IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エンプラスの特許一覧

<>
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図1
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図2
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図3
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図4
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図5
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図6
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図7
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図8
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図9
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図10
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図11
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図12
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図13
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図14
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図15
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図16
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図17
  • 特開-動作設定システムおよびプログラム 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147436
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】動作設定システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20220929BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20220929BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220929BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B01J19/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048675
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂永 伸也
【テーマコード(参考)】
2G058
4G075
【Fターム(参考)】
2G058EA14
2G058GD06
2G058GE02
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA39
4G075AA61
4G075BA10
4G075BB05
4G075BB10
4G075DA02
4G075DA04
4G075EB50
4G075EC25
4G075ED01
4G075FA01
4G075FA08
4G075FA12
4G075FB06
4G075FB12
4G075FB13
4G075FC04
(57)【要約】
【課題】流路チップおよび流体取扱装置を含む流体取扱システムの動作を設定するための動作設定システムであって、ユーザーが容易かつ直感的に動作を設定することができる動作設定システムを提供すること。
【解決手段】動作設定システムは、前記流路チップの少なくとも一部を表示する表示部と、ユーザーの入力を受け付ける入力部と、制御部と、を有する。前記制御部は、前記流体取扱システムが順に行う複数の流体取扱工程のそれぞれについて、前記表示部に表示されている前記複数のメンブレンバルブのうちの1つのメンブレンバルブを、前記ユーザーに前記入力部を介して選択させる。次いで、前記制御部は、選択された前記メンブレンバルブの開閉と、前記メンブレンポンプの動作を、前記ユーザーに前記入力部を介して選択させる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体取扱システムの動作を設定するための動作設定システムであって、
前記流体取扱システムは、流路チップと、流体取扱装置と、を有し、
前記流路チップは、
複数のウェルと、
流路と、
前記複数のウェルと前記流路との間にそれぞれ配置された複数のメンブレンバルブと、
前記流路に接続されたメンブレンポンプと、
を有し、
前記流体取扱装置は、
前記流路チップを保持するためのチップホルダーと、
前記チップホルダーに保持された前記流路チップの前記複数のメンブレンバルブの開閉を制御するためのバルブ制御部と、
前記チップホルダーに保持された前記流路チップの前記メンブレンポンプの動作を制御するためのポンプ制御部と、
を有し、
前記動作設定システムは、
前記流路チップの前記複数のウェル、前記複数のメンブレンバルブおよび前記流路の少なくとも一部を表示する表示部と、
ユーザーの入力を受け付ける入力部と、
制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記流体取扱システムが順に行う複数の流体取扱工程のそれぞれについて、
前記表示部に表示されている前記複数のウェルのうちの1つのウェル、前記複数のメンブレンバルブのうちの1つのメンブレンバルブ、または前記複数のウェルと前記複数のメンブレンバルブとを接続している複数の連絡流路のうちの1つの連絡流路を、前記ユーザーに前記入力部を介して選択させ、
選択された前記ウェル、前記メンブレンバルブまたは前記連絡流路に対応する前記メンブレンバルブの開閉と、前記メンブレンポンプの動作を、前記ユーザーに前記入力部を介して選択させる、
動作設定システム。
【請求項2】
前記表示部は、前記ユーザーにより設定された複数の流体取扱工程を順番がわかるように表示する、請求項1に記載の動作設定システム。
【請求項3】
前記バルブ制御部は、前記チップホルダーに保持された前記流路チップの前記複数のメンブレンバルブの第1ダイヤフラムと対向するように配置され、前記第1ダイヤフラムを押圧して前記メンブレンバルブを閉じさせるための第1凸部と、前記第1ダイヤフラムを押圧せずに前記メンブレンバルブを開かせるための第1凹部とが第1中心軸を中心とする円の円周上に配置されている、前記第1中心軸を中心として回転可能な第1ロータリー部材を有し、
前記ポンプ制御部は、前記チップホルダーに保持された前記流路チップの前記メンブレンポンプの第2ダイヤフラムと対向するように配置され、前記第2ダイヤフラムを押圧しながら前記第2ダイヤフラム上を摺動して前記メンブレンポンプ内の流体を移動させるための第2凸部を有する、第2中心軸を中心として回転可能な第2ロータリー部材を有する、
請求項1または請求項2に記載の動作設定システム。
【請求項4】
コンピューターを、請求項1~3のいずれか一項に記載の動作設定システムとして機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体取扱システムの動作を設定するための動作設定システム、およびコンピューターを前記動作設定システムとして機能させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞や、タンパク質、核酸などの分析を行うために、流路チップが使用されている。流路チップは、分析に必要な試薬および試料の量が少なくてよいという利点を有しており、臨床検査や食物検査、環境検査などの様々な用途での使用が期待されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ダイヤフラムを含むマイクロバルブ(以下「メンブレンバルブ」という)およびダイヤフラムを含むポンプ(以下「メンブレンポンプ」という)を有する流路チップと、メンブレンバルブおよびメンブレンポンプの動作を制御するロータリー部材と、を有する流体取扱装置が開示されている。ロータリー部材は、メンブレンバルブのダイヤフラムを押圧するための凸部と、メンブレンポンプのダイヤフラムを押圧するためのポンプ用凸部を有している。ロータリー部材が回転することで、凸部とメンブレンバルブのダイヤフラムとの接触状態が変化して、メンブレンバルブの開閉が制御される。また、ロータリー部材が回転することで、ポンプ用凸部とメンブレンポンプのダイヤフラムとの接触位置が変化して、メンブレンポンプが駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-23962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような流体取扱装置を用いて自動で分析または検査を行いたい場合、メンブレンバルブの開閉およびメンブレンポンプの駆動が所定の順序で行われるようにロータリー部材の回転を規定するプログラムを用いることが考えられる。ユーザーが特定の流路チップを用いて独自の手順で分析または検査を行いたい場合は、ユーザーは所定のプログラミング言語でソースコードを自ら作成する必要がある。しかしながら、ユーザーがプログラミングの知識を有しているとは限らない。また、ユーザーがプログラミングの知識を有していたとしても、多数のメンブレンバルブを有する流路チップを用いて複雑な手順で分析または検査を行いたい場合は、テキスト形式のソースコードから各工程を直感的に理解することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、流路チップおよび流体取扱装置を含む流体取扱システムの動作を設定するための動作設定システムであって、ユーザーが容易かつ直感的に動作を設定することができる動作設定システムを提供することである。また、本発明の別の目的は、コンピューターを前記動作設定システムとして機能させるためのプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の動作設定システムは、流体取扱システムの動作を設定するための動作設定システムであって、前記流体取扱システムは、流路チップと、流体取扱装置と、を有し、前記流路チップは、複数のウェルと、流路と、前記複数のウェルと前記流路との間にそれぞれ配置された複数のメンブレンバルブと、前記流路に接続されたメンブレンポンプと、を有し、前記流体取扱装置は、前記流路チップを保持するためのチップホルダーと、前記チップホルダーに保持された前記流路チップの前記複数のメンブレンバルブの開閉を制御するためのバルブ制御部と、前記チップホルダーに保持された前記流路チップの前記メンブレンポンプの動作を制御するためのポンプ制御部と、を有し、前記動作設定システムは、前記流路チップの前記複数のウェル、前記複数のメンブレンバルブおよび前記流路の少なくとも一部を表示する表示部と、ユーザーの入力を受け付ける入力部と、制御部と、を有し、前記制御部は、前記流体取扱システムが順に行う複数の流体取扱工程のそれぞれについて、前記表示部に表示されている前記複数のウェルのうちの1つのウェル、前記複数のメンブレンバルブのうちの1つのメンブレンバルブ、または前記複数のウェルと前記複数のメンブレンバルブとを接続している複数の連絡流路のうちの1つの連絡流路を、前記ユーザーに前記入力部を介して選択させ、選択された前記ウェル、前記メンブレンバルブまたは前記連絡流路に対応する前記メンブレンバルブの開閉と、前記メンブレンポンプの動作を、前記ユーザーに前記入力部を介して選択させる。
【0008】
本発明のプログラムは、コンピューターを、前記本発明の動作設定システムとして機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流路チップおよび流体取扱装置を含む流体取扱システムの動作をユーザーが容易かつ直感的に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る流体取扱システムの斜視図である。
図2図2は、使用状態の流体取扱システムの一例を示す斜視図である。
図3図3Aは、流路チップの斜視図である。図3Bは、流路チップとスペーサーを重ねる様子を示す斜視図である。図3Cは、流路チップとスペーサーの積層体をチップホルダーに収容する様子を示す斜視図である。
図4図4は、流体取扱システムの構成を示す断面模式図である。
図5図5は、実施の形態に係る流路チップの底面図である。
図6図6Aは、流路チップの平面図である。図6Bは、流路チップの底面図である。図6Cは、基板の底面図である。
図7図7Aは、第1ロータリー部材の平面図である。図7Bは、図7AのB-B線の断面図である。
図8図8Aは、第2ロータリー部材の平面図である。図8Bは、図8AのB-B線の断面図である。
図9図9A、Bは、流体取扱システムを用いて流体を取り扱う様子を示す模式図である。
図10図10A、Bは、流体取扱システムを用いて流体を取り扱う様子を示す模式図である。
図11図11は、実施の形態に係る動作設定システムの構成を示すブロック図である。
図12図12は、表示部に示される動作設定時の画面の一例である。
図13図13A、Bは、表示部に示される動作設定時の画面の一例である。
図14図14A、Bは、表示部に示される動作設定時の画面の一例である。
図15図15A、Bは、表示部に示される動作設定時の画面の一例である。
図16図16A、Bは、表示部に示される動作設定時の画面の一例である。
図17図17A、Bは、表示部に示される動作設定時の画面の一例である。
図18図18A、Bは、表示部に示される動作設定時の画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に係る動作設定システムについて説明する。
【0012】
本実施の形態に係る動作設定システム500は、流路チップ200および流体取扱装置300を含む流体取扱システム100の動作を設定するために用いられる。そこで、先に流体取扱システム100の構成および動作について説明し、その後に動作設定システム500について説明する。
【0013】
(流体取扱システムの概要)
図1は、実施の形態に係る流体取扱システム100の斜視図である。図2は、使用状態の流体取扱システム100の一例を示す斜視図である。
【0014】
図1および図2に示されるように、流体取扱システム100は、流路チップ200と、流体取扱装置300とを有する。流体取扱装置300は、流路チップ200内の流体を制御して、複数の流体取扱工程を行う。
【0015】
本実施の形態では、図2に示されるように、流体取扱装置300は、ACアダプター410を介して商用電源に接続された状態で使用される。流体取扱装置300が内部電源を有する場合は、流体取扱装置300は、商用電源に接続されていない状態でも使用されうる。
【0016】
また、流体取扱装置300は、USBケーブル420を介して動作設定システム500(図2では図示省略)に接続されうる。この後説明するように、本実施の形態では、流体取扱装置300は、動作手順をコードされたプログラムを記憶する記憶部370と、記憶部370に記憶されたプログラムに基づいてバルブ制御部320(第1駆動部324)や、ポンプ制御部330(第2駆動部334)、光源340a~c、光検出部350a~cなどの動作を制御する制御部360と、を有する(図4参照)。したがって、流体取扱装置300は、動作設定システム500に接続されていない状態でも単独で動作することができる。一方、流体取扱装置300は、記憶部370および制御部360を有していなくてもよい。この場合は、流体取扱装置300は、動作設定システム500に接続されている状態で動作設定システム500からの指示に従って動作する。
【0017】
図3Aは、流路チップ200の斜視図である。本実施の形態では、流路チップ200は透明材料で構成されており、図3Aでは、流路チップ200の内部構造および裏側の構造も破線で示している。流路チップ200は、図3Bに示されるようにスペーサー312に重ねられた状態で、図3Cに示されるように流体取扱装置300のチップホルダー310内に収容される。スペーサー312には、流路チップ200の複数のウェル230に対応する位置にウェル230を収容可能な貫通孔が形成されている。
【0018】
図4は、流体取扱システム100の構成を示す断面模式図である。図4では、流体取扱システム100の構成をわかりやすくするために、一部の構成要素を省略している。また、流路チップ200と、バルブ制御部320(第1ロータリー部材321)およびポンプ制御部330(第2ロータリー部材331)とを離して図示している。
【0019】
流体取扱装置300は、流路チップ200を保持するためのチップホルダー310と、チップホルダー310に保持された流路チップ200のメンブレンバルブ250の開閉を制御するためのバルブ制御部320と、チップホルダー310に保持された流路チップ200のメンブレンポンプ260の動作を制御するポンプ制御部330と、を有する。本実施の形態では、バルブ制御部320は、第1ロータリー部材321と、第1ロータリー部材321を第1中心軸CA1を中心に回転させる第1駆動部324と、を含む。また、ポンプ制御部330は、第2ロータリー部材331と、第2ロータリー部材331を第2中心軸CA2を中心に回転させる第2駆動部334と、を含む。また、本実施の形態では、流体取扱装置300は、チップホルダー310内に配置された3つの光源340a~cと、3つの光検出部350a~cと、制御部360と、記憶部370と、筐体380と、をさらに有する。
【0020】
流路チップ200は、基板210およびフィルム220を有する。流路チップ200は、チップホルダー310内に収容された状態で、フィルム220が第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331に押圧されるように固定される。前述のとおり、図4では、流体取扱システム100の構成をわかりやすくするために、流路チップ200と第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331とを離して図示している。
【0021】
(流路チップの構成)
図5は、本実施の形態に係る流路チップ200の底面図である。図5では、流路チップ200の内部構造も破線で示している。図6Aは、流路チップ200の平面図である。図6Bは、流路チップ200の底面図である。図6Cは、基板210の底面図(フィルム220を取り外した状態の流路チップ200の底面図)である。
【0022】
流路チップ200は、基板210と、基板210の裏面に接合されたフィルム220とを有する(図4参照)。また、流路チップ200は、複数のウェル230と、流路240と、複数のウェル230と流路240との間にそれぞれ配置された複数のメンブレンバルブ250と、流路240に接続されたメンブレンポンプ260と、を有する。本実施の形態では、流路チップ200は、複数のウェル230と複数のメンブレンバルブ250とを接続している複数の連絡流路231と、通気孔として機能するウェル230とメンブレンポンプ260とを接続している通気流路232と、をさらに有する。
【0023】
基板210には、流路(流路240、連絡流路231および通気流路232)となるための溝と、流体の導入口もしくは取出口または通気孔(ウェル230)となるための貫通孔が形成されている。流路となるための溝は、基板210の裏面に形成されている。基板210の裏側において、基板210の一部の領域は、メンブレンバルブ250の隔壁(弁座)として機能する。基板210の表側では、貫通孔の開口部の周囲に円筒状の突起が突出している。この突起は、ウェル230の外壁として機能する。フィルム220は、溝および貫通孔の開口部を塞ぐように基板210の裏面に接合される。フィルム220の一部の領域は、メンブレンバルブ250のダイヤフラム251(後述)およびメンブレンポンプ260のダイヤフラム261(後述)として機能する。フィルム220により塞がれた基板210の溝は、試薬や液体試料、洗浄液、気体、粉体などの流体を流すための流路となる。
【0024】
基板210の厚みは、特に限定されず、例えば、1mm以上10mm以下である。また、基板210に含まれる材料も、特に限定されない。基板210に含まれる材料は、例えば、公知の樹脂およびガラスから適宜選択されうる。基板210に含まれる材料の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリスチレン、シクロオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂およびエラストマーが含まれる。
【0025】
フィルム220の厚みは、フィルム220がメンブレンバルブ250のダイヤフラム251およびメンブレンポンプ260のダイヤフラム261として機能することが可能であれば特に限定されず、例えば、30μm以上300μm以下である。また、フィルム220に含まれる材料も、フィルム220がダイヤフラム251、261として機能することができれば特に限定されない。フィルム220に含まれる材料は、例えば、公知の樹脂から適宜選択されうる。フィルム220に含まれる材料の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリスチレン、シクロオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂およびエラストマーが含まれる。フィルム220は、例えば、熱溶着やレーザー溶着、接着剤などにより基板210に接合される。
【0026】
複数のウェル230は、流路チップ200の流路に流体を導入するための導入部や、流路チップ200の流路内の流体を取り出すための取出部、流体を混合したり反応させたりする処理部、流路チップ200の流路内で流体を移動させるときの通気孔などとして機能する、表側に開口を有する有底の凹部である。また、ウェル230は、流体として液体を使用するときは、液体を収容することができる。
【0027】
ウェル230の形状および大きさは、上記機能を発揮することができれば特に限定されない。ウェル230の内部空間の形状は、例えば、略円錐台状や略円柱状である。本実施の形態では、ウェル230の内部空間の形状は、円錐台形状である。前述のとおり、本実施の形態では、流路チップ200の表側において、ウェル230の内部空間を取り囲む外壁が基板210の表面から突出している。ウェル230の数は、特に限定されず、流路チップ200の用途に応じて適宜選択される。
【0028】
本実施の形態では、複数のウェル230のうち10個のウェル230(図6Aにおいて上の列の左側の5個のウェル230および下の列の左側の5個のウェル230)は、連絡流路231を介してメンブレンバルブ250に接続されており、流体の導入部や取出部、処理部などとして機能する。また、複数のウェル230のうち1個のウェル230(図6Aにおいて下の列の右から5番目のウェル230)は、通気流路232を介してメンブレンポンプ260に接続されており、通気孔として機能する。本実施の形態に係る流路チップ200では、他のウェル230は使用されない。
【0029】
流路240は、その内部を流体が移動しうる流路である。本実施の形態では、流路240は、基板210に形成されている溝と、当該溝の開口部を閉塞しているフィルム220とから構成されている。流路240の断面積および断面形状は、特に限定されない。本明細書において、「流路の断面」とは、流体が流れる方向に直交する流路の断面を意味する。流路240の断面形状は、特に限定されず、例えば、一辺の長さ(幅および深さ)が数十μm程度の略矩形状である。流路240の断面積は、流体の流れ方向において、一定であってもよいし、一定でなくてもよい。本実施の形態では、メンブレンバルブ250の近傍における流路240の断面積は、その他の部分における流路240の断面積よりも大きい。
【0030】
流路240の数および形状は、特に限定されず、流路チップ200の用途に応じて適宜選択される。本実施の形態では、図6Cに示されるように、流路チップ200は、分岐を含む1つの流路240を有する。すなわち、流路240は、2つの分岐流路240a、bと、1つの共通流路240cと、を含む。2つの分岐流路240a、bのそれぞれの一方の端部は、共通流路240cの一方の端部に接続されている。2つの分岐流路240a、bは、円周方向に延在している。複数のウェル230(複数の連絡流路231)と2つの分岐流路240a、bとの間には、それぞれメンブレンバルブ250(後述)が配置されている。共通流路240cの他方の端部は、メンブレンポンプ260に接続されている。
【0031】
複数のウェル230は、それぞれ流路240(2つの分岐流路240a、b)の異なる位置にメンブレンバルブ250を介して接続されている。本実施の形態では、複数のウェル230と複数のメンブレンバルブ250との間には、それぞれ連絡流路231が配置されている。それぞれの連絡流路231の一方の端部はウェル230に接続されており、他方の端部はメンブレンバルブ250に接続されている。
【0032】
複数の連絡流路231は、それぞれ、基板210に形成されている溝と、当該溝の開口部を閉塞しているフィルム220とから構成されている。連絡流路231の断面積および断面形状は、特に限定されない。連絡流路231の断面形状は、特に限定されず、例えば、一辺の長さ(幅および深さ)が数十μm程度の略矩形状である。本実施の形態では、連絡流路231の幅は、流路240の幅よりも大きい。
【0033】
複数のメンブレンバルブ250は、複数のウェル230(複数の連絡流路231)と流路240との間にそれぞれ配置され、これらの間の流体の流れを制御する。メンブレンバルブ250の数は、特に限定されず、流路チップ200の用途に応じて適宜選択される。本実施の形態では、流路チップ200は、連絡流路231の数に応じて10個のメンブレンバルブ250を有する。また、本実施の形態では、複数のメンブレンバルブ250は、1つの円の円周上に配置されている。流路チップ200をチップホルダー310内に収容すると、この円の中心は、第1ロータリー部材321の回転軸となる第1中心軸CA1上に位置する(図4および図5参照)。したがって、複数のメンブレンバルブ250は、第1ロータリー部材321の回転により、開閉が制御されるロータリーメンブレンバルブとして機能することができる。
【0034】
複数のメンブレンバルブ250は、それぞれ、複数のウェル230(複数の連絡流路231)と流路240との間に配置された隔壁と、隔壁と対向するように配置されたダイヤフラム251とを有する。
【0035】
隔壁は、基板210の一部であり、複数のウェル230(複数の連絡流路231)と流路240との間を開閉するためのメンブレンバルブ250の弁座として機能する。隔壁の形状および高さは、上記の機能を発揮することができれば、特に限定されない。隔壁の高さは、例えば、連絡流路231および流路240の深さと同じである。
【0036】
ダイヤフラム251は、可撓性を有するフィルム220の一部である。ダイヤフラム251は、ダイヤフラム251に圧力が加えられていないときは、複数の連絡流路231と流路240との間に複数のウェル230と流路240との間とを連通する隙間が形成されるように構成されている。また、ダイヤフラム251は、ダイヤフラム251が押圧されているときは、ダイヤフラム251と隔壁とが接触して複数のウェル230と流路240とが遮断されるように構成されている。本実施の形態では、押圧されていないときのダイヤフラム251の形状は、ドーム形状(球冠形状)である。
【0037】
メンブレンポンプ260は、基板210とフィルム220との間に形成された空間である。メンブレンポンプ260は、ポンプ制御部330により押圧されることで蠕動ポンプのように駆動する。メンブレンポンプ260の平面視形状は、特に限定されないが、本実施の形態では略円弧状(「C」の字形状)である。メンブレンポンプ260の一方の端部は、流路240に接続されている。他方の端部は、通気流路232を介して、通気孔として機能するウェル230に接続されている。本実施の形態では、メンブレンポンプ260は、基板210の底面と、前記底面から離間しつつも対向しているダイヤフラム261とから構成されている。ダイヤフラム261は、可撓性を有するフィルム220の一部である。また、本実施の形態では、メンブレンポンプ260(ダイヤフラム261)は、1つの円の円周上に配置されている。流路チップ200をチップホルダー310内に収容すると、この円の中心は、第2ロータリー部材331の回転軸となる第2中心軸CA2上に位置する。したがって、メンブレンポンプ260は、第2ロータリー部材331の回転により、動作が制御されるロータリーメンブレンポンプとして機能することができる。前記円周に直交するダイヤフラム261の断面形状は、特に限定されず、本実施の形態では略円弧状である。
【0038】
メンブレンポンプ260のダイヤフラム261は、圧力が加えられたときに撓んで基板210に接触する。たとえば、第2ロータリー部材331の第2凸部332(後述)が流路240との接続部から通気流路232との接続部に向けて(図5において反時計回りに)ダイヤフラム261を摺動しながら押圧したとき、流路240内の流体がメンブレンポンプ260に向けて移動して流路240内が陰圧になるとともに、メンブレンポンプ260内の流体が通気流路232に向けて移動して通気流路232内が陽圧になる。一方、第2凸部332が通気流路232の接続部から流路240との接続部に向けて(図5において時計回りに)ダイヤフラム261を摺動しながら押圧したとき、通気流路232内の流体がメンブレンポンプ260に向けて移動して通気流路232内が陰圧になるとともに、メンブレンポンプ260内の流体が流路240に向けて移動して流路240内が陽圧になる。
【0039】
通気流路232は、基板210に形成されている溝と、当該溝の開口部を閉塞しているフィルム220とから構成されている。通気流路232の断面積および断面形状は、特に限定されない。通気流路232の断面形状は、特に限定されず、例えば、一辺の長さ(幅および深さ)が数十μm程度の略矩形状である。
【0040】
(流体取扱装置の構成)
前述のとおり、流体取扱装置300は、流路チップ200を保持するためのチップホルダー310と、チップホルダー310に保持された流路チップ200のメンブレンバルブ250の開閉を制御するためのバルブ制御部320と、チップホルダー310に保持された流路チップ200のメンブレンポンプ260の動作を制御するポンプ制御部330と、を有する。本実施の形態では、バルブ制御部320は、第1ロータリー部材321と、第1ロータリー部材321を第1中心軸CA1を中心に回転させる第1駆動部324と、を含む。また、ポンプ制御部330は、第2ロータリー部材331と、第2ロータリー部材331を第2中心軸CA2を中心に回転させる第2駆動部334と、を含む。また、本実施の形態では、流体取扱装置300は、チップホルダー310内に配置された3つの光源340a~cと、3つの光検出部350a~cと、制御部360と、記憶部370と、筐体380と、をさらに有する。
【0041】
チップホルダー310は、流路チップ200を収容するための収容部311を含み、流体取扱装置300の本体に固定される。収容部311の形状は、流路チップ200を適切に収容し、固定することができれば特に限定されない。本実施の形態では、収容部311は、流体取扱装置300の背面側(図1では図面の上側)、天面側および底面側に開口部を有する略直方体状の中空体である。当該収容部311では、背面側の開口部から流路チップ200の出し入れが行われる(図3C参照)。開口部の位置はこの位置に限定されない。また、開口部の形状も、流路チップ200を出し入れ可能であれば任意の形状とすることができる。
【0042】
一方、収容部311の内部の構造は、流路チップ200を第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331に押し当てたり、第1ロータリー部材321または第2ロータリー部材331を回転させたりしたときに、流路チップ200の位置がずれないように流路チップ200を保持できれば特に制限されない。本実施の形態では、収容部311の内部は、流路チップ200およびスペーサー312の積層体の高さ、幅、および奥行と略同等の高さ、幅、および奥行きを有する略直方体状の空間である。前述のとおり、流路チップ200では、ウェル230を取り囲む壁が基板210の表面から突出している。このため、本実施の形態では、この壁の高さ以上の厚みのスペーサー312を、流路チップ200のウェル230が存在しない領域の上に配置した状態で、流路チップ200およびスペーサー312を収容部311内に収容する。なお、収容部311の内部には、流路チップ200を所定の位置に固定するための溝や、流路チップ200を固定するためのストッパなどが形成されていてもよい。また、収容部311の内部には、流路チップ200を第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331に押し当てたときに、流路チップ200の傾きを調整したり、流路チップ200の位置ずれを抑制したりするための弾性部材(図示せず)が、配置されていてもよい。
【0043】
収容部311の底板には、収容部311に収容された流路チップ200と、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331とを接触させるための貫通孔が形成されている。この貫通孔の形状は、流路チップ200のメンブレンバルブ250のダイヤフラム251と第1ロータリー部材321の第1凸部322との接触、およびメンブレンポンプ260のダイヤフラム261と第2ロータリー部材331の第2凸部332との接触を妨げない形状であれば特に制限されない。この後説明するように、本実施の形態では、3つの光源340a~cおよび3つの光検出部350a~cを用いて流路240内の流体の移動を検出するため、この貫通孔は、3つの光源340a~cおよび3つの光検出部350a~cとの間にも位置するように形成されている。本実施の形態では、収容部311の底板には、大きな矩形の貫通孔が形成されており、収容部311の底板は、流路チップ200の外周部のみを支持している。
【0044】
一方、収容部311の天板には、流路チップ200の収容および取り出しを容易にするための略矩形状の切り欠きや、流路チップ200内に流体を導入したり流路チップ200内から流体を取り出したりするための貫通孔、流路チップ200内の流体を観察するための貫通孔、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331の動作を観察するための貫通孔などが形成されている。また、この後説明するように、収容部311の天板内には、3つの光源340a~cも配置されている。第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331を流路チップ200に押し当てたとき、収容部311の天板が流路チップ200を支持する。このため、本実施の形態では、収容部311の天板の厚みは底板の厚みよりも大きい。
【0045】
バルブ制御部320は、チップホルダー310に保持された流路チップ200のメンブレンバルブ250の開閉を制御する。バルブ制御部320の構成は、複数のメンブレンバルブ250の開閉を制御することができれば特に限定されず、例えば複数のソレノイドアクチュエーターなどであってもよい。本実施の形態では、バルブ制御部320は、第1ロータリー部材321と、第1ロータリー部材321を第1中心軸CA1を中心に回転させる第1駆動部324と、を含む。
【0046】
図7Aは、第1ロータリー部材321の平面図であり、図7Bは、図7AのB-B線の断面図である。図7Aでは、見やすくするために、第1凸部322の天面にハッチングを付している。
【0047】
図7Aおよび図7Bに示されるように、第1ロータリー部材321は、円柱形状の本体の天面に配置された第1凸部322および第1凹部323を有する。第1ロータリー部材321は、第1中心軸CA1を中心として回転可能である。第1ロータリー部材321は、第1駆動部324により回転させられる。
【0048】
第1凸部322は、ダイヤフラム251を押圧してメンブレンバルブ250を閉じさせる。第1凹部323は、ダイヤフラム251を押圧せずにメンブレンバルブ250を開かせる。第1凸部322および第1凹部323は、第1中心軸CA1を中心とする円の円周上に配置されている。本実施の形態では、第1凸部322の平面視形状は、第1中心軸CA1を中心とする円の一部に対応する円弧状(「C」の字形状)である。この円周上において第1凸部322が存在しない領域が、第1凹部323である。
【0049】
なお、第1凸部322は、第1凹部323に対して相対的に突出していればよく、第1凹部323は、第1凸部322に対して相対的に凹んでいればよい。すなわち、第1凸部322は、押圧部として機能できればよく、第1凹部323は、非押圧部として機能できればよい。たとえば、図7Bに示される例では、第1凸部322は、本体の天面(基準面)から突出しており、第1凹部323の底面は、本体の天面(基準面)と同じ高さの面である。逆に、第1凸部322の天面は、本体の天面(基準面)と同じ高さの面であってもよく、この場合は、第1凹部323は、本体の天面(基準面)から凹んでいる。
【0050】
第1駆動部324は、制御部360の指示に従って第1ロータリー部材321を任意の方向に任意の角度だけ回転させる。第1駆動部324の構成は、特に限定されず、例えば第1ロータリー部材321に直接接続された、または歯車などの動力伝達部を介して接続されたモーターなどである。
【0051】
ポンプ制御部330は、チップホルダー310に保持された流路チップ200のメンブレンポンプ260の動作を制御する。ポンプ制御部330の構成は、メンブレンポンプ260の動作を制御することができれば特に限定されず、例えばメンブレンポンプ260の延在方向に沿って移動可能な押圧ローラーなどであってもよい。本実施の形態では、ポンプ制御部330は、第2ロータリー部材331と、第2ロータリー部材331を第2中心軸CA2を中心に回転させる第2駆動部334と、を含む。
【0052】
図8Aは、第2ロータリー部材331の平面図であり、図8Bは、図8AのB-B線の断面図である。図8Aでは、見やすくするために、第2凸部332の天面にハッチングを付している。
【0053】
第2ロータリー部材331は、円柱形状の本体の天面に配置された第2凸部332および第2凹部333を有する。第2ロータリー部材331は、第2中心軸CA2を中心として回転可能である。第2ロータリー部材331は、第2駆動部334により回転させられる。
【0054】
第2凸部332は、ダイヤフラム261を摺動しながら押圧して、メンブレンポンプ260を駆動させる。第2凹部333は、第2凸部332以外の部分である。第2凸部332は、第2中心軸CA2を中心とする円の円周上に配置されている。第2凸部332の数および形状は、メンブレンポンプ260を適切に作動させることができれば特に限定されない。本実施の形態では、第2ロータリー部材331は、3個の第2凸部332を有しており、各第2凸部332の平面視形状は、第2中心軸CA2から外側に向けて延在する略長方形状である。
【0055】
なお、第2凸部332は、第2凹部333に対して相対的に突出していればよく、第2凹部333は、第2凸部332に対して相対的に凹んでいればよい。すなわち、第2凸部332は、押圧部として機能できればよく、第2凹部333は、非押圧部として機能できればよい。たとえば、図8Bに示される例では、第2凸部332は、本体の天面(基準面)から突出しており、第2凹部333の底面は、本体の天面(基準面)と同じ高さの面である。逆に、第2凸部332の天面は、本体の天面(基準面)と同じ高さの面であってもよく、この場合は、第2凹部333は、本体の天面(基準面)から凹んでいる。
【0056】
第2駆動部334は、制御部360の指示に従って第2ロータリー部材331を任意の方向に任意の角度だけ回転させる。第2駆動部334の構成は、特に限定されず、例えば第2ロータリー部材331に直接接続された、または歯車などの動力伝達部を介して接続されたモーターなどである。
【0057】
3つの光源340a~cは、チップホルダー310内に配置されている。3つの光源340a~cは、チップホルダー310の上部中央部からチップホルダー310の外に延びている複数のコード(図1参照)を介して制御部360に接続されている。3つの光検出部350a~cは、流路チップ200を挟んで3つの光源340a~cと対向するようにそれぞれ配置されている。3つの光検出部350a~cも、制御部360に接続されている。具体的には、光源340aおよび光検出部350aは、流路チップ200の共通流路240c内の第1検出ポイントDP1(図5参照)を挟むように配置されている。光源340bおよび光検出部350bは、流路チップ200の共通流路240c内の第2検出ポイントDP2(図5参照)を挟むように配置されている。光源340cおよび光検出部350cは、流路チップ200の共通流路240c内の第3検出ポイントDP3(図5参照)を挟むように配置されている。図5に示されるように、第1検出ポイントDP1は、第2検出ポイントDP2および第3検出ポイントDP3よりも2つの分岐流路240a、b側に位置し、第3検出ポイントDP3は、第1検出ポイントDP1および第2検出ポイントDP2よりもメンブレンポンプ260側に位置する。検出ポイントの数および位置は、特に限定されず、流路チップ200の用途に応じて適宜設定されうる。
【0058】
光検出部350aは、光源340aから出射され、流路240の第1検出ポイントDP1を透過した光を検出することで、第1検出ポイントDP1に所定の流体(液体)が到達したことを検出する。光検出部350bは、光源340bから出射され、流路240の第2検出ポイントDP2を透過した光を検出することで、第2検出ポイントDP2に所定の流体(液体)が到達したことを検出する。光検出部350cは、光源340cから出射され、流路240の第3検出ポイントDP3を透過した光を検出することで、第3検出ポイントDP3に所定の流体(液体)が到達したことを検出する。光源340a~cは、例えば発光ダイオードである。光検出部350a~cは、例えばフォトトランジスタである。光源340a~cが出射する光の波長は、光検出部350a~cが検出することができれば特に限定されず、流路240内に導入される流体の種類や基板210およびフィルム220の材料などに応じて適宜設定される。たとえば、光源340a~cは、赤外線を出射する。
【0059】
なお、光源340a~cおよび光検出部350a~cの構成は、流路240内の所定の検出ポイントに所定の流体(液体)が到達したことを検出できれば特に限定されない。たとえば、流路チップ200に対して光源340a~cおよび光検出部350a~cが同じ側に配置されており、光検出部350a~cは、光源340a~cから出射され、流路240で反射された光を検出してもよい。
【0060】
制御部360は、バルブ制御部320(第1駆動部324)や、ポンプ制御部330(第2駆動部334)、光源340a~c、光検出部350a~c、記憶部370などを制御する。具体的には、制御部360は、記憶部370に記憶されているプログラム、または動作設定システム500の指示に従って、バルブ制御部320(第1駆動部324)や、ポンプ制御部330(第2駆動部334)、光源340a~c、光検出部350a~cなどを動作させる。記憶部370は、この後説明するように動作設定システム500が作成したプログラムを記憶する。制御部360および記憶部370は、例えばマイコンである。
【0061】
筐体380は、流体取扱装置300のチップホルダー310以外の構成要素を収容し、チップホルダー310を支持する。筐体380の構成は、上記機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、筐体380の形状は、略直方体であるが、任意の形状であってよい。本実施の形態では、筐体380は、樹脂で構成されているが、金属で構成されていてもよい。筐体380を構成する樹脂材料の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリスチレン、シリコーン樹脂、およびエラストマーが含まれる。また、筐体380は、複数種類の材料で構成されていてもよい。
【0062】
本実施の形態では、流体取扱装置300は、複数のボタンや、ACアダプター410のプラグを挿入されるジャック、USBケーブル420のプラグが挿入されるソケットなども有している(図1および図2参照)。
【0063】
たとえば、図1に示される「PROGRAM」の「START」ボタンをユーザーが押すと、流体取扱装置300は、この後説明するように動作設定システム500により設定されたプログラムに従って自動的に動作する。
【0064】
「VALVE」の「ORIGIN」ボタンをユーザーが押すと、制御部360は、第1凹部323が基準位置(例えば2つの分岐流路240a、bと共通流路240cとの接続部の近傍)に位置するように第1ロータリー部材321を回転させる。「VALVE」の「RIGHT」ボタンをユーザーが押すと、制御部360は、第1凹部323が次のメンブレンバルブ250に到達するまで、第1ロータリー部材321を上から見て時計回りに回転させる。「VALVE」の「LEFT」ボタンをユーザーが押すと、制御部360は、第1凹部323が次のメンブレンバルブ250に到達するまで、第1ロータリー部材321を上から見て反時計回りに回転させる。
【0065】
「PUMP」の「PULL」ボタンをユーザーが押すと、制御部360は、第2ロータリー部材331を上から見て反時計回りに回転させて、分岐流路240aまたは分岐流路240bから共通流路240c内に流体を吸引する。「PUMP」の「PULL」ボタンをユーザーがもう一度押すと、制御部360は、第2ロータリー部材331の回転を止めて、共通流路240c内への流体の吸引を停止する。「PUMP」の「PUSH」ボタンをユーザーが押すと、制御部360は、第2ロータリー部材331を上から見て時計回りに回転させて、共通流路240c内の流体を分岐流路240aまたは分岐流路240bに押し出す。「PUMP」の「PUSH」ボタンをユーザーがもう一度押すと、制御部360は、第2ロータリー部材331の回転を止めて、共通流路240c内の流体の押し出しを停止する。
【0066】
「STOP ALL」ボタンをユーザーが押すと、流体取扱装置300は、すべての動作を停止する。
【0067】
また、流体取扱装置300は、内部電源や表示部などをさらに有していてもよい。
【0068】
(流体取扱システムの動作)
以下、流体取扱システム100を用いて流体を取り扱う方法の一例を説明する。ここでは、図9A図10Bの模式図を参照しながら、図中上の列の左から2番目のウェル230(以下「導入ウェル」ともいう)に収容されている液体から、所定量(共通流路240cのうちの分岐流路240a、b側の端部と第2検出ポイントDP2との間の体積)の液体を計り取り、図中の下の列の左から2番目のウェル230(以下「取出ウェル」ともいう)に移動させる例を説明する。図9A図10Bでは、流路チップ200の複数のメンブレンバルブ250の近傍の領域を表側から見ている様子を示しており、ウェル230の外壁などは省略している。複数のメンブレンバルブ250のうち、第1ロータリー部材321の第1凸部322に押圧されている閉じた状態のメンブレンバルブ250を黒塗りで示し、第1ロータリー部材321の第1凹部323と対向している開いた状態のメンブレンバルブ250を白塗りで示す。
【0069】
まず、チップホルダー310の収容部311に、スペーサー312を重ねた流路チップ200を収容する(図3Bおよび図3C参照)。次いで、流路チップ200を収容したチップホルダー310を筐体380上の所定の位置に固定する。チップホルダー310内に収容された流路チップ200は、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331に所定の力で押し当てられる。
【0070】
なお、チップホルダー310を設置する前、設置している途中、または設置した後に、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331を回転させて、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331の回転開始位置を調整してもよい。また、チップホルダー310を固定した後、必要に応じて、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331を流路チップ200側にさらに移動させて、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331と流路チップ200との押圧力を調整してもよい(図4参照)。
【0071】
次いで、流路チップ200の所定のウェル230に流体を導入する。この例では、図9Aに示されるように、図中上の列の左から2番目の導入ウェル230に所定の液体を導入する。たとえば、ユーザーが、ピペットを用いて、チップホルダー310の天板の貫通孔およびスペーサー312の貫通孔を介して導入ウェル230に液体を導入する。
【0072】
その後、第1ロータリー部材321の第1凸部322および第2ロータリー部材331の第2凸部332が流路チップ200のフィルム220を十分に押圧するように押圧力をかけながら、第1ロータリー部材321および第2ロータリー部材331を回転させ、メンブレンバルブ250の開閉およびメンブレンポンプ260の駆動を行う。第1ロータリー部材321の回転により、流路チップ200のメンブレンバルブ250のダイヤフラム251が第1ロータリー部材321の第1凸部322によって基板210側に押し込まれると、メンブレンバルブ250が閉状態となる。一方、第1ロータリー部材321の回転により、ダイヤフラム251上に第1凹部323が配置されると、ダイヤフラム251への押圧が解除され、メンブレンバルブ250が開状態となる。また、第2ロータリー部材331の回転により、流路チップ200のメンブレンポンプ260のダイヤフラム261が第2ロータリー部材331の第2凸部332によって基板210側に押し込まれ、この状態で第2凸部332が移動すると、流路内の流体が移動する。このようなメンブレンバルブ250の開閉および流体の移動を利用して、所望の流体の処理や、混合などを行うことができる。
【0073】
この例では、まず、図9Bに示されるように、制御部360は、第1ロータリー部材321を回転させて、導入ウェル230に対応するメンブレンバルブ250上に第1凹部323を移動させる。これにより、導入ウェル230と共通流路240cとが連通する。次いで、制御部360は、第2ロータリー部材331を回転させて、導入ウェル230内の液体を共通流路240c内に吸引する。共通流路240c内の第2検出ポイントDP2に液体が到達したことを光検出部350bが検出したら、制御部360は、第2ロータリー部材331の回転を停止させて、共通流路240c内への吸引を停止させる。
【0074】
次いで、図10Aに示されるように、制御部360は、第1ロータリー部材321を回転させて、図中下の列の左から2番目の取出ウェル230に対応するメンブレンバルブ250上に第1凹部323を移動させる。これにより、共通流路240cと取出ウェル230とが連通する。次いで、制御部360は、第2ロータリー部材331を回転させて、共通流路240c内の液体を取出ウェル230内に押し出す。共通流路240c内の液体がすべて取出ウェル230内に移動できるまで第2ロータリー部材331が回転したら、制御部360は、第2ロータリー部材331の回転を停止させて、取出ウェル230内への押し出しを停止させる。
【0075】
最後に、図10Bに示されるように、制御部360は、第1ロータリー部材321を回転させて、導入ウェル230に対応するメンブレンバルブ250上に第1凹部323を再度移動させる。これにより、共通流路240cと導入ウェル230とが再度連通する。次いで、制御部360は、第2ロータリー部材331を回転させて、分岐流路240a内に残存している液体を導入ウェル230内に押し出す。分岐流路240a内の液体がすべて導入ウェル230内に移動できるまで第2ロータリー部材331が回転したら、制御部360は、第2ロータリー部材331の回転を停止させて、導入ウェル230内への押し出しを停止させる。
【0076】
以上の手順により、図中上の列の左から2番目の導入ウェル230に収容されている液体から、所定量の液体を計り取り、図中の下の列の左から2番目の取出ウェル230に移動させることができる。
【0077】
(動作設定システムの構成)
次に、流体取扱システム100の動作を設定するための動作設定システム500について説明する。本実施の形態に係る動作設定システム500は、ユーザーに対してグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)環境において流体取扱システム100の動作を設定させることができる。
【0078】
図11は、本実施の形態に係る動作設定システム500の構成を示すブロック図である。
【0079】
図11に示されるように、動作設定システム500は、表示部510、入力部520および制御部530を有する。本実施の形態では、動作設定システム500は、記憶部540および通信部550をさらに有する。本実施の形態に係る動作設定システム500は、例えばコンピューターにおいて所定のプログラムを実行することで実現されうる。また、本実施の形態に係る動作設定システム500は、クラウド上において実現されてもよい。
【0080】
表示部510は、制御部530の指示に従って、各種情報を表示する。ユーザーが流体取扱システム100の動作を設定する際には、ユーザーが直感的に理解しやすくするために、表示部510は、流路チップ200の複数のウェル230、複数のメンブレンバルブ250および流路240の少なくとも一部を表示する。表示部510は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどである。
【0081】
本実施の形態では、図12に示されるように、表示部510は、流体の導入部、取出部または処理部として機能する10個のウェル230と、これらのウェル230に対応する10個の連絡流路231および10個のメンブレンバルブ250と、分岐流路240aおよび分岐流路240bと、共通流路240cの一部を表示する。図12に示される例では、表示部510は、ユーザーが直感的に理解しやすくするために、流路チップ200を上から見た様子を示している。表示部510は、流路チップ200の各構造を正確に表示する必要はなく、ユーザーが理解しやすいように大きさや形状、位置などを変更して表示してもよい。
【0082】
図12に示される例では、ユーザーが直感的に理解しやすくするために、メンブレンバルブ250(およびそれに対応するウェル230と連絡流路231)のそれぞれに、チャンネル1(Ch.1)~チャンネル10(Ch.10)の名称が付与されている。また、第1検出ポイントDP1、第2検出ポイントDP2および第3検出ポイントDP3は、それぞれ「A1」、「A2」および「A3」として示されている。さらに、第1ロータリー部材321の第1凹部323の基準位置となる場所が、「Origin」として示されている。
【0083】
入力部520は、ユーザーの入力を受け付ける。入力部520は、例えばマウスなどのポインティングデバイスや、キーボードなどである。表示部510および入力部520は、タッチパネルなどであってもよい。
【0084】
制御部530は、記憶部540に記憶されているプログラムに従って、表示部510や入力部520、記憶部540、通信部550などを制御し、ユーザーからの指示に応じた流体取扱システム100(流体取扱装置300)を動作させるためのプログラムを作成する。制御部530は、表示部510や入力部520、記憶部540、通信部550などと接続されている。制御部530は、例えばコンピューターの中央処理装置(CPU)である。
【0085】
記憶部540は、各種情報を記憶する。たとえば、記憶部540は、コンピューターを動作設定システム500として動作させるためのプログラムや、流路チップ200の構成についての情報、入力部520が受け付けたユーザーの指示、制御部530が作成した流体取扱システム100(流体取扱装置300)を動作させるためのプログラムなどを記憶する。記憶部540は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などである。
【0086】
通信部550は、外部機器との通信を行う。たとえば、通信部は、USBケーブルなどを介して流体取扱システム100(流体取扱装置300)に制御部530が作成したプログラムを送信したり、インターネットなどを介して流路チップ200の構成についての情報を受信したりする。通信部550は、例えばUSBボードやLANボードなどである。
【0087】
(動作設定システムの動作)
最後に、動作設定システム500の動作の一例について説明する。ここでは、流体取扱システム100の動作の説明で例示した動作(図9A図10B参照)と同様の動作を設定する例を説明する。すなわち、この例では、図12において上の列の左から2番目のウェル230(チャンネル4のウェル230)に収容されている液体から、所定量(共通流路240cのうちの分岐流路240a、b側の端部と第2検出ポイントDP2との間の体積)の液体を計り取り、図12において下の列の左から2番目のウェル230(チャンネル7のウェル230)に移動させる例を説明する。
【0088】
まず、ユーザーは、画面上部の「Setting」を選択し、使用する流路チップ200を選択して、使用する流路チップ200の情報を読み出す。これにより、図12に示されるように、使用する流路チップ200の構成が画面上に表示される。なお、すでに作成した設定を開く場合は、ユーザーは、画面上部の「Open」を選択し、使用する設定を選択する。
【0089】
制御部530は、流体取扱システム100(流体取扱装置300)が順に行う複数の流体取扱工程のそれぞれについて、(1)表示部510に表示されている複数のウェル230のうちの1つのウェル230、複数のメンブレンバルブ250のうちの1つのメンブレンバルブ250、または複数のウェル230と複数のメンブレンバルブ250とを接続している複数の連絡流路231のうちの1つの連絡流路231を、ユーザーに入力部520を介して選択させ、次いで(2)選択されたウェル230、メンブレンバルブ250または連絡流路231に対応するメンブレンバルブ250の開閉と、メンブレンポンプ260の動作を、ユーザーに入力部520を介して選択させる。
【0090】
この例では、まず、図13Aに示されるように、ユーザーは、入力部520を介して、表示部510に表示されている複数のチャンネル(ウェル230、連絡流路231およびメンブレンバルブ250)のうち、チャンネル4(Ch.4)を選択する。制御部530は、選択されたチャンネル4(Ch.4)についての動作(Action)の選択肢をユーザーに表示する。本実施の形態では、図13Bに示されるように、制御部530は、「Wait」、「Move」、「Pump push」、「Pump Pull」、「Pump Pull to detector」、「Pump Push to detector」の選択肢を表示してユーザーに選択させる。ここでは、ユーザーは、選択されたチャンネルのウェル230内の流体(液体)を所定の検出ポイントに到達するまで流路240内に吸引させることを指示する「Pump Pull to detector」を選択する。この場合、さらに検出ポイントに対応する光検出部350a~cを選択する必要があるため、ユーザーは、図14Aに示されるように、第2検出ポイントDP2に対応する「A2」を選択する。このように選択することで、ユーザーは、チャンネル4のメンブレンバルブ250のみが開くように第1ロータリー部材321を回転させること、およびチャンネル4のウェル230内の流体(液体)が第2検出ポイントDP2に到達するまでメンブレンポンプ260を駆動させることを、容易に設定できる。このように最初の工程(Step 1)が設定されると、図14Bに示されるように、工程番号とその工程の内容が画面に表示される。本実施の形態では、表示部510は、ユーザーにより設定された複数の流体取扱工程を順番がわかるように表示する。
【0091】
次いで、最初の工程(Step 1)と同様に、ユーザーは、図15Aに示されるように、入力部520を介して、複数のチャンネルからチャンネル7(Ch.7)を選択する。さらに、ユーザーは、図15Bに示されるように、流路240内の流体(液体)を選択されたチャンネルのウェル230内に押し出すことを指示する「Pump push」を選択する。この場合、さらに流速および駆動時間を設定する必要があるため、ユーザーは、図16Aに示されるように、流速および駆動時間を入力する。このように選択および入力することで、ユーザーは、チャンネル7のメンブレンバルブ250のみが開くように第1ロータリー部材321を回転させること、および共通流路240c(および分岐流路240b)内の流体(液体)がチャンネル7のウェル230内に収容されるまでメンブレンポンプ260を駆動させることを、容易に設定できる。これにより、2番目の工程(Step 2)が設定され、図16Bに示されるように、工程番号とその工程の内容が画面に表示される。
【0092】
次いで、ユーザーは、図17Aに示されるように、入力部520を介して、複数のチャンネルからチャンネル4(Ch.4)を選択する。さらに、ユーザーは、図17Bに示されるように「Pump push」を選択し、さらに図18Aに示されるように流速および駆動時間を入力する。このように選択および入力することで、ユーザーは、チャンネル4のメンブレンバルブ250のみが開くように第1ロータリー部材321を回転させること、および分岐流路240a(および共通流路240c)内の流体(液体)がチャンネル4のウェル230内に収容されるまでメンブレンポンプ260を駆動させることを、容易に設定できる。これにより、3番目の工程(Step 3)が設定され、図18Bに示されるように、工程番号とその工程の内容が画面に表示される。
【0093】
上記手順で設定された3つの工程を流体取扱システム100(流体取扱装置300)が順に行うことにより、チャンネル4のウェル230に収容されている液体から、所定量の液体を計り取り、チャンネル7のウェル230に移動させることができる(図9A図10B参照)。ユーザーは、例えば図18Bに示される画面を見ることで、3つの工程を直感的に理解することができる。
【0094】
なお、チャンネルを選択したときに表示される選択肢のうち、「Wait」は、選択されたチャンネルに対応するメンブレンバルブ250または基準位置(画面において「Origin」と表示されている位置)に第1凹部323が位置するように第1ロータリー部材321を回転させたうえで、設定された時間待機させる指示である。「Move」は、選択されたチャンネルに対応するメンブレンバルブ250または基準位置(画面において「Origin」と表示されている位置)に第1凹部323が位置するように第1ロータリー部材321を回転させる指示である。「Pump Pull」は、選択されたチャンネルのウェル230内の流体(液体)を設定された流速で設定された時間流路240内に吸引させる指示である。「Pump Push to detector」は、共通流路240c内の流体(液体)の界面が選択された検出ポイントに到達するまで共通流路240c内の流体(液体)を押し出させる指示である。
【0095】
また、設定をすべてやり直したい場合は、ユーザーは、画面上部の「Clear」を選択して設定を取り消すことができる。
【0096】
ユーザーは、流体取扱システム100(流体取扱装置300)が行う全ての流体取扱工程の設定を終えたら、設定を完了して、画面上部の「Save」を選択する。制御部530は、設定を記憶部540に記憶させる。
【0097】
さらに、ユーザーは、画面上部の「Device」を選択して流体取扱システム100(流体取扱装置300)が動作設定システム500によって認識されていることを確認した上で、画面上部の「Upload」を選択する。制御部530は、ユーザーの設定に応じたプログラムを生成し、流体取扱システム100(流体取扱装置300)に送信する。流体取扱システム100(流体取扱装置300)では、制御部360が、受信したプログラムを記憶部370に記憶させる。
【0098】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る動作設定システム500によれば、流路チップ200および流体取扱装置300を含む流体取扱システム100の動作をユーザーが容易かつ直感的に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本実施の形態に係る流体取扱システム、動作設定システムおよびプログラムは、例えば、臨床検査や食物検査、環境検査などの様々な用途において有用である。
【符号の説明】
【0100】
100 流体取扱システム
200 流路チップ
210 基板
220 フィルム
230 ウェル
231 連絡流路
232 通気流路
240 流路
240a、b 分岐流路
240c 共通流路
250 メンブレンバルブ
251 ダイヤフラム
260 メンブレンポンプ
261 ダイヤフラム
300 流体取扱装置
310 チップホルダー
312 スペーサー
320 バルブ制御部
321 第1ロータリー部材
322 第1凸部
323 第1凹部
324 第1駆動部
330 ポンプ制御部
331 第2ロータリー部材
332 第2凸部
333 第2凹部
334 第2駆動部
340a~c 光源
350a~c 光検出部
360 制御部
370 記憶部
380 筐体
410 ACアダプター
420 USBケーブル
500 動作設定システム
510 表示部
520 入力部
530 制御部
540 記憶部
550 通信部
CA1 第1中心軸
CA2 第2中心軸
DP1 第1検出ポイント
DP2 第2検出ポイント
DP3 第3検出ポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18