(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147536
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】アルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20220929BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20220929BHJP
B22D 19/00 20060101ALI20220929BHJP
C04B 37/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H05K1/02 F
C22C21/00 A
B22D19/00 E
C04B37/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048815
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸司
【テーマコード(参考)】
4G026
5E338
【Fターム(参考)】
4G026BA16
4G026BB27
4G026BF33
4G026BG02
4G026BG10
4G026BG27
4G026BH07
5E338AA01
5E338AA18
5E338BB71
5E338EE02
5E338EE27
5E338EE28
5E338EE31
(57)【要約】
【課題】高温になるヒートサイクルにおいても耐久性がある、耐ヒートサイクル性に優れたアルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス基板の一方の面に回路パターン用アルミニウム板が直接接合するとともに、他方の面にアルミニウムベース板が直接接合したアルミニウム-セラミックス接合基板であって、用いられているアルミニウム合金が、ニッケルおよび鉄から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.05質量%以上3.0質量%以下含有し、チタンおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.01質量%以上0.1質量%以下含有し、ボロンまたはカーボンから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金であるアルミニウム-セラミックス接合基板を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の一方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウム板が直接接合するとともに、他方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウムベース板が直接接合したアルミニウム-セラミックス接合基板であって、
前記アルミニウム合金は、ニッケルおよび鉄から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.05質量%以上3.0質量%以下含有し、チタンおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.01質量%以上0.1質量%以下含有し、ボロンまたはカーボンから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金である、アルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項2】
前記アルミニウム板のビッカース硬さHVが17以上である、請求項1に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項3】
前記アルミニウム板のビッカース硬さHVが25未満である、請求項1または2に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項4】
前記アルミニウム板の表面の平均結晶粒径が600μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項5】
前記アルミニウム板の表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である、請求項1~4のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項6】
前記アルミニウム板の電気抵抗率が3.2μΩ・cm以下である、請求項1~5のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項7】
前記セラミックス基板の主成分が、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素および炭化珪素から選択される1種以上からなる、請求項1~6のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項8】
前記アルミニウムベース板より硬さの大きい板状の強化部材が、前記アルミニウムベース板の内部に配置され、前記アルミニウムベース板に直接接合している、請求項1~7のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板。
【請求項9】
鋳型内にセラミックス基板を配置し、前記鋳型内の前記セラミックス基板の両面に接触するようにアルミニウム合金の溶湯を流し込んで冷却することによって、
前記アルミニウム合金からなるアルミニウム板を、前記セラミックス基板の一方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させ、
前記アルミニウム合金からなるアルミニウムベース板を、前記セラミックス基板の他方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させる、アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法であって、
前記アルミニウム合金は、ニッケルまたは鉄から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.05質量%以上3.0質量%以下含有し、チタンまたはジルコニウムから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.01質量%以上0.1質量%以下含有し、ボロンまたはカーボンから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金である、アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項10】
前記セラミックス基板の主成分が、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素および炭化珪素から選択される1種以上からなる、請求項9に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項11】
前記鋳型内に前記セラミックス基板から離間して板状の強化部材を配置させ、前記鋳型内の前記セラミックス基板の両面と前記強化部材の表面に接触するように、前記アルミニウム合金の溶湯を流し込んで冷却することによって、
前記アルミニウム合金からなる前記アルミニウム板を、前記セラミックス基板の一方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させ、
前記アルミニウム合金からなる前記アルミニウムベース板を、前記セラミックス基板の他方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させるとともに、
前記強化部材を前記アルミニウムベース板の内部に配置し、前記アルミニウムベース板と直接接合させる、請求項9または10に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法に関し、特に、アルミニウム合金からなるアルミニウム部材がセラミックス基板に接合した、アルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や工作機械などの分野において、大電流を制御する高信頼性パワーモジュール用の絶縁基板として、セラミックス基板にアルミニウム部材が接合したアルミニウム-セラミックス接合基板が使用されている。
【0003】
特許文献1には、鋳型内にセラミックス基板を設置した後、0.1~1.5重量%のシリコンと0.03~0.10重量%のホウ素を含有するアルミニウム-シリコン系合金の溶湯を、前記セラミックス基板の少なくとも一方の面に接触するように前記鋳型内に注湯する。そして、前記アルミニウム-シリコン系合金の溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板にアルミニウム合金部材を直接接触させて接合して製造した、アルミニウム-セラミックス接合基板が開示されている。このようなアルミニウム-セラミックス接合基板においては、セラミックス基板に接合したアルミニウム合金部材のアルミニウム-シリコン系合金の結晶粒を微細化することができることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、珪素0.1~1.5重量%と、ホウ素0.02~0.1重量%とを含有するとともに、鉄0.005~0.2重量%と、亜鉛、銅、銀およびマグネシウムからなる群から選ばれる1種以上の元素0.005~0.3重量%と、チタン、バナジウムおよびマンガンからなる群から選ばれる1種以上の元素のうちのいずれかを0.001~0.05重量%含有する、アルミニウム合金からなるアルミニウム合金板を、溶湯接合法によりセラミックス基板に接合した、アルミニウム-セラミックス接合基板が記載されている。これによりアルミニウム合金の結晶粒を微細化して粒界を増加させるとともに、アルミニウム-ホウ素化合物の析出を抑制し、良好にエッチングを行うことができ、且つ、めっき性を向上させることができる、アルミニウム-セラミックス接合基板を提供できることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、セラミックス基板の少なくとも一部の面にアルミニウムを主とするシリコン、銅、亜鉛またはニッケルを含有する金属層を形成し、前記金属層のビッカース硬度を25以上、40未満とし、前記金属層のシリコン含有量を0.2重量%以上、5重量%未満とし、前記セラミックス基板はアルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素から選ばれる一種とする半導体実装用絶縁基板が記載されている。ここで、前記金属層の銅含有量は0.2重量%以上、3重量%未満としてもよく、亜鉛含有量は0.2重量%以上、3重量%未満としてもよく、金属層のニッケル含有量は0.2重量%以上、3重量%未満としてもよいことも記載されている。このような半導体実装用絶縁基板であるアルミニウム-セラミックス絶縁基板を用いることにより、アルミニウムが熱衝撃で変形するために半田との接合界面にクラックを生じ熱衝撃耐性が低下するのを防止することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、鋳型内に設置したセラミックス基板に接触するようにアルミニウム溶湯を注湯し、アルミニウム溶湯を冷却して固化させることにより、セラミックス基板にアルミニウム板を直接接合する際、TiB系合金、CaまたはSrなどの、アルミニウム板の熱伝導率の低下を純アルミニウム板の熱伝導率と比べて20%以内に抑え、且つ、アルミニウム板の結晶粒径を10mm以下にする添加物をアルミニウム溶湯に加えることが記載されている。当該構成により、アルミニウムの結晶粒径を小さくして結晶粒度分布のばらつきを小さくし、ヒートサイクル後にセラミックス基板にクラックが生じるのを防止することができるとともに、半導体チップなどを半田付けする際の加熱によるアルミニウムベース板の反りを制御して、アルミニウムベース板に放熱フィンなどを取り付けたときの放熱性の低下を抑制することができる、アルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-252136号公報
【特許文献2】特開2007-92150号公報
【特許文献3】特開2002-329814号公報
【特許文献4】特開2005-103560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年SiC半導体チップ等の使用により、150℃程度の高温になるヒートサイクルにおいても耐久性がある、耐ヒートサイクル性に優れたアルミニウム-セラミックス接合基板が求められるようになった。ところが、特許文献1~4に係るアルミニウム-セラミックス接合基板においては、当該高温になるヒートサイクル試験において、例えば、ヒートサイクル500サイクルの後、回路パターンにおける表面の粗さが大きくなり、接合基板の回路パターンに半田付けされたチップにクラックが発生したり、半田層内にクラックが発生する場合があることが判明した。
【0009】
本発明は、このような状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、セラミックス基板の一方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウム板が直接接合するとともに、他方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウムベース板が直接接合したアルミニウム-セラミックス接合基板であって、高温になるヒートサイクルにおいても回路パターンおける表面の粗さの増大が抑制され耐久性がある、耐ヒートサイクル性に優れたアルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、上述の課題を解決する為の、第1の発明は、
セラミックス基板の一方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウム板が直接接合するとともに、他方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウムベース板が直接接合したアルミニウム-セラミックス接合基板であって、
前記アルミニウム合金は、ニッケルおよび鉄から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.05質量%以上3.0質量%以下含有し、チタンおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.01質量%以上0.1質量%以下含有し、ボロンまたは炭素から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金である、アルミニウム-セラミックス接合基板である。
第2の発明は、
前記アルミニウム板のビッカース硬さHVが17以上である、第1の発明に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板である。
第3の発明は、
前記アルミニウム板のビッカース硬さHVが25未満である、第1または第2の発明に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板である。
第4の発明は、
前記アルミニウム板の表面の平均結晶粒径が600μm以下である、第1~第3の発明のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板である。
第5の発明は、
前記アルミニウム板の表面の算術平均粗さRaが1.0μm以下である、第1~第4の発明のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板である。
第6の発明は、
前記アルミニウム板の電気抵抗率が3.2μΩ・cm以下である、第1~第5の発明のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板である。
第7の発明は、
前記セラミックス基板の主成分が、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素および炭化珪素から選択される1種以上からなる、第1~第6の発明のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板である。
第8の発明は、
前記アルミニウムベース板より硬さの大きい板状の強化部材が、前記アルミニウムベース板の内部に配置され、前記アルミニウムベース板に直接接合している、第1~第7の発明のいずれかに記載のアルミニウム-セラミックス接合基板である。
第9の発明は、
鋳型内にセラミックス基板を配置し、前記鋳型内の前記セラミックス基板の両面に接触するようにアルミニウム合金の溶湯を流し込んで冷却することによって、
前記アルミニウム合金からなるアルミニウム板を、前記セラミックス基板の一方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させ、
前記アルミニウム合金からなるアルミニウムベース板を、前記セラミックス基板の他方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させる、アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法であって、
前記アルミニウム合金は、ニッケルまたは鉄から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.05質量%以上3.0質量%以下含有し、チタンまたはジルコニウムから選ばれる少なくとも一の元素を総量で0.01質量%以上0.1質量%以下含有し、ボロンまたは炭素から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がアルミニウムからなるアルミニウム合金である、アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法である。
第10の発明は、
前記セラミックス基板の主成分が、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素および炭化珪素から選択される1種以上からなる、第9の発明に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法である。
第11の発明は、
前記鋳型内に前記セラミックス基板から離間して板状の強化部材を配置させ、前記鋳型内の前記セラミックス基板の両面と前記強化部材の表面に接触するように、前記アルミニウム合金の溶湯を流し込んで冷却することによって、
前記アルミニウム合金からなる前記アルミニウム板を、前記セラミックス基板の一方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させ、
前記アルミニウム合金からなる前記アルミニウムベース板を、前記セラミックス基板の他方の面に形成して前記セラミックス基板に直接接合させるとともに、
前記強化部材を前記アルミニウムベース板の内部に配置し、前記アルミニウムベース板と直接接合させる、第9または第10の発明に記載のアルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セラミックス基板の一方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウム板が直接接合するとともに、他方の面にアルミニウム合金からなるアルミニウムベース板が直接接合したアルミニウム-セラミックス接合基板であって、高温になるヒートサイクルにおいても回路パターンおける表面の粗さの増大が抑制され耐久性がある、耐ヒートサイクル性に優れたアルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板の1例の概略的な平面図である。
【
図3】本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板の製造に用いる鋳型の1例の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、1.アルミニウム-セラミックス接合基板、2.アルミニウム-セラミックス接合基板の諸特性、3.アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法、の順に説明する。
【0014】
1.アルミニウム-セラミックス接合基板
本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板について、(1)構造、(2)アルミニウム合金、(3)セラミックス基板、(4)強化部材、の順に説明する。
【0015】
(1)構造
本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板の構造について、図面を参照しながら簡単に説明する。
図1は、本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板の1例の平面図であり、
図2は、
図1のII-II線断面図である。
図1および
図2に示すように、本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板100は、(図示した実施の形態では、平面形状が略矩形の)アルミニウム合金からなるアルミニウムベース板10と、このアルミニウムベース板10に一方の面が直接接合した(図示した実施の形態では、平面形状が略矩形の)セラミックス基板12と、このセラミックス基板12の他方の面に直接接合した(図示した実施の形態では平面形状が略矩形の)アルミニウム合金からなる1枚以上(
図1では、1枚)の回路パターン用アルミニウム板14とを備えている。
【0016】
(2)アルミニウム合金
上述した、アルミニウム合金は、ニッケルまたは鉄から選択される少なくとも一の元素を総量で0.05質量%以上3.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上2.5質量%質量%以下(さらには1.5質量%以下)含有し、且つ、チタンまたはジルコニウムから選択される少なくとも一の元素を総量で0.01質量%以上0.1質量%以下、好ましくは0.02質量%以上0.08質量%以下(さらには0.06質量%以下)含有し、ボロンまたは炭素から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0質量%以上0.05質量%以下、好ましくは0.001質量%以上0.02質量%以下含有し、残部がアルミニウムとからなるアルミニウム合金(Al-(Ni,Fe)-(Ti、Zr)系合金)であることを特徴とする。
なお、本発明におけるアルミニウム合金は、原料などから不可避的に混入する不可避不純物元素や本発明の効果を奏する範囲の少量の他元素を含有してもよい。前記不可避不純物元素や前記他元素は総量で0.5質量%以下とすることが好ましく、0.3質量%以下とすることがさらに好ましく、0.1質量%以下としてもよい。
また、所望により、アルミニウムベース板10を構成するアルミニウム合金と、回路パターン用アルミニウム板14を構成するアルミニウム合金として、互いに同じ組成のものを用いても良いし、互いに異なる組成のものを用いても良い。
【0017】
本発明に係るアルミニウム合金は、「2.アルミニウム-セラミックス接合基板の諸特性」にて後述する、高温になるヒートサイクルにおいても耐久性がある、所定のヒートサクル付加後でも回路パターンの表面の粗さの増大を抑制することができる。さらには電気伝導性、硬度、表面粗さ、平均結晶粒というアルミニウム-セラミックス接合基板の諸特性において、バランスよく優れた特性を発揮するものである。
【0018】
次に、アルミニウム合金に含まれる元素について、(I)ニッケル、鉄、(II)チタン、ジルコニウム、(III)ボロン、炭素の順に説明する。
【0019】
(I)ニッケル、鉄、
添加元素であるニッケル、鉄を、アルミニウムに含有させることにより、(純アルミニウムと比較して、)硬度(強度)を向上させることができる。一方、電気伝導性、熱伝導性の低下は、比較的小さく抑えることができる。
アルミニウム合金が、ニッケルまたは鉄から選択される一の元素を含有する場合、または、ニッケル、鉄の両方の元素を含有する場合、その含有量の総量が0.05質量%以上であれば、アルミニウムの硬度(強度)の向上を十分図ることができる。また、前記含有量の総量が3.0質量%以下であれば、電気伝導性、熱伝導性を十分に担保することができる。当該観点から、前記含有量の総量が0.1質量%以上2.5質量%以下(さらには1.5質量%以下)であることが好ましい。
【0020】
(II)チタン、ジルコニウム
添加元素であるチタン、ジルコニウムを、アルミニウムに含有させることにより、回路パターン用アルミニウム板、アルミニウムベース板の結晶粒径を微細化することができる。そして、結晶粒径が微細化されると、耐ヒートサイクル性の向上の観点から有利である。また、チタン、ジルコニウムが、ニッケルや鉄と金属間化合物を形成してアルミニウム合金の強度を向上させることが考えられる。
また、このような合金組成とすることで、例えば150℃を高温側とする高温のヒートサイクル試験を行ったときにも、アルミニウム板、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaの変化を小さく抑えることができ、耐ヒートサイクル性を向上させることができる。
アルミニウム合金が、チタンまたはジルコニウムから選択される一の元素を含有する場合、または、チタン、ジルコニウムの両方の元素を含有する場合、その含有量の総量が0.01質量%以上であれば、回路パターン用アルミニウム板、アルミニウムベース板の結晶粒径を微細化することができる。また、前記含有量の総量が0.1質量%以下であれば、電気伝導性を十分に担保することができる。当該観点から、前記含有量の総量が0.02質量%以上0.08質量%以下(さらには0.06質量%以下)であることが好ましい。
【0021】
(III)ボロン、炭素
アルミニウム合金を作製する際に、上述したチタンまたはジルコニウムから選択される一の元素を単独で添加すると、例えば、酸化ロスなどが発生して所定の組成に制御することが難しい場合がある。そのような場合、例えばチタンであれば、Al-Ti-B合金などの母合金の形で添加するのが好ましい。従って、ボロン、炭素は任意添加元素である(添加しなくてもよい)が、ボロンまたは炭素から選ばれる少なくとも一の元素を総量で0質量%以上0.05質量%以下含有させてもよく、さらに0.001質量%以上0.04質量%以下(さらには0.002質量%以上0.02質量%以下)含有させることも好ましい。
【0022】
(3)セラミックス基板
セラミックス基板は、実施例欄にて説明する「アルミニウム回路板」間や、回路パターン用アルミニウム板とアルミニウムベース板間との絶縁性を保つ機能を有している。そして、セラミックス基板の主成分(組成として85質量%以上)は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素および炭化珪素から選択される1種以上からなるセラミックス基板であることが好ましい。
【0023】
(4)強化部材
所望により、アルミニウムベース板に板状の強化部材を設けることができる。当該強化部材について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
(図示した実施の形態では、平面形状が略矩形の)板状の強化部材16の主面(板面)は、アルミニウムベース板10の内部において、アルミニウムベース板10のセラミックス基板12との接合面と略平行な(仮想)平面上に配置し、強化部材16の表面はアルミニウムベース板10に直接接合させることができる。
上述したように、強化部材16は本発明において、所望により設けられる部材であって、アルミニウムベース板10より硬度(強度)が高い板状の部材である。尤も、アルミニウムベース板10の内部に強化部材16を配置することにより、アルミニウム-セラミックス接合基板100の反りおよびそのばらつき、特に長手方向の反りおよびそのばらつきを小さくすることができ、好ましい。
また、強化部材16が、アルミニウムベース板10と直接接合している構成も、接合欠陥を抑制でき、さらに、セラミックス基板12と強化部材16とを同時にアルミニウム合金と接合でき、製造コスト等の観点からも好ましい。
【0024】
強化部材16は、アルミニウムベース板を構成するアルミニウム合金より、融点が高い金属またはセラミックスからなることが好ましい。そして、当該観点から、強化部材は、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素および炭化珪素から選択される1種以上であることが好ましい。
【0025】
2.アルミニウム-セラミックス接合基板の諸特性
アルミニウム-セラミックス接合基板の諸特性について、(1)電気伝導性、(2)硬度、(3)表面粗さ、平均結晶粒径、の順に説明する。
なお、本発明において、高温のヒートサイクル試験の態様は、「-40℃×30分間→25℃×10分間→150℃×30分間→25℃×10分間」の条件を1サイクルとするものである。
【0026】
(1)電気伝導性
アルミニウム-セラミックス接合基板100において、回路パターン用アルミニウム板は高い電気伝導性が求められることから、電気抵抗率が3.2μΩ・cm以下、さらには3.0μΩ・cm以下であることが好ましい。
【0027】
(2)硬度
回路パターン用アルミニウム板、アルミニウムベース板の表面のビッカース硬さHVは、アルミニウム-セラミックス接合基板100と冷却器との締結性や、アルミニウム-セラミックス接合基板がヒートサイクルを受けた際の耐変形性といった観点から重要である。当該観点から、初期(高温のヒートサイクルを付加する前)のビッカース硬さHVは17以上25未満であることが好ましく、18以上24以下であることがさらに好ましい。
【0028】
アルミニウム-セラミックス接合基板100は、パワーモジュールなどのモジュールに組付けられる。この取り付けの際、アルミニウムベース板10は、(図示しない)放熱用の冷却板、冷却ジャケット、回路側の半導体部品を覆うケース部材(筐体)等と、アルミニウムベース板10に設けられた(図示しない)貫通孔を介してネジやボルトで締結される。このときにビッカース硬さHVが17以上であると、アルミニウムベース板10が変形して冷却板との間に隙間ができたり、高温のヒートサイクルが付加されたときにネジやボルトが緩むことを回避できる。
【0029】
一方、例えば、アルミニウムベース板10の初期(ヒートサイクル試験前)のビッカース硬さHVが25未満であると、高温のヒートサイクル試験を500サイクル実施した後に、セラミックス基板12にクラックが発生するのを回避することができる。そこで、高温のヒートサイクル試験500サイクル後においても、ビッカース硬さHVは29以下であることが好ましく、27以下であることがより好ましく、25以下であることがさらに好ましい。
【0030】
本発明のアルミニウム合金は、アルミニウムベース板の初期(ヒートサイクル前)のビッカース硬さが17以上であり、ヒートサイクルを付加しても硬さの変化(増加)が少なく、500サイクル後でも27以下を保つことができるので、熱膨張差などに起因する熱応力によるセラミックス基板12の割れの発生を抑制し、アルミニウムーセラミックス接合基板100の耐ヒートサイクル性の向上に寄与する。
【0031】
(3)表面粗さ、平均結晶粒
回路パターンとしての回路パターン用アルミニウム板14へ、(図示しない)半導体チップを半田などで接合した状態で、前記高温のヒートサイクルを付加したとき、回路パターン用アルミニウム板14の表面における初期(高温のヒートサイクルを付加する前)の算術平均粗さRaが大きすぎると、前記高温のヒートサイクルを付加した後に、回路パターン用アルミニウム板14の表面に大きな段差(凸部)が形成され、半導体チップが割れたり半田層内にクラックが発生する場合がある。
このような事態を回避する為、回路パターン用アルミニウム板14の表面の算術平均粗さRaは初期(高温のヒートサイクルを付加する前)において1.0μm以下であることが好ましく、さらには高温のヒートサイクルを400サイクルさらには500サイクル付加した後でも1.0μm以下であることが好ましい。
本発明に係るアルミニウム合金では、前記高温のヒートサイクルが付加されても算術平均粗さRaの変化(上昇)を抑制することができ、回路パターン用アルミニウム板14の表面に大きな段差が形成されない。
【0032】
また、上述した大きな段差(凸部)の形成を回避する観点から、回路パターン用アルミニウム板14の表面の平均結晶粒径が、初期(高温のヒートサイクルを付加する前)において600μm以下であることが好ましい。本発明に係るアルミニウム合金では結晶粒径を600μm以下(好ましくは500μm以下、100μm以上)に微細化することができ、耐ヒートサイクル性の向上の効果がある。
【0033】
アルミニウムベース板10の裏面(セラミックス基板12が接合していない面)の表面粗さも、所定の範囲を保持していることが望ましい。アルミニウムベース板10の裏面は放熱用の冷却板などに取り付けられるので、表面粗さが大きすぎると密着性が低下する恐れがある。このような事態を回避する為、アルミニウムベース板10の裏面の表面の算術平均粗さRaは、初期(高温のヒートサイクルを付加する前)において1.5μm以下(さらには1.0μm以下)であることが好ましく、さらには高温のヒートサイクルを500サイクル付加した後でも1.5μm以下(さらには1.0μm以下)であることが好ましい。
【0034】
3.アルミニウム-セラミックス接合基板の製造方法
本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板100の製造方法の一例について説明する。
まず、鋳型内にセラミックス基板12と強化部材16とを離間して配置させる。そして、鋳型内のセラミックス基板12の両面と強化部材16の表面に接触するように、上述した本発明に係るアルミニウム合金の溶湯を流し込んで冷却する。これによって、アルミニウム合金からなる回路パターン用アルミニウム板14をセラミックス基板12の一方の面に形成してセラミックス基板12に直接接合させる。一方、アルミニウム合金からなるアルミニウムベース板10をセラミックス基板12の他方の面に形成してセラミックス基板12に直接接合させるとともに、強化部材16をアルミニウムベース板10に取り囲まれるように配置してアルミニウムベース板10の内部に直接接合させる。
以上により、本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板100を製造することができる。
【0035】
次に、本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板100の製造に用いる鋳型の1例の概略的な断面図である
図3を参照しながら、アルミニウム-セラミックス接合基板100の製造に用いる鋳型について、より具体的に説明する。
【0036】
鋳型200は、平面形状が略矩形の下側鋳型部材202と、この下型鋳型部材202の上に載せ鋳型を構成するための上側鋳型部材204とから構成されている。下側鋳型部材202の上面には、アルミニウムベース板を形成するためのアルミニウムベース板形成部210が形成されている。このアルミニウムベース板形成部210の底面には、セラミックス基板と略同一の形状および大きさの1つまたは複数(
図3では、1つの場合を示す)の凹部(セラミックス基板を収容するためのセラミックス基板収容部212)が形成されている。このセラミックス基板収容部212の底面には、回路パターン用にアルミニウム板と略同一の形状および大きさの1つまたは複数(
図3では、1つのみの場合を示す)の凹部(回路パターン用のアルミニウム板を形成するためのアルミニウム板形成部214)が形成されている。
【0037】
上側鋳型部材204の底面(下側鋳型部材202と対向する側の面)には、アルミニウムベース板形成部210が形成され、下側鋳型部材202の上に上側鋳型部材204をかぶせたときに、下側鋳型部材202のアルミニウムベース板形成部210とともに、アルミニウムベース板形成部210の空間が画定される。また、上側鋳型部材204には(図示しない)注湯ノズルから鋳型200内のアルミニウムベース板形成部210に溶湯を注湯するための注湯口が形成されている。
【0038】
なお、下側鋳型部材202の回路パターン用のアルミニウム板形成部214にも溶湯を供給するための(図示しない)溶湯流路が形成され、セラミックス基板収容部内212にセラミックス基板を収容したときにもアルミニウム板形成部214に溶湯が送給できるようになっている。
【0039】
また、強化部材は、下側鋳型部材202および上側鋳型部材204のアルミニウムベース板形成部210の凹部の端部に設けられた溝部により挟持されるようになっており、鋳型部材の所定の位置に強化部材を配置することができ、この状態で溶湯を供給して、アルミニウムベース板の中に強化部材を形成することができる。なお、
図3では挟持する溝は図面(紙面)に垂直な方向の(図示されない)両端部に形成されている。
【0040】
強化部材は本発明において必須ではない。そこで、アルミニウムベース板10の内部に強化部材16を形成しないアルミニウム-セラミックス接合基板を製造する場合は、強化部材16を挟持する溝がない鋳型200を用い、鋳型200内にセラミックス基板12をセラミックス基板収容部212に配置した後に、アルミニウム合金溶湯を注湯する。
【0041】
なお、本発明に係るアルミニウム合金とセラミックス基板との接合方法において、所謂、溶湯接合法によりアルミニウム合金とセラミックス基板とを直接接合することが好ましい。すなわち前記鋳型を加熱炉に挿入し、窒素ガスなどの非酸化性ガス雰囲気中で加熱しておき、溶解炉で溶融させたアルミニウム合金の溶湯を鋳型に注湯する際、注湯される金属溶湯は溶湯表面の酸化皮膜が除去された状態のものであることが望ましい。ここで、酸化皮膜の除去処理としては、例えば、金属溶湯を極小ノズルを通過させることにより、溶湯表面の酸化皮膜を除去しながら注湯する手法が有効である。また、鋳型の材質は、例えば、ガス透過性を有する炭素材料とすることが好ましい。
【0042】
以上、本発明の実施の形態の例を説明したが、これに限らず本発明の主旨に沿うものは権利範囲に含まれる。例えば、アルミニウムベース板の裏面(セラミックス基板が接合していない面)に、放熱用のピンやフィンが当該アルミニウムベース板と一体に形成されていてもよく、また、アルミニウム-セラミックス接合基板の構成部材として前記強化部材は、なくてもよい。さらに、前記アルミニウムベース板と一体に形成された放熱用のピンやフィンは、内部に当該ピンやフィンの形状と略同一の空間を設けた鋳型を準備した後、鋳型にアルミニウム合金を注湯することにより作製することができる。
【実施例0043】
以下、実施例を参照しながら、本発明に係るアルミニウム-セラミックス接合基板およびその製造方法をより具体的に説明する。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
まず、カーボン製の鋳型内に、120mm×92mm×1mmの大きさのAlN(窒化アルミニウム)(ビッカース硬さHVは1040)からなるセラミックス基板と126mm×94mm×1mmの大きさのAlN(窒化アルミニウム)(ビッカース硬さHVは1040)からなる板状の強化部材とを2.6mm離間して配置させ、この鋳型を炉内に入れ、炉内を窒素雰囲気にして酸素濃度を4ppm以下まで低下させた。この状態でヒーターの温度制御によって鋳型を720℃まで加熱した後、720℃まで加熱した0.3質量%のニッケルと0.02質量%のチタンと、0.004質量%のボロンを含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなる組成のアルミニウム合金の溶湯を、鋳型の注湯口に取り付けられた注湯ノズルから、窒素ガスによって加圧して、溶湯の表面の酸化皮膜を取り除きながら、鋳型内に流し込んで充填した後、注湯ノズルから注湯口に窒素ガスを吹き込むことによって、鋳型内の溶湯を加圧したまま約20℃/分の冷却速度で冷却して溶湯を凝固させ、その後、約50℃/分の冷却速度で冷却した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、20質量%のニッケルを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、5質量%のチタンと1質量%のボロンを含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。このようにして、所謂溶湯接合法により、126mm×94mm×1mmの大きさの強化部材が内部に配置されて直接接合した140mm×100mm×4mmの大きさのアルミニウムベース板が120mm×92mm×1mmの大きさのセラミックス基板の一方の面に直接接合するとともに、セラミックス基板の他方の面に114mm×86mm×0.4mmの大きさの回路パターン用アルミニウム板が直接接合した金属-セラミックス接合基板を製造した。
なお、セラミックス基板に垂直な上方から平面視したときに、強化部材とセラミックス基板とは、いずれもアルミニウムベース板の中央部に接合されており、回路パターン用アルミニウム板はセラミックス基板の中央部に接合されている。
【0045】
このようにして得られたアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の表面を苛性ソーダで洗浄し、バフ研磨し、塩化第二鉄溶液によってエッチング処理を行った後、その表面を光学顕微鏡により観察して、その表面の平均結晶粒径をJIS H0501の切断法に準じた方法により測定したところ、0.34mmであった。
【0046】
このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板(のアルミニウム合金)の電気抵抗率は2.77μΩ・cmであった。
電気抵抗率は、アルミニウム板の導電率(%IACS)を導電率計(FOERSTER社製のSIGMATEST2.069)を用いて渦電流法により測定し、下記の式を用いて電気抵抗率に換算して求めた。
電気抵抗率(μΩ・cm)=10,000÷(58.001×導電率(%IACS))・・・・(式)
【0047】
得られた金属-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の表面を苛性ソーダで洗浄し、バフ研磨した後、その回路パターン用アルミニウム板の表面にレジストを形成し、塩化第二鉄溶液によってエッチング処理を行うことにより、回路パターン用アルミニウム板の不要部分を除去して所望の回路パターンを有するアルミニウム回路板を形成し、その後、レジスト剥離液によりレジストを剥離して、アルミニウム-セラミックス回路基板を作製した。
【0048】
作製したアルミニウム-セラミックス回路基板について、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を超音波探傷装置(SAT)(日立建機ファインテック株式会社製のFS100II)により観察したところ、未接合部はなく、また、外観を肉眼で観察したところ、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0049】
作製したアルミニウム-セラミックス回路基板について、アルミニウム回路板のビッカース硬さHVを、マイクロビッカース硬度計(株式会社ミツトヨ製のHM-210)を用い、試験荷重10gfを5秒間加えて測定したところ、ビッカース硬さHVは18.0であった。また、アルミニウム回路板およびアルミニウムベース板の表面の表面粗さとして算術平均粗さRaをJIS B 0601に基づいて測定したところ、それぞれ0.43μm、0.55μmであった。
【0050】
作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後の時点で下記測定を行った。
まず、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率を測定したところ、それぞれ2.77μΩ・cm、2.76μΩ・cm、2.73μΩ・cm、2.75μΩ・cmおよび2.75μΩ・cmであった。
次に、上記と同様の方法によりアルミニウム回路板のビッカース硬さHVを測定したところ、それぞれ19.6、20.3、20.7、21.3および20.9であった。
次に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の表面の算術平均粗さRaを測定したところ、それぞれ0.48μm、0.59μm、0.65μm、0.79μmおよび0.91μmであった。
次に、上記と同様の方法により、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定したところ、それぞれ0.58μm、0.66μm、0.70μm、0.77μmおよび0.86μmであった。
【0051】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。なお、表2~4において、「HC」とはヒートサイクルの意味である。
【0052】
[実施例2]
アルミニウム合金の組成としてニッケルの含有量を0.3質量%とし、チタンの含有量を0.04質量%、ボロンの含有量を0.008質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0053】
次に、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0054】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0055】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0056】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0057】
[実施例3]
アルミニウム合金の組成としてニッケルの含有量を0.3質量%、鉄の含有量を0.1質量%、チタンの含有量を0.02質量%、ボロンの含有量を0.004質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、20質量%のニッケルを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、5質量%のチタンと1質量%のボロンを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、75質量%の鉄を含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0058】
次に、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0059】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0060】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0061】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0062】
[実施例4]
アルミニウム合金の組成としてニッケルの含有量を0.3質量%、鉄の含有量を0.2質量%、チタンの含有量を0.04質量%、ボロンの含有量を0.008質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、20質量%のニッケルを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、5質量%のチタンと1質量%のボロンを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、75質量%の鉄を含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0063】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0064】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0065】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0066】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0067】
[実施例5]
アルミニウム合金の組成としてニッケルの含有量を0.5質量%、チタンの含有量を0.04質量%、ボロンの含有量を0.008質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0068】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0069】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0070】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0071】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0072】
[実施例6]
アルミニウム合金の組成としてニッケルの含有量を0.5質量%、鉄の含有量を0.2質量%、チタンの含有量を0.04質量%、ボロンの含有量を0.008質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、20質量%のニッケルを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、5質量%のチタンと1質量%のボロンとを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、75質量%の鉄を含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0073】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0074】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0075】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0076】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0077】
[実施例7]
アルミニウム合金の組成としてニッケルの含有量を1.0質量%、チタンの含有量を0.02質量%、ボロンの含有量を0.04質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0078】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0079】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0080】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後、700回加えた後、1000回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHVを測定した。
また、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後、700回加えた後に、上記と同様の方法により、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0081】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0082】
[実施例8]
アルミニウム合金の組成としてニッケルの含有量を2.0質量%、チタンの含有量を0.02質量%、ボロンの含有量を0.004質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0083】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0084】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0085】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後、700回加えた後、1000回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHVを測定した。
また、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後、700回加えた後に、上記と同様の方法により、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0086】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0087】
[実施例9]
アルミニウム合金の組成として鉄の含有量を0.5質量%、チタンの含有量を0.02質量%、ボロンの含有量を0.004質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、5質量%のチタンと1質量%のボロンを含み残部がアルミニウムからなる母合金と、75質量%の鉄を含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0088】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0089】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0090】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後、500回加えた後、700回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHVを測定した。
また、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、200回加えた後、300回加えた後、400回加えた後に、上記と同様の方法により、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0091】
以上、本実施例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0092】
[比較例1]
アルミニウム合金の組成として珪素の含有量を0.4質量%、ホウ素の含有量を0.04質量%、鉄の含有量を0.01質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0093】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。
【0094】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0095】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し1000回加えた後に、上記と同様の方法により、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0096】
以上、本比較例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0097】
[比較例2]
アルミニウム合金の組成としてチタンの含有量を0.02質量%、ボロンの含有量を0.004質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、5質量%のチタンと1質量%のボロンとを含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0098】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0099】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0100】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、300回加えた後、500回加えた後、1000回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0101】
以上、本比較例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0102】
[比較例3]
アルミニウム合金の組成としてチタンの含有量を0.04質量%、ボロンの含有量を0.008質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、5質量%のチタンと1質量%のボロンを含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0103】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0104】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0105】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、300回加えた後、500回加えた後、1000回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0106】
以上、本比較例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0107】
[比較例4]
アルミニウム合金の組成としてチタンの含有量を0.1質量%、ボロンの含有量を0.02質量%、残部をアルミニウムと不可避不純物とした以外は、実施例1と同様の方法により、金属-セラミックス接合基板を製造し、回路パターン用アルミニウム板の表面の平均結晶粒径を測定した。なお、上記アルミニウム合金の原料として、純アルミニウム(99.9質量%以上のアルミニウムを含有する)と、5質量%のチタンと1質量%のボロンとを含み残部がアルミニウムからなる母合金とを用い、上記合金組成になるように配合を調整した。また、このアルミニウム-セラミックス接合基板の回路パターン用アルミニウム板の電気抵抗率を、実施例1と同様の方法により測定した。
【0108】
また、実施例1と同様の方法により、セラミックス基板とアルミニウム回路板との接合部を観察したところ、未接合部はなく、引け巣や粒界割れなどの接合欠陥がなく良好に接合されていた。また、アルミニウムベース板の断面を観察したところ、TiB2の析出物が確認された。
【0109】
次に、実施例1と同様の方法により、アルミニウム回路板のビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0110】
そして、作製したアルミニウム-セラミックス回路基板に、-40℃×30分間、25℃×10分間、150℃×30分間、25℃×10分間を1サイクルとするヒートサイクルを、繰り返し100回加えた後、300回加えた後、500回加えた後、1000回加えた後に、上記と同様の方法により、アルミニウム回路板の電気抵抗率、ビッカース硬さHV、表面の算術平均粗さRa、および、アルミニウムベース板の表面の算術平均粗さRaを測定した。
【0111】
以上、本比較例に係るアルミニウム-セラミックス接合基板に用いたアルミニウム合金の組成を表1に、電気抵抗率の測定値を表2に、ビッカース硬さHVの測定値を表3に、算術平均粗さRaの測定値を表4に、平均結晶粒径の測定値を表5に記載する。
【0112】