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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147501
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】2房式擬似大気チャンバー
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20220929BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01N1/02 C
F24F9/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048765
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】503096591
【氏名又は名称】学校法人酪農学園
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】能田 淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌一
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA36
2G052AC02
2G052AD04
2G052AD24
2G052AD44
2G052CA04
2G052CA12
2G052EA03
(57)【要約】
【課題】微生物の分布と化学物質の分布などのように、2種類の物質または微生物等の分布を容易に制御することができる擬似大気チャンバーを提供する。
【解決手段】金属製円環で形成された中央フランジ10と、中央フランジの内部空間を覆い、貫通孔18が形成された仕切板16と、中央フランジの第1面12から垂直方向に延在する金属製の複数の第1バー34と、第1バーの先端に固定される第1端面36と、仕切板と第1端面と気密に接続され、複数の第1バーの外側に位置する第1カバー32と、中央フランジの第2面14から垂直方向に延在する金属製の複数の第2バー54と、第2バーの先端に固定される第2端面56と、仕切板と第2端面と気密に接続され、複数の第2バーの外側に位置する第2カバー52と、第1端面を貫通するステム24と、ステムに接続され、仕切板に形成された貫通孔を閉塞可能なディスク20とを備える、2房式擬似大気チャンバー1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製円環で形成された中央フランジと;
前記中央フランジの内部空間を覆い、貫通孔が形成された仕切板と;
前記中央フランジの第1面から垂直方向に延在する金属製の複数の第1バーと;
前記第1バーの先端に固定される第1端面と;
前記仕切板と前記第1端面と気密に接続され、前記複数の第1バーの外側に位置する第1カバーと;
前記中央フランジの第2面から垂直方向に延在する金属製の複数の第2バーと;
前記第2バーの先端に固定される第2端面と;
前記仕切板と前記第2端面と気密に接続され、前記複数の第2バーの外側に位置する第2カバーと;
前記第1端面を貫通するステムと;
前記ステムに接続され、前記仕切板に形成された貫通孔を閉塞可能なディスクとを備える:
2房式擬似大気チャンバー。
【請求項2】
前記第1カバーおよび前記第2カバーの少なくとも内面は、ポリテトラフルオロエチレンで形成される;
請求項1に記載の2房式擬似大気チャンバー。
【請求項3】
前記ディスクは、前記貫通孔と接触するコーキング材を有する;
請求項1または請求項2に記載の2房式擬似大気チャンバー。
【請求項4】
前記第1バーおよび前記第2バーは、取り外し可能である;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の2房式擬似大気チャンバー。
【請求項5】
前記第2端面に支持されたファンを有する;
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の2房式擬似大気チャンバー。
【請求項6】
前記第1端面および前記第2端面にエアロゾルを導入可能な貫通孔を有する;
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の2房式擬似大気チャンバー。
【請求項7】
前記仕切板と前記第2端面の間に、気体または霧状の液体を含む気体を噴出することによりエアカーテンを生ずるカーテン装置を備える;
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の2房式擬似大気チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似大気チャンバーに関する。特に、2種類のエアロゾルを混合した試験・研究を行うのに適した擬似大気チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症に対する関心が高まり、大気中でのウイルスの拡散についての研究も盛んになってきている。大気中のウイルスは、太陽光、気温、湿度などの影響を受けるが、実際に大気中におけるウイルスを観察することは、ウイルスが1μm以下の大きさであることもあり、困難であるのが実情である。
【0003】
そこで、大気中の環境をシミュレーションする実験装置として、擬似大気チャンバーが用いられる。擬似大気チャンバーは、大気中での反応等を調べることを目的とする環境チャンバーであり、照射光スペクトルおよび光量、気圧、気温、湿度などを制御できる反応容器である。チャンバー内に目的とするウイルスなどの微生物あるいは化合物を注入し、光化学反応など様々な反応についてシミュレーション実験を行う。バッチ実験によってエアロゾル(物質または微生物等が飛散している空気)をチャンバーに封入しその反応について時間変化に合わせて計測するのが一般的である。
【0004】
しかし、ウイルスなどの微生物を不活化する物質の効果を調べるためには、微生物の飛散状況と共に当該物質の大気中での分布が影響することを考慮する必要がある。ところが、従前の擬似大気チャンバーは1チャンバーしか有しておらず(例えば、特許文献1参照)、空気中で2種類の物質または微生物等の分布を制御して相互作用の調査は行うことは、困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願昭49-090275号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、微生物の分布と化学物質の分布などのように、2種類の物質または微生物等の分布を制御したエアロゾルを容易に準備することができる擬似大気チャンバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る2房式擬似大気チャンバー1は、例えば図1に示すように、金属製円環で形成された中央フランジ10と、中央フランジ10の内部空間を覆い、貫通孔18が形成された仕切板16と、中央フランジ10の第1面12から垂直方向に延在する金属製の複数の第1バー34と、第1バー34の先端に固定される第1端面36と、仕切板16と第1端面36と気密に接続され、複数の第1バー34の外側に位置する第1カバー32と、中央フランジ10の第2面14から垂直方向に延在する金属製の複数の第2バー54と、第2バー54の先端に固定される第2端面56と、仕切板16と第2端面56と気密に接続され、複数の第2バー54の外側に位置する第2カバー52と、第1端面36を貫通するステム24と、ステム24に接続され、仕切板16に形成された貫通孔18を閉塞可能なディスク20とを備える。
【0008】
このように構成すると、ディスクで仕切板の貫通孔を閉塞すると、仕切板および中央フランジと第1端面と第1カバーで囲まれた第1チャンバー空間と、仕切板および中央フランジと第2端面と第2カバーで囲まれた第2チャンバー空間を有し、2種類の物質または微生物等の分布を制御したエアロゾルを容易に準備することができる。そして、ディスクを仕切板の貫通孔から離し全体として1つの空間とすることにより、2種類のエアロゾルを混合し、2種類の物質または微生物等の相互作用を調査することができる。さらに、金属製の第1バーと第2バーとが、それぞれ第1カバーと第2カバーの内側に位置するので、チャンバー内の静電気を逃すことができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る2房式擬似大気チャンバー1は、例えば図1に示すように、第1カバー32および第2カバー52の少なくとも内面は、ポリテトラフルオロエチレンで形成される。このように構成すると、第1カバーおよび第2カバーの少なくとも内面がポリテトラフルオロエチレンで形成されるので、チャンバー内壁での化学反応を抑止することができる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る2房式擬似大気チャンバー1は、例えば図1に示すように、ディスク20は、貫通孔18と接触するコーキング材22を有する。このように構成すると、ディスクと仕切板との密着性が高くなり、2つの空間での意図しないエアロゾルの混合を防止できる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る2房式擬似大気チャンバー1は、例えば図1に示すように、第1バー34および第2バー54は、取り外し可能である。このように構成すると、第1バーおよび第2バーを取り外して、第1端面および第2端面を中央フランジに近づけるようにして小さくでき、搬送等も容易な2房式擬似大気チャンバーとなる。
【0012】
本発明の第5の態様に係る2房式擬似大気チャンバー1は、例えば図1に示すように、第2端面56に支持されたファン60を有する。このように構成すると、2つの空間内のエアロゾルを短時間で混合することができる。
【0013】
本発明の第6の態様に係る2房式擬似大気チャンバー1は、例えば図1に示すように、第1端面36および第2端面56にエアロゾルを導入可能な貫通孔38、58を有する。このように構成すると、仕切板および中央フランジと第1端面と第1カバーで囲まれた第1チャンバー空間と、仕切板および中央フランジと第2端面と第2カバーで囲まれた第2チャンバー空間とに異なる物質または微生物等を含むエアロゾルを容易に導入することができる。
【0014】
本発明の第7の態様に係る2房式擬似大気チャンバー1は、例えば図1に示すように、仕切板16と第2端面56の間に、気体または霧状の液体を含む気体を噴出することによりエアカーテンを生ずるカーテン装置80を備える。このように構成すると、2房式擬似大気チャンバーで混合されるエアロゾルに対するエアカーテンの影響を容易に調査することができる。
【0015】
本発明の2房式擬似大気チャンバーによれば、金属製円環で形成された中央フランジと、中央フランジの内部空間を覆い、貫通孔が形成された仕切板と、中央フランジの第1面から垂直方向に延在する金属製の複数の第1バーと、第1バーの先端に固定される第1端面と、仕切板と第1端面と気密に接続され、複数の第1バーの外側に位置する第1カバーと、中央フランジの第2面から垂直方向に延在する金属製の複数の第2バーと、第2バーの先端に固定される第2端面と、仕切板と第2端面と気密に接続され、複数の第2バーの外側に位置する第2カバーと、第1端面を貫通するステムと、ステムに接続され、仕切板に形成された貫通孔を閉塞可能なディスクとを備えるので、2種類の物質または微生物等の分布を制御したエアロゾルを容易に準備することができる擬似大気チャンバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態としての2房式擬似大気チャンバーの模式図であり、(a)は斜視図であり、(b)はディスクの正面図である。
図2】カーテン装置を説明する模式的斜視図である。
図3】2房式擬似大気チャンバーを用いて試験をする装置を示す構成図であり、オゾン水等にてウイルスの不活化を試験するための装置を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。図1は、本発明の実施の形態としての2房式擬似大気チャンバー1の模式図で、(a)は全体構造の斜視図、(b)はディスク20の正面図である。
【0018】
2房式擬似大気チャンバー1は、中央フランジ10の両側に第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50を有する。中央フランジ10は金属製円環で形成される。典型的にはステンレス鋼で形成されるが、他の金属で形成されてもよい。中央フランジ10の内部空間、すなわち円環によって囲まれる円形空間には、仕切板16が固定される。仕切板16は、金属製であっても樹脂製であってもよい。仕切板16をポリテトラフルオロエチレンで形成するか、ポリテトラフルオロエチレンで表面を覆うと、仕切板16表面での化学反応を抑止できるので好ましい。仕切板16には、貫通孔18が形成され、第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50とが連通可能である。
【0019】
中央フランジの第1面12(図1(a)の左側)に金属製の第1バー34が垂直方向に延在する。なお、後述するように、中央フランジ10に第1バー34を支持する部材が固定されるが、そのような部材から延在する場合を含めて、第1面12から延在するという。第1バー34は、中央フランジ10と同材質で形成されても、導電性を持つ異材で形成されてもよい。第1バー34は複数本設置され、いわば第1チャンバー空間30の大きさ(太さ)を決める。第1バー34の先端には、第1端面36が固定される。第1端面36は、金属製であっても樹脂製であってもよい。第1端面36をポリテトラフルオロエチレンで形成するか、ポリテトラフルオロエチレンで表面を覆うと、第1端面36表面での化学反応を抑止できるので好ましい。第1端面36には、貫通孔38が形成される。貫通孔38は、第1チャンバー空間30にエアロゾル等を導入するのに用いることができる。したがって、2つ以上の貫通孔38が形成されることが、第1チャンバー空間30にエアロゾルを循環しながら導入でき、また、種々の測定装置を接続したり、サンプルの吸引口として使用できるので、好ましい。第1端面36と第1バー34との固定は、第1バー34の先端にねじを切って、ナット40で固定するなど、取り外し可能に固定するのが好ましい。また、第1バー34と中央フランジ10とも、ねじ止めするなど、取り外し可能に固定するのが好ましい。
【0020】
仕切板16と第1端面36との間に第1カバー32が気密に接続される。第1カバー32は、複数の第1バー34の外側に位置する。第1カバー32は、透明なシートで形成されると、外部から太陽光あるいは疑似太陽光を照射できると共に、内部を観察できるので好ましい。特にポリテトラフルオロエチレンで形成するか、ポリテトラフルオロエチレンで内面を覆うと、第1カバー32内面での化学反応を抑止できるので好ましい。
【0021】
仕切板16および中央フランジ10と第1端面36と第1カバー32とで囲まれた空間が、第1チャンバー空間30となる。なお、仕切板16が第1カバー32まで広がっている場合には、第1チャンバー空間30は仕切板16と第1端面36と第1カバー32とで囲まれる。
【0022】
なお、中央フランジ10から、円環形状の軸または中心方向にリング(不図示)が張り出して、第1バー34を支持してもよいし、中央フランジ10の円環が中心方向に広がって、第1バー34を支持してもよい。このように、金属製の第1バー34が金属製の中央フランジ10に接続しているので、第1チャンバー空間30内での静電気を放散することができる。
【0023】
中央フランジの第2面14(図1(a)の右側)に金属製の第2バー54が垂直方向に延在する。なお、後述するように、中央フランジ10に第2バー54を支持する部材が固定されるが、そのような部材から延在する場合を含めて、第2面14から延在するという。第2バー54は、中央フランジ10と同材質で形成されても、導電性を持つ異材で形成されてもよい。第2バー54は複数本設置され、いわば第2チャンバー空間50の大きさ(太さ)を決める。第2バー54の先端には、第2端面56が固定される。第2端面56は、金属製であっても樹脂製であってもよい。第2端面56をポリテトラフルオロエチレンで形成するか、ポリテトラフルオロエチレンで表面を覆うと、第2端面56表面での化学反応を抑止できるので好ましい。第2端面56には、貫通孔58が形成される。貫通孔58は、第2チャンバー空間50にエアロゾルを導入するのに用いることができる。したがって、2つ以上の貫通孔58が形成されることが、第2チャンバー空間50にエアロゾルを循環しながら導入でき、また、種々の測定装置を接続したり、サンプルの吸引口として使用できるので、好ましい。第2端面56と第2バー54との固定は、第2バー54の先端にねじを切って、ナットで固定するなど、取り外し可能に固定するのが好ましい。また、第2バー54と中央フランジ10とも、ねじ止めするなど、取り外し可能に固定するのが好ましい。
【0024】
第2端面56には、ファン60が固定される。ファン60は、第2チャンバー空間50内のエアロゾルを、さらに、第1チャンバー空間30内のエアロゾルを撹拌できれば、どのようなファンであってもよい。
【0025】
仕切板16と第2端面56との間に第2カバー52が気密に接続される。第2カバー52は、複数の第2バー54の外側に位置する。第2カバー52は、透明なシートで形成されると、外部から太陽光あるいは疑似太陽光を照射できると共に、内部を観察できるので好ましい。特にポリテトラフルオロエチレンで形成するか、ポリテトラフルオロエチレンで内面を覆うと、第2カバー52内面での化学反応を抑止できるので好ましい。
【0026】
仕切板16および中央フランジ10と第2端面56と第2カバー52とで囲まれた空間が、第2チャンバー空間50となる。なお、仕切板16が第2カバー52まで広がっている場合には、第2チャンバー空間50は仕切板16と第2端面56と第2カバー52とで囲まれる。
【0027】
なお、中央フランジ10から、円環形状の軸または中心方向にリング(不図示)が張り出して、第2バー54を支持してもよいし、中央フランジ10の円環が中心方向に広がって、第2バー54を支持してもよい。このように、金属製の第2バー54が金属製の中央フランジ10に接続しているので、第2チャンバー空間50内での静電気を放散することができる。
【0028】
第1端面36を貫通してステム24が第1チャンバー空間30に挿入される。ステム24の先端には、ディスク20が接続される。ステム24を操作して、ディスク20を仕切板16の貫通孔18に当てることにより、貫通孔18は閉塞される。すなわち、ディスク20は、第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50とを連通させ、また、2房に分離させるのに用いられる。図1(b)に示すように、ディスク20が、貫通孔18と接触する、すなわち貫通孔18を閉塞するために仕切板16に接触する部分にコーキング材22を貼り付けるのが好ましい。コーキング材22としては、シリコン系、ポリウレタン系、アクリル系などでよく、特に限定されない。コーキング材22を介してディスク20と仕切板16とが接触することで、気密を維持しやすい。なお、ステム24の操作は、アクチュエータで行っても、電気的に行っても、手動で行ってもよく、特に限定はされない。なお、手動で行う場合には、ディスク20を閉塞位置に維持するためにステム24を固定できるようにするのが好ましい。
【0029】
仕切板16と第2端面56との間、すなわち、第2チャンバー空間50内にカーテン装置80が設置される。カーテン装置80は、気体または霧状の液体を含む気体を噴出することによりエアカーテンを生ずる装置であって、連通している第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50において、エアカーテンで仕切りを設け、エアカーテンの効果を調査するのに用いる装置である。よって、第2チャンバー空間50の仕切板16の貫通孔18の近くに設置されることが多い。カーテン装置80を貫通孔18の近くに設置すること、より好ましくは貫通孔18を覆うように設置することにより、貫通孔18と同程度の大きさのカーテン装置80で、連通している第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50を2つの空間に分けることができる。なお、カーテン装置80を大きくすると、噴出された気体がカーテン装置80から漏れ、エアカーテンだけの効力を調査しにくくなる恐れがある。例えば、蛍光色素を含む粒子を使用してエアカーテンを形成することで、そこに別な色の蛍光色素を含ませたエアロゾルを噴霧してエアカーテンの効力を可視化することができる。
【0030】
図2に、一例としてのカーテン装置80の斜視図を示す。カーテン装置80は、第2カバー52の内面に沿う外径を有するリング82を有する。リング82は、典型的には矩形断面を有するが、限定はされない。リング82の上部において内向きの面には、気体または霧状の液体を含む気体を噴出する噴出孔84が形成される。噴出された気体または霧状の液体を含む気体によりエアカーテンが形成されるように、噴出する向きを整えて複数の噴出孔84が形成される。カーテン装置80の下部には、噴出孔84から噴出された気体または霧状の液体を含む気体を回収するためのフード86が設置される。噴出孔84から噴出された気体または霧状の液体を含む気体は、フード86で回収され、特に液体成分がリング82の内部を通って、再び噴出孔84から噴出される。
【0031】
カーテン装置80には不図示の気体供給チューブが接続し、2房式擬似大気チャンバー1の外部から気体または霧状の液体を含む気体を供給してもよい。また、リング82の底部に溜まった液体を排出するチューブ(不図示)が接続されてもよく、該チューブから排出された液体を霧化して、カーテン装置80に供給してもよい。あるいは、リング82の内部に小型ポンプ等を備えて回収された液体を噴出孔84から噴出してもよい。なお、2房式擬似大気チャンバー1の使用目的によっては、カーテン装置80を備えていなくてもよく、カーテン装置80は取り外し可能に設置することが好ましい。
【0032】
カーテン装置80には、リング82の面(エアカーテンが作成される部分)を閉じる蓋(不図示)を備えてもよい。例えばカメラレンズの絞り機能のように複数の絞り羽根を閉じることにより、リング82の面を閉じてもよい。カーテン装置80によるエアカーテンが安定するまでは閉じて置くことにより、エアカーテンの効力をより正確に調査することができる。また、カーテン装置80が貫通孔18を覆って設置されている場合には、ディスク20で貫通孔18を閉塞する代わりに、カーテン装置80の蓋を閉じて第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50とを分離することもできる。
【0033】
次に図3を参照して、2房式擬似大気チャンバー1の使用例につき説明する。図3は、エアロゾル中のウイルスを不活化するオゾン水の効果を試験するための装置100である。なお、図3では、2房式擬似大気チャンバー1の詳細の図示は省略する。オゾン水の効果を検証するための装置100では、2房式擬似大気チャンバー1の第1チャンバー空間30にオゾン水を含むエアロゾルを導入し、第2チャンバー空間50にウイルスを飛散させる。
【0034】
第1端面36の1つの貫通孔38には、エアロゾルを第1チャンバー空間30に送り込むためのポンプ102、および、オゾン水を霧化するためのネブライザー106を、三方活栓(または三方弁)108およびチューブ(または配管)を介して接続する。なお、三方活栓108は、HEPAフィルターを接続したり、パージする際の空気の出口等として使用するためのものである。第1端面36のもう1つの貫通孔38には、第2チャンバー空間50から空気を循環するチューブ128が接続される。チューブ128は、第2端面の1つの貫通孔58に接続し、貫通孔58側から三方活栓120、バイオサンプラー122、ポンプ124、HEPAフィルター126が設置される。また、三方活栓120には、光学式パーティクルカウンター130が接続する。第2端面のもう1つの貫通孔58には、ポンプ112、ネブライザー116を、三方活栓118およびチューブを介して接続する。なお、三方活栓118は、三方活栓108と同様に使用するためのものである。ここでは、三方活栓118からチューブ129が、チューブ128の貫通孔38とHEPAフィルター126の間の三方活栓119を介して接続する。第2チャンバー空間50にウイルスを含むエアロゾルを導入する。
【0035】
このように構成されたオゾンの効果を検証するための装置100において、まず、ステム24を操作してディスク20で仕切板16の貫通孔18を閉塞した状態にする。その上で、ネブライザー116に貯留されたウイルスを含むエアロゾルを、ポンプ112、ネブライザー116に接続されたチューブを介して第2チャンバー空間50に導入する。導入されたエアロゾル中のウイルス濃度は、バイオサンプラー122を用いて検出する。ウイルス濃度が検出された空気は、チューブ128を通りHEPAフィルーで浄化され、三方活栓119でチューブ129に流され、第2端面の三方活栓118、貫通孔58から第2チャンバー空間50に戻される。このように第2チャンバー空間50内の圧は一定に保たれる。そして、ポンプ102を起動して、ネブライザー106で貯留されたオゾン水を霧化して第1チャンバー空間30に導入する。
【0036】
次に、ステム24を操作して、ディスク20による仕切板16の貫通孔18の閉塞を解放し、第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50とを連通する。さらにファン60により第2チャンバー空間50内のエアロゾルを撹拌し、第1チャンバー空間30と第2チャンバー空間50のエアロゾルを十分に撹拌する。なお、その際に、太陽光の影響を勘案するために2房式擬似大気チャンバー1を太陽光に晒しても、疑似太陽光を照射してもよい。
【0037】
エアロゾル撹拌後のエアロゾル中のウイルス濃度を、バイオサンプラー122を用いて検出する。また、エアロゾル中の粒子濃度を光学式パーティクルカウンター130を用いて検出する。その結果より、粒子濃度とウイルスの不活化との関係を知ることができる。なお、第2チャンバー空間50からチューブ128に吸引されたエアロゾルは、ウイルス濃度や粒子濃度の検出後に、HEPAフィルター126を用いて浄化された後に第1チャンバー空間30に戻され、第1チャンバー空間30および第2チャンバー空間50内の圧は一定に保たれる。
【0038】
このように、本発明による2房式擬似大気チャンバー1を用いることにより、2種類の物質または微生物等の分布を容易に制御した調査を行うことができる。特に、第1チャンバー空間30および第2チャンバー空間50の内面、すなわち、第1カバー32および第2カバー52の内面、第1端面36および第2端面56、仕切板16の表面をポリテトラフルオロエチレンで形成すると、それらの表面での化学反応が抑止され、大気中のシミュレーションをより精度よく行うことができる。また、第1バー34、第2バー54および中央フランジ10を金属でステンレス鋼等の導電性金属で形成すると、静電気を放散できるので、静電気の影響を除去することができる。
【0039】
また、カーテン装置80を用いて、オゾンガスやオゾン水を含むエアカーテンを形成すると、オゾンガスやオゾン水のエアカーテンによるウイルスの遮蔽を容易に調査することができる。なお、オゾンガスおよびオゾン水は空気より重いので、エアカーテンを上から下に落とすようにして形成するのが好ましい。このようにエアカーテンによる遮蔽の効力が確認されると、室内の間仕切り無しで、感染症対策などが可能になり、その効果は大きい。
【0040】
さらに、第1バー34、第2バー54を取り外し可能な構成とすると、2房式擬似大気チャンバー1を小さくすることが可能となり、搬送の容易な2房式擬似大気チャンバー1となる。
【符号の説明】
【0041】
1 2房式擬似大気チャンバー
10 中央フランジ
12 中央フランジの第1面
14 中央フランジの第2面
16 仕切板
18 貫通孔
20 ディスク
22 コーキング材
24 ステム
30 第1チャンバー空間
32 第1カバー
34 第1バー
36 第1端面
38 貫通孔
40 ナット
50 第2チャンバー空間
52 第2カバー
54 第2バー
56 第2端面
58 貫通孔
60 ファン
80 カーテン装置
82 リング
84 噴出孔
86 フード
100オゾン水の効果を検証するための装置
102、112、124 ポンプ
106、116 ネブライザー
108、118、119、120 三方活栓
122 バイオサンプラー
126 HEPAフィルター
128、129 チューブ
130 光学式パーティクルカウンター
図1
図2
図3