(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147488
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】衝立型間仕切り
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20220929BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20220929BHJP
E04B 2/72 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E04B2/74 561H
E04B2/74 551A
E04B1/86 C
E04B2/72 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048745
(22)【出願日】2021-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 幹之
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 寛史
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001FA07
2E001GA12
2E001GA42
2E001HD11
(57)【要約】
【課題】飛沫を防止すると同時に吸音効果を高めることができる衝立型間仕切りを提供する。
【解決手段】1枚の正面パネル板1aと、2枚の側面パネル板1bと、これらパネル板を支持する支柱3と、これらパネル板に配置した正面吸音材2a及び側面吸音材2bとを有している。正面パネル板の外側面に正面吸音材が着脱自在に配置され、2枚の側面パネルの外側に側面吸音材が着脱自在に配置されている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル板と、前記パネル板を支持する支柱と、前記パネル板の表面及び裏面の少なくとも一方に配置した吸音材と、を有し、
前記パネル板の板厚方向に開口した1又は2以上のネジ止め用の穴と、
前記支柱に形成され、支柱の軸方向に延びる1又は2以上の案内溝と、
前記案内溝に設けられ、当該案内溝に案内されて前記軸方向に移動可能な1又は2以上のナット部材と、
前記ネジ止め用の穴を介して前記ナット部材に螺合するネジと、
を備えていることを特徴とする衝立型間仕切り。
【請求項2】
前記吸音材は、前記パネル板に着脱自在に配置されていることを特徴とする請求項1記載の衝立型間仕切り。
【請求項3】
前記吸音材は、多孔質で低密度の材質からなり、厚さが5mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の衝立型間仕切り。
【請求項4】
前記吸音材は、前記パネル板と同一の外周形状に形成され、前記パネル板の全域に配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項5】
前記吸音材は、前記パネル板の外周形状より大きな外周形状に形成されており、前記パネル板の全域に配置されるとともに、前記パネル板の上下方向の少なくとも一方に延在していることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項6】
前記吸音材は、前記パネル板の外周形状より小さな外周形状に形成され、前記パネル板の一部に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項7】
前記パネル板は、光透過性の樹脂材料で形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項8】
前記吸音材を配置した複数の前記パネル板が、複数の前記支柱に支持されて平面視コ字形状に配置されており、複数の前記パネル板で囲まれた空間を上部から覆うように、複数の前記パネル板の上端に、前記吸音材で構成した天板が着脱自在に配置されていることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項9】
前記案内溝は、前記支柱の周方向に沿って複数箇所に形成され、案内溝毎に前記ナット部材が1又は2以上設けられていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項10】
前記案内溝は、周方向に沿って等間隔に形成されていることを特徴とする請求項9記載の衝立型間仕切り。
【請求項11】
前記案内溝は、支柱の周方向に沿って3箇所又は4箇所形成されていることを特徴とする請求項9又は10記載の衝立型間仕切り。
【請求項12】
前記パネル板は、左右両端部側にそれぞれ2以上の上記ネジ止め用の穴が開口していることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項13】
前記パネル板は、前記ネジ止め用の穴とは別に、左右方向途中位置にネジ止め用の第2の穴が開口していることを特徴とする請求項12に記載の衝立型間仕切り。
【請求項14】
前記案内溝は、当該案内溝で案内されるナット部材を、前記支柱の軸方向に沿って前記支柱の一端部から前記支柱の他端部まで案内可能な形状であって、前記ナット部材が案内方向に直交する方向に変位しても前記ナット部材が前記案内溝から抜けない構造とする左右一対の内向きフランジ部を有し、
前記ナット部材は、前記内向きフランジ部に接近・離隔可能な状態で前記案内溝に配置されると共に、前記内向きフランジ部に当接可能な部分がワッシャを構成する金属板からなり、
前記金属板には、前記左右一対の内向きフランジ部で形成される開口に嵌り込み可能な段差部が形成されていることを特徴とする請求項1から13の何れか1項に記載の衝立型間仕切り。
【請求項15】
前記案内溝は、前記支柱の軸方向端部に開口し、その開口に着脱可能に樹脂キャップが嵌め込まれ、その樹脂キャップによって、案内溝の軸方向端部からのナット部材の抜け落ちが防止されると共に、前記支柱の軸方向端部から案内溝に対しナット部材を出し入れすることで、案内溝に配置するナット部材の数を調整可能となっていることを特徴とする請求項14に記載の衝立型間仕切り。
【請求項16】
2以上のパネル板と、前記パネル板を支持するための2以上の支柱と、前記パネル板の表面及び裏面の少なくとも一方に配置した吸音材と、複数のネジと、を有し、
前記パネル板には、板厚方向に開口した1又は2以上のネジ止め用の穴が設けられ、
前記支柱は、支柱の軸方向に延びる1又は2以上の案内溝と、前記案内溝に設けられ、当該案内溝に案内されて前記軸方向に移動可能な1又は2以上のナット部材と、を備え、
前記ネジの軸部は、前記ネジ止め用の穴を介して前記ナット部材に螺合可能であることを特徴とする衝立型間仕切り用の構成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置床面に設けられる衝立型間仕切り、及び衝立型間仕切り用の構成物に関する。衝立型間仕切りは、例えば、オフィスや店舗で使用されるパネルなどの置き型パーテーションを構成する。
【背景技術】
【0002】
衝立型間仕切りとしては、例えば特許文献1に記載の衝立パネルがある。
この衝立パネルは、両側の支柱と上下の横桟とで形成された枠体内に透過性を有するパネル板を装着した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、オフィスや店舗に使用される飛沫防止パネルは、通常、設置床面とパネル板との間に上下方向の隙間を設けている。この隙間は、PCの配線や充電コード用、書類の受渡し等のスペースとして利用される。
また、衝立型間仕切りを、飛沫防止用途として使用する場合、座高や椅子の種類などによって、パネル板の高さが変更できることが好ましい。
しかしながら、従来の衝立型間仕切りでは、パネル板の高さの可変が困難で、一度、備え付けると、全体高さや隙間の高さは一定となる。すなわち、従来にあっては、想定外の上記隙間が必要になった場合や、使用状況に応じたパネル板の高さ調整が簡易にできない。
【0005】
また、飛沫防止パネルには、支柱(支持具)を交換することでパネル板の高さ調整が可能なものもあるが、高さは、支柱の高さに依存することから、高さ調整の自由度が低く、且つ、パネル板を完全に支柱から分離して高さ調整する必要があり、組立て後の運びが容易ではない。
さらに、オンライン会議などを自席で行う際には、衝立型間仕切りを防音手段として使用したいが、パネル板は吸音性がないので、パネル板の外側で発生した音がオンラインのマイクに入力し、或いは、会議の音声がパネル板の外側に漏れやすい。
【0006】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、飛沫を防止し、且つ吸音効果を高めた衝立型間仕切りを提供するとともに、簡易に組み立てられる衝立型間仕切り用の構成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題解決のために、本発明に係る衝立型間仕切りは、パネル板と、パネル板を支持する支柱と、パネル板の表面及び裏面の少なくとも一方に配置した吸音材と、を有し、パネル板の板厚方向に開口した1又は2以上のネジ止め用の穴と、支柱に形成され、支柱の軸方向に延びる1又は2以上の案内溝と、案内溝に設けられ、案内溝に案内されて軸方向に移動可能な1又は2以上のナット部材と、ネジ止め用の穴を介してナット部材に螺合するネジと、を備えている。
【0008】
また、本発明に係る衝立型間仕切り用の構成物は、2以上のパネル板と、パネル板を支持するための2以上の支柱と、パネル板の表面及び裏面の少なくとも一方に配置した吸音材と、複数のネジと、を有し、パネル板には、板厚方向に開口した1又は2以上のネジ止め用の穴が設けられ、支柱は、支柱の軸方向に延びる1又は2以上の案内溝と、案内溝に設けられ、案内溝に案内されて軸方向に移動可能な1又は2以上のナット部材と、を備え、ネジの軸部は、ネジ止め用の穴を介してナット部材に螺合可能としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る衝立型間仕切りは、飛沫を防止すると同時に吸音効果を高めることができる。また、本発明に係る衝立型間仕切り用の構成物は、簡易に衝立型間仕切りを組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係るパネル板を示す正面図である。
【
図2】本発明に基づく実施形態に係る吸音材を示す正面図である。
【
図3】本発明に基づく実施形態に係る支柱を示す斜視図である。
【
図4】本発明に基づく実施形態に係るネジを示す斜視図である。
【
図7】案内溝とナット部材の関係を示す断面図である。
【
図8】側面パネル板を支柱に組み付ける状態を説明する模式図である。
【
図9】正面パネル板を支柱に組み付ける状態を説明する模式図である。
【
図10】正面パネル板及び側面パネル板を平面視コ字形状に組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図11】正面パネル板及び側面パネル板に吸音材を配置して衝立型間仕切りを組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図12】正面パネル板の下方まで延在する吸音材を配置した衝立型間仕切りのパターンを示す斜視図である。
【
図13】正面パネル板の表面及び裏面に吸音材を配置した衝立型間仕切りを示す斜視図である。
【
図14】正面パネル板の表面に吸音材を配置するとともに、吸音材からなる天板を配置した衝立型間仕切りを示す斜視図である。
【
図15】正面パネル板及び側面パネル板の一部に吸音材を配置した衝立型間仕切りを示す斜視図である。
【
図16】他の第1実施形態の衝立型間仕切りのパターンを示す平面的模式図である。
【
図17】他の第2実施形態の衝立型間仕切りのパターンを示す平面的模式図である。
【
図18】他の第3実施形態の衝立型間仕切りのパターンを示す平面的模式図である。
【
図19】衝立型間仕切りの吸音効果の実験を行う際の実験室の配置を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の衝立型間仕切りは、衝立型間仕切り用の構成物を組み立てることで構成される組立て体である。
【0012】
[衝立型間仕切り用の構成物]
衝立型間仕切り用の構成物は、
図1~
図5に示すように、2以上のパネル板1と、パネル板1に重ねて配置される吸音材2と、パネル板1を支持する2以上の支柱3と、複数のネジ4と、を有する。
【0013】
(パネル板1)
パネル板1は、
図1に示すように、平面視矩形の板材である。パネル板1の形状は、矩形でなくても良い。
パネル板1は、光透過性であることが好ましい。パネル板1の材質としては、ガラス、PETG、塩ビ、アクリル等の透明度の高い材質が例示できる。なお、これらの材質で作製したパネル板1の透明度(透過率)は、50~98%程度となる。
【0014】
パネル板1として、PETGを使用する場合、塩ビやアクリルに比べて柔軟性があるため、仮に落下等の衝撃が加えられても割れにくい。また、PETGは自己消化性を持つため火災などで他の材質に比べて燃えにくい。
パネル板1の厚みは、例えば2mm以上9mm以下としている。
パネル板1の左右両側にネジ止め用の穴5(以下、単純に「穴」とも記載する)が開口している。ネジ止め用の穴5や後述の第2の穴6は、スリット状などの長穴であっても良い。
【0015】
図1に示す例では、ネジ止め用の穴5がパネル板1の左右両端部側にそれぞれ設けられ、左右方向の各端部にそれぞれ、2つネジ止め用の穴5が上下に離隔して設けられている。各端部に設ける穴5は、1個でも良いが、2以上設けた方が取付けの安定性が良い。
また、パネル板1に形成する穴としては、
図5に示すように、パネル板1の左右方向途中位置(例えば中央位置)にも、ネジ止め用の第2の穴6を開口しておいてもよい。
パネル板1の一方の面に、左右方向に離れた位置に一対の面ファスナーフック部7aが貼設されている。
【0016】
(吸音材2)
吸音材2は、パネル板1と同一の外周形状に形成されており、フェルト材、木材、樹脂板、繊維状部材、発泡体など、音を吸収することが可能な多孔質で低密度の材質が使用されている。そして、吸音材2の表面に、内部の多孔質に連通する多数の細孔が存在していれば、吸音効果をさらに高くすることができる。
吸音材2の厚みは、例えば5mm以上30mm以下としている。吸音材2の厚みが5mmを下回る場合は吸音効果が小さく、厚みが30mmを上回る場合は、重量増でパネル板1に負荷がかかるとともに、使用者の圧迫感、閉塞感が増大してしまう。
【0017】
吸音材2には、左右方向に離れた位置に一対の面ファスナーループ部7bが貼設されている。この吸音材2をパネル板1の一方の面を覆うように配置すると、一対の面ファスナーループ部7bが、パネル板1の一方の面に設けた一対の面ファスナーフック部7aに係合し、パネル板1の一方の面に吸音材2が着脱自在に配置される。
なお、本実施形態では、パネル板1に設けた面ファスナーフック部7aと、吸音材2に設けた面ファスナーループ部7bが係合することで、パネル板1に吸音材2が着脱自在に配置されるが、他の係合手段、例えば、L字アングルやS字フックやビス等の金具係合手段、粘着テープや両面テープ等の樹脂係合手段、永久磁石などの磁気係合手段を使用してパネル板1に吸音材2を着脱自在に配置するようにしてもよい。
【0018】
(支柱3)
支柱3は、例えば断面が円形、三角形や矩形などの多角形形状等の形状となっている。本実施形態では、
図3に示すように、断面正方形形状の場合を例に挙げて説明する。このとき、支柱5の周方向における一辺の寸法は、例えば20~80mmとする。
支柱5の材質は、パネル板1を支持可能な剛性を有すれば特に限定はないが、アルミ材や木材が例示できる。
支柱3には、軸方向に延びる1又は2以上の案内溝8を有する。案内溝8は、支柱3の周方向に沿って複数箇所に形成されていることが好ましい。この場合、案内溝8は、周方向に沿って等間隔に形成されていることが好ましい。また、同一軸線上に沿って2以上の案内溝8を形成しても良い。また、各面に2以上の案内溝8を形成しても良い。
【0019】
本実施形態では、支柱3の各面(4面)にそれぞれ案内溝8が形成されている場合を例示している。
案内溝8は、案内溝8に配置したナット部材9が、案内溝8に沿って支柱3の軸方向にスライド(案内)可能な形状であって、ナット部材9が、上記案内方向に直交する方向に変位しても、案内溝8の開口部から抜けない構造となっている。
本実施形態の案内溝8の断面形状は、
図6に示す断面図のように、溝の底面8aから支柱3の表面に向かうにつれて左右の幅が広くなる斜面状の側面8bを有して、略台形形状となっている。これによって、ネジ4を雄ネジのネジ穴10に螺合させる際の安定性が良くなる。
【0020】
ただし、案内溝8は、溝の開口部では、ナット部材9の表面の左右両側に対向する左右の内向きフランジ部11によって、開口部の幅Dが狭くなって、ナット部材9が抜けない、開口位置での溝幅となっている。すなわち、左右の内向きフランジ部11で構成される溝の開口の幅は、ナット部材9に設けた雌ネジのネジ穴10の穴径及びネジ4の軸部4bの径よりも大きく、且つナット部材9の幅方向の寸法よりも小さくなっている。
また、ナット部材9の雌ネジのネジ穴10が、溝の開口を介して外部から見えるようになっている。
【0021】
ナット部材9は、案内溝8内に設けられ、当該案内溝8に案内されて支柱3の軸方向(溝の延在方向)に移動可能となっている。
なお、ナット部材9の本体が案内溝8の外側に配置されていても良い、案内溝8によって軸方向に案内可能に案内溝8に取り付けられていればよい。
ナット部材9は、パネル板1の上下で並ぶ穴5の数若しくはそれ以上、各案内溝8に設けることが好ましい。
【0022】
本実施形態のナット部材9は、断面図である
図7に示すように、案内溝8の断面に係合可能な形状、つまり、略台形形状の断面となっていて、案内溝8の底面8a及び側面8bと当接可能な部分9Aが樹脂材で構成される。また、内向きフランジ部11の内面に当接可能な部分には、アルミなどの金属板で構成され、該金属板がワッシャを構成する。これによって、ナット部材9にネジ4を安定して螺合可能となる。
【0023】
また、ナット部材9の中央部に雌ネジが形成されたネジ穴10が形成されている。ネジ穴10は、ナット部材9の中央を厚さ方向に貫通するように形成され、該ネジ穴10が案内溝8の開口を介して見えるようなっている、ネジ穴10の軸は、支柱3の表面に対して直交するように構成することが好ましい。
また、上記金属板には、ネジ穴10の両側が段差状に上方へ突出していて段差部9Bが形成され、この段差部9Bが案内溝8の開口に嵌り込み可能な形状となっている。
これによって、安定して締結可能となり、より締結後のパネル板1がずれにくくなる。
【0024】
支柱5の軸方向両端部には、樹脂キャップ12が着脱可能に嵌め込まれている。この樹脂キャップ12によって、案内溝8の支柱3の軸方向端部からナット部材9が抜け落ちることが防止されると共に、取扱い時の耐傷性を有する。
この樹脂キャップ12を一時的に外すことで、各案内溝8に配置するナット部材9の数を調整することが可能となる。例えば、複数条の案内溝8を形成していても、使用しない案内溝8からナット部材9を外すことができる。
【0025】
(ネジ4)
ネジ4は、
図4に示すように、軸部4bと頭部4aとから構成され、雌ネジを有するネジ穴10に螺合可能な、例えばM4~7程度のトラス型ボルトビスからなる。
このネジ4は、頭部4aがパネル板1の穴の径(長穴の場合には幅)よりも大きく、且つ軸部4bが、パネル板1の穴の径よりも小さく、パネル板1を介してネジ穴10に螺合可能な長さを有する。
【0026】
[衝立型間仕切りの組み立て]
次に、衝立型間仕切りを組み立てる手順について説明する。この衝立型間仕切りは、3枚のパネル板1と、3枚の吸音材2と、4本の支柱5を使用する。
3枚のパネル板1は、
図1で示したように、幅方向の長さが大きい1枚の正面パネル板1aと左右2枚の側面パネル板1bとからなる。
また、3枚の吸音材2は、
図2で示したように、幅方向の長さが大きい正面吸音材2aと左右2枚の側面吸音材2bとからなる。
例えば、次の手順にて組み立てる。
【0027】
先ず、
図8に示すように、各側面パネル板1bの一対の面ファスナーフック部7aが貼設されていない他方の面の左右両側にそれぞれ支柱3をネジ止めする。
次に、
図9に示すように、各側面パネル板1bに取り付けた各一端側の支柱3における、側面を取り付けた面と直交する面に形成された案内溝8に設けたナット部材7を用いて、正面パネル板1aの一対の面ファスナーフック部7aが貼設されていない他方の面の左右両側を、穴を介してネジ止めする。
これにより、
図10に示すように、1枚の正面パネル板1aと、左右2枚の側面パネル板1bとが平面視コ字形状に配置され、各パネル板1a,1bの外側面(一方の面)に一対の面ファスナーフック部7aが設けられる。
【0028】
そして、
図11に示すように、正面パネル板1aの外側面に設けた一対の面ファスナーフック部7aに、一対の面ファスナーループ部7bを係合させて正面吸音材2aを配置することで、正面パネル板1aの外側面に正面吸音材2aが着脱自在に配置される。また、左右2枚の側面パネル板1bの外側面に設けた一対の面ファスナーフック部7aに、一対の面ファスナーループ部7bを係合させて側面吸音材2bを配置することで、側面パネル板1bの外側面に側面吸音材2bが着脱自在に配置される。
【0029】
[吸音材2の配置の変形例]
次に、
図11で示した衝立型間仕切りに対して、吸音材の配置位置が異なるパターンの例を
図12~
図15に示す。なお、これらの例では、パネル板に面ファスナーフック部7aを設け、吸音材に面ファスナーループ部7bを設けて互いに係合することで、パネル板に吸音材が着脱自在に配置されるものとする。
図12の例では、正面パネル板1aの幅と同一寸法であり、支柱3の高さと同一寸法の矩形板状の正面吸音材2a1を使用する。この正面吸音材2a1は、正面パネル板1aの下部空間を閉塞した状態で、正面パネル板1aの外側面に着脱自在に配置されている。
【0030】
なお、
図12の例に追加し、側面パネル板1bの幅と同一寸法であり、支柱3の高さと同一寸法の側面吸音材を使用し、この側面吸音材を、側面パネル板1bの下部空間を閉塞した状態で着脱自在に配置するパターンもある。
図13の例では、正面パネル板1aと同一形状の矩形板状の一対の正面吸音材2a2,2a3を使用する。一方の正面吸音材2a2は、正面パネル板1aの外側面に着脱自在に配置され、他方の正面吸音材2a3は、正面パネル板1aの内側面に着脱自在に配置されている。
【0031】
図14の例では、正面パネル板1aの下部空間を閉塞する正面吸音材2a1と、天板吸音材2a4を使用している。天板吸音材2a4は、正面パネル板1a及び一対の側面パネル板1bの上端に着脱自在に配置されている。
なお、
図14の例に追加し、側面パネル板1bの幅と同一寸法であり、支柱3の高さと同一寸法の側面吸音材を使用し、この側面吸音材を、側面パネル板1bの下部空間を閉塞した状態で着脱自在に配置するパターンもある。
さらに、
図15の例では、正面パネル板1aの内側面に小形状の正面吸音材2a5,2a6を着脱自在に配置し、一対の側面パネル板1bの内側面に小形状の側面吸音材2a7,2a8が配置されている。
【0032】
[衝立型間仕切りの変形例]
次に、
図11で示した衝立型間仕切りとは異なるパターンの衝立型間仕切りを
図16~
図18に示す。
図16の例では、吸音材2を着脱自在に配置した3枚のパネル板1をHの字状に組み付けるパターンである。
図17の例では、吸音材2を着脱自在に配置した4枚のパネル板1を取り付けて十の字状としたパターンである。
図18は、吸音材2をパネル板1に着脱自在に配置してなる2種類の衝立型間仕切りの組立てパターンを、順番に組み合わせて配置することで、仕切りで区切られた空間が左右方向に複数並ぶように構成している。
【0033】
上記の説明では、一の支柱5に設けた隣り合う案内溝8の角度が90度の場合を例示しているが、これに限定されない。例えば、断面円形の支柱5に対し、周方向に沿って120度間隔で3条の案内溝8を設けて、支柱5に支持されて隣り合うパネル板間の角度を、120度とするようにしても良い。
【0034】
[衝立型間仕切りの作用効果]
次に、本実施形態の衝立型間仕切りの作用効果について説明する。
本実施形態の衝立型間仕切りは、正面パネル板1a及び側面パネル板1bに吸音材2(2a,2b,2a1,2a2,2a3,2a5,2a62a7,2a8)を配置することで、衝立型間仕切りの内部の音が外部に漏れにくく、衝立型間仕切りの外部の音が内部に入りにくくなり、防音効果を高めることができるので、オンライン会議などの防音手段として有効に利用することができる。
【0035】
また、正面パネル板1a及び側面パネル板1bの下部空間を吸音材2で閉塞し、天板吸音材2a4を配置することで防音効果をさらに高めることができ、衝立型間仕切りの内部を半個室空間とすることができる。
また、吸音材2はパネル板1に着脱自在に設けられているので、吸音性能を必要としない場合には、パネル板1から吸音材2を外して解放感を得ることができる。
また、パネル板1は光透過性を有しており、パネル板1に部分的に吸音材2を配置することで(
図15参照 )、採光を確保しながら吸音効果を高めることができる。
【0036】
一方、本実施形態の衝立型間仕切りは、ナット部材9を支柱3に沿ってスライドさせることで、高い自由度で且つ簡易に、パネル板1の高さを調整可能となる。これにより、パネル板1の下側の隙間を、通過させるケーブルや、電話や厚みがある書類などに応じて調整して設置可能となる。
また、パネル板1と支柱3は一体化しているので、組み立て後は持ち運びが可能である。一方、複数のパネル板1a,1bは結合せず独立しているので、1面ずつ取り換えが可能である。
【0037】
また、1面に対し上下2枚のパネルを使えば、間にフックや小物置なども掛けることが可能となる。この場合、横桟としての支柱3でパネル板1の撓みの強制や補強をしたり、仕切りの転倒防止に繋げたりすることが可能である。
さらに、支柱3の各面の全てにパネル板1が取付け可能なので多様の組合せができる。例えば、パネル板1と支柱3の組合せで連続性が付与できるとともに、長さ方向に調整が可能となるので長机やオフィスの机の並びにも対応可能となる。
【実施例0038】
次に、衝立型間仕切りの吸音効果の実験を行うことで、本発明をさらに具体的に説明する。
図19(a)、(b)は、吸音効果の実験室の配置を平面視で示したものである。すなわち、
図19(a)は、テーブル上に衝立型間仕切りを配置し、衝立型間仕切りの外側のテーブル上に測定機器Aを配置し、衝立型間仕切りの内側に発生音源を配置し、
図19(b)は、衝立型間仕切りの外側のテーブル上に発生音源を配置し、衝立型間仕切りの内側に測定機器Bを配置した。
衝立型間仕切りのパネル板は、厚さ3mmのPETGを使用している。吸音材は、(株)東京防音製のものを使用している。
【0039】
そして、発生音源で発生した音を測定機器Aならびに測定機器Bでそれぞれ測定した実験結果を表1に示す。なお、試験NO1~3は、左右パネル板、或いは正面パネル板の表裏面に、パネル板と同一形状の厚さ7mmの吸音材を配置した。また、試験NO4~6は、左右パネル板、或いは正面パネル板の表裏面に、パネル板と同一形状の厚さ23mmの吸音材を配置した。また、試験NO7は、左右パネル板、正面パネル板の表裏面に、パネル板より高さが大きく厚さ23mmの吸音材を配置した。試験NO8は、左右パネル板、正面パネル板の上端に天板吸音材を配置した。試験NO7,8は、左右パネル板、正面パネル板の下部に空間が存在している。
【0040】
さらに、試験NO9は、左右パネル板、正面パネル板の表裏面に、ネル板より高さが大きく厚さ23mmの吸音材を配置した。試験NO10は、左右パネル板、正面パネル板の上端に天板吸音材を配置した。そして、試験NO9,10は、左右パネル板、正面パネル板の下部が吸音材で閉塞されている。
【0041】
【0042】
表1で示した実験結果から、試験NO1~3(厚さ7mmの吸音材)と試験NO4~6(厚さ23mmの吸音材)との比較から、吸音材の厚みが増大することで、衝立型間仕切りの内部の音が外部に漏れにくく、衝立型間仕切りの外部の音が内部に入りにくくなり、防音効果が高まることがわかる。
また、試験NO4~6と試験NO7,8の比較から、吸音材の面積が増大することで、防音効果が高まることが判る。また、試験NO7と試験NO8の比較から、天板吸音材を設けることで、防音効果が高まることがわかる。
さらに、試験NO7,8と試験NO9,10との比較から、左右パネル板、正面パネル板の下部に空間を設けず、吸音材で閉塞すると防音効果が高まることがわかる。