(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147240
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】オーバープリントニス、印刷物、紙基材又はプラスチック基材
(51)【国際特許分類】
C09D 11/10 20140101AFI20220929BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220929BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220929BHJP
C09D 161/14 20060101ALI20220929BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220929BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20220929BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C09D11/10
C09D7/61
C09D7/65
C09D161/14
B65D65/40 D
B32B27/42 101
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048410
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】山田 智和
(72)【発明者】
【氏名】清野 嘉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅和
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正樹
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
3E086AA01
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3E086DA08
4F100AA21
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4J038CB022
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4J039GA25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗菌・抗ウイルス効果が大きく、印刷物が経時で黄変しにくいオーバープリントニスを提供する。
【解決手段】ロジン変性フェノール樹脂を含むワニスと、ドライヤーと、ワックスとを含有するオーバープリントニスであって、前記オーバープリントニスが結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する光触媒を含有し、前記結晶性ルチル型酸化チタンが、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンであり、前記酸化チタン中における前記結晶性ルチル型酸化チタンの含有量が50モル%以上である光触媒を0.1~5質量%含有することを特徴とするオーバープリントニス、これを使用した紙基材又はプラスチック基材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン変性フェノール樹脂を含むワニスと、ドライヤーと、ワックスとを含有するオーバープリントニスであって、前記オーバープリントニスが光触媒を含有し、
前記光触媒が結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有し、
前記結晶性ルチル型酸化チタンが、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンであり、前記酸化チタン中における前記結晶性ルチル型酸化チタンの含有量が50モル%以上、アナターゼ型酸化チタンの含有量が50モル%未満である光触媒であり、
前記オーバープリントニスが前記光触媒を0.1~5質量%含有することを特徴とするオーバープリントニス。
【請求項2】
前記ワニスが、ロジン変性フェノール樹脂及びロジンエステル樹脂を含むワニスであって、ロジン変性フェノール樹脂:ロジンエステル樹脂の質量比率が7:3~3:7である請求項1に記載のオーバープリントニス。
【請求項3】
基材と、前記基材上に配置された請求項1又は2に記載のオーバープリントニスの印刷塗膜とを有することを特徴とする印刷物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のオーバープリントニスを紙基材及びフィルムに塗工した紙基材又はプラスチック基材。
【請求項5】
前記紙基材又はプラスチック基材が、印刷インキ層を更に有する請求項4に記載の紙基材又はプラスチック基材。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥させてニス皮膜を形成するオーバープリントニスに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物の光沢向上や印刷物の皮膜保護の目的から、印刷の後にオーバープリントニス(オーバーコートニスともいう。以後OPニスと称する場合がある)が使用されている。具体的には、印刷インキ各色を印刷後に無色透明なOPニスを印刷する。OPニスとしては、有機溶剤を含有し乾燥させてニス皮膜を形成する溶剤型のOPニスが知られている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
一方近年、様々な基材表面への機能性付与が求められており、印刷物はもとより、プラスチック材料、成形品、紙基材、フィルム基材、包装材等の表面特性の改良が必要とされている。
特に近年では、光沢向上や皮膜保護といった物理的機能性の他、衛生的機能、例えば抗菌性、抗ウイルス性といった機能も所望され、特に新型インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)、ノロウイルスなど、ウイルス感染対策として抗ウイルス性(ウイルス不活化性)対策は急務となっている。
【0004】
抗ウイルス性能を有するOPニス組成物としては、例えばOPニスにポリテトラフルオロエチレン粒子と抗菌剤を含有してなることを特徴とするOPニス組成物が知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2で使用されているゼオライト系無機抗菌剤は、抗菌効果は大きいが抗ウイルス効果は小さく、印刷物が経時で黄変しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-94443号公報
【特許文献2】特開平11-80643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、抗菌・抗ウイルス効果が大きく、印刷物が経時で黄変しにくいオーバープリントニスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する光触媒を特定量含有するオーバープリントニスを提供することで課題を解決した。
【0008】
即ち本発明は、ロジン変性フェノール樹脂を含むワニスと、ドライヤーと、ワックスとを含有するオーバープリントニスであって、前記光触媒を0.1~5質量%含有するオーバープリントニスを提供する。
【0009】
また本発明は、前記ワニスが、ロジン変性フェノール樹脂及びロジンエステル樹脂を含むワニスであって、ロジン変性フェノール樹脂:ロジンエステル樹脂の質量比率が7:3~3:7である請求項1又は2に記載のオーバープリントニスを提供する。
【0010】
また本発明は、基材と、前記基材上に配置された前記記載のオーバープリントニスの塗膜とを有する印刷物を提供する。
【0011】
また本発明は、前記記載のオーバープリントニスを紙基材及びフィルムに塗工した紙基材又はプラスチック基材を提供する。
【0012】
また本発明は、前記記載の紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、抗菌・抗ウイルス効果が大きく、印刷物が経時で黄変しにくいオーバープリントニスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(オーバープリントニス)
本発明のオーバープリントニスは、後述の光触媒を含有する以外は特に限定なく、通常印刷インキ分野で汎用のオーバープリントワニスの組成物であればよい。一般的には、ワニスと、ドライヤー、ワックスを含有し、ワニスとしてはロジン変性フェノール樹脂を含むワニスが使用される。また粘度を調整する目的で、有機溶剤または植物油類を使用する。
【0015】
ロジン変性フェノール樹脂は、例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはパラホルムアルデヒドとフェノール類との加熱反応により得られる平均核体数が1.5~3.0のレゾールを、ロジン類と多価アルコールとの反応により得られるロジンエステル樹脂と反応させて得られる樹脂や、あるいは、平均核体数が1.5~3.0のレゾールとロジン類とを反応させた後、多価アルコールでエステル化して得られる樹脂を用いることができる。
【0016】
レゾールの調整に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、アミルフェノール、p-ターシャリーブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール、ビスフェノールAなどが挙げられ、中でもp-ターシャリーブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール等の、パラ位に炭素原子数が4~12の置換基を持つアルキルフェノールを用いることが好ましい。
【0017】
ロジン類としては、従来公知のものを用いることができ特に制限はない。ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、およびこれらのロジン類を蒸留等により精製したものなどが挙げられる。
【0018】
酸変性ロジンを用いる場合、ロジンの変性に用いる化合物としては、二塩基酸またはその無水物を用いることが好ましい。フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられ、中でもフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく用いられる。
【0019】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられ、中でもグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0020】
前記ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は特に限定はないが、一般的には15,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。また、150,000以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0021】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0022】
前記ロジン変性フェノール樹脂は、さらに、軟化点が150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。また、軟化点は200℃以下であることが好ましい。なお、本明細書における軟化点は、JIS K5601-2-2に準拠し環球法により測定したもので、具体的には試料を充填した黄銅製環をグリセリン浴中に水平に保持し、試料の中心に一定重量の鋼球をのせ、一定速度で浴温を上昇させ、試料が次第に軟化し、鋼球が下降し、ついに厚さ25mmの位置の底板に達したときの温度計の示度をもって軟化点とする。
【0023】
前記ロジン変性フェノール樹脂と併用可能な他の樹脂としては、従来公知のものを使用することができ特に制限はない。ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、石油樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、石油樹脂変性ロジンエステル、石油樹脂変性アルキド樹脂、アルキド樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、アルキド樹脂変性ロジンエステル、アクリル変性ロジン・フェノール樹脂、アクリル変性ロジンエステル、ウレタン変性ロジン・フェノール樹脂、ウレタン変性ロジンエステル、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ロジン・フェノール樹脂、エポキシ変性ロジンエステル、エポキシ変性アルキド樹脂等が例示される。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ロジン変性フェノール樹脂とロジンエステル樹脂の併用はより効果的に印刷適性を付与することができるため好ましい。ロジン変性フェノール樹脂とロジンエステル樹脂を合わせた樹脂量はオーバープリントニス中に25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上となるよう用いることがより好ましい。
また、ロジン変性フェノール樹脂:ロジンエステル樹脂の質量比率が7:3~3:7である事が好ましく、より好ましくは65:35~35:65の範囲であり、55:45~45:55の範囲であれば更に好ましい。
【0024】
植物油類としては、ヒマシ油、落花生油、オリーブオイルなどの不乾性油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油などの半乾性油、アマニ油、エノ油、桐油などの乾性油、再生植物油、植物エステル等の植物由来成分などが挙げられる。
【0025】
植物油類として、再生植物油を使用することもできる。再生植物油とは、調理等に使用された油を回収し、再生処理された植物油のことである。再生植物油としては、含水率を0.3質量%以下、ヨウ素価を90以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましく、より好ましくはヨウ素価100以上である。含水率を0.3質量%以下にすることにより水分に含まれる塩分等のインキの乳化挙動に影響を与える不純物を除去することが可能となり、ヨウ素価を90以上として再生することにより、乾燥性、すなわち酸化重合性の良いものとすることが可能となり、さらに酸価が3以下の植物油を選別して再生することにより、インキの過乳化を抑制することが可能となる。回収植物油の再生処理方法としては、濾過、静置による沈殿物の除去、および活性白土等による脱色といった方法が例示される。
【0026】
脂肪酸エステル類としては、例えば、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸イソブチルエステル、大豆油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、亜麻仁油脂肪酸ブチルエステル、アマニ油脂肪酸イソブチルエステル、トール油脂肪酸ブチルエステル、トール油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、トール油脂オクチルエステル、トール油脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸イソブチルエステル、パーム油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマシ油脂肪酸ブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸イソブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0027】
有機溶剤としては通常石油系溶剤が使用される。石油系溶剤としては、炭素原子数6~20の炭化水素系溶剤が好ましく用いられる。具体的には、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、n-ヘプタン、n-オクタン、トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、シクロヘキサン、シクロヘキシルメタン、オクタデシルシクロヘキサン、メチルイソプロピルシクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、ENEOS株式会社製の「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」、「AFソルベント7号」等が挙げられる。
【0028】
キレート化剤としては、例えば、アルミニウムn-ブトキシド、アルミニウム-iso-ブトキシド、アルミニウム-sec-ブトキシドの誘導体で、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基の各々の基の一つが、エチルアセテート、又は、メチルアセトアセテートで置換された化合物等などが挙げられる。
【0029】
ドライヤーとしては、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアース等の金属と、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸等のカルボン酸との塩、すなわち金属石鹸、あるいは、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアース等の金属とのホウ酸塩等が挙げられる。これらのドライヤーを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ワックスとしてはカルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、シリコーン化合物等の合成ワックス等が挙げられる。これらのワックスを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、これらの複合体を用いることが好ましい。これら複合体を用いることで耐摩擦性を良好なものにすることができる。ワックスは、オーバープリントニス中に1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上となるよう用いることがより好ましい。
【0031】
本発明のオーバープリントワニスはオーバープリントニス中に、艶消し剤を含んでいてもよい。このようなオーバープリントワニス組成物を塗工することにより、印刷物に艶消し効果を付与することができる。艶消し剤としては、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂粒子等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂が効果的に艶消し効果を付与することができるため好ましい。艶消し剤は、オーバープリンニス中に15質量%以上であることが好ましく、30質量%以下であることが好ましい。
【0032】
またデンプンも好ましく使用することができる。ワックスに加えてデンプンを併用することで、耐裏移り性を良好なものとすることができる。平均粒子径D50が10μm以上20μm以下のものを用いることが好ましい。オーバープリントニスにおける、平均粒子径D50が2μm以上7μm以下の粒子と平均粒子径D50が10μm以上20μm以下のデンプンの含有量の合計は、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
【0033】
また体質顔料も好ましく使用することができる。例えばろう石クレー等のクレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、シリカ、ベントナイト、酸化チタン等、公知のものを1種類または2種類以上用いることができる。体質顔料を含むことにより、オーバープリントニスのセットを早めることができ、より効果的に裏移りを抑制することができる。一方で、体質顔料を含むことによりオーバープリントニスの光沢は低下する。したがって、オーバープリントニスにより印刷物に付与したい効果(光沢/艶消し)とその程度により体質顔料の含有量を調整すればよい。体質顔料は、印刷物の光沢を低下させる効果があるため、所望される意匠に応じて添加量は適宜調整することが望ましい。
【0034】
塗工中に地汚れが発生するおそれがある場合には、本発明のオーバープリントニスが、リン酸、リン酸のアンモニウム塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属二水素塩、クエン酸、クエン酸のアンモニウム塩、クエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のマグネシウム塩から成る群から選ばれる一つ以上の汚れ防止剤粒子を用いることが好ましい。汚れ防止剤粒子の含有量は、オーバープリントニスの0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましい。塗工中の湿し水の使用量を抑制でき、セット遅延が防止され、耐裏移り性を良好なものとすることができる。
【0035】
本発明のオーバープリントニスは、その他皮張り防止剤、粘度調整剤、分散剤、上述した以外の汚れ防止剤、乳化調整剤、酸化防止剤等の助剤を含んでいてもよい。これらの助剤としては、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0036】
(光触媒)
本発明で使用する光触媒は、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する光触媒であって、前記結晶性ルチル型酸化チタンが、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンであり、前記酸化チタン中における前記結晶性ルチル型酸化チタンの含有量が50モル%以上、アナターゼ型酸化チタンの含有量が50モル%未満である光触媒である。
【0037】
ルチル型でありかつ結晶性の高い結晶性ルチル型酸化チタンと2価銅化合物とを組み合せて用いることにより、明所及び暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性に優れる光触媒(可視光領域で抗ウイルス性等の光触媒活性を有する可視光応答型光触媒)を得ることができる。また、2価銅化合物は1価銅化合物のように酸化による変色のおそれが少ないため、経時的な変色も抑制することができる。
【0038】
なお、本発明において、「明所」とは、可視光の存在する箇所のことをいい、「暗所」とは、光の存在しない箇所のことをいう。
【0039】
ここで、光触媒活性とは、光誘起分解性及び光誘起親水化性から選ばれる少なくとも1種を意味する。光誘起分解性とは、酸化チタンで処理された表面に吸着している有機物を酸化分解する作用であり、光誘起親水化性とは、酸化チタンで処理された表面が水となじみ易い親水性になる作用である。この光誘起親水化性は、光励起によって生成し、拡散してきた正孔により、酸化チタン表面の水酸基が増加することによって起こると考えられる。
【0040】
また、ウイルスとは、DNAウイルス及びRNAウイルスを意昧するが、細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ(以下、「ファージ」と略記することもある)も包含する。
【0041】
次に、光触媒の各成分について説明する。
(酸化チタン)
光触媒に用いる酸化チタンは、結晶性ルチル型酸化チタンを含むものである。
【0042】
本発明において、結晶性ルチル型酸化チタンとは、Cu-Kα線による回折角度2θに対する回折線強度をプロットしたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークの半値全幅が0.65度以下の酸化チタンのことを意味する。
【0043】
半値全幅が0.65度よりも大きいと、結晶性が悪くなり、暗所における抗ウイルス性が十分に発現しなくなる。この観点から、半値全幅は、好ましくは0.6度以下であり、より好ましくは0.5度以下であり、更に好ましくは0.4度以下であり、より更に好ましくは0.35度である。
【0044】
酸化チタン中における、結晶性ルチル型酸化チタンの含有量(以下、「ルチル化率」ということがある)は、50モル%以上である。含有量が50モル%以上であると、得られる光触媒の、明所及び暗所における抗ウイルス性が十分なものとなり、また、明所における有機化合物分解性や、特に可視光応答性も十分なものとなる。この観点から、ルチル化率は、好ましくは90モル%以上であり、さらに好ましくは94モル%以上である。このルチル化率は、後述するとおり、XRDによって測定した値である。
【0045】
上記観点から、酸化チタン中におけるアナターゼ型酸化チタンの含有量(以下、「アナターゼ化率」ということがある)は少ないことが好ましく、アナターゼ化率は、50モル%未満であり、好ましくは10モル%未満であり、より好ましくは7モル%未満であり、更に好ましくは0モル%(すなわち、アナターゼ型酸化チタンを含まない)である。このアナターゼ化率もルチル化率と同様に、XRDによって測定した値である。
【0046】
酸化チタンの比表面積は、好ましくは1~200m2/gである。1m2/g以上であると、比表面積が大きいためウイルス、菌及び有機化合物との接触頻度が大きくなり、得られる光触媒の、明所及び暗所における抗ウイルス性や、有機化合物分解性及び抗菌性が優れる。一方、200m2/g以下であると、取扱性に優れている。これらの観点から、酸化チタンの比表面積は、より好ましくは3~100m2/gであり、更に好ましくは4~70m2/gであり、特に好ましくは8~50m2/gである。ここで比表面積とは、窒素吸着によるBET法にて測定した値である。
【0047】
酸化チタンには、気相法で製造されたものと液相法で製造されたものがあり、そのいずれを用いることもできるが、気相法で製造された酸化チタンがより好適である。
【0048】
気相法は、四塩化チタンを原料として、酸素との気相反応により酸化チタンを得る方法である。気相法で得られた酸化チタンは、粒子径が均一であると同時に、製造時に高温プロセスを経由しているため、結晶性が高いものとなる。その結果、得られる光触媒の、明所及び暗所における抗ウイルス性や、有機化合物分解性及び抗菌性が良好なものとなる。
【0049】
一方、液相法は、塩化チタン、硫酸チタニルなどの酸化チタン原料を溶解した液を、加水分解または中和して酸化チタンを得る方法である。液相法で製造された酸化チタンは、ルチルの結晶性が低く比表面積が大きくなる傾向にあり、この場合、焼成等を行って最適な結晶性及び比表面積を有する酸化チタンにすればよいが、手間がかかるため、気相法の方がより好適である。
【0050】
酸化チタンとしては、市販されている酸化チタンをそのまま使用するほうが、触媒調製の工程を考えると有利である。
【0051】
(2価銅化合物)
光触媒は、2価銅化合物を含む。この2価銅化合物単独では、明所及び暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性、可視光応答性を有しないが、前述した結晶性ルチル型酸化チタンと組み合わせることにより、明所及び暗所における抗ウイルス性、明所における有機化合物分解性、及び可視光応答性が十分に発現する。また、この2価銅化合物は、1価銅化合物と比べて酸化等による変色が少ないため、この2価銅化合物を用いた光触媒は、変色が抑制される。
【0052】
2価銅化合物には、特に限定はなく、2価銅無機化合物及び2価銅有機化合物の1種又は2種が挙げられる。
【0053】
2価銅無機化合物としては、硫酸銅、硝酸銅、沃素酸銅、過塩素酸銅、シュウ酸銅、四ホウ酸銅、硫酸アンモニウム銅、アミド硫酸銅及び塩化アンモニウム銅、ピロリン酸銅、炭酸銅からなる2価銅の無機酸塩、塩化銅、フッ化銅及び臭化銅からなる2価銅のハロゲン化物、並びに酸化銅、硫化銅、アズライト、マラカイト及びアジ化銅からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0054】
2価銅有機化合物としては、2価銅のカルボン酸塩が挙げられる。この2価銅のカルボン酸塩としては、蟻酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、吉草酸銅、カプロン酸銅、エナント酸銅、カプリル酸銅、ペラルゴン酸銅、カプリン酸銅、ミスチン酸銅、パルミチン酸銅、マルガリン酸銅、ステアリン酸銅、オレイン酸銅、乳酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅、安息香酸銅、フタル酸銅、イソフタル酸銅、テレフタル酸銅、サリチル酸銅、メリト酸銅、シュウ酸銅、マロン酸銅、コハク酸銅、グルタル酸銅、アジピン酸銅、フマル酸銅、グリコール酸銅、グリセリン酸銅、グルコン酸銅、酒石酸銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、イソ吉草酸銅、β‐レゾルシル酸銅、ジアセト酢酸銅、ホルミルコハク酸銅、サリチルアミン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅、セバシン酸銅及びナフテン酸銅からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。その他の2価銅有機化合物としては、オキシン銅、アセチルアセトン銅、エチルアセト酢酸銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅、フタロシアニン銅、銅エトキシド、銅イソプロポキシド、銅メトキシド、及びジメチルジチオカルバミン酸銅からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0055】
上記2価銅化合物のうち、好ましくは酸化銅、2価銅のハロゲン化物、2価銅の無機酸塩及び2価銅のカルボン酸塩の1種又は2種以上であり、例えば2価銅のハロゲン化物、2価銅の無機酸塩及び2価銅のカルボン酸塩の1種又は2種以上である。
【0056】
また、2価銅化合物としては、下記一般式(1)で表される2価銅化合物が挙げられる。
Cu2(OH)3X (1)
一般式(1)において、Xは陰イオンであり、好ましくはCl、Br、I等のハロゲン、CH3COO等のカルボン酸の共役塩基、NO3、(SO4)1/2等の無機酸の共役塩基、又はOHである。
【0057】
これらの2価銅化合物のうち、より不純物が少なく、経済的な観点から、2価銅無機化合物がより好ましく、酸化銅が更に好ましい。また、上記一般式(1)で表される2価銅化合物も好ましい。2価銅化合物は、無水物であっても水和物であってもよい。
【0058】
2価銅化合物の銅換算含有量は、前記酸化チタン100質量部に対して、好ましくは0.01~20質量部である。0.01質量部以上であると、明所及び暗所における抗ウイルス性、有機化合物分解性及び抗菌性が良好なものとなる。また、20質量部以下であると、酸化チタン表面が被覆されてしまうことが防止されて光触媒としての機能(有機化合物分解性、抗菌性等)が良好に発現すると共に、少量で抗ウイルス性能を向上することができて経済的である。この観点から、2価銅化合物の銅換算含有量は、酸化チタン100質量部に対して、より好ましくは0.1~20質量部であり、更に好ましくは0.1~15質量部であり、より更に好ましくは0.3~10質量部である。
【0059】
ここで、この酸化チタン100質量部に対する2価銅化合物の銅換算含有量は、2価銅化合物の原料と酸化チタンの原料との仕込み量から算出することができる。また、この銅換算含有量は、後述するICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析により光触媒を測定することで特定することもできる。
【0060】
光触媒は、前述のとおり、必須成分として、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有するが、本発明の目的を阻害しない範囲内において、他の任意成分を含有していてもよい。ただし、光触媒としての機能及び抗ウイルス性能の向上の観点から、光触媒中における当該必須成分の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上であり、更に好ましくは100質量%である。
【0061】
光触媒は、結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと、2価銅化合物原料とを混合する混合工程を実施することにより、製造することができる。また、この混合工程によって得られた混合物を熱処理する熱処理工程を更に実施して、光触媒を得てもよい。また、銅化合物の水溶液中に酸化チタンを懸濁させて、吸着させることによって、光触媒を得ることもできる。具体的には、光触媒は、特許第5343176号公報に記載の方法により製造できる。
【0062】
光触媒の一次粒子径は概ね200~400nmの範囲、2次粒子径は概ね3~10μ程度であると、コーティング剤に分散でき且つ抗ウイルス性等の光触媒活性に優れることから好ましい。
なお1次粒子径の測定方法は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した値である。
【0063】
光触媒は、オーバープリントニス本来の透明性,印刷適性、光沢といった各種性能を損なわない範囲で、抗ウイルス性等の光触媒活性を発現するために、本発明の紙基材用又はプラスチック基材用のオーバープリントニスに0.1質量%以上、5質量%以下の範囲で含有する。0.1質量%を下回る範囲では、所望する抗ウイルス性、抗菌性が得られず、一方、5質量%を超える範囲では、印刷物が黄変し、印刷物の光沢が低下する。また、中でも0.5~3質量%含有することが好ましい。
【0064】
(オーバープリントニスの製造方法)
本発明のオーバープリントニスは、上記の原料を用い、従来公知の方法で製造することができる。艶消し効果のあるオーバープリントニスの場合、一例として、前記ロジン変性フェノール樹脂を含む樹脂類、植物油類または脂肪酸エステル類またはそれらの混合物、さらに必要に応じて石油系溶剤、キレート化剤、その他助剤等を加熱溶解させて調整したワニスに、添加剤等を添加し、攪拌機で充分にプレミキシングを行なった後、ショットミル、ロールミル等で練肉を行う。練肉後、ワニス、石油系溶剤、植物油、その他ワックス、酸化防止剤、乳化調整剤等の助剤を添加し、充分に攪拌混合する。前記光触媒、ワックスは、プレミキシングの際に添加してもよいし、練肉後に添加してもよい。
【0065】
これらの原料はオーバープリントニスに必要とされる粘度や流動性に合わせて使用量を調整する。また、これらの原料の添加時期は固定されたものではなく、混合状態に基づいて適切に調整される。
【0066】
(印刷物)
本発明の印刷物は、基材上に直接、あるいは酸化重合型のオフセット印刷インキ組成物を用いて平版オフセット印刷機により印刷した印刷物上に、上述したオーバープリントワニス組成物を塗工して得られる。オーバープリントワニス組成物は、印刷物の全面に塗工されていてもよいし、一部のみに塗工されていてもよい。塗工量はオーバープリントワニス組成物を塗工する目的により適宜調整すればよいが、一例として乾燥後のオーバープリントワニス組成物の塗膜の膜厚が0.5μm~1.5μm程度となるよう調整する。
【0067】
塗工方法としては、平版オフセット印刷機にコーティング装置を組み込むなどし、印刷インキ組成物を用いた印刷に引き続いてオーバープリントニスを塗工する、いわゆるインライン方式であってもよいし、平版オフセット印刷機による印刷後に、グラビア方式やフレキソ方式のコーティング装置を備えたコーター機によって塗工する、いわゆるオフライン方式であってもよい。
【0068】
(紙基材)
基材としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、特にコート紙、マットコート紙、上質紙等の紙基材への印刷に適している。また裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0069】
(プラスチック基材)
また、プラスチック基材に塗工してもよい。プラスチック基材は、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材に使用される基材であればよい。具体的には例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。また基材フィルムにはコロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。 また基材は、前記紙基材やフィルム基材をドライラミネート法や無溶剤ラミネート法、あるいは押出ラミネート法により積層させた積層構造を有する積層体(積層フィルムと称される場合もある)であっても構わない。
【0070】
前記紙基材又はプラスチック基材は、印刷インキ層を更に有していてもよい。 印刷インキ層に使用される印刷インキには特に限定はなく、オフセット平版インキ、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキ等の印刷層上に塗工が可能である。特に前述の通り、酸化重合型のオフセット印刷インキ組成物を用いて平版オフセット印刷機により印刷した印刷物上に塗工する方法が、工業的に好ましい。
【0071】
(容器、包装材)
前記単層の紙基材あるいはフィルム基材、積層構造を有する積層体は、業界や使用方法等により、機能性フィルム、軟包装フィルム、シュリンクフィルム、生活用品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、食品包装用フィルム、カートン、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等様々な表現がなされているが、本発明のオーバープリントニスは特に限定なく使用することができる。また本発明のオーバープリントニスを塗工後のこれら基材は、成形し容器や包装材となるが、この際本発明のオーバープリントニスは、これらを使用した容器や包装材とした際に最表層となる面に塗工されることが好ましい。
【実施例0072】
以下に、本発明の内容及び効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0073】
<光触媒の調製>
まず、使用する酸化チタン原料(昭和電工セラミックス株式会社製)について、次のとおり性状を測定した。
【0074】
(BET比表面積)
酸化チタン原料のBET比表面積は、株式会社マウンテック製の全自動BET比表面積測定装置「Macsorb,HM model-1208」を用いて測定した。
(酸化チタン原料中のルチル含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅))
酸化チタン原料中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅)は、粉末X線回折法により測定した。
【0075】
すなわち、乾燥させた酸化チタン原料について、測定装置としてPANalytical社製「X’pertPRO」を用い、銅ターゲットを用い、Cu-Kα1線を用いて、管電圧45kV、管電流40mA、測定範囲2θ=20~100deg、サンプリング幅0.0167deg、走査速度3.3deg/minの条件でX線回折測定を行った。
【0076】
ルチル型結晶に対応するピーク高さ(Hr)、ブルッカイト型結晶に対応するピーク高さ(Hb)、及びアナターゼ型結晶に対応するピーク高さ(Ha)を求め、以下の計算式により、酸化チタン中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)を求めた。
【0077】
ルチル化率(モル%)={Hr/(Ha+Hb+Hr)}×100
また、酸化チタン中における、アナターゼ型酸化チタンの含有量(アナターゼ化率)及びブルッカイト型酸化チタンの含有量(ブルッカイト化率)を、それぞれ以下の計算式により求めた。
【0078】
アナターゼ化率(モル%)={Ha/(Ha+Hb+Hr)}×100
ブルッカイト化率(モル%)={Hb/(Ha+Hb+Hr)}×100
上記X線回折測定によって得られたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークを選択し、半値全幅を測定した。
【0079】
(一次粒子径)
平均1次粒子径(DBET)(nm)は、BET1点法により、酸化チタンの比表面積S(m2/g)を測定し、下式
DBET=6000/(S×ρ)
より算出した。ここでρは酸化チタンの密度(g/cm3)を示す。
【0080】
使用した酸化チタン原料の測定結果を表1に示す。
【0081】
【0082】
(製造例1)
蒸留水100mLに6g(100質量部)の酸化チタン原料(昭和電工セラミックス株式会社製)を懸濁させ、0.0805g(銅換算で0.5質量部)のCuCl2・2H2O(関東化学株式会社製)を添加して、10分攪拌した。pHが10になるように、1mol/Lの水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)水溶液を添加し、30分間攪拌混合を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過し、得られた粉体を純水で洗浄し、80℃で乾燥し、ミキサーで解砕し、試料(光触媒)を得た。
【0083】
得られた試料(光触媒)をフッ酸溶液中で加熱して全溶解し、抽出液をICP発光分光分析により定量した。その結果、酸化チタン100質量部に対して、銅イオンが0.5質量部であった。すなわち、仕込みの銅イオン(CuCl2・2H2O由来)の全量が酸化チタン表面に担持されていた。
【0084】
製造例1により得られた試料(光触媒)を以下の方法により分析した。
【0085】
(ルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅))
製造例1により得られた試料(光触媒)について、酸化チタン中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)及び結晶性(半値全幅)を、粉末X線回折法により測定した。
【0086】
すなわち、乾燥させた光触媒を、乳鉢で擦り潰した粉末を試料とした。この試料について、測定装置としてPANalytical社製「X’pertPRO」を用い、銅ターゲットを用い、Cu-Kα1線を用いて、管電圧45kV、管電流40mA、測定範囲2θ=20~100deg、サンプリング幅0.0167deg、走査速度3.3deg/minの条件でX線回折測定を行った。
【0087】
ルチル型結晶に対応するピーク高さ(Hr)、ブルッカイト型結晶に対応するピーク高さ(Hb)、及びアナターゼ型結晶に対応するピーク高さ(Ha)を求め、以下の計算式により、酸化チタン中におけるルチル型酸化チタンの含有量(ルチル化率)を求めた。
【0088】
ルチル化率(モル%)={Hr/(Ha+Hb+Hr)}×100
上記X線回折測定によって得られたX線回折パターンにおいて、ルチル型酸化チタンに対応する最も強い回折ピークを選択し、半値全幅を測定した。
【0089】
(2価銅化合物の同定)
製造例1により得られた試料(光触媒)中に存在する2価銅化合物を、上記の測定装置及び測定条件にて、X線回折測定で同定した。結果を表2に示した。
【0090】
【0091】
<ロジン変性フェノール樹脂の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、パラターシャルブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド360部、キシレン1000部、50%水酸化ナトリウム10部を仕込み、95℃に昇温、同温度を維持しながら6時間反応させた後、水300部と塩酸13部を混合後加え中和後、さらに水1000部を加え、上澄みを上記と同様の装置に取り出し、120℃に昇温して30分攪拌し、上澄みを取り出して、固形分57%のレゾール型フェノール樹脂を得た。
【0092】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、酸価165mgKOH/gのガムロジン970部、無水マレイン酸14部を仕込み、180℃に昇温し、ペンタエリスリトール107部、酸化亜鉛2部を加え、250℃に昇温し同温度を維持しながら酸価が20mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後180℃に降温し、同温度を維持しながらレゾール型フェノール樹脂を滴下ロートを用いて滴下速度2.5部/分で滴下し、50%トルエン溶液の25℃ガードナー粘度がF~Gになった時点で滴下を停止、30分後樹脂を取り出し、ロジン変性フェノール樹脂を得た。
【0093】
<ロジン変性フェノール樹脂ワニスの製造>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂を440部、大豆サラダ油140部を仕込み、180℃で1時間過熱攪拌した。その後AFソルベント6号410部を加え、160℃に降温し、エチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート10部を加え、同温度を1時間保持しロジン変性フェノール樹脂ワニス(樹脂量44質量%)を得た。
【0094】
<ロジンエステル樹脂の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、ガムロジン(酸価165KOHmg/g)1000部とフマル酸106部 を投入し、窒素気流下で220℃にて1 時間加熱攪拌して酸変性ガムロジンと未反応ガムロジンを含有する酸価242KOHmg/gの反応混合物を得た後、亜麻仁油317部とペンタエリスリトール162部を添加・混合し、更に触媒として酸化マグネシウム1.5部を添加して撹拌・混合したところ、反応容器内の温度は161℃となった。次いで、この反応容器を加熱し、昇温速度30℃/hrで270℃まで昇温しながら反応させた後、さらに270℃で酸価が20KOHmg/g以下になるまで反応させて、変性ロジンエステル樹脂と未反応の亜麻仁油とペンタエリスリトールを含有したロジンエステル樹脂を得た。
【0095】
<ロジンエステル樹脂ワニスの製造>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、ロジンエステル樹脂520部と、亜麻仁油170部と、AFソルベント6号300部を投入し、200℃で攪拌しながら30分間保温して粘度を1,000~2,000dPa・sの範囲内に調整した。その後160℃ に冷却し、エチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート10部を添加した後、200℃ に昇温し、60分間保温しロジンエステル樹脂ワニス(樹脂量52質量%)を得た。
【0096】
<ポリエチレンワックスコンパウンド>
ポリエチレンワックス35部と、大豆サラダ油65部を加熱撹拌した後、室温まで冷却
してコンパウンドとしたものを用いた。
【0097】
<オクチル酸マンガン溶液>
オクチル酸マンガン50部を大豆サラダ油50部で溶解した溶液を用いた。
【0098】
<有機溶剤>
AF6号ソルベントを使用した。
【0099】
<オーバープリントニスの製造方法>
表3及び表4の組成に従って、実施例1~8及び比較例1~5のオーバープリントニスを攪拌機を用いて混合することによって、各種のオーバープリントニスを得た。なお表中の空欄は未配合である。
【0100】
(評価項目)
(1)テーブル評価
オーバープリントニスを下記条件にて印刷を行い、乾燥後の印刷物を用いて抗菌性、抗ウイルス性、黄変性、光沢、耐摩擦性について評価を行った。
【0101】
<条件>
・印刷機 : RIテスター
・印刷用紙 : OKトップコートプラス
・盛り量 : 0.125cc
【0102】
(抗菌性)
オーバープリントニスの印刷面に菌液を滴下して35℃湿度90%で24時間後の生菌数を測定する。接種菌数に対して1000分の1以下の場合は◎、100分の1以下の場合は〇、それ以外は×とした。菌種は黄色ぶどう球菌と大腸菌の2種類について評価を行った。
【0103】
(抗ウイルス性)
オーバープリントニスの印刷面にウイルス液を滴下して25℃で24時間後のウイルス数を測定する。接種ウイルス数に対して1000分の1以下の場合は◎、100分の1以下の場合は〇、それ以外は×とした。ウイルス種はA型インフルエンザウイルスとネコカリシウイルスの2種類について評価を行った
【0104】
(印刷物の黄変性)
オーバープリントニスの印刷物を紫外線照射装置に通した後、印刷面の黄変性について目視評価を行った。抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて黄変性が同程度の場合は◎、黄変性が僅かに見られる場合は〇、黄変性が見られる場合は×とした。
【0105】
(光沢)
オーバープリントニスの印刷面の光沢について目視評価を行った。抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて光沢が同程度の場合は◎、光沢が僅かに低い場合は〇、光沢が低い場合は×とした。
【0106】
(耐摩擦性試験)
学振形摩擦試験機を用いてオーバープリントニスの印刷物を荷重500gで10回擦り、抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて摩耗が同程度の場合は◎、摩耗が僅かに多い場合は〇、摩耗が多い場合は×とした。
【0107】
(印刷適性試験)
<印刷条件>
・印刷機 :LITHRONE G40((株)小森コーポレーション社製)
・用紙 :OKトップコート+(王子製紙(株)社製)
・湿し水 :Presarto-SD100 2.5%水道水希釈液(DICグラフィックス(株)社製)
・印刷速度:10,000枚/時
・版 :SONORA(コダック合同会社製)
【0108】
上記印刷機においてオーバープリントニスをそれぞれ5,000部印刷して印刷適性を確認した。抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて印刷適性が同程度の場合は◎、印刷適性が僅かに悪い場合は〇、印刷適性が悪い場合は×とした。
【0109】
結果を表3、表4に示す。なお空欄は未配合である。
【0110】
【0111】
【0112】
以上の結果、実施例のオーバープリントニスは、抗菌・抗ウイルス効果が大きく、印刷物が経時で黄変しにくいことがが明らかである。