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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147315
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】誘導性負荷駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/695 20060101AFI20220929BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H03K17/695
H03K17/16 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048502
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 郷志郎
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX26
5J055AX34
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX13
5J055CX28
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX53
5J055EY01
5J055EY12
5J055EY13
5J055EZ57
5J055GX01
5J055GX02
(57)【要約】
【課題】誘導性負荷駆動装置において、比較的低いコストで、誘導性負荷の駆動中の断線等に対する回路保護を図る。
【解決手段】1つ以上の誘導性負荷と電源の間に電気的に接続され、1つ以上の誘導性負荷を駆動する誘導性負荷駆動装置であって、電源端子と、グランド端子と、誘導性負荷に電気的に接続される出力端子とを有し、1つ以上の誘導性負荷を駆動する半導体スイッチング素子を含む1つ以上の駆動回路部と、一端がグランド端子に電気的に接続され、他端がグランドに電気的に接続される第1回路素子と、一端が電源端子と電源の間に電気的に接続され、他端がグランドに第1回路素子を介さずに電気的に接続される第2回路素子とを含み、グランドから電源端子への電流の流れに対する第2回路素子の電気抵抗は、グランドからグランド端子への電流の流れに対する第1回路素子の電気抵抗よりも、小さい、誘導性負荷駆動装置が開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の誘導性負荷と電源の間に電気的に接続され、1つ以上の前記誘導性負荷を駆動する誘導性負荷駆動装置であって、
前記電源の高電位側に電気的に接続される電源端子と、グランドに電気的に接続されるグランド端子と、前記誘導性負荷に電気的に接続される出力端子とを有し、1つ以上の前記誘導性負荷を駆動する半導体スイッチング素子を含む1つ以上の駆動回路部と、
一端が前記グランド端子に電気的に接続され、他端がグランドに電気的に接続される第1回路素子と、
一端が前記電源端子と前記電源の間に電気的に接続され、他端がグランドに前記第1回路素子を介さずに電気的に接続される第2回路素子とを含み、
グランドから前記電源端子への電流の流れに対する前記第2回路素子の電気抵抗は、グランドから前記グランド端子への電流の流れに対する前記第1回路素子の電気抵抗よりも、小さい、誘導性負荷駆動装置。
【請求項2】
前記第1回路素子は、抵抗素子、又は、カソード側がグランドに電気的に接続されるダイオードであり、
前記第2回路素子は、アノード側がグランドに電気的に接続されるダイオードである、請求項1に記載の誘導性負荷駆動装置。
【請求項3】
前記第2回路素子は、複数の前記誘導性負荷に対して1つだけ設けられる、請求項2に記載の誘導性負荷駆動装置。
【請求項4】
1つ以上の前記駆動回路部のそれぞれは、
前記半導体スイッチング素子を駆動する論理回路部と、
前記半導体スイッチング素子がオフする際のサージ電圧を吸収して前記駆動回路部を保護する保護回路素子とを含む、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の誘導性負荷駆動装置。
【請求項5】
前記電源の高電位側とグランドの間に、1つ以上の前記駆動回路部及び前記第1回路素子に対して並列に、電気的に接続される制御系の電気負荷を更に含む、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の誘導性負荷駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘導性負荷駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導性負荷と電源の間に電気的に接続され、誘導性負荷を駆動する誘導性負荷駆動装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-036239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の誘導性負荷駆動装置においては、一般的に、通常時におけるスイッチング素子のオフ時のサージ電圧に対する保護回路素子が設けられる。また、このような通常時のサージ電圧とは別に、誘導性負荷の駆動中に断線等により電源からの電力供給経路が遮断したときに、逆起電力によるサージ電圧が発生しうるので、かかるサージ電圧が生じないように回路保護を図ることが有用となる。この点、従来技術では、かかる回路保護を比較的低いコストで実現できていなかった。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、誘導性負荷駆動装置において、比較的低いコストで、誘導性負荷の駆動中の断線等に対する回路保護を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、1つ以上の誘導性負荷と電源の間に電気的に接続され、1つ以上の前記誘導性負荷を駆動する誘導性負荷駆動装置であって、
前記電源の高電位側に電気的に接続される電源端子と、グランドに電気的に接続されるグランド端子と、前記誘導性負荷に電気的に接続される出力端子とを有し、1つ以上の前記誘導性負荷を駆動する半導体スイッチング素子を含む1つ以上の駆動回路部と、
一端が前記グランド端子に電気的に接続され、他端がグランドに電気的に接続される第1回路素子と、
一端が前記電源端子と前記電源の間に電気的に接続され、他端がグランドに前記第1回路素子を介さずに電気的に接続される第2回路素子とを含み、
グランドから前記電源端子への電流の流れに対する前記第2回路素子の電気抵抗は、グランドから前記グランド端子への電流の流れに対する前記第1回路素子の電気抵抗よりも、小さい、誘導性負荷駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、誘導性負荷駆動装置において、比較的低いコストで、誘導性負荷の駆動中の断線等に対する回路保護を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例による誘導性負荷駆動装置の一例を示す概略的な構成図である。
図2】一の駆動回路部の内部回路構成の一例を概略的に示す図である。
図3】本実施例の誘導性負荷駆動装置における電源正常時の電流の流れの説明図である。
図4】本実施例の誘導性負荷駆動装置における電源失陥時の電流の流れの説明図である。
図5】比較例による保護機能の説明図である。
図6】第1変形例による誘導性負荷駆動装置の一例を示す概略的な構成図である。
図7】第2変形例による誘導性負荷駆動装置の一例を示す概略的な構成図である。
図8】第3変形例による誘導性負荷駆動装置の一例を示す概略的な構成図である。
図9】第4変形例による誘導性負荷駆動装置の一例を示す概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。
【0010】
図1は、本実施例による誘導性負荷駆動装置1の一例を示す概略的な構成図である。
【0011】
誘導性負荷駆動装置1は、1つ以上の誘導性負荷2と電源3の間に電気的に接続され、1つ以上の誘導性負荷2を制御する。誘導性負荷駆動装置1は、例えばECU(Electronic Control Unit)又はその類の形態であってよい。
【0012】
誘導性負荷駆動装置1の用途は、多様であるが、本実施例では、車両用であるとする。すなわち、誘導性負荷駆動装置1は、車両に搭載される。車両のタイプ等は任意であり、エンジンを搭載する車両であってよいし、ハイブリッド車や電気自動車等であってもよい。
【0013】
1つ以上の誘導性負荷2は、任意であり、本実施例では、車両に搭載される誘導性負荷である。例えば、誘導性負荷2は、自動変速機に設けられるソレノイドであってもよい。あるいは、誘導性負荷2は、エンジンに設けられるソレノイド等であってよい。1つ以上の誘導性負荷2は、1つのユニット(モジュール)内に設けられてよい。
【0014】
図1に示す例では、1つ以上の誘導性負荷2は、3つであるが、一の誘導性負荷駆動装置1に電気的に接続される誘導性負荷2の数は任意である。以下では、一例として、誘導性負荷2は、3つであるとする。
【0015】
電源3は、例えば車載バッテリである。なお、ハイブリッド車や電気自動車の場合、電源3は、低圧系のバッテリであってよい。以下では、電源3の正極側を高電位側と称する場合がある。
【0016】
誘導性負荷駆動装置1は、1つ以上の駆動回路部4を含む。
【0017】
駆動回路部4は、誘導性負荷2ごとに設けられてもよい。本実施例では、3つの誘導性負荷2に対応して、3つの駆動回路部4が設けられる。このように、本実施例では、一の誘導性負荷2と、一の駆動回路部4とは、一対一で対応する。以下では、ある一の駆動回路部4について、“対応する”誘導性負荷2とは、当該一の駆動回路部4に電気的に接続される誘導性負荷2を指し、“対応する”駆動回路部4についても、同様であり、一対一で対応する他の素子同士も同様である。例えば、図1に示す例では、1つ以上の誘導性負荷2のそれぞれは、一端が、対応する駆動回路部4に電気的に接続され、他端がグランドに電気的に接続される。
【0018】
駆動回路部4のそれぞれは、互いに独立に動作可能である。駆動回路部4のそれぞれは、対応する誘導性負荷2に係る通電を制御する。
【0019】
図2は、一の駆動回路部4の内部回路構成の一例を概略的に示す図である。なお、図1に示す3つの駆動回路部4のそれぞれは、同様の内部回路構成を有するが、一部が異なる内部回路構成を有してもよい。
【0020】
図2に示す例では、駆動回路部4は、電源3の高電位側に電気的に接続される電源端子41と、グランドに電気的に接続されるグランド端子42と、誘導性負荷2に電気的に接続される出力端子43と含む。なお、駆動回路部4は、インテリジェントパワーデバイス(IPD:Intelligent Power Device)やインテリジェントパワースイッチ、スマートスイッチ又はその類の形態であってよい。この場合、既存のデバイスを利用して駆動回路部4を実現できる。
【0021】
また、図2に示す例では、駆動回路部4は、半導体スイッチング素子44と、論理回路部45と、ツェナーダイオードD20とを含む。
【0022】
半導体スイッチング素子44は、例えば図2に示すように、NチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のような他の形態のスイッチング素子であってもよい。
【0023】
半導体スイッチング素子44は、電源端子41に電気的に接続されるとともに、対応する誘導性負荷2に電気的に接続される。図2に示す例では、半導体スイッチング素子44であるMOSFETは、ドレイン端子が電源端子41に電気的に接続され、ソース端子が、対応する誘導性負荷2に電気的に接続される。この場合、半導体スイッチング素子44がオンすると、対応する誘導性負荷2の通電が実現される。
【0024】
論理回路部45は、半導体スイッチング素子44をオン/オフする駆動信号を発生する。図2に示す例では、論理回路部45は、電源端子41とグランド端子42との間に電気的に接続されるとともに、半導体スイッチング素子44のゲート電極に電気的に接続される。なお、論理回路部45は、図示しない上位の処理装置(例えば後述する他の制御系負荷9に含まれうるマイクロコンピュータ)からの指令に応じて、半導体スイッチング素子44のゲート電極にオン/オフ用の駆動信号を印加してよい。
【0025】
ツェナーダイオードD20は、通常動作時(後述する電源失陥が生じていない状態)において、半導体スイッチング素子44がオフする際に出力端子43に生じうる逆起電力によるサージ電圧から駆動回路部4を保護する機能を有する。図2に示す例では、ツェナーダイオードD20は、電源端子41に電源3からの電力が正常に供給されている状態(正常状態)で機能する保護回路素子である。この場合、ツェナーダイオードD20は、サージ電圧吸収用であり、半導体スイッチング素子44がオフする際のサージ電圧を吸収する。これにより、通常動作時(後述する電源失陥が生じていない状態)において半導体スイッチング素子44がオフする際に、ツェナーダイオードD20のツェナー電圧を超えるような高いサージ電圧が電源端子41と出力端子43の間に発生しないことにより、回路保護が実現される。
【0026】
本実施例では、誘導性負荷駆動装置1は、図1に示すように、抵抗素子R1を更に含む。抵抗素子R1は、駆動回路部4ごとに設けられる。すなわち、各抵抗素子R1は、対応する一の駆動回路部4とグランドとの間に電気的に接続される。より具体的には、各抵抗素子R1は、一端が対応する一の駆動回路部4のグランド端子42に電気的に接続され、他端がグランドに電気的に接続される。
【0027】
従って、図1に示す例では、抵抗素子R1は、3つ設けられる。この場合、3つの駆動回路部4に対して1つだけ抵抗素子R1を設ける場合(図7参照)に比べて、冗長性を高めることができる。例えば、3つの抵抗素子R1のうちの1つの抵抗素子R1がフェールした場合でも、他の2つの抵抗素子R1に対応付けられる駆動回路部4を用いて、対応する2つの誘導性負荷2の駆動を継続できる。
【0028】
また、本実施例では、誘導性負荷駆動装置1は、図1に示すように、ダイオードD1を更に含む。ダイオードD1は、電源3の高電位側とグランドの間に、駆動回路部4及び抵抗素子R1に対して並列に、電気的に接続される。より具体的には、ダイオードD1は、一端(カソード)が電源3と駆動回路部4の電源端子41の間に電気的に接続され、他端(アノード)がグランドに電気的に接続される。
【0029】
ダイオードD1は、抵抗素子R1と協動して、後述する電源失陥時に駆動回路部4等を保護する機能を有する。この機能については、図4を参照して後述する。
【0030】
なお、本実施例では、ダイオードD1は、上述した抵抗素子R1とは異なり、3つの駆動回路部4に対して1つだけ設けられる。これは、ダイオードD1は、上述した抵抗素子R1とは異なり、駆動回路部4に直列に電気的に接続される素子ではなく、電源正常時の動作に影響しないので、上述した冗長性の確保の必要性が低いためである。
【0031】
図1に戻り、誘導性負荷駆動装置1は、好ましくは、制御系負荷9を更に含んでよい。制御系負荷9は、例えば、駆動回路部4のそれぞれを介して誘導性負荷2のそれぞれを制御する機能を有してよい。例えば、制御系負荷9は、マイクロコンピュータや電源回路を含んでよい。
【0032】
この場合、制御系負荷9と誘導性負荷2との間で電源3からの電力供給経路30の共通化を図り、制御系負荷9と駆動回路部4とを含む誘導性負荷駆動装置1をモジュール化すること等が容易である。
【0033】
次に、図3及び図4を参照して、本実施例の誘導性負荷駆動装置1の正常時の電流の流れとともに、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時における電流の流れを説明する。
【0034】
図3は、本実施例の誘導性負荷駆動装置1における電源正常時の電流の流れの説明図であり、電流の流れが矢印R30で模式的に示されている。
【0035】
電源正常時は、駆動回路部4の半導体スイッチング素子44がオンすると、矢印R30で模式的に示すように、電源3から電流が持ち出され、誘導性負荷2に電流が流れる。
【0036】
図4は、本実施例の誘導性負荷駆動装置1における電源失陥時(誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時)の電流の流れの説明図であり、電流の流れが矢印R41~R43で模式的に示されている。
【0037】
電源失陥とは、例えば電源3と誘導性負荷駆動装置1との間の電力供給経路30における断線等に起因して、電源3から誘導性負荷駆動装置1に電流が流れなくなる状態を指す。図4では、このような電力供給経路30における断線が、模式的にスイッチSW1の開放状態で示されている。
【0038】
誘導性負荷駆動装置1により誘導性負荷2を駆動している状態において、電源3からの電力供給経路30が遮断すると、誘導性負荷2に電流を流し続けようとする電圧(逆起電圧)が発生する。このような逆起電圧によって、グランドから誘導性負荷2に向けて電流が流れようとする(図4の点線矢印R41からR43参照)。
【0039】
本実施例では、図4に示すように、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に流れうる電流経路としては、制御系負荷9を逆方向に流れる経路(R41参照)と、ダイオードD1を流れる経路(R42参照)と、抵抗素子R1及び駆動回路部4を逆方向に流れる経路(R43参照)との、3種類の経路がありえる。なお、ダイオードD1を流れる経路は、電源端子41を介して誘導性負荷2に流れる経路(電源正常時と同じ方向で駆動回路部4を電流が流れる経路)を含む。
【0040】
従って、このように、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に流れうる電流経路に、駆動回路部4が含まれる構成においては、誘導性負荷2の駆動中に電源失陥が生じると、駆動回路部4の両端(すなわち電源端子41)に比較的高い電圧(逆起電力によるサージ電圧)が発生し、駆動回路部4にダメージを与えうる。同様に、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に流れうる電流経路に、制御系負荷9が含まれる構成においては、誘導性負荷2の駆動中に電源失陥が生じると、制御系負荷9の両端に比較的高い電圧(逆起電力によるサージ電圧)が発生し、制御系負荷9にダメージを与えうる。
【0041】
この点、本実施例では、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に流れうる電流経路として、他の経路よりも電気抵抗が有意に小さいダイオードD1を流れる電流経路が設けられる。このため、誘導性負荷2の駆動中に電源失陥が生じても、グランドから誘導性負荷2に流れる電流の大部分は、ダイオードD1を流れる経路で流れることになる。すなわち、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時に駆動回路部4等の両端に生じうる逆起電圧によるサージ電圧を防止できる。なお、このようにして誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にダイオードD1を流れる電流経路に電流が流れても、それに伴い駆動回路部4を流れる電流は、電源正常時の電流と同様の方向であり、駆動回路部4にダメージを与えることはない。
【0042】
このようにして、本実施例によれば、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時に生じうる逆起電圧によるサージ電圧を防止でき、駆動回路部4を適切に保護できる。
【0043】
また、同様に、誘導性負荷駆動装置1が制御系負荷9を含む場合、本実施例によれば、同様の原理で制御系負荷9を適切に保護できる。
【0044】
図5は、比較例による保護機能の説明図である。なお、図5において、上述した実施例と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0045】
本比較例では、図5に示すように、図1に示す本実施例との対比で、抵抗素子R1に代えて、3つのダイオードD10が設けられる。
【0046】
3つのダイオードD10は、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから駆動回路部4に向かう電流を阻止するように機能する。
【0047】
このような比較例によっても、3つのダイオードD10によって、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時に駆動回路部4の両端に生じうる逆起電圧によるサージ電圧を防止でき、駆動回路部4を適切に保護できる。
【0048】
しかしながら、かかる比較例では、比較的高価なダイオードを比較的多くの数(この場合、ダイオードD10が合計3つ)用いるので、コストの観点から不利である。
【0049】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、比較例の3つのダイオードD10に代わる3つの抵抗素子R1により、比較例の3つのダイオードD10と同様の機能を実現できている。なお、抵抗素子は、ダイオードよりも有意に安価である。
【0050】
このようにして、本実施例によれば、誘導性負荷駆動装置1において、比較的低いコストで、誘導性負荷2の駆動中の断線等に対して駆動回路部4を適切に保護できる。
【0051】
また、本比較例では、図5に示すように、図1に示す本実施例との対比で、ダイオードD1に代えて、3つのダイオードD11が設けられる。この場合、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に流れうる電流経路として、他の経路よりも電気抵抗が有意に小さい3つのダイオードD11を流れる電流経路が形成される。
【0052】
従って、このような比較例によっても、3つのダイオードD11によって、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時に制御系負荷9の両端に生じうる逆起電圧によるサージ電圧を防止でき、制御系負荷9を適切に保護できる。
【0053】
しかしながら、かかる比較例では、比較的高価なダイオードを比較的多くの数(この場合、ダイオードD11が合計3つ)用いるので、コストの観点から不利である。
【0054】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、比較例の3つのダイオードD11に代わる1つのダイオードD1により、比較例の3つのダイオードD11と同様の機能を実現できている。
【0055】
このようにして、本実施例によれば、誘導性負荷駆動装置1において、比較的低いコストで、誘導性負荷2の駆動中の断線等に対して制御系負荷9を適切に保護できる。
【0056】
次に、図6以降を参照して、上述した実施例に代えて実現されてよい各種の変形例を説明する。なお、図6以降において、上述した実施例と同様であってよい構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0057】
図6は、第1変形例による誘導性負荷駆動装置1Aの一例を示す概略的な構成図である。
【0058】
本変形例による誘導性負荷駆動装置1Aは、上述した実施例による誘導性負荷駆動装置1に対して、3つの抵抗素子R1がダイオードD2で置換された点が異なる。
【0059】
この場合、ダイオードD2は、カソードがグランドに接続される向きで、グランドと駆動回路部4との間に電気的に接続される。ダイオードD2は、上述した実施例による3つの抵抗素子R1と同様に、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に向かって駆動回路部4を逆方向に流れうる電流を阻止する機能を有する。
【0060】
このような第1変形例によれば、3つの抵抗素子R1に代えてダイオードD2を利用する点で上述した実施例により不利となるものの、上述した実施例と同様に、図5に示した比較例に比べて低いコストで、誘導性負荷2の駆動中の断線等に対して駆動回路部4及び制御系負荷9を保護できるという、効果を得ることができる。
【0061】
図7は、第2変形例による誘導性負荷駆動装置1Bの一例を示す概略的な構成図である。
【0062】
本変形例による誘導性負荷駆動装置1Bは、上述した実施例による誘導性負荷駆動装置1に対して、3つの抵抗素子R1が単一の抵抗素子R2で置換された点が異なる。
【0063】
この場合、抵抗素子R2は、上述した実施例による3つの抵抗素子R1と同様に、ダイオードD1と協動して、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に向かって駆動回路部4を逆方向に流れようとする電流を無くす機能を有する。
【0064】
このような第2変形例によっても、上述した実施例と同様に、図5に示した比較例に比べて低いコストで、誘導性負荷2の駆動中の断線等に対して駆動回路部4及び制御系負荷9を保護できるという、効果を得ることができる。また、上述した実施例に比べて、抵抗素子の数が少なくなる分だけコスト面で有利となる。
【0065】
図8は、第3変形例による誘導性負荷駆動装置1Cの一例を示す概略的な構成図である。
【0066】
本変形例による誘導性負荷駆動装置1Cは、上述した実施例による誘導性負荷駆動装置1に対して、3つの抵抗素子R1が3つのダイオードD3で置換された点が異なる。
【0067】
この場合、3つのダイオードD3は、電源3とグランドの間に互いに並列に、それぞれ対応する駆動回路部4に直列に電気的に接続される。この際、3つのダイオードD3は、陰極側がグランドに接続される向きで、グランドと駆動回路部4との間に電気的に接続される。3つのダイオードD3は、上述した実施例による3つの抵抗素子R1と同様に、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に向かって駆動回路部4を逆方向に流れうる電流を阻止する機能を有する。
【0068】
このような第3変形例によれば、3つの抵抗素子R1に代えて3つのダイオードD3を利用する点で上述した実施例によりコスト面で不利となるものの、上述した実施例と同様に、図5に示した比較例に比べて低いコストで、誘導性負荷2の駆動中の断線等に対して駆動回路部4及び制御系負荷9を保護できるという、効果を得ることができる。
【0069】
また、第3変形例によれば、上述した変形例1に比べて、ダイオードD2に代えて3つのダイオードD3を利用する点でコストの観点から不利となる反面、冗長性を高めることができる。例えば、3つのダイオードD3のうちの1つのダイオードD3がフェールした場合でも、他の2つのダイオードD3に対応付けられる駆動回路部4を用いて、対応する2つの誘導性負荷2の駆動を継続できる。
【0070】
図9は、第4変形例による誘導性負荷駆動装置1Dの一例を示す概略的な構成図である。
【0071】
本変形例による誘導性負荷駆動装置1Dは、上述した実施例による誘導性負荷駆動装置1に対して、ダイオードD1がダイオードD4で置換された点が異なる。
【0072】
ダイオードD4は、ダイオードD1と同様に、電源3の高電位側とグランドとの間に、駆動回路部4に並列に電気的に接続される。ただし、本変形例では、ダイオードD4は、駆動回路部4から離れた位置に設けられる。ダイオードD4は、ダイオードD1と同様に、3つの抵抗素子R1と協動して、誘導性負荷2の駆動中の電源失陥時にグランドから誘導性負荷2に向かって駆動回路部4を逆方向に流れようとする電流を無くす機能を有する。
【0073】
このような第4変形例によっても、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例において、上述した第1変形例から第4変形例のいずれかを組み合わせることも可能である。例えば、本変形例と第1変形例(図6)とを組み合わせた場合、3つの抵抗素子R1がダイオードD2で置換される。
【0074】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0075】
例えば、上述した実施例では、1つの誘導性負荷2に対して1つの駆動回路部4が設けられるが、2つ以上の誘導性負荷2に対して1つの駆動回路部4が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1、1A、1B、1C、1D・・・誘導性負荷駆動装置、2・・・誘導性負荷、3・・・電源、4・・・駆動回路部、41・・・電源端子、42・・・グランド端子、43・・・出力端子、9・・・制御系負荷(制御系の電気負荷)、R1、R2・・・抵抗素子(第1回路素子)、D1、D4・・・ダイオード(D2素子)、D2、D3・・・ダイオード(第1回路素子)、D20・・・ツェナーダイオード(保護回路素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9