(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147413
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電子錠付き保管庫
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20220929BHJP
E05B 65/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E05B47/00 R
E05B65/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048642
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】501475550
【氏名又は名称】株式会社オーエスエム
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】鹿毛 信吾
(72)【発明者】
【氏名】中井 康一
(57)【要約】
【課題】ユーザーが開閉扉を閉止位置にロックする操作及びこのロックを解除する操作を適正に行うことが可能な電子錠付き保管庫を提供する。
【解決手段】開口部16を有する保管庫本体10と、前記開口部16を開閉する開閉扉14と、前記開閉扉14を前記閉止位置にロックする電子錠2と、前記開閉扉14を仮止めするプッシュラッチ機構8とを備え、前記電子錠2には、前記開閉扉14のロック位置とアンロック位置とに変位可能なロック部材5と、これを駆動する駆動部材6とが設けられ、前記駆動部材6には、出力ロッド61と、これを作動させる作動部と、前記ロック位置及び前記アンロック位置に前記出力ロッド61を保持する保持部とが設けられ、前記ロック部材5と前記駆動部材6との間には、出力ロッド61が一定範囲を移動するのを許容しつつ、前記駆動力をロック部材5に伝達する動力伝達部が設けられている電子錠付き保管庫1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する保管庫本体と、
前記開口部の開放位置と閉止位置とに変位可能な開閉扉と、
前記開閉扉を前記閉止位置にロックする電子錠機構とを備え、
前記電子錠機構には、前記開閉扉に形成された被係合部に係止部を係合したロック位置と前記被係合部と前記係止部との係合を解除したアンロック位置とに変位可能なロック部材と、前記ロック部材を前記ロック位置と前記アンロック位置とに変位させるように駆動する駆動部材とが設けられ、
前記駆動部材には、前記ロック部材に駆動力を出力する出力部と、前記出力部を作動させる作動部と、前記ロック部材のロック位置及び前記アンロック位置に前記出力部を保持する保持部とが設けられ、
前記ロック部材と前記駆動部材との間には、前記出力部が、前記ロック位置及び前記アンロック位置の中間位置よりも前記ロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりも前記アンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、前記駆動力をロック部材に伝達する動力伝達部が設けられている電子錠付き保管庫。
【請求項2】
前記開閉扉を前記閉止位置に仮止めするとともに、前記開閉扉の押し込み操作に応じて前記仮止め状態を解除するプッシュラッチ機構を、さらに備えている請求項1記載の電子錠付き保管庫。
【請求項3】
前記駆動部材は、ケーシングに支持された出力ロッドからなる前記出力部と、前記出力ロッドをケーシングに沿ってスライド変位させるコイルからなる前記駆動部と、前記出力ロッドを前記ロック位置及びアンロック位置に磁力によってそれぞれ保持する永久磁石からなる前記保持部とを有する自己保持型ソレノイドである請求項1又は2記載の電子錠付き保管庫。
【請求項4】
前記駆動部材と前記保管庫本体との間には、耐熱性を有する素材からなる遮蔽板が配設されている請求項1~3のいずれか1項に記載の電子錠付き保管庫。
【請求項5】
前記ロック部材が、支持軸を支点に揺動変位可能に支持された揺動レバーにより構成され、
前記動力伝達部には、前記出力部を、前記ロック位置側に偏った位置に位置決めする第一位置決め部と、前記非ロック位置側に偏った位置に位置決めする第二位置決め部とが設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の電子錠付き保管庫。
【請求項6】
前記開口部を閉止可能な一対の開閉扉を有し、
前記ロック部材には、前記各開閉扉に設けられた前記被係合部に係合される一対の係止部が互いに離間した位置に設けられている請求項1~5のいずれか1項に記載の電子錠付き保管庫。
【請求項7】
前記開閉扉が前記閉止位置にあるか否かを検知する検知装置を、さらに備えている請求項1~6のいずれか1項に記載の電子錠付き保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉扉を閉止位置にロックする電子錠を備えた電子錠付き保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一面に開口部が形成された保管庫本体(キャビネット本体部)と、この保管庫本体の開口部を開閉可能に設けられた開閉扉(扉部)と、前記開閉扉の施錠又は開錠を行う電子錠とを備え、前記電子錠には、前記開閉扉を閉状態で施錠するロック部材と、前記ロック部材による施錠及び開錠を制御する制御部とが設けられた電子錠付き保管庫が知られている(例えば、特許文献1参照)。この保管庫によれば、前記ロック部材をロック位置に変位させて開閉扉を施錠することにより、保管庫内に収容された保管物の盗難を防止することができる。
【0003】
前記ロック部材を作動させる駆動部材としては、例えばボビンに巻線されるコイルの励磁により固定磁極に対して吸着可能に配設される可動鉄心(出力ロッド)を有し、可動鉄心を固定磁極に吸着させた状に保持する永久磁石が配設されるとともに、コイルが二重に構成され、さらにそれぞれのコイルの励磁によって可動鉄心の往路と復路を吸着移動及び吸着保持できるように、前記可動鉄心の両端側に固定磁極及び永久磁石が配置される自己保持型ソレノイド(例えば、特許文献2参照)が用いられている。このような自己保持型ソレノイドを用いて電子錠付き保管庫の施錠又は開錠を行うように構成した場合には、開閉扉の施錠操作時及び開錠操作時に前記コイルを一時的に励磁することにより、開閉扉をロックするロック部材をロック位置とアンロック位置とに変位させることができる。しかも、ロック部材の作動後に前記コイルに対する通電を遮断した場合においても、永久磁石の磁力に応じてロック部材をロック位置及びアンロック位置に保持することができるため、コイルに通電される電力の浪費を抑制することができる。
【0004】
また、一端にマグネットが取り付けられた保持装置と、開閉扉に取り付けられた吸着片とを有し、開閉扉を閉止位置に押圧すればマグネットの吸引力で開閉扉が閉止状態に係止され、この閉止状態にある開閉扉をさらに押圧すればマグネットがスプリングの押圧力で旧位置に復帰して、扉の自由端部が収納箱本体の前方側に突出した状態となって開閉扉を前方に押圧するように構成された扉開閉用マグネットキャッチャーからなるプッシュラッチ機構が知られている(例えば、特許文献3参照)。このようなプッシュラッチ機構を保管庫の扉開閉部に設けた場合には、開閉扉を閉止位置に移動させるだけでマグネットの磁力に応じて扉を仮止め状態に保持することができる。そして、開閉扉を開放する際には、閉止位置にある開閉扉を後方に押し込むように操作することにより、前記マグネットの磁力による仮止め状態を解除することができるため、開閉扉の開放操作を軽い力で容易に行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020‐165197号公報
【特許文献2】特開平11‐186029号公報
【特許文献3】実公平3‐12136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような開閉扉を備えた電子錠付き保管庫において、特許文献2に開示された自己保持型ソレノイドからなる駆動部材によりロック部材を駆動するように構成した場合、ロック部材に設けられた係止部と、開閉扉に形成された被係合部との間に位置ずれが生じていると、開閉扉の被係合部にロック部材の係止部を係合する動作が阻害される可能性がある。ユーザーがこれに気付かずに、電子錠がアンロック状態になったまま放置されると、保管物の盗難を防止することができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献3に開示されたプッシュラッチ機構を設けることにより、開閉扉の閉止操作に応じて開閉扉を閉止位置に仮止めするとともに、開閉扉の押し込み操作に応じて開閉扉の仮止め状態を解除するように構成された電子錠付き保管庫では、ユーザーによる電子錠のロック操作が行われる前に、閉止位置にある開閉扉が押し込まれて前記プッシュラッチ機構の仮止め状態が解除されると、プッシュラッチ機構から開閉扉に付与される押圧力に応じて開閉扉が前方の仮止め解除位置に変位し、ロック部材の係止部と開閉扉の被係合部との間に位置ずれが生じ易いという問題があった。
【0008】
さらに、ユーザーによる電子錠のアンロック操作が行われる前に、閉止位置にある開閉扉が押し込まれてプッシュラッチ機構の仮止め状態が解除されると、プッシュラッチ機構から開閉扉に付与される押圧力に応じて電子錠の係止部が前記被係合部の周面に圧接され状態となって、この被係合部から電子錠の係止部を引き出す動作が阻害されてロック部材によるロックを解除する操作を正常に行うことができない場合がある。この事態に気付かずにユーザーが開閉扉を無理に開放しようとすると、電子錠又は開閉扉が損傷する可能性があった。
【0009】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み解決しようとするところは、開閉扉を閉止位置にロックする電子錠を備えた電子錠付き保管庫において、ユーザーが開閉扉を閉止位置にロックする操作等を適正に行うことが可能な電子錠付き保管庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子錠付き保管庫は、開口部を有する保管庫本体と、前記開口部の開放位置と閉止位置とに変位可能な開閉扉と、前記開閉扉を前記閉止位置にロックする電子錠とを備え、前記電子錠には、前記開閉扉に形成された被係合部に係止部を係合したロック位置と前記被係合部と前記係止部との係合を解除したアンロック位置とに変位可能なロック部材と、前記ロック部材を前記ロック位置と前記アンロック位置とに変位させるように駆動する駆動部材とが設けられ、前記駆動部材には、前記ロック部材に駆動力を出力する出力部と、前記出力部を作動させる作動部と、前記ロック部材のロック位置及び前記アンロック位置に前記出力部を保持する保持部とが設けられ、前記ロック部材と前記駆動部材との間には、前記出力部が、前記ロック位置及び前記アンロック位置の中間位置よりも前記ロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりも前記アンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、前記駆動力をロック部材に伝達する動力伝達部が設けられているものである。
【0011】
また、前記開閉扉を前記閉止位置に仮止めするとともに、前記開閉扉の押し込み操作に応じて前記仮止め状態を解除するプッシュラッチ機構を、さらに備えたものであってもよい。
【0012】
また、前記駆動部材は、ケーシングに支持された出力ロッドからなる前記出力部と、前記出力ロッドをケーシングに沿ってスライド変位させるコイルからなる前記作動部と、前記出力ロッドを前記ロック位置及びアンロック位置に磁力によってそれぞれ保持する永久磁石からなる前記保持部とを有する自己保持型ソレノイドであることが好ましい。
【0013】
さらに、前記駆動部材と前記保管庫本体との間には、耐熱性を有する素材からなる遮蔽板が配設されていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、前記ロック部材が、支持軸を支点に揺動変位可能に支持された揺動レバーにより構成され、前記動力伝達部には、前記出力部を、前記ロック位置側に偏った位置に位置決めする第一位置決め部と、前記非ロック位置側に偏った位置に位置決めする第二位置決め部とが設けられたものであってもよい。
【0015】
また、前記開口部を覆う一対の開閉扉を有し、前記ロック部材には、前記各開閉扉に設けられた前記被係合部に係合される一対の係止部が互いに離間した位置に設けられていることが好ましい。
【0016】
さらに、前記開閉扉が前記閉止位置にあるか前記開放位置にあるかを検知する検知装置を、さらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上述のように係止部を有するロック部材及びこれを作動させる駆動部材を有する電子錠を備えた電子錠付き保管庫において、ロック部材と駆動部材との間に、駆動部材の出力部が、ロック部材のロック位置及びアンロック位置の中間位置よりもロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりもアンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、駆動部材の駆動力をロック部材に伝達する動力伝達部を設けた構成としたため、開閉扉をロック状態とする際に、ロック部材がアンロック状態に放置されることに起因した盗難の発生を効果的に防止することができる。
【0018】
また、前記開閉扉を前記閉止位置に仮止めするとともに、前記開閉扉の押し込み操作に応じて前記仮止め状態を解除するプッシュラッチ機構を備えた電子錠付き保管庫おいて、ユーザーが開閉扉のロックを解除して開放操作を行う際に、電子錠又は開閉扉が損傷するという事態の発生を効果的に防止することができる
【0019】
また、前記駆動部材として自己保持型ソレノイドを用いた場合には、簡単な構成でロック部材を迅速かつ適正にロック位置とアンロック位置とに変位させることができるという利点がある。
【0020】
さらに、耐熱性を有する素材からなる遮蔽板が駆動部材と保管庫本体との間に配設された構成によれば、駆動部材が高温に加熱されるという故障が発生した場合においても、その熱影響が保管庫本体に及ぶのを抑制して、その焼損を効果的に防止することができる。
【0021】
さらにまた、支持軸を支点に揺動変位可能に支持されるとともに、前記第一位置決め部及び第二位置決め部を有する揺動レバーによりロック部材を構成した場合には、部品点数を少なくして、構造を簡略化することができるとともに、ロック部材を容易かつ適正に作動させることができるという利点がある。
【0022】
また、保管庫本体の開口部を閉止可能な一対の開閉扉を有する電子錠付き保管庫において、ロック部材には、各開閉扉に設けられた被係合部にそれぞれ係合される一対の係止部が互いに離間した位置に配設した構成によれば、各開閉扉に対して個別のロック部材及び駆動部材を設ける必要がないため、簡単な構成で各開閉扉のロック操作及びロック解除操作を同時に行うことができる。しかも、一対の係止部を互いに離間した位置に配設したため、両開閉扉の間に板状工具を挿入してロック部材を操作しようとしても、係止部を被係合部から離脱させることが防止され、盗難の発生を効果的に防止できるという利点もある。
【0023】
さらに、開閉扉が閉止位置にあるか否かを検知する検知装置を備えた構成とした場合には、この検知装置の出力信号に応じて、開閉扉が正常に閉止されているか否かをユーザーに認識させることができる。しかも、検知装置の検知用アクチュエータから開閉扉に付与される作動抵抗に応じて開閉扉を閉止する際の衝撃を緩和することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る電子錠付き保管庫の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る電子錠付き保管庫の要部を示す断面図である。
【
図3】電子錠のアンロック状態を示す断面図である。
【
図6】プッシュラッチ機構の仮止め解除状態を示す断面図である。
【
図8】電子錠の変形例に係るロック部材の構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係る電子錠の構成を示す斜視図である。
【
図10】第二実施形態に係る電子錠のロック状態を示す断面図である。
【
図11】第二実施形態に係るプッシュラッチ機構の仮止め解除状態を示す断面図である。
【
図12】本発明の第三実施形態に係る電子錠のロック状態を示す断面図である。
【
図13】第三実施形態に係るプッシュラッチ機構の仮止め解除状態を示す断面図である。
【
図14】本発明に係る電子錠付き保管庫の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。
(第一実施形態)
【0026】
本発明の第一実施形態に係る電子錠付き保管庫1は、
図1~
図4に示すように、樹脂製、金属製、又は木製の板状素材等からなる天板11、側板12、底板13及び図外の背板を有する保管庫本体10と、保管庫本体10の前面部に設置された樹脂製、金属製、木製又はガラス製の板状素材等からなる左右一対の開閉扉14と、保管庫本体10の底板13に設けられた複数個のローラ脚体15とを備えている。開閉扉14は、保管庫本体10の左右両端部に設けられた図略のヒンジ軸を支点に左右に回動可能に支持されることより、保管庫本体10の前面に形成された開口部16を開放する開放位置と、この開口部16を閉止する閉止位置とに変位可能とされている。
【0027】
保管庫本体10の前面上部には、開口部16の上辺部に沿って水平方向に延びる横木材17が固定されるとともに、この横木材17には、後述の支持フレーム3が図略のビス等を介して取り付けられている。そして、支持フレーム3には、開閉扉14を閉止位置にロックする電子錠2と、開閉扉14を閉止位置に仮止めするとともに、この仮止め状態を解除可能なプッシュラッチ機構8と、開閉扉14が閉止位置にあるか否かを検出する検知装置7(
図4参照)とが設けられている。
【0028】
検知装置7は、従来周知であるためにその詳細な説明は省略するが、検知用アクチュエータ71が前面板32の前方側に突出した状態で取り付けられいる。そして、開閉扉14の閉止操作に応じ、検知用アクチュエータ71が開閉扉14の裏面により押圧されて後方の検知位置に押し込まれると、開閉扉14が閉止位置にあることを示す検知信号が、検知装置7から図外の制御部等に出力されるようになっている。
【0029】
支持フレーム3は、
図4及び
図5に示すように、矩形の平面視形状を有する基板31と、この基板31の前端部から上方に立設された左右一対の前面板32,32と、基板31の側辺部から上方に立設された左右一対の側面板33,33と、基板31の後端部から上方に立設された後面板34とを有している。基板31上には、サブフレーム4が前後一対のビス21により固定されるようになっている。また、左右の前面板32には、横木材17に固定される固定部35と、検知装置7が取り付けられる取付部36とが設けられている。さらに、基板31の前部下面には、左右一対のプッシュラッチ機構8が取付部材80を介して取り付けられている。
【0030】
サブフレーム4は、支持フレーム3の基板31上に固定される底板41と、この底板41の前端部から上方に立設された前面板42と、底板41の側辺部から上方に立設された左右一対の側面板43,44とを有している。そして、
図2及び
図5に示すように、支持軸22を支点にして揺動可能に支持されたロック部材5と、このロック部材5を駆動する駆動部材6とを有する電子錠2が、サブフレーム4に取り付けられている。
【0031】
一方の側面板44の上端部には、駆動部材6の上方部を覆うように折り返された遮蔽板45が設けられ、この遮蔽板45が駆動部材6と保管庫本体10との間に配設されるように構成されている。前記遮蔽板45を有するサブフレーム4は、鉄板、ステンレス板又はニッケル板等の耐熱性を有する素材により形成されている。
【0032】
また、サブフレーム4の前面板42には、ナット48が取り付けられ、このナット48には、非常時にロック部材5をアンロック位置に変位させるための操作用開口部を閉止する特殊ねじ47が羅着されている。そして、電子錠2の駆動部材6を作動させることができない停電時等に、専用工具を用いて特殊ねじ47をナット48から取り外した後、図外の操作ロッドを、ナット48のねじ穴からサブフレーム4内に挿入することにより、前記ロック部材5をロック位置からアンロック位置に揺動変位させ得るように構成されている。なお、
図2及び
図5において、符号49は、保管庫本体10の横木材17に形成された開口部、つまり前記操作ロッドを挿入するための開口部を閉止するためのキャップである。
【0033】
電子錠2のロック部材5は、
図5に示すように、サブフレーム4内に収容される揺動板51と、揺動板51の前端部から下方に突設された左右一対の係止部52,52と、揺動板51の後端部から下方に突設された左右一対の枢支部53,53を有し、この枢支部53,53に設置された支持軸22を支点に揺動可能に支持されている。また、揺動板51の後部上面には、後述する駆動部材6の出力ロッド61を、前方のロック位置側に偏った位置に位置決めする単一の第一位置決め部54と、後方の非ロック位置側に偏った位置に位置決めする左右一対の第二位置決め部55とが突設されている。
【0034】
駆動部材6は、従来周知の自己保持型ソレノイドであり、
図2に示すように、ケーシング60に支持された出力ロッド(可動鉄心)61からなる出力部と、出力ロッド61をケーシング60に沿ってスライド変位させるコイル62からなる作動部と、出力ロッド61をロック部材5のロック位置及びアンロック位置に保持する保持部とを有している。この保持部は、出力ロッド61を前方側に突出させた突出位置に保持する永久磁石63と、出力ロッド61を後方に退避させた退避位置に保持する永久磁石63とにより構成されている。
【0035】
また、出力ロッド61の先端部には、駆動部材6の駆動力をロック部材5に伝達する連結ピン65が設けられ、この連結ピン65が、ロック部材5の第一位置決め部54と第二位置決め部55との間に配設されている。そして、第一位置決め部54及び第二位置決め部55と連結ピン65とにより、駆動部材6の出力ロッド61が、ロック部材5のロック位置及びアンロック位置の中間位置よりもロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりもアンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、駆動部材6の駆動力をロック部材5に伝達する動力伝達部が構成されている。
【0036】
すなわち、開閉扉14のロック状態を解除する際には、駆動部材6のコイル62に通電して出力ロッド61の先端部を突出させる方向に駆動力を付与することにより、連結ピン65をロック部材5の第一位置決め部54に当接させて、これを前方側に押動する。この結果、
図3に示すアンロック位置にあるロック部材5が、支持軸22を支点にして揺動変位し、係止部52が、開閉扉14の上面に形成された被挿入溝等からなる被係合部18に係合された
図2に示すロック位置に変位することにより、開閉扉14が閉止位置にロックされる。この開閉扉14のロック状態は、コイル62に対する通電が停止された後においても、前記永久磁石63の磁力に応じて保持される。
【0037】
前記一対の係止部52,52は、ロック部材5の先端部において正面視で互いに離間した位置に設けられている。そして、保管庫本体10の開口部16を覆う一対の開閉扉14,14に設けられた被挿入溝等からなる各被係合部18に、各係止部52がそれぞれ係合されることにより、両開閉扉14,14が同時にロック状態に保持されるように構成されている。
【0038】
一方、開閉扉14のロック状態を解除する際には、駆動部材6のコイル62に対する通電状態を変化させて、出力ロッド61の先端部を後退させる方向に駆動力を付与することにより、連結ピン65をロック部材5の第二位置決め部55に当接させて、これを後方側に押動する。この結果、
図2に示すロック位置にあるロック部材5が、支持軸22を支点にして揺動変位し、係止部52が、開閉扉14の被係合部18から引き出された
図3に示すアンロック位置に変位することにより、開閉扉14のロック状態が解除される。この開閉扉14のアンロック状態は、コイル62に対する通電が停止された後においても、前記永久磁石64の磁力に応じて保持される。
【0039】
プッシュラッチ機構8は、従来周知であるためにその詳細な説明は省略するが、例えば一端にマグネットを有する保持部材81と、この保持部材81をスライド可能に支持する支持ケース82と、開閉扉14の背面に取り付けられた磁性体からなる吸着片83とを有している。そして、開放位置にある開閉扉14を閉止位置に変位させた際に、マグネットの磁力で吸着片83が保持部材81に吸引されることにより、開閉扉14が閉止状態に仮止めされる。また、閉止状態にある開閉扉14をさらに後方に押し込むよう押圧すれば、スプリング(図示せず)の押圧力に応じ、プッシュラッチ機構8の保持部材81が、
図6に示すように前方側に突出した状態に復帰して、開閉扉14の自由端部が保管庫本体10の前方側に押圧される。
【0040】
このようなプッシュラッチ機構8を設けた場合には、開閉扉14を閉止する際に、これを閉止位置に移動させるだけでマグネットの磁力に応じて開閉扉14が安定した仮止め状態に保持される。また、開閉扉14を開放する際には、閉止位置にある開閉扉14を後方に押し込むように操作することにより、前記マグネットの磁力による仮止め状態が解除され、開閉扉14を軽い力で容易に開放することが可能となる。
【0041】
上述の構成を有する電子錠付き保管庫1内に保管物を収容した後、開閉扉14を閉止位置に仮止めした状態で、ユーザーが、図外の操作スイッチ、リモコン、又はスマホ等を操作して、駆動部材6の出力ロッド61の先端部を突出させる方向の駆動するロック信号を入力すれば、
図2に示すようにロック部材5がロック位置に揺動変位して、開閉扉14が閉止位置にロックされる。また、駆動部材6に設けられた永久磁石63の磁力に応じて出力ロッド61の先端部が前方の突出位置に保持されることにより、ロック部材5がロック位置に保持されるため、コイル62に対する通電状態を長時間に亘って維持する必要はなく、電力の浪費を抑制することができる。
【0042】
一方、上述のロック状態にある開閉扉14の開放操作を行う場合には、図外の操作スイッチ等を操作して、駆動部材6の出力ロッド61の先端部を退避させる方向に駆動するアンロック信号を入力することにより、
図3に示すようにロック部材5がアンロック位置に揺動変位して、開閉扉14のロック状態が解除される。また、駆動部材6の永久磁石64の磁力に応じて出力ロッド61先端部が後方の後退位置に保持されることにより、ロック部材5がアンロック位置に保持されるため、電力の浪費を抑制することができる。
【0043】
次いで、閉止状態にある開閉扉14を後方に押し込むように押圧することにより、
図6に示すように、プッシュラッチ機構8の保持部材81を前方の突出位置に復帰させれば、開閉扉14の自由端部が保管庫本体10の前方側に突出した状態となる。この結果、開閉扉14が前方に押圧されてマグネットの磁力による仮止め状態が解除され、軽い力で開閉扉14を容易に開放することが可能となる。
【0044】
上述の駆動部材6を有する電子錠2を備えた電子錠付き保管庫1では、ロック部材5に設けられた係止部52と、開閉扉14に形成された被係合部18との間に位置ずれが生じていると、開閉扉の被係合部18にロック部材9の係止部52を係合する動作が阻害される可能性がある。ユーザーがこれに気付かずに、電子錠2がアンロック状態になったまま放置されると、保管物の盗難を防止することができないという問題がある。
【0045】
また、プッシュラッチ機構8を、さらに備えた電子錠付き保管庫1では、ユーザーが電子錠2による上述のロック操作を行う前に、閉止位置にある開閉扉14を後方側に押し込んでプッシュラッチ機構8による仮止め状態を解除する誤操作を行うと、プッシュラッチ機構8から開閉扉14に付与される押圧力に応じて開閉扉14が仮止め解除位置に変位することにより、ロック部材5の係止部52と開閉扉14の被係合部18との間に位置ずれが生じて、被係合部18に係止部52を挿入する動作が阻害され易いという問題がある。
【0046】
しかし、ロック部材5と駆動部材6との間には、第一位置決め部54及び第二位置決め部55の間を出力ロッド61の連結ピン65が移動するのを許容しつつ、駆動部材6の駆動力をロック部材5に伝達する動力伝達部が設けられているため、上述の状態で、駆動部材6のコイルに対する通電が停止された場合においても、永久磁石63の磁力に応じて出力ロッド61がロック位置側に偏った位置に保持され、出力ロッド61がアンロック位置に後退することはない。
【0047】
したがって、検知装置7の出力信号等に応じて上述のような事態が生じたことを察知したユーザーが、上述のような位置ずれ状態にある開閉扉14を正規の位置に押動する操作を行って、係止部52と被係合部18との位置ずれを修正するだけで、操作スイッチ等を再操作してロック信号を入力するという煩雑な操作を要することなく、被係合部18に係止部52を挿入して開閉扉14を閉止位置にロックすることができる。これにより、開閉扉14がアンロック状態に放置されることに起因した盗難の発生を効果的に防止することができる。
【0048】
また、ユーザーが操作スイッチ等を操作して、ロック部材5による開閉扉14のロックを解除する操作を行う前に、閉止位置にある開閉扉14を後方に押し込むような誤操作が行われた場合、プッシュラッチ機構8から開閉扉14に付与される付勢力に応じ、
図6に示すように、ロック部材5の係止部52が、開閉扉14の被係合部18の周面に圧接されることにより、この被係合部18からロック部材5の係止部52を引き出す動作が阻害される可能性がある。この状態で、駆動部材6のコイルに対する通電が停止された場合においても、永久磁石64の磁力に応じて出力ロッド61がアンロック位置側に偏った位置に保持され、出力ロッド61がロック位置に戻ることはない。
【0049】
したがって、開閉扉14の開放操作時に作用する作動抵抗に応じて、上述のような事態が生じたことを察知したユーザーが、仮止め解除位置にある開閉扉14を仮止め位置に押動する操作を行って、係止部52と被係合部18との位置ずれを修正することにより、永久磁石64の磁力に応じて出力ロッド61をアンロック位置に変位させることができる。これにより、操作スイッチ等を再操作してアンロック信号を入力するという煩雑な操作を要することなく、被係合部18から係止部52を抜き出して開閉扉14をアンロック状態とすることができるため、ユーザーが開閉扉14を無理に開放して、電子錠2又は開閉扉14が損傷するという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0050】
上述のように保管庫本体10に設けられた開口部16の開放位置と閉止位置とに変位可能な開閉扉14と、係止部52を有するロック部材5及び自己保持型ソレノイドからなる駆動部材6を有する電子錠2とを備えた電子錠付き保管庫1において、ロック部材5と駆動部材6との間に、駆動部材6の出力ロッド61が、ロック位置及びアンロック位置の中間位置よりもロック位置側に偏った位置と、中間位置よりもアンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、駆動部材6の駆動力をロック部材5に伝達する動力伝達部を設けた構成としたため、開閉扉14をロック状態とする際に、ロック部材5がアンロック状態に放置されることに起因した盗難の発生を効果的に防止することができる。
【0051】
また、開閉扉14を閉止位置に仮止めするプッシュラッチ機構8を、さらに備えた電子錠付き保管庫1では、開閉扉14の開放操作を行う際に、プッシュラッチ機構8から開閉扉14に付与される付勢力に応じて、ロック部材5の係止部52を引き出す動作が阻害された場合においても、ユーザーが操作スイッチ等を再操作してアンロック信号を入力するという煩雑な操作を要することなく、被係合部18から係止部52を抜き出して開閉扉14をアンロック状態とすることができるため、電子錠2又は開閉扉14が損傷するという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0052】
なお、ケーシング60に支持された出力ロッド61からなる出力部をケーシング60に沿ってスライド変位させるコイル62からなる作動部を有する自己保持型ソレノイドにより駆動部材6を構成してなる上述の第一実施形態に代え、出力部をねじ送りする等によりロック部材5をロック位置とアンロック位置とに変位させるDCモータ等からなる作動部を備えたプッシュプルアクチュエータを用いることも可能である。しかし、上述の自己保持型ソレノイドからなる駆動部材6を用いた場合には、簡単な構成でロック部材5を迅速かつ適正にロック位置とアンロック位置とに変位させることができるという利点がある。
【0053】
保管庫本体10の天板11等が木製板材等の可燃材で形成されている場合において、駆動部材6を構成する自己保持型ソレノイドに漏電故障等が生じることに起因して、駆動部材6が高温に加熱されると、その熱影響に応じて天板11等が焼損する可能性がある。しかし、第一実施形態では、耐熱性を有する素材からなる遮蔽板45が、駆動部材6と保管庫本体10との間に配設された構成としたため、駆動部材6が高温に加熱されるという故障が発生した場合においても、その熱影響が保管庫本体10の天板11等に及ぶのを抑制して、その焼損を効果的に防止することができる。
【0054】
また、支持軸22を支点に揺動変位可能に支持された揺動レバーによりロック部材5が構成され、出力ロッド61をロック位置側に偏った位置に位置決めする第一位置決め部54と、出力ロッド61を非ロック位置側に偏った位置に位置決めする第二位置決め部55とを動力伝達部に設けてなる上述の第一実施形態に代え、
図9等に示す後述の第二実施形態のように、スライド竿91と中間リンク93と先端係止片95とを有するロック部材9を用いることも可能である。しかし、
図3及び
図5等に示す第一実施形態のように、揺動レバーによりロック部材5を構成した場合には、第二実施形態に比べて部品点数を少なくして、構造を簡略化することができるとともに、ロック部材5を容易かつ適正に作動させることができるという利点がある。
【0055】
なお、第一位置決め部54及び第二位置決め部55に代え、
図7及び
図8に示すように、ロック部材5の後端部に長孔55を有する左右一対の連結部56を設け、出力ロッド61の先端部に設けられた連結ピン65を長孔55に沿ってスライド可能に連結することにより、出力ロッド61が、ロック部材5のロック位置及びアンロック位置の中間位置よりもロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりもアンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、駆動部材6の駆動力をロック部材5に伝達するように構成してもよい。
【0056】
また、保管庫本体10の開口部16を閉止可能な一対の開閉扉14,14を有する電子錠付き保管庫1において、ロック部材5に設けられた一対の係止部52を、各開閉扉14,14に設けられた被係合部18にそれぞれ係合するように構成とした場合には、各開閉扉14に対して個別のロック部材及び駆動部材を設ける必要がないため、簡単な構成で両開閉扉14,14のロック操作及びロック解除操作を同時に行うことができる。
【0057】
しかも、ロック部材5に設けられた両係止部52を互いに離間した位置に配設した場合には、部外者による盗難を効果的に防止することができる。すなわち、各開閉扉14,14に設けられた被係合部18に係合される一体の係止部を設けた場合には、両開閉扉14,14の間に挿入された板状部材によりロック部材5の先端部を持ち上げることにより、前記一体の係止部を被係合部18から離脱させることが可能である。しかし、上述のように各開閉扉14に設けられた被係合部18に係合される一対の係止部52を互いに離間した位置に設けた構成とすれば、上述の盗難操作を効果的に防止することができる。
【0058】
第一実施形態では、開閉扉14が閉止位置にあるか否かを検知する検知装置7を備えた構成としたため、この検知装置7の出力信号を、図外の表示部又はユーザーが保持するスマホ等に出力することにより、開閉扉14が正規の閉止状態にあるか否かをユーザーに認識させることができる。
【0059】
しかも、上述のように検知装置7の検知用アクチュエータ71を前面板32の前方側に突出させた状態で取り付けることにより、開閉扉14を閉止する際に、開閉扉を閉止する際に、検知用アクチュエータ71から開閉扉14に適度の作動抵抗を作用させることができる。この結果、プッシュラッチ機構8の吸着片83が保持部材81に吸着される際の衝撃を緩和することが可能となる。
(第二実施形態)
【0060】
図9~
図11は、本発明の第二実施形態に係る電子錠2aの構成を示している。この電子錠2aは、サブフレーム4a内に配設されたスライド竿91と、支持軸92を支点にして揺動変位可能に設置された中間リンク93と、連結ピン94により中間リンク93の先端部に連結された先端係止片95とを有するロック部材9を備えている。また、自己保持型ソレノイド等からなる駆動部材6の出力ロッド61からなる出力部が連結ピン65を介してスライド竿91の後端部に連結されるとともに、スライド竿91の先端部が連結ピン96を介して中間リンク93の後部上方に連結されている。
【0061】
そして、出力ロッド61からなる出力部に設けられた連結ピン65が、スライド竿91の後端部に設けられた長孔97に沿ってスライド変位可能に連結されることにより、出力ロッド61が、ロック部材5のロック位置及びアンロック位置の中間位置よりもロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりもアンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、駆動部材6の駆動力をロック部材9に伝達するように構成されている。なお、
図10及び
図11において、符号98は、特殊ねじ47及びキャップ49の設置部からサブフレーム4a内に挿入された図外の操作ロッドにより、停電時等の非常時にロック部材9をロック位置からアンロック位置に揺動変位させるための駆動レバーである。
【0062】
上述の構成において、開閉扉14を閉止位置に仮止めした状態で、ユーザーが図外の操作スイッチ等を操作して駆動部材6の出力ロッド61の先端部を突出させる方向に駆動するロック信号を入力すれば、
図10に示すように、駆動部材6の駆動力がスライド竿91及び中間リンク93を介して先端係止片95に伝達され、この先端係止片95の下方部に設けられた係止部99が開閉扉14,14の被係合部18に係合されることにより、開閉扉14がロック状態に保持される。
【0063】
一方、開閉扉14の開放操作を行う場合には、図外の操作スイッチ等を操作して、駆動部材6の出力ロッド61の先端部を退避させる方向に駆動するアンロック信号を入力すれば、駆動部材6の出力ロッド61からスライド竿91を介して中間リンク93に伝達される駆動力に応じ、先端係止片95の係止部99が開閉扉14の被係合部18から引き抜かれる方向に中間リンク93が揺動変位して、開閉扉14のロック状態が解除される。
【0064】
上述の第二実施形態においても、出力ロッド61の先端部に設けられた連結ピン65とスライド竿の後端部に形成された長孔97とにより、出力ロッド61が、ロック部材9のロック位置及びアンロック位置の中間位置よりもロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりもアンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、駆動部材6の駆動力がロック部材9に伝達されるように構成されている。
【0065】
このため、先端係止片95の係止部99と開閉扉14,14の被係合部18との間に位置ずれが生じた場合、あるいはプッシュラッチ機構8から開閉扉14に付与される押圧力に応じて被係合部18に係止部99を挿入する動作が阻害された場合に、仮止め解除位置にある開閉扉14を仮止め位置に押動する操作を行って、係止部99と被係合部18との位置ずれを修正するだけで、被係合部18に係止部99を挿入して開閉扉14を閉止位置にロックすることができる。これにより、開閉扉14がアンロック状態に放置されることに起因した盗難の発生を効果的に防止することができる。
【0066】
また、
図11に示すように、ロック部材9の係止部99が、開閉扉14の被係合部18の周面に圧接されることにより、この被係合部18からロック部材9の係止部99を引き出す動作が阻害された場合には、仮止め解除位置にある開閉扉14を仮止め位置に押動する操作を行って、係止部99と被係合部18との位置ずれを修正することにより、被係合部18から係止部99を抜き出して開閉扉14をアンロック状態とすることができるため、ユーザーが開閉扉14を無理に開放して、電子錠2又は開閉扉14が損傷するという事態の発生を効果的に防止することができる。
(第三実施形態)
【0067】
図12及び
図13は、本発明の第三実施形態に係る電子錠2bの構成を示している。この電子錠2bは、保管庫本体10の横木材17に取り付けられた自己保持型ソレノイド等からなる駆動部材6と、この駆動部材6の出力ロッド61からなる出力部の先端部に連結された円筒状体からなるロック部材66とを有している。そして、ロック部材66の筒状部が、開閉扉14,14の被係合部18に挿入されたロック位置と、被係合部18から引き出されたアンロック位置とに変位可能に設けられている。
【0068】
すなわち、駆動部材6の出力ロッド61が、
図12の実線で示す上昇位置から、同仮想線で示す下降位置に変位することにより、ロック部材66の筒状部からなる係止部が、開閉扉14,14の被係合部18内に挿入されて、開閉扉14がロック状態に保持されるようになっている。また、駆動部材6の出力ロッド61が、
図12の仮想線で示す下降位置から、同実線で示す上昇位置に変位することにより、ロック部材66の筒状部からなる係止部が、開閉扉14,14の被係合部18から抜き出されて、開閉扉14のロック状態が解除されるようになっている。
【0069】
そして、出力ロッド61の先端部に設けられた動力伝達部67が、ロック部材66の内部を一定距離に亘りスライド変位することにより、出力ロッド61が、前記ロック位置及びアンロック位置の中間位置よりもロック位置側に偏った位置と、前記中間位置よりもアンロック位置側に偏った位置との間を移動するのを許容しつつ、駆動部材6の駆動力をロック部材66に伝達する動力伝達部が構成されている。すなわち、
図13に示すように、開閉扉14の被係合部18とロック部材66の筒状部との間に位置ずれが生じてロック操作が阻害された場合には、出力ロッド61の動力伝達部67がロック部材66の底部に当接する位置まで変位することが許容されるため、出力ロッド61がロック位置側に偏った位置に保持されることになる。
【0070】
したがって、図外のプッシュラッチ機構から開閉扉14に付与される押圧力等に応じ、
図13に示すように、開閉扉14の被係合部18にロック部材66の筒状部を挿入する動作が阻害された場合には、仮止め解除位置にある開閉扉14を仮止め位置に押動する操作を行って、ロック部材66の筒状部と被係合部18との位置ずれを修正するだけで、被係合部18にロック部材66を挿入して開閉扉14を閉止位置にロックすることができる。これにより、開閉扉14がアンロック状態に放置されることに起因した盗難の発生を効果的に防止することができる。
【0071】
また、閉止扉14を閉止位置にロックした状態で、ロック部材66の筒状部が、開閉扉14の被係合部18の周面に圧接されることにより、この被係合部18からロック部材66を引き出す動作が阻害された場合には、出力ロッド61の動力伝達部67がロック部材66の上部に当接した位置、つまり出力ロッド61がアンロック位置側に偏った位置に保持に保持されることになる。したがって仮止め解除位置にある開閉扉14を仮止め位置に押動する操作を行って、ロック部材66の筒状部と開閉扉14の被係合部18との位置ずれを修正することにより、被係合部18からロック部材66を抜き出して開閉扉14をアンロック状態とすることができる。このため、ユーザーが開閉扉14を無理に開放して、電子錠2又は開閉扉14が損傷するという事態の発生を効果的に防止することができる。
【0072】
なお、上記各実施形態では、保管庫本体10の上部に電子錠2を設けるとともに、開閉扉14の上面にロック部材5の係止部52等が係合される被係合部18を設けた例について説明したが、
図14に示すように、保管庫本体10の下部に電子錠2を設けるとともに、開閉扉14の下面にロック部材5の係止部52等が係合される被係合部18を設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 錠付き保管庫
2 電子錠
3 支持フレーム
4 サブフレーム
5 ロック部材
6 駆動部材
7 検知装置
8 プッシュラッチ機構
10 保管庫本体
14 開閉扉
16 開口部
22 支持軸
45 遮蔽板
52 係止部
53 枢支部
54 第一位置決め部
55 第二位置決め部
60 ケーシング
61 出力ロッド(出力部)
62 コイル(作動部)
63,64 永久磁石(保持部)