(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147493
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】光学素子、光学モジュール及び、光学素子または光学モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20220929BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220929BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20220929BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20220929BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20220929BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
G02B5/00 B
F21S2/00 350
F21V17/00 200
F21V5/00 320
F21V5/04 200
F21V5/00 100
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048751
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩浜 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】藤川 武
【テーマコード(参考)】
2H042
3K011
【Fターム(参考)】
2H042AA09
2H042AA21
3K011BA02
3K011BA07
(57)【要約】
【課題】より簡易・小型な構成で、光学モジュールからの光漏れを抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】平板状の基材部(3b)の少なくとも片面の一部に光学要素が配置された光学領域(3a)を有する光学素子(3)であって、基材部(3b)の光学領域(3a)が設けられた面における、光学領域(3a)の周囲には、光学素子としての光学的機能が使用されない周辺領域(3d)が設けられており、周辺領域(3d)あるいは、基材部(3b)の反対面における該周辺領域(3d)に相当する領域には、光の透過が抑制され、あるいは光を拡散する遮光拡散部(3e)が形成される
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基材部の少なくとも片面の一部に光学要素が配置された光学領域と、
前記基材部の前記光学領域が設けられた面における、前記光学領域の周囲に設けられ、前記光学要素が配置されない周辺領域と、
前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域に設けられ、光の透過を抑制し、あるいは光を拡散する遮光拡散部と、
を備える、光学素子。
【請求項2】
前記基材部において、前記光学領域は、前記周辺領域に対して窪んだ面に形成される、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光学要素はレンズ要素であり、前記光学領域は、複数の前記レンズ要素が配列されたレンズ領域である、請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記遮光拡散部は、前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域に形成されたフォトレジスト材料の膜を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記遮光拡散部は、前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面粗さが前記基材部の側面に比較して大きい粗化面を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学素子と、
前記光学素子に光を入射する光源と、
前記光学素子と前記光源とを保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、前記光源が固定される基底部と、前記光学素子が固定される側壁部を有し、
前記側壁部には、前記光学素子の前記周辺領域を載置する載置面が設けられ、
前記周辺領域と前記載置面の間には所定の接着剤が介在する、光学モジュール。
【請求項7】
前記側壁部の上端は、前記光学素子の上面と同じ高さまたは、前記光学素子の上面より低くなるように形成された、請求項6に記載の光学モジュール。
【請求項8】
前記所定の接着剤は遮光性を有し、前記遮光拡散部を形成する、請求項6または7に記載の光学モジュール。
【請求項9】
平板状の基材部の少なくとも片面の一部に光学要素が配置された光学領域を有する、光学素子の製造方法であって、
前記平板状の基材部と、前記光学領域と、該光学領域の周囲に配置され前記光学素子として光学的機能が使用されない周辺領域とを、一体成型で形成する成型工程と、
前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域に、光の透過が抑制され、あるいは光を拡散する遮光拡散部を形成する、遮光拡散部形成工程と、
を有する、光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記遮光拡散部形成工程は、前記成型工程と同時に行われ、
前記成型工程において、前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面粗さが前記基材部の側面に比較して大きい粗化面が、遮光
拡散部として成型される、請求項9に記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
前記遮光拡散部形成工程は、前記成型工程の後に行われるとともに、前記成型工程において成型された前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面に、フォトリソグラフィーによってフォトレジスト材料の膜を形成する工程を含む、請求項9に記載の光学素子の製造方法。
【請求項12】
前記遮光拡散部形成工程は、前記成型工程の後に行われるとともに、前記成型工程において成型された前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面を粗化する粗化工程を含む、請求項9に記載の光学素子の製造方法。
【請求項13】
請求項6または7に記載の光学モジュールの製造方法であって、
前記載置面に前記所定の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記光学素子を前記所定の接着剤が塗布された前記載置面に載置して固定する固定工程と、を有する、光学モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記所定の接着剤は遮光性を有する、請求項13に記載の光学モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、光学素子を有する光学モジュール及び、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば照明もしくは計測、顔認証、空間認証等のための装置に用いられ、複数のレンズ要素を配置したマイクロレンズアレイが公知である(例えば、特許文献1、2等参照。)。また、このマイクロレンズアレイと光源とをユニット化して光学モジュールとすることで、マイクロレンズアレイを用いた上述の装置の組み立て、管理を容易にすることが行われている。
【0003】
一方で、これらの光学モジュールに用いられる光源には、VCSELレーザ光源(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)等の高強度の光源が用いられることが多く、アイセーフ問題が生じる場合もあった。これらの問題に関連して、光学素子の表面にモザイク分割で周期的に配置された複数の領域を有し、この複数の領域の各領域が微細構造のランダム空間分布を有する光学素子が公知である(例えば、特許文献3等参照)。
【0004】
しかしながら、上述したような光学モジュールにおいては、構造が充分に簡易・小型であり、高強度の光の漏れが充分に抑制されているとは言えなかった。また、マイクロレンズアレイ等の光学素子を接着剤で固定する構造が多いく、接着剤の流れ出し等によって光学素子の光学性能に影響が出る場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/103795号
【特許文献2】国際公開第2015/182619号
【特許文献3】特開2020-173422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の技術は、上記の事情に鑑みて発明されたもので、その目的は、より簡易・小型な構成で、光学モジュールからの光漏れを抑制することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本開示に係る光学素子は、平板状の基材部の少なくとも片面の一部に光学要素が配置された光学領域を有する光学素子であって、基材部の光学領域が設けられた面における、光学領域の周囲には、光学素子としての光学的機能が使用されない周辺領域が設けられており、周辺領域あるいは、基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域には、光の透過が抑制され、あるいは光を拡散する遮光拡散部が形成されるよう構成した。
【0008】
より詳しくは、平板状の基材部の少なくとも片面の一部に光学要素が配置された光学領域と、
前記基材部の前記光学領域が設けられた面における、前記光学領域の周囲に設けられ、
前記光学要素が配置されない周辺領域と、
前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域に設けられ、光の透過を抑制し、あるいは光を拡散する遮光拡散部と、
を備える。
【0009】
ここで、前記基材部において、前記光学領域は、前記周辺領域に対して窪んだ面に形成されるようにしてもよい。
【0010】
また、前記光学要素はレンズ要素であり、前記光学領域は、複数の前記レンズ要素が配列されたレンズ領域であってもよい。
【0011】
前記遮光拡散部は、前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域に形成されたフォトレジスト材料の膜を有してもよい。
【0012】
また、前記遮光拡散部は、前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面粗さが前記基材部の側面に比較して大きい粗化面を有してもよい。
【0013】
また、本開示に係る光学モジュールは、上記に記載の光学素子と、
前記光学素子に光を入射する光源と、
前記光学素子と前記光源とを保持する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、前記光源が固定される基底部と、前記光学素子が固定される側壁部を有し、
前記側壁部には、前記光学素子の前記周辺領域を載置する載置面が設けられ、
前記周辺領域と前記載置面の間には所定の接着剤が介在する、光学モジュールである。
【0014】
また、前記側壁部の上端は、前記光学素子の上面と同じ高さまたは、前記光学素子の上面より低くなるように形成されてもよい。
【0015】
また、前記所定の接着剤は遮光性を有し、前記遮光拡散部を形成してもよい。
【0016】
本開示に係る光学素子の製造方法は、平板状の基材部の少なくとも片面の一部に光学要素が配置された光学領域を有する、光学素子の製造方法であって、
前記平板状の基材部と、前記光学領域と、該光学領域の周囲に配置され前記光学素子として光学的機能が使用されない周辺領域とを、一体成型で形成する成型工程と、
前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域に、光の透過が抑制され、あるいは光を拡散する遮光拡散部を形成する、遮光拡散部形成工程と、
を有する。
【0017】
また、前記遮光拡散部形成工程は、前記成型工程と同時に行われ、
前記成型工程において、前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面粗さが前記基材部の側面に比較して大きい粗化面が、遮光拡散部として成型されてもよい。
【0018】
また、前記遮光拡散部形成工程は、前記成型工程の後に行われるとともに、前記成型工程において成型された前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面に、フォトリソグラフィーによってフォトレジスト材料の膜を形成する工程を含んでもよい。
【0019】
また、前記遮光拡散部形成工程は、前記成型工程の後に行われるとともに、前記成型工程において成型された前記周辺領域および/または、前記基材部の反対面における該周辺領域に相当する領域の表面を粗化する粗化工程を含んでもよい。
【0020】
本開示に係る光学モジュールの製造方法は、
前記載置面に前記所定の接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記光学素子を前記所定の接着剤が塗布された前記載置面に載置して固定する固定工程と、を有する、光学モジュールの製造方法である。
【0021】
また、前記光学モジュールの製造方法において、前記所定の接着剤は遮光性を有していてもよい。
【0022】
なお、本開示においては、可能な限り、上記の課題を解決するための手段を組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、より簡易・小型な構成で、光学モジュールからの光漏れを抑制することが可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図2は、光学モジュールの段差部付近の拡大図である。
【
図3】
図3は、光学モジュールの第1の変形例の概略図である。
【
図4】
図4は、光学モジュールの第2、第3の変形例の概略図である。
【
図5】
図5は、光学モジュールの第4の変形例の概略図である。
【
図6】
図6は、マイクロレンズアレイの製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、光学モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、光学モジュールの使用用途の例としての距離測定装置の概略図である。
【
図9】
図9は、マイクロレンズアレイの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るマイクロレンズアレイ及び、光学モジュールについて説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0026】
図8には、実施形態に係るマイクロレンズアレイ及び光学モジュールの使用用途の一例としての、TOF(Time Of Flight)方式の距離測定装置100の概略図を示す。TOF方式の距離測定装置100は、照射光の飛行時間を測定することで、測定対象Oの表面の各部までの距離を測定する装置であり、光源制御部101、照射光源102、照射光学系103、測定対象Oからの反射光を集光する受光光学系104、受光素子105、信号処理回路106を有する。
【0027】
光源制御部101からのドライブ信号に基づいて照射光源102がパルス状の光を発光すると、そのパルス状の光が照射光学系103を通過して測定対象Oに照射される。そして、測定対象Oの表面で反射した反射光は受光光学系104を通過して受光素子105で
受光され、信号処理回路106で適切な電気信号に変換される。そして、演算部(不図示)において、照射光源102が照射光を発光してから受光素子105で反射光が受光されるまでの時間、つまり光の飛行時間を測定することにより、測定対象Oにおける各場所までの距離を測定する。
【0028】
このTOF方式の距離測定装置100における照射光学系103として、マイクロレンズアレイが使用される場合がある。
図9には、マイクロレンズアレイの概略図を示す。図中左側の図はマイクロレンズアレイの正面図、図中右側の図はマイクロレンズアレイの側面図を示す。マイクロレンズアレイとは、平板状の基材部103bの例えば片面の中央部に、直径が10μm~数mm程度の微小なレンズ要素1030aが配列されたレンズ領域103aを有する光学素子である。レンズ領域103aは基材部103bの両面に形成されてもよいし、基材部103bの全面に形成されてもよい。
【0029】
マイクロレンズアレイは、レンズ領域103aを構成する各々のレンズ要素1030aの形状(球面、非球面、シリンドリカル、六方等)、レンズ要素1030aの大きさ、レンズ要素1030aの配置、レンズ要素1030a間のピッチ等によって、その機能や精度が変化する。そして、光源制御部101、照射光源102、照射光学系(マイクロレンズアレイ)103をユニット化して、光学モジュール108として扱うことで、距離測定装置100の組立性、管理の容易性を向上させることが行われている。マイクロレンズアレイにおけるレンズ要素1030aは本開示の光学要素に相当し、レンズ領域103aは本開示の光学領域に相当する。マイクロレンズアレイの材質としては、ポリカーボネート、PMMA、シクロオレフィン共重合等の樹脂材料を挙げることができる。材料の種類について特に制限されるものではない。
【0030】
図10には、従来の光学モジュールの構成例を示す。
図10(a)には、平板状の基材部113bの下面の略全面にレンズ要素が配列されたレンズ領域113aを設けたマイクロレンズアレイ113を用いた光学モジュール110について示す。ここで、光学モジュール110は、光源112が設置された基底部111aと、光源112の周囲を囲う側壁部111bを有する筐体111を備える。マイクロレンズアレイ113は、側壁部111bの内側に設けられた段差部111cに端部が載置され、接着剤115で接着されることで、側壁部111bに固定されている。
【0031】
この例の場合、接着剤115が特にレンズ領域113aのレンズ要素の凹凸による毛細管現象によってレンズ領域113aに流れ出し、レンズ領域113aにおける光学性能に影響を及ぼす場合があった。ここで、例えばフィラーを充填する等の方法によって高粘度にした接着剤を用いた場合であっても、接着剤115がレンズ要素の凹凸による毛細管現象によってレンズ領域113aに流れ出す虞がある。
【0032】
次に、
図10(b)には、平板状の基材部123bの下面の中央部にレンズ領域123aが設けられたマイクロレンズアレイ123を有する光学モジュール120について示す。ここで、光学モジュール120は、光源122が設置された基底部121aと、光源122の周囲を囲う側壁部121bを有する筐体121を備える。マイクロレンズアレイ123は、側壁部121bの内側に設けられた段差部121cに端部が載置され、接着剤125で接着されることで、側壁部121bに固定されている。
【0033】
この例の場合、マイクロレンズアレイ123の下面には、レンズ要素が形成されていない透明な平面である周辺領域としての周辺部123dが存在するために、接着剤125がレンズ領域123aに流れ出し、レンズ領域123aの光学性能に影響を及ぼす可能性は、
図10(a)の場合より低い。しかしながら、光源122からの照射光が、周辺部123dを通過して、レンズ要素で拡散されない高強度の光が直接外部に漏れる可能性がある
。この場合、高強度の漏れ光が外部の人の目に直接入射してしまう所謂アイセーフ問題を生じる虞がある。
【0034】
よって、この例においては、周辺部123dからの漏れ光の直接の照射を防止するため、マイクロレンズアレイ123の上側における漏れ光の出射位置に、遮光用の蓋126を設ける必要がある。このことは、光学モジュール120の製造工数と、部品点数を増加させる結果となり、光学モジュール120のコストアップを招来する。また、光学モジュール120の高さを蓋126の分だけ高くする必要があるので、光学モジュール120の小型化の妨げにもなっていた。
【0035】
図1には、本実施形態に係る光学モジュール1の概略図を示す。
図1(a)は、光学モジュール1の平面図、
図1(b)は、A-A断面による断面図を示す。光学モジュール1は、光源2が設置された基底部10aと、光源2の周囲を四方から囲う側壁部10bを有する保持部材としての筐体10を備える。光源2としては、例えばVCSELレーザ光源(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)が用いられる。また、基底部10aには図示しない、光源制御部も載置されている。側壁部10bの内壁には、マイクロレンズアレイ3が載置される水平面を有する載置面としての段差部10cが設けられている。マイクロレンズアレイ3は、段差部10cに載置され、接着剤5で接着されることで、側壁部10bに固定されている。なお、本実施形態では側壁部10bは、平面視で略正方形の形状を有しているが、側壁部10bの平面視での形状はこれに限られない。長方形、多角形、円形、楕円形等の形状を有していても構わない。また、接着剤5としては、エポキシ系、アクリル系およびシリコーン系の接着剤を例示することができる。
【0036】
マイクロレンズアレイ3は、概略平板状の基材部3bを有する。基材部3bの下面中央部には、平面視で矩形状の窪んだ凹部3cを有し、凹部3cの天面にレンズ要素が配列されたレンズ領域3aが形成されている。マイクロレンズアレイ3の下面における凹部3cの周囲の領域は、光学素子としての光学的機能が使用されない周辺領域としてのリブ3dを構成する。結果として、リブ3dにおける厚みは、凹部3cの厚みより厚くなっている。マイクロレンズアレイ3は、このリブ3dが段差部10c上に載置され、接着剤5が段差部10cとリブ3dの間に介在することで接着固定されている。
【0037】
また、マイクロレンズアレイ3の上面におけるリブ3dに相当する領域には、光源2からの照射光の漏れを遮光または拡散する遮光拡散部3eが設けられている。この遮光拡散部3eは、遮光機能のみを有していてもよいし、光の拡散機能のみを有していても良い。また、光の拡散機能と遮光機能の両方を有していてもよい。遮光拡散部3eにおける遮光機能は、透過光を完全に遮断する機能であってもよいし透過光強度を低下させる機能であってもよい。この遮光拡散部3eは、例えばフォトリソグラフィー技術により、遮光性のフォトレジスト膜が形成されることで設けられていてもよい。また、ブラスト技術により表面粗化されることで粗化面として設けられてもよい。なお、粗化面の表面粗さは、基材部3bの表面粗さより大きい表面粗さを有する。基材部3bの表面粗さとは、基材部3bにおける、レンズ領域3a、遮光拡散部3e以外の面における表面粗さである。基材部3bの表面粗さは、仮に基材部3bの上面及び下面の全面が、レンズ領域3a、遮光拡散部3eで覆われていた場合には基材部3bの側面3fの表面粗さを含む。また、遮光拡散部3eが設けられる領域は、概略、レンズ領域3aの反対面におけるリブ3dに相当する領域であるが、これは正確にリブ3dに相当する領域ではなく、リブ3dに相当する領域を含む領域であってもよいし、リブ3dに相当する領域の一部であってもよい。
【0038】
この構成によれば、光学モジュール1において、光源2からリブ3dに入射した照射光は、遮光拡散部3eで遮光または拡散される。従って、光学モジュール1の前面にVCS
ELレーザ光源からの光がそのまま漏れることがなく、高強度のレーザ光が直接、外部に照射される危険を回避することが可能である。
【0039】
また、この構成によれば、側壁部10bにおける段差部10cより上の薄肉部である上端部10dの高さを、マイクロレンズアレイ3の上面と同等の高さまで低くすることが可能となり、光学モジュール1全体の高さを低くすることが可能となる。
【0040】
さらに、この構成によれば、マイクロレンズアレイ3のレンズ領域3aの周囲にリブ3dが形成されるため、接着剤5が段差部10cから流れ出しても、当該接着剤5がレンズ領域3aに到達しづらいので、接着剤5がマイクロレンズアレイ3の光学特性に影響を及ぼすことを抑制できる。そもそも、リブ3dの下面では毛細管現象が生じづらく、接着剤5は流れ出しづらい。
【0041】
図2には、光学モジュール1の段差部10c付近の拡大図を示す。本実施形態においては、リブ3dの水平方向の幅をA、凹部3cの端面と段差部10cの端面(=側壁部10bの内壁)との距離をBとしたときに、B≧0.3×Aの関係が成立するようにするとよい。そうすれば、より確実に、接着剤5が段差部10cから流れ出し、マイクロレンズアレイ3のレンズ領域3aに達することを抑制できる。より望ましくは、0.7×A≧B≧0.5×Aの関係が成立するようにするとよい。そうすれば、さらに確実に、接着剤5が段差部10cから流れ出し、マイクロレンズアレイ3のレンズ領域3aに達することを抑制できる。また、段差部10cとリブ3dとの接触面積を充分に確保することができ、側壁部10bへのマイクロレンズアレイ3の固定を安定化させることが可能となる。なお、本実施例におけるマイクロレンズアレイ3の、レンズ領域3a及び、その反対面の少なくとも一方には、反射防止膜(不図示)が施されていてもよい。この反射防止膜は、シリカ(Si)やチタン(Ti)あるいはその両方から形成されていてもよい。また、モスアイ構造によって形成されていてもよい。このモスアイ構造は、遮光拡散部3eが設けられる処理において同時に形成してもよい。
【0042】
<変形例1>
図3には、本実施形態の変形例について示す。この変形例は、遮光拡散部13eをマイクロレンズアレイ13の下面のリブ13dに設けた例である。このようにすることで、光源2からの照射光がマイクロレンズアレイ13のレンズ領域13a以外の部分に入射されることを抑制でき、漏れ光を元から遮断または拡散することができる。よって、側壁部10bにおける上端部10dの高さをさらに低くすることができる。また、マイクロレンズアレイ3内における迷光に起因するフレアの発生を抑制することが可能となる。
【0043】
<変形例2、3>
図4(a)には、本実施形態の2番目の変形例について示す。この変形例ではマイクロレンズアレイ23に、凹部を設けず、基材部23bの下面に直接レンズ領域23aを設けた。そして、遮光拡散部23eを基材部23bの上面に設けている。すなわち、この変形例においては、レンズ領域23aと、レンズ領域23aの周囲の周辺領域としての周辺部23dとは、略同一面に配置される。このようにすることで、リブを省略できる分、マイクロレンズアレイ23及び、上端部10dの高さを低くすることができ、光学モジュール21の高さを低くすることが可能である。
【0044】
図4(b)には、本実施形態の3番目の変形例について示す。この変形例ではマイクロレンズアレイ33に、凹部を設けず、基材部33bの下面に直接レンズ領域33aを設けた。そして、遮光拡散部33eを基材部33bの下面におけるレンズ領域33aの周囲の周辺領域としての周辺部33dに設けている。このようにすることで、リブを省略できる分、マイクロレンズアレイ33の高さを低くすることができる。また、光源2からの照射
光がマイクロレンズアレイ33のレンズ領域33a以外の部分に入射されることを抑制でき、漏れ光を元から遮断または拡散することができる。よって、側壁部10bにおける上端部10dの高さをさらに低くすることができる。また、マイクロレンズアレイ3内における迷光に起因するフレアの発生を抑制することが可能となる。
【0045】
<変形例4>
図5には、本実施形態の4番目の変形例について示す。この変形例では、接着剤5を利用して、遮光拡散部43eをマイクロレンズアレイ43の下面のリブ43dに設けている。すなわち、この変形例においては、マイクロレンズアレイ43のリブ43dと側壁部10bの段差部10cとの間に介在させて接着させる接着剤として、有色で光源2からの入射光の遮光性を有する接着剤5を使用している。
【0046】
そして、この接着剤をリブ43dの表面にも分布させることで遮光拡散部43eを形成するようにしている。このようにすることで、光源2からの照射光がマイクロレンズアレイ43のレンズ領域43a以外の部分に入射されることを抑制でき、漏れ光を元から遮断または拡散することができる。よって、側壁部10bにおける上端部10dの高さをさらに低くすることができる。また、マイクロレンズアレイ43内における迷光に起因するフレアの発生を抑制することが可能となる。
【0047】
ここで、この接着剤5を用いた遮光拡散部43eは、接着剤5のみによって形成しても構わないし、例えばフォトリソグラフィー技術による遮光性のフォトレジスト膜や、ブラスト技術による表面粗化と併用されても構わない。
【0048】
<マイクロレンズアレイの製造方法>
次に、マイクロレンズアレイ3の製造方法について説明する。
図6は、製造方法のフローを記載したフローチャートである。
図6(a)に示した例では、S01に示すように、マイクロレンズアレイ3は、樹脂成型工程によって基材部3b、レンズ領域3a、凹部3c、リブ3d、が同時に一体成型で形成される。S01の工程は成型工程に相当する。そして、その後、S02に示すように、遮光拡散部3eが形成される。この遮光拡散部3eを形成する工程は、例えば以下のような方法を用いて実施される。
(1)フォトリソグラフィー
一体成型されたマイクロレンズアレイ3の上面または下面に、フォトレジスト液を塗布する。そして、下面におけるリブ3d以外の部分または、上面におけるリブ3dに相当する領域以外の部分にフォトマスクを被せた上で露光する。そして、未感光部を除去することで、リブ3dまたは、上面におけるリブ3dに相当する領域に、フォトレジスト材料による遮光層を形成する。
(2)ブラスト
下面におけるリブ3d以外の部分または、上面におけるリブ3dに相当する領域以外の部分にマスクを被せた上で、研削材を含むエアーをマイクロレンズアレイ3の上面または下面に衝突させ、表面を粗化する。
(3)その他
下面におけるリブ3d以外の部分または、上面におけるリブ3dに相当する領域以外の部分にマスクを被せた上で、樹脂表面を化学的、熱的あるいは光学的手法によって変質させ、表面を粗化する。
【0049】
遮光拡散部3eの形成が終了すると、本ルーチンを終了する。S02の工程は遮光拡散部形成工程に相当する。なお、S02の工程において、(2)、(3)の方法が実施された場合、この工程は粗化工程に相当する。
【0050】
また、
図6(b)に記載した例では、予め、樹脂成型に係る金型において、上記(2)
あるいは(3)の方法によって、遮光拡散部3eを形成する部分の表面を粗化しておく。そして、マイクロレンズアレイ3の製造工程においては、樹脂成型工程によって基材部3b、レンズ領域3a、凹部3c、リブ3d、遮光拡散部3eが同時に一体成型で形成される。この例によれば、マイクロレンズアレイ3の製造工程をより簡略化することが可能である。
【0051】
次に、
図7には、光学モジュール1が製造される際のフローチャートを示す。光学モジュール1が製造される際には、S21の工程において、側壁部10bの段差部10cに接着剤が塗布される。そして、その状態で、S22の工程においては、マイクロレンズアレイ3が段差部10c上に載置されて固定される。側壁部10bの段差部10cに接着剤が塗布される工程は接着剤塗布工程に相当し、マイクロレンズアレイ3が段差部10c上に載置されて固定される工程は固定工程に相当する。
【0052】
なお、上記の実施形態ではマイクロレンズアレイ3、13、23、33、43におけるレンズ領域3a、13a、23a、33a、43aが、光源2側の片面に設けられた例について説明したが、レンズ領域が、光源2と反対側の片面に配列されるようにしても構わない。さらに、両面に配列されるようにしても構わない。
【0053】
また、本実施形態において説明したマイクロレンズアレイ3、13、23、33、43と同等の機能を有するマイクロレンズアレイを、画像撮影用、セキュリティ機器における顔認証用、車両やロボットにおける空間認証用の光学系として使用しても構わない。また、本実施形態においては、マイクロレンズアレイ3、13、23、33、43の材質は樹脂材料であることを前提として説明したが、樹脂材料を用いる場合には、熱可塑性樹脂の他、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂を用いてもよい。また、マイクロレンズアレイ3、13、23、33、43の材質はこれに限られない。光学モジュール1、11、21、31、41を構成する光学素子の素材は、樹脂であってもガラス等の他の材質であっても構わない。例えば、ガラス材料に樹脂のレンズアレイが貼付された構造など、樹脂材料とガラス材料の組み合わせであっても構わない。また、マイクロレンズアレイの製造方法については、樹脂成型の代わりにガラス成型が採用されても構わない。
【0054】
また、本実施形態における光学モジュール1、11、21、31、41は、光学素子としてマイクロレンズアレイを使用する例について説明したが、光学素子としては、マイクロレンズアレイの他の光学素子を使用しても構わない。例えば光学要素として単レンズ、フレネルレンズ、回折格子などを含む光学素子を利用することが可能である。
【0055】
<導電性物質の配線について>
なお、本実施形態に係るマイクロレンズアレイ3、13、23、33、43の表面または内部には、導電性物質を含む配線を施し、当該配線の通電状態をモニターすることにより、レンズ領域3a、13a、23a、33a、43aにおける各レンズ要素の損傷を検出できるようにしてもよい。そうすることで、各レンズ要素のクラック、剥離などの損傷を簡便に検出することができるので、マイクロレンズアレイ3、13、23、33、43の損傷に起因する光学モジュール1、11、21,31,41の不具合、誤作動による被害を未然に防止することができる。例えば、各レンズ要素のクラックの発生を、導電性物質の断線により検出し、光源の発光を禁止することで、当該クラックを介して光源からの0次光が直接マイクロレンズアレイ3、13、23、33、43を透過し、外部に照射されることを回避できる。その結果、装置のアイセーフティー性能をさらに向上させることが可能である。
【0056】
上記の導電性物質の配線は、マイクロレンズアレイの周辺部(あるいはリブ)3d、13d、23d、33d、43dや、レンズ領域3a、13a、23a、33a、43a上
に施しても良い。また、レンズ領域3a、13a、23a、33a、43aが形成された方の面、反対側の面、両側の何れの面に施してもよい。導電性物質としては、導電性を有するものである限り特に限定されず、例えば、金属、金属酸化物、導電性ポリマー、導電性炭素系物質などを使用することができる。
【0057】
より具体的には、金属としては、金、銀、銅、クロム、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、鉄、白金、モリブデン、タングステン、亜鉛、鉛、コバルト、チタン、ジルコニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、及びこれらの合金等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、又は、これらの複合酸化物、例えば、酸化インジウムと酸化スズとの複合酸化物(ITO)、酸化スズと酸化リンとの複合酸化物子(PTO)等が挙げられる。導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等が挙げられる。導電性炭素系物質としては、カーボンブラック、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト等が挙げられる。これら導電性物質は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
導電性物質としては、導電性に優れ、配線を形成しやすい、金属又は金属酸化物が好ましく、金属がより好ましく、金、銀、銅、インジウム等が好ましく、100℃程度の温度で相互に融着し、樹脂製のマイクロレンズアレイ上でも導電性に優れた配線を形成することができる点で銀が好ましい。また、導電性物質による配線のパターン形状については特に限定されない。マイクロレンズアレイ3、13、23、33、43の周囲を囲うパターンでも良いし、よりクラック等の検出性を高めるためにパターンを複雑な形状としてもよい。さらに、透過性の導電性物質によってマイクロレンズアレイ3、13、23、33、43の少なくとも一部を覆うパターンでも良い。
【符号の説明】
【0059】
1、11、21,31、41・・・マイクロレンズアレイ
1a、11a、21a、31a、41a・・・レンズ領域
1b、11b、21b、31b、41b・・・基材部
1c、11c、41c・・・凹部
1d、11d、21d、31d、41d・・・周辺部
1e、11e、21e、31e、41e・・・遮光拡散部
2・・・光源
5・・・接着剤
10・・・筐体
10a・・・基底部
10b・・・側壁部
10c・・・段差部
10d・・・先端部
100・・・TOF距離測定装置
101・・・光源制御部
102・・・光源
103・・・照射光学系
104・・・反射光学系
105・・・受光素子
106・・・信号処理回路