(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147477
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】無線伝送システム及び無線伝送方法
(51)【国際特許分類】
H04W 72/04 20090101AFI20220929BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20220929BHJP
H04W 72/12 20090101ALI20220929BHJP
【FI】
H04W72/04 131
H04W88/04
H04W72/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048732
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 清志
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE25
5K067EE71
(57)【要約】
【課題】 上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する場合に、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できる無線伝送システム及び無線伝送方法を提供する。
【解決手段】 各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに無線フレームが割り当てられるよう、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くする無線伝送システム及び無線伝送方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送システムであって、
前記各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、
前記繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に前記2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くするよう、前記無線フレームの割り当てをスケジューリングすることを特徴とする無線伝送システム。
【請求項2】
上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送システムであって、
前記各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、
前記繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路にはN番目とN+1番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路にはN-1番目とN+2番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に前記2つの無線フレームの割り当て間隔を広くするよう、前記無線フレームの割り当てをスケジューリングすることを特徴とする無線伝送システム。
【請求項3】
前記スケジューリングを決めるスケジューリングマップを下りフレーム内の下り制御領域で配信する上位の制御用スケジューラを有することを特徴とする請求項1又は2記載の無線伝送システム。
【請求項4】
上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送方法であって、
前記各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、
前記繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に前記2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くすることを特徴とする無線伝送方法。
【請求項5】
上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送方法であって、
前記各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、
前記繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路にはN番目とN+1番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路にはN-1番目とN+2番目のフレームに前記無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に前記2つの無線フレームの割り当て間隔を広くすることを特徴とする無線伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送システムに係り、特に、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できる無線伝送システム及び無線伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
多段中継による無線伝送システムとして、中継の各無線リンクを時分割無線フレームで伝送するシステムが提案されている(一般社団法人電波産業会策定の民間標準規格ARIB STD-T119)。
【0003】
[無線通信システム:
図5]
図5に多段中継による無線伝送システムの構成例を示す。
図5に示す無線伝送システムは、制御用スケジューラ10と、可搬型基地局無線機(PBS)1-2と、移動局無線機(MS1)1-3と、移動局無線機(MS2)1-4と、移動局無線機(MS3)1-5とから構成されている。
【0004】
[無線フレームの構成:
図6]
この方式は、前記民間標準規格ARIB STD-T119 にて、蓄積型時分割制御方式と定義されており、この方式による各無線機間の無線フレームの構成は
図6のようになる。
図6では、各無線局(無線機)間の無線フレームの割り当てを2無線フレームとし、それを上位無線局から順に時間方向に割り当てるように構成している。
この一連の無線フレームの構成を、以下、繰返し周期と呼ぶ。
【0005】
[1無線フレーム区間の無線フレーム構成:
図7]
1無線フレームの構成は、IEEE 802.16-2009および一般社団法人電波産業会策定の民間標準規格ARIB STD-T103の規定に準拠しており、
図7のように構成される。
図7に示すように、1無線フレームは、下りサブフレームと上りサブフレームに時分割されており、下りサブフレームでは上位無線局から下位無線局へ、上りサブフレームでは下位無線局から上位無線局への無線通信が行われる。
【0006】
各無線フレームの割り当て(下りデータ格納領域/上りデータ格納領域)は上位の無線機により決められ、下り制御領域を介して下位の無線機に通知される。
これをPBS-MS1間、MS1-MS2間、MS2-MS3間で時分割に繰り返すことにより、1周波数の電波で干渉することなく無線中継を行うことができる。
【0007】
各無線区間で、繰返し周期内にどの無線フレームを使用するかは、上位の制御用スケジューラ10から配信されるスケジューリングマップに従い決まるものである。
スケジューリングマップ内のフレーム割り当ては、繰返し周期の先頭からの無線フレームのオフセット(実際に割り当てられるフレーム番号から繰返し周期の先頭のフレーム番号を引いた値)として定義される。
【0008】
[フレームオフセット番号の割り当て]
割り当て先頭の開始フレームオフセット番号と、割り当てが終わる終了フレームオフセット番号により割り当てフレームが指示される。
図5に示す無線システムの構成において、
図6に示した無線フレーム構成例の場合、各無線区間のスケジューリングマップは以下のようになる。
【0009】
PBS-MS1間(伝送路1):
開始フレームオフセット番号:0
終了フレームオフセット番号:1
MS1-MS2間(伝送路2):
開始フレームオフセット番号:2
終了フレームオフセット番号:3
MS2-MS3間(伝送路3):
開始フレームオフセット番号:4
終了フレームオフセット番号:5
【0010】
[4台の多段中継の無線伝送システム:
図8]
図8に、移動局無線機(MS)が4台構成による多段中継による無線伝送システムの構成例を示す。
図8に示す無線伝送システムは、制御用スケジューラ10と、可搬型基地局無線機(PBS)1-2と、移動局無線機(MS1)1-3と、移動局無線機(MS2)1-4と、移動局無線機(MS3)1-5と、移動局無線機(MS4)1-6とから構成される。
【0011】
図8に示す無線システム構成における、上位の無線局(無線機)から下位の無線局へデータを送信するときの無線フレームとデータの流れを
図9に、下位の無線局から上位の無線局へデータを送信するときの無線フレームとデータの流れを
図10に示す。
【0012】
[下り送信の流れ:
図9]
図9に示すように、上位の無線局から下位の無線局へデータを送信する場合、割り当てられた無線フレームを使用してデータを送信するので、基本的には1繰返し周期にデータを送受信することが可能である。
【0013】
図9の場合、データ入力からデータ出力までの期間はおよそ1から2繰返し周期となる。
尚、
図9の一番上のデータ入力の矢印は、繰返し周期2の下りフレームで送信可能なタイミングの範囲を示している。また、
図9の一番下のデータ出力の点線の矢印は、入力データが下り2無線フレーム区間にまたがるようなデータサイズの場合を示している。
【0014】
[上り送信の流れ:
図10]
一方、
図10に示すように、下位の無線局から上位の無線局へデータを送信する場合、1つ上の無線局のデータを送信する度に1繰返し周期待たないと送信できない。
このため、中継無線局の装置が増える毎に上位方向へのデータの送受信時間は1繰返し周期分増加していくことになる。
【0015】
図10の場合、データ入力からデータ出力までの期間はおよそ2から3繰返し周期となる。
また、
図10からも分かるように、中継段数が大きくなる程、データ入力からデータ出力までの期間は増加していく。例えば、無線機が1台増え6台構成(5台の多段中継)となったとき、データ入力からデータ出力までの期間は5繰返し周期となる。
【0016】
尚、
図10の一番下のデータ入力の矢印は、繰返し周期1の上りフレームで送信可能なタイミングの範囲を示している。また、
図10の一番上のデータ出力の点線の矢印は、入力データが上り2無線フレーム区間にまたがるようなデータサイズの場合を示している。
【0017】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2019-115014号公報「無線通信システム及び無線通信方法」(特許文献1)がある。
特許文献1には、無線中継時のホップ数の上限解除、無線伝送レートの低下、無線装置同士の干渉回避を実現する無線通信システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、従来の無線伝送システムにおける中継方式では、中継段数が増えて伝送路が増えると、下位の無線機から上位の無線機への遅延時間が増大するという問題点があった。
【0020】
尚、特許文献1には、中継段数が増えて伝送路が増えた場合に、下位の無線機から上位の無線機への遅延時間を減らすことについての記載がない。
【0021】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する場合に、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できる無線伝送システム及び無線伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送システムであって、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングすることを特徴とする。
【0023】
本発明は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送システムであって、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路にはN番目とN+1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路にはN-1番目とN+2番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を広くするよう、前記無線フレームの割り当てをスケジューリングすることを特徴とする。
【0024】
本発明は、上記無線伝送システムにおいて、前記スケジューリングを決めるスケジューリングマップを下りフレーム内の下り制御領域で配信する上位の制御用スケジューラを有することを特徴とする。
【0025】
本発明は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送方法であって、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くすることを特徴とする。
【0026】
本発明は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送方法であって、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路にはN番目とN+1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路にはN-1番目とN+2番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を広くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送システムであって、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングするものとしているので、繰返し周期内の前半では下り方向の伝送が効率的に行われ、繰返し周期内の後半では上り方向の伝送が効率的に行われることになり、下り方向と上り方向のデータ伝送の遅延時間が同じとなり、特に、上り方向の伝送におけるフレーム待ち時間が大幅に短縮されて、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できる効果がある。
【0028】
本発明によれば、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する無線伝送システムであって、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路にはN番目とN+1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、2番目の伝送路にはN-1番目とN+2番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を広くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングするものとしているので、繰返し周期内の前半では上り方向の伝送が効率的に行われ、繰返し周期内の後半では下り方向の伝送が効率的に行われることになり、下り方向と上り方向のデータ伝送の遅延時間が同じとなるため、特に、上り方向の伝送におけるフレーム待ち時間が大幅に短縮されて、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本システムにおける無線機の構成ブロック図である。
【
図2】本システムにおける無線フレーム構成例を示す説明図である。
【
図3】本無線フレーム割当方式における下り送信の流れを示す説明図である。
【
図4】本無線フレーム割当方式における上り送信の流れを示す説明図である。
【
図5】多段中継による無線伝送システムの構成例を示す概略図である。
【
図6】蓄積型時分割制御方式による多段中継の無線フレーム構成例を示す説明図である。
【
図7】1無線フレーム区間の無線フレーム構成を示す説明図である。
【
図8】4台の多段中継の無線伝送システムの構成例を示す概略図である。
【
図9】蓄積型時分割制御方式における下り送信の流れを示す説明図である。
【
図10】蓄積型時分割制御方式における上り送信の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線伝送システム(本システム)は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送するもので、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングするものとしているので、繰返し周期内の前半では下り方向の伝送が効率的に行われ、繰返し周期内の後半では上り方向の伝送が効率的に行われることになり、下り方向と上り方向のデータ伝送の遅延時間が同じとなり、特に、上り方向の伝送におけるフレーム待ち時間が大幅に短縮されて、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できるものである。
【0031】
また、本発明の実施の形態に係る別の無線伝送システム(別のシステム)は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送するもので、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路にはN番目とN+1番目のフレームに、2番目の伝送路にはN-1番目とN+2番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を広くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングするものとしているので、繰返し周期内の前半では上り方向の伝送が効率的に行われ、繰返し周期内の後半では下り方向の伝送が効率的に行われることになり、下り方向と上り方向のデータ伝送の遅延時間が同じとなるため、特に、上り方向の伝送におけるフレーム待ち時間が大幅に短縮されて、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できるものである。
【0032】
本システム及び別のシステムは、構成としては
図5又は
図8に示した従来のシステムと同様であるが、相違するのは、無線フレームの時分割の割り当てスケジュールが従来のものと異なっている。
従って、本システム及び別のシステムでは、ハードウェアの変更なしに、ソフトウェア及び無線フレームの割り当てのスケジューリングマップ等の変更で実現できるものである。
【0033】
[本無線機1:
図1]
本システムにおける無線機(本無線機)について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本システムにおける無線機の構成ブロック図である。
本無線機1は、
図1に示すように、アンテナ11と、無線通信部12と、制御部13と、スケジューリングマップ記憶部14とを基本的に有している。
【0034】
本無線機1におけるアンテナ11は、無線信号を送受信する。
本無線機1が中継用の無線機である場合には、上位の無線機からの下り信号と下位の無線機からの上り信号を受信し、上位の無線機への上り信号と下位の無線機への下り信号を送信する。
【0035】
無線通信部12は、後述するスケジューリングマップに従い受信信号をアンテナ11から入力し、入力された無線信号を中間周波数(IF:Intermediate Frequency)の信号に変更し、受信の信号処理を行う。
また、無線通信部12は、後述するスケジューリングマップに従い送信信号をIF信号から無線信号に変換して送信の信号処理を行う。
【0036】
制御部13は、スケジューリングマップ記憶部14に記憶されたスケジューリングマップに基づいて無線通信部12に送受信の指示を出力する。
尚、無線フレーム内の下りサブフレームの下り制御領域に新たなスケジューリングマップの情報が含まれている場合、当該新たなスケジューリングマップを取得してスケジューリングマップ記憶部14に記憶する。但し、スケジューリングマップの更新は、無線機の再起動時とする。運用途中でのスケジューリングマップの更新は、無線フレームの送受信が不能になる恐れがあるので、運用中の更新は行わないものとする。
【0037】
スケジューリングマップ記憶部14は、繰返し周期における各伝送路への無線フレームの割り当てを規定するスケジューリングマップを記憶するもので、全ての無線機に共通して記憶されるものである。
各無線機は、自機の識別番号を認識し、上り下りの伝送路を認識した上で、スケジューリングマップを基にして送受信を行うものである。
スケジューリングマップの具体的内容については後述する。
【0038】
[本システムの無線フレーム割り当て:
図2]
本システムにおいて、
図6に示した従来の無線フレームの割り当て方法を
図2に示す特徴的な方法に変更するもので、制御用スケジューラ10でスケジューリングマップを変更し、その変更されたスケジューリングマップを上位の無線機から下位の無線機に伝達して、スケジューリングマップを更新し、更新されたスケジューリングマップに従って全無線機が動作することで実現される。
【0039】
この特徴的な無線フレームの割り当て方法について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本システムにおける無線フレーム構成例を示す説明図である。
スケジューリングマップで割り当てられた無線フレームを、繰返し周期内で、階層の上位から最初と最後から順次割り当てる。
【0040】
階層は、無線機(PBS)、無線機(MS1)、無線機(MS2)、無線機(MS3)の順に、レイヤ1(伝送路1:PBSとMS1との間)、レイヤ2(伝送路2:MS1とMS2との間)、レイヤ3(伝送路3:MS2とMS3との間)とする。
【0041】
図2に示すように無線フレームを割り当てる場合、
レイヤ1はPBSにより割り当てフレームオフセット番号を0,5とし、
レイヤ2はMS1により割り当てフレームオフセット番号を1,4とし、
レイヤ3はMS2により割り当てフレームオフセット番号を2,3とそれぞれ割り当てる。つまり、無線フレームの割り当てを「V」字形状としている。尚、本システムにおける無線フレームの割り当てを「本無線フレーム割当方式」と称することがある。
【0042】
具体的には、本システムでは、各無線機間のN個(
図2では3個)の伝送路には、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、繰返し周期内で2つ各伝送路に時分割で割り当てられ、N個(3個)の伝送路では繰返し周期で全体に2N個(6個)の無線フレームが割当てられるものであり、上位から下位への順に、1番目の伝送路(伝送路1)には1番目と2N番目(最後)のフレームに、2番目の伝送路(伝送路2)には2番目と2N-1番目(最後から2番目)のフレームに、3番目の伝送路(伝送路3)には3番目と2N-2番目(最後から3番目)のフレームに無線フレームが割り当てられる。
つまり、伝送路が下位になる程に繰返し周期内で2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングしている。
【0043】
[下り方向/上り方向のデータの流れ:
図3,4]
本無線フレーム割当方式について
図3,4を参照しながら説明する。
図3は、本無線フレーム割当方式における下り送信の流れを示す説明図であり、
図4は、本無線フレーム割当方式における上り送信の流れを示す説明図である。尚、
図3,4は、
図8に示す無線システム構成に基づいている。
【0044】
[下り方向のデータの流れ:
図3]
まず、下り方向のデータの流れについて説明する。
図3に示すように、無線機(PBS)に入力された下りデータは、伝送路1の繰返し周期1または繰返し周期2の下りサブフレームに格納される。
繰返し周期2の下りサブフレームは、下りデータサイズが2無線フレームにまたがる場合に使用される。
【0045】
繰返し周期1の最終無線フレームに格納された下りデータは、繰返し周期2前半と、繰返し周期3の前半の期間内にデータ出力される。
図3の下り方向の場合、データ入力からデータ出力までの期間は、0.5から2.5繰返し周期となる。
【0046】
[上り方向のデータの流れ:
図4]
次に、上り方向のデータの流れについて説明する。
図4に示すように、無線機(MS4)に入力された上りデータは、繰返し周期2の上りサブフレームに格納される、
上りデータサイズが2無線フレーム区間にまたがる場合は1番目の上りサブフレームに加えて2番目の上りサブフレームにも格納される。
【0047】
最初の上りサブフレームに格納された上りデータは、繰返し周期2期間内にデータ出力される。
図4の上り方向の場合、データ入力からデータ出力までの期間は、0.5から2.5繰返し周期となる。
【0048】
本無線フレーム割当方式によれば、下り上りともに最小で0.5繰返し周期、最大で2.5繰返し周期となり、下りと上りで遅延時間がほぼ同じになると共に、特に、上りの遅延時間を短縮することができる。
【0049】
無線システムの構成が大きければ大きい程、つまり、中継の無線機が多くなればなる程、本システムによる上りの遅延時間短縮の効果も大きくなる。
本システムにおける無線フレームの入れ替えは、従来の無線フレームの割り当てに影響を与えず、上位無線局と下位無線局との間で行うことで、無線システムの大きな変更を伴わず実現することができる。
【0050】
[割り当てフレームオフセット番号の算出]
具体的には、各レイヤの割り当てフレームオフセット番号は以下の式で算出できる。
[式1]
前半のフレームオフセット番号=各レイヤの開始フレームオフセット番号÷1無線区間の割り当てフレーム数
【0051】
[式2]
後半のフレームオフセット番号=繰返し周期-(終了フレームオフセット番号+1)÷1無線区間の割り当てフレーム数
【0052】
図2の無線フレーム構成の場合、各無線局間に割り当てられるフレーム数は2無線フレームであり、繰返し周期は6無線フレームであるので、上記式1,2に基き、各レイヤでの割り当てフレームオフセット番号は、以下の通りとなる。
【0053】
[レイヤ1]
前半のフレームオフセット番号=0÷2=0
後半のフレームオフセット番号=6-(1+1)÷2=5
[レイヤ2]
前半のフレームオフセット番号=2÷2=1
後半のフレームオフセット番号=6-(3+1)÷2=4
[レイヤ2]
前半のフレームオフセット番号=4÷2=2
後半のフレームオフセット番号=6-(5+1)÷2=3
【0054】
[別のシステム]
次に、本システムでは無線フレームの割り当てを「V」字形状で行っているが、逆「V」字形状であってもよい。
具体的には、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路にはN番目とN+1番目のフレームに、2番目の伝送路にはN-1番目とN+2番目のフレームに無線フレームに、3番目の伝送路にはN-2番目とN+3番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を広くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングするものとしているので、繰返し周期内の前半では上り方向の伝送が効率的に行われ、繰返し周期内の後半では下り方向の伝送が効率的に行われることになり、下り方向と上り方向のデータ伝送の遅延時間が同じとなるため、特に、上り方向の伝送におけるフレーム待ち時間が大幅に短縮されて、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できるものである。
【0055】
本システム及び別のシステムによれば、無線システムのハードウェア構成を変更することなく、スケジューリングマップの更新だけで、繰返し周期内の無線フレームの割り当てを「V」字形状又は逆「V」字形状とすることができ、上りの遅延時間を短縮できるものである。
【0056】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送するもので、各無線機間のN個の伝送路について、下りフレームと上りフレームを有する無線フレームが、2N個のフレームから成る繰返し周期内で、それぞれ2つのフレームに割り当てられ、繰返し周期内で、上位から下位への順に、1番目の伝送路には1番目と2N番目のフレームに、2番目の伝送路には2番目と2N-1番目のフレームに無線フレームが割り当てられ、下位の伝送路になる程に2つの無線フレームの割り当て間隔を狭くするよう、無線フレームの割り当てをスケジューリングするものとしているので、繰返し周期内の前半では下り方向の伝送が効率的に行われ、繰返し周期内の後半では上り方向の伝送が効率的に行われることになり、下り方向と上り方向のデータ伝送の遅延時間が同じとなり、特に、上り方向の伝送におけるフレーム待ち時間が大幅に短縮されて、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、上位の無線機と下位の無線機との間を複数の中継の無線機を経由してデータを伝送する場合に、下位の無線機から上位の無線機への上りの遅延時間を短縮できる無線伝送システム及び無線伝送方法に好適である。
【符号の説明】
【0058】
1…本無線機、 1-2…無線機(PBS)、 1-3…無線機(MS1)、 1-4…無線機(MS2)、 1-5…無線機(MS3)、 1-6…無線機(MS4)、 10…制御用スケジューラ、 11…アンテナ、 12…無線通信部、 13…制御部、 14…スケジューリングマップ記憶部