が転倒するリスクが低減される。
【0043】
続いて、全てのウェイト7がカウンターフレーム4から取り外された状態において、旋回体31からカウンターフレーム4を取り外す(ステップS007:第2の取外し工程)。これにより、クライミングクレーン1の占める領域を小さくし、より省スペースに工事を進行させることができる。なお、このステップS007を省略してもよい。
【0044】
続いて、ステップS002において見積もった高さとなるようにマスト2を継ぎ足す(ステップS008:高床化工程)。その後、さらに工事を進行させていく(ステップS009)。
【0045】
以上をまとめると、工事方法は、クライミングクレーン1を用いた工事方法である。この工事方法は、次の各工程を備える。第1の取外し工程では、ウェイト7をカウンターフレーム4から取り外す。取付工程では、取り外したウェイト7をベースフレーム51に取り付ける。第2の取外し工程では、クライミングクレーン1のクレーン本体3からカウンターフレーム4を取り外す。高床化工程では、マスト2の高さを高床化させるように、マスト2を順次立設する。
【0046】
このような方法によれば、クライミングクレーン1の、マスト2の高床化に伴う転倒のリスクを低減可能することができる。なお、ベースフレーム51にウェイト7を設置する場合は、カウンターフレーム4に設置する場合と比べて、クライミングクレーン1の転倒モーメントを効果的に減らすことができず、より質量の大きなウェイト7が必要である。本方法では、低床時にカウンターフレーム4に設けられていたウェイト7を、そのまま転用するため、低床時/高床時ともにベースフレーム51に設置しているウェイト7と合わせることで、わざわざ別途に質量の大きなウェイト7を準備する必要がなくなり、好適である。すなわち、予め準備するウェイト7の個数を少なくすることができ、効率面でもコスト面でも向上が図られる。
【0047】
3.その他
本実施形態に係るクライミングクレーン1を、次のような態様で実施してもよい。
【0048】
(1)本実施形態では、マスト2を高床化させるにあたって、カウンターフレーム4に設けられたウェイト7をベースフレーム51に移載することについて説明したが、マスト2を低床化させるにあたって、ベースフレーム51に設けられたウェイト7をカウンターフレーム4に移載してもよい。かかる場合、この工事方法は、次の各工程を備える。取外し工程では、ウェイト7をベースフレーム51から取り外す。取付工程では、取り外したウェイト7をカウンターフレーム4に取り付ける。低床化工程では、マスト2の高さを低床化させるように、マスト2を順次解体する。
【0049】
(2)本実施形態では、コンピュータ6による判断によって、ウェイト7を移載するか否かを決定しているが、かかる判断及び決定を、ユーザがマニュアルで実施してもよい。また、制御部63による揚重機構45の制御を自動化してもよいし、ユーザがマニュアルで操作してもよい。
【0050】
(3)ウェイト7を移載する際に、揚重機構45に代えて、クレーン車等、外部の揚重機構45’を用いて実施してもよい。
【0051】
(4)さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記クライミングクレーンにおいて、前記カウンターフレームは、前記クレーン本体に対して着脱可能に構成される、もの。
前記クライミングクレーンにおいて、前記基礎構造部は、地盤に対して固定具無しに接地することで、前記マストを支持するように構成される、もの。
前記クライミングクレーンにおいて、前記ウェイトは、略平板の形状を有し、前記略平板の各頂点において被懸吊部が設けられ、懸吊される前記被懸吊部の組合せに基づいて、揚重の際に維持姿勢を可変に構成される、もの。
前記クライミングクレーンにおいて、ウェイト支持機構をさらに備え、前記ウェイト支持機構は、前記カウンターフレーム及び前記ベースフレームの少なくとも一方に設けられ、複数の凹部を有し、前記ウェイトは、前記略平板の側部に突起を有し、前記突起が前記凹部に入り込むことで、前記ウェイト支持機構に支持される、もの。
前記クライミングクレーンにおいて、揚重機構をさらに備え、前記揚重機構は、前記被懸吊部を直接又は間接に懸吊することで前記ウェイトを揚重し、前記カウンターフレームと前記ベースフレームとの間で前記ウェイトを移載するように構成される、もの。
前記クライミングクレーンにおいて、制御部をさらに備え、前記制御部は、前記マストの高さに応じて、前記カウンターフレームと前記ベースフレームとの間で前記ウェイトを移載するように、前記揚重機構を制御可能に構成される、もの。
クライミングクレーンを用いた工事方法であって、次の各工程を備え、第1の取外し工程では、ウェイトをカウンターフレームから取り外し、取付工程では、取り外した前記ウェイトをベースフレームに取り付け、高床化工程では、マストの高さを高床化させるように、前記マストを順次立設する、方法。
前記工事方法において、第2の取外し工程では、前記クライミングクレーンのクレーン本体から前記カウンターフレームを取り外す、方法。
前記工事方法において、前記クライミングクレーンは、前記クライミングクレーンである、方法。
もちろん、この限りではない。
【0052】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 :クライミングクレーン
2 :マスト
3 :クレーン本体
32 :ジブ
4 :カウンターフレーム
42 :ウェイト支持機構
421 :凹部
45 :揚重機構
5 :基礎構造部
51 :ベースフレーム
63 :制御部
7 :ウェイト
72 :側面
73 :被懸吊部
73a :被懸吊部
73b :被懸吊部
73c :被懸吊部
73d :被懸吊部
75 :突起
75L :突起
75R :突起
G :地盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9