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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147486
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】高架下足場の製造方法および送出具
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20220929BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D22/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048743
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591211917
【氏名又は名称】川田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智史
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059EE10
2D059GG39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作業性の良い高架下足場を設置する製造方法およびその製造方法に使用する送出具の提供
【解決手段】次の工程を含む高架下足場の製造方法
(1)横梁送出具を、設置済足場に固定する工程
(2)横梁送出具は、スライド送出部を備えており、スライド送出部の先端側に延設しようとする横梁を吊す工程
(3)横梁は、設置済足場上から床材の先端で押して送り出し、床材の先端側を支点として下方に向けて回転した床材の後端を設置済足場の横梁に設置する工程
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含む高架下足場の製造方法
(1) 横梁送出具を、設置済足場に固定する工程
(2) 横梁送出具は、スライド送出部を備えており、スライド送出部の先端側に延設しようとする横梁を吊す工程
(3) 横梁は、設置済足場上から床材の先端で押して送り出し、床材の先端側を支点として下方に向けて回転した床材の後端を設置済足場の横梁に設置する工程
【請求項2】
本体部とスライド送出部を備え、
本体部は、設置済足場に固定するものであり、
スライド送出部は、本体部に保持されており、先端側に延設しようとする横梁の吊り下げ部を有している
高架下足場の横梁送出具。
【請求項3】
横梁保持部と床材保持部とを備え、
横梁保持部は、横梁に配置されており、
床材保持部は、床材の先端を保持し、床材の先端側を支点として床材の後端を下方に向けて回転し設置済足場の横梁に設置する
高架下足場の床材設置治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁および鉄道や高速道路などの高架の下に取り付ける足場に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁および鉄道や高速道路などの高架(以下、これらを併せて「高架」という。)を点検したり補修したりする作業のために、高架下に一時的な仮設足場が取り付けられることがある。また、高架下足場は、経年劣化した高架を覆うことができ、高架から万が一コンクリート片が落下しても、下を通る車や歩行者に当たることを防ぐことができ、かつ、点検や補修がいつでもできるように恒久足場として設置する需要も高まってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
仮設足場であれ恒久足場であれ、高架下足場は、交通を妨げないように下に車などが通ることのできる空間を空けて高架下を覆うように設置される。これまでは、高所作業車が使われることがあったが、交通を一時的に遮断する必要があるなど不都合があった。さらに、高所作業車が入ることができない場所では、地表または水面に浮かべた台船から足場を組んで高架下足場を設置しており、作業性が悪かった。
本発明は、作業性の良い高架下足場を設置する製造方法およびその製造方法に使用する送出具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様は、次の工程を含む高架下足場の製造方法(1) 横梁送出具を、設置済足場に固定する工程(2)横梁送出具は、スライド送出部を備えており、スライド送出部の先端側に延設しようとする横梁を吊す工程(3)横梁は、設置済足場上から床材の先端で押して送り出し、床材の先端側を支点として下方に向けて回転した床材の後端を設置済足場の横梁に設置する工程とすることで、課題を解決した。
【0005】
また、本発明の他の態様は、本体部とスライド送出部を備え、本体部は、設置済足場に固定するものであり、スライド送出部は、本体部に保持されており、先端側に延設しようとする横梁の吊り下げ部を有している高架下足場の横梁送出具とすることで、課題を解決した。
【0006】
さらに、本発明の他の態様は、横梁保持部と床材保持部とを備え、横梁保持部は、横梁に配置されており、床材保持部は、床材の先端を保持し、床材の先端側を支点として床材の後端を下方に向けて回転し設置済足場の横梁に設置する高架下足場の床材設置治具とすることで、課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高架下足場を簡単に設置でき作業性の向上が図れるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の足場の概略図(A) 高架の断面図(B) 高架の側面図
図2】(A)横梁間に設置される裏面パネルと床材の前後方向(足場を延設しようとする方向)の断面図(B) 裏面パネルの横方向の断面図
図3】横梁送出具の全体斜視図
図4】本体部とスライド送出部の構造説明図(A) 横梁送出具の側面図(B) 図4(A)のA-A間の断面図(C) 図4(A)のB-B間の断面図
図5】横梁保持部を横梁に固定具を用いて取り付ける工程図
図6】床材保持部と床材設置治具の説明図(A) 床材保持部の斜視図(B) 床材設置治具の組み立て工程を示す説明図
図7】床材設置治具の動作の説明図(A)裏面パネル(床材)が立った状態と回転ストッパの位置を説明する斜視図(B)裏面パネル(床材)がやや倒れた状態と回転ストッパの位置を説明する斜視図(C)裏面パネル(床材)が設置された状態と回転ストッパの位置を説明する斜視図(D)図7(A)の状態から図7(C)の状態となるときの裏面パネル(床材)の回転位置を表す説明図
図8】実施例1の工程1~工程4の説明図
図9】実施例1の工程5~工程7の説明図
図10】実施例1の工程8および工程9の説明図
図11】実施例1の工程10の説明
【0009】
(実施例1)
図1は、実施例1の足場7の概略図である。図1(A)は高架の断面図であり、図1(B)は高架の側面図である。路面52の下には、路面52を支える鈑桁(高架主部材)51などの構造材が設けられている。最初の足場7は、従来の技術のとおり、地上から地上足場4を組み上げて高架5の下に設置される。足場7は、横梁(H形鋼)75、支持材77と床材74で構成され、必要に応じてルーバー76が設けられる。横梁(H形鋼)75は、延設方向に間隔を置いて設置される。横梁(H形鋼)75は、鈑桁(高架主部材)51や箱桁(図示せず)などの強固な構造材に支持材77を介して固定され、足場7を支える。床は、隣接する横梁(H形鋼)75の間に取り付けられる。床は、実施例1では、裏面パネル73と床材74の2部材で構成されているが、いずれか一方の部材で構成されていてもよい。(詳しくは、後述する)
【0010】
足場7の延設工程は、大きく分けて、新たな横梁(H形鋼)75を延設方向に設置する工程、新たに設置した横梁(H形鋼)75を、支持材77を用いて鈑桁(高架主部材)51に取り付ける工程、次いで、床材74を設置済足場71の横梁(H形鋼)75と延設した新たな横梁(H形鋼)75との間に取り付ける工程から成る。
この足場7の延設工程を繰り返すことで、次々と足場7が延設される。この工程中、外光を取り込み、かつ、雨風が吹き込むことを防ぐルーバー76を設置する工程が入ることもある。
【0011】
[床の構造]
設置済足場71から足場7を延設しようとする方向を軸とした方向を以下、「前後方向」といい、延設側を「前」といい、「設置済足場71」側を「後」という。また、足場7を延設しようとする方向と水平に直交する方向、すなわち、高架の幅方向を以下「横方向」という。
図2(A)は、横梁(H形鋼)75間に設置される裏面パネル73と床材74の前後方向の断面図であり、図2(B)は裏面パネル73の横方向の断面図である。裏面パネル73は、床材74を支えるとともに、床材74の裏面を隠し意匠的にすっきりとした外観を与える部材である。
図2(A)に示されている通り、設置済足場71の横梁(H形鋼)75と延設した横梁(H形鋼)75は、全く同じH形鋼であり、前述したように支持材77を介して鈑桁(高架主部材)51に支持されている。裏面パネル73は、L字形の裏面パネル押さえ材731を用いて横梁(H形鋼)のウエブ754と締結されることで、横梁(H形鋼)75に固定される。
裏面パネル73の構造は図2(B)に示されている通り、ボックス型の断面形状をした長尺体である。裏面パネル73は、嵌合部735を有しており隣接する裏面パネル73が次々と連結される。そして、裏面パネル73は、設置済足場71の横梁(H形鋼)75と延設した横梁(H形鋼)75の間に並列してはめ込まれ、横梁(H形鋼)75と締結される。
【0012】
[床のバリエーション]
必要に応じ裏面パネル73の上に床材74が設けられる。仮設足場のように短期間で撤去する足場7では、撤去作業性を向上させるため床材74を用いないこともある。そのため、裏面パネル73を床として使用できるように表面には滑り止め736が設けられている。また、高架下に人が入れないような場所においては、外観を考慮する必要がないため、裏面パネル73を用いず床材74単独で床を構築してもよい。
【0013】
[横梁送出具の全体構造]
図3は、横梁送出具1の全体斜視図である。
横梁送出具1は、本体部11とスライド送出部14を備えている。
図3では、全く同じスライド送出部14が左右に二つ設置されている。横梁(H形鋼)75は、落下するおそれがあるため、一つの横梁(H形鋼)75に対して、二つ以上の横梁送出具1が用いられ、複数の箇所で支えられる。そして、各横梁送出具1から略同じ速度で延設位置まで横梁(H形鋼)75が送り出される。
また、本体部11は、一つのスライド送出部14に対して、前後方向に二つ設置されている。
【0014】
(本体部)
本体部11は、スライド送出部14を保持する役割を果たす。本体部11は、横梁(H形鋼)75を送り出すときに荷重がかかるため、設置済足場71の中でも支持力のある横梁(H形鋼)75に固定されている。固定部111は、本体部11の下方に位置し、設置済足場71の横梁(H形鋼)75に取り外し可能に締結具等で固定される。実施例1では、本体部11を設置済足場71の横梁(H形鋼)75に固定したが、設置済足場71側に存在する支持力のある部材であれば横梁(H形鋼)75でなくてもよい。たとえば、設置済足場71が、高架5の脚部53に近く本体部11を固定する横梁(H形鋼)75がないときなどは、鈑桁(高架主部材)51に補助材を介して取り付けてもよいし、高架5の脚部53に取り付けることもある。多種多様な高架下の状況に応じて、本体部11の固定対象は適宜変更できる。
また、実施例1の本体部11は、一つのスライド送出部14に対して、前後方向に二つ設置されている。これは、設置済足場71から延設方向に横梁(H形鋼)75が送り出されたとき、スライド送出部14にかかる荷重を分散して受けるためである。設置済足場71は、狭いことが多いので本体部11の数は2つが好ましい。なお、本体部11は最低一つ設けられていればよく、また、三つ以上とすることを妨げるものではない。
いずれにせよ、本体部11は、設置済足場71の何らかの部材に固定するものである。
【0015】
一つの横梁送出具1に対し前後に2つある本体部11は、前の本体部11と後の本体部11では、機能が若干異なる。後ろの本体部11は、主としてレール材141を保持する役割を果たす。前の本体部11は、後の本体部11と異なり、設置済足場71から突出する横梁仮置き部112を有している。横梁仮置き部112は、延設しようとする横梁(H形鋼)75を仮置きするものである。横梁(H形鋼)75は、横梁取付部1422を介して吊り下げ部1423に接続され、スライド吊り具142から吊り下げられて送りだされる。横梁仮置き部112に仮置かれた横梁(H形鋼)75は、仮置かれた状態で横梁取付部1422を介して吊り下げ部1423と接続する作業が行われる。横梁仮置き部112があることで、横梁(H形鋼)75と吊り下げ部1423の接続作業は、重たい横梁(H形鋼)75を別途の手段により支えることなく行えるようになる。横梁仮置き部112は、作業性を著しく高める作用がある。
このように、前の本体部11は、レール材141を保持する役割と横梁(H形鋼)75と吊り下げ部1423の接続作業を行うスペース(横梁仮置き部112)を提供する役割を果たす。
【0016】
(スライド送出部・・・本体部に対するレール材の保持構造)
図4は本体部11とスライド送出部14の構造説明図であり、図4(A)は、横梁送出具1の側面図であり、図4(B)は図4(A)のA-A間の断面図であり、本体部11とレール材141の固定構造の断面を図示している。
本体部11は、設置済足場71の横梁(H形鋼)75の上に置かれ、固定部111を介して横梁(H形鋼)75に締結される。
そして、スライド送出部14のレール材141は、本体部11の上部に配設され、本体部11に保持される。レール材141は長尺であり、本体部11に対するレール材141の保持は、レール材保持具1411を用いて行われる。スライド送出部14のレール材141は、本体部11の上部に配設され、そして、取り付け前の一対のレール材保持具1411は、図4(B)に記した矢印の方向からレール材141を両側から挟むように取り付けられる。挟んだ後、一対のレール材保持具1411の上端は、固定ボルト1412で締結され、他方、一対のレール材保持具1411の下端は、本体部11の上部に設けられた締結孔(図示せず)と位置合わせされ、固定ボルト1412で固定される。
このように、本体部11に対してレール材141が動かないように保持される。前の本体部11と後の本体部11に対するレール材141の保持構造は、全く同じである。
【0017】
(スライド送出部・・・スライド吊り具の構造)
図4(A)は、横梁送出具1の側面図である。図4(C)は図4(A)のB-B間の断面図であり、スライド吊り具142の断面を図示している。スライド送出部14のスライド吊り具142は、ローラ1421と吊り下げ部1423と横梁取付部1422を少なくとも備える。ローラ1421は、上下に二つあり、上のローラ1421と下のローラ1421で、レール材141を挟んでいる。そのため、スライド吊り具142は、レール材141の上を軽い力で動けるようになっている。スライド吊り具142の吊り下げ部1423は、横梁(H形鋼)75を吊り下げるものであり、スライド吊り具142の下方にある。吊り下げ部1423は、自由に曲がるチェーンやワイヤーが好ましいが、棒材等の曲がらないものを使用することを妨げるものではない。
以上のように、スライド送出部14は、本体部11に保持されており、スライド送出部14の先端部側、すなわち、レール材141の先端部側に、延設しようとする横梁(H形鋼)75の吊り下げ部1423を有している。
横梁取付部1422は、吊り下げ部1423の下端に取り付けられており、横梁(H形鋼)75に着脱自在に取り付けられるものである。横梁取付部1422は、着脱の容易性を重視すればブルマンクランプ(図示せず)などを採用することができ、また、横梁(H形鋼)75を確実に保持することを重視すればボルトで締結するなどを採用することもできる。
以上のように、実施例1のスライド送出部14のレール材141は、レール材保持具1411を介して本体部11に保持されている。
【0018】
スライド送出部14の頂部には、綱取付部143(図4(A)参照)が設けられていてもよい。綱取付部143に惜しみ綱1431(図9参照)の一端を取り付け、他端を設置済足場71側にして、作業者が惜しみ綱を引っ張っておけば、横梁(H形鋼)75を送り出している最中に急速にスライド送出部14が前(延設方向)に送り出されることを防止できる。特に、高架5が延設方向に向かって下がるように傾斜しているときなどは、スライド送出部14がレール材141の上をすべるように動く可能性がある。作業者は、設置済足場71から惜しみ綱を徐々に送り出しながらゆっくりとスライド送出部14を動かすことが出来る。また、惜しみ綱は、何らのトラブルが起きたときに、スライド送出部14を引き戻すときに使うこともできる。
ストッパ1413は、レール材141の先端部に取り付けられており、スライド吊り具142がレール材141を超えて落ちることを防止するとともに、ストッパ1413の位置を横梁(H形鋼)75の延設予定位置に合わせておけば、延設予定位置でスライド吊り具142が止まり、作業性が高まる。
【0019】
(床材設置治具)
床材設置治具2は、横梁保持部21と床材保持部23を少なくとも備えている。横梁保持部21と床材保持部23について順に説明する。
(横梁保持部)
図5は、横梁保持部21を横梁(H形鋼)75に固定具22を用いて取り付ける工程図である。
横梁保持部21は、下部にコの字状に曲がったフランジ係合部211を備えている。延設しようとする横梁(H形鋼)75は、H形鋼でありフランジ751を上と下に向けてエの字状に置かれている。フランジ係合部211は、横梁(H形鋼)75(H形鋼)の上のフランジ751に嵌め込まれ、横梁保持部21がフランジ751に嵌合される。
固定具22は、ブルマンクランプであり、横梁保持部21の上面とフランジ751の下面を挟み込むことで、横梁保持部21を横梁(H形鋼)75に固定する。
以上の部材により、横梁保持部21は、横梁(H形鋼)75に配置され固定される。
横梁保持部21は、回転ストッパ呑み込み部213と回転軸受け部212を有しており、これらの機能は後述する。
【0020】
(床材保持部)
図6は床材保持部23と床材設置治具2の説明図であり、図6(A)は床材保持部23の斜視図である。
床材保持部23は、主な機能部材として床材固定面部234、回転軸231、小径の軸状の回転ストッパ232を備えている。
床材固定面部234は、裏面パネル(床材)73の先端733に配設され、床材締結具233で床材保持部23と裏面パネル(床材)73の先端733を固定するものである。
また、回転軸231は、ボルトとナットで取り付けられている。また、回転ストッパ232が設けられている。これらの部材の機能については後述する。
図6(B)は、床材設置治具2の組み立て工程を示す説明図である。裏面パネル(床材)73を取り付けた床材保持部23は、横梁(H形鋼)75に取り付けられた横梁保持部21と組み立てられる。床材設置治具2の組み立ては、床材保持部23の回転軸231を横梁保持部21の回転軸受け部212に入れて嵌合することでなされる。
図7は床材設置治具2の動作の説明図である。詳しくは、後述の足場7の延設工程で説明するが、裏面パネル(床材)73の先端733を保持する床材保持部23は、図7(A)のように裏面パネル(床材)73が立った状態で、横梁保持部21の回転軸受け部212(図6(B)参照)に嵌め込まれる。
【0021】
(床材設置治具の動作)
床材保持部23は、裏面パネル3の先端733を保持しており、そして横梁保持部21の回転軸受け部212に嵌め込んだ床材保持部23の回転軸231は、裏面パネル(床材)73の先端733側を支点として裏面パネル(床材)73の後端734を下に向けて回転するものである。
図7(B)のように、裏面パネル(床材)73がやや倒れた状態に回転したとき、回転ストッパ232は、裏面パネル(床材)73の回転に合わせて回転する。
さらに、図7(C)のように、裏面パネル(床材)73が回転し終わる(水平になる)と、回転ストッパ232は、横梁保持部21に設けられた回転ストッパ呑み込み部213に呑み込まれ当接しそれ以上回転しなくなる。
詳しくは、後述の足場7の延設工程で説明するが、図7(D)のように、裏面パネル(床材)73の先端733側を支点(回転軸231)として回転することで、裏面パネル(床材)73の先端733は、延設しようとする横梁(H形鋼)75の下のフランジ751に当接する。他方、裏面パネル(床材)73の後端734は、下方に向けて回転し設置済足場71側の横梁(H形鋼)75の下のフランジ751に、嵌るように設置される。
【0022】
(足場の延設工程)
地上足場4を組むことなく、足場7を延設する高架下足場の製造方法を説明する。
【0023】
(工程1)
図8の工程1は、横梁送出具1の本体部11を固定する工程である。本体部11は二つあり、設置済足場71の最前の横梁(H形鋼)75とその後ろに位置する横梁(H形鋼)75にそれぞれ固定される。最前の横梁(H形鋼)75に設置される本体部11は、横梁仮置き部112を備えている。
図示はされていないが、横梁送出具1は、設置済足場71の左右方向に複数設置される(図3参照)ため、設置済足場71の上には、複数の横梁送出具1の本体部11が固定される。
【0024】
(工程2)
図8の工程2は、横梁送出具1のスライド送出部14の固定を行う工程である。スライド送出部14のレール材141が本体部11の上端に置かれ、レール材141は、表と裏から挟むように二枚のレール材保持具1411を用いて本体部11に保持される。本体部11とレール材141の取り付けは、設置済足場71の最前の本体部11とその後ろの本体部11共に行われる。具体的な取り付け構造は図4(B)で説明したとおりである。
【0025】
(工程3)
図8の工程3は、延設しようとする横梁(H形鋼)75を横梁仮置き部112に載置する工程と、載置した横梁(H形鋼)75とスライド吊り具142を、吊り下げ部1423を介して連結する工程である。横梁(H形鋼)75の上面には、横梁取付部1422が取り付けられ、横梁(H形鋼)75は、吊り下げ部1423(実施例1ではチェーン)でスライド吊り具142と連結される。
【0026】
(工程4)
図8の工程4は、床材設置治具2の横梁保持部21を延設しようとする横梁(H形鋼)75に配置し、固定する工程である。横梁保持部21は、横梁(H形鋼)75の上面(上のフランジ751の上面)に配置され、固定具22で横梁(H形鋼)75に固定される。横梁保持部21は、配置関係図のように横梁取付部1422と左右方向にずれて配置される。
【0027】
図9の工程5は、横梁仮置き部112から延設しようとする横梁(H形鋼)75を降ろし、スライド送出部14の先端側に横梁(H形鋼)75を吊るす工程である。横梁(H形鋼)75は、吊り下げ部1423で吊り下げられる。惜しみ綱1431は、スライド吊り具142の上端に設けられた綱取付部143に取り付けられる。惜しみ綱1431は、スライド吊り具142の動きを調節するためのものである。たとえば、スライド送出部14のレール材141が前に向かって下り勾配になっている場合、スライド吊り具142はレール材141の先端に向かって滑り出してしまう。吊り下げた横梁(H形鋼)75を安全に送り出すため、作業者は、惜しみ綱1431を使って不用意に動かないようにする。
【0028】
(工程6)
作業者は、裏面パネル(床材)73の先端733に床材保持部23を予め取り付けておき、工程6の準備をしておく。
図9の工程6は、床材設置治具2の床材保持部23を横梁保持部21に嵌め込む工程である。工程5で、横梁保持部21は、延設しようとする横梁(H形鋼)75の上面(上のフランジ751の上面)に固定されている。図9の工程6に図示するように、床材保持部23の回転軸231は、点線で図示された横梁保持部21の回転軸受け部212に嵌め込まれ、横梁保持部21と床材保持部23が、嵌め合わされることで、床材設置治具2となる。嵌め込み作業は、横梁保持部21の回転軸受け部212上部から床材保持部23の回転軸231を入れる必要があるため、床材保持部23が取り付けられた裏面パネル(床材)73はやや立った状態で行われる。
なお、工程6と工程5は、どちらを先に行ってもよい。
【0029】
(工程7)
図9の工程7は、延設しようとする横梁(H形鋼)75を送り出す工程である。
送り出しは工程6を終えて始まる。図9の工程6のように、裏面パネル(床材)73は当初かなり立ち上がった状態となっている。作業者は、設置済足場71上から裏面パネル(床材)73の後端734側を持ち、裏面パネル(床材)73を延設方向に送り出しながら、裏面パネル(床材)73の先端733側を支点として下方に向けて回転させる。裏面パネル(床材)73を回転させる角度は、横梁(H形鋼)75が送り出されるにつれて、徐々に水平になってゆく。
この時、複数の横梁送出具1が設置済足場71に設けられ同じ横梁(H形鋼)75を保持しているため、作業者達は各横梁送出具1を同じ速度で横梁(H形鋼)75を押し出すように調整する。必要に応じ各横梁送出具1を操作する作業者達は、特定の横梁送出具1だけが速く送られ横梁(H形鋼)75が斜めに送り出されることが無いように、また、安全な速度で送り出されるよう惜しみ綱1431を使って作業を調整する。このように、惜しみ綱1431は、安全の確保に役立つ。
【0030】
(工程8)
図10の工程8は、裏面パネル(床材)73の後端734を設置済足場71の最先端の横梁(H形鋼)75に設置する工程である。横梁(H形鋼)75を送り出すに従い、裏面パネル(床材)73は水平に近づいてゆく。やがてスライド吊り具142は、ストッパ1413に当たり停止し、横梁(H形鋼)75の送り出しは終了する。作業者は、設置済足場71最先端の横梁(H形鋼)75の下のフランジ751に裏面パネル(床材)73の後端734を載せ、図2(A)のように裏面パネル押さえ材731を用いて設置済足場71の横梁(H形鋼)に締結し固定する。裏面パネル(床材)73は、その先端側が床材設置治具2で固定されているので、先端733と後端734が固定され裏面パネル(床材)73の上を作業者が安全に歩けるようになる。
なお、実施例1では、ストッパ1413は、設置済足場71の最先端の横梁(H形鋼)75からストッパ1413までの長さが、裏面パネル(床材)73の長さと同じになるように取り付けられている。そのため、回転した裏面パネル(床材)73は、スライド吊り具142で吊られた横梁(H形鋼)75と設置済足場71の最先端の横梁(H形鋼)75との間に、丁度嵌まり込む。
【0031】
(工程9)
図10の工程9は、延設された横梁(H形鋼)75と支持材77を用いて鈑桁(高架主部材)51に固定する工程である。作業者は、工程8で横梁(H形鋼)75に固定した裏面パネル(床材)73の上を歩き、スライド吊り具142で吊られた横梁(H形鋼)75を、支持材77を用いて鈑桁(高架主部材)51に固定する。
その後、操作者は、新たに設置された横梁(H形鋼)75に取り付けられた吊り下げ部1423と横梁取付部1422(図示せず)を外し、スライド吊り具142を横梁(H形鋼)75から取り外す。
また、作業者は、床材設置治具2の床材保持部23を裏面パネル(床材)73の先端733から撤去し、裏面パネル(床材)73を図2(A)のように裏面パネル押さえ材731を用いて延設した横梁(H形鋼)に締結し固定する。作業者は、床材設置治具2の横梁保持部21を撤去する。
【0032】
(工程10)
図11の工程10は、残りの裏面パネル(床材)73を取り付ける工程である。作業者は、設置済足場71の横梁(H形鋼)75と新たに設置された横梁(H形鋼)75の間に残りの裏面パネル(床材)73を取り付ける。
すべての裏面パネル(床材)73が完了したら、横梁送出具1(本体部11とスライド送出部14)を撤去する。
このようにして、地上足場4を組むことなく足場7を延設する高架下足場7の製造方法の延設工程は終了する。
延設された足場7は、設置済足場71となって、工程1に戻り、新たな足場7の製造方法の延設工程が始まる。
【0033】
以上、本発明に係る実施例について、図面を参照して詳述し、多様な変更可能な態様を説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施の態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0034】
また、前述の実施例および多様な態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 横梁送出具
11 本体部
111 固定部
112 横梁仮置き部
14 スライド送出部
141 レール材
1411 レール材保持具
1412 固定ボルト
1413 ストッパ
142 スライド吊り具
1421 ローラ
1422 横梁取付部
1423 吊り下げ部
143 綱取付部
1431 惜しみ綱
2 床材設置治具
21 横梁保持部
211 フランジ係合部
212 回転軸受け部
213 回転ストッパ呑み込み部
22 固定具
23 床材保持部
231 回転軸
232 回転ストッパ
233 床材締結具
234 床材固定面部
4 地上足場
5 高架
51 鈑桁(高架主部材)
52 路面
53 脚部
7 足場
71 設置済足場
73 裏面パネル
731 裏面パネル押さえ材
733 先端
734 後端
74 床材
75 横梁
751 フランジ
754 ウエブ
76 ルーバー
77 支持材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11