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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147301
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】経糸糊付装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20220929BHJP
   B05C 3/132 20060101ALI20220929BHJP
   D06B 1/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B05C1/08
B05C3/132
D06B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048482
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥 純一
(72)【発明者】
【氏名】向出 充希
【テーマコード(参考)】
3B154
4F040
【Fターム(参考)】
3B154AB01
3B154BA05
3B154BB39
3B154BB42
3B154BB47
3B154BC01
3B154BC07
3B154BC22
3B154BD04
3B154DA26
4F040AA22
4F040AB01
4F040AC02
4F040BA27
4F040BA50
4F040CB22
4F040CB26
4F040CB29
4F040CB36
4F040CC02
4F040CC09
4F040CC14
4F040CC19
(57)【要約】
【課題】
本発明は、底板、前後の端壁及び左右の側壁から成ると共に糊液が貯留される糊付け槽と、糊付け槽内の糊液に浸される第1のロールと、経糸シートの経路を挟むように第1のロールに外接する第2のロールとを含み、糊付け槽における前後の端壁の一方の側に糊液を供給する供給部が設けられると共に、供給部が設けられる側の端壁である供給側端壁とは反対側の越流側端壁の上縁の高さ位置が供給側端壁の上縁の高さ位置よりも低い位置であることで糊液が越流側端壁から溢流するように構成された経糸糊付装置に関する。そして、本発明は、糊付け槽内における糊液の液面付近に浮遊する異物が増大して槽内の糊液の状態が悪化するのを可及的に防止することができる経糸糊付装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
糊付け槽における左右の側壁が上縁からの糊液の溢流を許容する越流部分を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、前後の端壁及び左右の側壁から成ると共に糊液が貯留される糊付け槽と、前記糊付け槽内の糊液に浸される第1のロールと、経糸シートの経路を挟むように前記第1のロールに外接する第2のロールとを含み、前記糊付け槽における前後の前記端壁の一方の側に糊液を供給する供給部が設けられると共に、前記供給部が設けられる側の端壁である供給側端壁とは反対側の越流側端壁の上縁の高さ位置が前記供給側端壁の上縁の高さ位置よりも低い位置であることで糊液が前記越流側端壁から溢流するように構成された経糸糊付装置において、
両前記側壁が上縁からの糊液の溢流を許容する越流部分を含む
ことを特徴とする経糸糊付装置。
【請求項2】
両前記側壁が、高さ位置を変更可能な可動板を含み、前記越流部分が、可動板の高さ位置によって画定される
ことを特徴とする請求項1に記載の経糸糊付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底板、前後の端壁及び左右の側壁から成ると共に糊液が貯留される糊付け槽と、糊付け槽内の糊液に浸される第1のロールと、経糸シートの経路を挟むように第1のロールに外接する第2のロールとを含み、糊付け槽における前後の端壁の一方の側に糊液を供給する供給部が設けられると共に、供給部が設けられる側の端壁である供給側端壁とは反対側の越流側端壁の上縁の高さ位置が供給側端壁の上縁の高さ位置よりも低い位置であることで糊液が越流側端壁から溢流するように構成された経糸糊付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような経糸糊付装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された経糸糊付装置は、糊液が貯留される糊付け槽と、糊付け槽内の糊液に浸される下方の糊絞りローラ(第1のロール)と、第1のロールに外接する上方の糊絞りローラ(第2のロール)とを備えている。そして、その第1のロール及び第2のロールの間を経糸シートが通過することで、経糸シートから余分な糊液が搾り出される。
【0003】
なお、糊付け槽内の糊液の液面には、経糸の毛羽や風綿、経糸に付着していた油分、サイジングロールの回転に起因する気泡といった異物が浮遊している。そのため、一般的な経糸糊付装置においては、液面に浮遊する異物を除去するために、糊付け槽内に新しい糊液を継続して供給することで、糊付け槽内の古い糊液と共に液面の異物を槽外へ溢流させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-50357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の経糸糊付装置においては、糊付け槽における前後の端壁のうちの一方(後側の端壁)の側から新しい糊液が槽内に供給されるようになっている。そして、糊付け槽における他方の端壁(前側の端壁)は、その上縁の高さ位置が後側の端壁の上縁の高さ位置よりも低い位置であるように形成されている。それにより、その糊付け槽では、後側の端壁の側から糊液が供給されるのに伴い、前側の端壁から糊液が溢流するようになっている。したがって、その糊付け槽においては、その後側の端壁が本発明で言う供給側端壁となり、前側の端壁が越流側端壁となっている。そして、そのように前側の端壁から糊液を溢流させることで、前記した異物が浮遊する液面付近の糊液を槽外へ排出し、槽内における糊液の状態の悪化を防止しようとしている。
【0006】
なお、槽内における第1のロールの前側の領域(第1のロールと前側の端壁との間の領域)においては、槽内での第1のロールの回転によって前方へ向けた糊液の流れが発生するため、その前側の領域(前方領域)における糊液に浮遊する異物は、短時間で槽外へ排出される。しかし、槽内における第1のロールの両側の領域(側方領域)では、浮遊する異物がその領域に滞留してしまう場合があり、その結果として、槽内における糊液の状態が悪化してしまう場合がある。
【0007】
詳しくは、特許文献1の経糸糊付装置を含めた従来の一般的な経糸糊付装置においては、その糊付け槽における左右の側壁と第1のロールとの間隔が狭く、前記側方領域は、前記前側領域よりも非常に小さい。また、前記側方領域では、第1のロールの回転によって発生する前方へ向けた糊液の流れの程度は、前記前方領域と比べ、非常に小さくなっている。そのため、前記側方領域では、糊液の流れが弱く、その液面付近に浮遊する異物が、ある程度の時間に亘ってその領域に滞留してしまうといった場合がある。それに対し、異物は経糸糊付装置の運転中において発生し続けるため、場合によっては、前記側方領域に滞留する異物が前記前方領域に流れて経糸シートに付着してしまう等、異物が経糸シートへの糊付けに悪影響を及ぼすほど増大してしまう(槽内の糊液の状態が悪化してしまう)虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、液面付近の異物が増大して糊付け槽内における糊液の状態が悪化するのを可及的に防止することができる経糸糊付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような経糸糊付装置を前提とし、左右の側壁が上縁からの糊液の溢流を許容する越流部分を含むことを特徴とする。
【0010】
なお、ここで言う「上縁からの糊液の溢流を許容する越流部分」とは、越流側端壁の上縁から糊液が溢流するように構成された糊付け槽において、その越流側端壁の上縁の高さ位置との関係、及び糊液の種類、槽内への糊液の供給量等との関係で、前記のように越流側端壁の上縁から糊液が溢流しつつも、自身の上縁からも糊液が溢流するようにその上縁の高さ位置が定められた側壁の部分を指す。なお、その越流部分は、側壁の一部分には限られず、側壁全体であっても良い。
【0011】
また、本発明において、両側壁が高さ位置を変更可能な可動板を含み、前記した越流部分が可動板の高さ位置によって画定されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明による経糸糊付装置によれば、越流側端壁の上縁から糊液が溢流する糊付け槽において、その左右の側壁が、上縁からの糊液の溢流を許容する越流部分を含んでいる。すなわち、糊付け槽が、越流側端壁の上縁から糊液が溢流すると共に、左右の側壁における少なくとも一部の上縁からも糊液が溢流するように構成されている。それにより、前記側方領域において前記した異物が滞留しにくくなる。したがって、そのような本発明による経糸糊付装置によれば、越流側端壁の上縁のみから糊液が溢流するような糊付け槽を備えた経糸糊付装置と比べて、槽内の糊液の状態が悪化するのを可及的に防止することができる。
【0013】
また、高さ位置を変更可能な可動板を含むように左右の側壁を構成し、越流部分がその可動板の高さ位置によって画定されるものとすれば、糊液の種類や糊液の供給量等に応じて、槽外への糊液の溢流状態を適宜調整することが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る一実施形態における経糸糊付装置の側面図である。
図2図1の平面図である。
図3図1における糊付け槽の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下では、図1図3に基づき、本発明が適用された経糸糊付装置の一実施形態(実施例)について説明する。なお、本実施例は、経糸糊付装置1が、糊付け槽内の糊液に浸される第1のロールとしてのサイジングロール11と、第1のロールに外接する第2のロールとしての2つのスクイズロール13、15とを備える例である。
【0016】
経糸糊付装置1は、糊液Sを貯留する糊付け槽3と、経糸シートTが巻き掛けられると共に糊液Sに浸されるサイジングロール11と、サイジングロール11に外接する第1のスクイズロール13及び第2のスクイズロール15とを備えている。また、経糸糊付装置1は、サイジングロール11と第1のスクイズロール13との外接位置に上方から糊液Sを供給する糊液供給装置20も備えている。その経糸糊付装置1の各構成要素について、詳しくは以下の通りである。
【0017】
糊付け槽3は、平面視において略矩形状を成しており、底面を成す底板4と、底板4における4つの端縁からそれぞれ立設する前後の端壁5、6及び左右の側壁7、8とで形成されている。なお、矩形状を成す前記底面の長辺方向が糊付け槽3の幅方向(側壁7、8が対向する方向)となり、短辺方向が前後方向(端壁5、6が対向する方向)となっている。
【0018】
また、糊付け槽3における後側の端壁(後側端壁)6には、後述する糊液Sの供給源に接続された供給部30が設けられている。そして、その供給部30を介して糊付け槽3内に糊液Sが供給されることで、その槽内に糊液Sが貯留される。
【0019】
サイジングロール11は、経糸シートTが巻き掛けられるロール部11aと、ロール部11aの両端に設けられる軸部11b、11bとで構成されている。そして、サイジングロール11は、その両軸部11b、11bにおいて、経糸糊付装置1におけるフレーム(図示略)に対し回転可能に支持されている。なお、サイジングロール11は、平面視においてロール部11aが糊付け槽3の存在範囲内に位置すると共に、その軸線方向が前記幅方向と一致するように設けられている。また、サイジングロール11は、上下方向に関しては、ロール部11aの下端が前側の端壁(前側端壁)5の上縁よりも下方に位置するように設けられている。それにより、サイジングロール11は、糊付け槽3内に糊液Sが貯留された状態では、そのロール部11aの下部が糊液Sに浸った状態となる。
【0020】
なお、経糸糊付装置1は、サイジングロール11を回転駆動する駆動機構(図示略)を備えており、サイジングロール11は、経糸シートTの進行に合わせて積極的に回転駆動されるようになっている。そして、経糸シートTは、サイジングロール11におけるロール部11aに巻き掛けられるかたちで案内されており、そのロール部11aを経由する過程で糊液Sに浸され、糊液Sが含浸された状態となる。
【0021】
その上で、その含浸された糊付け槽3内の糊液Sを経糸シートTから搾るための第2のスクイズロール15が、サイジングロール11に対する前側に位置する配置で設けられている。その第2のスクイズロール15は、サイジングロール11と同じく、ロール部15aとそのロール部15aの両端に設けられる軸部15b、15bとで構成されている。
【0022】
そして、第2のスクイズロール15は、その軸線方向をサイジングロール11の軸線方向と一致させた向きで、その両軸部15b、15bにおいて、前記フレームに対し回転可能に支持されている。なお、第2のスクイズロール15は、押圧機構(図示略)を介して前記フレームに対し支持されており、そのロール部15aにおいて、サイジングロール11のロール部11aに対し押圧された状態で外接するように設けられている。したがって、第2のスクイズロール15は、前記のようにサイジングロール11が回転駆動されるのに伴い、従動回転するようになっている。
【0023】
また、その第2のスクイズロール15の上下方向における配置は、本実施例では、その軸心がサイジングロール11の軸心よりも若干上方に位置するものとなっている。したがって、前記したサイジングロール11に対する第2のスクイズロール15の外接位置は、サイジングロール11におけるロール部11aの外周面上において、上下方向に関し軸部11bよりも僅かに上方の位置となっている。
【0024】
その上で、前記のようにサイジングロール11に巻き掛けられた経糸シートTは、前記のように外接するサイジングロール11と第2のスクイズロール15との間を通過した後、外部へ向けて引き出される。そして、そのようにサイジングロール11と第2のスクイズロール15との間を通過する際に、前記のように糊液Sが含浸された経糸シートTから余分な糊液Sが搾られる。
【0025】
さらに、サイジングロール11の上流側には、その上流側において経糸シートTに糊液Sを含浸させるために糊液Sを供給する供給ノズル24と、その供給ノズル24によって供給された糊液Sを搾るための第1のスクイズロール13とが設けられている。
【0026】
それらについて詳しくは、第1のスクイズロール13は、第2のスクイズロール15と同じく、ロール部13aとそのロール部13aの両端に設けられる軸部13b、13bとで構成されている。そして、第1のスクイズロール13は、その軸線方向をサイジングロール11の軸線方向と一致させた向きで、その両軸部13b、13bにおいて、前記フレームに対し回転可能に支持されている。なお、第1のスクイズロール13も、第2のスクイズロール15と同様に、前記押圧機構を介して前記フレームに対し回転可能に支持されている。したがって、第1のスクイズロール13も、サイジングロール11のロール部11aに対し押圧された状態で外接しており、サイジングロール11が回転駆動されるのに伴い、従動回転するようになっている。
【0027】
また、第1のスクイズロール13は、本実施例では、上下方向に関し、その軸心の位置が第2のスクイズロール15の軸心の位置と略一致するような位置に設けられている。すなわち、第1のスクイズロール13は、前記前後方向においてサイジングロール11に対し対称的に設けられている。したがって、サイジングロール11に対する第1のスクイズロール13の外接位置は、サイジングロール11のロール部11aの外周面上において、サイジングロール11に対する第2のスクイズロール15の外接位置と上下方向における略同じ位置となっている。
【0028】
なお、そのようにサイジングロール11に対し第1のスクイズロール13が外接することで、サイジングロール11と第1のスクイズロール13との間に楔状の間隙14が形成された状態となる。そして、その間隙14の上方には、その間隙14に向けて糊液Sを供給する供給ノズル24が設けられている。
【0029】
その供給ノズル24は、サイジングロール11の軸線方向におけるロール部11aの存在範囲内で、複数個が前記幅方向に所定の間隔を置いて並ぶように設けられている。そして、各供給ノズル24を介してその間隙14に上方から糊液Sが供給されることで、その間隙14において、糊液Sが溜められた糊液溜まり18が形成される。
【0030】
その上で、経糸シートTは、第1のスクイズロール13のロール部13aに巻き掛けられるかたちで案内され、前記のように外接するサイジングロール11と第1のスクイズロール13との間を通過した後、前記のようにサイジングロール11に巻き掛けられる。そして、そのように両ロール間に形成された糊液溜まり18を通過することで、経糸シートTに対し糊液Sが含浸された状態となる。そして、そのように糊液Sが含浸された経糸シートTがサイジングロール11と第1のスクイズロール13との間を通過する際に、経糸シートTから余分な糊液Sが搾られる。
【0031】
なお、各供給ノズル24は、前記のように間隙14に対し上方から糊液Sを供給するための糊液供給装置の一部であり、経糸糊付装置1は、そのような糊液供給装置20を備えている。その糊液供給装置20は、前記した供給ノズル24に加え、その供給ノズル24に供給される糊液Sの供給源である供給槽22を備えている。そして、糊液供給装置20においては、その供給槽22と各供給ノズル24とが管路26によって接続されると共に、その管路26中にポンプPが設けられており、そのポンプPによって各供給ノズル24へ糊液Sを供給するようになっている。また、本実施例では、管路26が分岐されて供給部30にも接続されており、糊液供給装置20は、糊付け槽3へも糊液Sを供給するものとなっている。
【0032】
また、経糸糊付装置1においては、糊液Sが糊付け槽3に供給されることで、貯留された糊液Sが槽外へ溢流する。そこで、経糸糊付装置1は、その糊付け槽3の下方に、その溢流した糊液Sを回収するための回収槽40を備えている。
【0033】
その回収槽40は、糊付け槽3と同じく上方が開放された筐体状に形成されており、その前後の端壁41、42の間隔が糊付け槽3の前記短辺方向(前記前後方向)の寸法よりも大きく、且つ、その左右の側壁43、44の間隔が糊付け槽3の前記長辺方向(前記幅方向)の寸法よりも大きいものとなっている。また、前記した間隙14における糊液溜まり18の糊液Sも、供給ノズル24からの糊液Sの供給によって、サイジングロール11のロール部11a及び第1のスクイズロール13のロール部13aの両側へ溢流するが、その溢流した糊液Sも、回収槽40によって回収される。その上で、経糸糊付装置1は、その回収槽40に回収された糊液Sが前記した供給槽22へ送られるように構成されている。
【0034】
以上のような経糸糊付装置1において、本発明では、糊付け槽内における糊液の状態の悪化を可及的に防止することを目的として、左右の側壁が上縁からの糊液の溢流を許容する越流部分を含むようにその糊付け槽が構成されている。そのような本発明における糊付け槽3の一実施形態(本実施例)について、以下で詳しく説明する。
【0035】
先ず、その糊付け槽3において、前側端壁5は、底板4から立設する部分であって底板4と一体化された部分である固定端壁5aと、固定端壁5aに取り付けられる前側可動板5bとで構成されている。なお、固定端壁5aは、前記幅方向における寸法が底板4と同じであると共に、その厚さ方向に見て、前記幅方向と平行な辺が長辺となる矩形状を成している。また、固定端壁5aは、その外側端面(後側端壁6と対向する端面とは反対側の端面)から軸状に突出すると共にその外周に雄ネジが形成された雄ネジ部5a1を有している。なお、その雄ネジ部5a1は、前記幅方向(固定端壁5aの前記長辺の方向)に等間隔で並ぶようなかたちで、固定端壁5aに対し4つ設けられている。
【0036】
そして、前側可動板5bは、板厚方向に見て矩形状を成す板材であり、その端面の長辺方向の寸法が固定端壁5aの前記長辺方向の寸法と略同じ部材となっている。また、本実施例では、その前側可動板5bの端面における短辺方向の寸法は、固定端壁5aの端面における短辺方向の寸法と略同じとなっている。さらに、前側可動板5bは、前記した固定端壁5aにおける雄ネジ部5a1を挿通するための孔であって、板厚方向に貫通するように形成された孔である挿通孔5b1を有している。なお、その挿通孔5b1は、前記幅方向において、前側可動板5bと固定端壁5aとの位置を合わせた状態で、各雄ネジ部5a1と位置が合うように4つ形成されている。その上で、固定端壁5aに対する前側可動板5bの取り付けは、各挿通孔5b1に対し対応する雄ネジ部5a1を挿通させると共に、各雄ネジ部5a1に螺合されたナットを締め込むことで、固定端壁5aの外側端面と各ナットとで前側可動板5bを挟み込むかたちで行われる。
【0037】
なお、前側可動板5bにおける各挿通孔5b1は、前側可動板5bの前記短辺方向に長い長孔として形成されている。それにより、前側可動板5bは、固定端壁5aに対する取り付け位置を上下方向において変更可能となっている。また、前側端壁5における固定端壁5aは、その上縁の高さ位置が後側端壁6の上縁の高さ位置よりも低い位置となるように構成されている。その上で、各挿通孔5b1は、最も低い位置で前側可動板5bを固定端壁5aに対し取り付けた状態において、その前側可動板5bの上縁の高さ位置と固定端壁5aの上縁の高さ位置とが一致するように形成されている。
【0038】
さらに、各挿通孔5b1は、最も高い位置で前側可動板5bを固定端壁5aに対し取り付けた状態において、その前側可動板5bの上縁の高さ位置が後側端壁6の上縁の高さ位置よりも低い位置となるように形成されている。言い換えれば、後側端壁6は、前側端壁5において前側可動板5bが最も高い位置に位置する状態でも、その上縁が前側端壁5よりも上方に位置するような高さを有するように形成されている。したがって、前側端壁5の上縁は、前側可動板5bが固定端壁5aに対しどの位置に取り付けられた状態でも、後側端壁6の上縁よりも低い位置に位置するようになっている。
【0039】
その上で、その糊付け槽3において、貯留された糊液Sは、前記のように糊液Sが槽内に供給されるのに伴い、少なくとも前側端壁5(前側可動板5b)の上縁から溢流することとなる。したがって、本実施例では、後側端壁6が本発明で言う供給側端壁に相当し、前側端壁5(固定端壁5a+前側可動板5b)が本発明で言う越流側端壁に相当する。
【0040】
そして、その糊付け槽3において、左右の側壁7、8は、前側端壁5と同様に、底板4から立設された部分である固定側壁7a、8aと、その固定側壁7a、8aのそれぞれに取り付けられた側方可動板7b、8bとから成っている。したがって、その両固定側壁7a、8aは、前側端壁5における固定端壁5aと後側端壁6との間に亘るかたちで、底板4、固定端壁5a及び後側端壁6と一体的に形成されている。また、両固定側壁7a、8aは、その上縁の高さ位置が前側端壁5における固定端壁5aの上縁の高さ位置と一致するような高さの壁として形成されている。その結果、その両固定側壁7a、8aにおける上縁の高さ位置も、後側端壁6における上縁の高さ位置よりも低くなっている。
【0041】
なお、両固定側壁7a、8aは、その外側面(両側壁7、8における他方と対向する側の端面とは反対側の端面)において、前記した前側端壁5における固定端壁5aの雄ネジ部5a1と同様のかたちに形成された雄ネジ部7a1、8a1を有している。なお、その雄ネジ部7a1、8a1は、各固定側壁7a、8aの前記外側面において、前記前後方向に並ぶかたちで2つ設けられている。
【0042】
また、各側方可動板7b、8bは、板厚方向に見て矩形状を成す板材である。そして、その各側方可動板7b、8bにおける端面の短辺方向の寸法は、前側可動板5bにおける端面の短辺方向の寸法と略同じとなっている。但し、各側方可動板7b、8bにおける端面の長辺方向の寸法は、固定側壁7a、8aの前記前後方向の寸法よりも若干大きくなっている。具体的には、各側方可動板7b、8bにおけるその長辺方向の寸法は、前記前後方向における前側端壁5の前記外側端面と後側端壁6の外側端面(前側端壁5と対向する端面とは反対側の端面)との間隔と略一致したものとなっている。
【0043】
さらに、各側方可動板7b、8bは、固定側壁7a、8aにおける雄ネジ部7a1、8a1を挿通するための2つの孔であって、板厚方向に貫通するように形成された孔である挿通孔7b1、8b1を有している。なお、その挿通孔7b1、8b1は、雄ネジ部7a1、8a1がその挿通孔7b1、8b1に挿通された状態で、各側方可動板7b、8bの端面の長辺方向における両側縁の位置が、前側端壁5の前記外側端面の位置及び後側端壁6の前記外側端面の位置と略一致するように、各側方可動板7b、8bに形成されている。その上で、固定側壁7a、8aに対する側方可動板7b、8bの取り付けは、各挿通孔7b1、8b1に対し対応する雄ネジ部7a1、8a1を挿通させると共に、各雄ネジ部7a1、8a1に螺合されたナットを締め込むことで、固定側壁7a、8aの外側面と各ナットとで側方可動板7b、8bを挟み込むかたちで行われる。
【0044】
また、両側方可動板7b、8bにおける各挿通孔7b1、8b1も、その側方可動板7b、8b1の前記短辺方向に長い長孔として形成されている。それにより、側方可動板7b、8bは、固定側壁7a、8aに対する取り付け位置を上下方向において変更可能となっている。その上で、各挿通孔7b1、8b1も、最も低い位置で側方可動板7b、8bを固定側壁7a、8aに対し取り付けた状態において、その側方可動板7b、8bの上縁の高さ位置と固定側壁7a、8aの上縁の高さ位置とが一致するように形成されている。さらに、各挿通孔7b1、8b1は、最も高い位置で側方可動板7b、、8bを固定側壁7a、8aに対し取り付けた状態において、その側方可動板7b、8bの上縁の高さ位置が後側端壁6の上縁の高さ位置よりも低い位置となるように形成されている。
【0045】
その上で、両側方可動板7b、8bの固定側壁7a、8aに対する取り付け位置は、越流側端壁である前側端壁5(前側可動板5b)の上縁の高さ位置との関係や糊液Sの種類等を踏まえて、その側方可動板7b、8bにおける上縁の高さ位置が、前側可動板5bの上縁から糊液が溢流しつつも自身の上縁からも糊液が溢流する高さ位置となるように設定される。そして、本実施例では、両側方可動板7b、8bは、その上縁全体の高さ位置が前側可動板5bの上縁の高さ位置と略同じ高さ位置となるように、固定側壁7a、8aに対し前記のようなかたちで取り付けられる。
【0046】
それにより、糊付け槽3においては、貯留された糊液Sは、前記のように糊液Sが槽内に供給されるのに伴い、前側端壁5(前側可動板5b)の上縁全体に加え、両側壁7、8(両側方可動板7b、8b)の上縁全体から溢流することとなる。したがって、本実施例では、その両側壁7、8(両側方可動板7b、8b)の上縁全体が、本発明で言う糊液の溢流を許容する越流部分に相当する。
【0047】
そして、そのように構成された本実施例の経糸糊付装置1によれば、越流側端壁(前側端壁5)の上縁から糊液が溢流する糊付け槽3において、槽内の糊液Sの液面付近に浮遊する経糸の毛羽やサイジングロール11の回転に起因する気泡等の異物が、前側端壁5の上縁からの糊液Sの溢流に加え、左右の側壁7、8の上縁からの糊液Sの溢流によっても槽外へ排出されることとなる。それにより、前側端壁の上縁のみから糊液が溢流するように糊付け槽が構成された経糸糊付装置と比べ、槽内におけるサイジングロール11の両側の領域(サイジングロール11と左右の側壁7、8との間の領域)において前記異物が滞留しにくくなる。したがって、その経糸糊付装置1によれば、糊付け槽3内に前記異物が増大するのが抑制され、槽内における糊液Sの状態の悪化が可及的に防止される。
【0048】
以上では、本発明が適用された経糸糊付装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0049】
(1)糊付け槽について、前記実施例では、越流側端壁である前側端壁5は、固定端壁5aと、その固定端壁5aに取り付けられる前側可動板5bとで構成されている。また、両側壁7、8も、固定側壁7a、8aと、その固定側壁7a、8aに取り付けられる側方可動板7b、8bとで構成されている。しかし、本発明においては、その糊付け槽を構成するための越流側端壁及び両側壁は、そのように固定壁(固定端壁5a、固定側壁7a、8a)と固定壁に取り付けられる可動板(前側可動板5b、側方可動板7b、8b)とで構成されるものには限らず、その一方又は両方が固定壁のみで構成されていても良い。
【0050】
例えば、その糊付け装置において糊付けされる経糸の種類や使用される糊液の種類が固定されている場合には、条件が変わらないため、その越流側端壁及び両側壁を固定壁のみで構成するものとしても良い。但し、経糸糊付装置の汎用性を高めるという観点では、上縁の高さ位置が調整できるように、越流側端壁及び両側壁の一方又は両方が可動板を含むように構成されるのが好ましい。
【0051】
また、前記実施例では、前側端壁5と両側壁7、8とは、その上縁の高さ位置が同じとなるように、前側端壁5の前側可動板5bの高さ位置に合わせて両側壁7、8における側方可動板7b、8bが固定側壁7a、8aに取り付けられている。すなわち、糊付け槽において越流側端壁の上縁の高さ位置と両側壁の上縁の高さ位置とが略同じとされている。しかし、本発明においては、糊付け槽は、越流側端壁の上縁の高さ位置と両側壁の上縁の高さ位置とが略同じとされたものには限られない。例えば、前記実施例のように越流側端壁及び両側壁が可動板を含むように構成されている場合において、その各可動板を、越流側端壁及び両側壁の上縁の高さ位置が異なるように固定壁に対し取り付けるようにしても良い。また、越流側端壁及び両側壁が前記したように固定壁のみで構成される場合において、越流側端壁及び両側壁(両固定壁)を、上縁の高さ位置が異なるように形成しても良い。
【0052】
なお、本発明においては、越流側端壁は、その上縁から糊液Sが溢流するような上縁の高さ位置となるように構成されたものとされる。その上で、両側壁は、その上縁の高さ位置が、越流側端壁の上縁の高さ位置との関係において、その上縁(越流部分)から糊液Sが溢流するような高さ位置となるように構成されたものとされる。但し、両側壁の上縁の高さ位置について、越流側端壁の上縁の高さ位置よりも低すぎる(越流側端壁の上縁よりも15mm以上低い)と、使用される糊液の種類等の条件によっては、越流側端壁の上縁から溢流しなくなることも考えられる。そのため、両側壁は、その上縁の高さ位置を越流側端壁の上縁の高さ位置よりも低くする場合でも、その高さ位置の差が15mmよりも小さくなるように構成されるのが好ましい。また、両側壁は、その上縁の高さ位置が越流側端壁の上縁の高さ位置よりも僅かに高いように構成されても良い。
【0053】
また、前記実施例では、両側壁7、8(両側方可動板7b、8b)の上縁全体が越流部分となるように、両側壁7、8が構成されている。しかし、本発明においては、両側壁は、その上縁の少なくとも一部が越流部分として構成されたものであれば良く、上縁全体が越流部分となるように構成されたものには限られない。したがって、両側壁は、前記幅方向に見て、その一部の上縁からのみ糊液Sが溢流するように、その一部分が他の部分よりも上縁の高さ位置が低いように構成されていても良い。
【0054】
例えば、両側壁は、前記幅方向に見て、その上縁が段形状や凹形状を成すように構成されても良いし、前記前後方向においてその上縁が供給側端壁から越流側端壁へ向けて低くなるように傾斜するかたちに構成されても良い。なお、後者については、前記実施例のように両側壁が固定壁と可動板とで構成される場合において、可動板が、その上縁が固定壁の上縁に対して角度を成すようなかたちで、固定壁に対し取り付けられるものとしても良い。
【0055】
また、前記実施例では、両側壁7、8は、固定側壁7a、8aに対し1枚の側方可動板7b、8bが取り付けられるかたちで構成されている。しかし、本発明においては、側壁は、固定側壁に取り付けられる前記実施例の側方可動板に相当する部分を、複数枚の板材を組み合わせて成すように構成されたものとしても良い。その場合、その各板材が側方可動板となり、それぞれが独立して固定側壁に取り付けられる。そして、側壁をそのように構成した場合には、側方可動板単位で上縁の高さ位置を変えることが可能となるため、一部の側方可動板を他の側方可動板よりもその上縁の高さ位置が低くなるように固定側壁に取り付けてその部分が越流部分となるようにすることが可能となる。なお、側壁を固定側壁と側方可動板とで構成する場合において、両側壁における側方可動板の枚数は、同じでなくても良い。
【0056】
また、複数の側方可動板を含むように側壁を構成する場合において、その側壁は、前記前後方向における固定側壁の存在範囲に亘って側方可動板が存在するように構成されたものには限られない。具体的には、固定側壁に取り付けられるときに前記前後方向と平行となる辺の寸法が固定側壁の前記前後方向における寸法の半分よりも小さい側方可動板を複数枚用意し、その側方可動板を固定側壁に対し前記前後方向に間隔を空けた状態で取り付けられるかたちで側壁を構成しても良い。そして、その場合には、前記前後方向における少なくとも側方可動板が取り付けられていない部分の固定側壁の上縁が越流部分となる。
【0057】
(2)経糸糊付装置について、前記実施例の経糸糊付装置1は、糊付け槽3における前後の端壁5、6のうちの後側端壁6に供給部30が設けられ、後側から糊液Sが供給されるように構成されている。すなわち、後側端壁6が供給側端壁となっており、それに伴い、前側端壁5が越流側端壁となっている。しかし、本発明において、経糸糊付装置は、前側の端壁に供給部が設けられて、前側から糊液Sが供給されるように構成されても良い。そして、その場合には、前側の端壁が供給側端壁となり、後側の端壁が越流側端壁となる。
【0058】
また、前記実施例の経糸糊付装置1では、供給ノズル24及び糊付け槽3(供給部30)に糊液Sを供給するための装置が共通の装置(糊液供給装置20)となっている。しかし、本発明において、経糸糊付装置は、糊付け槽(供給部)に糊液Sを供給するための装置を、供給ノズルへ糊液Sを供給する装置とは別に設けるように構成されていても良い。
【0059】
但し、本発明が前提とする経糸糊付装置は、サイジングロールとサイジングロールの後側で外接する第1のスクイズロールとの間の楔状の間隙に対し糊液Sが供給されるように構成されたものには限られない。したがって、経糸糊付装置は、前記した間隙に糊液Sを供給する供給ノズルを備えないように構成されたものであっても良い。そして、その場合には、経糸糊付装置は、第1のスクイズロールも省略したかたちで構成されても良い。
【0060】
(3)第1のロール及び第2のロールについて、前記実施例では、サイジングロール11が糊付け槽3内の糊液Sに浸され、第1、第2の2つのスクイズロール13、15が経糸シートTの経路を挟むようにサイジングロール11に外接するかたちで経糸糊付装置1が構成されている。すなわち、前記実施例の経糸糊付装置1では、サイジングロール11が第1のロールであり、サイジングロール11に外接する2つのスクイズロール13、15が第2のロールとなっている。
【0061】
しかし、本発明において、経糸糊付装置は、第2のスクイズロールが糊付け槽の糊液Sに浸されるように構成されても良い。より詳しくは、経糸糊付装置は、糊付け槽が前記前後方向における第2のスクイズロールの下方に配置された上で、その糊付け槽内の糊液Sに浸った状態となるように第2のスクイズロールをサイジングロールよりも下方に配置するかたちで構成されても良い。そして、その場合には、第2のスクイズロールが第1のロールとなり、第2のスクイズロールに外接するサイジングロールが第2のロールとなる。
【0062】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 経糸糊付装置
3 糊付け槽
4 底板
5 前側の端壁
6 後側の端壁
7 左側の側壁
8 右側の側壁
11 サイジングロール
11a ロール部
11b 軸部
13 第1のスクイズロール
13a ロール部
13b 軸部
14 間隙
15 第2のスクイズロール
15a ロール部
15b 軸部
18 糊液溜まり
20 糊液供給装置
22 供給槽
24 供給ノズル
26 管路
30 供給部
40 回収槽
S 糊液
T 経糸シート
図1
図2
図3