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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147310
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20220929BHJP
   B60H 1/08 20060101ALI20220929BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220929BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
B60H1/22 651B
B60H1/08 611J
B60H1/00 101Q
B60H1/00 102R
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048496
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】519150315
【氏名又は名称】サンデン・アドバンストテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正亮
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA27
3L211BA32
3L211CA18
3L211CA19
3L211CA20
3L211DA14
3L211DA17
3L211DA26
3L211DA35
3L211DA48
3L211DA51
3L211EA03
3L211EA71
3L211FB05
3L211GA26
3L211GA36
3L211GA37
3L211GA47
(57)【要約】
【課題】設備コストを抑えながら車室内空気の熱回収を実現できるようにする。
【解決手段】車両用空調装置は、冷媒回路と、冷媒回路と熱交換する熱媒体回路と、主空調装置と、熱媒体回路の熱交換部を備える補助空調装置と、冷媒回路と熱媒体回路と主空調装置と補助空調装置の動作を制御する制御装置とを備え、制御装置は、実行判定部により、補助空調装置による空調の不要を判断した場合に、補助空調装置にて車室内空気から熱を回収する熱回収モードを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路と、
前記冷媒回路と熱交換する熱媒体回路と、
主空調装置と、
前記熱媒体回路の熱交換部を備える補助空調装置と、
前記冷媒回路と前記熱媒体回路と前記主空調装置と前記補助空調装置の動作を制御する制御装置とを備える車両用空調装置であって、
前記制御装置は、
実行判定部により、
前記補助空調装置による空調の不要を判断した場合に、前記補助空調装置にて車室内空気から熱を回収する熱回収モードを実行することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記実行判定部は、
運転者以外の乗員がいないこと認識した場合に、前記運転者以外の乗員に対して空調を行う前記補助空調装置により、前記熱回収モードを実行することを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記実行判定部は、
後部座席に乗員がいないことを認識した場合に、前記後部座席の乗員に対して空調を行う前記補助空調装置により、前記熱回収モードを実行することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
車両の走行・停車状況及び/又は冷暖房空調の運転状況に応じて、熱回収が可能か否かを判定する熱回収条件成立判定部を備え、
前記熱回収条件成立判定部の判定にて熱回収が可能な場合に、前記実行判定部の判定を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記熱回収モードで回収された熱は、前記熱媒体回路における車室外空気と熱交換する熱交換部の除霜に利用されることを特徴とする請求項1~4にいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車室外空気と熱交換する前記熱交換部の除霜運転時には、前記熱媒体回路は、当該熱交換部に熱媒体を送る独立循環流路を形成することを特徴とする請求項5記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記熱回収モードで回収された熱は、前記冷媒回路の放熱源又は吸熱源として利用されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記熱媒体回路は蓄熱部を備え、
前記熱回収モードで回収された熱は前記蓄熱部に蓄熱されることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記補助空調装置は、熱が回収された車室内空気を車室外に排気する排気通路を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記補助空調装置は、熱が回収された車室内空気を乗員の上部に吹き付ける吹き付け流路を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記熱回収モードで回収された熱を優先度の高い温調対象物に供給するように前記熱媒体回路を制御することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記制御装置は、車室内に乗員がいないことを認識して、
前記補助空調装置と前記主空調装置の両方で車室内空気から熱を回収する熱回収モードを実行することを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、換気熱回収専用の熱交換器を備えた換気熱回収ユニットを備え、車室内の冷房又は暖房された空気を換気する際に、前述した専用の熱交換器で換気される車室内空気の熱を回収する車両用空調システムが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-199203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用空調装置において、エネルギー効率よく冷房や暖房運転を行うために、運転中に車室内空気を循環させることが一般に行われている。その一方で、車室内のCO濃度を下げて運転者と乗員の健康維持を図ることや車室内でのウイルス感染対策を考慮すると、車室内の空気は頻繁に換気することが必要になる。このため、換気時の車室内空気の熱回収は、車両用空調装置を運転者や乗員の健康を配慮しながら省エネ運転する上で不可欠なものとなっているが、前述した従来例のように、換気熱回収専用の熱交換器を別途設けると、設備のコストアップが避けられない問題が生じる。
【0005】
また、日照の状況や外気温度などによっては、停車又は駐車中の車両の車室内空気温度と外気温度との間に温度差が生じる場合がある。車両の始動時には、バッテリーの暖機などで熱が必要になるので、エンジンの発熱を期待できない車両(電動車両、ハイブリッド車両、発熱に小さいエンジン車両など)において、停車又は駐車中の車室内空気の熱を回収して、車両始動時等に利用することは、車両の熱マネジメントにおいて有効である。
【0006】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであり、設備コストを抑えながら車室内空気の熱回収を実現できるようにすること、停車又は駐車中の車室内空気の熱を効果的に回収して利用できるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
冷媒回路と、前記冷媒回路と熱交換する熱媒体回路と、主空調装置と、前記熱媒体回路の熱交換部を備える補助空調装置と、前記冷媒回路と前記熱媒体回路と前記主空調装置と前記補助空調装置の動作を制御する制御装置とを備える車両用空調装置であって、前記制御装置は、実行判定部により、前記補助空調装置による空調の不要を判断した場合に、前記補助空調装置にて車室内空気から熱を回収する熱回収モードを実行することを特徴とする車両用空調装置。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する車両用空調装置は、既設の補助空調装置を用いることで、設備コストを抑えながら車室内空気の熱回収を実現することができる。また、制御装置による熱回収モードによって、停車又は駐車中の車室内空気の熱を効果的に回収して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置のシステム構成例を示した説明図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の具体的な構成例を示した説明図。
図3】熱回収モードにおける制御フローの具体例を示した説明図。
図4】冷房時の熱回収モードの動作例を示した説明図。
図5】暖房時の熱回収モードの動作例を示した説明図。
図6】停車又は駐車時の熱回収モードの動作例(補助空調装置のみ使用)を示した説明図。
図7】停車又は駐車時の熱回収モードの動作例(主空調装置と補助空調装置を使用)を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
本発明の実施形態に係る車両用空調装置1は、図1に示すように、冷媒回路2、熱媒体回路3、主空調装置(HVACユニット)4、補助空調装置5、制御装置6を備えている。制御装置6は、冷媒回路2と熱媒体回路3と主空調装置4と補助空調装置5の動作を制御するもので、制御装置6の制御対象は、冷媒回路2においては、圧縮機と膨張弁などであり、熱媒体回路3においては、循環ポンプと流路切替弁と流量制御弁などであり、主空調装置4と補助空調装置5においては、ブロアなどである。
【0012】
制御装置6は、補助空調装置5による空調の不要を判断して、補助空調装置5にて車室内空気から熱を回収する熱回収モード6Aを実行する。より具体的には、制御装置6は、空調制御用のECUであり、車両が備える他のECUと連係し、入力信号に基づいて、熱回収条件成立判定部6A1による熱回収条件成立判定と実行判定部6A2による実行判定を行う。そして、熱回収条件が成立し且つ実行判定が成された場合に、前述した制御対象を制御することで、補助空調装置5を使用した車室内空気の熱回収を行う熱回収モード6Aを実行する。なお、熱回収モード6A、熱回収条件成立判定部6A1、実行判定部6A2は、空調制御用のECUである制御装置6を動作させるプログラムである。
【0013】
図2によって、車両用空調装置1の具体的な構成例を説明する。冷媒回路2は、圧縮機2A、凝縮器2B、膨張弁2C、蒸発器2Dを備え、冷媒を状態変化させながら循環させる循環流路である。冷媒回路2は、制御装置6によって圧縮機2Aと膨張弁2Cが制御される。
【0014】
熱媒体回路3は、冷媒回路2と熱交換する熱媒体(例えば、水など)の循環流路であり、冷媒回路2の凝縮器2Bと熱交換する熱交換部3Aと、冷媒回路2の蒸発器2Dと熱交換する熱交換部3Bを備えている。また、熱媒体回路3は、他の熱交換部として、主空調装置4に設置されて車室内空気と熱交換する熱交換部3C,3D、補助空調装置5に設置されて車室内空気と熱交換する熱交換部3E、車室外空気と熱交換する熱交換部3F、蓄熱部(バッテリーM1、インバーターM2、モーターM3)の熱交換部3G,3H,3Iなどを備えている。
【0015】
また、熱媒体回路3は、熱媒体を循環させるための循環ポンプP1,P2,P3、流路切替弁(二方弁又は三方弁)V1~V11、逆止弁S1~S4,流量制御弁Q1~Q3、熱媒体を加熱するヒーターHを備えると共に、これらを繋ぐ循環流路を備えている。
【0016】
主空調装置4は、車室内の冷暖房や窓に対して温風又は冷風を吹き付けるものであり、前述した熱交換部3C,3Dを備えると共に、車室内の空気を熱交換部3C,3Dに送るブロア4Aを備える。図示の例では、熱交換部3C,3Dとして熱媒体回路3の熱交換部を用いているが、その一部又は全部を冷媒回路2の熱交換部(蒸発器など)にすることができる。
【0017】
補助空調装置5は、車室内の部分的な冷暖房を行うものであり、運転席や助手席、後部座席の乗員に対して空調を行う装置であり、前述した熱交換部3Eを備えると共に、車室内の空気を熱交換部3Eに送るブロア5Aを備える。ここでは、1つの補助空調装置5を示しているが、補助空調装置5は、運転席や助手席、後部座席毎或いは車室内の天井部などに複数設けることができる。
【0018】
制御装置6は、冷媒回路2の圧縮機2Aと膨張弁2Cを制御して、冷媒回路2の吸放熱量等を制御すると共に、熱媒体回路3における循環ポンプP1,P2,P3、流路切替弁V1~V11、流量制御弁Q1~Q3、ヒーターHなどを制御し、更に主空調装置4のブロア4Aと補助空調装置5のブロア5Aを制御することで、車室内の冷暖房制御を行い、また、以下に示すように熱回収モード6Aを行う。
【0019】
制御装置6における熱回収モード6Aは、図1に示すように、熱回収条件成立判定部6A1による判定がなされ、その結果熱回収条件が成立した場合に、実行判定部6A2による判定がなされ、実行判定部6A2の判定結果、実行すべきと判定された場合に、熱回収モード6Aが実行される。熱回収モード6Aにおける前述した判定を行うために、制御装置6には、他のECUからの信号、空調制御信号、各種センサ(外気温度センサ、車室内温度センサ、シートセンサ、シートベルトセンサ、車室内カメラ、人感センサなど)からの信号が入力される。
【0020】
熱回収条件成立判定部6A1は、車両の走行・停車状況及び/又は冷暖房空調の運転状況に応じて、現在の状況で熱回収が可能か否かの判定がなされる。
【0021】
具体的には、走行中で冷暖房空調が運転されている場合には、例えば、暖房時に車室内温度が外気温度より所定温度高い場合、冷房時に車室内温度が外気温度より所定温度低い場合、車室外空気と熱交換する熱交換部(ラジエータ)3Fの吸熱量又は放熱量が不十分な場合、冷暖房の空調負荷が一定以上の場合などに、熱回収が可能になる(熱回収条件成立)と判定される。
【0022】
実行判定部6A2では、熱回収に使用される補助空調装置5の空調が不要か否か判定され、空調が不要と判定された場合に、補助空調装置5による車内空気の熱回収が実行される。運転者以外の乗員に対して空調を行う補助空調装置5は、助手席や後部座席に乗員がいないことの確認で空調の不要が判定される。助手席や後部座席に乗員がいないことの確認は、シートセンサやシートベルトセンサ、或いは車室内カメラや人感センサからの信号を用いることができる。
【0023】
図3は、熱回収条件成立判定部6A1と実行判定部6A2における制御フローの具体例を示している。
【0024】
制御スタート後のステップS01では、車両が走行中か否かの判定がなされる。走行中か否かは、他のECUからの信号(イグニッションのON・OFF或いは車速信号など)によって判定される。
【0025】
走行中(ステップS01:YES)の場合には、ステップS02にて前述した熱回収条件成立判定部6A1の判定がなされ、熱回収条件が成立している(ステップS02:YES)場合には、前述した実行判定部6A2の判定がなされる。熱回収条件が成立していない場合(ステップS02:NO)には、熱回収モード6Aを実行しても熱回収が効果的に成されず動作による消費エネルギーが無駄になるので、熱回収モード6Aは実行せず、スタートに戻す。
【0026】
この例の実行判定部6A2は、先ずステップS03にて、助手席が空いているか(助手席に乗員がいないか)が判定され、助手席が空いている(ステップS03:YES)場合には、ステップS04にて、後部座席が空いているか(後部座席に乗員いないか)が判定され、後部座席が空いている(ステップS04:YES)場合には、助手席用と後部座席用の補助空調装置5を使用して、熱回収モード6Aを実行し、車室内空気の熱を回収する(ステップS05)。ここで回収した熱は、運転中の冷媒回路2の放熱源又は吸熱源として利用するか、或いは、車室外空気と熱交換する熱交換部(室外熱交換器)3Fの除霜などに利用する。
【0027】
ステップS04にて後部座席が空いていない(ステップS04:NO)場合、仮に助手席用の補助空調装置5を使用して熱回収モード6Aを実行すると、熱回収した補助空調装置5の排気が後部座席にいる乗員に当たって不快感を与えてしまう。また、後部座席用の補助空調装置5は、後部座席にいる乗員のための空調に使用するので、熱回収モード6Aは実行せず、スタートに戻す。
【0028】
また、ステップS03にて助手席が空いていない(ステップS03:NO)場合、ステップS06にて後部座席が空いているかが判定され、後部座席が空いている(ステップS06:YES)場合には、後部座席用の補助空調装置5を使用して、熱回収モード6Aを実行し、車室内空気の熱を回収する(ステップS07)。この際回収した熱は、前述したと同様に、運転中の冷媒回路2の放熱源又は吸熱源として利用するか、或いは、車室外空気と熱交換する熱交換部(室外熱交換器)3Fの除霜などに利用する。
【0029】
ステップS06にて後部座席が空いていない(ステップS06:NO)場合には、助手席用の補助空調装置5は助手席にいる乗員の空調に用い、後部座席用の補助空調装置5は後部座席にいる乗員の空調に用いるので、熱回収モード6Aは実行せず、スタートに戻す。
【0030】
ステップS01にて、走行中でない(停車又は駐車中)と判定した(ステップS01:NO)場合、ステップS10にて、停車又は駐車中の熱回収条件成立判定部6A1の判定を行う。
【0031】
停車又は駐車中の場合、車室内の空気温度が外気温度より所定温度高い場合には、車室内空気の温熱利用が可能になり、車室内の空気温度が外気温度より所定温度低い場合には、車室内空気の冷熱利用が可能になる。しかしながら、熱を回収したとしても、回収した熱が利用できない場合には、熱回収モード6Aを実行することで消費したエネルギーが無駄になるので、現在の停車又は駐車中の時点から車両を始動するまでの時間を判定し、回収した熱が利用可能な範囲の時間であれば、熱回収条件の成立(ステップS10:YES)とする。
【0032】
停車又は駐車中の熱回収条件が成立した(ステップS10:YES)場合、ステップS11にて車内に乗員がいないことを判定し、乗員がいる(ステップS11:NO)と認識した場合には、熱回収モード6Aは実行せず、スタートに戻し、乗員がいない(ステップS11:YES)と認識した場合には、主空調装置4と補助空調装置5の両方を使用して、熱回収モード6Aを実行し、車室内空気の熱を回収する(ステップS12)。この際回収した熱が冷熱の場合は、熱媒体回路3の熱交換器3G,3H,3Iを介して、蓄熱部(バッテリーM1、インバーターM2、モーターM3)に蓄熱し、バッテリーM1やモーターM3の冷却に使用する。また、直ぐに車両が走行する場合には、回収した熱は、運転した後の冷媒回路2の放熱源として利用することができる。回収した熱が温熱の場合、熱交換部3F(室外熱交換器)の除霜が必要かどうかを判断し、除霜が必要な時は回収した熱を熱交換部3Fへ供給する。除霜が不要な場合または、除霜が完了した後、蓄熱部に蓄熱し、バッテリーやモーターの暖機に使用する。また、直ぐに車両が走行する場合には、回収した熱は、運転した後の冷媒回路2の吸熱源として利用することができる。
【0033】
それぞれの場合で熱回収モード6Aを実行した後は、ステップS13にて終了確認を行い、終了しない(ステップS13:NO)場合には、スタートに戻し、終了する(ステップS13:YES)場合には、制御を終了する。
【0034】
以下に、図2に示した構成例に基づいて、熱回収モード6Aの動作例を説明する。
【0035】
図4は、走行中に、主空調装置4を冷房運転している場合の熱回収モード6Aの動作を示している。ここで、熱媒体回路3における太線は温水の流路を示しており、二重線は冷水の流路を示している。また、前述した太線の内、黒線は高温水の流路を示していて、グレー線は低温水の流路を示している。
【0036】
図4の例では、冷媒回路2が運転されており、冷媒回路2の蒸発器2Dと熱交換する熱交換部3Bを経由する熱媒体が冷水になり、主空調装置4の熱交換部3C,3Dを経由して循環することで、主空調装置4の冷房運転が実行されている。この際、冷媒回路2の凝縮器2Bと熱交換する熱交換部3Aを経由し更にヒーターHにて加熱された熱媒体が高温水になって、補助空調装置5の熱交換部3Eに供給され、補助空調装置5のブロア5Aを作動させて車室内空気の冷気を熱交換部3Eに送り、熱交換部3Eを使用して冷熱回収を行うことで、熱交換部3Eを経由した熱媒体の温度を下げている。
【0037】
熱交換部3Eを経由することで温度が下げられた熱媒体(低温水)は、1つには、冷媒回路2の凝縮器2Bと熱交換する熱交換部3Aを経由することで、冷熱回収された熱が冷媒回路2の放熱源として利用される。
【0038】
補助空調装置5は、熱が回収された車室内空気を室外に排気する排気通路を備えている。車室内空気を換気する際には、ブロア5Aを作動させて、車室内空気を熱交換部3Eに導き、熱交換部3Eを通過させた後、前述した排気通路を通して室外に排出する。
【0039】
図5は、走行中に、主空調装置4を暖房運転している場合の熱回収モード6Aの動作を示している。ここでも、熱媒体回路3における太線は温水の流路を示しており、二重線は冷水の流路を示していて、前述した太線の内、黒線は高温水の流路を示し、グレー線は低温水の流路を示している。
【0040】
図5の例では、冷媒回路2が運転されており、冷媒回路2の凝縮器2Bと熱交換する熱交換部3Aを経由する熱媒体が高温水になり、主空調装置4の熱交換部3C,3Dを経由して循環することで、主空調装置4の暖房運転が実行されている。この際、冷媒回路2の蒸発器2Dと熱交換する熱交換部3Bを経由した冷水が、補助空調装置5の熱交換部3Eに供給され、補助空調装置5のブロア5Aを作動させて車室内空気の暖気から熱交換部3Eを使用して温熱回収を行うことで、熱交換部3Eを経由した熱媒体の温度を上げている。
【0041】
熱交換部3Eを経由することで温度が上げられた熱媒体(冷水)は、1つには、冷媒回路2の蒸発器2Dと熱交換する熱交換部3Bを経由することで、温熱回収された熱が冷媒回路2の吸熱源として利用される。また、この例では、冷媒回路2の蒸発器2Dと熱交換する熱交換部3Bを経由した冷水が、車室外空気と熱交換する熱交換部3Fを経由して、蓄熱部のインバーターM2とモーターM3の熱交換部3H,3Iに送られ、インバーターM2とモーターM3の冷却に利用されている。
【0042】
そして、熱交換部3H,3Iを経由することで熱回収した冷水が、熱交換部3Eを経由することで車室内空気の暖気から熱回収した冷水と合流して、冷媒回路2の蒸発器2Dと熱交換する熱交換部3Bに送られていることで、インバーターM2とモーターM3から回収した熱が車室内空気から回収した熱に加えられて、冷媒回路2の吸熱源として利用されている。
【0043】
補助空調装置5は、例えば、熱が回収された車室内空気を運転者の上部に吹き付ける吹きつけ流路を有している。熱回収前の室内空気は暖房時の高温であるのに対して、補助空調装置5の熱交換部3Eを通過して熱が回収された空気は温度が低下する。この温度が低下した空気を運転者の上部に向けて吹き付けることで、運転者の頭寒足熱を促し、快適性を向上させることができる。
【0044】
図6は、停車又は駐車中に、補助空調装置5のみを動作させて、熱回収モード6Aを実行する例を示している。ここで、熱媒体回路3における太線は、熱媒体の流路を示し、矢印が熱媒体の流れの方向を示している。
【0045】
図6の例では、冷媒回路2と主空調装置4は停止しており、補助空調装置5のブロア5Aと循環ポンプP3を駆動させて、熱媒体回路3の熱媒体を、補助空調装置5の熱交換部3Eを経由して蓄熱部の熱交換部3G,3H,3Iに送る循環流路を形成している。この例では、停車又は駐車中の熱回収条件が成立している場合に、補助空調装置5の熱交換部3Eを使用して循環する熱媒体が車室内空気の熱を回収し、回収された熱が蓄熱部(バッテリーM1、インバーターM2、モーターM3)に蓄熱される。
【0046】
図7は、停車又は駐車中に、主空調装置4と補助空調装置5を動作させて、熱回収モード6Aを実行する例を示している。ここでも、熱媒体回路3における太線は、熱媒体の流路を示し、矢印が熱媒体の流れの方向を示している。
【0047】
図7の例では、冷媒回路2は停止しており、主空調装置4のブロア4Aと補助空調装置5のブロア5Aと循環ポンプP3を駆動させて、熱媒体回路3の熱媒体を、主空調装置4の熱交換部3Cと補助空調装置5の熱交換部3Eを経由して蓄熱部の熱交換部3G,3H,3Iに送る循環流路を形成している。この例では、停車又は駐車中の熱回収条件が成立している場合に、主空調装置4の熱交換部3Cと補助空調装置5の熱交換部3Eを使用して循環する熱媒体が車室内空気の熱を回収し、回収された熱が蓄熱部(バッテリーM1、インバーターM2、モーターM3)に蓄熱される。
【0048】
このように停車又は駐車中に熱回収モード6Aで車室内空気から回収した熱は、車両始動時などで優先度の高い温調対象物(例えば、バッテリーM1など)がある場合には、その温調対象物に回収した熱を積極的に供給するように熱媒体回路3を制御することで、回収された熱の積極的な有効が可能になる。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1によると、助手席や後部座席の乗員用のなどの既設の補助空調装置5を用いることで、設備コストを抑えながら車室内空気の熱回収を実現することができる。また、制御装置6による熱回収モード6Aによって、停車又は駐車中の車室内空気の熱を効果的に回収して利用することができる。これによって、エンジンの発熱が期待できない車両(電動車両、ハイブリッド車両、発熱に小さいエンジン車両など)において、効率的な熱マネジメントを実現することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:車両用空調装置,2:冷媒回路,3:熱媒体回路,
4:主空調装置,5:補助空調装置,6:制御装置,
6A:熱回収モード,6A1:熱回収条件成立判定部,6A2:実行判定部,
2A:圧縮機,2B:凝縮器,2C:膨張弁,2D:蒸発器,
3A~3I:熱交換部,V1~V11:流路切替弁,Q1~Q3:流量制御弁,
4A,5A:ブロア,S1~S4:逆止弁,H:ヒーター,
M1:バッテリー,M2:インバーター,M3:モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7