(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147555
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】急速充電用の電力供給装置用アダプタ及びそれを用いた電力供給方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/26 20060101AFI20220929BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G06F1/26 306
H02J1/00 306B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048849
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】500172058
【氏名又は名称】有限会社パッケージングテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 英司
【テーマコード(参考)】
5B011
5G165
【Fターム(参考)】
5B011DA01
5B011DA06
5B011DA13
5B011EA04
5B011EA10
5B011GG03
5B011HH02
5G165BB01
5G165BB02
5G165DA07
5G165EA01
5G165FA02
5G165GA06
5G165HA01
5G165LA01
5G165NA01
5G165NA02
5G165NA03
5G165NA05
5G165NA06
(57)【要約】
【課題】電子機器に出力する電圧を自動的も調整して、電力供給装置の出力電圧と、設定電圧のずれを防げる急速充電用の電力供給装置用アダプタや電力供給方法を提供する。
【解決手段】少なくとも設定電圧を含む給電条件情報、及び修正情報に基づいて、所定電力を出力する急速充電用の電力供給装置と、電力供給装置からの所定電力を利用する電子機器と、の間に接続して用いる急速充電用の電力供給装置用アダプタ等であって、第1コネクタと、第2コネクタと、第1コネクタと第2コネクタとの間に、所定の給電指示装置と、が備えてあり、給電指示装置は、給電条件情報格納部と、情報出力部と、出力電圧を検知して、当該出力電圧と設定電圧との差から、修正情報を生成する自動電圧調整部と、が設けてある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも設定電圧を含む給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する急速充電用の電力供給装置と、当該電力供給装置からの所定電力を利用する電子機器と、の間に接続して用いる電力供給装置用アダプタであって、
前記電力供給装置に接続される第1コネクタと、前記電子機器に接続される第2コネクタと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間に、前記電力供給装置に対して所定電力の出力を要求するとともに、前記電力供給装置の出力電圧の変動要求値を示す修正情報に基づいて、前記電力供給装置の出力電圧を増減させて、当該出力電圧と設定電圧との差としての検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値にする給電指示装置と、が備えてあり、
当該給電指示装置は、前記電子機器を駆動する電力条件を示す前記給電条件情報を格納する給電条件情報格納部と、前記第1コネクタの所定端子に、前記給電条件情報、及び前記修正情報を送信する情報出力部と、前記出力電圧を検知するとともに、当該出力電圧と設定電圧との差から、前記修正情報を生成する自動電圧調整部と、が設けてある急速充電用の電力供給装置用アダプタ。
【請求項2】
前記自動電圧調整部は、前記修正情報として、変動要求値に基づく数のパルス信号列を生成する構成であることを特徴とする請求項1に記載の急速充電用の電力供給装置用アダプタ。
【請求項3】
前記自動電圧調整部は、分圧回路を介して、前記出力電圧を検知する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の急速充電用の電力供給装置用アダプタ。
【請求項4】
前記自動電圧調整部は、周辺環境として温度、湿度、光度及びCO2の濃度の少なくともいずれか一つを測定するセンサ出力に基づいて、前記修正情報の生成を要求する環境対応部に接続してあることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の急速充電用の電力供給装置用アダプタ。
【請求項5】
前記給電指示装置は、少なくとも所定時間毎に、前記電力供給装置から前記電子機器側に、所定値以上の電流を供給して、前記電力供給装置のスリープを防止するスリープ防止部を設けてあることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の急速充電用の電力供給装置用アダプタ。
【請求項6】
少なくとも設定電圧を含む給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する急速充電用の電力供給装置と、当該電力供給装置からの前記所定電力を利用する電子機器と、の間に接続して用いる急速充電用の電力供給装置用アダプタを用いた電力供給方法であって、
前記電力供給装置に接続される第1コネクタと、前記電子機器に接続される第2コネクタと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間に、前記電力供給装置に対して電力供給を要求するとともに、前記電力供給装置の出力電圧の変動要求値を示す修正情報に基づいて、前記電力供給装置の出力電圧を増減させて、前記電力供給装置の出力電圧と前記設定電圧との差としての検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する給電指示装置と、が備えてあり、
前記給電指示装置は、前記電子機器を駆動する電力条件を示す給電条件情報を格納する給電条件情報格納部と、前記第1コネクタの所定端子に、前記給電条件情報、及び前記修正情報を送信する情報出力部と、前記出力電圧を検知するとともに、当該出力電圧と設定電圧との差から、前記修正情報を生成する自動電圧調整部と、が設けてあり、
かつ、下記工程(1)~(4)を含むことを特徴とする電力供給方法。
(1)前記情報出力部が、前記第1コネクタの所定端子に前記給電条件情報を送信する工程。
(2)前記電力供給装置が、前記給電条件情報を受け取って、当該給電条件情報に基づいて、前記所定電力を出力する工程。
(3)前記自動電圧調整部が、出力された前記所定電力の電圧を検知して、検知した前記出力電圧と、前記設定電圧と、の差を取って前記検知電圧差を求め、当該検知電圧差が閾値を超えた場合に、前記修正情報を生成する工程。
(4)前記給電指示装置が、前記修正情報に基づいて、前記電力供給装置の出力電圧を増減させて、前記検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する工程。
【請求項7】
前記自動電圧調整部は、前記出力電圧を検知した時点をX1とし、当該X1から所定時間毎に、前記出力電圧を検知した時点をX2~X5とした場合に、前記X1~前記X5の時点の前記出力電圧の平均値と、前記設定電圧と、の差を取って前記検知電圧差を求め、当該検知電圧差が閾値を超えた場合に、前記修正情報を生成することを特徴とする請求項6に記載の電力供給方法。
【請求項8】
前記自動電圧調整部は、前記電力供給装置が前記給電条件情報を受けていない状態で出力する電圧を初期電圧とし、検知された当該初期電圧が所定値を超えた場合に、前記情報出力部からの前記給電条件情報、及び前記修正情報の送信を行わない構成であることを特徴とする請求項6又は7に記載の電力供給方法。
【請求項9】
前記自動電圧調整部は、前記電力供給装置が前記給電条件情報を受けていない状態で出力する電圧を初期電圧とし、前記工程(4)の後において、前記修正情報を生成した時点をβとした場合に、前記βから所定時間以内に、前記検知電圧差が所定値を超えた場合に、前記情報出力部からの前記給電条件情報、及び前記修正情報の送信を停止させることを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載の電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速充電用の電力供給装置用アダプタ及びそれを用いた電力供給方法に関する。特に、電子機器に出力する電圧を、設定電圧に、自動的に調整することができる、急速充電用の電力供給装置用アダプタ及びそれを用いた電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PCの周辺機器等の電力供給のために、所定の定格電圧で出力する電力供給装置が存在していたが、近年の電子機器の急激な高度化に伴って、所定の定格電圧では、動作が不安定だったり、動作しなかったりする場合があった。
その中で、外部からの給電条件情報に基づいて所定電力を出力して、電子機器の給電条件に合った比較的高い電圧での電力供給ができる急速充電機能が注目され始めている。
これは、急速充電機能を用いることにより、電子機器の充電時間の短縮はもとより、比較的高い電力が必要な電子機器への利用や、発熱等の損失の軽減等、高い利便性を得ることができるためである。
又、急速充電機能の規格としては、主に、USB PD(Universal Serial Bus Power Delivery)規格、又は、米国のクアルコム(Qualcomm)社が開発したQC(Quick Charge)規格等が知られている。
このような急速充電機能は、通常、電力供給装置及び電子機器それぞれが、給電条件情報を授受する手段を有し、両者で給電条件情報をやり取りすることによって、電力供給装置は、電子機器に対し、所定の電力を供給することができる。
【0003】
一方、電子機器の中には、給電条件情報を授受する手段を有していないものも多く、このような電子機器では、急速充電機能を用いて電力供給を行って、高い利便性を得ることができない。そこで、これを解決するための技術が、従来から各種提案されている。
【0004】
その一例として、電力供給装置と電子機器との間に接続して用いられるアクセス装置が、開示されている(特許文献1参照)。
より具体的には、
図9に示すように、アクセス装置130は、第1のインタフェース131と、第2のインタフェース133と、処理回路135と、電圧検知モジュール137と、提示モジュール139と、温度検知モジュール141と、ウエイクアップモジュールと、を備えている。
そして、第1の設定電圧と第2の設定電圧を出力可能な電力供給装置150を、接続し、第2のインタフェース133に、電子機器として、第1の電熱装置161と第2の電熱装置163を接続した例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-191606(特許請求の範囲、図面等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたアクセス装置は、出力する電圧を予め2種類設定し、選択して供給できるものの、QC2.0の規格上、設定できる値は、5V、9V、12V、20Vの4種類であり、事実上、出力電圧を、これ以外の電圧に設定することはできなかった。
すなわち、QC2.0の規格の設定電圧は、電力供給装置のD+、D-端子に、3.3V、0.6V、0Vのいずれかの電位を印加して、その組み合わせによって決まる電圧以外の電圧に設定することはできなかった。
そのため、例えば、設定電圧として12Vを選択したにも関わらず、電子機器の発熱による内部抵抗の増加やアクセス装置自体の電力消費等によって、出力電圧が11.6Vに下がってしまった場合に、出力電圧を調整することができないという問題があった。
又、電力供給装置の異常等で、過度に高い電圧が出力された場合に、出力電圧を設定電圧まで、自動的に下げることができず、電子機器の故障を招くという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、給電指示装置に、所定の自動電圧調整部を設けることで、急速充電用の電力供給装置における出力電圧と、設定電圧のずれを自動的に防げることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明によれば、電子機器に出力する電圧を自動的に調整することができる、急速充電用の電力供給装置用アダプタ及びそれを用いた電力供給方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも設定電圧を含む給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する急速充電用の電力供給装置と、電力供給装置からの所定電力を利用する電子機器と、の間に接続して用いる急速充電用の電力供給装置用アダプタであって、下記(i)~(ii)の構成を有していることを特徴としており、このような電力供給装置用アダプタが提供され、上述した問題を解決することができる。
(i)急速充電用の電力供給装置(以下、単に、電力供給装置と称する場合がある。)に接続される第1コネクタと、電子機器に接続される第2コネクタと、第1コネクタと第2コネクタとの間に、急速充電用の電力供給装置に対して所定電力の出力を要求するとともに、電力供給装置の出力電圧の変動要求値を示す修正情報に基づいて、当該出力電圧を増減させて、電力供給装置の出力電圧と設定電圧との差としての検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する給電指示装置を備えた構成。
(ii)給電指示装置は、電子機器を駆動する電力条件を示す給電条件情報を格納する給電条件情報格納部と、第1コネクタの所定端子に、給電条件情報、及び修正情報を送信する情報出力部と、出力電圧を検知するとともに、当該出力電圧と設定電圧との差から、修正情報を生成する自動電圧調整部とを備えた構成。
すなわち、所定の自動電圧調整部によって、電子機器の出力電圧と、出力電圧と、に差異が生じた場合であっても、それを自動的に調整して、電力供給装置における出力電圧と、設定電圧と、のずれを効果的に防ぎ、所定電圧で出力することができる。
又、電力供給装置の異常等で、過度に高い電圧が出力されるような場合もあるが、出力電圧を、設定電圧まで下げて、電子機器の故障を防ぐことができる。
【0009】
本発明の電力供給装置用アダプタを構成するにあたり、自動電圧調整部は、修正信号として、変動要求値に基づく数のパルス信号列を生成する構成であることが好ましい。
すなわち、出力電圧が設定電圧より大きい場合には、出力中の電圧と所定電圧との差である変動要求値だけ減少させる数の所定のパルス信号列を生成し、出力電圧が設定電圧より小さい場合には、変動要求値だけ増加させる数の所定のパルス信号列を生成する。
このように構成することにより、急速充電用の電力供給装置の出力電圧を、パルス信号の数に基づく分解能で調整することができ、電力供給装置における出力電圧と、設定電圧と、のずれをより効果的に防ぎ、所定電圧で出力することができる。
【0010】
本発明の電力供給装置用アダプタを構成するにあたり、自動電圧調整部は、分圧回路を介して、出力電圧を検知する構成であることが好ましい。
このように構成することにより、検知のために電圧計IC等の追加の構成を配置する必要がなくなるため、アダプタ全体を小型化することが容易になる。
【0011】
本発明の電力供給装置用アダプタを構成するにあたり、自動電圧調整部は、周辺環境として温度、湿度、光度及びCO2の濃度の少なくともいずれか一つを測定するセンサ出力に基づいて、修正情報の生成を要求する環境対応部に接続してあることが好ましい。
このように構成することにより、周囲の温度や明るさ等に基づいて、出力電力を調整することができ、自動電圧調整部の電力消費を抑えて、電力供給装置の電力供給時間を効果的に長くすることができる。
【0012】
本発明の電力供給装置用アダプタを構成するにあたり、給電指示装置は、少なくとも所定時間毎に、急速充電用の電力供給装置から電子機器側に、所定値以上の電流を供給するスリープ防止部を設けてあることが好ましい。
このようにスリープ防止部を設けて、電子機器以外に電流を流すことにより、電力供給装置に接続される電子機器の電力消費が停止している場合であっても、電力供給装置が有するスリープ機能が、給電が停止することを効果的に防ぐことができる。
【0013】
本発明の別の態様は、少なくとも設定電圧を含む給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する急速充電用の電力供給装置と、当該電力供給装置からの所定電力を利用する電子機器と、の間に接続して用いるとともに、下記構成(i)~(ii)を有する急速充電用の電力供給装置用アダプタを用いた電力供給方法である。
(i)電力供給装置に接続される第1コネクタと、電子機器に接続される第2コネクタと、第1コネクタと第2コネクタとの間に、電力供給装置に対して電力供給を要求するとともに、電力供給装置の出力電圧の変動要求値を示す修正情報に基づいて、当該出力電圧を増減させて、電力供給装置の出力電圧と設定電圧との差としての検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する給電指示装置と、が備えてあり、
(ii)給電指示装置は、電子機器を駆動する電力条件を示す給電条件情報を格納する給電条件情報格納部と、第1コネクタの所定端子に、給電条件情報、及び修正情報を送信する情報出力部と、出力電圧を検知するとともに、当該出力電圧と設定電圧との差から、修正情報を生成する自動電圧調整部と、が設けてある。
そして、下記工程(1)~(4)を含むことを特徴とする電力供給方法である。
(1)情報出力部が、第1コネクタの所定端子に給電条件情報を送信する工程。
(2)電力供給装置が、給電条件情報を受け取って、当該給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する工程。
(3)自動電圧調整部が、出力された所定電力の電圧を検知して、検知した出力電圧と、設定電圧と、の差を取って検知電圧差を求め、当該検知電圧差が閾値を超えた場合に、修正情報を生成する工程。
(4)給電指示装置が、修正情報に基づいて、電力供給装置の出力電圧を増減させて、検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する工程。
このように実施することにより、所定の自動電圧調整部によって、急速充電用の電力供給装置を用いて、電子機器に出力する出力電圧を自動的に調整して、出力電圧と、設定電圧とのずれを効果的に防ぐことができる。
又、電力供給装置の異常等で、過度に高い電圧が出力されるような場合もあるが、出力電圧を、設定電圧まで下げて、電子機器の故障を防ぐことができる。
【0014】
本発明を実施するにあたり、自動電圧調整部は、出力電圧を検知した時点をX1とし、当該X1から所定時間毎に、出力電圧を検知した時点をX2~X5とした場合に、X1~X5の時点の出力電圧の平均値と、設定電圧と、の差を取って検知電圧差を求め、当該検知電圧差が閾値を超えた場合に、修正情報を生成することが好ましい。
このように実施することにより、出力電圧のノイズによって、自動電圧調整部が誤った修正情報を生成してしまうことを防ぎ、自動電圧調整部の電力消費を抑えて、電力供給装置の電力供給時間を効果的に長くすることができる。
【0015】
本発明を実施するにあたり、自動電圧調整部は、電力供給装置が給電条件情報を受けていない状態で出力する電圧を初期電圧とし、検知された当該初期電圧が所定値を超えた場合に、情報出力部からの給電条件情報、及び修正情報の送信を行わない構成であることが好ましい。
このように実施することにより、急速充電用の高い電圧になる前に、セルフチェック(初期セルフチェックと称する場合がある。)として、電力供給装置に異常が発生していないか診断を行うことができる。
又、このような初期セルフチェックにより、電力供給装置に異常が発生していた場合であっても、初期電圧の出力を維持して、アダプタに組み込まれた警告ランプ等を点灯させることができる。
【0016】
本発明を実施するにあたり、自動電圧調整部は、電力供給装置が給電条件情報を受けていない状態で出力する電圧を初期電圧とし、工程(4)の実施後において、修正情報を生成した時点をβとした場合に、βから所定時間以内に、検知電圧差が所定値を超えた場合に、情報出力部からの給電条件情報、及び修正情報の送信を停止させることが好ましい。
このように実施することにより、電力供給装置の給電中に、セルフチェック(途中時セルフチェックと称する場合がある。)として、電力供給装置に異常が発生していないかの診断を行うことができる。
又、このような途中時セルフチェックにより、電力供給装置に異常が発生していた場合であっても、初期電圧の出力を維持して、アダプタに組み込まれた警告ランプ等を点灯させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の急速充電用の電力供給装置用アダプタを説明するために供するブロック図である。
【
図2】
図2(a)~(b)は、スリープ防止部を説明するために供する図である。
【
図3】
図3(a)は、環境対応部の使用構成を説明するために供するブロック図であり、
図3(b)は、環境対応部の使用例として空調服に冷風扇を設けた場合の環境対応部の様子を説明するために供するブロック図である。
【
図4】
図4は、自動電圧調整部の動作例を説明するために供するフローチャートである。
【
図5】
図5(a)~(c)は、アダプタの配線切断構造を説明するために供するブロック図である。
【
図6】
図6は、QC3.0規格におけるパルスの送信例を説明するために供する図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の急速充電用の電力供給装置用アダプタの外形を説明するために供する図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、第1の実施形態の急速充電用の電力供給装置用アダプタの変形例を説明するために供する図である。
【
図9】
図9は、従来の電力供給装置用アダプタを説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の急速充電用の電力供給装置用アダプタは、
図1に例示するように、少なくとも設定電圧を含む給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する急速充電用の電力供給装置12と、当該電力供給装置12からの所定電力を利用する電子機器14と、の間に接続して用いる急速充電用の電力供給装置用アダプタ(以降、単にアダプタと称する場合がある。)10であって、下記(i)~(ii)の構成を有していることを特徴としている。
(i)電力供給装置12に接続される第1コネクタ11と、電子機器14に接続される第2コネクタ13と、第1コネクタ11と第2コネクタ13との間に、急速充電用の電力供給装置12に対して所定電力の出力を要求するとともに、電力供給装置12の出力電圧の変動要求値を示す修正情報に基づいて、電力供給装置12の出力電圧を増減させて、当該出力電圧と設定電圧との差としての検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する給電指示装置を備えた構成。
(ii)給電指示装置は、電子機器を駆動する電力条件を示す給電条件情報を格納する給電条件情報格納部と、第1コネクタの所定端子に、給電条件情報、及び修正情報を送信する情報出力部と、出力電圧を検知するとともに、当該出力電圧と設定電圧との差から、修正情報を生成する自動電圧調整部とを備えた構成。
以下、適宜図面を参照しつつ、第1の実施形態の電力供給装置用アダプタを構成する、電力供給装置12、電子機器14、第1コネクタ11、第2コネクタ13、給電条件情報格納部15、情報出力部17、自動電圧調整部21、給電指示装置50等について、具体的に説明する。
【0019】
1.電力供給装置
電力供給装置は、アダプタの第1コネクタに接続して、電子機器に対して、後述の給電条件情報に基づいて、急速充電規格の直流の所定電力を出力するとともに、後述の変動要求値を示す修正情報に基づいて、出力線に出力している電圧を増減させて、急速充電規格の直流の所定電力を再出力する装置である。
具体的には、電力供給装置は、所定のパルス信号を1つ受信する毎に、出力中の電圧に対して、所定電圧だけ増加又は減少させる構成であることが好ましい。
より具体的には、出力電圧が設定電圧より大きい場合には、変動要求値を、1パルス当たり減少する所定電圧で割った値の整数に1を足した個数のパルス信号列を生成する。一方、出力電圧が設定電圧より小さい場合には、変動要求値を、1パルス当たり増加する所定電圧で割った値の整数の個数のパルス信号列を生成することが好ましい。
このような電力供給装置は、電力制御の回路にマイコン等を含むことで構成することができる。
この理由は、急速充電用の電力供給装置の出力電圧を、パルス信号の数に基づく分解能で調整することができ、電力供給装置における出力電圧と、設定電圧と、のずれをより効果的に防ぎ、所定電圧で出力することができるためである。
例えば、QC規格は、所定のパルス信号を、D+端子を介して1つ受信する毎に、200mVの電圧だけ増加させ、D-端子を介して1つ受信する毎に、200mVの電圧だけ減少させる構成の規格である。又、USB PD PPS規格は、所定のパルス信号を、CC端子を介して1つ受信する毎に、20mVの電圧だけ増加させ、別の所定のパルス信号を、CC端子を介して1つ受信する毎に、20mVの電圧だけ減少させる規格である。
【0020】
そのため、電力供給装置は、少なくともUSB PD規格又はQC規格のいずれか一方に適合した3.6~20Vの急速充電機能を有した装置であることがより好ましい。
具体的には、交流の100Vコンセントに接続して使用するACアダプタ、リチウム電池や窒化ガリウム電池等を用いたポータブルバッテリ、自動車用バッテリ、燃料電池、太陽光や風力等の発電装置等であることが好ましい。
この理由は、このような電力供給装置であれば、給電指示装置からの給電条件情報を好適に受け取って、当該給電条件情報に基づいて、所定電力を出力することができ、電子機器の動作不良をより効果的に防止することができるためである。
ここで、急速充電規格とは、特にUSBコネクタから、スマートフォンやタブレット端末等の電子機器を充電する際に、従来使用されてきた5V、0.5Aよりも高い電圧、又は高い電流を流すことで、迅速に充電を行うために策定された規格である。この急速充電規格としては、主に、USB PD1.0~3.0、QC1.0~5.0等が知られているが、携帯電話会社や電子装置メーカーが独自で提供していて、給電条件情報に基づいて動作する機能も含まれる。
【0021】
2.電子機器
電子機器は、アダプタの第2コネクタに接続して、電力供給装置から出力された急速充電規格の直流の所定電力を受けて駆動する機器である。
具体的には、ファン(サーキュレータ含む)、換気扇、ヒーター、クーラー、掃除機、冷蔵庫、温蔵庫、ノートPC、ライト、ディスプレイ、ラジオ、テレビ、超音波発信機、金属探知機、魚群探知機、携帯ゲーム機、通信用モデム等であることが好ましい。
この理由は、このような電子機器であれば、一般的に、急速充電規格内の消費電力を有していることから、電力供給装置からの急速充電規格の電力供給を受けることができ、過度に低電圧となって、動作しないことを防ぐことができるためである。
又、電子機器の駆動電力としては、2.5~100Wの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、このような消費電力であれば、USB PD規格やQC規格の範囲内で駆動することができ、追加の昇圧回路などが必要なくなるため、アダプタ全体を小型化することが容易になるためである。
従って、駆動する電子機器の消費電力が10~90Wの範囲内の値であることがより好ましく、15~80Wの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0022】
3.第1コネクタ
第1コネクタは、後述の給電条件情報を受信する端子と、電力供給装置の給電用の端子と、を含む電力供給装置の開口部に接続するためのコネクタである。
具体的には、USB-A(USB TYPE-Aと称する場合がある。)、USB-B(USB TYPE-B、mini USB TYPE-B、micrо USB TYPE-Bと称する場合がある。)、USB-C(USB TYPE-C)等のUSB規格のコネクタ、ライトニング(Lightning)コネクタ等、を用いることが好ましい。
又、第1コネクタは、少なくとも出力線としてのVBUS端子と、USB PD規格に基づくCC線、又はQC規格に基づくD+、D-線と、のいずれか一方が配置されていることが好ましい。
この理由は、このようなコネクタであれば、少なくとも急速充電規格の電力供給に必要な端子を有しており、追加の端子を配置する必要がなくなるため、アダプタ全体を小型化することが容易になるためである。
【0023】
4.第2コネクタ
第2コネクタは、電力供給装置から出力された電力を送る出力線を電子機器に接続するためのコネクタである。
具体的には、DC丸形プラグ、DC丸形ジャック、DC角型プラグ、DC角型ジャック、シガープラグ、シガージャック、オーディオステレオプラグ、オーディオステレオジャック、基板対電線接続プラグ、基板対電線接続ジャック等、の少なくとも一つを用いることが好ましい。
この理由は、このようなコネクタであれば、少なくとも直流の電力供給に必要な端子を有しており、追加の端子を配置する必要がなくなり、アダプタ全体を小型化することが容易になるためである。
【0024】
5.給電指示装置
給電指示装置50は、
図1に例示されるように、第1コネクタ11の所定端子に対して、後述の給電条件情報を送信することによって、電力供給装置12に急速充電規格の所定電力での出力を要求する装置である。
すなわち、給電指示装置50は、第1コネクタ11の所定端子に対して、給電条件情報に加えて、修正情報を送信することによって、電力供給装置12の出力電力のうちの出力電圧を調整する装置である。
具体的には、複数のPICやエミュレータICを組み合わせた複合回路基板であることが好ましい。
この理由は、このような自動電圧調整部21を設けることで、給電条件情報を送信するための配線と、電力供給装置の出力電圧を検知するための配線を省スペースで配置でき、アダプタ全体を小型化することが容易になるためである。
【0025】
ここで、給電条件情報は、電子機器を駆動するための電力情報として、急速充電用の電力供給装置に対して、設定電圧、設定電流等の所定情報を指示するために送信される電気信号である。
従って、給電条件情報としては、少なくとも1種の設定電圧を含んでいることが好ましい。
例えば、設定電圧として、少なくともUSB PD規格、及びQC規格の1つである5V、9V、12V、15V、20Vの情報を含んでいることが好ましい。又、設定電流として、1A、3A、3.25A、5Aの情報を含んでいることが好ましい。
又、給電条件情報は、後述の給電条件情報格納部に記録されており、後述の情報出力部によって、電圧条件の1種、又は、電圧条件の1種と電流条件の1種が読み込まれて、給電指示装置に送信されることが好ましい。
この理由は、電力供給装置や電子機器に合わせた給電条件情報を選択することで、給電条件情報が異なる電子機器を使用する場合であっても、給電条件情報を書き換える必要がなくなり、電力供給装置の出力電圧と、設定電圧と、のずれをより効果的に防ぐことができるためである。
【0026】
又、修正情報は、検知電圧差を予め定めた閾値以内の値にするように、急速充電用の電力供給装置に対して送信される、出力電圧から増減させる電圧である変動要求値を示す電気信号である。
すなわち、修正情報としては、少なくともUSB PD PPS規格、及びQC3.0規格のいずれか一方のパルス信号列であり、通常、20~1000mVの範囲で設定することが好ましい。
この理由は、急速充電規格であるUSB PD PPS規格、又はQC3.0規格のいずれか一方の規格に沿った修正情報とすることができるためである。
具体的には、出力電圧Vxを11.5Vとし、設定電圧を12Vとし、修正情報の単位を200mVとした場合に、検知電圧差が0.5Vとなるため、修正情報は、+0.4Vに設定することが好ましい。
【0027】
給電指示装置は、下記情報を円滑かつ迅速に処理したりするために、下記構成1)~8)のうち、いくつかの構成、あるいは全部の構成を有することが好ましい。
以下、1)自動電圧調整部、2)情報出力部、3)給電条件情報格納部、4)スリープ防止部、5)環境対応部、6)昇圧処理部、7)動作選択部、8)電源部、9)スリープ復帰部、の構成について具体的に説明する。
【0028】
(1)自動電圧調整部
自動電圧調整部は、電力供給装置の出力電圧を検知するとともに、所定の修正情報を設定する構成である。
具体的には、自動電圧調整部21は、
図1に例示されるように、給電指示装置50の内部に存在しており、抵抗R5及び抵抗R6の直列の分圧回路に接続してあることが好ましい。そして、抵抗R5の他端は出力線19に接続してあり、抵抗R6の他端はアースに接続してあることが好ましい。
すなわち、電力供給装置の出力電圧としては、分割回路を抵抗R5及び抵抗R6の中点の電圧値、すなわち出力電圧Vxとして検知する。そして、自動電圧調整部21は、設定電圧の分圧比相当の値である設定電圧Vnを把握している。更に、VxとVnとの差分を検知電圧差として、検知電圧差が予め設定された閾値V
0以上となった場合に、出力電圧を異常として判断して、修正情報を生成することが好ましい。
この理由は、所定の自動電圧調整部によって、電子機器の出力電圧と、出力電圧と、に差異が生じた場合であっても、出力電圧を自動的に調整して、当該出力電圧と、設定電圧と、のずれを効果的に防ぎ、所定電圧で出力することができるためである。
【0029】
ここで、一例を挙げれば、自動電圧調整部に入力される分圧比を1/5とし、実際に検知した出力電圧を2.32Vとし、設定電圧Vnを12Vとし、閾値V
0を0.1Vとして計算する。すると、分圧前の出力電圧Vxは11.6Vとなるため、検知電圧差|Vx-Vn|は0.4Vとなって、閾値V
0よりも大きいため、出力電圧を異常として判断する。
そして、自動電圧調整部は、出力電圧Vxと設定電圧Vnの大小関係から、修正情報を+0.4Vとして生成する。
この時、例えば、電力供給装置の急速充電規格がQC3.0である場合に、給電指示装置は、
図6に示されるように、D+端子に対して、パルス信号列として、0.6Vのパルス信号を2つ送信するとともに、D-端子に対しては、0.6Vを印加し続ける。これによって、出力電圧の調整が可能になる。
【0030】
又、閾値V0としては、電子機器の許容電圧や電力供給装置の出力電圧によって変わってくるが、例えば、0.02~1Vの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような閾値ならば、多くの電子機器の許容電圧の範囲内で出力電圧を変更でき、電力供給装置の出力電圧と、設定電圧と、のずれをより効果的に防ぐことができるためである。
従って、閾値V0は、0.1~0.8Vの範囲内の値とすることがより好ましく、0.2~0.6Vの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0031】
(2)情報出力部
情報出力部17は、
図1に例示するように、給電指示装置50に設定された給電条件情報や修正情報を、第1コネクタ11の所定端子に送信できる構成である。
具体的には、マイコンやエミュレータIC等によって構成されていることが好ましい。
又、給電指示装置50に設定された給電条件情報や修正情報を、第1コネクタ11の複数の端子から、所定端子を選択して送信できる構成であることが好ましい。
この理由は、このように構成することで、第1コネクタ11をUSB-Cのコネクタとし、D+端子及びD-端子と、CC端子と、のいずれにも接続した場合に、使用する電力供給装置の規格に合わせて、給電条件情報や修正情報を送信できるためである。
従って、最初は、USB PD規格でCC端子に給電条件情報を送信し、電力供給装置からの応答が所定時間なかった場合に、QC規格でD+端子及びD-端子に給電条件情報、及び修正情報を送信することが好ましい。
この理由は、使用者が給電条件情報、及び修正情報の行先の変更をすることなく、自動的に切替を行うことができ、より汎用性を高めることができるためである。
【0032】
又、情報出力部は、第1コネクタの所定端子に給電条件情報や修正情報を送信できる構成であれば制限されるものではないが、例えば、出力する第1コネクタの端子、給電条件情報、修正情報、の組み合わせ毎に、情報出力用ポートを有していることが好ましい。
すなわち、第1コネクタ11において、給電条件情報や修正情報を送信する端子が、CC端子、D+端子、D-端子の3つ存在し、給電条件情報、及び修正情報が2種存在している場合に、6つの情報出力用ポートを有していることが好ましい。
この理由は、情報出力部と第1コネクタとの間の回路構成が容易になるためである。
【0033】
又、情報出力部17は、
図1に示したように、給電条件情報や修正情報では情報出力用ポートを分けずに、第1コネクタ11の端子のみで、情報出力用ポートを分けていることも好ましい。
すなわち、第1コネクタ11において、給電条件情報や修正情報を送信する端子が、CC端子、D+端子、D-端子の3つ存在している場合に、給電条件情報や修正情報の種類の数によらず、3つの情報出力用ポートを有していることが好ましい。この場合、1つの情報出力用ポートから出力される給電条件情報、及び修正情報の種類を変更できる構成であることが好ましい。
この理由は、出力に必要な情報出力部17の情報出力用ポートの数が減ることで、情報出力部17を小型化させることができるため、アダプタ10全体の小型化が容易になるためである。
具体的には、給電指示装置50と、第1コネクタ11のD+、D-端子と、を接続する回路が、抵抗R1、R2、R3、R4、を含む分圧回路で構成してあることが好ましい。これらの接続関係は以下のようにしてある。
より具体的には、抵抗R1及び抵抗R2を直列接続して分圧回路を構成してあり、分圧回路の中点を、第1コネクタ11のD-端子及び情報出力部17の情報出力用ポートP2(給電指示装置50の情報出力用ポートの1つ)に接続してある。そして、抵抗R1の他端をVddに接続し、抵抗R2の他端をアースに接続してある。
又、抵抗R3及び抵抗R4を直列接続して分圧回路を構成してある。分圧回路の中点を、第1コネクタ11のD+端子に接続してあり、抵抗R3の他端をVddに接続してあり、抵抗R4の他端を情報出力部17の情報出力用ポートP1(給電指示装置50の情報出力用ポートの1つ)に接続してある。抵抗R1の他端をVddに接続し、抵抗R2の他端をアースに接続してある。
【0034】
又、具体的には、情報出力部17の情報出力用ポートP3(給電指示装置50の情報出力用ポートの1つ)を、第1コネクタ11のUSB-C規格のCC端子に、接続してあることが好ましい。
このような回路では、例えば、抵抗R1、R3を10KΩの抵抗で、抵抗R2,R4を2.2KΩの抵抗でそれぞれ構成し、Vddとして3.3Vを供給し、情報出力部17の情報出力用ポートの電位をL(=0V)又はH(=3.3V)にすると、D+端子、D-端子に、0.6V又は3.3Vの情報を印加できる。従って、例えばQC規格の給電プロトコルに対応する給電条件情報を出力できる。
一方、情報出力部17は、CC端子に情報出力用ポートP3を介して、USB PD PPS規格のパルス信号列等を出力できる。なお、USB PD PPS規格のパルス信号は、給電指示装置50に予め格納したプログラムによって生成できる。
【0035】
(3)給電条件情報格納部
給電条件情報格納部15は、
図1に例示するように、電力供給装置12が出力する電力として、少なくとも設定電圧を含む給電条件情報を記録してある構成である。
具体的には、マイコンやメモリICで構成されていることが好ましい。
この理由は、後工程で、給電条件情報をプログラムにより変更したり、複数の給電条件情報を記憶したりできるため、電力供給装置の出力電圧と、設定電圧と、のずれをより効果的に防ぐことができるためである。
例えば、給電条件情報格納部は、所定の給電規格として、少なくともUSB PD規格又はQC規格で規定されている給電条件で電力供給装置を駆動するための給電条件情報を、格納している。すなわち、少なくとも設定電圧を含み、設定電圧と設定電流の組みあわせ、送信間隔等の電気信号を生成するための情報を格納している。
より具体的には、この場合の給電条件情報格納部15は、USB2.0、USB3.x、USB PD、PD PPS,QC1.0、QC2.0、QC3.0等の規格で規定された種々の給電条件情報を、格納している。更に、携帯電話メーカー独自の給電条件情報を格納しても良い。
【0036】
(4)スリープ防止部
スリープ防止部29は、
図1に例示するように、給電指示装置は、少なくとも所定時間毎に、急速充電用の電力供給装置から電子機器側に、所定値以上の電流を供給して、スリープを防止する構成である。
具体的には、電力供給装置の接続口が一つである場合には、給電指示装置が、スリープ防止部を有していることが好ましい。又、電力供給装置の接続口が二つ以上である場合には、給電指示装置にスリープ防止部を設けずに、
この理由は、電力供給装置に接続される電子機器の電力消費が停止している場合に、電力供給装置が有するスリープ機能が、意図せずに働いて給電が停止してしまうことをより効果的に防ぐことができるためである。
ここで、スリープ防止部の電流を供給する時間間隔としては、電力供給装置に合わせて構成すればよいが、1~30秒の範囲内の値であることが好ましい。
よって、スリープ防止部の電流を供給する時間間隔としては、2~20秒の範囲内であることがより好ましく、3~10秒の範囲内であることが更に好ましい。
又、スリープ防止部の電流としては、20~400mAの範囲内の値であることが好ましい。
よって、スリープ防止部の電流としては、30~300mAの範囲内の値であることがより好ましく、40~200mAの範囲内の値であることが更に好ましい。
この理由は、このような時間とすることで、スリープ機能が働いてしまうことを有効に防止しつつ、スリープ防止のために消費する電流値を低く抑えることができるためである。
【0037】
図2(a)に示したスリープ防止部29のハードウエア部は、給電指示装置内のプログラムと、定電流素子部したスイッチ部とで構成してある。この回路では、スイッチ部に所定周期でパルスを入力して、スリープモードを防止できる程度の大きさの定電流通電を周期的に実現できるので、電力供給装置の給電を維持できる。
又、参考として、電圧の出力を、高圧側と低圧側の2線に対して行う電力供給装置の場合、スリープ防止部のハードウエア部分を
図2(b)に示すような構成とすることが好ましい。
すなわち、2線で構成される出力線の間にダイオードブリッジから成る整流部29bを接続する。整流部29bのカソード側に、定電流素子部とスイッチ部とで構成した間欠動作する定電流回路を接続する構成である。この
図2(b)に示すような回路の場合、2線で構成される出力線に供給される電圧の極性が反転した場合であっても、スリープ防止を実現できる。
【0038】
(5)環境対応部
環境対応部25は、
図3(a)に示すように、電子機器41が使用される環境状態を検出するセンサ群25aを接続するセンサ用ポート25b、25cと、センサ群25aが検出する環境状態を、所定の閾値と比較する構成である。又、この比較結果基づいた、修正情報の生成を要求する構成である。
すなわち、第2コネクタ13に接続されている電子機器41が使用される環境状態を検出するセンサ群25aと協働して、電子機器41への給電条件を、なるべく好ましい給電条件に変更する構成である。
具体的には、センサ群25aは、目的に応じた構成とすることができ、周辺環境として温度、湿度、光度及びCO
2の濃度等の環境状態を測定するセンサを、少なくとも1つ有していることが好ましい。
この理由は、周辺環境の状態から、電子機器の過度な駆動を、自動的に抑えることができ、自動電圧調整部の電力消費を抑えて、電力供給装置の電力供給時間を効果的に長くすることができるためである。
【0039】
ここで、
図3(b)は環境対応部25の使用例を説明する図である。空調服45に装着されている電子機器41としての冷風扇に電力供給する場合、空調服45に温度センサM1及び又は湿度センサM2を設け、これらセンサを本発明のアダプタ10の環境対応部25に接続すれば、温度や湿度等のセンサ出力に基づいて空調服45の冷風扇の回転数を変更できる。そして、例えば、空調服45内がある温度以上、及び又はあす湿度以上になった場合は、冷風扇の回転数が上がるように、電力供給装置43の給電条件を変更する等が自動的に行える。
【0040】
(6)昇圧処理部
昇圧処理部27は、
図1に示すように、電力供給装置12から出力される電圧を所望の電圧に昇圧する構成である。
又、昇圧処理が必要な場合、スイッチ部27bは接点19bを選択し、昇圧回路27aに切り替える。一方、昇圧処理が不要な場合、スイッチ部27bは接点19aを選択する構成である。
具体的には、昇圧処理部27は、給電指示装置50内のプログラムと、給電指示装置外部に設けたDC-DCコンバータから成る昇圧回路27aと、出力線19の途中に設けた、昇圧回路27aを接続又は非接続に切り替えるスイッチ部27bと、で構成してあることが好ましい。
この理由は、昇圧処理部27は、急速充電用の電力供給装置の最大電圧20Vを超える電圧を出力することができるためである。
【0041】
(7)動作選択部
動作選択部31は、
図1に示すように、給電条件情報格納部15に格納された給電条件情報のいずれを用いるかを選択すること、及び又は、環境対応部25、昇圧処理部27、スリープ防止部29等を有する場合に、いずれを駆動するかを選択する構成である。具体的には、給電条件情報格納部15に格納された給電条件情報のうちの例えば、QC2.0かつ電圧9vの給電条件情報を選択し、環境対応部25及び昇圧処理部27は駆動せず、スリープ防止部29は駆動するというような選択を行える構成である。このような選択結果を形成し、給電指示装置50の制御部50aに認識させるようにする。
動作選択部31は、任意好適な構成とできる。例えば、アダプタ10の使用者が自身の指や工具で調整可能な、例えばnビットのディップスイッチ等の構成が好ましい。
【0042】
(8)電源部
電源部23は、
図2に示すように、レギュレータ回路で構成したもので、給電指示装置50内の各構成であるPICやエミュレータIC等を駆動させるための電源である。
この電源部23は、出力線(VBUS)19に供給される電圧を入力されて、アダプタ10の駆動電圧Vddを生成する構成である。従って、電源部23は、アダプタ10の動作を開始させるトリガ源の機能を有している。
具体的には、レギュレータICであることが好ましい。
この理由は、レギュレータICであれば、電源部を基板に組み込んで構成することができ、アダプタ全体を小型化することが容易になるためである。
【0043】
又、電源部23の出力電圧としては、3~5Vの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、このような出力電圧であれば、USB規格の出力電圧である5Vの入力を受けることで、別系統での電力供給を用いることなく駆動させることができ、アダプタ全体を小型化することが容易になるためである。
従って、電源部23の出力電圧は、3.1~4.8Vの範囲内の値であることがより好ましく、3.2~4.6Vの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0044】
(9)スリープ復帰部
スリープ復帰部は、特に図示しないものの、電力供給装置がスリープ状態に入ってしまった場合に、第1コネクタを挿しなおすことなく、スリープ状態から復帰させる構成である。
具体的には、第1コネクタのグランド端子、及び電源部のグランド端子を接続状態、又は、非接続状態とで、切り替えるスイッチによって構成されていることが好ましい。
すなわち、スリープ復帰部は、通常時、第1コネクタのグランド端子、及び電源部のグランド端子を接続状態としておき、スリープの復帰時に、一時的に非接続状態としてグランド電位から浮いた状態とし、再度接続状態にする構成であることが好ましい。
この理由は、このような構成にすることで、必要に応じて、見かけ上の差し替えを行ってスリープ状態を復帰させることができ、自動電圧調整部の電力消費を抑えて、電力供給装置の電力供給時間を効果的に長くすることができるためである。
【0045】
6.アダプタの外形
第1の実施形態の急速充電用の電力供給装置用アダプタの外形は、ケーブル状であることが好ましいが、
図7(a)~(b)に示すように、直方体のアダプタ10又はL字のアダプタ10´に、第1コネクタ11と、第2コネクタ13と、を直接取り付けた構成であってもよい。
この理由は、第1コネクタ11と、第2コネクタ13を近接させることで、アダプタ10全体を小型化することが容易になるためである。
すなわち、第1の実施形態の急速充電用の電力供給装置用アダプタの一例は、第1コネクタ11がTYPE-Aの雄型のUSBコネクタ11xであり、第2コネクタ13がDC丸型ジャック13xである構成となっている。
この時、長さL1は、8~100mmの範囲内であり、幅W1は、8~100mmの範囲内であり、高さH1は、5~50mmの範囲内の値であることが好ましい。
又、長さL2は、8~100mmの範囲内であり、幅W2は、8~200mmの範囲内であり、高さH2は、5~50mmの範囲内の値であることが好ましい。
そして、長さL3は、8~100mmの範囲内であり、幅W3は、8~100mmの範囲内であることが好ましい。
この理由は、USB規格、及びDCコネクタの規格、それぞれの規格のコネクタを無理なく、かつ過度に大きな隙間を作ることなく配置でき、アダプタ全体を小型化することが容易になるためである。
【0046】
7.変形例1
第1の実施形態の急速充電用の電力供給装置用アダプタの変形例は、
図8(a)に示されるように、第1コネクタがTYPE-Cの雄型のUSBコネクタ11aであり、第2コネクタが、DCプラグ13aである構成のアダプタ10aである。
又、別の変形例は、
図8(b)に示されるように、第1コネクタが延長ケーブルを有するTYPE-Cの雄型のUSBコネクタ11bであり、第2コネクタがDC丸型ジャック13xである構成のアダプタ10bである。
そして、更に別の変形例は、
図8(c)に示されるように、第1コネクタが延長ケーブルを有するTYPE-Cの雄型のUSBコネクタ11bであり、第2コネクタが延長ケーブルを有するDC丸型プラグ13bである構成のアダプタ10cである。
【0047】
8.変形例2
図5(a)に示したように、変形例2のアダプタ10xは、第1の実施形態のアダプタ10の構成に加えて、配線切断構造60を有していることが好ましい。
すなわち、配線切断構造60は、アダプタ10xのプリント基板の、書き込みポート50bとアダプタ10xの本体部とを接続している配線を設けた部分で、基板を切断する構成である。又、アダプタ10xの機能は正常のまま、アダプタ10xの内部情報を外部からの変更をできなくする構成である。
又、アダプタ10xが、環境対応部25、昇圧処理部27、スリープ防止部29等を有している場合は、それぞれの部位と、書き込みポートと、を接続している配線も切断する構成である。ここで、切断箇所は、アダプタ10xの機能を損ねない箇所に設定してある。
【0048】
具体的には、
図5(b)の例では、書き込みポート50bとアダプタ10xの本体部との間に折り取り用の切り欠き61を設けておき、この切り欠き61を境にして書き込みポート50bをアダプタ10xの本体部から切り離す構造としてある。従って、折り取りを終えたアダプタ10には、
図5(b)に示すように折り取り痕60xが残存している。
又、
図5(c)に示したように、変形例2のアダプタ10yは、給電指示装置50への情報書き込み等を行う、書き込みポート50b(
図1参照)を、折り取る前の例である。
この例では、給電条件情報の書き込みを、書き込みポート50bを介して行い、書き込みが終了したら、配線切断構造60を利用して、アダプタ10yの本体部と書き込みポートとは切り離す。従って、折り取りを終えたアダプタ10yには、
図5(b)に示すように折り取り痕60xが残存していることが好ましい。
【0049】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、少なくとも設定電圧を含む給電条件情報、及び修正情報に基づいて、所定電力を出力する急速充電用の電力供給装置と、電力供給装置からの所定電力を利用する電子機器と、の間に接続して用いるとともに、下記構成(i)~(ii)を有する急速充電用の電力供給装置用アダプタを用いた電力供給方法であって、
(i)電力供給装置に接続される第1コネクタと、電子機器に接続される第2コネクタと、第1コネクタと第2コネクタとの間に、電力供給装置に対して電力供給を要求するとともに、電力供給装置の出力電圧の変動要求値を示す修正情報に基づいて、当該出力電圧を増減させて、電力供給装置の出力電圧と設定電圧との差としての検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する給電指示装置と、が備えてあり、
(ii)給電指示装置は、電子機器を駆動する電力条件を示す給電条件情報を格納する給電条件情報格納部と、第1コネクタの所定端子に、給電条件情報、及び修正情報を送信する情報出力部と、出力電圧を検知して、当該出力電圧の増減量を示す修正情報を設定する自動電圧調整部と、が設けてある。
そして、下記工程(1)~(4)を順次に含む電力供給方法である。
(1)情報出力部が、第1コネクタの所定端子に給電条件情報を送信する工程。
(2)電力供給装置が、給電条件情報を受け取って、当該給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する工程。
(3)自動電圧調整部が、出力された所定電力の電圧を検知して、検知した出力電圧と、設定電圧と、の差を取って検知電圧差を求め、当該検知電圧差が閾値を超えた場合に、修正情報を生成する工程。
(4)給電指示装置が、修正情報に基づいて、電力供給装置の出力電圧を増減させて、検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する工程。
【0050】
1.準備工程
準備工程は、工程(1)の前におこなうべき工程であって、外部から、給電条件情報格納部に対して、給電条件情報を設定するとともに、両端のコネクタに急速充電規格の電力供給装置と電子機器を接続する工程である。
具体的には、
図1に示すように、アダプタ10に設けた書き込みポート50bに、書き込み装置(図示せず)を接続し、所定のプログラミングにより、給電条件情報を書き込んだ後、書き込み装置を、書き込みポート50bから外す工程である。
ここで、必要に応じ、書き込みポート50bや動作選択部31を、配線切断構造(
図5参照)によって、給電条件情報を書き込んだ後、アダプタ10から切り離すことが好ましい。
この理由は、このように実施することで、使用者が誤った給電条件情報で上書きしてしまうことを防ぐためであり、かつ、配線切断構造を切り話すことによって、アダプタ10の小型化にも資するためである。
【0051】
一方、特に図示しないものの、書き込みポートが、第1コネクタにおける未使用の端子に配置されている場合には、書き込み装置を、第1コネクタに接続して、所定のプログラミングにより、給電条件情報を書き込むことも好ましい。
この理由は、特定の書き込み装置を有していない使用者は、給電条件情報を書き換えすることができないようにするとともに、特定の書き込み装置を有するメーカー側や保守担当者は、後工程で容易に書き換えを行うことができるようになるためである。
すなわち、書き込みポートが、第1コネクタにおける未使用の端子に配置されている電力供給装置用アダプタは、後工程において、給電条件情報を変更する場合に用いることが好ましい。
【0052】
又、書き込み等が終了したら、
図1に示すように、アダプタ10を、第1コネクタ11を介して電力供給装置12と接続するとともに、第2コネクタ13を介して電子機器14と接続する。
次に、出力線19に対して、電力供給装置から初期電圧、典型的には5Vの直流電圧を供給する。
そして、電源部23は、この電圧を受けて、アダプタ10の駆動電圧であるVddを生成する。駆動電圧Vddが給電指示装置50を始めアダプタ10内の必要箇所に加わるので、給電指示装置50等が始動する。
更に、制御部50aが、動作選択部31や、給電条件情報格納部15の状態を読み込み、電力供給装置12を動作させる給電条件情報、環境対応部25等のどれを駆動するかを認識する。最後に、制御部50aは、認識した情報等に応じた動作を開始する。すなわち、対応するサブルーチンプログラムに移行し、準備工程は終了する。
【0053】
2.工程(1)
工程(1)は、情報出力部が、第1コネクタの所定端子に給電条件情報を送信する工程である。
すなわち、情報出力部が、給電条件情報格納部に記録されている給電条件情報の中から、1種の設定電圧、又は1種の設定電圧と1種の設定電流との組み合わせ、のいずれか一方を選択して読み込む。
具体的には、QC規格の場合、給電条件情報格納部に、要求する出力電圧に基づいて、情報出力部の複数存在するピンを、ON状態とするか、OFF状態とするか、開放状態とするかの情報を入力しておく。又、USB PD規格の場合、要求する出力電圧に基づいて、16進法で表される設定電圧、及び設定電流の情報を入力しておく。
次に、読み込んだ給電条件情報に付された行先ピンの情報によって、QC規格の場合には、電力供給装置における第1コネクタのD+、D-端子に給電条件情報を送信する。一方、USB PD規格の場合には、第1コネクタのCC端子に給電条件情報を送信する工程である。
【0054】
3.工程(2)
工程(2)は、電力供給装置が、給電条件情報を受け取って、当該給電条件情報に基づいて、所定電力を出力する工程である。
すなわち、電力供給装置が、送信された給電条件情報を受信し、USB PD規格、又は、QC規格のうち、適合する急速充電規格の電気信号を送信されたかを判断する。
次に、電力供給装置の急速充電規格と、送信された給電条件情報と、が一致する場合、電力供給装置は、給電条件情報で指示された内容の電力(例えば、13V)を出力し、それらが一致しない場合には、電力供給装置は、初期電圧(例えば、5V)の給電を行う工程である。
【0055】
4.工程(3)
工程(3)は、自動電圧調整部が、出力された所定電力の電圧を検知して、検知した出力電圧と、設定電圧と、の差を取って検知電圧差を求め、当該検知電圧差が閾値を超えた場合に、修正情報を生成する工程である。
すなわち、自動電圧調整部が、出力された所定電力の電圧を検知するとともに、分圧回路を介して検知した出力電圧を、分圧比から逆算して、出力電圧を求める。
次に、求めた出力電圧と、給電条件情報格納部に格納された給電条件情報と、の差を取って、検知電圧差を求める。
そして、求めた検知電圧差と、予め自動電圧調整部に記録された閾値と、を比較して、検知電圧差の方が大きい場合に、修正情報を生成する工程である。
【0056】
又、自動電圧調整部による、出力電圧を検知方法について、出力電圧を検知した時点をX1とし、当該X1から所定時間毎に、出力電圧を検知した時点をX2~X5とした場合に、X1~X5の時点の出力電圧の平均値と、設定電圧と、の差を取って検知電圧差を求め、当該検知電圧差が閾値を超えた場合に、修正情報を生成することが好ましい。
この理由は、出力電圧のノイズによって、自動電圧調整部が誤った修正情報を生成してしまうことを防ぎ、自動電圧調整部の電力消費を抑えて、電力供給装置の電力供給時間を効果的に長くすることができるためである。
よって、X1~X5の時点において、数値が最大のものと、数値が最小のものを除いた3つの数値で平均を求めることもより好ましい。
又、検知電圧差の正負が同じである場合に修正情報を生成することも更に好ましい。
【0057】
又、自動電圧調整部は、出力電圧を検知した時点をα1とし、当該α1より所定時間後に、出力電圧を検知した時点をα2とし、当該α2より所定時間後に、出力電圧を検知した時点をα3とした場合に、下記関係式(a)を満たすことが好ましい。
(α2-α1)<(α3-α2) (a)
ここで、(α2-α1)の値は、0.05~3600秒の範囲内の値であることが好ましい。
又、(α3-α2)の値は、0.1~3600秒の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、出力電圧の変動が大きい電力供給の開始時点のタイミングで細かく調整することができ、出力電圧の変動が落ち着いたタイミングで、自動電圧調整部の電力消費を抑えて、電力供給装置の電力供給時間を効果的に長くすることができるためである。
従って、(α2-α1)の値は、0.1~1800秒の範囲内の値であることがより好ましく、0.2~600秒の範囲内の値であることが更に好ましい。
又、(α3-α2)の値は、0.2~1800秒の範囲内の値であることがより好ましく、0.4~600秒の範囲内の値であることが更に好ましい。
【0058】
5.工程(4)
工程(4)は、給電指示装置が、修正情報に基づいて、電力供給装置の出力電圧を増減させて、検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する工程である。
すなわち、情報出力部が、自動電圧調整部が生成した修正情報を読み込む。
次に、第1コネクタの所定に対して、給電条件情報を送信するとともに、読み込んだ修正情報を電力供給装置に対して送信し、電力供給装置の出力電圧を増減させて、検知電圧差を、予め定めた閾値以内の値に電圧を調整する工程である。
具体的には、変動要求値だけ増加させる数の所定のパルス信号列、特に、USB PD PPS規格、又はQC3.0規格のパルス信号列を送信する工程であることが好ましい。
【0059】
6.その他の工程
(1)初期セルフチェック工程
その他の工程として、初期セルフチェック工程を、準備工程と、工程(1)と、の間に有することが好ましい。
すなわち、電力供給装置が、電力供給装置が給電条件情報を受けていない状態で、初期電圧の出力を行う。次に、自動電圧調整部が、出力された初期電圧での出力電圧を検知する。そして、検知された当該初期電圧と、予め設定された所定値と、を比較して、給電条件情報、及び修正情報の送信の是非を決定する工程である。
具体的には、予め設定された所定値を0.2Vとし、電力供給装置に対してアダプタを接続した直後に、検知した出力電圧(USB規格に基づく初期電圧5V)が、4.8V未満、又は5.2Vを超える値であった場合に、給電条件情報、及び修正情報の送信を行わないことが好ましい。
この理由は、急速充電用の高い電圧になる前に、電力供給装置に異常が発生していないかの初期チェックを行うことができるためである。又、電力供給装置に異常が発生していた場合であっても、電力供給を完全に停止させることなく、初期電圧での出力を維持することができるためである。
【0060】
(2)途中時セルフチェック工程
又、その他の工程として、途中時セルフチェック工程を、工程(4)の後に有することが好ましい。
すなわち、工程(3)で生成した修正情報に基づいて、増減させた出力電圧を検知した時点をY1とする。次に、時点Y1から所定時間毎に、出力電圧を検知した時点をY2~Y5とする。そして、時点Y1~Y5の検知電圧差の平均を、自動電圧調整部に予め設定された所定値と比較し、給電条件情報、及び修正情報の送信の是非を判断する工程である。
具体的には、予め設定された所定値を0.2Vとし、時点Y1~Y5の検知電圧差の平均を0.8Vとした場合に、給電条件情報、及び修正情報を停止することが好ましい。この時、電条件情報、及び修正情報の受信がされていない電力供給装置の出力電圧は、初期電圧となる構成である。
例えば、時点Y1~Y5の検知電圧差の平均が0.8Vになる場合とは、設定電圧を12Vとして、検知した出力電圧が、Y1時点で12.8Vであり、Y2時点で12.8Vであり、Y3時点で、13.2Vであり、Y4時点で12.6Vであり、Y5時点で12.6Vの場合等である。
この理由は、電力供給装置が使用中であっても、電力供給装置に異常が発生していないかの途中時セルフチェックを行うことができるためである。又、電力供給装置に異常が発生していた場合であっても、電力供給を完全に停止させることなく、初期電圧での出力を維持することができるためである。
【0061】
(3)USB PD規格とQC規格の切替工程
又、その他の工程として、USB PD規格とQC規格の切替工程を、工程(1)と、工程(2)と、の間に有することが好ましい。
すなわち、まず、情報出力部が、給電条件情報格納部に記録されている給電条件情報の中から、USB PD規格に基づく給電条件情報を、第1コネクタのCC端子に出力する。
次に、電力供給装置から、給電条件情報を受信した旨の信号が、所定時間以内に返ってこない場合に、QC規格に基づく給電条件情報を、第1コネクタのD+、D-端子に送信する工程を有することが好ましい。
この理由は、電力供給装置がどの急速充電規格に適合しているかによらず、所定の自動電圧調整部によって、電子機器に出力する出力電圧を自動的に調整することができるためである。
【0062】
7.動作例
(1)自動電圧調整部の動作例(動作例1)
動作例1は、
図4に示すように、工程(3)において、自動電圧調整部が、出力電圧の検知、及び修正情報の生成を行った例である。
ここでは、自動電圧調整部の動作例1を、
図1及び
図4を参照して説明する。
まず、自動電圧調整部21は、検知電圧差を比べる対象として、閾値V
0が設定される(
図4のステップS50)。
次に、電力供給装置12に対して、給電指示装置50が指示している給電条件情報の設定電圧Vnを、給電条件情報格納部15から取り込む(
図4のステップS51)。
又、出力線19に供給されている出力電圧Vxを、電圧検出回路21aから取り込んで検知する(
図4のステップS52)。ここで、設定電圧Vnは、電圧検出回路21aの分圧比から逆算して求めることができる。
更に、自動電圧調整部21は、出力電圧Vxと、設定電圧Vnと、の差である検知電圧差が、閾値の範囲内否かを判定する(
図4のステップS53)。
そして、検知電圧差が、閾値以内になっていた場合は、電力供給装置は正常に動作していると判断でき、電子機器の受電部の初期変動等も無いと判断できるので、電圧調整処理を終了する(
図4のステップS63)。
【0063】
一方、自動電圧調整部21は、検知電圧差が、閾値以内でない場合は、異常判断時間Txになったかを判断する(
図4のステップS54)。ここで、異常判断時間Txとは、異常判断をする上で好ましいと思う任意の時間である。具体的には、電子機器の初期変動を監視する上で妥当な時間とか、情報出力部17が給電条件情報を第1コネクタ11に出力する際のパルス抜けや誤動作を監視する上で妥当な時間である。これが長すぎると異常処理への意向が遅くなる。
異常判断時間Txになっていない場合は、自動電圧調整部21は、電圧監視時間T1(T1<Tx)になったら、電圧監視回路の電圧を読み込みに行く(
図4のステップS55、S52)。
又、異常判断時間Txになっている場合は、検知電圧差に基づいた修正情報を生成する(
図4のステップS61)。そして、ステップS51の給電条件情報の設定電圧Vnを取り込む工程に戻る。その際、アダプタ10に設けた表示部等によってアラートを出しても良い。
【0064】
(2)QC3.0の場合の動作例(動作例2)
動作例2は、工程(1)~(4)において、電力供給装置の急速充電規格が、QC3.0の場合の例である。
まず、情報出力部17は、情報出力用ポートP1、P2の電位を制御して、D+端子、D-端子を各々0.6Vにする(初期化)。この電圧状態を所定時間(ここでは1000m秒以上)維持する。
次に、情報出力部17は、情報出力用ポートP1、P2の電位を制御して、D+端子を0.6V、D-端子を3.3Vにする。この電圧状態を所定時間(ここでは1m秒以上)維持する。これにより、電力供給装置に対しQC3.0モードの指示が完了する。
次に、情報出力部17は、情報出力用ポートP1、P2の電位を制御して、D+端子及びD-端子にQC3.0で規格化されているパルスを印加する。QC3.0では、D+、D-端子に、0.6V/3.3Vで、パルス幅40m秒のパルスをいくつ印加するかによって、給電時の電圧を0.2Vステップで指定できる。
よって、給電電圧を上げたい場合は、D-端子を3.3Vに固定した状態で、D+端子に0.6Vから3.3Vに上がりパルス幅40m秒のパルスを必要数印加する。逆に、給電電圧を下げたい場合は、D+端子を0.6Vに固定した状態で、D-端子に3.3Vから0.6Vに下がりパルス幅40m秒のパルスを必要数印加する。
このように動作させることにより、電力供給装置に対しQC3.0モードの給電条件情報の指示が完了する。
【0065】
(3)USB PD PPSの場合の動作例(動作例3)
動作例3は、工程(1)~(4)において、電力供給装置の急速充電規格が、USB PD PPS規格である場合の例である。
まず、
図1に示すように、情報出力部17は、USB PDで規格化されている給電条件情報を、情報出力用ポートP3から、第1コネクタ11のCC端子に送信する。
これにより、電力供給装置は、給電条件情報のデータ内容によって、5V、9V、15V、20Vのいずれかの電圧を出力する。
それと同時に、自動電圧調整部は、USB PD PPS規格で規格化されたパルス信号列の修正情報を生成する。
情報出力部17を介して、給電条件情報のデータ信号に重畳させて、第1コネクタ11のCC端子に送信する。
すると、電力供給装置は、給電条件情報に基づいて出力された5V、9V、15V、20Vのいずれかの電圧に対して、受信した修正情報として1パルス当たり20mV増加させるように、出力する。
【0066】
(4)環境対応部の動作例(動作例4)
動作例4は、その他の工程として、環境対応部を動作させた場合の例である。
まず、
図1に示すように、環境対応部25を動作させる選択がされている場合、制御部50aは、環境対応部25を起動する。これに応じて、環境対応部25は現在指定されている給電条件Aを認識し、センサ閾値Stをメモリから取り込む。
次に、環境対応部25は、センサ出力Ssを取り込み、センサ閾値Stと比較する。センサ出力Ssがセンサ閾値より例えば大きい場合(小さい場合の使用法があっても良い)、環境対応部25は、情報出力部17に対し、別の給電条件Bの出力を指示する。
一方、センサ出力Ssがセンサ閾値より小さい大きい場合、環境対応部25は、処理終了時間になったかを判断する。ここで、処理終了時間とは、環境情報を利用する上で好ましいと思う任意の時間である。無限大でも良い。これが短すぎると環境情報が反映されない。
処理終了時間になっていない場合は、環境対応部25は、センサ出力Ssを取り込みに行く。
又、処理終了時間になっているが、センサ出力Ssはセンサ閾値Stを超えない場合は、給電条件Aを維持する。
【0067】
(5)昇圧処理部の動作例(動作例5)
動作例5は、その他の工程として、昇圧処理部を動作させた場合の例である。
まず、
図1に示すように、昇圧処理部27を動作させる選択がされている場合、制御部50aは、昇圧処理部27を起動する。これに応じて、昇圧処理部27は、目標電圧となる昇圧電圧Vmをメモリから取り込む。
次に、昇圧処理部27は、昇圧回路27aを有効にしかつ周知の方法(オンオフのパルスを印加する方法等)で駆動制御する。その際、昇圧処理部27は、自動電圧調整部21の電圧検出回路21aが検出する出力電圧Vxを取り込み、昇圧電圧Vmと比較する。
この時、出力電圧Vxが昇圧電圧Vmに対し所定範囲になれば昇圧処理を終了する。
そして、出力電圧Vxが、昇圧電圧Vmに対し所定範囲以下である場合、昇圧処理部27は、処理終了時間になったかを判断する。ここで、処理終了時間とは、昇圧処理を継続させる上で好ましいと思う任意の時間である。無限大でも良い。これが短すぎると昇圧ができない。
一方、処理終了時間になっていない場合は、昇圧処理部27は、電圧検出回路21aが検出する出力電圧Vxを取り込み、昇圧電圧Vmと比較する。
更に一方、処理終了時間になっているが、出力電圧Vxが昇圧電圧Vmに対し所定範囲にならない場合、必要に応じアラート等を出し、昇圧処理を終了する。
【0068】
(6)スリープ防止部の動作例(動作例6)
動作例6は、その他の工程として、スリープ防止部を動作させた場合の例である。
まず、スリープ防止部29は、スリープ防止回路29aのスイッチ部に所定パルス幅のオン信号パルスを出力する。
又、スリープ防止回路29aは定電流素子部で規定された所定電流を流すので、出力線19の電流消費が生じる。従って、電力供給装置は電流消費があることを認識するので、スリープモードに入ることを防止できる。
次に、スリープ防止部29は、処理終了時間になったかを判断する。ここで、処理終了時間とは、スリープ防止を継続させる上で好ましいと思う任意の時間である。通常は、アダプタ10を使用している時間はスリープ防止をするので、アダプタ10が動いている限り、すなわち、無限大で良い。しかし、所定の終了時間を設定しても良い趣旨である。
処理終了時間になっていない場合は、スリープ防止部29は、スリープ防止回路29aにオン信号パルスを出力する。オン信号パルスを出力する周期は、電力供給装置がスリープモードとならない時間に設定する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、電子機器に出力する電圧を自動的に調整して出力することができる急速充電用の電力供給装置用アダプタ及びそれを用いた電力供給方法である。
すなわち、急速充電に対応していない電子機器に対しても、所定電力を供給できるとともに、電力供給装置の異常等で、過度に高い電圧が出力されるような場合に、出力電圧を、設定電圧まで下げて、電子機器の故障を防ぐことができる。
又、自動電圧調整部の電力消費を抑えて、電力供給装置の電力供給時間を効果的に長くすることができる。
そして、追加の昇圧回路などが必要なくなるため、アダプタ全体を小型化することができる。
従って、ノートPC用のアダプタとして利用すると、新幹線や自動車等に設けられた出力変動が大きな電源と接続した場合であっても、ノートPCの動作が不安定になるのを効果的に防ぐことが期待できる。
又、工事作業者等の衣類に取り付けた冷却ファン用のアダプタとして利用すると、冷却ファンの強弱のような電圧変調が繰り返された場合であっても、出力電圧が変わらず、冷却ファンが故障するのを効果的に防ぐことが期待できる。
そして、船上の魚群探知機用のアダプタとして利用すると、通信エラーが発生した場合であっても、自動電圧調整部が不足電圧分を補うように調整して、電子機器の電力不足を効果的に防ぐことが期待できる。
すなわち、本願発明は、産業上の利用可能性が極めて高いものである。
【0070】
10、10x、10y:電力供給装置用アダプタ
11:第1コネクタ 13:第2コネクタ
15:給電条件情報格納部 17:情報出力部
19:出力線 21:自動電圧調整部
21a:電圧検出回路 23:電源部
25:環境対応部 25a:センサ群
27:昇圧処理部 27a:昇圧回路
27b:スイッチ部 29:スリープ防止部
31:動作選択部 50:給電指示装置
50a:制御部 50b:書き込みポート
60:配線切断構造 60x:折り取り痕
61:切り欠き