(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147453
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】コンベアベルト用共重合体組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20220929BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220929BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/04
C08F210/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048694
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄二
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB051
4J002BB052
4J002BB152
4J002BK001
4J002BL021
4J002DA036
4J002EJ017
4J002EJ027
4J002EN057
4J002EV027
4J002EV137
4J002FD037
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD320
4J100AA02R
4J100AA03Q
4J100AA15P
4J100BC27P
4J100CA05
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100DA19
4J100DA47
4J100DA48
4J100DA49
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA29
4J100GA06
4J100GC07
4J100GC25
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、加工性と機械物性、耐熱老化性および耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得るに好適なコンベアベルト用共重合体組成物を得ることにある。
【解決手段】本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)、エチレン・α-オレフィン共重合体(F)、カーボンブラック(G)および老化防止剤(H)を含むことを特徴とするコンベアベルト用共重合体組成物に係る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(S)、(F)、(G)および(H)を含むことを特徴とするコンベアベルト用共重合体組成物;
(S)エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有し、下記要件(i)~(v)を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体;
(F)エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンを含むエチレン・α-オレフィン共重合体;
(G)カーボンブラック;
(H)老化防止剤;
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S);
【化1】
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40・・・式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=100)(Pa・sec)との比P(η
*
(ω
=0.1)/η
*
(ω
=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]
2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB
1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB
1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【請求項2】
さらに下記(J)を含むことを特徴とする、請求項2に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
(J)有機過酸化物系架橋剤;
【請求項3】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、極限粘度[η]が0.1~5dL/gであり、重量平均分子量(Mw)が10000~600000である請求項1または2に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【請求項4】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)を構成する非共役ポリエン(C)が5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)である請求項1~3のいずれか1項に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【請求項5】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、さらに、前記式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)で含み、下記(vi)の要件を満たす請求項1~4のいずれか1項に記載のコンベアベルト用共重合体組成物;
(vi)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共役ポリエン(D)に由来する構成単位の重量分率((D)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)と、共役ポリエン(D)の分子量((D)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。;
4.5≦Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}≦45・・・式(4)
【請求項6】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)を構成する前記非共役ポリエン(D)が、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)である請求項1~5のいずれか1項に記載のコンベアベルト用共重合体組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコンベアベルト用共重合体組成物を用いてなるコンベアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性と機械物性、耐熱老化性および耐摩耗性に優れるコンベアベルト用共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼、石炭、セメント等の様々な産業分野においては、物品の輸送手段としてベルトコンベア装置が用いられ、特に、例えばクリンカ等のように、150~250℃程度の高温物品をベルトコンベア装置で搬送するケースも多い。このような状況を受け、メンテナンス作業の最小限化及び使用寿命の長期化を図るため、耐熱老化性および耐摩耗性に優れるコンベアベルトが求められている。
【0003】
コンベアベルトの耐熱老化性、耐摩耗性などを改良する方法として、エチレン・1-オクテン共重合体とエチレン・プロピレン共重合体とを含有するゴム組成物を用いることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、コンベアベルトにはより高い耐摩耗性に対する要求が高まっており、そして従来品を代替する耐熱コンベヤベルト用ゴム組成物には耐熱性、機械物性、加工性を従来品と同等に維持またはそれ以上の性能を有することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、加工性と機械物性、耐熱老化性および耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得るに好適なコンベアベルト用共重合体組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討した結果、以下の構成を有する組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記成分(S)、(F)、(G)および(H)を含むことを特徴とするコンベアベルト用共重合体組成物に関する。
(S)エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有し、下記要件(i)~(v)を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体;
(F)エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンを含むエチレン・α-オレフィン共重合体;
(G)カーボンブラック;
(H)老化防止剤;
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S);
【化1】
(i)エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
(ii)非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体100重量%中、0.07重量%~10重量%である。
(iii)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40・・・式(1)
(iv)レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η
*
(ω
=100)(Pa・sec)との比P(η
*
(ω
=0.1)/η
*
(ω
=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]
2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
(v)3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB
1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB
1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【発明の効果】
【0008】
本発明の耐熱コンベヤベルト用ゴム組成物は、加工性と機械物性、耐熱老化性を維持しつつ、高い耐摩耗性を有する耐熱コンベヤベルトとなることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つであるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)〔以下、「成分(S)」と略記する場合がある。〕は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、下記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)とに由来する構成単位を有する。
【0010】
【0011】
本発明に係る成分(S)は、上記(A)、(B)、(C)に由来する構造単位に加えて、さらに上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を有していてもよい。
【0012】
炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)としては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。このようなα-オレフィンは、原料コストが比較的安価であり、得られるコンベアベルト用共重合体組成物が優れた機械的性質を示し、さらにゴム弾性を持ったコンベアベルトを得ることができるため好ましい。これらのα-オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0013】
本発明に係る成分(S)は、少なくとも1種の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでおり、2種以上の炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0014】
上記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)としては、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に過酸化物との反応性が良好で、コンベアベルト用共重合体組成物の耐熱性が向上しやすいことから非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、非共役ポリエン(C)がVNBであることがより好ましい。非共役ポリエン(C)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0015】
本発明に係る成分(S)は、エチレン(A)、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)および前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含んでいてもよい。このような非共役ポリエン(D)としては、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、入手容易性が高く、重合後の架橋反応時に硫黄や加硫促進剤との反応性が高く、架橋速度を制御しやすく、良好な機械物性が得られやすいことからENBが好ましい。非共役ポリエン(D)は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0016】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を含む場合、その割合は本発明の目的を損なわない範囲において特に限定されるものではないが、通常、0~20重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0.01~8重量%程度の重量分率で含む(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)。
【0017】
本発明に係る成分(S)は、上述の通り、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、上記非共役ポリエン(C)と、必要に応じて上記非共役ポリエン(D)とに由来する構成単位を有する共重合体であって、下記要件(i)~(v)を満たす。
【0018】
〔要件(i)〕
エチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1である。
【0019】
〔要件(ii)〕
非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が0.07重量%~10重量%である。
【0020】
〔要件(iii)〕
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、下記式(1)を満たす。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40・・・式(1)
【0021】
〔要件(iv)〕
レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率)とが、下記式(2)を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
【0022】
〔要件(v)〕
3D-GPCを用いて得られた、1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たす。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
本明細書において、「炭素原子数3~20のα-オレフィン」を単に「α-オレフィン」とも記す。
【0023】
〔要件(i)〕
要件(i)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)中のエチレン/α-オレフィンのモル比が40/60~99.9/0.1を満たすことを特定するものであり、このモル比は好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは55/45~78/22を満たすことが望ましい。このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、架橋成形体の原料として用いた場合に、得られる架橋成形体が優れたゴム弾性を示し、機械的強度ならびに柔軟性に優れたものとなるため好ましい。
【0024】
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)中のエチレン量(エチレン(A)に由来する構成単位の含量)およびα-オレフィン量(α-オレフィン(B)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0025】
〔要件(ii)〕
要件(ii)は、本発明に係る成分(S)は、中において、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率が、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)100重量%中(すなわち全構成単位の重量分率の合計100重量%中)、0.07重量%~10重量%の範囲であることを特定するものである。この非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率は、好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%であることが望ましい。
【0026】
本発明に係る成分(S)が、要件(ii)を満たすと、本発明に係る成分(S)が充分な硬度を有し、機械特性に優れたものとなるため好ましく、過酸化物を用いて架橋した場合には、早い架橋速度を示すものとなり、本発明に係る成分(S)は、が、架橋成形体の製造に好適なものとなるため好ましい。
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)中の非共役ポリエン(C)量(非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の含量)は、13C-NMRにより求めることができる。
【0027】
〔要件(iii)〕
要件(iii)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)において、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)とが、次の関係式(1)を満たすことを特定するものである。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦40・・・式(1)
【0028】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)が、要件(iii)を満たす場合、VNBなどの非共役ポリエン(C)に由来する構造単位の含有量が適切であって、十分な架橋性能を示すとともに、本発明のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いて架橋成形体を製造した場合には、架橋速度に優れ、架橋後の成形体が優れた機械特性を示すものとなるため好ましい。
【0029】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、より好ましくは、下記関係式(1')を満たすことが望ましい。
4.5≦Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量≦35・・・式(1')
なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数値として求めることができる。
【0030】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が前記式(1)あるいは(1')を満たす場合には架橋程度が適切となり、これを用いることにより機械的物性と耐熱老化性とにバランスよく優れた成形品を製造することができる。「Mw×(C)の重量分率/100/(C)の分子量」が少なすぎる場合には、架橋性が不足して架橋速度が遅くなることなることがあり、また多すぎる場合には過度に架橋を生じて機械的物性が悪化する場合がある。
【0031】
〔要件(iv)〕
要件(iv)は、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)(Pa・sec)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)(Pa・sec)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))と、極限粘度[η]と、前記非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率:重量%)とが、下記式(2)を満たすことを特定するものである。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×6・・・式(2)
【0032】
ここで、周波数ω=0.1rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.1)と、周波数ω=100rad/sでの複素粘度η*
(ω=100)との比P(η*
(ω=0.1)/η*
(ω=100))は、粘度の周波数依存性を表すものであって、式(2)の左辺にあたるP/([η]2.9)は、短鎖分岐や分子量などの影響はあるものの、長鎖分岐が多い場合に高い値を示す傾向がある。一般に、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体では、非共役ポリエンに由来する構成単位を多く含むほど、長鎖分岐を多く含む傾向があるが、本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、従来公知のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体よりも長鎖分岐が少ないことにより上記式(2)を満たすことができると考えられる。本発明において、P値は、粘弾性測定装置Ares(Rheometric Scientific社製)を用い、190℃、歪み1.0%、周波数を変えた条件で測定を行って求めた、0.1rad/sでの複素粘度と、100rad/sでの複素粘度とから、比(η*比)を求めたものである。
【0033】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、好ましくは、下記式(2')を満たす。
P/([η]2.9)≦(C)の重量分率×5.7・・・式(2')
なお、極限粘度[η]は、135℃のデカリン中で測定される値を意味する。
【0034】
〔要件(v)〕
要件(v)は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の、3D-GPCを用いて得られた1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)と、重量平均分子量(Mw)の自然対数[Ln(Mw)]とが下記式(3)を満たすことを特定するものである。
LCB1000C≦1-0.07×Ln(Mw)・・・式(3)
【0035】
上記式(3)により、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の単位炭素数当たりの長鎖分岐含量の上限値が特定される。
【0036】
このようなエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、含まれる長鎖分岐の割合が少なく、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れるとともに、これを用いて得られる成形体が耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0037】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、好ましくは、下記式(3')を満たす。
LCB1000C≦1-0.071×Ln(Mw)・・・式(3')
ここで、Mwと1000炭素原子あたりの長鎖分岐数(LCB1000C)は、3D-GPCを用いて構造解析法により求めることができる。本明細書においては、具体的には、次のようにして求めた。
【0038】
3D-高温GPC装置PL-GPC220型(Polymer Laboratories社製)を用い、絶対分子量分布を求め、同時に粘度計で極限粘度を求めた。主な測定条件は以下の通り。
検出器:示差屈折率計/GPC装置内蔵
2角度光散乱光度計PD2040型(Precison Detectors社製)
ブリッジ型粘度計PL-BV400型(Polymer Laboratories社製)
カラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT×2本+TSKgel GMHHR-M(S)×1本
(いずれも1本当たり内径7.8mmφ×長さ300mm)
温度:140℃
移動相:1,2,4-トリクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
注入量:0.5mL
試料濃度:ca 1.5mg/mL
試料濾過:孔径1.0μm焼結フィルターにて濾過
絶対分子量の決定に必要なdn/dc値は標準ポリスチレン(分子量190000)のdn/dc値0.053と単位注入質量あたりの示差屈折率計の応答強度より、試料ごとに決定した。
【0039】
粘度計より得られた極限粘度と光散乱光度計より得られた絶対分子量の関係より溶出成分毎の長鎖分岐パラメーターg'iを式(v-1)から算出した。
【0040】
【0041】
ここで、[η]=KMv;v=0.725の関係式を適用した。
また、g'として各平均値を下記式(v-2)、(v-3)、(v-4)から算出した。なお、短鎖分岐のみを有すると仮定したTrendlineは試料ごとに決定した。
【0042】
【0043】
更にg'wを用いて、分子鎖あたりの分岐点数BrNo、炭素1000個あたりの長鎖分岐数LCB1000C、単位分子量あたりの分岐度λを算出した。BrNo算出はZimm-Stockmayerの式(v-5)、また、LCB1000Cとλの算出は式(v-6)、(v-7)を用いた。gは慣性半径Rgから求められる長鎖分岐パラメーターであり、極限粘度から求められるg'との間に次の単純な相関付けが行われている。式中のεは分子の形に応じて種々の値が提案されている。ここではε=1(すなわちg'=g)と仮定して計算を行った。
【0044】
【数3】
λ=BrNo/M・・・(V-6)
LCB
1000C=λ×14000・・・(V-7)
*式(V-7)中、14000はメチレン(CH
2)単位で1000個分の分子量を表す。
【0045】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、極限粘度[η]が好ましくは0.1~5dL/g、より好ましくは0.5~5.0dL/g、さらに好ましくは0.9~4.0dL/gであることが望ましい。
【0046】
また本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)が好ましくは10,000~600,000、より好ましくは30,000~500,000、さらに好ましくは50,000~400,000であることが望ましい。
【0047】
本発明に係る成分(S)は、上記の極限粘度[η]および重量平均分子量(Mw)を兼ね備えて満たすことが好ましい。
本発明に係る成分(S)では、非共役ポリエン(C)がVNBを含むことが好ましく、VNBであることがより好ましい。すなわち上述した式(1)、式(2)ならびに後述する式(4)等において、「(C)の重量分率」が「VNBの重量分率」(重量%)であることが好ましい。
【0048】
本発明に係る成分(S)は、上述したように、上記(A)、(B)および(C)に由来する構造単位に加えて、さらに、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を分子中に1つのみ含む非共役ポリエン(D)に由来する構成単位を、0重量%~20重量%の重量分率(ただし、(A)、(B)、(C)、(D)の重量分率の合計を100重量%とする)で含むことも好ましい。この場合には、下記要件(vi)を満たすことが好ましい。
【0049】
〔要件(vi)〕
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)と、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共役ポリエン(D)に由来する構成単位の重量分率((D)の重量分率(重量%))と、非共役ポリエン(C)の分子量((C)の分子量)と、共役ポリエン(D)の分子量((D)の分子量)とが、下記式(4)を満たす。
4.5≦Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}≦45・・・式(4)
式(4)では、共重合体1分子中の非共役ジエン((C)と(D)の合計)の含量を特定している。
【0050】
上記(D)に由来する構造単位を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が式(4)を満たす場合、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体から得られるコンベアベルトが優れた機械物性と耐熱老化性を示すものとなるため好ましい。
【0051】
要件(vi)を満たさず、式(4)中の「Mw×{((C)の重量分率/100/(C)の分子量)+((D)の重量分率/100/(D)の分子量)}」が少なすぎる場合、すなわち非共役ジエンの含量が少なすぎる場合には、十分な架橋がなされず適切な機械物性が得られない場合があり、多すぎる場合には架橋が過剰となり機械物性が悪化する場合がある他、耐熱老化性が悪化する場合がある。
【0052】
〔要件(vii)〕
本発明に係る成分(S)は特に限定されるものではないが、レオメーターを用いて線形粘弾性測定(190℃)により得られた、周波数ω=0.01rad/sでの複素粘度η*
(ω=0.01)(Pa・sec)と、周波数ω=10rad/sでの複素粘度η*
(ω=10)(Pa・sec)と、非共役ポリエン(c)に由来する見かけのヨウ素価とが、下記式(5)を満たすことが好ましい。
Log{η*
(ω=0.01)}/Log{η*
(ω=10)}≦0.0753×{非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価}+1.42・・・式(5)
ここで、複素粘度η*
(ω=0.01)および複素粘度η*
(ω=10)は、要件(vi)における複素粘度η*
(ω=0.1)および複素粘度η*
(ω=100)と測定周波数以外は同様にして求められる。
【0053】
また、非共役ポリエン(C)に由来する見かけのヨウ素価は、次式により求められる。
(C)に由来する見かけのヨウ素価=(C)の重量分率×253.81/(C)の分子量
上記式(5)において、左辺は長鎖分岐量の指標となる剪断速度依存性を表し、右辺は重合時に長鎖分岐として消費されていない非共役ポリエン(C)の含有量の指標を表す。要件(vii)を満たし、上記式(5)を満たす場合には、長鎖分岐の程度が高すぎないため好ましい。一方上記式(5)を満たさない場合には、共重合した非共役ポリエン(C)のうち、長鎖分岐の形成に消費された割合が多いこと分かる。
【0054】
またさらに本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位を十分量含有することが好ましく、共重合体中における非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の重量分率((C)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とが、下記式(6)を満たすことが好ましい。
6-0.45×Ln(Mw)≦(C)の重量分率≦10・・・式(6)
【0055】
また本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)が、好ましくは6個以上、より好ましくは6個以上40個以下、さらに好ましくは7個以上39個以下、またさらに好ましくは10個以上38個以下であることが望ましい。
【0056】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、VNBなどの非共役ポリエン(C)から導かれる構成単位を十分量含有し、かつ、長鎖分岐含有量が少なく、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに特に耐熱老化性に優れる。
【0057】
さらに本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(D)に由来する構成単位の数(nD)が、好ましくは29個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは1個未満であることが望ましい。
【0058】
このような本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、ENBなどの非共役ポリエン(D)から導かれる構成単位の含有量が本発明の目的を損なわない範囲に抑制されており、後架橋を生じにくく、十分な耐熱老化性を有するため好ましい。
【0059】
ここで、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nC)あるいは非共役ポリエン(C)に由来する構成単位の数(nD)は、非共役ポリエン(C)または(D)の分子量と、共重合体中における非共役ポリエン(C)または(D)に由来する構成単位の重量分率((C)または(D)の重量分率(重量%))と、共重合体の重量平均分子量(Mw)とから、下記式により求めることができる。
(nC)=(Mw)×{(C)の重量分率/100}/非共役ポリエン(C)の分子量
(nD)=(Mw)×{(D)の重量分率/100}/非共役ポリエン(D)の分子量
【0060】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、重量平均分子量(Mw)あたりの、非共役ポリエン(C)および(D)に由来するそれぞれの構成単位の数(nc)および(nD)が、いずれも上記の範囲を満たす場合には、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、長鎖分岐含有量が少なく、かつ、過酸化物を用いて架橋を行う場合の硬化特性に優れ、成形性がよく、機械的特性などの物性バランスに優れるとともに、後架橋を生じにくく特に耐熱老化性に優れたものとなるため好ましい。
【0061】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の製造>
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、エチレン(A)と、炭素原子数3~20のα-オレフィン(B)と、前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に2つ以上含む非共役ポリエン(C)と、必要に応じて前記一般式(I)および(II)からなる群から選ばれる部分構造を合計で分子中に1つのみ2含む非共役ポリエン(D)とからなるモノマーを共重合してなる共重合体である。
【0062】
本発明に係るエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)は、前記の要件(i)~(v)を満たす限りにおいて、どのような製法で調製されてもよいが、メタロセン化合物の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることが好ましく、メタロセン化合物を含む触媒系の存在下にモノマーを共重合して得られたものであることがより好ましい。
【0063】
本発明に係る上記共重合体(A)の具体的な製造方法としては、例えば、特開2018-119096号公報、国際公開第2015/122495号パンフレット記載のメタロセン触媒を用いた製造方法を採用することにより製造することができる。
【0064】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(F)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つであるエチレン・α-オレフィン共重合体(F)〔以下、「成分(F)」と略称する場合がある。〕は、エチレンと炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体である。
【0065】
α-オレフィンとしては、機械強度に優れるコンベアベルトが得られる等の点から、炭素数が好ましくは3~12、より好ましくは4~8のα-オレフィンが望ましい。
このようなα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。中でも、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが好ましく用いられる。これらのα-オレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0066】
本発明に係る成分(F)において、エチレンから導かれる構成単位の含量は、好ましくは50~85モル%、さらに好ましくは50~80モル%である(但し、エチレンから導かれる構成単位と、炭素原子数3~20のα-オレフィンから導かれる構成単位との合計は100モル%である)。エチレンから導かれる構成単位の含量が前記範囲にあると、成分(S)との相溶性に優れるコンベアベルト用共重合体組成物を得ることができる。
【0067】
本発明に係る成分(F)は、以下の要件(i)~(iv)を満たすことが好ましい。
(i)融点
本発明に係る成分(F)の融点は、好ましくは110℃以下、より好ましくは0~105℃であり、さらに好ましくは0~100℃である。成分(F)の融点が前記範囲にあることで、低混練温度でも未溶融の成分(F)が残留せず、特に、成形収縮率が小さく、耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得ることができる。
本発明に係る成分(F)の融点は、JIS K 7121に記載の方法で測定することができる。
【0068】
(ii)密度
本発明に係る成分(F)の密度は、好ましくは840~920kg/m3であり、より好ましくは850~915kg/m3であり、さらに好ましくは860~915kg/m3である。密度が前記範囲にあると、成形収縮率が小さく、強度特性、耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得ることができる。
本発明に係る成分(F)の密度は、ASTM D1505に記載の方法で測定することができる。
【0069】
(iii)MFR
本発明に係る成分(F)の190℃、2.16kgにおけるMFRは、好ましくは0.1~50g/10minであり、より好ましくは0.2~30.0g/10minであり、さらに好ましくは0.3~10g/10minである。MFRが前記範囲にあると、成形収縮率が小さく、加工性に優れるコンベアベルト用共重合体組成物を得ることができる。
本発明に係る成分(F)のMFRは、ASTM D1238に記載の方法で測定することができる。
【0070】
(iv)Mw/Mn
本発明に係る成分(F)は、好ましくはGPC分析により求められる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが1.5~10.0の範囲にある。
本発明に係る成分(F)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000であり、さらに好ましくは20,000~200,000の範囲にある。
【0071】
本発明に係る成分(F)のGPCにより求められる重量平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000~250,000であり、より好ましくは2,000~150,000であり、さらに好ましくは2,000~100,000の範囲にある。
【0072】
また、本発明に係る成分(F)は、室温から約100℃において、好ましくは90℃前後の温度において固体であることが好ましい。
本発明に係る成分(F)の重量平均分子量が前記範囲にあると、成形収縮率が小さく、耐摩耗性に優れるコンベアベルトを得ることができる。また、低分子量成分が少ないことにより、得られるコンベアベルトにおいて、該低分子量成分の揮発や浮き出しが生じにくくなり好ましい。
【0073】
本発明に係る成分(F)のMw、Mn及びMw/Mnは、具体的には下記実施例に記載の共重合体(S)の分子量の測定方法と同様の方法で測定することができる。
本発明に係る成分(F)は、例えば、バナジウム系触媒、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を用いて、従来公知の方法により、エチレンとα-オレフィンとを共重合することによって製造することができる。前記物性を満たす共重合体を容易に得ることができる等の点から、メタロセン触媒を用いて合成する方法が好ましく、具体的には、国際公開第2008/152935号に記載のメタロセン化合物およびアルミニウム含有化合物等を含む触媒や特開平9-40586号公報に記載のメタロセン化合物と有機アルミニウムオキシ化合物またはイオン化イオン性化合物とからなる触媒用いて合成する方法がより好ましい。
【0074】
<カーボンブラック(G)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つであるカーボンブラック(G)〔以下、「成分(G)」と略称する場合がある。〕は、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤の一種であり通常、カーボンブラックと呼称されている無機物である。
【0075】
本発明に係るカーボンブラック(G)としては、具体的には、旭#55G、旭#60G、旭#60UG(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(V、SO、116、3、6、9、SP、TA等)のカーボンブラック(東海カーボン(株)製)、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したものである。
【0076】
<老化防止剤(H)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれる成分の一つである老化防止剤(H)〔以下、「成分(H)」と略称する場合がある。〕は、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などである。
【0077】
さらに、老化防止剤として、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン(商品名:イルガノックス1010、BASF製)等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール(商品名 サンダントMB、三新化学工業(株)製)、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0078】
<有機過酸化物系架橋剤(J)>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物に含まれていてもよい成分の一つである有機過酸化物系架橋剤(J)〔以下、「成分(J)」と略称する場合がある。〕は、架橋剤の一種であり、具体的には、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙げられる。
【0079】
このうちでは、ジクミルペルオキシド(DCP)、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート等の有機過酸化物系架橋剤が好ましい。
【0080】
<コンベアベルト用共重合体組成物>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(F)、上記カーボンブラック(G)および上記老化防止剤(H)を含む組成物、好ましくはさらに上記有機過酸化物系架橋剤(J)を含む組成物である。
【0081】
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、上記各成分を含むことにより、加工性に優れ、当該コンベアベルト用共重合体組成物から得られるコンベアベルトは、機械物性、耐熱老化性および耐摩耗性に優れる。
【0082】
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、好ましくは、上記成分(S)と上記成分(F)との合計量を100質量部として、上記成分(S)を95~5質量部、好ましくは90~10質量部、さらに好ましくは80~20質量部、上記成分(F)を5~95質量部、好ましくは10~90、さらに好ましくは20~80質量部の範囲で含み、上記成分)と上記成分(F)との合計量を100質量部に対して、上記成分(G)を5~120質量部、さらに好ましくは10~100質量部、および上記成分(H)を0.1~20質量部、さらに好ましくは0.2~15質量部の範囲で含み、さらにコンベアベルト用共重合体組成物が上記成分(J)を含む場合は、0.1~30質量部、さらに好ましくは0.2~25質量部の範囲で含む。
【0083】
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、目的に応じて、上記各成分に加え加え、他の配合剤、例えば、架橋助剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤、気泡防止剤、発泡剤および発泡助剤から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また。それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
〈架橋助剤〉
架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物が挙げられる。
【0085】
架橋助剤を用いる場合、コンベアベルト用共重合体組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物系架橋剤1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0086】
〈軟化剤〉
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、これらのうちでは、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルが特に好ましい。
【0087】
コンベアベルト用共重合体組成物が軟化剤を含有する場合には、軟化剤の配合量は、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部に対して、一般に2~100質量部、好ましくは10~100質量部である。
【0088】
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0089】
コンベアベルト用共重合体組成物が加工助剤を含有する場合は、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部に対して、通常1~3質量部の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
前記加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0090】
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0091】
コンベアベルト用共重合体組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0092】
〈発泡剤および発泡助剤〉
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物を用いて形成された成形体は、非発泡体であってもよいし、発泡体であってもよい。コンベアベルトが発泡体である場合にはコンベアベルト用共重合体組成物には発泡剤が含まれていることが好ましい。
【0093】
発泡剤としては、市販の発泡剤のいずれもが好適に使用される。このような発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機系発泡剤;N,N'-ジニトロソテレフタルアミド、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'-オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)ジフェニルスルフォン-3,3'-ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'-ジフェニルジスルホニルアジド、パラトルエンマルホニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。中でも、アゾ化合物、スルフォニルヒドラジド化合物、アジド化合物が好ましく用いられる。
【0094】
コンベアベルト用共重合体組成物が、発泡剤を含有する場合には、発泡剤の配合量は、共重合体組成物から製造される成形体に要求される性能により適宜選択されるが、成分(S)と成分(F)の合計量:100質量部に対して、通常0.5~30質量部、好ましくは1~20質量部の割合で用いられる。
【0095】
また、必要に応じて発泡剤とともに発泡助剤を併用しても差し支えない。発泡助剤の添加は、発泡剤の分解温度の調節、気泡の均一化などに効果がある。発泡助剤としては、具体的には、サリチル酸、フタル酸、ステアリン酸、シュウ酸などの有機酸、尿素およびその誘導体などが挙げられる。
【0096】
コンベアベルト用共重合体組成物が、発泡助剤を含有する場合には、発泡助剤の配合量は、発泡剤100質量部に対して、通常1~100質量部、好ましくは2~80質量部の割合で用いられる。
【0097】
<コンベアベルト用共重合体組成物の製造方法>
本発明のコンベアベルト用共重合体組成物は、たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、上記成分(S)、上記成分(F)、上記成分(G)、および上記成分(H)、必要に応じて、軟化剤、加工助剤、架橋助剤などを、80~170℃の温度で2~20分間混練する。次いで、得られたブレンド物に、架橋剤、軟化剤、架橋助剤加硫促進剤等の添加剤をオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、架橋助剤を追加混合し、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
【0098】
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、成分(S)、成分(F)、成分(G)および成分(H)などとともに上記成分(J)を同時に混練してもよい。
【0099】
<コンベアベルト>
本発明のコンベアベルトは、本発明のコンベアベルト用共重合体組成物を用いて製造されるが、その具体的な構成としては、次のようなものが挙げられる。
帆布を芯材とし、外周をコンベアベルト用共重合体組成物で被覆してなるコンベアベルト。
コンベアベルト用共重合体組成物内にスチールコードを芯材として埋設してなるコンベアベルト。
【0100】
帆布は、例えば、ナイロン、ビニロン、ポリエステル等の合成繊維の織布よりなる帆布であり、帆布の積層枚数、コンベアベルト用共重合体組成物の厚さやベルト幅等は使用目的に応じて適宜決定されるが、コンベアベルト用共重合体組成物の厚さは、通常、1.5~20mm程度である。
【0101】
スチールコードからなる芯材は、直径0.2~0.4mm程度の素線を複数本撚り合わせて直径2.0~9.5mm程度のワイヤロープとしたスチールコードを50~230本程度並列させて芯材とするものであり、一般に、コンベアベルトの総厚みは10~50mm程度とされる。
【0102】
本発明のコンベアベルトは、常法に従って、芯材となる帆布やスチールコードを本発明のコンベアベルト用共重合体組成物で成形した未架橋のシート間に介在させ、加熱加圧して架橋することにより容易に製造することができる。なお、架橋条件は、通常120~180℃、10~50kg/cm2程度で10~90分程度である。
【実施例0103】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
実施例および比較例では、下記の共重合体を用いた。
(1)エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の組成]
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の、各構造単位のモル比、および質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。測定値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、共重合体の13C-NMRのスペクトルを測定して得た。
【0105】
[製造例1]エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(S)の製造
連続重合装置を用いて、以下のようにしてエチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)共重合体(S-1)の製造を行った。
【0106】
容積300リットルの重合反応器に、ライン1より脱水精製したヘキサン溶媒を58.3L/hr、ライン2よりトリイソブチルアルミニウム(TiBA)を4.5mmol/hr、(C6H5)3CB(C6F5)4を0.150mmol/hr、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.030mmol/hrで連続的に供給した。同時に前記重合反応器内に、エチレンを6.6kg/hr、プロピレンを9.3kg/hr、水素を18リットル/hr、VNBを340g/hrで、各々別ラインより連続供給し、重合温度87℃、全圧1.6MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で共重合を行なった。
【0107】
前記重合反応器で生成したエチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、流量88.0リットル/hrで連続的に排出して温度170℃に昇温(圧力は4.1MPaGに上昇)して相分離器に供給した。このとき、排出ラインには重合禁止剤であるエタノールを、前記重合反応器から抜き出した液体成分中のTiBAに対して0.1mol倍の量で連続的に導入した。
【0108】
前記相分離器において、エチレン・プロピレン・VNB共重合体の溶液を、大部分のエチレン・プロピレン・VNB共重合体を含む濃厚相(下層部)と少量のポリマーを含む希薄相(上層部)とに分離した。
【0109】
分離された濃厚相を85.4リットル/hrで熱交換器Kに導き、さらにホッパー内に導いて、ここで溶媒を蒸発分離し、エチレン・プロピレン・VNB共重合体を7.8kg/hrの量で得た。
【0110】
得られた共重合体(S-1)のモル比(エチレン単位/プロピレン単位)は70/30であり、VNB単位の含有割合は1.4質量%であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は2.8dL/gであった。なお、得られた共重合体(S-1)の分子量分布は二峰性を示し、GPC測定によって得られるチャートが2つ以上のピークを示し、最も分子量が小さい側に現れるピークの面積が、全体のピーク面積の5%であった。
【0111】
さらに得られた共重合体(S-1)100質量部当たり、液状エチレン・プロピレン共重合体(100℃動粘度:2000mm2/s)15質量部を加えて均一に混合し、エチレン・プロピレン・VNB共重合体(S-1)の混合物とした。
【0112】
(2)エチレン・α-オレフィン共重合体(F)
(2-1)エチレン・1-ブテン共重合体(F-1)
密度:864kg/m3、融点<50℃、MFR:3.6g/10分〔三井化学社製 商品名 タフマーTM DF640〕。
【0113】
(2-2)エチレン・1-ブテン共重合体(F-2)
密度:862kg/m3、融点<50℃、MFR:1.2g/10分〔三井化学社製 商品名 タフマーTM DF610〕。
【0114】
(2-3)エチレン・プロピレン共重合体(F-3)(三井EPT0045の記載)
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃):40、エチレン含量:51重量%〔三井化学社製 商品名 三井EPT 0045〕。
【0115】
〔コンベアベルト用共重合体組成物の物性〕
[ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)]
100℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)100℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、100℃の条件下で測定した。
【0116】
[ロール加工性]
8インチロ-ル(日本ロール(株)製)を用い、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数18rpm、後ロールの回転数15rpm、ロール間隙2mm、および3.5mmとし、コンパウンドをロ-ルに巻き付けて、シートの状態を観察した。
【0117】
評点1:全くロールに巻き付かず、すぐにバギングが発生。
評点2:一時的にロールに巻き付くが、すぐにロール表面からはがれバギング発生。
評点3:ロールには巻き付き、度々バンク部分から剥がれが発生するがバギングしない。
評点4:ロールに容易に巻き付き、極まれにバンク部分から剥がれが発生するがバギングしない。
評点5:ロールに容易に巻き付き、バンク部分からの剥がれが発生せずバギングしない。
【0118】
<コンベアベルト用共重合体組成物(架橋物)の物性>
[モジュラス(MPa)、引張破断点応力(MPa)、引張破断点伸び(%)]
シートを打抜いてJIS K 6251(1993年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、100%伸張時のモジュラス(M100)、200%伸張時のモジュラス(M200)引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0119】
[デュロメーターA硬度]
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている厚み2mmの架橋シート6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0120】
[耐熱老化性]
シートを、JIS K 6257に従い、180℃で72時間(hrs)および168時間(hrs)の各時間保持する熱老化試験を行った。熱老化試験後のシートの硬度、引張破断点応力(MPa)、引張破断点伸び(%)を、前記[硬度(Durometer-A)]の項目、前記[モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び]の項目と同様の方法で測定した。
【0121】
熱老化試験前後の硬度の差より、AH(Duro-A)を求め、熱老化試験前後の引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)から、熱老化試験前の値に対する試験後の変化率をそれぞれ、Ac(TB)、Ac(EB)として求めた。
【0122】
[DIN摩擦試験(摩耗量)]
JIS-K6264-2:2005に準拠して、厚み2mmの架橋シートを3枚重ね、直径16.0±0.2mm、厚み6mmの円盤状の試験片を作製し、該試験片について、DIN摩耗試験機を用いて、直径150.0±0.2mm、長さ500mmのドラムを40回/分で回転させ、荷重1kgfで、摩耗距離を40.0±0.2mとしたときの摩耗量(DIN摩耗量:単位mg)を測定した。
【0123】
〔実施例1〕
第一段階として、BB-4型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、製造例1で得たエチレン・プロピレン・VNB共重合体(S-1)と液状エチレン・プロピレン共重合体との混合物:92質量部〔(S-1)の量:80質量部〕とエチレン・1-ブテン共重合体(F-1)20質量部を1分間素練りし、次いでこれに、亜鉛華(ZnO#1、ハクスイテック(株)製)5質量部、カーボンブラック(G-1)(旭#70、旭カーボン(株)製)65質量部、パラフィン系プロセスオイル(ダイアナプロセスPW-380、出光興産(株)製)23質量部、老化防止剤(H-1)として、フェノール系老化防止剤(商品名 イルガノックス1010、BASF製)1質量部、老化防止剤(H-2)として、イミダゾール系老化防止剤(商品名 サンダントMB、三新化学工業(株)製)2質量部、ステアリン酸1質量部を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で混練物を排出し、第一段階の配合物を得た。
【0124】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、6インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、有機過酸化物系架橋剤(J-1)として、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(化薬アクゾ社製 商品名 トリゴノックス29-40)12質量部を加え10分間混練して未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物を得た。この共重合体組成物を用いて、その物性を評価した。
【0125】
この未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物をシート状に押出成形した後、100トンプレス成形機を用いて145℃で10分間プレスし、厚み2mmの架橋シートを調製した。これを用いて、架橋シートの物性を測定した。結果を表1に示す。
【0126】
〔実施例2〕
実施例1で用いた(S-1)混合物の量を69質量部〔(S-1)の量:60質量部〕および(F-1)の量を40質量部とする以外は実施例1と同様に行った。得られた未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物および架橋シートの物性を測定した。結果を表1に示す。
【0127】
〔実施例3〕
実施例2で用いた(F-1)に替えて(F-2)を用いる以外は実施例2と同様に行った。得られた未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物および架橋シートの物性を測定した。結果を表1に示す。
【0128】
〔実施例4〕
実施例2で用いた(F-1)に替えて(F-3)を用いる以外は実施例2と同様に行った。得られた未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物および架橋シートの物性を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
〔比較例1〕
実施例1で用いた(F-1)を用いずに実施例1で用いた(S-1)混合物の量を115質量部〔(S-1)の量:100質量部〕とし、他の添加剤の量を表1に示す量とする以外は実施例1と同様に行った。得られた未架橋のコンベアベルト用共重合体組成物および架橋シートの物性を測定した。結果を表1に示す。
【0130】