(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147461
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20220929BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220929BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20220929BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220929BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20220929BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H05B33/04
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/14 A
H05B33/26 Z
G09F9/30 365
G09F9/30 348A
G09F9/30 339Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048707
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB07
3K107CC05
3K107CC07
3K107DD01
3K107DD24
3K107DD29
3K107DD44X
3K107DD44Y
3K107EE46
3K107EE50
3K107FF06
5C094AA07
5C094AA08
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA15
5C094EA04
5C094EA07
5C094FA01
5C094FB01
5C094FB12
5C094FB15
5C094HA03
(57)【要約】
【課題】 色再現範囲を拡大でき、かつ透過率の低下を抑制可能な表示装置を提供する。
【解決手段】 表示装置は、画素を有する第1領域と、前記第1領域とは異なる第2領域と、を備える表示装置であり、前記画素は、画素電極と、発光層を含む有機材料層と、共通電極と、第1絶縁層と、前記第1絶縁層より屈折率の低い第2絶縁層と、第3絶縁層と、を備え、前記第2領域は、前記発光層が設けらない透明領域であり、前記第2領域では、前記第1絶縁層は設けられ、前記第2絶縁層は設けられない。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素を有する第1領域と、前記第1領域とは異なる第2領域と、を備える表示装置であり、
前記画素は、画素電極と、発光層を含む有機材料層と、共通電極と、第1絶縁層と、前記第1絶縁層より屈折率の低い第2絶縁層と、第3絶縁層と、を備え、
前記第2領域は、前記発光層が設けらない透明領域であり、
前記第2領域では、前記第1絶縁層は設けられ、前記第2絶縁層は設けられない、表示装置。
【請求項2】
前記第1領域は、さらに、前記画素とは異なり、前記発光層が設けらない空白領域を有し、
前記空白領域には、前記第1絶縁層は設けられ、前記第2絶縁層は設けられない、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記共通電極は、第1共通電極と、前記第1共通電極より透過率の高い第2共通電極と、を有し、
前記第1共通電極は、マグネシウム-銀合金(MgAg)膜またはイッテルビウム-銀合金(YbAg)膜である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記発光層は、有機エレクトロルミネセンス発光材料を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記有機材料層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、前記発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層を含む、請求項1から4のいずれか1項記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence:EL)発光材料を用いた表示装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、色再現範囲を拡大でき、かつ透過率の低下を抑制可能な表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る表示装置は、画素を有する第1領域と、前記第1領域とは異なる第2領域と、を備える表示装置であり、前記画素は、画素電極と、発光層を含む有機材料層と、共通電極と、第1絶縁層と、前記第1絶縁層より屈折率の低い第2絶縁層と、第3絶縁層と、を備え、前記第2領域は、前記発光層が設けらない透明領域であり、前記第2領域では、前記第1絶縁層は設けられ、前記第2絶縁層は設けられない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の表示装置の全体斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の表示領域の平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の線A1-A2に沿った表示装置の断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の表示装置及び比較例1の透過率を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の表示装置及び比較例2の透過率を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態、比較例1、及び比較例2の部分断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態における表示装置を用いた電子機器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る表示装置について詳細に説明する。
【0008】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第3方向Zの矢印の先端に向かう方向を上又は上方と定義し、第3方向Zの矢印の先端に向かう方向とは反対側の方向を下又は下方と定義する。
【0009】
また、「第1部材の上方の第2部材」及び「第1部材の下方の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよく、又は第1部材から離れて位置していてもよい。後者の場合、第1部材と第2部材との間に、第3の部材が介在していてもよい。一方、「第1部材の上の第2部材」及び「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接している。
【0010】
また、第3方向Zの矢印の先端側に表示装置を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを平面視という。第1方向X及び第3方向Zによって規定されるX-Z平面、あるいは第2方向Y及び第3方向Zによって規定されるY-Z平面における表示装置の断面を見ることを断面視という。
【0011】
図1は、実施形態の表示装置の全体斜視図である。表示装置DSPは、基板SUB1に表示領域DA及び表示領域DAの周辺に設けられた周辺領域FAが設けられている。表示装置DSPは、表示領域DA内に配置された、複数の画素PXを有している。表示装置DSPでは、裏面からの光LTが表面に透過し、逆もまた然りである。
表示領域DAの上面には封止材としての基板SUB2が設けられている。基板SUB2は表示領域DAを囲むシール材(非表示)によって、基板SUB1に固定されている。基板SUB1に形成された表示領域DAは、封止材である基板SUB2とシール材によって大気に晒されないように封止されている。
【0012】
基板SUB1の端部の領域EAは、基板SUB2の外側に配置されている。領域EAには、配線基板PGSが設けられている。配線基板PGSには、映像信号や駆動信号を出力する駆動素子DRVが設けられている。駆動素子DRVからの信号は、配線基板PGSを介して、表示領域DAの画素PXに入力される。
【0013】
図2は、実施形態の表示領域の平面図である。
図2に示す表示領域DAは、複数の個別領域PAを有している。個別領域PAは、第1方向X及び第2方向Yに沿って、マトリクス状に配置されている。
図2では一例として、4つの個別領域PAのうち1つである個別領域PAaには、赤色を発光する画素PXR、緑色を発光する画素PXG、青色を発光する画素PXBが設けられている。画素PXR、PXG、PXBには、それぞれ、発光層ELr、ELg、ELbを含む有機EL層ELYが設けられている。なお発光層ELr、ELg、ELbを区別する必要がない場合は、発光層ELLとする。発光層ELLは、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)発光材料を用いて形成されている。有機EL層ELYについては後述する。
【0014】
個別領域PAaのうち画素PX(PXR、PXG、及びPXB)とは異なる領域を、空白領域VACとする。空白領域VACには、発光層ELLは設けられておらず、光を透過する。
個別領域PAのうち個別領域PAaとは異なるものを、個別領域PAbとする。個別領域PAbは、空白領域VACと同様、発光層ELLが設けられておらず、光が透過する透明領域となる。詳細は後述する。本明細書では、個別領域PAaを第1領域、個別領域PAbを第2領域ともいう。
【0015】
個別領域PAaのうち空白領域VACの占める面積の割合は、例えば、個別領域PAa全体の50%程度であってもよい。1つの個別領域PAa及び1つの個別領域PAbそれぞれの占有面積は、例えば、同じ面積である。表示領域DAにおける個別領域PAbの数は、例えば、個別領域PAaの数の3倍程度であってもよい。
上述のように、個別領域PAaの空白領域VAC及び個別領域PAbは、透明領域である。本実施形態の表示装置DSPは、発光する領域より透明領域の占める面積の方が多い。よって表示装置DSPは、透明ディスプレイであるといえる。
【0016】
図3は、
図2の線A1-A2に沿った表示装置の断面図である。
基材BA1は、例えばガラスや、樹脂材料で構成される樹脂材料で構成される基材が挙げられる。樹脂材料としては、例えばアクリル、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を用いればよく、いずれかの単層又は複数層の積層で形成してもよい。
基材BA1上には、絶縁層UCが設けられている。絶縁層UCは、例えば酸化シリコン膜及び窒化シリコン膜を単層又は積層して形成される。
【0017】
絶縁層UC上に、トランジスタTrが設けられる。トランジスタTrは、半導体層SC、絶縁層GI、ゲート電極GE(走査線GL)、絶縁層ILI、ソース電極SE(信号線SL)、ドレイン電極DEを有している。
半導体層SCとして、アモルファスシリコン、ポリシリコン、又は酸化物半導体を用いる。
絶縁層GIとして、例えば、酸化シリコン又は窒化シリコンを単層又は積層して設ける。
ゲート電極GEとして、例えば、モリブデンタングステン合金(MoW)を用いる。ゲート電極GEは、走査線GLと一体形成されていてもよい。
【0018】
半導体層SC及びゲート電極GEを覆って、絶縁層ILIが設けられている。絶縁層ILIは、例えば酸化シリコン層又は窒化シリコン層を単層又は積層して形成される。
絶縁層ILI上には、ソース電極SE及びドレイン電極DEが設けられている。ソース電極SE及びドレイン電極DEは、それぞれ、絶縁層ILI及び絶縁層GIに設けられたコンタクトホールを介して、半導体層SCのソース領域及びドレイン領域に接続される。ソース電極SE及びドレイン電極DEのいずれか一方は、信号線SLと一体形成されていてもよい。
【0019】
ソース電極SE、ドレイン電極DE、及び絶縁層ILIを覆って、絶縁層PASが設けられる。絶縁層PASを覆って、絶縁層PLLが設けられる。
絶縁層PASは、無機絶縁材料を用いて形成する。無機絶縁材料は、例えば酸化シリコン又は窒化シリコンを単層又は積層してものが挙げられる。絶縁層PLLは、有機絶縁材料を用いて形成する。有機絶縁材料は、例えば、感光性アクリル、ポリイミド等の有機材料が挙げられる。絶縁層PLLを設けることにより、トランジスタTrによる段差を平坦化することができる。
【0020】
絶縁層PLL上に、画素電極PEが設けられる。画素電極PEは、絶縁層PAS及びPLLに設けられたコンタクトホールを介して、ドレイン電極DEに接続されている。
画素電極PEは、反射性を有する第1画素電極PE1、及び透光性を有する第2画素電極PE2の積層構造であってもよい。例えば、第1画素電極PE1の材料として、銀(Ag)、第2画素電極PE2の材料として、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide)又はインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)を用い、ITO又はIZOが再上面となるように積層して形成されてもよい。他の構造としては、画素電極PEが、ITO又はIZO、Ag、ITO又はIZOがこの順に積層された積層構造で形成されていてもよい。
【0021】
隣り合う画素電極PEとの間に、バンクBK(凸部、リブ、隔壁ともいう)が設けられる。バンクBKの材料として、絶縁層PLLの材料と同様の有機材料が用いられる。バンクBKは、画素電極PEの一部を露出するように開口される。また、開口部OPの端部は、なだらかなテーパ形状となることが好ましい。開口部OPの端部が急峻な形状となっていると、後に形成される有機EL層ELYにカバレッジ不良が生じる。
【0022】
画素電極PEと重畳して、隣り合うバンクBKとの間に、有機EL層ELYが設けられている。詳細は後述するが、有機EL層ELYは、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を含んでいる。なお本明細書では、有機EL層ELYを有機材料層ともいう。有機EL層ELYは、少なくとも発光層を含んでおり、他の層は必要に応じて適宜設ければよい。
図面を見易くするために、
図3では、画素PXそれぞれに対して選択的に、有機EL層ELYを設けているように記載しているが、この限りではない。有機EL層ELYのうち発光層ELLは画素PXに対して選択的に設けられている。ただし、有機EL層ELYのうち他の層は、画素PX全部に亘って一体に形成されている。後に詳述する。
【0023】
有機EL層ELY及びバンクBKを覆って、第1共通電極CE1及び第2共通電極CE2が設けられている。第1共通電極CE1及び第2共通電極CE2を併せて、共通電極CEとする。
第1共通電極CE1として、マグネシウム-銀合金(MgAg)膜やイッテルビウム-銀合金(YbAg)膜を、有機EL層ELYからの出射光が透過する程度の薄膜として形成される。第1共通電極CE1は、例えば膜厚1nm以上50nm以下程度となるように、共蒸着にて形成される。第1共通電極CE1は、透過性と反射性の両方を有しており、透過率は、例えば40%程度である。本実施形態では、第1共通電極CE1を半透過電極、又は半透明電極と呼ぶこともある。
第2共通電極CE2として、透明電極、例えばインジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)や、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)を形成する。第2共通電極CE2の透過率は、第1共通電極CE1の透過率より高い。
本実施形態では、共通電極CEは、個別領域PAaに設けられ、個別領域PAbには設けられていない。また図示はしないが、個別領域PAaのうち空白領域VACは、個別領域PAbと同様の構造を有しており、共通電極CEは設けられない。ただし共通電極CEのうち第2共通電極CE2は個別領域PAbに設けられていてもよい。
本実施形態では、画素電極PEが陽極となり、共通電極CEが陰極となる。有機EL層ELYで生じた発光は、上方に取り出される。すなわち表示装置DSPは、トップエミッション構造を有している。
【0024】
個別領域PAaには、第2共通電極CE2を覆って、絶縁層SEY1が設けられる。絶縁層SEY1は、光学調整層であり、高屈折率の絶縁層である。絶縁層SEY1は、例えば、波長633nmにおいて、屈折率1.6以上2.2以下の無機絶縁材料又は有機絶縁材料にて形成する。
絶縁層SEY1上には、絶縁層SEY2が設けられている。絶縁層SEY2もまた光学調整層であり、低屈折率の絶縁層である。絶縁層SEY2は、例えば、波長633nmにおいて、屈折率1.2以上1.6以下の無機絶縁材料又は有機絶縁材料にて形成する。
絶縁層SEY2上には、絶縁層SEY3が設けられている。絶縁層SEY3は、外部から水分が有機EL層ELYに侵入することを防止する機能を有する。絶縁層SEY3の材料として、例えば窒素を含む無機絶縁材料、より具体的には、窒化シリコン、窒化アルミニウムが挙げられる。
【0025】
一方、個別領域PAbには、低屈折率の絶縁層SEY2は設けられておらず、絶縁層PLL上に、高屈折率の絶縁層SEY1が設けられている。
透明領域である個別領域PAbに低屈折率の絶縁層を設けると、透過率の低下や、透過率の波長依存性を引き起こす恐れがある。そのため本実施形態では、個別領域PAbに低屈折率の絶縁層を設けない。これにより透過率の低下を抑制可能である。
【0026】
絶縁層SEY1上には、絶縁層SEY3が設けられている。絶縁層SEY3上には、基材BA2が設けられている。基材BA2は、基材BA1と同様の材料で形成されている。あるいは、基材BA2は基材BA1と同様の材料ではなく、他の透明部材であってもよい。
【0027】
図4は、
図3の部分拡大図である。
図4では、個別領域PAaの画素PXR、PXG、及びPXB、並びに個別領域PAbにおいて、画素電極PEより上方の構成要素について示している。ただし、
図4は隣り合う画素の各々の積層を同図上に示すものであり、PXR、PXG,PXBの境界部分にあるバンクBKの記載は省略している。
画素PXRは、画素電極PEr上に、正孔注入層HIY、正孔輸送層HTY、電子ブロッキング層EBY、発光層ELr(ELL)、正孔ブロッキング層HBY、電子輸送層ETY、電子注入層EIY、第1共通電極CE1、第2共通電極CE2、絶縁層SEY1、絶縁層SEY2、及び絶縁層SEY3を有している。
【0028】
画素PXGは、画素電極PEg上に、正孔注入層HIY、正孔輸送層HTY、電子ブロッキング層EBY、発光層ELg(ELL)、正孔ブロッキング層HBY、電子輸送層ETY、電子注入層EIY、第1共通電極CE1、第2共通電極CE2、絶縁層SEY1、絶縁層SEY2、及び絶縁層SEY3を有している。
画素PXBは、画素電極PEg上に、正孔注入層HIY、正孔輸送層HTY、電子ブロッキング層EBY、発光層ELb(ELL)、正孔ブロッキング層HBY、電子輸送層ETY、電子注入層EIY、第1共通電極CE1、第2共通電極CE2、絶縁層SEY1、絶縁層SEY2、及び絶縁層SEY3を有している。
【0029】
正孔注入層HIY、正孔輸送層HTY、電子ブロッキング層EBY、正孔ブロッキング層HBY、電子輸送層ETY、電子注入層EIY、第1共通電極CE1、第2共通電極CE2、絶縁層SEY1、絶縁層SEY2、及び絶縁層SEY3は、画素PXR、PXG、及びPXBに亘って、全面に設けられている。いわゆる、ベタ膜として形成されている。
【0030】
正孔注入層HIYの材料は、陽極(画素電極PE)からの正孔の注入効率が高い材料である。正孔輸送層HTYは、注入された正孔を発光層ELLに輸送する。電子ブロッキング層EBYは、陰極(共通電極CE)から注入された電子を発光層ELLに留め、正孔輸送層HTYを漏れ出すのを抑制する。
電子注入層EIYは陽極から電子を注入し、電子輸送層ETYは注入された電子を発光層ELLに輸送する。正孔ブロッキング層HBYは、陽極から注入された正孔を発光層ELLに留め、電子輸送層ETYに漏れ出すのを抑制する。
【0031】
正孔輸送層HTYの膜厚は、画素PXごとに異なっている。画素PXR、PXG、及びPXBそれぞれにおける正孔輸送層HTYの膜厚を、それぞれthr、thg、及びthbとする。膜厚thr、thg、及びthbは、thr>thg>thbを満たす。ただし本実施形態の正孔輸送層HTYの膜厚は、これに限定されず、例えば発光層ELLの発光効率等により、適宜決定すればよい。
正孔注入層HIY、電子ブロッキング層EBY、正孔ブロッキング層HBY、電子輸送層ETY、電子注入層EIY、第1共通電極CE1、第2共通電極CE2、絶縁層SEY1、絶縁層SEY2、及び絶縁層SEY3については、画素PXによらず、膜厚は一定であればよい。
【0032】
本実施形態の画素PXでは、発光層ELLから出射した光は、上方又は下方に出射する。上方に出射した光は、共通電極CEを介して、外部に取り出される。下方に出射された光は、画素電極PEのうち第1画素電極PE1により反射される。反射された光は、第1画素電極PE1及び第1共通電極CE1との間で光が反射する。これにより、発光層ELLが発した光のうち、反射経路の距離が波長に等しい、又は波長の整数倍となる場合、その波長を有する光だけが増幅される。その結果、ピーク強度が高く、幅が狭いスペクトルを有する光を取り出すことができ、表示装置DSPの色再現範囲を拡大できる(マイクロキャビティ効果)。
【0033】
個別領域PAbは、上述の通り、共通電極CE及び絶縁層SEY2が設けられていない。個別領域PAbに低屈折率の絶縁層を設けないことで、透過率の低下の抑制や、透過率の波長依存性を抑制可能である。
なお個別領域PAbに設けられる正孔輸送層HTYの厚さは、個別領域PAaのうち一番薄い画素PXBにおける膜厚thbと同じであればよい。
なお個別領域PAaのうち空白領域VACにおいても、共通電極CE及び絶縁層SEY2を設けない構成であってもよい。
透明領域である個別領域PAb、さらに個別領域PAaのうち空白領域VACでは透過率が低下しない。これにより透明性の高い表示装置DSPを得ることができる。
【0034】
図5は、本実施形態の表示装置及び比較例1の透過率を示す図である。
図6は、本実施形態の表示装置及び比較例2の透過率を示す図である。
図7は、本実施形態、比較例1、及び比較例2の部分断面図である。
図7(A)は、本実施形態の個別領域PAbにおいて、画素電極PEより上方の構成要素について示しており、
図4と同様である。
図7(B)に示す比較例1では、絶縁層SEY3のみが設けられている。
図7(C)に示す比較例2では、
図4の個別領域PAaの画素PXの構成要素のうち、発光層ELLを除いた層が設けられている。すなわち、比較例2では、正孔注入層HIY、正孔輸送層HTY、電子ブロッキング層EBY、正孔ブロッキング層HBY、電子輸送層ETY、電子注入層EIY、共通電極CE、絶縁層SEY1、絶縁層SEY2、及び絶縁層SEY3が設けられている。特に、
図7(C)は、低屈折率を有する絶縁層SEY2を備えているという点で、
図7(A)と異なっている。
【0035】
図5及び
図6において、横軸は波長λ(nm)、縦軸は透過率を示している。
図5では、本実施形態の表示装置DSPの透過率を実線、比較例1の透過率を破線で表している。
図6では、本実施形態の表示装置DSPの透過率を実線、比較例2の透過率を一点破線で示している。
【0036】
図5に示すように、表示装置DSPの透過率は、可視光の範囲、例えば波長400nm以上700nmの範囲で、75%以上である。表示装置DSPの透過率は、波長によらずほぼ一定である。
絶縁層SEY3のみを有する比較例1の透過率は、本実施形態の表示装置の透過率とほぼ同等である。すなわち、
図5は、表示装置DSPが透過率の低下を抑制可能であることを示している。
【0037】
一方、
図6に示すように、絶縁層SEY2を備える比較例2では、波長400nm以上500nmの以下の範囲で、透過率が80%以下である。比較例2では、波長500nm以上では、透過率は70%以下である。このように波長に依存して透過率が変化すると、表示領域DAの色が所望の色から変化してしまい、色再現の範囲の低下及び透過率の低下の恐れが生じる。
本実施形態では、透明領域、特に個別領域PAbに絶縁層SEY2を設けていないので、上記の恐れが生じない。
【0038】
本実施形態の表示装置DSPにおいて、画素PXでは、マイクロキャビティ効果により、色再現範囲を拡大可能である。一方、個別領域PAbや空白領域VACといった透明領域では、低屈折率の絶縁層(絶縁層SEY2)を設けないことにより、透過率の低下の抑制や、透過率の波長依存性を抑制できる。
【0039】
<構成例1>
図8は、実施形態における表示装置を用いた電子機器を示す斜視図である。
図8に示す電子機器ERPは、使用者の腕に装着可能な形態を有する腕時計型電子機器である。
電子機器ERPは、表示装置DSPを有する本体BDY、本体BDYを腕に装着するためのバンド部BND、バンド部BNDの固定状態を調節する調節部ADJ等を有している。本体BDYは、操作スイッチSWTを有する。操作スイッチSWTには、電源入力スイッチや、表示切り替えスイッチ等の機能が対応付けられている。
表示装置DSPは、上述の表示装置であり、例えば、日付や時間等は着色された表示画像であり、それ以外は透明であるような表示を行うことができる。
本構成例においても、実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
CE…共通電極、CE1…第1共通電極、CE2…第2共通電極、DSP…表示装置、EBY…電子ブロッキング層、EIY…電子注入層、ELL…発光層、ELY…有機EL層、ELb…発光層、ELg…発光層、ELr…発光層、ETY…電子輸送層、HBY…正孔ブロッキング層、HIY…正孔注入層、HTY…正孔輸送層、OP…開口部、PA…個別領域、PAa…個別領域、PAb…個別領域、PE…画素電極、PX…画素、PXB…画素、PXG…画素、PXR…画素、SEY1…絶縁層、SEY2…絶縁層、SEY3…絶縁層、VAC…空白領域。