(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147519
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/02 20060101AFI20220929BHJP
B65H 5/38 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B41J11/02
B65H5/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048794
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
【テーマコード(参考)】
2C058
3F101
【Fターム(参考)】
2C058AB18
2C058AC07
2C058AC11
2C058AF31
2C058AF38
2C058AF44
2C058AF47
2C058DA11
3F101FA00
3F101FC01
3F101FC07
3F101FC18
3F101FD01
3F101FD10
3F101FE01
3F101FE06
3F101LA07
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】規制部材の表面に識別パターンを加工することなく規制部材を検出する。
【解決手段】プリンタは、記録媒体を支持する支持面を有する支持台と、支持面よりも上方に設けられ、下方に向かってインクを吐出するインクヘッドと、支持面に支持された記録媒体を所定の搬送方向Xに搬送する搬送装置と、支持面よりも上方に設けられ、記録媒体が搬送装置によって搬送される際に支持面から浮き上がることを規制する規制部材72Aと、規制部材72Aよりも上方に設けられ、第1の色を検知可能なセンサと、を備える。規制部材72Aは、上下方向に貫通した第1貫通孔72H1を備え、第1貫通孔72H1の周囲のうちの少なくとも一部R1が第1の色に構成されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持面を有する支持台と、
前記支持面よりも上方に設けられ、下方に向かってインクを吐出するインクヘッドと、
前記支持面に支持された前記記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記支持面よりも上方に設けられ、前記記録媒体が前記搬送装置によって搬送される際に前記支持面から浮き上がることを規制する規制部材と、
前記規制部材よりも上方に設けられ、第1の色を検知可能なセンサと、を備え、
前記規制部材は、上下方向に貫通した第1貫通孔を備え、前記第1貫通孔の周囲のうちの少なくとも一部が前記第1の色に構成されている、
プリンタ。
【請求項2】
前記規制部材よりも下方に設けられ、上方から見て少なくとも一部が前記第1貫通孔と重なった下部部材をさらに備え、
前記センサは、第2の色を検知し前記第1の色と前記第2の色とを識別することが可能に構成されており、
前記下部部材の前記第1貫通孔と重なった部分は、前記第2の色に構成されている、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記下部部材の前記第1貫通孔と重なった部分は、前記第2の色のカラーシートを前記下部部材に貼付することによって前記第2の色に構成されている、
請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
一部が前記第1貫通孔に重なるように前記規制部材の下面に貼付され、少なくとも前記第1貫通孔に重なった部分が第2の色に構成されたカラーシートをさらに備え、
前記センサは、前記第2の色を検知し前記第1の色と前記第2の色とを識別することが可能に構成されている、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記センサは、第2の色を検知し前記第1の色と前記第2の色とを識別することが可能に構成されており、
前記第1貫通孔は、前記支持面の上方に設けられ、
前記支持面のうち上方から見て前記第1貫通孔と重なる部分は、前記第2の色に構成されている、
請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記第1の色および前記第2の色は、一方が黒色であり、他方が白色である、
請求項2~5のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項7】
前記センサに接続された判定装置をさらに備え、
前記規制部材は、上下方向に貫通した第2貫通孔をさらに備え、前記第2貫通孔の周囲のうちの少なくとも一部も前記第1の色に構成されており、
前記判定装置は、
前記センサが前記第1の色を検知したデータに基づいて、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔を含むパターンを抽出する第1処理部と、
前記第1処理部によって抽出されたパターンが予め登録されたパターンに一致する場合に、前記規制部材が装着されていると判定する第2処理部と、を備えている、
請求項1~6のいずれか一つに記載のプリンタ。
【請求項8】
前記第1処理部は、前記センサが前記第1の色を検知したデータに基づいて、所定の幅方向に関する前記第1貫通孔の幅、前記第2貫通孔の幅、および前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間の距離を算出し、
前記第2処理部は、前記第1処理部によって算出された前記第1貫通孔の幅、前記第2貫通孔の幅、および前記第1貫通孔と前記第2貫通孔との間の距離がいずれも予め登録された長さに一致する場合に、前記規制部材が装着されていると判定するように構成されている、
請求項7に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔は、前記幅方向に直交する方向に延びる一対の外形線をそれぞれ備えるとともに、前記幅方向に並んで配置されている、
請求項8に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記規制部材は、前記搬送方向に直交する直交方向に移動可能なように前記支持台に支持されており、
前記センサを前記直交方向に移動させるセンサ移動装置を備えている、
請求項1~9のいずれか一つに記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体が載置されるプラテンと、プラテンに載置された記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、記録媒体を搬送する搬送装置と、を備えたプリンタが知られている。そのようなプリンタの中には、搬送される記録媒体の幅方向の両端部の浮き上がりを抑制する部材を備えたものが存在する。例えば、特許文献1には、記録媒体の幅に合わせて幅方向の位置を調整可能な媒体押さえ部材を備えた記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、媒体押さえ部材の位置は、媒体押さえ部材に設けられた複数の孔を通して記録媒体の端部を目視することにより調整できる、とされている。ただし、媒体の浮き上がりを抑制する部材が少なくとも装着されているかどうかをプリンタのセンサによって確認することは実際に行われている。例えば、媒体の浮き上がりを規制する規制部材の表面にセンサが識別可能なパターンのシールを貼付し、シールの存在をセンサで検出することにより、規制部材が装着されているかどうかを判定することができる。規制部材そのものを識別するためには高性能なセンサや高度な画像解析が必要になるため、上記した手段は規制部材の簡易な検出のために有効である。
【0005】
しかしながら、規制部材の表面にシールを貼付すると、シールがめくれた場合に、めくれたシールが規制部材の上方を通過するインクヘッドに接触する等の問題が発生するおそれがある。その他、例えば塗装などの手段によって規制部材の表面にパターンを形成することにも同様のおそれがあり、規制部材の表面に識別パターンを加工することなく規制部材を検出することが好ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録媒体の浮き上がりを規制する規制部材を検出可能なプリンタであって、規制部材の表面に識別パターンを加工することなく規制部材を検出可能なプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するプリンタは、記録媒体を支持する支持面を有する支持台と、前記支持面よりも上方に設けられ、下方に向かってインクを吐出するインクヘッドと、前記支持面に支持された前記記録媒体を所定の搬送方向に搬送する搬送装置と、前記支持面よりも上方に設けられ、前記記録媒体が前記搬送装置によって搬送される際に前記支持面から浮き上がることを規制する規制部材と、前記規制部材よりも上方に設けられ、第1の色を検知可能なセンサと、を備える。前記規制部材は、上下方向に貫通した第1貫通孔を備え、前記第1貫通孔の周囲のうちの少なくとも一部が前記第1の色に構成されている。
【0008】
上記プリンタによれば、第1の色を検知可能なセンサによって、第1の色に構成された第1貫通孔の周囲部分と第1貫通孔との境界を検知することができる。そのため、第1貫通孔とその周囲部分とを、センサが識別すべき識別パターンとして機能させることができる。よって、上記プリンタによれば、規制部材の表面に識別パターンを加工することなく規制部材を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2A】インクヘッドユニットおよびカッティングヘッドユニットの正面図である。
【
図2B】インクヘッドユニットおよびカッティングヘッドユニットの正面図である。
【
図5】プラテンの周辺の構造の一部を示す斜視図である。
【
図6】プラテンの周辺の構造の一部を示す側面図である。
【
図8】上部プレートおよび下部プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[プリンタの構成]
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ100(以下、プリンタ100とする。)について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ100は、記録媒体5に対して印刷および切断(カッティング)が可能ないわゆるプリント&カット機である。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ100の正面にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ100から上記ユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは、主走査方向Yと直交する方向である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。また、後方は副走査方向Xの上流側に相当し、前方は副走査方向Xの下流側に相当する。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向は、互いに直交している。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0012】
記録媒体5は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体5は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。本実施形態の記録媒体5は、例えば、ポリ塩化ビニルシート材である。ポリ塩化ビニルシート材は、例えば、普通紙から形成された台紙(基材)と、ポリ塩化ビニルから形成された剥離紙と、台紙と剥離紙との間に配置された接着剤とから構成されている。剥離紙にはインクヘッド22(
図2A参照)から吐出されたインクが定着する。なお、台紙および剥離紙の材料は上記のものに限定されないが、基材および剥離紙は典型的には相互に異なる材料から形成されている。本明細書において「切断」、「カッティング」とは、記録媒体5の厚み方向の全体を切断する場合(例えば、シール材の台紙および剥離紙の両方を切断する場合)と、記録媒体5の厚み方向の一部を切断する場合(例えば、シール材の台紙は切断せず、剥離紙のみを切断する場合)とが含まれる。
【0013】
図1に示すように、プリンタ100は、ベース部材12と、脚11と、記録媒体5を支持するプラテン16(
図4も参照)と、インクヘッドユニット20と、カッティングヘッドユニット30と、キャリッジ移動装置40と、媒体搬送装置55と、制御装置90とを備えている。脚11は、ベース部材12を支持するものであり、ベース部材12の下面に設けられている。ベース部材12は、主走査方向Yに延びる。ベース部材12には、主走査方向Yに延びたケーシング12aが設けられている。
【0014】
プラテン16は、記録媒体5を支持する支持台の一例である。プラテン16は、記録媒体5への印刷および記録媒体5を切断する際、記録媒体5を支持する。プラテン16には、記録媒体5が載置される。
図4に示すように、プラテン16は、記録媒体5を支持する支持面16Pを有する。支持面16Pは、平坦状に形成されている。記録媒体5への印刷および記録媒体5の切断は、プラテン16上で行われる。プラテン16は主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びる。プラテン16の主走査方向Yの長さは、副走査方向Xの長さより長い。プラテン16は、ベース部材12(
図1参照)に設けられている。プラテン16は、ベース部材12の中央部に設けられている。
【0015】
図6に示すように、プラテン16には、後述する保持部材76の一部(ここでは後述する突状部76C)が嵌め込まれる第1ガイド溝16Aが形成されている。第1ガイド溝16Aは、支持面16Pより下方に位置する。第1ガイド溝16Aは、プラテン16の前端部の下面に形成されている。第1ガイド溝16Aは、上方に向けて凹む。第1ガイド溝16Aは、主走査方向Yに延びる。第1ガイド溝16Aは、プラテン16の主走査方向Yの全体に亘って形成されている。
【0016】
図6に示すように、プラテン16には、後述する上部プレート72の一部(ここでは後述する係止部74)が嵌め込まれる第2ガイド溝16Bが形成されている。第2ガイド溝16Bは、支持面16Pに形成されている。第2ガイド溝16Bは、支持面16Pから下方に向けて凹む。第2ガイド溝16Bは、主走査方向Yに延びる。第2ガイド溝16Bは、プラテン16の主走査方向Yの全体に亘って形成されている。第2ガイド溝16Bは、第1ガイド溝16Aより後方に位置する。第2ガイド溝16Bは、後述するグリットローラ57より前方に位置する。第2ガイド溝16Bには、上部プレート72の一部(ここでは係止部74)が係止する係止突起16Eが形成されている。係止突起16Eは後方に向けて延びる。係止突起16Eは、主走査方向Yに延びる。係止突起16Eは、支持面16Pより下方に位置する。係止突起16Eは、プラテン16の主走査方向Yの全体に亘って形成されている。
【0017】
図6に示すように、プリンタ100は、ガイド部材19を備えている。ガイド部材19は、プラテン16より前方に配置されている。ガイド部材19は、ベース部材12(
図1参照)に支持されている。ガイド部材19は、記録媒体5が副走査方向Xの上流側から下流側に移動するときには、プラテン16から搬送された記録媒体5を案内する。ガイド部材19の上面19Aは、後方から前方に向けて斜め下方に傾いている。上面19Aは、主走査方向Yから見て略円弧状に形成されている。ガイド部材19の上面19Aは、支持面16Pより下方に位置する。
【0018】
図1に示すように、プリンタ100は、主走査方向Yおよび上下方向に延びる中央壁14を備えている。中央壁14は、ベース部材12に支持されている。中央壁14は、プラテン16の上方に配置されている。中央壁14とプラテン16との間には、記録媒体5が通過可能な間隙が形成されている。プリンタ100は、ガイドレール15を備えている。ガイドレール15は、主走査方向Yに延びる。ガイドレール15は、中央壁14に設けられている。ガイドレール15は、プラテン16の上方に配置されている。
【0019】
図2Aに示すように、インクヘッドユニット20は、第1キャリッジ21と、複数のインクヘッド22と、を備えている。第1キャリッジ21は、ガイドレール15に係合している。第1キャリッジ21は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。インクヘッド22は、第1キャリッジ21に搭載されている。インクヘッド22は、第1キャリッジ21の移動に伴って、主走査方向Yに移動可能に構成されている。ここでは、5つのインクヘッド22が第1キャリッジ21に搭載されている。ただし、インクヘッド22の個数は5個に限定されない。インクヘッド22は、支持面16Pよりも上方に設けられ、下方に向かってインクを吐出する。インクヘッド22は、プラテン16に載置された記録媒体5にインクを吐出するノズル(図示せず)を有する。インクヘッド22は、記録媒体5に所定の画像を印刷する。
【0020】
図2Aに示すように、カッティングヘッドユニット30は、第2キャリッジ31と、カッティングヘッド38とを備えている。カッティングヘッド38は、ソレノイド32と、カッター33とを備えている。第2キャリッジ31は、ガイドレール15に係合している。第2キャリッジ31は、主走査方向Yに関して第1キャリッジ21の側方(ここでは左方)に配置されている。第2キャリッジ31は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。カッティングヘッド38は、第2キャリッジ31に搭載されている。カッター33は、プラテン16に載置された記録媒体5を切断する。ソレノイド32は、制御装置90(
図1参照)によって制御される。ソレノイド32がON/OFFされると、カッター33は上下方向に移動して記録媒体5に接触し、あるいは記録媒体5から離反する。カッター33は、第2キャリッジ31の移動に伴って、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0021】
第2キャリッジ31には、センサ95が搭載されている。センサ95は、ここでは、明度がある程度以上異なる色を識別可能なセンサである。センサ95は、例えば、カメラである。センサ95は、後述する抑制部材70の規制板72Aよりも上方に設けられている。センサ95は、少なくとも黒色と白色とを検知し、黒色と白色とを識別可能に構成されている。黒色は第1の色の一例であり、白色は第2の色の一例であるが、第1の色および第2の色は、公知のセンサにより区別可能な色であれば限定されない。センサ95の性能、種類等も、少なくとも第1の色と第2の色とを識別可能である限りにおいて限定されない。センサ95は、抑制部材70がプリンタ100に装着されているかどうかを検出するセンサである。センサ95は、また、印刷時に記録媒体5に印刷され、カッティング時の位置の基準となるクロップマーク(図示せず)を検出するセンサでもある。
【0022】
キャリッジ移動装置40は、プラテン16に載置された記録媒体5に対してインクヘッドユニット20の第1キャリッジ21およびカッティングヘッドユニット30の第2キャリッジ31を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。キャリッジ移動装置40は、第1キャリッジ21および第2キャリッジ31を主走査方向Yに移動させる。キャリッジ移動装置40は、センサ95を主走査方向Yに移動させるセンサ移動装置でもある。キャリッジ移動装置40の構成は特に限定されない。
図1に示すように、キャリッジ移動装置40は、第1プーリ41と、第2プーリ42と、無端状のベルト43と、キャリッジモータ44とを備えている。第1プーリ41は、ガイドレール15の左端側に設けられている。第2プーリ42は、ガイドレール15の右端側に設けられている。ベルト43は、第1プーリ41と第2プーリ42とに巻き掛けられている。ベルト43は、第2キャリッジ31(
図2A参照)の背面上部に固定されている。第2プーリ42には、キャリッジモータ44が接続されている。ただし、キャリッジモータ44は、第1プーリ41に接続されていてもよい。ここでは、キャリッジモータ44が駆動して、第2プーリ42が回転することで、第1プーリ41と第2プーリ42との間においてベルト43が走行する。これにより、第2キャリッジ31は主走査方向Yに移動する。即ち、キャリッジモータ44は、第2キャリッジ31を主走査方向Yに移動させる。後述するように、第1キャリッジ21は、第2キャリッジ31の移動に伴って主走査方向Yに移動する。キャリッジモータ44は、第2キャリッジ31を介して第1キャリッジ21を間接的に主走査方向Yに移動させる。キャリッジモータ44は、制御装置90(
図1参照)に制御される。
【0023】
図2Aに示すように、第1キャリッジ21の左側部分には、磁石によって構成される第1連結部材24が設けられている。第2キャリッジ31の右側部分には、磁石によって構成される第2連結部材34が固定されている。第1連結部材24は、第2連結部材34に対し、着脱自在に連結する。本実施形態では、第1連結部材24および第2連結部材34は、磁力を利用するものである。ただし、第1連結部材24および第2連結部材34は磁力を利用するものに限られず、係合部材等の他の構成を備えたものであってもよい。第1キャリッジ21の右側には、L字状に形成された第1受け金具25が設けられている。
【0024】
図2Aに示すように、プラテン16の左方および右方には、それぞれ左サイドフレーム7Lおよび右サイドフレーム7Rが配置されている。右サイドフレーム7Rには、インクヘッドユニット20を待機位置にロックするためのロック装置35が設けられている。ロック装置35は、第1受け金具25に引っ掛けられる第2受け金具36と、第2受け金具36をロック位置(
図2B参照)と非ロック位置(
図2A参照)との間で移動させるロック用ソレノイド37(
図3参照)とを備えている。ロック用ソレノイド37は、制御装置90によって制御される。
【0025】
図2Aに示すように、インクヘッド22によって記録媒体5に所定の画像を印刷する際には、第2受け金具36が非ロック位置に設定される。カッティングヘッドユニット30の第2キャリッジ31が右方に移動し、第2連結部材34と第1連結部材24とが接触すると、第2キャリッジ31と第1キャリッジ21とが連結される。その結果、インクヘッドユニット20は、カッティングヘッドユニット30と共に主走査方向Yに移動可能となる。即ち、キャリッジモータ44が駆動することで、第1キャリッジ21および第2キャリッジ31が主走査方向Yに移動する。一方、カッター33によって記録媒体5を切断する際には、
図2Bに示すように、インクヘッドユニット20が待機位置に位置付けられ、ロック装置35の第2受け金具36がロック位置に設定される。これにより、インクヘッドユニット20の主走査方向Yの移動が阻止される。第2キャリッジ31が左方へ移動すると、第2連結部材34と第1連結部材24とが離反し、第2キャリッジ31と第1キャリッジ21との連結が解除される。その結果、インクヘッドユニット20が待機位置に待機した状態で、カッティングヘッドユニット30のみが主走査方向Yに移動可能となる。即ち、キャリッジモータ44が駆動することで、第2キャリッジ31のみが主走査方向Yに移動する。
【0026】
媒体搬送装置55は、プラテン16の支持面16Pに支持された記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。副走査方向Xは、記録媒体5の搬送方向である。
図1に示すように、媒体搬送装置55は、複数のグリットローラ57と、フィードモータ58(
図3参照)と、複数のピンチローラユニット60と、保持シャフト45と、レバー46と、を備えている。
【0027】
図4に示すように、グリットローラ57は、プラテン16に設けられている。グリットローラ57は、グリットローラ57の上部が外部に露出するようにプラテン16に埋設されている。本実施形態では、プリンタ100は、8個のグリットローラ57を備えている。なお、グリットローラ57の個数は8個に限定されない。グリットローラ57は、主走査方向Yに並列している。グリットローラ57は、後述するピンチローラ62(
図5参照)との間に記録媒体5を挟み込む。フィードモータ58(
図3参照)は、グリットローラ57に接続されている。フィードモータ58は、制御装置90(
図1参照)に制御される。グリットローラ57とピンチローラ62との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ58が駆動してグリットローラ57が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、グリットローラ57とピンチローラ62との間に記録媒体5が挟まれた状態で、記録媒体5は上流側から下流側または下流側から上流側に移動する。
【0028】
図6に示すように、ピンチローラユニット60は、ピンチローラ62と、支持部材64とを備えている。ピンチローラユニット60は、プラテン16より上方に配置されている。ピンチローラ62は、記録媒体5を上から押さえる。ピンチローラ62は、グリットローラ57と上下方向に対向するように、グリットローラ57の上方に配置可能に構成されている。支持部材64は、ピンチローラ62を回転可能に支持する。支持部材64は、ピンチローラ62を上下方向に移動可能に支持する。支持部材64は、主走査方向Yに延びる保持シャフト45(
図1参照)に回動可能に支持されている。
【0029】
図1に示すように、保持シャフト45は、ガイドレール15よりも下方に配置されている。保持シャフト45は、プラテン16よりも上方に配置されている。レバー46は、保持シャフト45の右端に接続されている。レバー46を押し下げることで、保持シャフト45が回転し、ピンチローラ62をグリットローラ57に対して接近させることができる。一方、レバー46を押し上げることで、保持シャフト45が回転し、ピンチローラ62をグリットローラ57に対して離反させることができる。
【0030】
図4に示すように、プリンタ100は、記録媒体5の浮き上がりを抑制する抑制部材70を備えている。抑制部材70は、プラテン16に支持された記録媒体5が媒体搬送装置55によって搬送される際に支持面16Pから浮き上がることを抑制するものである。抑制部材70は、記録媒体5の右縁の浮き上がりを抑制する右側抑制部材70Rと、記録媒体5の左縁の浮き上がりを抑制する左側抑制部材70Lと、を含む。右側抑制部材70Rと左側抑制部材70Lとは、平面視で副走査方向Xに延びる直線に対して線対称である点を除き同じ構成であるため、以下では右側抑制部材70Rについて説明する。右側抑制部材70Rは、プラテン16に対して摺動可能に設けられている。右側抑制部材70Rは、主走査方向Yに移動可能なようにプラテン16に支持されている。右側抑制部材70Rは、記録媒体5の主走査方向Yの長さ(幅方向の長さ)に応じて、プラテン16に対する位置を変更可能に構成されている。
図5に示すように、記録媒体5の上方に右側抑制部材70Rの一部が配置される。
【0031】
図7に示すように、右側抑制部材70Rは、記録媒体5の浮き上がりを抑制する上部プレート72と、上部プレート72をプラテン16に保持させる保持部材76と、上部プレート72の裏面に設けられた下部プレート85と、を備えている。本実施形態では、上部プレート72と保持部材76とは別体に形成されているが、一体に形成されていてもよい。
【0032】
図7に示すように、上部プレート72は、副走査方向Xに延びる。上部プレート72は、例えば、金属材料から形成されている。上部プレート72は、例えば、金属板を折り曲げ加工することによって形成される。上部プレート72は、副走査方向Xに延びる規制板72Aと、規制板72Aの前端から下方に延びる側板部72Bと、を備えている。規制板72Aは、プラテン16の支持面16Pよりも上方に設けられ、媒体搬送装置55によって搬送される記録媒体5の浮き上がりを規制する規制部材の一例である。ただし、記録媒体5の浮き上がりを規制する規制部材は、平板状の規制板72Aに限定されるわけではない。規制板72Aは、副走査方向Xに延びる。上部プレート72は、ここでは、黒色に塗装されている。ただし、上部プレート72は、少なくとも規制板72Aの一部が黒色に塗装されていればよい。この塗装範囲については後述する。規制板72Aは、支持面16Pから離間されて配置される左側部72ALと、下部プレート85が設けられかつ下部プレート85を介してプラテン16の支持面16Pに載置される右側部72ARと、を含む。左側部72ALは、支持面16Pと接触しない。即ち、左側部72ALと支持面16Pとの間には、記録媒体5が通過可能な隙間が形成されている。
【0033】
規制板72Aの後端には、プラテン16に形成された第2ガイド溝16B(
図6参照)に係止する係止部74が形成されている。係止部74は、第2ガイド溝16Bの係止突起16E(
図6参照)に係止する。係止部74は、例えば、曲げ加工により形成されている。規制板72Aの前端は、側板部72Bと接続している。側板部72Bの一部は、支持面16Pより下方に位置する。側板部72Bは、上下方向に延びる第1部分72BLと、第1部分72BLの下端から後方に延びる第2部分72BMと、第2部分72BMの後端から上方に延びる第3部分72BNとを含む。第1部分72BLと、第2部分72BMと、第3部分72BNとによって、保持部材76が係止される凹部72BD(
図8も参照)が形成されている。本実施形態では、凹部72BDには、保持部材76の後述する腕部76Bが保持される。
【0034】
下部プレート85は、上部プレート72の規制板72Aよりも下方に設けられている。下部プレート85は、平板状に構成され、規制板72Aの右側部72ARの裏面に設けられている。下部プレート85は、支持面16Pと面接触している。そのため、記録媒体5は、下部プレート85と支持面16Pとの間を通過できない。下部プレート85の厚みは、記録媒体5の厚みより厚い。下部プレート85は、ここでは、塗装されていないステンレス板によって形成されている。
【0035】
図10は、右側抑制部材70Rの平面図である。
図10に示すように、規制板72Aの右側部72ARは、それぞれ上下方向に貫通する第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2を備えている。第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、いずれも上方から見て矩形に構成されている。第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、主走査方向Yに並んで配置されている。ここでは、第2貫通孔72H2は、第1貫通孔72H1よりも右方に配置されている。第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、主走査方向Yに直交する副走査方向Xに延びる一対の外形線(以下、第1貫通孔72H1の一対の外形線をL1LおよびL1R、第2貫通孔72H2の一対の外形線をL2LおよびL2Rの符号で表す)をそれぞれ備えている。それぞれ矩形に構成された第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、主走査方向Yに延びる一対の外形線も備えている。
【0036】
第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、いずれも下部プレート85の上方に設けられている。第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、いずれも、上方から見て下部プレート85の一部と重なっている。第1貫通孔72H1の周囲と第2貫通孔72H2の周囲とを含む規制板72Aの上面全体は、黒色に塗装されている。以下、規制板72Aの黒色に構成された領域のことを黒色領域R1とも呼ぶが、本実施形態では、黒色領域R1は、規制板72Aの上面全体である。ただし、黒色領域R1は、第1貫通孔72H1の周囲および第2貫通孔72H2の周囲のうち、センサ95のセンシングラインLS(後述)上に少なくとも存在していればよい。黒色領域R1は、第1貫通孔72H1の周囲領域と第2貫通孔72H2の周囲領域とに分割されていてもよく、第1貫通孔72H1の周囲領域および第2貫通孔72H2の周囲領域は、それぞれ複数に分割されていてもよい。前述したように、黒色領域R1は、ここでは、塗装により黒色に構成されている。ただし、黒色領域R1を黒色に構成する方法は、塗装には限定されない。
【0037】
図11は、下部プレート85の平面図である。下部プレート85には、白色に構成された白色領域R2が形成されている。下部プレート85のうち少なくとも、上方から見て第1貫通孔72H1と重なった領域85B1と第2貫通孔72H2と重なった領域85B2とには、白色領域R2が形成される。領域85B1および領域85B2は、それぞれ第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2を通して、上方から視認可能である。
図11に示すように、ここでは、白色領域R2は、領域85B1および領域85B2を含む1つの矩形の領域として構成されている。ただし、白色領域R2は、領域85B1を含む任意の形状の領域と、領域85B2を含む任意の形状の領域とによって構成されていてもよい。本実施形態では、白色領域R2は、白色のシール86を下部プレート85に貼付することによって白色に構成されている。ただし、白色領域R2を白色に構成する方法は限定されず、例えば塗装であってもよい。または、下部プレート85を白色の材料(例えば、白色の樹脂)で形成することによって、白色領域R2の色を白色としてもよい。
【0038】
図11に示すように、下部プレート85の白色領域R2外の部分の一部には、両面テープ87が貼付されている。上部プレート72と下部プレート85とは、両面テープ87によって貼り合わされている。シール86は、両面テープ87よりも上下方向の厚さが薄い。白色領域R2が第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2の下方に位置するように上部プレート72と下部プレート85とを接合することによって、
図10に示すように、黒色領域R1の内部に2つの矩形の白色領域R2が配置されたパターンP1が形成される。上部プレート72と下部プレート85とを接合する方法は、抑制部材70の板厚に影響を及ぼすものでなければ、両面テープ87による接合に限定されない。上部プレート72と下部プレート85とを接合する方法は、例えば、接着剤や磁力等による接合であってもよい。
【0039】
保持部材76は、
図6に示すように、上部プレート72の前端に位置する。保持部材76は、プラテン16の支持面16Pより下方に位置する。保持部材76は、プラテン16と上部プレート72の側板部72Bとの間に保持されている。保持部材76は、上部プレート72の規制板72Aの前端をプラテン16に保持させる。保持部材76は、例えば、樹脂材料から形成されている。
図9に示すように、保持部材76は、主走査方向Yに延びる保持部76Aと、保持部76Aの左端から右方に向けて斜め下方に延びる腕部76Bと、保持部76Aから上方に延びる突状部76Cとを備えている。保持部76Aは、プラテン16に保持される。保持部76Aは、上部プレート72を保持する。保持部76Aには、上部プレート72を保持する切り欠き部76ALが形成されている。切り欠き部76ALは、保持部76Aの右側に形成されている。本実施形態では、
図7に示すように、保持部76Aは、上部プレート72の側板部72Bを保持する。より詳細には、保持部76Aは、側板部72Bの第1部分72BLを保持する。
図9に示すように、腕部76Bは、保持部76Aの左端から右端に向けて右方に向かうにつれて保持部76Aとの離間距離(ここでは上下方向の距離)が漸増するように延びる。腕部76Bは、保持部76Aに対して上下方向に弾性変形可能に構成されている。腕部76Bは、上部プレート72の側板部72Bを付勢する。腕部76Bは、側板部72Bに保持される。本実施形態では、凹部72BDに保持された腕部76Bが側板部72Bを下方に向けて付勢することで、規制板72Aがプラテン16に向けて下方に付勢される。
図9に示すように、突状部76Cは、保持部76Aの後部に設けられている。突状部76Cは、主走査方向Yに延びる。
図6に示すように、突状部76Cは、プラテン16の第1ガイド溝16Aに嵌め込まれている。突状部76Cは、第1ガイド溝16Aに案内される。保持部材76は、第1ガイド溝16Aに沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0040】
抑制部材70がプラテン16に取り付けられた状態では、保持部材76の腕部76Bが上部プレート72の側板部72Bを下方に付勢する。これにより、側板部72Bに接続された規制板72Aはプラテン16に向けて下方に付勢される。このとき、規制板72Aの右側部72ARの裏面に設けられた下部プレート85は、プラテン16の支持面16Pと接触するが、規制板72Aの左側部72AL(
図7参照)は、支持面16Pと接触しないため、記録媒体5は左側部72ALと支持面16Pとの間を通過することができる。規制板72Aの左側部72ALは、記録媒体5の右端部に被さるように記録媒体5の上方に配置され、記録媒体5の浮き上がりを抑制する。
【0041】
抑制部材70の位置を変更するときには、ユーザは規制板72Aの第2傾斜部73Fを持ち上げる。保持部材76の腕部76Bは上方に弾性変形するため、下部プレート85がプラテン16の支持面16Pから離れる。下部プレート85が支持面16Pから適度に離れた状態では、抑制部材70の位置を変更することができる。このとき、上部プレート72、下部プレート85、および保持部材76は一体となって移動する。そして、上部プレート72をプラテン16の所望の位置に移動させた後に、規制板72Aを下すことで、腕部76Bが上部プレート72の側板部72Bを下方に付勢する。この結果、規制板72Aはプラテン16に向けて付勢され、下部プレート85が支持面16Pと接触する。これにより、抑制部材70がプラテン16に対して固定される。
【0042】
図3に示すように、制御装置90は、インクヘッド22と、カッティングヘッドユニット30のソレノイド32と、ロック用ソレノイド37と、キャリッジモータ44と、フィードモータ58とに接続され、これらの動作を制御している。制御装置90は、また、センサ95に接続され、センサ95からのデータを受信している。制御装置90の構成は特に限定されない。制御装置90は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0043】
制御装置90は、抑制部材70がプラテン16に装着されているかどうかを判定する判定部91と、抑制部材70がプラテン16に装着されていないと判定された場合に警告を発する警告部92と、を備えている。制御装置90は、他の制御部を備えていてもよいが、ここでは、図示および説明を省略する。判定部91は、第1処理部91Aと第2処理部91Bとを備えている。第1処理部91Aは、センサ95が黒色と白色とを識別したデータに基づいて、第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2とを含むパターンを抽出するように構成されている。第2処理部91Bは、第1処理部91Aによって抽出するパターンが予め登録されたパターンに一致する場合に、抑制部材70が装着されていると判定する。本実施形態では、第1処理部91Aは、センサ95が黒色と白色とを識別したデータに基づいて、主走査方向Yに関する第1貫通孔72H1の幅W1、第2貫通孔72H2の幅W2、および第1貫通孔72H1と第2貫通孔72H2との間の距離D1(いずれも
図10参照)を算出する。第2処理部91Bは、第1処理部91Aによって算出された第1貫通孔72H1の幅W1、第2貫通孔72H2の幅W2、および第1貫通孔72H1と第2貫通孔72H2との間の距離D1がいずれも予め登録された長さに一致する場合に、抑制部材70が装着されていると判定する。警告部92は、判定部91によって抑制部材70がプラテン16に装着されていないと判定された場合に警告を発するが、警告方法は特に限定されない。警告方法は、例えば、画面における警告の文字表示やブザーであってもよい。
【0044】
[抑制部材の検出]
以下では、右側抑制部材70Rの有無の検出プロセスについて説明する。本実施形態では、右側抑制部材70Rの主走査方向Yの位置は、記録媒体5の幅に応じて変化し得る。そのため、プリンタ100は、右側抑制部材70Rの主走査方向Yの位置の測定までは実施せず、右側抑制部材70Rがプラテン16に装着されているかどうかを判定する。左側抑制部材70Lの有無の判定は、右側抑制部材70Rの場合と左右を逆にして行われる。
【0045】
本実施形態では、センサ95は、第2キャリッジ31に搭載されており、第2キャリッジ31とともに主走査方向Yに移動させることが可能である。
図10のラインLSは、センサ95のセンシングラインを示す。センシングラインLSは、センサ95の移動経路の真下に仮想的に設定された、センサ95が検出を行う点の集合である。センシングラインLSは、主走査方向Yに延びている。センサ95は、主走査方向Yに移動しながら、センシングラインLS上の黒色領域R1および白色領域R2を識別する。ここでは、センサ95は、プラテン16の中央部側から右方の周縁部側に向かって移動しながら、センシングラインLS上の右側部分における黒色領域R1および白色領域R2を識別する。第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、センサ95のセンシングラインLS上に配置されている。センサ95は、黒色領域R1と2つの矩形の白色領域R2とによって右側抑制部材70Rの規制板72A上に形成されたパターンP1を検出する。
【0046】
パターンP1の検出では、まず、センサ95の検出データに基づいて、第1貫通孔72H1の左方の外形線L1Lが特定される。第1貫通孔72H1の左方の境界では、黒色領域R1から白色領域R2に切り替わるため、かかる第1貫通孔72H1の左方の外形線L1Lの特定が可能である。続いて、センサ95が引き続き右方に向かって移動されながら、第1貫通孔72H1の主走査方向Yの幅W1が算出される。第1貫通孔72H1の主走査方向Yの幅W1の算出は、センサ95の検出データに基づいて第1貫通孔72H1の右方の外形線L1Rを特定することにより行われる。第1貫通孔72H1の右方の境界では、白色領域R2から黒色領域R1に切り替わるため、かかる第1貫通孔72H1の右方の外形線L1Rの特定が可能である。
【0047】
次に、センサ95が引き続き右方に向かって移動されながら、主走査方向Yに関する第1貫通孔72H1と第2貫通孔72H2との間の距離D1が算出される。距離D1の算出方法は、第1貫通孔72H1の主走査方向Yの幅W1の算出方法と同様である。さらに、センサ95が引き続き右方に向かって移動されながら、第2貫通孔72H2の主走査方向Yの幅W2が算出される。幅W2の算出方法も、第1貫通孔72H1の主走査方向Yの幅W1の算出方法等と同様である。
【0048】
本実施形態では、第1貫通孔72H1の幅、第2貫通孔72H2の幅、および第1貫通孔72H1と第2貫通孔72H2との間の距離がそれぞれ所定の長さである(詳しくは、それぞれW1、W2、D1である)パターンがプリンタ100に登録されており、パターンP1はこれに一致している。プリンタ100は、登録パターンに一致するパターンP1がセンサ95の検出に基づいて抽出された場合に、右側抑制部材70Rがプラテン16に装着されていると判定する。左側抑制部材70Lについても同様である。
【0049】
[実施形態の作用効果]
以下、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態では、抑制部材70は、プラテン16の支持面16Pよりも上方に設けられた規制板72Aと、規制板72Aよりも下方に設けられた下部プレート85と、を備えている。規制板72Aは、上下方向に貫通した第1貫通孔72H1を備え、第1貫通孔72H1の周囲を含む領域(ここでは、規制板72Aの上面全体)が黒色領域R1として構成されている。下部プレート85は、その一部が第1貫通孔72H1と重なっている。この第1貫通孔72H1と重なった領域85B1は、白色に構成され、白色領域R2の一部を構成している。かかる構成によれば、黒色領域R1と、第1貫通孔72H1を通して見える白色領域R2の一部の領域85B1とによって、センサ95によって識別可能な黒色と白色とを含むパターンP1を形成することができる。これにより、抑制部材70を検出することができる。
【0050】
かつ、かかる構成によれば、白色領域R2は、規制板72Aよりも下方に設けられた下部プレート85に設けられており、抑制部材70の表面としての規制板72Aには形成されていない。例えば抑制部材の表面にシールを貼付して白色領域を形成すると、シールがめくれた場合に、めくれたシールが抑制部材の上方を通過するインクヘッドに接触する等の問題が発生するおそれがある。その他、例えば塗装などの手段によって抑制部材の表面にパターンを形成することにも同様のおそれがある。そのため、抑制部材の表面に識別パターンを加工することなく抑制部材を検出できると好ましい。本実施形態では、上記構成により、抑制部材70の表面に識別パターンを加工することなく抑制部材70を検出することが可能である。
【0051】
センサ95は、規制板72Aよりも上方に設けられ、少なくとも第1の色と第2の色とを識別可能に構成されていればよいが、本実施形態では、第1の色は黒色であり、第2の色は白色である。白色と黒色とは、安価なセンサおよび簡単な画像処理によっても区別しやすい色の組み合わせであるため、かかる第1の色と第2の色との組み合わせによれば、センサ95のコストおよびプリンタ100における画像処理の負荷を低減できる。なお、前述したように、第1の色は黒色でなくてもよく、第2の色は白色でなくてもよい。例えば、第2の色が黄色である場合にも、白色である場合と同程度にパターンP1の抽出が容易である。また、本実施形態とは逆に、第1の色を白色、第2の色を黒色としてもよい。
【0052】
本実施形態では、規制板72Aは、上下方向に貫通するとともに上方から見て下部プレート85の白色領域R2内の他の領域85B2と重なる第2貫通孔72H2をさらに備えている。プリンタ100は、センサ95のデータに基づいて抽出された第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2を含むパターンP1が予め登録されたパターンに一致する場合に、抑制部材70が装着されていると判定する。かかる構成によれば、抑制部材70の有無を誤判定するおそれを低減することができる。第1貫通孔72H1のみの場合(貫通孔が1つしかない場合)には、黒色領域R1と第1貫通孔72H1とによって1つの白色領域R2を有するパターンしか形成できないため、例えば、ユーザ等が白色のシールをセンサ95のセンシング可能領域に貼付すると、抑制部材70が装着されていないにもかかわらず抑制部材70が装着されていると誤判定される可能性が高まる。しかし、第1貫通孔72H1に加えて第2貫通孔72H2を設ける構成によれば、上記のように登録パターンに類似したパターンが偶然に検出される可能性が大きく減少する。よって、抑制部材70の有無を誤判定するおそれを低減することができる。
【0053】
さらに詳しくは、本実施形態に係るプリンタ100は、主走査方向Yに関して算出された第1貫通孔72H1の幅W1、第2貫通孔72H2の幅W2、および第1貫通孔72H1と第2貫通孔72H2との間の距離D1がいずれも予め登録された長さに一致する場合に、抑制部材70が装着されていると判定するように構成されている。かかる構成によれば、登録パターンに類似したパターンが偶然に検出される可能性を大きく減少させることができ、かつ、主走査方向Yの長さに関する一次元的なデータを処理するだけであるため、プリンタ100の画像処理の負荷を小さくできる。かかる画像処理を容易にするために、本実施形態では、第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は、それぞれ、センサ95のセンシング方向(ここでは、主走査方向Y)に直交する方向(ここでは、副走査方向X)に延びる一対の外形線L1L、L1RおよびL2L、L2Rをそれぞれ備えており、両者はセンサ95のセンシング方向(主走査方向Y)に並んで配置されている。かかる第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2の形状および配置によれば、第1貫通孔72H1の幅W1、第2貫通孔72H2の幅W2、および第1貫通孔72H1と第2貫通孔72H2との間の距離D1の算出が容易にできる。
【0054】
なお、本実施形態では、第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2は矩形に構成されていたが、第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2の形状は限定されず、例えば、円形や、前後両端がそれぞれ半円形の長孔であってもよい。規制板72Aには、さらに他の貫通孔が形成されていてもよい。また、本実施形態では、第1貫通孔72H1と第2貫通孔72H2とを含むパターンP1は一次元的なパターンであるが、二次元的なパターンであってもよい。パターンP1は、移動するセンサ95によってではなく、平面的なセンシング範囲を有する不動のセンサによって検出されてもよい。例えばそのような場合、センサ95のセンシング方向は、主走査方向Y以外の他の方向であってもよい。
【0055】
本実施形態では、第2の色の領域(ここでは、白色領域R2)は、第2の色のシール86を下部プレート85に貼付することによって構成されている。かかる構成によれば、第2の色の領域を容易に形成することができる。なお、センサ95が検出する第2の色の領域の外形は、第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2によって定まるため、シール86の貼付位置には高精度が不要である。また、シール86は、領域85B1および85B2を除いて上部プレート72によって覆われている。そのため、ユーザが触れる等の事故的な理由によってシール86がめくれてしまうことが起こりにくい。また、もしシール86がめくれても、めくれたシール86は、上部プレート72によって押さえられ、抑制部材70の表面よりも上方には突出しない。なお、第2の色は、センサ95によって第1の色と区別できる限り、下部プレート85の素材の色、例えばステンレス鋼のシルバー色であってもよい。シール86は、接着剤等によって貼付されるカラーシートであってもよい。カラーシートは、その全体ではなく、第1貫通孔72H1および第2貫通孔72H2と重なった部分だけが第2の色であってもよい。
【0056】
本実施形態では、抑制部材70は、主走査方向Yに移動可能なようにプラテン16に支持されており、プリンタ100は、センサ95を主走査方向Yに移動させるセンサ移動装置としてのキャリッジ移動装置40を備えている。かかる構成によれば、抑制部材70の主走査方向Yの位置に合わせて、抑制部材70上のパターンP1を検出可能な場所にセンサ95を移動させることができる。特にここでは、センサ95は、本来的なカッティング作業のために主走査方向Yに移動する第2キャリッジ31に設けられている。そのため、特別なセンサ移動装置を設ける必要がなく、プリンタ100の構成を簡易にできる。なお、記録媒体5の主走査方向Yの幅が定まっている、または、記録媒体5の種類による主走査方向Yの幅の差が小さい場合には、一対の抑制部材70の一方または両方は主走査方向に移動不能に構成されていてもよい。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。例えば、規制板72Aの第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2を通して視認可能な対象物は、下部プレート85に形成された白色領域R2には限定されない。第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2を通して視認可能な対象物は、例えば、プラテン16の支持面16Pであってもよい。この場合、第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2は、支持面16Pの上方に設けられる。また、支持面16Pのうち上方から見て第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2と重なる部分は、第2の色(例えば、白色)に構成される。下部プレート85は存在しなくてもよく、第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2と重ならない位置に設けられてもよい。かかる構成によっても、抑制部材70が装着されているかどうかを検出することができる。
【0058】
あるいは、第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2を通して視認可能な対象物は、規制板72Aの下面に貼付され、少なくとも貫通孔(第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2)に重なった部分が第2の色(例えば、白色)に構成されたカラーシートであってもよい。かかる構成によっても、抑制部材70が装着されているかどうかを検出することができる。
【0059】
なお、センサ95は、第1の色を検知可能に構成されていればよく、第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2から覗く第2の色を検知可能でなくてもよい。センサ95は、第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2の部分が第1の色に構成されていないことを検知することにより、第1貫通孔72H1または第2貫通孔72H2の有無を識別できればよい。
【0060】
上記した実施形態では、右側抑制部材70Rと左側抑制部材70Lとは、平面視で副走査方向Xに延びる直線に対して線対称としたが、これには限定されない。記録媒体の幅方向の両端に設けられた一対の抑制部材の形状は、異なっていてもよい。また、抑制部材の数は一対(2つ)には限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0061】
上記した実施形態では、プリンタ100はカッティングヘッド38を備えていたが、カッティングヘッド38を備えない印刷機能のみのプリンタであってもよい。プリンタは、記録媒体の搬送方向に直交する方向にインクヘッドが移動されるシャトルヘッド方式のプリンタには限定されず、インクヘッドが固定されたラインヘッド方式のプリンタであってもよい。本発明が適用されるプリンタの構成は、特に限定されない。
【符号の説明】
【0062】
5 記録媒体
16 プラテン(支持台)
22 インクヘッド
38 カッティングヘッド
40 キャリッジ移動装置(センサ移動装置)
55 媒体搬送装置(搬送装置)
70 抑制部材
70L 左側抑制部材
70R 右側抑制部材
72 上部プレート
72A 規制板(規制部材)
72H1 第1貫通孔
72H2 第2貫通孔
85 下部プレート(下部部材)
86 シール(カラーシート)
90 制御装置
91 判定部(判定装置)
91A 第1処理部
91B 第2処理部
95 センサ
100 インクジェットプリンタ(プリンタ)
R1 黒色領域
R2 白色領域