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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147402
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20220929BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 29/201 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652T
H01L29/78 658F
H01L29/78 653A
H01L29/203
H01L29/78 301B
H01L29/78 301F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048626
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】辻 英徳
(72)【発明者】
【氏名】大内 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】上野 勝典
(72)【発明者】
【氏名】高島 信也
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA06
5F140AA25
5F140AC21
5F140AC23
5F140BA06
5F140BB04
5F140BC12
5F140BD02
5F140BD11
5F140BD13
5F140BE10
5F140BF04
5F140BF05
5F140BG27
5F140BG28
5F140BJ05
5F140BK28
(57)【要約】
【課題】ゲート絶縁膜の絶縁破壊耐圧の低下を抑制しつつ、閾値電圧の変動を抑制することができる窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置は、窒化ガリウム層と、窒化ガリウム層上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備える。ゲート絶縁膜は、窒化ガリウム層上に設けられた第1絶縁膜と、第1絶縁膜上に設けられた第2絶縁膜と、第2絶縁膜上に設けられた第3絶縁膜と、を有する。第1絶縁膜は窒化アルミニウム膜である。第2絶縁膜はAlxSiyO膜(x>y≧0)である。第3絶縁膜はAlx´Siy´O膜(0≦x´<y´)である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウム層と、
前記窒化ガリウム層上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備え、
前記ゲート絶縁膜は、
前記窒化ガリウム層上に設けられた第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に設けられた第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜上に設けられた第3絶縁膜と、を有し、
前記第1絶縁膜は窒化アルミニウム膜であり、
前記第2絶縁膜はAlxSiyO膜(x>y≧0)であり、
前記第3絶縁膜はAlx´Siy´O膜(0≦x´<y´)である、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記AlxSiyO膜(x>y≧0)はAl膜である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記AlxSiyO膜(x>y≧0)は、AlxSiyO膜(x>y>0)である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記Alx´Siy´O膜(0≦x´<y´)はSiO膜である、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記Alx´Siy´O膜(0≦x´<y´)は、Alx´Siy´O膜(0<x´<y´)である、請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記第1絶縁膜の膜厚は、0.5nm以上5nm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記窒化ガリウム層に設けられたMOSFET、を備え、
前記ゲート絶縁膜及び前記ゲート電極はMOSFETに含まれる、請求項1から6のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記MOSFETは縦型MOSFETである、請求項7に記載の窒化物半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的特性に優れたGaN-MOSFETの実現には、閾値電圧の変動を抑制することが重要である。しかし、従来の手法では、窒化ガリウム(GaN)とゲート絶縁膜との界面においてGa-O結合が形成されることで多数のホールトラップがあり、閾値電圧の変動を抑制することが困難であった。
【0003】
また、HEMTにおいて、GaN上に薄い窒化アルミニウム(AlN)膜を形成し、その上に酸化アルミニウム(Al)膜又は酸化シリコン(SiO)膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。ただし、AlN膜上にAl膜を形成する場合は、ゲート絶縁膜の絶縁破壊耐圧が低下する可能性がある。また、AlN上にSiO膜を形成する場合は、AlNとSiOとの界面に界面準位が形成されるため、ホールトラップの低減が不十分となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-143842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GaN-MOSFETにおいて、ゲート絶縁膜の絶縁破壊耐圧の低下を抑制しつつ、閾値電圧の変動を抑制可能な技術が望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ゲート絶縁膜の絶縁破壊耐圧の低下を抑制しつつ、閾値電圧の変動を抑制することができる窒化物半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る窒化物半導体装置は、窒化ガリウム層と、前記窒化ガリウム層上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられたゲート電極と、を備える。前記ゲート絶縁膜は、前記窒化ガリウム層上に設けられた第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に設けられた第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に設けられた第3絶縁膜と、を有する。前記第1絶縁膜は窒化アルミニウム膜である。前記第2絶縁膜はAlxSiyO膜(x>y≧0)である。前記第3絶縁膜はAlx´Siy´O膜(0≦x´<y´)である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゲート絶縁膜の絶縁破壊耐圧の低下を抑制しつつ、閾値電圧の変動を抑制することができる窒化物半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す平面図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置の製造方法を工程順に示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施形態1に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaN、AlN及びAl間の原子の結合状態を示すモデル図である。
図5図5は、図4に示すAlN/Al界面におけるエネルギーバンドを示す図である。
図6図6は、本発明の比較例に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaN、AlN及びSiO間の原子の結合状態を示すモデル図である。
図7図7は、図6に示すAlN/SiO界面におけるエネルギーバンドを示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
また、以下の説明では、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の文言を用いて、方向を説明する場合がある。例えば、X軸方向又はY軸方向は、GaN層12の表面12aに平行な方向である。X軸方向、Y軸方向、又は、X軸方向及びY軸方向の両方を水平方向と呼んでもよい。Z軸方向は、GaN層12の表面12aの法線方向である。Z軸方向は、GaN層12の厚さ方向でもある。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに直交する。
【0011】
また、以下の説明では、Z軸の矢印方向を「上」と称し、Z軸の矢印の反対方向を「下」と称する場合がある。「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。「上」及び「下」は、領域、層、膜及び基板等における相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、紙面を180度回転すれば「上」が「下」に、「下」が「上」になることは勿論である。
【0012】
また、以下の説明で、p又はnは、それぞれ正孔又は電子が多数キャリアであることを意味する。また、pやnに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物濃度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。但し、同じpとp(又は、nとn)とが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物濃度が厳密に同じであることを意味するものではない。
【0013】
<実施形態1>
(構成例)
図1は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の構成例を示す平面図である。図2は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の構成例を示す断面図である。図2は、図1の平面図をX1-X´1線で切断した断面を示している。
図1及び図2に示すGaN半導体装置100は、例えばパワー半導体デバイスであり、窒化ガリウム基板(以下、GaN基板)10と、GaN基板10に設けられた複数の縦型MOSFET1と、を備える。GaN半導体装置100では、縦型MOSFET1が一方向(例えば、X軸方向)に繰り返し設けられている。1つの縦型MOSFET1が繰り返しの単位構造であり、この単位構造が一方向(例えば、X軸方向)に並んで配置されている。
【0014】
複数の単位構造が設けられた領域を活性領域と称する。図示しないが、活性領域の周囲には、活性領域における電界集中を防ぐ機能を有するエッジ終端構造が設けられている。エッジ終端構造は、ガードリング構造、フィールドプレート構造及びJTE(JunctiOn TerminatiOn ExtenSiOn)構造の1つ以上を含んでよい。
図1及び図2に示すように、縦型MOSFET1は、GaN基板10上に設けられたゲート絶縁膜5と、ゲート絶縁膜5上に設けられたゲート電極6と、GaN基板10に設けられたソース電極7及びドレイン電極8と、を有する。
【0015】
GaN基板10は、例えば、GaN単結晶基板11と、GaN単結晶基板11上に設けられたGaN層12(本発明の「窒化ガリウム層」の一例)とを有する。図1に示すように、GaN層12の表面12aは、GaN基板10の表面10aでもある。GaN層12の表面12aの反対側に位置する裏面12bは、GaN単結晶基板11と接触している。GaN単結晶基板11の裏面11bは、GaN基板10の裏面10bでもある。
GaN単結晶基板11の導電型は、例えばn+型である。GaN単結晶基板11に含まれるn型ドーパントは、Si(シリコン)、O(酸素)及びGe(ゲルマニウム)のうちの1種類以上の元素であり、一例を挙げるとOである。GaN単結晶基板11におけるOの不純物濃度は2×1018/cm以上である。
【0016】
なお、GaN単結晶基板11は、転位密度が1E+7/cm未満の低転位自立基板であってもよい。GaN単結晶基板11が低転位自立基板であることにより、GaN単結晶基板11上に形成されるGaN層12の転位密度も低くなる。また、GaN単結晶基板11に低転位自立基板を用いることで、GaN単結晶基板11に大面積のパワーデバイスが形成される場合でも、パワーデバイスにおけるリーク電流を少なくすることができる。これにより、製造装置は、パワーデバイスを高い良品率で製造することができる。また、熱処理において、イオン注入された不純物が転位に沿って深く拡散することを防止することができる。なお、E+は、指数表記である。例えば、1E+7は、1×10を意味する。
【0017】
GaN層12は、GaN単結晶基板11上に設けられている。GaN層12は、n-型のGaN単結晶層であり、GaN単結晶基板11上にエピタキシャル成長法で形成された層である。GaN層12に含まれるn型ドーパント(n型不純物)は、Si(シリコン)、O(酸素)及びGe(ゲルマニウム)のうちの1種類以上の元素であり、一例を挙げるとOである。
GaN層12の表面12a側には、p-型のウェル領域13と、n+型のソース領域14と、p+型のコンタクト領域16と、が設けられている。GaN層12において、ウェル領域13とソース領域14とコンタクト領域16とが設けられていない領域を、ドリフト領域と呼んでもよい。ドリフト領域は、GaN単結晶基板11とウェル領域13との間の電流経路として機能する。
【0018】
ウェル領域13は、GaN層12の表面12a側からp型ドーパント(p型不純物)がイオン注入され、熱処理によりp型ドーパントが活性化されて形成される。p型ドーパントは、例えばマグネシウム(Mg)である。ウェル領域13は、GaN層12の表面12aに面している。また、ウェル領域13は、水平方向において、ソース領域14と隣接する第1側面と、ゲート絶縁膜5直下のドリフト領域と接する第2側面とを有する。ウェル領域13において、第1側面と第2側面との間に位置し、かつゲート絶縁膜5との接触界面及びその近傍に、縦型MOSFET1のチャネルが形成される。以下、ウェル領域13においてチャネルが形成される領域を、チャネル領域CRという。
【0019】
例えば、チャネル領域CRは、ゲート絶縁膜5と接する表面12aから裏面12b側へ20nm以内の範囲に位置する。チャネル領域CRにおけるp型ドーパント(例えば、Mg)の濃度は、チャネル領域CRに含まれるn型ドーパントよりも多く、一例を挙げると、1E+16/cm以上である。
【0020】
ソース領域14は、GaN層12の表面12a側からn型ドーパントがイオン注入され、熱処理によりn型ドーパントが活性化されて形成される。n型ドーパントは、例えばSi、O及びGeのうちの1種類以上の元素である。ソース領域14は、GaN層12の表面12aに面しており、ウェル領域13の内側に位置する。ソース領域14の側部と底部は、ウェル領域13に接している。X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向において、ソース領域14とウェル領域13は互いに接している。
【0021】
p+型のコンタクト領域16は、GaN層12の表面12a側からp型ドーパントがイオン注入され、熱処理によりp型ドーパントが活性化されて形成される。p型ドーパントは、例えばMgである。コンタクト領域16は、GaN層12の表面12aに面しており、ウェル領域13の内側に位置する。コンタクト領域16の少なくとも底部は、ウェル領域13に接している。Z軸方向において、コンタクト領域16とウェル領域13は互いに接している。
【0022】
図2に示すように、ゲート絶縁膜5は、GaN層12上に設けられた第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51上に設けられた第2絶縁膜52と、第2絶縁膜52上に設けられた第3絶縁膜53とを有する。すなわち、第1絶縁膜51は、ウェル領域13を含むGaN層12の表面12aに接している。第2絶縁膜52は、第1絶縁膜51とゲート電極6との間に位置し、第1絶縁膜51の表面に接している。第3絶縁膜53は、第2絶縁膜52とゲート電極6との間に位置し、第2絶縁膜52の表面に接している。第1絶縁膜51、第2絶縁膜52及び第3絶縁膜53は、この順で積層されてゲート絶縁膜5を構成している。
【0023】
第1絶縁膜51は、窒化アルミニウム(AlN)膜である。例えば、AlN膜は、ALD(Atomic Layer Deposition)法により0.5nm以上5nm以下の厚さに形成されており、一例を示すと2nmの厚さに形成されている。AlN膜は、厚いとクラックが発生する可能性があるため、5nm以下の厚さであることが好ましい。
【0024】
第2絶縁膜52は、AlxSiyO膜(x>y≧0)であり、一例を挙げると、酸化アルミニウム(Al)膜である。例えば、Al膜は、ALD法により2nmの厚さに形成されている。
第3絶縁膜53は、Alx´Siy´O膜(0≦x´<y´)であり、一例を挙げると、酸化シリコン(SiO)膜である。例えば、SiO膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、100nmの厚さに形成される。
【0025】
ゲート電極6は、ゲート絶縁膜5上に設けられている。ゲート電極6は、平坦なゲート絶縁膜5上に設けられたプレーナ型の電極である。ゲート電極6は、例えば、Al又はAl-Siの合金からなる。または、ゲート電極6は、不純物をドープしたポリシリコンで構成されていてもよい。
【0026】
ソース電極7は、n+型のソース領域14上からp+型のコンタクト領域16上にかけて連続して設けられており、ソース領域14及びコンタクト領域16とそれぞれ電気的に接続している。図示しないが、ソース電極7は、層間絶縁膜を介してゲート電極6を覆うように設けられてもよい。ソース電極7は、例えばAl又はAl-Siの合金からなる。
ドレイン電極8は、GaN単結晶基板11の裏面11b側に設けられており、GaN単結晶基板11と電気的に接続している。ドレイン電極8は、例えばAl又はAl-Siの合金からなる。
【0027】
(製造方法)
次に、GaN半導体装置100の製造方法を説明する。図3は、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100の製造方法を工程順に示すフローチャートである。なお、GaN半導体装置100は、洗浄装置、成膜装置、熱処理装置、露光装置、エッチング装置など、各種の装置によって製造される。以下、これらの装置を製造装置と総称する。
【0028】
図3のステップST1で、製造装置は、GaN層12の表面12a側にp-型のウェル領域13(図2参照)を形成する。例えば、p-型のウェル領域13は、p型不純物としてマグネシウム(Mg)をGaN層12の表面12a側に部分的にイオン注入し、GaN層12を含む基板全体に熱処理を施してMgを活性化することにより形成される。
【0029】
次に、図3のステップST2で、製造装置は、GaN層12の表面12a側にn+型のソース領域14(図2参照)と、p+型のコンタクト領域16(図2参照)とをそれぞれ形成する。例えば、n+型のソース領域14は、n型不純物としてシリコン(Si)をウェル領域13の表面側に部分的にイオン注入し、ウェル領域13を含む基板全体に熱処理を施してSiを活性化することにより形成される。p+型のコンタクト領域16は、p型不純物としてMgをウェル領域13の表面側に部分的にイオン注入し、ウェル領域13を含む基板全体に熱処理を施してSiを活性化することにより形成される。なお、n+型のソース領域14を形成するための熱処理と、p+型のコンタクト領域16を形成するための熱処理は、例えば同一工程である。
【0030】
次に、図3のステップST3で、製造装置は、ウェル領域13、ソース領域14及びコンタクト領域16が形成されたGaN層12の表面12a上に第1絶縁膜51を形成する。製造装置は、第1絶縁膜51として、例えばALD法によりAlN膜を2nmの厚さに形成する。
次に、図3のステップST4で、製造装置は、第1絶縁膜51の表面上に第2絶縁膜52を形成する。製造装置は、第2絶縁膜52として、例えばALD法によりAl膜を2nmの厚さに形成する。
【0031】
なお、図3のステップST3に示すAlN膜の形成工程と、図3のステップST4に示すAl膜の形成工程は、同一のチャンバ内で連続して行うのではなく、別々のチャンバ内で行うことが好ましい。これは、ステップST3のAlN膜の形成工程と、ステップST4のAl膜の形成工程とを同一のチャンバ内で行うと、ステップST4の工程で使用した成膜ガス(酸素を含む)がチャンバ内に残留し、次ロットに影響する可能性があるからである。
【0032】
例えば、ステップST4の工程で使用した酸素を含む成膜ガスが、ステップST4の工程が終了した後もチャンバ内に残留している場合を想定する。酸素ガスが残留しているチャンバ内に次ロットのウェハーを投入すると、投入したウェハーが残留している酸素ガスに晒されて、AlN膜を形成する前にGaN層12の表面12aが酸化する(すなわち、表面12aにGa-O結合が生じる)可能性がある。この可能性を低減するため、ステップST3の工程とステップST4の工程は、別々のチャンバ内で行うことが好ましい。
【0033】
次に、図3のステップST5で、製造装置は、第2絶縁膜52の表面上に第3絶縁膜53を形成する。製造装置は、第3絶縁膜53として、例えばCVD法によりSiO膜を100nmの厚さに形成する。
次に、図3のステップST6で、製造装置は、第3絶縁膜53上にゲート電極6(図2参照)を形成する。例えば、製造装置は、第3絶縁膜53上にゲート電極膜を成膜する。ゲート電極膜は、Al又はAl-Siの合金であり、その成膜方法は蒸着法である。または、ゲート電極膜は、不純物をドープしたポリシリコンであり、その成膜はCVD法であってもよい。次に、製造装置は、ゲート電極膜をパターニングすることによって、ゲート電極6を形成する。
【0034】
次に、図3のステップST7で、製造装置は、GaN層12の表面12a側にソース電極7(図2参照)を形成する。ソース電極7は、Al又はAl-Siの合金を蒸着法で成膜し、成膜したAl又はAl-Siの合金をパターニングすることによって形成される。
次に、図3のステップST8で、製造装置は、GaN基板10の裏面10b側にドレイン電極8(図2参照)を形成する。ドレイン8は、Al又はAl-Siの合金を蒸着法で成膜し、必要に応じてパターニングすることによって形成される。以上の工程を経て、図1及び図2に示したGaN半導体装置100が完成する。
【0035】
なお、図3に示すフローチャートはあくまで製造方法の一例である。GaN半導体装置100の製造方法は、図3に示すフローチャートに限定されない。例えば、図3に示すフローチャートにおいて、ソース電極7の形成工程(ステップST7)とドレイン電極8の形成工程(ステップST8)は、実行順が入れ替わっていてもよい。また、n+型のソース領域14、p+型のコンタクト領域16の形成工程(ステップST2)は、ステップST1とステップST3との間ではなく、ステップST6とステップST7との間で行ってもよい。このような実行順でも、図2に示したGaN半導体装置100を製造することができる。
【0036】
(界面準位)
(1)実施形態
図4は、本発明の実施形態1に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaN、AlN及びAl間の原子の結合状態を示すモデル図である。図4に示すように、AlNに酸素(O)は含まれていない。このため、GaNの表面は酸化されにくく、Ga-O結合は形成されにくい。GaN/AlN界面において、Ga-O結合による界面準位の形成は抑制されている。
図5は、図4に示すAlN/Al界面におけるエネルギーバンドを示す図である。図5の縦軸はエネルギー(eV)を示し、図5の横軸は波数空間中の対称点を示す。図5に示すように、AlN/Al界面では、界面準位の形成は抑制されている。
【0037】
(2)比較例
図6は、本発明の比較例に係る原子の結合状態を示すモデル図であって、GaN、AlN及びSiO間の原子の結合状態を示すモデル図である。AlN/SiO界面では、Al-Si-O結合が形成されている。
図7は、図6に示すAlN/SiO界面におけるエネルギーバンドを示す図である。図7の縦軸はエネルギー(eV)を示し、図7の横軸は波数空間中の対称点を示す。図7に示すように、AlN/SiO界面では、Al-O-Si結合に起因している酸素(O)由来でバンドギャップ内に界面準位が形成される。この界面準位は、ホールトラップの起源となり得る。
【0038】
(実施形態1の効果)
以上説明したように、本発明の実施形態1に係るGaN半導体装置100は、GaN層12と、GaN層12上に設けられたゲート絶縁膜5と、ゲート絶縁膜5上に設けられたゲート電極6と、を備える。ゲート絶縁膜5は、GaN層12上に設けられた第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51上に設けられた第2絶縁膜52と、第2絶縁膜52上に設けられた第3絶縁膜53と、を有する。第1絶縁膜51は窒化アルミニウム膜(AlN)である。第2絶縁膜52はAlxSiyO膜(x>y≧0)である。第3絶縁膜53はAlx´Siy´O膜(0≦x´<y´)である。
【0039】
これによれば、GaN層12と第2絶縁膜52との間に第1絶縁膜51が位置する。第1絶縁膜51はAlNであり酸素(O)を含有しないため、第1絶縁膜51とGaN層12との界面(例えば、GaN/AlN界面)において、Ga-O結合の形成は抑制される。GaN/AlN界面において、Ga-O結合による界面準位の形成は抑制される。
【0040】
また、第1絶縁膜51と第3絶縁膜53との間に第2絶縁膜52が位置する。第2絶縁膜52はAlxSiyO膜(x>y≧0)であり、例えばAl膜である。第3絶縁膜53はAlx´Siy´O膜(0≦x´<y´)であり、例えばSiO膜である。図5及び図7に示したように、AlN/Al界面は、AlN/SiO界面と比べて界面準位の形成は抑制される。
さらに、AlNとSiOとの間にAlが介在することによって、SiO膜をGaN/AlN界面から遠ざけている。これにより、SiO膜との接触で形成される界面準位の、GaN/AlN界面への影響を低減することができる。
【0041】
これにより、GaN半導体装置100は、界面準位によるホールトラップを低減することができ、縦型MOSFET1の閾値電圧の変動を抑制することができる。
また、SiO膜は、AlN膜、Al膜と比べて、絶縁破壊電界が大きく、絶縁破壊耐圧を高められる。ゲート絶縁膜5は、SiO膜に例示される第3絶縁膜53を有することにより、絶縁破壊耐圧の低下を抑制することができる。
【0042】
(評価結果)
表1は、本発明の実施形態1と比較例1から3との間で、閾値電圧のシフト量と絶縁破壊電圧とを評価した結果である。図2に示したように、実施形態1に係る縦型MOSFET1は、ゲート絶縁膜5として、AlN膜、Al膜、SiO膜がこの順で積層された絶縁膜を有する。これに対して、図示はしないが、比較例1に係る縦型MOSFETは、ゲート絶縁膜として、Al膜及びSiO膜がこの順で積層された絶縁膜を有する。比較例2に係る縦型MOSFETは、ゲート絶縁膜として、AlN膜及びSiO膜がこの順で積層された絶縁膜を有する。比較例3に係る縦型MOSFETは、ゲート絶縁膜として、AlN膜及びAl膜がこの順で積層された絶縁膜を有する。
【0043】
【表1】
【0044】
表1において、閾値電圧のシフト量は、ゲート電極に負バイアスを印加した後の閾値電圧のシフト量を相対値で示している。シフト量の基準値は、実施形態1である。表1では、実施形態1のシフト量を1とし、比較例1から3のシフト量を実施形態1に対する相対値で示している。表1に示すように、閾値電圧のシフト量は、実施形態1と比べて、比較例1は3倍、比較例2は2.5倍、比較例3は1倍であった。この結果から、GaN層とSiO膜との間に、AlN膜及びAl膜が配置されることによって、閾値電圧の変動が抑制されることが確認された。
また、表1に示すように、ゲート絶縁膜の絶縁破壊電圧は、実施形態1と、比較例1、2が100Vであるのに対して、比較例3は50Vであった。この結果から、ゲート絶縁膜の一部としてSiO膜が配置されることによって、絶縁破壊耐圧の低下を抑制できることが確認された。
【0045】
<実施形態2>
上記の実施形態1では、GaN半導体装置100が備える縦型MOSFETがプレーナ型である場合を示した。しかしながら、本発明の実施形態において、GaN半導体装置が備える縦型MOSFETは、プレーナ型に限定されず、トレンチゲート型であってもよい。
【0046】
図8は、本発明の実施形態2に係るGaN半導体装置100Aの構成例を示す断面図である。図8に示すように、実施形態2に係るGaN半導体装置100Aは、GaN基板10に設けられたトレンチHを有する。トレンチHは、GaN基板10の表面10a側に開口している。トレンチHはp-型のウェル領域13よりも深く形成されており、トレンチHの底部はn-型のGaN層12(ドリフト領域)まで達している。
【0047】
トレンチHの内側に、ゲート絶縁膜5とゲート電極6とが配置されている。トレンチHの内側の側面と底面とがゲート絶縁膜5の第1絶縁膜51で覆われている。また、ゲート電極6は、ゲート絶縁膜5を介してトレンチHに埋め込まれている。トレンチゲート型の縦型MOSFETでは、ウェル領域13であって、トレンチHの側面に設けられたゲート絶縁膜5を介してゲート電極6と向かい合う領域が、チャネル領域CRとなる。
【0048】
実施形態2に係るGaN半導体装置100Aは、実施形態1に係るGaN半導体装置100と同様に、ゲート絶縁膜5として、GaN層12上に設けられた第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51上に設けられた第2絶縁膜52と、第2絶縁膜52上に設けられた第3絶縁膜53と、を有する。第1絶縁膜51、第2絶縁膜52及び第3絶縁膜53は、この順で積層されてゲート絶縁膜5を構成している。
【0049】
第1絶縁膜51は、例えばALD法により2nmの厚さに形成されたAlN膜である。第2絶縁膜52は、AlxSiyO膜(x>y≧0)であり、例えばALD法により2nmの厚さに形成されたAl膜である。第3絶縁膜53は、Alx´Siy´O膜(0≦x´<y´)であり、例えばCVD法により100nmの厚さに形成されたSiO膜である。
【0050】
これによれば、GaN半導体装置100Aは、GaN半導体装置100と同様に、ゲート絶縁膜5の絶縁破壊耐圧の低下を抑制しつつ、閾値電圧の変動を抑制することができる。
また、GaN半導体装置100Aでは、縦型MOSFETがトレンチゲート構造を採用することにより、チャネル領域CRをより密に配置することが可能となるので、素子の微細化が容易となる。
【0051】
<実施形態3>
上記の実施形態1、2では、GaN半導体装置100、100Aが備えるMOSFETが縦型MOSFETである場合を示した。しかしながら、本発明の実施形態において、GaN半導体装置が備えるMOSFETは、縦型ではなく、横型であってもよい。
【0052】
図9は、本発明の実施形態3に係るGaN半導体装置100Bの構成例を示す断面図である。図9に示すように、実施形態3に係るGaN半導体装置100Bは、GaN層12の表面12a側に設けられたn+型のドレイン領域15を有する。ドレイン電極8は、GaN層12の表面12a上に設けられており、n+型のドレイン領域15と電気的に接続している。横型MOSFETでは、ソース領域14とドレイン領域15とに両側から挟まれ、ゲート絶縁膜5を介してゲート電極6と向かい合う領域が、チャネル領域CRとなる。
【0053】
実施形態3に係るGaN半導体装置100Bは、実施形態1に係るGaN半導体装置100と同様に、ゲート絶縁膜5として、GaN層12上に設けられた第1絶縁膜51と、第1絶縁膜51上に設けられた第2絶縁膜52と、第2絶縁膜52上に設けられた第3絶縁膜53と、を有する。第1絶縁膜51、第2絶縁膜52及び第3絶縁膜53は、この順で積層されてゲート絶縁膜5を構成している。第1絶縁膜51、第2絶縁膜52及び第3絶縁膜53の各構成は、実施形態1に係るGaN半導体装置100と同様である。
これによれば、GaN半導体装置100Bは、GaN半導体装置100と同様に、ゲート絶縁膜5の絶縁破壊耐圧の低下を抑制しつつ、閾値電圧の変動を抑制することができる。
【0054】
<変形例>
上記の実施形態1から3では、ゲート絶縁膜5を構成する第2絶縁膜52はAlxSiyO膜(x>y≧0)であり、一例としてAl膜であることを説明した。しかしながら、本発明の実施形態において、第2絶縁膜52は、AlxSiyO膜(x>y>0)であってもよい。つまり、第2絶縁膜52は、Siを必ず含む組成であってもよい。これにより、第2絶縁膜52の組成と原子間の結合状態を、第3絶縁膜53の組成と原子間の結合状態に近づけることができるので、第2絶縁膜52と第3絶縁膜53との界面に形成される界面準位を低減することが可能である。
【0055】
また、上記の実施形態1から3では、ゲート絶縁膜5を構成する第3絶縁膜53はAlx´Siy´O膜(0≦x´<y´)であり、一例としてSiO膜であることを説明した。しかしながら、本発明の実施形態において、第3絶縁膜53は、Alx´Siy´O膜(0<x´<y´)であってもよい。つまり、第3絶縁膜53は、Alを必ず含む組成であってもよい。これにより、第3絶縁膜53の組成を第2絶縁膜52の組成に近づけることができるので、第2絶縁膜52と第3絶縁膜53との界面に形成される界面準位を低減することが可能である・
【0056】
<その他の実施形態>
上記のように、本発明は実施形態及び変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、変形例が明らかとなろう。
例えば、縦型MOSFET1に用いられるp型ドーパントは、マグネシウム(Mg)に限定されない。p型ドーパントは、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)又はカドミウム(Cd)であってもよい。例えば、チャネル領域CRは、p型ドーパントとして、Mg、Be、Zn、Cdのいずれか1種類以上を1E+16/cm以上の濃度で含んでもよい。
【0057】
また、図2において、ゲート絶縁膜5直下のドリフト領域には、n型のJFET領域が設けられていてもよい。JFET領域は、他のドリフト領域よりもn型ドーパントの濃度が高く、電気抵抗が低い領域である。JFET領域が設けられることによって、縦型MOSFET1のオン抵抗の低減が図られていてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、本発明の「窒化ガリウム層」としてGaN層12を例示したが、「窒化ガリウム層」はGaN層に限定されない。例えば、「窒化ガリウム層」は、バルクのGaN基板であってもよい。また、「窒化ガリウム層」はGaNを主成分とし、アルミニウム(Al)及びインジウム(In)のいずれか1種類以上の元素をさらに含んでもよい。
【0059】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。上記した実施形態及び変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 縦型MOSFET
5 ゲート絶縁膜
6 ゲート電極
7 ソース電極
8 ドレイン電極
10 GaN基板
10a、12a 表面
10b、11b、12b 裏面
11 GaN単結晶基板
12 GaN層
13 ウェル領域
14 ソース領域
15 ドレイン領域
16 コンタクト領域
51 第1絶縁膜
52 第2絶縁膜
53 第3絶縁膜
100、100A、100B GaN半導体装置
H トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9