IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

特開2022-147528癒合促進デバイスおよび医療器具セット
<>
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図1
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図2
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図3
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図4
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図5
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図6
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図7
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図8
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図9
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図10
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図11
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図12
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図13
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図14
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図15
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図16
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図17
  • 特開-癒合促進デバイスおよび医療器具セット 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147528
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】癒合促進デバイスおよび医療器具セット
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A61B17/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048804
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美利亜
(72)【発明者】
【氏名】白石 美朱帆
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 美穂
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 直希
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC02
4C160CC36
4C160MM43
(57)【要約】
【課題】生体器官における接合対象に配置した際に生体器官に対するズレを防止または抑制したり、生体器官からの脱落を防止したりする。
【解決手段】本発明に係る癒合促進デバイス100は、接合対象となる生体器官の間に配置され、生体組織の癒合を促進するシート状の本体部10と、中空に形成されるとともに厚さ方向に圧縮可能であって、厚さ方向への圧縮に伴って本体部の面方向YZにおける少なくとも内側S1が圧縮変形前よりも内方に向かって変位可能な変位部40と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合対象となる生体器官の間に配置され、生体組織の癒合を促進するシート状の本体部と、
中空に形成されるとともに前記厚さ方向に圧縮可能であって、前記厚さ方向への圧縮に伴って前記本体部の面方向における少なくとも内側が圧縮変形前よりも内方に向かって変位可能な変位部と、を備える癒合促進デバイス。
【請求項2】
前記変位部は、前記本体部の厚さ方向において前記本体部に隣接して配置される請求項1に記載の癒合促進デバイス。
【請求項3】
前記変位部は、前記本体部の前記厚さ方向において圧縮可能であって前記内側が設けられた折り畳み箇所を備える請求項1または2に記載の癒合促進デバイス。
【請求項4】
前記折り畳み箇所は、複数の環状凸部を連ねるように形成した凹凸部を含む請求項3に記載の癒合促進デバイス。
【請求項5】
前記折り畳み箇所は、螺旋状に形成した凹凸部を含む請求項3に記載の癒合促進デバイス。
【請求項6】
前記変位部の前記内側が前記面方向における内方に変位した状態を保持し、前記変位部よりも前記面方向における外方に設けられる保持部をさらに備える請求項1~5のいずれか1項に記載の癒合促進デバイス。
【請求項7】
前記本体部の前記面方向において前記本体部の外周縁部から離間して形成された孔部をさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載の癒合促進デバイス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の癒合促進デバイスと、
前記接合対象となる前記生体器官である一方の被接合部位と他方の被接合部位とを接合し、癒合促進デバイスを挟み込み可能な第1係合器具と第2係合器具と、を備える医療デバイスと、を有し、
前記第2係合器具は、前記第1係合器具と係合し、癒合促進デバイスの前記変位部を挿通可能であって前記面方向における内方に変位した前記内側と当接可能なシャフトを備える医療器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癒合促進デバイスおよび医療器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において生体器官を外科的手術により接合する手技(例えば消化管の吻合術)が知られている。上記のような手技が行われた場合、生体器官同士が接合された接合部における癒合の遅延が生じないことが術後の予後決定因子として重要であることが知られている。
【0003】
生体器官を接合する手技では種々の方法や医療器具が用いられるが、例えば生分解性の縫合糸により生体器官を縫合する方法や、ステープラーによる吻合を行う機械式の吻合装置(特許文献1参照)を利用する方法が提案されている。特に、機械式の吻合装置を利用して吻合術を行う場合、縫合糸を用いた方法と比較して接合部における生体器官同士の接合力を高めることができるため、縫合不全のリスクを低減させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-505708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の吻合装置では接合部位における漏出又は断裂等を防止するために支持構造体等のシート状の部材を挟むことによって接合部位の癒合を促進している。このような癒合を促進するデバイス(以下、癒合促進デバイスと言う)は、通常、比較的薄く、柔らかい。そのため、癒合促進デバイスを生体組織の該当部位に挟み込む際にシート状の癒合促進デバイスが術者の意図する位置からズレたり、脱落したりしやすいといった問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、生体器官における接合対象に配置した際に生体器官からのズレを防止または抑制したり、生体器官からの脱落を防止したりすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る癒合促進デバイスは、本体部と、変位部と、を備える。本体部は、接合対象となる生体器官の間に配置され、生体組織の癒合を促進し、シート状に構成している。変位部は、中空に形成されるとともに厚さ方向に圧縮可能であって、厚さ方向への圧縮に伴って本体部の面方向における少なくとも内側が圧縮変形前よりも内方に向かって変位可能である。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記癒合促進デバイスと、接合対象となる生体器官である一方の被接合部位と他方の被接合部位とを接合し、癒合促進デバイスを挟み込み可能な第1係合器具と第2係合器具と、を備える医療デバイスと、を有する。第2係合器具は、第1係合器具と係合し、癒合促進デバイスの変位部を挿通可能であって面方向における内方に変位した内側と当接可能なシャフトを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係る癒合促進デバイスおよび医療器具セットによれば、生体器官における接合対象に配置した際に生体器官からのズレを防止または抑制したり、生体器官からの脱落を防止したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る医療器具セットを示す概略斜視図である。
図2図1に係る医療デバイスを構成する第1係合器具の先端と第2係合器具とを示す斜視図である。
図3】医療デバイスを構成する第2係合器具のシャフトに癒合促進デバイスを挿通した状態を示す斜視図である。
図4】癒合促進デバイスの変位部を厚さ方向に圧縮する前の状態を示し、癒合促進デバイスの厚さ方向に沿う断面図である。
図5図4に示す癒合促進デバイスにおいて変位部を圧縮した状態を示す断面図である。
図6】癒合促進デバイスの本体部に設けられた貫通孔について示す断面図である。
図7】医療器具セットを用いた処置方法の各手順を示すフローチャートである。
図8】処置方法の実施形態(大腸吻合術)の手順を示すフローチャートである。
図9】医療デバイスを用いた大腸吻合術について説明する図である。
図10】医療デバイスを用いた大腸吻合術について説明する図である。
図11】医療デバイスを用いた大腸吻合術について説明する図である。
図12】癒合促進デバイスを構成する保持部の変形例を示す図である。
図13】癒合促進デバイスを構成する保持部の変形例を示し、変位部を圧縮する前の状態を示す図である。
図14図13に示す癒合促進デバイスにおいて変位部を圧縮した状態を示す図である。
図15】第2実施形態に係る癒合促進デバイスであって、変位部を圧縮させる前の状態を示す図である。
図16】第2実施形態に係る癒合促進デバイスであって、変位部を圧縮させた状態を示す図である。
図17】第2実施形態に係る癒合促進デバイスの平面図であり、変位部を厚さ方向に圧縮させる操作を示す図である。
図18】第1実施形態の癒合促進デバイスにおける変位部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0012】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
また、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明するが、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0014】
なお、以下では図面に座標系を示す。直交座標系のXは癒合促進デバイス100を構成する本体部10の軸方向または厚さ方向に沿い、軸方向Xと称する。Y、Zは軸方向Xと交差する面であって、面方向YZと称する。
【0015】
円筒座標系のrは、面方向YZに沿い、癒合促進デバイス100の本体部10等の中心から径方向または放射方向に延びる方向であって、径方向rと称する。θは本体部10等の軸方向Xと交差する面方向YZにおいて本体部10等の周方向または角度方向に沿い、周方向θと称する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る医療器具セット1を示す図である。図2は医療器具セット1を構成する医療デバイス200を構成する第1係合器具210の先端部と第2係合器具270を示す図である。図3は癒合促進デバイス100の孔部30に第2係合器具270のシャフト310を挿通させた状態を示す図である。図4図5は癒合促進デバイス100を構成する変位部40の圧縮前後を示す図である。
【0017】
図6は癒合促進デバイス100の貫通孔11を示す図である。図7図11は医療器具セット1を構成する癒合促進デバイス100を用いて大腸を一例として消化管の吻合を行う際を説明する図である。
【0018】
医療器具セット1は、図1を参照して概説すれば、癒合促進デバイス100と、吻合術の際に癒合促進デバイス100と併用される医療デバイス200と、を有する。
【0019】
癒合促進デバイス100は、図7図11に示すように所定の生体器官同士を接合する手技(例えば、消化管の吻合術)に適用することができる。後述するように、本明細書の説明では癒合促進デバイス100を使用した手技の例として大腸吻合術を説明するが、本発明に係る癒合促進デバイスを使用可能な部位は大腸に限定されない。
【0020】
医療器具セット1は、医療デバイス200によって大腸等の第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する際に使用される。医療器具セット1の説明にあたり、医療デバイス200について説明する。
【0021】
<医療デバイス>
医療デバイス200は、生体組織における生体器官である一方の被接合部位(第1被接合部位)と第1被接合部位に対向する他方の被接合部位(第2被接合部位)とを接合する。医療デバイス200は、第1被接合部位及び第2被接合部位を介して癒合促進デバイス100を挟み込み可能な第1係合器具210と第2係合器具270を備える。
【0022】
第1係合器具210は図10等に示すように癒合促進デバイス100の生体組織への吻合時に癒合促進デバイス100の一方の側に配置される。第1係合器具210は、第1被接合部位と当接可能に構成している。
【0023】
第2係合器具270は、吻合時に癒合促進デバイス100に対して第1係合器具210と反対側に配置され、第2被接合部位と当接可能に構成している。詳細については後述する。第1係合器具210は、トロッカーと呼ばれ得るとともに、第2係合器具270はアンビルと呼ばれ得る。以下、詳述する。
【0024】
<第1係合器具>
第1係合器具210は、図1図2に示すように長尺部材220と、位置決め部230と、放出部240と、打抜き部250と、操作部260と、を備える。
【0025】
長尺部材220は、第1係合器具210の本体に相当する。長尺部材220は、図2に示すように長手方向の先端において位置決め部230のシャフトを相対的に進退移動可能な空間Sを備える。なお、本明細書において長尺部材220の先端部において直線状に延びる方向を軸方向Xとする。長尺部材220は、軸方向Xに交差する断面を中空の円形状に構成している。
【0026】
長尺部材220は、本実施形態において長手方向に直線状に延在するとともに屈曲箇所を備えているが、後述する吻合機能と打抜き機能を実現できれば、長尺部材には屈曲箇所を設けなくてもよい。
【0027】
位置決め部230は、長尺状のシャフトを備える。位置決め部230のシャフトは、図2に示すように長尺部材220の長手方向における先端において空間Sから相対的に進退移動自在に構成している。位置決め部230は、癒合促進デバイス100の内側補強部21が形成する孔部30と後述する第2係合器具270のシャフト310の内腔に挿入可能に構成している。
【0028】
放出部240は、第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する複数のステープル(吻合部材に相当)を放出可能に構成している。放出部240は長尺部材220の長手方向における先端側において略円板状に形成している。放出部240は、長尺部材220の先端において周方向θに沿ってステープルの放出箇所を複数設けることによって構成している。
【0029】
打抜き部250は、長尺部材220の先端において放出部240よりも径方向rの内方に配置し、第1被接合部位と第2被接合部位の放射方向内方を打ち抜くように構成している。打抜き部250は、図2に示すように放出部240よりも径方向rの内方に第1被接合部位と第2被接合部位を打ち抜く環状のブレードを備えるように構成している。打抜き部250の形状は、長手方向から平面視した際に真円に構成できるが、癒合促進に不要な部位を打抜ければ打抜き部250の形状は楕円等であってもよい。
【0030】
操作部260は、位置決め部230と放出部240と打抜き部250とを操作できるように構成している。操作部260は、図1に示すように回転部261と、ハンドル262と、を備える。
【0031】
回転部261は、長尺部材220の長手方向における基端部(基端側)に設けている。回転部261は、長尺部材220の基端側における長手方向を回転軸として長尺部材220に対して回転可能に構成している。回転部261は、第2係合器具270が第1係合器具210と係合した状態において、長尺部材220に対して回転させることによって第1係合器具210と第2係合器具270とを相対的に接近離間できるように構成している。
【0032】
ハンドル262は、長尺部材220の基端部(基端側)とともに使用者によって把持可能に構成している。ハンドル262は、回転軸263によって長尺部材220と回転可能に接続されている。ハンドル262は、使用者によって握られることによって回転軸263の周りに回転して長尺部材220と相対的に接近する。これにより、放出部240からステープルを放出し、長尺部材220の先端から打抜き部250の環状ブレードを突出できるように構成している。
【0033】
<第2係合器具>
第2係合器具270は、第1被接合部位と第2被接合部位を介して第1係合器具210とともに癒合促進デバイス100を挟み込み可能に構成している。第2係合器具270は、図3に示すようにヘッド280と、当接部290と、シャフト310と、を備える。
【0034】
ヘッド280は、第1係合器具210と第2係合器具270とを係合させた際に第1係合器具210の長尺部材220の特に先端側に隣接して配置される。ヘッド280は、本実施形態において図2図3に示すように略円板形状に構成しており、断面形状が長尺部材220の円形状と同一又は類似する形状として構成している。
【0035】
当接部290は、放出部240から放出される複数のステープルと当接可能に構成している。当接部290は、ヘッド280の軸方向X(板厚方向)において第1係合器具210の側に設けている。当接部290は、放出部240から放出される複数のステープルと当接可能に構成している。放出部240から放出されたステープルは当接部290で当接し、変形することによって第1被接合部位と第2被接合部位とを接合する。
【0036】
シャフト310は、後述する癒合促進デバイス100の孔部30および変位部40を挿通可能に構成している。シャフト310は、図3に示すように第1シャフト311と、第1シャフト311に連なる第2シャフト312と、を備える。第2シャフト312は、第1シャフト311よりもヘッド280に隣接して設けている。第1シャフト311は、第2シャフト312と同軸に構成しており、第1シャフト311と第2シャフト312は軸方向Xに交差する断面を中空の円形状に構成している。
【0037】
第2シャフト312は、本実施形態において第1シャフト311よりも外径の寸法が小さくなるように構成している。第1シャフト311は位置決め部230のシャフトと係合可能に構成しており、これにより第1係合器具210と第2係合器具270とを係合させることができる。第1シャフト311と第2シャフト312は、ヘッド280から第1係合器具210に向けて軸方向Xに長尺状に延在するように構成している。
【0038】
シャフト310には第1係合器具210の位置決め部230のシャフトを収容する空間を設けている。シャフト310は、位置決め部230のシャフトと嵌合するように構成しており、これにより第1係合器具210と第2係合器具270との位置合わせが可能になる。
【0039】
<癒合促進デバイス>
癒合促進デバイス100は、図4に示すように本体部10と、補強部20と、孔部30と、変位部40と、保持部50と、を備える。
【0040】
<本体部>
本体部10は接合対象となる生体器官の間に配置され、生体組織の癒合を促進する。本体部10は、図4等に示すようにシート状に構成している。
【0041】
本体部10は、図3に示すように一例として円形状に形成しており、図6に示すように当該円形状の厚さ方向(軸方向X)に挿通するように形成された貫通孔11を複数備える。本体部10の貫通孔11の大きさについて例示すれば、好ましくは0.1~6mm、より好ましくは0.3~4mm、さらに好ましくは0.6~1.5mmである。本体部10は、貫通孔11の寸法DとピッチPとの比が0.25以上40未満となるように構成できる。
【0042】
本体部10の厚み(図6に示す寸法T)は特に制限されないが、好ましくは0.05~0.3mmであり、より好ましくは0.1~0.2mmである。
【0043】
本体部10は、生分解性の材料で構成することができる。本体部10の構成材料について特に制限はなく、例えば、生分解性樹脂が挙げられる。
【0044】
具体的には、(1)脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体;(2)上記(1)を構成する一以上の単量体から構成される共重合体などが挙げられる。
【0045】
すなわち、生分解性シートは、脂肪族ポリエステル、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリペプチド、多糖、タンパク質、セルロースからなる群から選択される重合体、ならびに前記重合体を構成する一以上の単量体から構成される共重合体からなる群より選択される少なくとも一種の生分解性樹脂を含むことが好ましい。
【0046】
<補強部>
補強部20は、医療デバイス200によって癒合促進デバイス100を第1被接合部位と第2被接合部位との間に留置する際等に癒合促進デバイス100のヨレ、ずれ、破損等を抑制するために設けられる。補強部20は、図4に示すように内側補強部21と、外側補強部22と、を備える。内側補強部21は、本体部10の中空の円形状において内周縁に沿って形成し、外側補強部22は、本体部10の中空の円形状において外周縁に沿って形成している。
【0047】
内側補強部21及び外側補強部22は、本実施形態において本体部10において貫通孔11を設けない形状として構成している。ただし、癒合促進デバイス100のヨレやずれを防止又は抑制し、強度を向上できれば、補強部20の具体的な形状は上記に限定されず、位置も内周縁や外周縁でなくてもよい。
【0048】
<孔部>
孔部30は、本体部10の面方向YZにおいて本体部10の外周縁部から離間して形成するように構成している。孔部30は、医療デバイス200のシャフト310に挿通可能に構成している。孔部30は、本実施形態において軸方向Xから見た際に略円形状に構成している。ただし、本体部によって生体組織の癒合を促進できれば、孔部の具体的な形状は円形状に限定されない。
【0049】
<変位部>
変位部40は、図3に示すように中空に形成するとともに、図4図5に示すように厚さ方向に圧縮可能に構成している。変位部40は、厚さ方向への圧縮に伴って本体部10の面方向YZにおける少なくとも内側S1が圧縮変形前よりも径方向rの内方に向かって変位可能に構成している。変位部40は、本実施形態において本体部10の厚さ方向において本体部10と異なる位置に設けられ、より具体的には本体部10の厚さ方向において本体部10に隣接して配置している。
【0050】
変位部40は、厚さ方向に圧縮可能であって内側S1を設けた折り畳み箇所41を備える。折り畳み箇所41は本実施形態において複数の環状凸部を連ねるように形成した凹凸部を備える。折り畳み箇所41の凹凸部は、厚さ方向に圧縮されることによって凹凸形状の内側S1が変形前よりも面方向YZにおける内方に変位するように構成している。折り畳み箇所41の凹凸部は、本実施形態において肉厚を一定に構成している。なお、折り畳み箇所にはスリット(切れ目)を設けてもよい。
【0051】
変位部40の厚さ方向の圧縮の程度は、圧縮状態で内側S1がシャフト310に接触できれば特に限定されないが、例示すれば伸長時の高さが15mm程度、圧縮時の厚さが1.15mm程度とすることができる。変位部40は折り畳み箇所41の凹凸の数が多い方が好ましく、折り畳み箇所41の厚さ方向の高さが高い方が内側S1を径方向rの内方に変位させ易い点において好ましい。また、折り畳み箇所の角の形状は鋭利であったり、丸められていたりするように構成してもよい。変位部40は、厚さ方向の位置に関わらず、外形を同一に構成している。
【0052】
また、変位部40は、図4等に示すように第2係合器具270のシャフト310を挿通できるように内腔42を設けている。
【0053】
変位部40は、圧縮させた際に内側S1がシャフト310と接触して癒合促進デバイス100をシャフト310に固定できれば、材料は特に限定されない。変位部40の材料を例示すれば、樹脂、布と針金またはばね、形状記憶樹脂等の少なくともいずれかを含むように構成できる。変位部40が形状記憶樹脂を含む場合、変位部40は厚さ方向に圧縮されていない状態に記憶されていることが好ましい。また、変位部40は、本実施形態において本体部10と別体に構成しているが、本体部10と変位部40とは一体に構成してもよい。
【0054】
<保持部50>
保持部50は、内側S1が面方向YZにおける内方に変位した状態を保持する。保持部50は、本実施形態において変位部40よりも面方向YZにおける外方に設けている。保持部50は、図4図5に示すように第1係合部51と、第2係合部52と、を備える。
【0055】
第1係合部51は、第2係合部52に係合可能に構成しており、本実施形態において凹凸の側面形状において本体部10が位置する根本部分と反対の頂部の側にフックのような形状を設けるように構成している。ただし、内側S1を変形前よりも面方向YZにおける内方に内側S1を変位できれば、第1係合部51を設ける位置は頂部に限定されず、第1係合部51を設ける位置は厚さ方向における端部以外の部位でもよい。
【0056】
第2係合部52は、フックに係る第1係合部51を係合させて凹凸の側面形状が軸方向に圧縮された状態を維持することを可能に構成している。第2係合部52は、本実施形態において本体部10に穴のような形状を設けるように構成している。第1係合部51と第2係合部52とは、厚さ方向において術者が両者を接近させるように移動させることによって図5に示すように両者を係合させることができる。
【0057】
変位部40の材料は、変形前の状態から内側S1が径方向内方に変位できれば特に限定されない。変位部40の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレン-テレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
【0058】
本体部10の製造方法は特に限定されないが、例えば、上述した生分解性樹脂からなる繊維を作製し、当該繊維を用いてメッシュ形状のシートを製造する方法が挙げられる。生分解性樹脂からなる繊維を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、エレクトロスピニング法(電界紡糸法・静電紡糸法)や、メルトブロー法等が挙げられる。本体部10は、上記の方法のうち1種のみを選択して用いてもよいし、2種以上を選択し適宜組み合わせてもよい。なお、本体部10の製造方法のさらに別の例として、上述した生分解性樹脂からなる繊維を常法に従って紡糸し、得られた繊維をメッシュ状に編むことによって本発明に係る生分解性シートを製造する方法、該繊維を圧縮することによって該生分解性シートを製造する方法、該繊維を織らずに絡み合わせることによって該生分解性シートを製造する方法を挙げることができる。
【0059】
本体部10は、本体部10を構成する生分解性樹脂等の構成材料によって生体反応を惹起させる。本体部10は、この作用により、フィブリン等の生体成分の発現を誘導する。このようにして誘導された生体成分は、本体部10の貫通孔11を貫通するようにして集積することで、癒合を促進することができる。したがって、接合対象となる生体器官同士の間に、癒合促進デバイス100の本体部10を配置することにより、上記のメカニズムによる癒合の促進が生じる。
【0060】
<処置方法>
次に癒合促進デバイス100を用いた処置方法を説明する。図7は癒合促進デバイスを用いた処置方法の各手順を示すフローチャートである。
【0061】
処置方法は、図7に示すように生体器官の接合対象となる一方の第1被接合部位と他方の第2被接合部位との間に生体組織の癒合を促進するシート状の本体部10を備える癒合促進デバイス100を配置すること(S11)を含む。処置方法は、一方の第1被接合部位と他方の第2被接合部位との間に癒合促進デバイス100の本体部10の少なくとも一部を配置した状態で一方の第1被接合部位と他方の第2被接合部位とを接合すること(S12)を含む。
【0062】
処置方法により接合される生体器官及び生体器官における被接合部位は特に限定されず、任意に選択することができる。ただし、以下の説明では、大腸吻合術を例に挙げて説明する。また、以下に説明する各手技において、公知の手技手順や公知の接合装置については詳細な説明を適宜省略する。
【0063】
以下、本明細書の説明において「生体器官の間に癒合促進デバイスを配置する(以下、上記記載と言う)」とは、生体器官に癒合促進デバイスが直接的に又は間接的に接触した状態で配置されることを意味し得る。
【0064】
また、上記記載は生体器官との間に空間的な隙間が形成された状態で癒合促進デバイスが配置されることを意味し得る。また、上記記載はその両方の状態で癒合促進デバイスが配置されること(例えば、一方の生体器官に癒合促進デバイスが接触し、他方の生体器官には癒合促進デバイスが接触していない状態で配置されること)を意味し得る。
【0065】
また、本明細書の説明において「周辺」とは、厳密な範囲(領域)を規定するものではなく、処置の目的(生体器官同士の接合)を達成し得る限りにおいて、所定の範囲(領域)を意味する。
【0066】
また、各処置方法において説明する手技手順は、処置の目的を達成し得る限りにおいて、順番を適宜入れ替えることが可能である。また、本明細書の説明において「相対的に接近させる」とは、接近させる対象となる2つ以上のものを、互いに接近させること、一方のみを他方のみに接近させることの両方を意味する。
【0067】
図8は、処置方法の実施形態(大腸吻合術)の手順を示すフローチャートである。図9図11は大腸吻合術の説明に供する図である。
【0068】
本実施形態に係る処置方法において、接合対象となる生体器官は、癌腫瘍の切除に伴い切断された大腸である。具体的には、接合対象となる生体器官は、切断した大腸の口側A1と、切断した大腸の肛門側A2である。以下の説明では、切断した大腸の口側A1の口部周辺(一方の被接合部位)と、切断した大腸の肛門側A2の腸壁の一部(他方の被接合部位)を接合する手順を説明する。
【0069】
図8に示すように、本実施形態に係る処置方法は、大腸の口部周辺と大腸の腸壁の間に癒合促進デバイス100を配置すること(S101)、大腸の口部周辺と大腸の腸壁を相対的に接近させること(S102)を含む。処置方法は、大腸の口部周辺と大腸の腸壁との間で癒合促進デバイス100の本体部10を挟み込むこと(S103)、大腸の口部周辺と大腸の腸壁との間に癒合促進デバイス100の本体部10を挟み込んだ状態で接合すること(S104)を含む。以下、詳述する。
【0070】
まず、術者は、臍のあたりの周囲にポートという穴のような部位を形成し、患者のお腹を膨らませる。
【0071】
次に、術者は、臍のあたりに切開部(図示省略)を形成し、そこから口側A1の患部を体外に取り出して、大腸の口側A1に医療デバイス200の第2係合器具270を挿入する。術者は、第2係合器具270のヘッド280を大腸の口側A1に挿入し、シャフト310を突出した状態で巾着縫合し、縫合部A11を形成する。縫合部A11の外表面は、縫合に伴い凸側に部分的に突出した形状となる(図9参照)。
【0072】
次に、術者は、大腸の口側A1の生体組織に癒合促進デバイス100を配置する(S101)。次に、図9に示すように、術者は手指を用いて癒合促進デバイス100の変位部40を厚さ方向に押し込み、変位部40の頂部を根本に近づけて保持部50の第1係合部51に係るフックを第2係合部52に係る穴部と係合させるように操作する。
【0073】
これにより、変位部40の内側S1が面方向YZにおいて内方に変位し、変位部40の内側S1が図5に示すように第2係合器具270のシャフト310と当接するようになる。その結果、変位部40を含む癒合促進デバイス100がシャフト310に固定される。
【0074】
次に、術者は、癒合促進デバイス100が配置された大腸の口側A1の生体組織を切開部から体内に収容する。
【0075】
次に、術者は、大腸の肛門側A2に、医療デバイス200の第1係合器具210を配置する。第1係合器具210を大腸の肛門側A2に配置(挿入)するのに伴って、大腸の肛門側A2に貫通孔A21が形成される。なお、貫通孔A21を形成するタイミングは、第1係合器具210を配置した後であれば、特に限定されない。
【0076】
次に、術者は、大腸の口側A1に対して本体部10を保持した状態を維持しつつ、位置決め部230のシャフトと第2係合器具270のシャフト310とを離間した位置で係合させる。そして、回転部261を回転させて、図9図10に示すように第1係合器具210と第2係合器具270を相対的に接近させる。これにより、大腸の口部周辺と大腸の腸壁とが相対的に接近する(S102)。
【0077】
次に、術者は、第1係合器具210と第2係合器具270との間で、大腸の口側A1の口部周辺、癒合促進デバイス100の本体部10、大腸の肛門側A2の腸壁に形成した貫通孔A21周辺を挟み込む(S103)。
【0078】
術者は、医療デバイス200の操作部260のハンドル262を回転軸263の回りに回転させて打抜き部250の環状ブレードを突出させる。そして、第1係合器具210と第2係合器具270との間に挟まれた大腸の口側A1の一部、本体部10の径方向内側、及び大腸の肛門側A2の一部を切除し、切除した部位の周囲をステープル(図示省略)により接合する(S104)。
【0079】
次に、術者は、図11に示すように、医療デバイス200を、例えば、大腸の肛門側A2から肛門を介して生体外へ取り出す。このとき、第1係合器具210の打抜き部250の外径dより内方側に構成された領域を医療デバイス200とともに生体外へ取り出す。これにより、癒合促進デバイス100において打抜き部250よりも径方向rの内方に位置する変位部40などの部位は体内に残らず、除去される。
【0080】
癒合促進デバイス100の本体部10が接合対象となる生体器官の間に挟み込まれて留置されることによって、本体部10の貫通孔A21を通じて接合対象となる生体器官の癒合を促進させることができる。
【0081】
このような処置方法によれば、シート状の本体部10を第1被接合部位と第2被接合部位との間に挟み込ませるという簡便な方法により、接合手技(例えば、消化管の吻合術)後の縫合不全等のリスクを低減させることができる。
【0082】
以上説明したように本実施形態に係る癒合促進デバイス100は、本体部10と、変位部40と、を備える。本体部10は、接合対象となる生体器官の間に配置され、生体組織の癒合を促進するシート状に構成している。変位部40は、中空に形成するとともに厚さ方向に圧縮可能に構成している。変位部40は、厚さ方向への圧縮に伴って本体部10の面方向YZにおける内側S1が圧縮変形前よりも内方に向かって変位可能に構成している。
【0083】
また、本実施形態に係る医療器具セット1は、上述した癒合促進デバイス100と、医療デバイス200と、を備える。医療デバイス200は、接合対象となる生体器官である第1被接合部位と第2被接合部位とを接合し、癒合促進デバイス100を挟み込み可能な第1係合器具210と、第2係合器具270と、を備える。第2係合器具270は、第1係合器具210と係合し、癒合促進デバイス100の孔部30および変位部40を挿通可能であって面方向YZにおける内方に変位した内側S1と当接可能なシャフト310を備える。
【0084】
このように構成することによって、癒合促進デバイス100の内方に第2係合器具270のシャフト310を挿通させた状態において変位部40の内側S1を内方に変位させて内側S1を備える癒合促進デバイス100をシャフト310に固定できる。これにより、接合対象である第1被接合部位と第2被接合部位を接合する手技の際に癒合促進デバイス100の生体器官に対するズレを防止または抑制したり、生体器官からの脱落を防止したりすることができる。
【0085】
また、変位部40は、変形前には内側S1が内方に変位していない状態であることから、本体部10をシャフト310に挿通させやすくできる。これにより、シャフト310に癒合促進デバイス100を挿通させる際等に癒合促進デバイス100が傷付いたり、破損したりすることを防止または抑制できる。
【0086】
また、変位部40は、本体部10の厚さ方向において本体部10に隣接して配置するように構成している。このように構成することによって、癒合促進デバイス100を第2シャフト312のようなシャフト310の根本に接触させて癒合促進デバイス100をシャフト310に固定しやすくすることができる。
【0087】
また、変位部40は、本体部10の厚さ方向において伸縮可能であって内側S1が設けられた折り畳み箇所41を備えるように構成している。このように構成することによって、変位部40の内側S1をシャフト310に接触させて癒合促進デバイス100をシャフト310に固定することができる。
【0088】
また、変位部40の折り畳み箇所41は複数の環状凸部を連ねるように形成した凹凸部を含む。このように構成することによって、折り畳み箇所41を厚さ方向に圧縮させて内側S1をシャフト310に接触させて、癒合促進デバイス100をシャフト310に固定することができる。
【0089】
また、癒合促進デバイス100は、変位部40の内側S1が面方向YZにおける内方に変位した状態を保持し、変位部40よりも面方向YZにおける外方に設けられる保持部50を備える。このように構成することによって、変位部40が厚さ方向に圧縮された状態を保持し、手技の際に癒合促進デバイス100のシャフト310に対する固定が解除されることを防止することができる。
【0090】
また、癒合促進デバイス100は、本体部10の面方向YZにおいて本体部10の外周縁部から離間して形成された孔部30を備える。このように構成することによって、癒合促進デバイス100を医療デバイス200のシャフト310に固定するにあたり、医療デバイス200のシャフト310を癒合促進デバイス100に容易に挿通させることができる。
【0091】
<変形例1>
図12は変形例2に係る癒合促進デバイス100aの保持部50bについて説明する図である。第1実施形態では保持部50がフック形状を含む第1係合部51と第1係合部51のフック形状と係合する穴部を含む第2係合部52を備えると説明した。
【0092】
ただし、保持部は変形部の内側がシャフトと当接することによって癒合促進デバイスをシャフト310に固定できれば、以下のように構成することもできる。
【0093】
なお、本変形例において癒合促進デバイス100aを構成する本体部10、補強部20、および孔部30は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0094】
保持部50aは、本実施形態において図12に示すように第1区画部51aと、第2区画部52aと、弁体53aと、を備えるように構成している。
【0095】
第1区画部51aは、厚さ方向において本体部10から離間した折り畳み形状の頂部に設けるように構成している。第1区画部51aは、第2係合器具270のシャフト310を挿通させた際に内側縁部がシャフト310と当接するように構成できる。
【0096】
第2区画部52aは、厚さ方向において本体部10の近傍に設けられる。第2区画部52aは、孔部30を第2係合器具270の当接部290の外形より小さくするように構成することができる。保持部50aが第1区画部51aと第2区画部52aとを備えることによって、癒合促進デバイス100aをシャフト310が挿通した際に変位部40aの内腔42aを閉鎖空間とすることができる。
【0097】
弁体53aは、内腔42aと外部とを連通する開口部を設けるように構成し、癒合促進デバイス100aの孔部30にシャフト310を挿通した状態で閉じる操作を行うことによって、内腔42aを閉鎖空間とするように構成している。弁体53aは、変位部40の折り畳み箇所41において組み付け状態におけるシャフト310から径方向rに離間した位置に設けるように構成している。弁体53aを設けることによって、変位部40aを厚さ方向に圧縮させた際に当該圧縮状態を保持することができる。弁体53aは、厚さ方向への圧縮操作に伴って内腔42aに存在し得る空気を外部に放出し、弁体の閉状態で内腔42aを閉鎖空間に保持することができれば特に限定されないが、一例として一方向弁を含むことができる。
【0098】
なお、変位部40aは、折り畳み箇所41、第1区画部51a、および第2区画部52aによって形成される内腔42aの形状が第1実施形態と異なる程度であり、その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
また、本変形例に係る癒合促進デバイス100を用いた処置方法は、変位部40aに係る折り畳み箇所41の内側S1をシャフト310と接触させる際の保持部50aの操作が異なる。
【0100】
癒合促進デバイス100aの孔部30をシャフト310に挿通させた状態で変位部40aを圧縮させた後に、術者は弁体53aを閉じて変位部40aが圧縮された状態を保持する。その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
以上、説明したように本変形例において保持部50aは、折り畳み箇所41の頂部の側に第1区画部51aを設け、根元の側に第2区画部52aを設けて折り畳み箇所41を圧縮させた際に保持部50aの弁体53aにより変位部40aが圧縮された状態を保持する。このように構成することによっても変位部40aの内側S1がシャフト310と接触した状態を保持することができる。
【0102】
<変形例2>
図13図14は変形例2に係る癒合促進デバイス100bを構成する保持部50bを示す図である。第1実施形態では保持部50がフック形状を備える第1係合部51と、穴部を含む第2係合部52と、を備えると説明した。ただし、変位部40の内側S1がシャフト310と接触した状態を保持できれば、保持部の具体的な構成は以下のように構成することができる。
【0103】
なお、癒合促進デバイス100bを構成する本体部10、補強部20、孔部30、および変位部40は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
保持部50bは、図13図14に示すように第1係合部51bと、第2係合部52bと、を備える。第1係合部51bは第2係合部52bと係合可能に構成しており、本実施形態において穴部を形成する糸状部材を含むように構成している。第2係合部52bは、本実施形態において第1係合部51bの穴部が引っ掛かった状態を維持できるフックのような形状を本体部10に設けるように構成している。
【0105】
本変形例に係る医療器具セットを用いた処置方法は、保持部50bの第1係合部51bを第2係合部52bに係合する方法が第1実施形態と異なる。
【0106】
癒合促進デバイス100bの孔部30をシャフト310に挿通させた状態で変位部40を圧縮させた後に、術者は、保持部50bの第1係合部51bに係る糸状部材が形成する穴部を第2係合部52bに係るフック形状に係合させる。これにより、図14に示すように変位部40が厚さ方向に圧縮した状態が維持され、その結果、内側S1がシャフト310と接触した状態が保持される。その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
以上説明したように本変形例2では第1係合部51bに糸状部材が形成する穴部を第2係合部52bに係るフック形状と係合するように構成している。このように構成することによっても変位部40の内側S1がシャフト310と接触した状態を保持することができる。
【0108】
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態に係る癒合促進デバイス100cを示す図である。第1実施形態では癒合促進デバイス100の変位部40が複数の環状凸部を連ねるように形成した凹凸部を含む折り畳み箇所41を備えると説明した。ただし、変位部は厚さ方向に圧縮した際に第2係合器具270のシャフト310と接触して癒合促進デバイスをシャフト310に固定できれば、以下のように構成することもできる。
【0109】
なお、癒合促進デバイス100cを構成する本体部10、補強部20、孔部30は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
変位部40cは、図15に示すように折り畳み箇所41cを備えるように構成しており、折り畳み箇所41cは、螺旋状に形成した凹凸部を含むように構成している。変位部40cの折り畳み箇所41cは、厚さ方向に圧縮するだけでなく、厚さ方向(軸方向X)を回転軸として回転させる操作を行うことによって、厚さ方向に圧縮して内側S2が径方向rの内方に変位するように構成している。
【0111】
変位部40cを構成する内腔42cの形状は、折り畳み箇所41cの形状が第1実施形態に係る折り畳み箇所41の形状と異なるため、第1実施形態に係る内腔42の形状と異なる。ただし、内腔42cは第2係合器具270のシャフト310を挿通させる点において第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0112】
保持部50cは、図15に示すように第1係合部51cと、第2係合部52cと、を備える。第1係合部51cは、本実施形態において第1実施形態の保持部50と同様のフック形状を含むように構成している。
【0113】
第2係合部52cは、本実施形態において第1実施形態と同様に第1係合部51cのフック形状と係合可能な穴部を含むように構成している。変位部40cは、図17に示すように周方向θにひねるまたは捻るように操作しながら厚さ方向に圧縮する操作を行うことによって、第1係合部51cと第2係合部52cの周方向θにおける位置を一致させて両者を係合させることができる。
【0114】
癒合促進デバイス100cを用いた処置方法は変位部40cの圧縮変形による癒合促進デバイス100cのシャフト310に対する固定が異なる。変位部40cの変形の際に、術者は変位部40cを手指で把持して図17に示すように周方向θに回転させながら厚さ方向に向けて押し込むように操作する。
【0115】
これにより、図16に示すように変位部40cの折り畳み箇所41cの螺旋形状は周方向θに回転するとともに、厚さ方向の高さが減少することで内側S2が径方向rの内方に変位してシャフト310と接触する。変位部40cの内側S2がシャフト310と接触した状態は保持部50cの第1係合部51cと第2係合部52cの係合によって保持される。その他の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0116】
以上説明したように本実施形態では変位部40cの折り畳み箇所41cが螺旋状に形成した凹凸部を含むように構成している。このように構成することによっても、癒合促進デバイス100cをシャフト310に固定して、手技の際に癒合促進デバイス100cの生体器官に対するズレを防止または抑制したり、生体器官からの脱落を防止したりすることができる。また、癒合促進デバイス100cは回転した状態が保持されることによって腸管のような生体器官のねじれの防止に寄与し得る。
【0117】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。第2実施形態ではフック形状を含む第1係合部51cと、穴部を含む第2係合部52cと、を備える保持部50cによって、回転しながら厚さ方向に圧縮した変位部40cの圧縮状態が保持されると説明した。
【0118】
ただし、変位部40cの内側S2が径方向rの内方に変位した状態を保持できれば、変位部40cの圧縮状態は変形例1のような弁体53aを含む保持部50aを用いて保持してもよい。また、変位部40cの圧縮状態は、変形例2の糸状部材を含む第1係合部51bとフック形状を含む第2係合部52bとを備える保持部50bを用いて保持してもよい。
【0119】
また、保持部の構成は第1実施形態、変形例1、変形例2で記載した形態以外にも面ファスナーのようなフックとループの係合によって変位部の圧縮状態を保持するように構成してもよい。
【0120】
また、変形例1において保持部50aを構成する弁体53aは変位部40に設けると説明したが、変位部が圧縮した状態を保持できれば、第2係合器具のシャフトに保持部を構成する弁体を設けてもよい。
【0121】
また、保持部の構成は第1実施形態、変形例1、変形例2などにおいて変位部40と別部品として構成していると説明した。ただし、術者の操作によって変位部が圧縮された状態を保持できれば、変位部と別に保持部を設けず、変位部の折り畳み箇所が自身の材料の物性等によって圧縮された状態を保持するように構成してもよい。
【0122】
また、第1実施形態、変形例1、変形例2および第2実施形態では癒合促進デバイスの本体部10の径方向rの内方において孔部30を設けると説明した。ただし、上記以外にも癒合促進デバイスの孔部は製品の流通段階で形成されておらず、手技の際に術者が癒合促進デバイスをシャフト310に挿通させることによって始めて形成するように構成してもよい。
【0123】
図18は、図4に係る癒合促進デバイス100の変位部40の変形例を示す図である。第1実施形態において変位部40は、径方向rの寸法が軸方向Xの位置が変わっても外形が同一またはほとんど変わらないと説明した。ただし、変形部を圧縮させた際に内側がシャフト310と接触して癒合促進デバイスをシャフト310に固定できれば、変形部の構成はこれに限定されない。
【0124】
上記以外にも変位部40dは、図18に示すように内側S3を設けた折り畳み箇所41dの寸法が変位部40dの頂部から本体部10に近い根本部に接近するにつれて増加するように構成してもよい。このように構成することによって第2係合器具270の当接部290をより押圧しやすくし得る。また、癒合促進デバイス100dを第2係合器具270のシャフト310に挿通させる際に変位部40dが意図せず圧縮されることを防止することに寄与し得る。
【0125】
なお、変位部40dを構成する内腔42dは折り畳み箇所41dの形状が第1実施形態と異なることで形状が異なる。ただし、第2係合器具270のシャフト310を挿通させる点において第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、癒合促進デバイス100dを構成する本体部10、補強部20、孔部30、保持部50および癒合促進デバイス100dを用いた処置方法は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0126】
また、癒合促進デバイス100は本体部10と変位部40等を備えていれば、補強部20を備えていなくてもよい。
【0127】
さらに、医療デバイス200の第2係合器具270は、シャフト310が互いに径の異なる第1シャフト311と第2シャフト312を備えると説明した。ただし、第2係合器具のシャフトは上記に限定されず、単一の径からなる筒形状等によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0128】
10 本体部、
30 孔部、
40、40a、40c、40d 変位部、
41、41d 折り畳み箇所(複数の環状凸部を連ねるように形成した凹凸部)、
41c 折り畳み箇所(螺旋状に形成した凹凸部)、
50、50a、50b、50c 保持部、
100、100a、100b、100c、100d 癒合促進デバイス、
200 医療デバイス、
210 第1係合器具、
270 第2係合器具、
310 シャフト、
r 径方向、
S1、S2、S3 内側、
X 軸方向(本体部の厚さ方向)、
YZ 面方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18