(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147556
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】積層型ローパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
H03H 7/075 20060101AFI20220929BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20220929BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H03H7/075 A
H01F27/00 S
H01G4/40 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048850
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB07
5E070CB12
5E070CB13
5E070CB17
5E070DB08
5E082DD08
5J024AA01
5J024BA05
5J024BA11
5J024DA04
5J024DA29
5J024DA31
5J024DA33
5J024DA34
5J024DA35
5J024EA01
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】阻止帯域における挿入損失の大きさを十分に調整することができる積層型ローパスフィルタを実現する。
【解決手段】ローパスフィルタ1は、インダクタL1~L3と、キャパシタC1~C3とを備えている。インダクタL1,L2の各々の少なくとも一部を構成する第1のインダクタ用導体層661と、インダクタL3の第1および第2のインダクタ部分L31,L32を構成する第1および第2の部分551a,551bを含む第2のインダクタ用導体層551は、複数の第1のスルーホールによって接続されている。第1の部分551aと、キャパシタC1~C3の各々の一部を構成するキャパシタ用導体層531は、複数の第2のスルーホールによって接続されている。第2の部分551bとキャパシタ用導体層531は、複数の第3のスルーホールによって接続されている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1のインダクタおよび第2のインダクタと、
回路構成上、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの接続点とグランドとの間に設けられた第3のインダクタと、
前記第3のインダクタに接続されたキャパシタと、
積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含み、前記第1のインダクタ、前記第2のインダクタ、前記第3のインダクタおよび前記キャパシタを一体化するための積層体とを備え、
前記第3のインダクタは、並列に接続された第1のインダクタ部分および第2のインダクタ部分を含み、
前記複数の導体層は、前記複数の誘電体層の積層方向において互いに異なる位置に配置された第1のインダクタ用導体層、第2のインダクタ用導体層およびキャパシタ用導体層を含み、
前記第1のインダクタ用導体層は、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタの各々の少なくとも一部を構成し、
前記第2のインダクタ用導体層は、前記第1のインダクタ部分を構成する第1の部分と、前記第1のインダクタ部分を構成する第2の部分とを含み、
前記キャパシタ用導体層は、前記キャパシタの一部を構成し、
前記積層体は、更に、前記第1のインダクタ用導体層と前記第2のインダクタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第1のスルーホールと、前記第2のインダクタ用導体層の前記第1の部分と前記キャパシタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第2のスルーホールと、前記第2のインダクタ用導体層の前記第2の部分と前記キャパシタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第3のスルーホールとを含むことを特徴とする積層型ローパスフィルタ。
【請求項2】
前記第3のインダクタは、更に、回路構成上、前記接続点と前記第1および第2のインダクタ部分との間に設けられた第3のインダクタ部分を含み、
前記第3のインダクタ部分は、前記少なくとも1つの第1のスルーホールによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1のスルーホールは、直列に接続された複数の第1のスルーホールであることを特徴とする請求項1または2記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項4】
前記第2のインダクタ用導体層は、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記第2のインダクタ用導体層と前記少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を中心とした回転対称形状を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2のスルーホールと、前記少なくとも1つの第3のスルーホールは、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記接続部分を中心として対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項4記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項6】
前記第2のインダクタ用導体層は、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記第2のインダクタ用導体層と前記少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を通り前記積層方向に直交する対称軸を中心とした線対称形状を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2のスルーホールと、前記少なくとも1つの第3のスルーホールは、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記接続部分を中心として対称な位置に配置されていることを特徴とする請求項6記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項8】
前記第1のインダクタ用導体層は、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記第1のインダクタ用導体層と前記少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を中心とした回転対称形状を有していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項9】
前記第1のインダクタ用導体層は、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記第1のインダクタ用導体層と前記少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を通り前記積層方向に直交する対称軸を中心とした線対称形状を有していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項10】
前記複数の導体層の各々は、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記少なくとも1つの第1のスルーホールと交差し前記積層方向に平行な中心軸を中心として回転させたときに、自身と一致する形状または他の導体層と一致する形状を有していることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の積層型ローパスフィルタ。
【請求項11】
前記積層体は、更に、前記少なくとも1つの第1のスルーホール、前記少なくとも1つの第2のスルーホールおよび前記少なくとも1つの第3のスルーホールを含む複数のスルーホールを含み、
前記複数のスルーホールの各々は、前記積層方向に平行な一方向から見て、前記中心軸を中心として回転させたときに、自身と一致する位置または他のスルーホールと一致する位置に配置されていることを特徴とする請求項10記載の積層型ローパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタとキャパシタが積層体に一体化された積層型ローパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型移動体通信機器の小型化、省スペース化が市場から要求されており、その通信機器に用いられるローパスフィルタの小型化も要求されている。小型化に適したローパスフィルタとしては、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体を用いたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、積層型ローパスフィルタが開示されている。この積層型ローパスフィルタは、直列に接続された2つのインダクタと、2つのインダクタの接続点とグランドとの間に設けられたキャパシタとを備えている。2つのインダクタの接続点とキャパシタを構成する導体層は、スルーホールによって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ローパスフィルタの特性としては、通過帯域において、挿入損失が十分に小さく且つ反射損失が十分に大きいことと、阻止帯域において、挿入損失が十分に大きいことが求められる。特許文献1に開示された積層型ローパスフィルタでは、例えば、2つのインダクタの接続点とキャパシタとを接続する経路のインダクタンスを調整することによって、阻止帯域における挿入損失の大きさを調整することができる。この経路は、スルーホールによって構成されている。
【0006】
近年、小型移動体通信機器では、従来よりも高い周波数の信号を利用するシステムが採用されている。このように、従来よりも高い周波数の信号が利用されるようになると、ローパスフィルタにおいても、従来よりも厳しい特性を満足することが求められる。例えば、従来よりも高い阻止帯域において、挿入損失が十分に大きいことが求められる。しかし、特許文献1に開示された積層型ローパスフィルタでは、2つのインダクタの接続点とキャパシタとを接続する経路のインダクタンスを十分に調整することができず、その結果、阻止帯域における挿入損失の大きさを十分に調整することができないという問題点があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、阻止帯域における挿入損失の大きさを十分に調整することができる積層型ローパスフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層型ローパスフィルタは、直列に接続された第1のインダクタおよび第2のインダクタと、回路構成上、第1のインダクタと第2のインダクタの接続点とグランドとの間に設けられた第3のインダクタと、第3のインダクタに接続されたキャパシタと、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含み、第1のインダクタ、第2のインダクタ、第3のインダクタおよびキャパシタを一体化するための積層体とを備えている。第3のインダクタは、並列に接続された第1のインダクタ部分および第2のインダクタ部分を含んでいる。
【0009】
複数の導体層は、複数の誘電体層の積層方向において互いに異なる位置に配置された第1のインダクタ用導体層、第2のインダクタ用導体層およびキャパシタ用導体層を含んでいる。第1のインダクタ用導体層は、第1のインダクタと第2のインダクタの各々の少なくとも一部を構成する。第2のインダクタ用導体層は、第1のインダクタ部分を構成する第1の部分と、第1のインダクタ部分を構成する第2の部分とを含んでいる。キャパシタ用導体層は、キャパシタの一部を構成する。
【0010】
積層体は、更に、第1のインダクタ用導体層と第2のインダクタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第1のスルーホールと、第2のインダクタ用導体層の第1の部分とキャパシタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第2のスルーホールと、第2のインダクタ用導体層の第2の部分とキャパシタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第3のスルーホールとを含んでいる。
【0011】
本発明の積層型ローパスフィルタにおいて、第3のインダクタは、更に、回路構成上、接続点と第1および第2のインダクタ部分との間に設けられた第3のインダクタ部分を含んでいてもよい。第3のインダクタ部分は、少なくとも1つの第1のスルーホールによって構成されていてもよい。
【0012】
また、本発明の積層型ローパスフィルタにおいて、少なくとも1つの第1のスルーホールは、直列に接続された複数の第1のスルーホールであってもよい。
【0013】
また、本発明の積層型ローパスフィルタにおいて、第2のインダクタ用導体層は、積層方向に平行な一方向から見て、第2のインダクタ用導体層と少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を中心とした回転対称形状を有していてもよい。この場合、少なくとも1つの第2のスルーホールと、少なくとも1つの第3のスルーホールは、積層方向に平行な一方向から見て、接続部分を中心として対称な位置に配置されていてもよい。
【0014】
また、本発明の積層型ローパスフィルタにおいて、第2のインダクタ用導体層は、積層方向に平行な一方向から見て、第2のインダクタ用導体層と少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を通り積層方向に直交する対称軸を中心とした線対称形状を有していてもよい。この場合、少なくとも1つの第2のスルーホールと、少なくとも1つの第3のスルーホールは、積層方向に平行な一方向から見て、接続部分を中心として対称な位置に配置されていてもよい。
【0015】
また、本発明の積層型ローパスフィルタにおいて、第1のインダクタ用導体層は、積層方向に平行な一方向から見て、第1のインダクタ用導体層と少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を中心とした回転対称形状を有していてもよい。あるいは、第1のインダクタ用導体層は、積層方向に平行な一方向から見て、第1のインダクタ用導体層と少なくとも1つの第1のスルーホールとの接続部分を通り積層方向に直交する対称軸を中心とした線対称形状を有していてもよい。
【0016】
また、本発明の積層型ローパスフィルタにおいて、複数の導体層の各々は、少なくとも1つの第1のスルーホールと交差し積層方向に平行な中心軸を中心として回転させたときに、自身と一致する形状または他の導体層と一致する形状を有していてもよい。この場合、積層体は、更に、少なくとも1つの第1のスルーホール、少なくとも1つの第2のスルーホールおよび少なくとも1つの第3のスルーホールを含む複数のスルーホールを含んでいてもよい。複数のスルーホールの各々は、積層方向に平行な一方向から見て、中心軸を中心として回転させたときに、自身と一致する位置または他のスルーホールと一致する位置に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層型ローパスフィルタでは、複数の導体層は、複数の誘電体層の積層方向において互いに異なる位置に配置された第1のインダクタ用導体層、第2のインダクタ用導体層およびキャパシタ用導体層を含んでいる。第1のインダクタ用導体層は、第1のインダクタと第2のインダクタの各々の少なくとも一部を構成する。第2のインダクタ用導体層は、第1のインダクタ部分を構成する第1の部分と、第1のインダクタ部分を構成する第2の部分とを含んでいる。キャパシタ用導体層は、キャパシタの一部を構成する。積層体は、第1のインダクタ用導体層と第2のインダクタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第1のスルーホールと、第2のインダクタ用導体層の第1の部分とキャパシタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第2のスルーホールと、第2のインダクタ用導体層の第2の部分とキャパシタ用導体層とを接続する少なくとも1つの第3のスルーホールとを含んでいる。これにより、本発明によれば、阻止帯域における挿入損失の大きさを十分に調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの回路構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における4層目ないし8層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における9層目ないし13層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における14層目ないし16層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における17層目および18層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図8】本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体の内部を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示した積層体の内部の一部を示す斜視図である。
【
図10】第1の比較例の積層型ローパスフィルタの積層体の内部の一部を示す斜視図である。
【
図11】第2の比較例の積層型ローパスフィルタの積層体の内部の一部を示す斜視図である。
【
図12】第3の比較例の積層型ローパスフィルタの積層体の内部の一部を示す斜視図である。
【
図13】第1の変形例の第2のインダクタ用導体層を示す説明図である。
【
図14】第2の変形例の第1のインダクタ用導体層を示す説明図である。
【
図15】本発明の第2の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における1層目ないし3層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図16】本発明の第2の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における4層目ないし11層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図17】本発明の第2の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における12層目ないし14層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図18】本発明の第2の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体における15層目ないし17層目の誘電体層のパターン形成面を示す説明図である。
【
図19】本発明の第2の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタの積層体の内部を示す斜視図である。
【
図20】
図19に示した積層体の内部の一部を示す斜視図である。
【
図21】第1および第2のモデルの各々の通過減衰特性を示す特性図である。
【
図22】第1および第2のモデルの各々の挿入損失を示す特性図である。
【
図23】第1および第2のモデルの各々の第1の入出力ポートの反射損失を示す特性図である。
【
図24】第1および第2の実施例のモデルの各々の第2の入出力ポートの反射損失を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る積層型ローパスフィルタ(以下、単にローパスフィルタと記す。)1の構成の概略について説明する。ローパスフィルタ1は、少なくとも、第1のインダクタL1、第2のインダクタL2、第3のインダクタL3およびキャパシタを備えている。第1および第2のインダクタL1,L2は、直列に接続されている。第3のインダクタL3は、回路構成上、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2の接続点P1とグランドとの間に設けられている。キャパシタは、第3のインダクタに接続されている。なお、本出願において、「回路構成上」という表現は、物理的な構成における配置ではなく、回路図上での配置を指すために用いている。
【0020】
第3のインダクタL3は、並列に接続された第1のインダクタ部分L31および第2のインダクタ部分L32と、第3のインダクタ部分L33とを含んでいる。第3のインダクタ部分L33は、回路構成上、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2の接続点P1と第1および第2のインダクタ部分L31,L32との間に設けられている。第3のインダクタ部分L33は、第1および第2のインダクタ部分L31,L32の各々に対して直列に接続されている。
【0021】
次に、
図1を参照して、ローパスフィルタ1の、第1ないし第3のインダクタL1~L3以外の部分の構成の一例について説明する。
【0022】
ローパスフィルタ1は、上述のキャパシタとして、キャパシタC1,C2,C3を備えている。ローパスフィルタ1は、更に、第1の入出力ポート2と、第2の入出力ポート3と、インダクタL4,L5,L6,L7,L8,L9と、キャパシタC4,C5,C6とを備えている。
【0023】
インダクタL4の一端は、第1の入出力ポート2に接続されている。第1のインダクタL1の一端は、インダクタL4の他端に接続されている。第2のインダクタL2の一端は、第1のインダクタL1の他端に接続されている。インダクタL5の一端は、第2のインダクタL2の他端に接続されている。インダクタL5の他端は、第2の入出力ポート3に接続されている。第1および第2のインダクタL1,L2は、第1の入出力ポート2と第2の入出力ポート3とを接続する経路に、直列に設けられている。
【0024】
第3のインダクタL3の第3のインダクタ部分L33の一端は、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2の接続点Pに接続されている。第3のインダクタL3の第1および第2のインダクタ部分L31,L32の各一端は、第3のインダクタ部分L33の他端に接続されている。第1および第2のインダクタ部分L31,L32の各他端は、互いに接続されている。
【0025】
キャパシタC1~C3の各一端は、第1のインダクタ部分L31の他端と第2のインダクタ部分L32の他端の接続点P2に接続されている。キャパシタC2の他端とキャパシタC4の一端は、第1のインダクタL1とインダクタL4の接続点に接続されている。キャパシタC3の他端とキャパシタC5の一端は、第2のインダクタL2とインダクタL5の接続点に接続されている。キャパシタC1,C4,C5の各他端は、互いに接続されている。
【0026】
インダクタL6~L9およびキャパシタC6の各一端は、キャパシタC1の他端とキャパシタC4の他端とキャパシタC5の他端の接続点P3に接続されている。インダクタL6~L9およびキャパシタC6の各他端は、グランドに接続されている。
【0027】
次に、
図2を参照して、ローパスフィルタ1のその他の構成について説明する。
図2は、ローパスフィルタ1の外観を示す斜視図である。
【0028】
ローパスフィルタ1は、更に、積層された複数の誘電体層と複数の導体層と複数のスルーホールとを含む積層体50を備えている。積層体50は、第1の入出力ポート2、第2の入出力ポート3、第1ないし第3のインダクタL1~L3、インダクタL4~L9およびキャパシタC1~C6を一体化するためものである。第1ないし第3のインダクタL1~L3、インダクタL4~L9およびキャパシタC1~C6は、複数の導体層を用いて構成されている。
【0029】
積層体50は、複数の誘電体層の積層方向Tの両端に位置する底面50Aおよび上面50Bと、底面50Aと上面50Bを接続する4つの側面50C~50Fとを有している。側面50C,50Dは互いに反対側を向き、側面50E,50Fも互いに反対側を向いている。側面50C~50Fは、上面50Bおよび底面50Aに対して垂直になっている。
【0030】
ここで、
図2に示したように、X方向、Y方向、Z方向を定義する。X方向、Y方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、積層方向Tに平行な一方向を、Z方向とする。また、X方向とは反対の方向を-X方向とし、Y方向とは反対の方向を-Y方向とし、Z方向とは反対の方向を-Z方向とする。
【0031】
図2に示したように、底面50Aは、積層体50における-Z方向の端に位置する。上面50Bは、積層体50におけるZ方向の端に位置する。底面50Aおよび上面50Bの各々の形状は、X方向に長い矩形形状である。側面50Cは、積層体50における-X方向の端に位置する。側面50Dは、積層体50におけるX方向の端に位置する。側面50Eは、積層体50における-Y方向の端に位置する。側面50Fは、積層体50におけるY方向の端に位置する。
【0032】
ローパスフィルタ1は、更に、端子111,112,113,114,115,116を備えている。端子111~113の各々は、上面50Bから側面50Eを経由して底面50Aにかけて配置されている。また、端子111~113は、X方向にこの順に並んでいる。端子114~116の各々は、上面50Bから側面50Fを経由して底面50Aにかけて配置されている。また、端子114~116は、X方向にこの順に並んでいる。
【0033】
端子112は第1の入出力ポート2に対応し、端子115は第2の入出力ポート3に対応している。端子111,113,114,116の各々は、グランドに接続される。
【0034】
次に、
図3ないし
図7を参照して、積層体50を構成する複数の誘電体層および複数の導体層の一例について説明する。この例では、積層体50は、積層された18層の誘電体層を有している。以下、この18層の誘電体層を、下から順に1層目ないし18層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし18層目の誘電体層を符号51~68で表す。
【0035】
図3(a)は、1層目の誘電体層51のパターン形成面を示している。誘電体層51には、導体層およびスルーホールは形成されていない。
【0036】
図3(b)は、2層目の誘電体層52のパターン形成面を示している。誘電体層52のパターン形成面には、キャパシタ用導体層521が形成されている。また、誘電体層52には、スルーホール52T1,52T2,52T3,52T4が形成されている。スルーホール52T1~52T4は、導体層521に接続されている。
【0037】
図3(c)は、3層目の誘電体層53のパターン形成面を示している。誘電体層53のパターン形成面には、キャパシタ用導体層531が形成されている。また、誘電体層53には、スルーホール53T1,53T2,53T3,53T4,53T6,53T7が形成されている。誘電体層52に形成されたスルーホール52T1~52T4は、それぞれ、スルーホール53T1~53T4に接続されている。スルーホール53T6,53T7は、導体層531に接続されている。
【0038】
図4(a)は、4層目の誘電体層54のパターン形成面を示している。誘電体層54のパターン形成面には、キャパシタ用導体層541,542が形成されている。導体層541は、端子112(
図2参照)に接続されている。導体層542は、端子115(
図2参照)に接続されている。また、誘電体層54には、スルーホール54T1,54T2,54T3,54T4,54T6,54T7が形成されている。誘電体層53に形成されたスルーホール53T1~53T4,53T6,53T7は、それぞれ、スルーホール54T1~54T4,54T6,54T7に接続されている。
【0039】
図4(b)は、5層目の誘電体層55のパターン形成面を示している。誘電体層55のパターン形成面には、第2のインダクタ用導体層551が形成されている。第2のインダクタ用導体層551は、第1の部分551aと第2の部分551bとを含んでいる。第1および第2の部分551a,551bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分551aの第1端と第2の部分551bの第1端は、互いに接続されている。
図4(b)では、第1の部分551aと第2の部分551bの境界を点線で示している。誘電体層54に形成されたスルーホール54T6は、第1の部分551aの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層54に形成されたスルーホール54T7は、第2の部分551bの第2端の近傍部分に接続されている。
【0040】
また、誘電体層55には、スルーホール55T1,55T2,55T3,55T4,55T5が形成されている。誘電体層54に形成されたスルーホール54T1~54T4は、それぞれ、スルーホール55T1~55T4に接続されている。スルーホール55T5は、第1の部分551aと第2の部分551bの境界およびその近傍において、第1の部分551aと第2の部分551bに接続されている。
【0041】
図4(c)は、6層目ないし8層目の誘電体層56~58の各々のパターン形成面を示している。誘電体層56~58の各々には、スルーホール56T1,56T2,56T3,56T4,56T5が形成されている。誘電体層55に形成されたスルーホール55T1~55T5は、それぞれ、誘電体層56に形成されたスルーホール56T1~56T5に接続されている。また、誘電体層56~58では、上下に隣接する同じ符号のスルーホール同士が互いに接続されている。
【0042】
図5(a)は、9層目の誘電体層59のパターン形成面を示している。誘電体層59のパターン形成面には、導体層591,592,593,594が形成されている。導体層591,592,593,594は、それぞれ、端子111,114,113,116(
図2参照)に接続されている。誘電体層58に形成されたスルーホール56T1~56T4は、それぞれ、導体層591~594に接続されている。また、誘電体層59には、スルーホール59T5が形成されている。誘電体層58に形成されたスルーホール56T5は、スルーホール59T5に接続されている。
【0043】
図5(b)は、10層目ないし12層目の誘電体層60~62の各々のパターン形成面を示している。誘電体層60~62の各々には、スルーホール60T5が形成されている。誘電体層59に形成されたスルーホール59T5は、誘電体層60のスルーホール60T5に接続されている。また、誘電体層60~62では、上下に隣接するスルーホール60T5同士が互いに接続されている。
【0044】
図5(c)は、13層目の誘電体層63のパターン形成面を示している。誘電体層63のパターン形成面には、インダクタ用導体層631,632が形成されている。導体層631,632の各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。導体層631の第1端は、端子112(
図2参照)に接続されている。導体層632の第1端は、端子115(
図2参照)に接続されている。また、誘電体層63には、スルーホール63T1,63T2,63T5が形成されている。スルーホール63T1は、導体層631の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール63T2は、導体層632の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層62に形成されたスルーホール60T5は、スルーホール63T5に接続されている。
【0045】
図6(a)は、14層目の誘電体層64のパターン形成面を示している。誘電体層64のパターン形成面には、インダクタ用導体層641,642が形成されている。導体層641,642の各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。導体層641の第1端は、端子112(
図2参照)に接続されている。導体層642の第1端は、端子115(
図2参照)に接続されている。また、誘電体層64には、スルーホール64T1,64T2,64T5が形成されている。誘電体層63に形成されたスルーホール63T1と、スルーホール64T1は、導体層641の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層63に形成されたスルーホール63T2と、スルーホール64T2は、導体層642の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層63に形成されたスルーホール63T5は、スルーホール64T5に接続されている。
【0046】
図6(b)は、15層目の誘電体層65のパターン形成面を示している。誘電体層65には、スルーホール65T1,65T2,65T5が形成されている。誘電体層64に形成されたスルーホール64T1,64T2,64T5は、それぞれ、スルーホール65T1,65T2,65T5に接続されている。
【0047】
図6(c)は、16層目の誘電体層66のパターン形成面を示している。誘電体層66のパターン形成面には、第1のインダクタ用導体層661が形成されている。第1のインダクタ用導体層661は、第1の部分661aと第2の部分661bとを含んでいる。第1および第2の部分661a,661bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分661aの第1端と第2の部分661bの第1端は、互いに接続されている。
図6(c)では、第1の部分661aと第2の部分661bの境界を点線で示している。
【0048】
また、誘電体層66には、スルーホール66T1,66T2,66T5が形成されている。誘電体層65に形成されたスルーホール65T1と、スルーホール66T1は、第1の部分661aの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール65T2と、スルーホール66T2は、第2の部分661bの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層65に形成されたスルーホール65T5と、スルーホール66T5は、第1の部分661aと第2の部分661bの境界およびその近傍において、第1の部分661aと第2の部分661bに接続されている。
【0049】
図7(a)は、17層目の誘電体層67のパターン形成面を示している。誘電体層67のパターン形成面には、第1のインダクタ用導体層671が形成されている。第1のインダクタ用導体層671は、第1の部分671aと第2の部分671bとを含んでいる。第1および第2の部分671a,671bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分671aの第1端と第2の部分671bの第1端は、互いに接続されている。
図7(a)では、第1の部分671aと第2の部分671bの境界を点線で示している。
【0050】
誘電体層66に形成されたスルーホール66T1は、第1の部分671aの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層66に形成されたスルーホール66T2は、第2の部分671bの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層66に形成されたスルーホール66T5は、第1の部分671aと第2の部分671bの境界およびその近傍において、第1の部分671aと第2の部分671bに接続されている。
【0051】
図7(b)は、18層目の誘電体層68のパターン形成面を示している。誘電体層68のパターン形成面には、導体層よりなるマーク681が形成されている。
【0052】
図2に示した積層体50は、1層目の誘電体層51のパターン形成面が積層体50の底面50Aになり、18層目の誘電体層68のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の上面50Bになるように、1層目ないし18層目の誘電体層51~68が積層されて構成される。
【0053】
図8は、1層目ないし18層目の誘電体層51~68が積層されて構成された積層体50の内部を示している。
図8に示したように、積層体50の内部では、
図3ないし
図7に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、
図8では、マーク681を省略している。また、
図9は、
図8に示した積層体50の内部の一部を示している。具体的には、
図9は、第1のインダクタ用導体層661、第2のインダクタ用導体層551およびキャパシタ用導体層531と、これらの導体層を接続するスルーホールとを示している。
【0054】
以下、
図1に示したローパスフィルタ1の回路の構成要素と、
図3ないし
図7に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。第1のインダクタL1は、
図6(c)に示した第1のインダクタ用導体層661の第1の部分661aと、
図7(a)に示した第1のインダクタ用導体層671の第1の部分671aと、スルーホール66T1,66T5とによって構成されている。
【0055】
第2のインダクタL2は、
図6(c)に示した第1のインダクタ用導体層661の第2の部分661bと、
図7(a)に示した第1のインダクタ用導体層671の第2の部分671bと、スルーホール66T2,66T5とによって構成されている。
【0056】
第3のインダクタL3の第1のインダクタ部分L31は、
図4(b)に示した導体層551の第1の部分551aによって構成されている。第3のインダクタL3の第2のインダクタ部分L32は、
図4(b)に示した導体層551の第2の部分551bによって構成されている。第3のインダクタL3の第3のインダクタ部分L33は、
図4(b)ないし
図6(b)に示したスルーホール55T5,56T5,59T5,60T5,63T5,64T5,65T5によって構成されている。
【0057】
インダクタL4は、
図5(c)および
図6(a)に示したインダクタ用導体層631,641と、スルーホール63T1とによって構成されている。インダクタL5は、
図5(c)および
図6(a)に示したインダクタ用導体層632,642と、スルーホール63T2とによって構成されている。
【0058】
インダクタL6は、
図5(a)に示した導体層591と、
図3(b)ないし
図4(c)に示したスルーホール52T1,53T1,54T1,55T1,56T1とによって構成されている。インダクタL7は、
図5(a)に示した導体層592と、
図3(b)ないし
図4(c)に示したスルーホール52T2,53T2,54T2,55T2,56T2とによって構成されている。インダクタL8は、
図5(a)に示した導体層593と、
図3(b)ないし
図4(c)に示したスルーホール52T3,53T3,54T3,55T3,56T3とによって構成されている。インダクタL9は、
図5(a)に示した導体層594と、
図3(b)ないし
図4(c)に示したスルーホール52T4,53T4,54T4,55T4,56T4とによって構成されている。
【0059】
キャパシタC1は、
図3(b)および
図3(c)に示したキャパシタ用導体層521,531と、これらの導体層の間の誘電体層52とによって構成されている。
【0060】
キャパシタC2は、
図3(c)および
図4(a)に示したキャパシタ用導体層531,541と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。キャパシタC3は、
図3(c)および
図4(a)に示したキャパシタ用導体層531,542と、これらの導体層の間の誘電体層53とによって構成されている。
【0061】
キャパシタC4は、
図3(b)および
図4(a)に示したキャパシタ用導体層521,541と、これらの導体層の間の誘電体層52,53とによって構成されている。キャパシタC5は、
図3(b)および
図4(a)に示したキャパシタ用導体層521,542と、これらの導体層の間の誘電体層52,53とによって構成されている。
【0062】
キャパシタC6は、
図3(b)および
図5(a)に示したキャパシタ用導体層521および導体層591~594と、これらの導体層の間の誘電体層52~58とによって構成されている。
【0063】
次に、
図1ないし
図9を参照して、本実施の形態に係るローパスフィルタ1の構造上の特徴について説明する。積層体50の複数の導体層は、積層方向Tにおいて互いに異なる位置に配置された第1のインダクタ用導体層661、第2のインダクタ用導体層551およびキャパシタ用導体層531を含んでいる。第1のインダクタ用導体層661は、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2の各々の少なくとも一部を構成する。第2のインダクタ用導体層551は、第1のインダクタ部分L31の一部を構成する第1の部分551aと、第2のインダクタ部分L32の一部を構成する第2の部分551bとを含んでいる。キャパシタ用導体層531は、キャパシタC1~C3の各々の一部を構成する。
【0064】
積層体50は、第1のインダクタ用導体層661と第2のインダクタ用導体層551とを接続する少なくとも1つの第1のスルーホールを含んでいる。本実施の形態では、少なくとも1つの第1のスルーホールは、直列に接続されたスルーホール55T5,56T5,59T5,60T5,63T5,64T5,65T5である。
図9において、符号T5は、スルーホール55T5,56T5,59T5,60T5,63T5,64T5,65T5によって構成されたスルーホール列を示している。第1のインダクタ用導体層661と第2のインダクタ用導体層551は、スルーホール列T5によって接続されている。
【0065】
積層体50は、更に、第2のインダクタ用導体層551の第1の部分551aとキャパシタ用導体層531とを接続する少なくとも1つの第2のスルーホールと、第2のインダクタ用導体層551の第2の部分551bとキャパシタ用導体層531とを接続する少なくとも1つの第3のスルーホールとを含んでいる。本実施の形態では、少なくとも1つの第2のスルーホールは、直列に接続されたスルーホール53T6,54T6であり、少なくとも1つの第3のスルーホールは、直列に接続されたスルーホール53T7,54T7である。
図9において、符号T6は、スルーホール53T6,54T6によって構成されたスルーホール列を示し、符号T7は、スルーホール53T7,54T7によって構成されたスルーホール列を示している。第1の部分551aとキャパシタ用導体層531は、スルーホール列T6によって接続され、第2の部分551bとキャパシタ用導体層531は、スルーホール列T7によって接続されている。
【0066】
図4(b)において、符号55T5を付した円は、スルーホール55T5を示すと共に、第2のインダクタ用導体層551とスルーホール55T5との接続部分を示している。第2のインダクタ用導体層551は、積層方向Tに平行な一方向(例えばZ方向)から見て、第2のインダクタ用導体層551とスルーホール55T5との接続部分を中心とした回転対称形状を有している。すなわち、第2のインダクタ用導体層551は、Z方向から見て、上記接続部分を通り積層方向Tに平行な中心軸を中心として180°回転させたときに、自身と一致する形状を有している。また、第1の部分551aと第2の部分551bは、Z方向から見て、上記中心軸を中心として180°回転させたときに、互いに一致する形状を有している。
【0067】
第1の部分551aに接続されたスルーホール54T6と、第2の部分551bに接続されたスルーホール54T7は、Z方向から見て、第2のインダクタ用導体層551とスルーホール55T5との接続部分を中心として対称な位置に配置されている。具体的には、スルーホール54T6とスルーホール54T7は、上記接続部分を通り積層方向Tに平行な中心軸を中心として180°回転させたときに、互いに一致する位置に配置されている。更に、スルーホール54T6とスルーホール54T7は、上記接続部分を通り誘電体層55のパターン形成面に垂直な仮想の平面を中心として対称な位置に配置されている。
【0068】
また、スルーホール54T6に接続されたスルーホール53T6と、スルーホール54T7に接続されたスルーホール53T7も、スルーホール54T6,54T7と同様に、Z方向から見て、上記接続部分を中心として対称な位置に配置されている。従って、スルーホール列T6とスルーホール列T7は、上記接続部分を中心として対称な位置に配置されている。
【0069】
図6(c)において、符号66T5を付した円は、スルーホール66T5を示すと共に、第1のインダクタ用導体層661とスルーホール66T5との接続部分を示している。
図6(b)に示したスルーホール65T5と第1のインダクタ用導体層661との接続部分は、積層方向Tに平行な一方向(例えばZ方向)から見て、第1のインダクタ用導体層661とスルーホール66T5との接続部分(符号66T5を付した円)と一致する。第1のインダクタ用導体層661は、Z方向から見て、スルーホール65T5と第1のインダクタ用導体層661との接続部分を中心とした回転対称形状を有している。すなわち、第1のインダクタ用導体層661は、Z方向から見て、上記接続部分を通り積層方向Tに平行な中心軸を中心として180°回転させたときに、自身と一致する形状を有している。また、第1の部分661aと第2の部分661bは、Z方向から見て、上記中心軸を中心として180°回転させたときに、互いに一致する形状を有している。
【0070】
第1のインダクタ用導体層671の形状は、第1のインダクタ用導体層661の形状と同じである。従って、第1のインダクタ用導体層671は、第1のインダクタ用導体層661と同様の回転対称形状を有している。
【0071】
図8において、記号Cを付した直線は、少なくとも1つの第1のスルーホール、すなわちスルーホール55T5,56T5,59T5,60T5,63T5,64T5,65T5と交差し積層方向Tに平行な中心軸を示している。Z方向から見たときに、中心軸Cは、誘電体層51~68の各々の重心と一致する。第1のインダクタ用導体層661,671および第2のインダクタ用導体層551に限らず、積層体50に含まれる複数の導体層の各々は、Z方向から見て、中心軸Cを中心として180°回転させたときに、自身と一致する形状または他の導体層と一致する形状を有している。また、積層体50に含まれる複数のスルーホールの各々は、Z方向から見て、中心軸Cを中心として180°回転させたときに、自身と一致する位置または他のスルーホールと一致する位置に配置されている。
【0072】
図3(c)ないし
図4(b)に示したように、第2のインダクタ用導体層551とキャパシタ用導体層531との間には、キャパシタ用導体層541,542が介在している。Z方向から見て、第2のインダクタ用導体層551は、キャパシタ用導体層541,542の各々の一部と重なっている。
【0073】
次に、本実施の形態に係るローパスフィルタ1の作用および効果について説明する。本実施の形態に係るローパスフィルタ1では、第1および第2のインダクタL1,L2の各々の少なくとも一部を構成する第1のインダクタ用導体層661と、第1のインダクタ部分L31を構成する第1の部分551aと第2のインダクタ部分L32を構成する第2の部分551bとを含む第2のインダクタ用導体層551は、スルーホール55T5,56T5,59T5,60T5,63T5,64T5,65T5(スルーホール列T5)によって接続されている。第1の部分551aと、キャパシタC1~C3の各々の一部を構成するキャパシタ用導体層531は、スルーホール53T6,54T6(スルーホール列T6)によって接続されている。第2の部分551bとキャパシタ用導体層531は、スルーホール53T7,54T7(スルーホール列T7)によって接続されている。
【0074】
本実施の形態では、第2のインダクタ用導体層551の形状および長さを調整することによって、第3のインダクタL3のインダクタンスを調整することができる。これにより、本実施の形態によれば、阻止帯域における挿入損失の大きさを調整することができる。
【0075】
以下、第1ないし第3の比較例のローパスフィルタと比較しながら、本実施の形態に係るローパスフィルタ1の効果について説明する。始めに、第1の比較例のローパスフィルタについて説明する。第1の比較例のローパスフィルタの回路構成は、基本的には、本実施の形態に係るローパスフィルタ1の回路構成と同じである。ただし、第1の比較例のローパスフィルタでは、第3のインダクタL3は、並列に接続された2つのインダクタ部分を含んでいない。
【0076】
図10は、第1の比較例のローパスフィルタの積層体の内部の一部を示す斜視図である。第1の比較例のローパスフィルタの積層体には、本実施の形態における第2のインダクタ用導体層551、スルーホール列T5(スルーホール55T5,56T5,59T5,60T5,63T5,64T5,65T5)、スルーホール列T6(スルーホール53T6,54T6)およびスルーホール列T7(スルーホール53T7,54T7)の代わりに、第1のインダクタ用導体層661とキャパシタ用導体層531とを接続するスルーホール列T15が設けられている。スルーホール列T15は、複数のスルーホールが直列に接続されることによって構成されている。
【0077】
第1の比較例のローパスフィルタでは、第3のインダクタL3のインダクタンスは、スルーホール列T15の形状に依存する。積層体の大きさの制限や、第1のインダクタ用導体層661の配置の制限により、スルーホール列T15の形状は、導体層の形状に比べて十分に調整することができない。従って、第1の比較例では、第3のインダクタL3のインダクタンスを十分に調整することができない。これに対し、本実施の形態によれば、第2のインダクタ用導体層551によって、第3のインダクタL3のインダクタンスを十分に調整することができる。
【0078】
次に、第2の比較例のローパスフィルタについて説明する。第2の比較例のローパスフィルタの回路構成は、第1の比較例のローパスフィルタの回路構成と同じである。また、
図11は、第2の比較例のローパスフィルタの積層体の内部の一部を示す斜視図である。第2の比較例のローパスフィルタの積層体には、本実施の形態における第2のインダクタ用導体層551およびスルーホール列T7(スルーホール53T7,54T7)の代わりに、誘電体層55のパターン形成面に形成された第2のインダクタ用導体層552が設けられている。第1のインダクタ用導体層661と第2のインダクタ用導体層552は、スルーホール列T5によって接続されている。第2のインダクタ用導体層552とキャパシタ用導体層531は、スルーホール列T6によって接続されている。
【0079】
第2の比較例のローパスフィルタでは、第2のインダクタ用導体層552の形状および長さによって、第3のインダクタL3のインダクタンスを調整することができる。しかし、第2の比較例では、スルーホール列T6によって、第3のインダクタL3とキャパシタ用導体層531が接続されている。スルーホール列T6は、キャパシタ用導体層531の重心から離れた位置且つキャパシタC2が形成される位置の近傍に接続されている。第2のインダクタ用導体層552によって第3のインダクタL3のインダクタンスを調整しようとすると、スルーホール列T6に近い位置において形成されるキャパシタC2のキャパシタンスのずれ量とスルーホール列T6から遠い位置において形成されるキャパシタC3のキャパシタンスのずれ量が異なってしまい、その結果、ローパスフィルタの特性が所望の特性からずれてしまう。そのため、第2の比較例では、ローパスフィルタの特性の調整が難しくなる。
【0080】
これに対し、本実施の形態では、第2のインダクタ用導体層551とキャパシタ用導体層531は、2つのスルーホール列T6,T7によって接続されている。本実施の形態では特に、第2のインダクタ用導体層551は、前述のように対称な形状を有すると共に、2つのスルーホール列T6,T7は、前述のように対称な位置に配置されている。これにより、本実施の形態によれば、第2のインダクタ用導体層551によって第3のインダクタL3のインダクタンスを調整したときに、スルーホール列T6に近い位置において形成されるキャパシタC2のキャパシタンスのずれ量とスルーホール列T7に近い位置において形成されるキャパシタC3のキャパシタンスのずれ量が異なることを抑制することができる。
【0081】
ところで、前述のように、第1のインダクタ用導体層661の第1の部分661aは、第1のインダクタL1の一部を構成し、第1のインダクタ用導体層671の第2の部分671bは、第2のインダクタL2の一部を構成する。本実施の形態では、第2のインダクタ用導体層551の第1の部分551aが第1のインダクタ部分L31を構成し、第2のインダクタ用導体層551の第2の部分551bが第2のインダクタ部分L32を構成する。第2の比較例では、第2のインダクタ用導体層552が第3のインダクタL3の一部を構成する。
【0082】
図11に示したように、第2の比較例では、第2のインダクタ用導体層552は、第1の部分661a側に偏って配置されている。そのため、第2の比較例では、第1および第3のインダクタL1,L3間の磁気結合の大きさと、第2および第3のインダクタL2,L3間の磁気結合の大きさが互いに異なってしまう。また、第2のインダクタ用導体層552によって第3のインダクタL3のインダクタンスを調整しようとすると、第1および第3のインダクタL1,L3間の磁気結合の大きさのずれ量と、第2および第3のインダクタL2,L3間の磁気結合の大きさのずれ量が異なってしまう。これらのことから、第2の比較例では、ローパスフィルタの特性の調整が難しくなる。
【0083】
これに対し、本実施の形態では、第1の部分661a側には第1の部分551aが配置され、第2の部分661b側には第2の部分551bが配置されており、第2のインダクタ用導体層551は、第1の部分661aと第2の部分661bの一方の側に偏って配置されていない。これにより、本実施の形態によれば、第2の比較例に比べて、ローパスフィルタ1の特性の調整が容易になる。
【0084】
次に、第3の比較例のローパスフィルタについて説明する。第3の比較例のローパスフィルタの回路構成は、第3の比較例のローパスフィルタの回路構成と同じである。また、
図12は、第3の比較例のローパスフィルタの積層体の内部の一部を示す斜視図である。第3の比較例のローパスフィルタの積層体には、本実施の形態における第2のインダクタ用導体層551、スルーホール列T6(スルーホール53T6,54T6)およびスルーホール列T7(スルーホール53T7,54T7)の代わりに、誘電体層54のパターン形成面に形成された第2のインダクタ用導体層543と、誘電体層55のパターン形成面に形成された第2のインダクタ用導体層553と、誘電体層53に形成されたスルーホール53T8と、誘電体層54に形成されたスルーホール54T8とが設けられている。第1のインダクタ用導体層661と第2のインダクタ用導体層553は、スルーホール列T5によって接続されている。第2のインダクタ用導体層553と第2のインダクタ用導体層543は、スルーホール54T8によって接続されている。第2のインダクタ用導体層543とキャパシタ用導体層531は、スルーホール53T8によって接続されている。スルーホール53T8は、キャパシタ用導体層531の重心に接続されている。
【0085】
第1および第2のインダクタL1,L2の各々は、積層方向Tに平行な方向の軸に巻回されたインダクタである。第3の比較例のローパスフィルタでは、第3のインダクタL3として、第2のインダクタ用導体層543,553によって、積層方向Tに平行な方向の軸に巻回されたインダクタが形成されている。第3の比較例では、第3のインダクタL3によって第1および第2のインダクタL1,L2が発生する磁界が妨げられてしまい、Q値が低下する。
【0086】
これに対し、本実施の形態では、第3のインダクタL3として、第3の比較例のように巻回されたインダクタを設けていない。これにより、本実施の形態によれば、Q値が低下することを防止することができる。
【0087】
以上のことから、本実施の形態によれば、ローパスフィルタ1の特性が悪化することを防止しながら、阻止帯域における挿入損失の大きさを十分に調整することができる。
【0088】
次に、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。誘電体層51~68を積層して積層体50を形成する際には、スルーホールによってキャパシタ用導体層531が押されることにより、キャパシタ用導体層531がわずかに変形する。キャパシタ用導体層531の変形量が大きくなると、キャパシタC1~C3の各々のキャパシタンスが、所望の値からずれてしまい、その結果、所望の特性を得ることができなくなるおそれがある。
【0089】
これに対し、本実施の形態では、キャパシタ用導体層531には、2つのスルーホール列T6,T7が接続されている。これにより、本実施の形態によれば、第1の比較例のローパスフィルタのように1つのスルーホール列がキャパシタ用導体層531に接続されている場合に比べて、キャパシタ用導体層531の変形量を抑制することがでる。その結果、本実施の形態によれば、キャパシタC1~C3の各々のキャパシタンスが、所望の値からずれることを抑制することができる。
【0090】
また、本実施の形態では、第2のインダクタ用導体層551とキャパシタ用導体層531との間には、第2のインダクタ用導体層551に接続されないキャパシタ用導体層541,542が介在している。本実施の形態によれば、上述のようにキャパシタ用導体層541,542を配置することにより、積層体50のZ方向の寸法を小さくすることができる。第1の部分1551aの第2端と第2の部分1551bの第2端は、互いに接続されている。
【0091】
[変形例]
次に、本実施の形態に係るローパスフィルタ1の第1および第2の変形例について説明する。始めに、
図13を参照して、第1の変形例について説明する。
図13は、第1の変形例の第2のインダクタ用導体層を示す説明図である。第1の変形例における積層体50は、
図4(b)に示した5層目の誘電体層55の代わりに、
図13に示した誘電体層155を含んでいる。誘電体層155のパターン形成面には、第2のインダクタ用導体層1551が形成されている。第2のインダクタ用導体層1551は、第1の部分1551aと第2の部分1551bとを含んでいる。第1および第2の部分1551a,1551bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分1551aの第1端と第2の部分1551bの第1端は、互いに接続されている。
図13では、第1の部分1551aと第2の部分1551bの境界を点線で示している。
【0092】
第1の変形例では、誘電体層54に形成されたスルーホール54T6(
図4(a)参照)は、第1の部分1551aの第2端の近傍部分に接続されている。また、第1の変形例では、誘電体層54に形成されたスルーホール54T7(
図4(a)参照)は、第2の部分1551bの第2端の近傍部分に接続されている。
【0093】
また、誘電体層155には、スルーホール155T1,155T2,155T3,155T4,155T5が形成されている。誘電体層54に形成されたスルーホール54T1~54T4(
図4(a)参照)は、それぞれ、スルーホール155T1~155T4に接続されている。スルーホール155T5は、第1の部分1551aと第2の部分1551bの境界およびその近傍において、第1の部分1551aと第2の部分1551bに接続されている。スルーホール155T1~155T5は、それぞれ、
図4(c)に示した誘電体層56に形成されたスルーホール56T1~56T5に接続されている。
【0094】
第1の部分1551aは、第3のインダクタL3の第1のインダクタ部分L31(
図1参照)を構成する。第2の部分1551bは、第3のインダクタL3の第2のインダクタ部分L32(
図1参照)を構成する。第2のインダクタ用導体層1551は、積層方向Tに平行な一方向(例えばZ方向)から見て、第2のインダクタ用導体層1551とスルーホール155T5との接続部分を通り積層方向Tに直交する対称軸を中心とした線対称形状を有している。
【0095】
次に、
図14を参照して、第2の変形例について説明する。
図14は、第2の変形例の第1のインダクタ用導体層を示す説明図である。第2の変形例における積層体50は、
図6(c)に示した16層目の誘電体層66の代わりに、
図14に示した誘電体層166を含んでいる。誘電体層166のパターン形成面には、第1のインダクタ用導体層1661が形成されている。第1のインダクタ用導体層1661は、第1の部分1661aと第2の部分1661bとを含んでいる。第1および第2の部分1661a,1661bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分1661aの第1端と第2の部分1661bの第1端は、互いに接続されている。
図14では、第1の部分1661aと第2の部分1661bの境界を点線で示している。
【0096】
また、誘電体層166には、スルーホール166T1,166T2,166T5が形成されている。スルーホール166T1は、第1の部分1661aの第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール166T2は、第2の部分1661bの第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール166T5は、第1の部分1661aと第2の部分1661bの境界およびその近傍において、第1の部分1661aと第2の部分1661bに接続されている。
【0097】
第2の変形例では、誘電体層65に形成されたスルーホール65T1(
図6(b)参照)が第1の部分1661aの第2端の近傍部分に接続されるように、積層体50が構成されている。例えば、導体層631,641(
図5(c)および
図6(a)参照)の形状を調整することによって、スルーホール65T1を第1の部分1661aの第2端の近傍部分に接続することができる。同様に、第2の変形例では、誘電体層65に形成されたスルーホール65T2(
図6(b)参照)が、第2の部分1661bの第2端の近傍部分に接続されるように、積層体50が構成されている。同様に、第2の変形例では、誘電体層65に形成されたスルーホール65T5(
図6(b)参照)が、第1の部分1661aと第2の部分1661bの境界およびその近傍において、第1の部分1661aと第2の部分1661bに接続されるように、積層体50が構成されている。
【0098】
図示しないが、第2の変形例における積層体50は、
図7(a)に示した17層目の誘電体層67の代わりに、第1のインダクタ用導体層1661と同じ形状の第1のインダクタ用導体層が形成された誘電体層を含んでいる。誘電体層166に形成されたスルーホール166T1は、図示しない第1のインダクタ用導体層の第1の部分の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層166に形成されたスルーホール166T2は、図示しない第1のインダクタ用導体層の第2の部分の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層166に形成されたスルーホール166T5は、図示しない第1のインダクタ用導体層の第1の部分と第2の部分の境界およびその近傍において、図示しない第1のインダクタ用導体層の第1の部分と第2の部分に接続されている。
【0099】
第1のインダクタ用導体層1661の第1の部分1661aと、図示しない第1のインダクタ用導体層の第1の部分は、第1のインダクタL1(
図1参照)を構成する。第1のインダクタ用導体層1661の第2の部分1661bと、図示しない第1のインダクタ用導体層の第2の部分は、第2のインダクタL2(
図1参照)を構成する。第1のインダクタ用導体層1661は、積層方向Tに平行な一方向(例えばZ方向)から見て、第1のインダクタ用導体層1661とスルーホール65T5との接続部分を通り積層方向Tに直交する対称軸を中心とした線対称形状を有している。第2の変形例では特に、上記対称軸は、
図14における上下方向に平行である。図示しない第1のインダクタ用導体層は、第1のインダクタ用導体層1661と同様の線対称形状を有している。
【0100】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るローパスフィルタ1の回路構成は、
図1を参照して説明した第1の実施の形態に係るローパスフィルタ1の回路構成と同じである。また、本実施の形態に係るローパスフィルタ1は、第1の実施の形態に係るローパスフィルタ1と同様に、
図2に示した積層体50および端子111~116を備えている。
【0101】
本実施の形態における積層体50は、第1の実施の形態における誘電体層51~68の代わりに、積層された17層の誘電体層を有している。以下、この17層の誘電体層を、下から順に1層目ないし17層目の誘電体層と呼ぶ。また、1層目ないし17層目の誘電体層を符号71~87で表す。
【0102】
図15(a)は、1層目の誘電体層71のパターン形成面を示している。誘電体層71には、導体層およびスルーホールは形成されていない。
【0103】
図15(b)は、2層目の誘電体層72のパターン形成面を示している。誘電体層72のパターン形成面には、キャパシタ用導体層721が形成されている。また、誘電体層72には、スルーホール72T1,72T2,72T3,72T4が形成されている。スルーホール72T1~72T4は、導体層721に接続されている。
【0104】
図15(c)は、3層目の誘電体層73のパターン形成面を示している。誘電体層73のパターン形成面には、キャパシタ用導体層731と、導体層732,733,734,735が形成されている。導体層732,733,734,735は、それぞれ、端子111,114,113,116(
図2参照)に接続されている。誘電体層72に形成されたスルーホール72T1~72T4は、それぞれ、導体層732~735に接続されている。また、誘電体層73には、スルーホール73T6,73T7が形成されている。スルーホール73T6,73T7は、導体層731に接続されている。
【0105】
図16(a)は、4層目の誘電体層74のパターン形成面を示している。誘電体層74のパターン形成面には、キャパシタ用導体層741,742が形成されている。導体層741は、端子112(
図2参照)に接続されている。導体層742は、端子115(
図2参照)に接続されている。また、誘電体層74には、スルーホール74T6,74T7が形成されている。誘電体層73に形成されたスルーホール73T6,73T7は、それぞれ、スルーホール74T6,74T7に接続されている。
【0106】
図16(b)は、5層目の誘電体層75のパターン形成面を示している。誘電体層75のパターン形成面には、第2のインダクタ用導体層751が形成されている。第2のインダクタ用導体層751は、第1の部分751aと第2の部分751bとを含んでいる。第1および第2の部分751a,751bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分751aの第1端と第2の部分751bの第1端は、互いに接続されている。
図16(b)では、第1の部分751aと第2の部分751bの境界を点線で示している。誘電体層74に形成されたスルーホール74T6は、第1の部分751aの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層74に形成されたスルーホール74T7は、第2の部分751bの第2端の近傍部分に接続されている。
【0107】
また、誘電体層75には、スルーホール75T5が形成されている。スルーホール75T5は、第1の部分751aと第2の部分751bの境界およびその近傍において、第1の部分751aと第2の部分751bに接続されている。
【0108】
図16(c)は、6層目ないし11層目の誘電体層76~81の各々のパターン形成面を示している。誘電体層76~81の各々には、スルーホール76T5が形成されている。誘電体層75に形成されたスルーホール75T5は、誘電体層76に形成されたスルーホール76T5に接続されている。また、誘電体層76~81では、上下に隣接するスルーホール76T5同士が互いに接続されている。
【0109】
図17(a)は、12層目の誘電体層82のパターン形成面を示している。誘電体層82のパターン形成面には、インダクタ用導体層821,822が形成されている。導体層821,822の各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。導体層821の第1端は、端子112(
図2参照)に接続されている。導体層822の第1端は、端子115(
図2参照)に接続されている。また、誘電体層82には、スルーホール82T1,82T2,82T5が形成されている。スルーホール82T1は、導体層821の第2端の近傍部分に接続されている。スルーホール82T2は、導体層822の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層81に形成されたスルーホール76T5は、スルーホール82T5に接続されている。
【0110】
図17(b)は、13層目の誘電体層83のパターン形成面を示している。誘電体層83のパターン形成面には、インダクタ用導体層831,832が形成されている。導体層831,832の各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。導体層831の第1端は、端子112(
図2参照)に接続されている。導体層832の第1端は、端子115(
図2参照)に接続されている。また、誘電体層83には、スルーホール83T1,83T2,83T5が形成されている。誘電体層82に形成されたスルーホール82T1と、スルーホール83T1は、導体層831の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層82に形成されたスルーホール82T2と、スルーホール83T2は、導体層832の第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層82に形成されたスルーホール82T5は、スルーホール83T5に接続されている。
【0111】
図17(c)は、14層目の誘電体層84のパターン形成面を示している。誘電体層84には、スルーホール84T1,84T2,84T5が形成されている。誘電体層83に形成されたスルーホール83T1,83T2,83T5は、それぞれ、スルーホール84T1,84T2,84T5に接続されている。
【0112】
図18(a)は、15層目の誘電体層85のパターン形成面を示している。誘電体層85のパターン形成面には、第1のインダクタ用導体層851が形成されている。第1のインダクタ用導体層851は、第1の部分851aと第2の部分851bとを含んでいる。第1および第2の部分851a,851bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分851aの第1端と第2の部分851bの第1端は、互いに接続されている。
図18(a)では、第1の部分851aと第2の部分851bの境界を点線で示している。
【0113】
また、誘電体層85には、スルーホール85T1,85T2,85T5が形成されている。誘電体層84に形成されたスルーホール84T1と、スルーホール85T1は、第1の部分851aの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層84に形成されたスルーホール84T2と、スルーホール85T2は、第2の部分851bの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層84に形成されたスルーホール84T5と、スルーホール85T5は、第1の部分851aと第2の部分851bの境界およびその近傍において、第1の部分851aと第2の部分851bに接続されている。
【0114】
図18(b)は、16層目の誘電体層86のパターン形成面を示している。誘電体層86のパターン形成面には、第1のインダクタ用導体層861が形成されている。第1のインダクタ用導体層861は、第1の部分861aと第2の部分861bとを含んでいる。第1および第2の部分861a,861bの各々は、互いに反対側に位置する第1端と第2端を有している。第1の部分861aの第2端と第2の部分861bの第2端は、互いに接続されている。
図18(b)では、第1の部分861aと第2の部分861bの境界を点線で示している。
【0115】
誘電体層85に形成されたスルーホール85T1は、第1の部分861aの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層85に形成されたスルーホール85T2は、第2の部分861bの第2端の近傍部分に接続されている。誘電体層85に形成されたスルーホール85T5は、第1の部分861aと第2の部分861bの境界およびその近傍において、第1の部分861aと第2の部分861bに接続されている。
【0116】
図18(c)は、17層目の誘電体層87のパターン形成面を示している。誘電体層87のパターン形成面には、導体層よりなるマーク871が形成されている。
【0117】
本実施の形態における積層体50(
図2参照)は、1層目の誘電体層71のパターン形成面が積層体50の底面50Aになり、17層目の誘電体層87のパターン形成面とは反対側の面が積層体50の上面50Bになるように、1層目ないし17層目の誘電体層71~87が積層されて構成される。
【0118】
図19は、1層目ないし17層目の誘電体層71~87が積層されて構成された積層体50の内部を示している。
図19に示したように、積層体50の内部では、
図15ないし
図18に示した複数の導体層と複数のスルーホールが積層されている。なお、
図19では、マーク871を省略している。また、
図20は、
図19に示した積層体50の内部の一部を示している。具体的には、
図20は、第1のインダクタ用導体層851、第2のインダクタ用導体層751およびキャパシタ用導体層731と、これらの導体層を接続するスルーホールとを示している。
【0119】
以下、
図1に示したローパスフィルタ1の回路の構成要素と、
図15ないし
図18に示した積層体50の内部の構成要素との対応関係について説明する。第1のインダクタL1は、
図18(a)に示した第1のインダクタ用導体層851の第1の部分851aと、
図18(b)に示した第1のインダクタ用導体層861の第1の部分861aと、スルーホール85T1,85T5とによって構成されている。
【0120】
第2のインダクタL2は、
図18(a)に示した第1のインダクタ用導体層851の第2の部分851bと、
図18(b)に示した第1のインダクタ用導体層861の第2の部分861bと、スルーホール85T2,85T5とによって構成されている。
【0121】
第3のインダクタL3の第1のインダクタ部分L31は、
図16(b)に示した導体層751の第1の部分751aによって構成されている。第3のインダクタL3の第2のインダクタ部分L32は、
図16(b)に示した導体層751の第2の部分751bによって構成されている。第3のインダクタL3の第3のインダクタ部分L33は、
図16(b)ないし
図17(c)に示したスルーホール75T5,76T5,82T5,83T5,84T5によって構成されている。
【0122】
インダクタL4は、
図17(a)および
図17(b)に示したインダクタ用導体層821,831と、スルーホール82T1とによって構成されている。インダクタL5は、
図17(a)および
図17(b)に示したインダクタ用導体層822,832と、スルーホール82T2とによって構成されている。
【0123】
インダクタL6は、
図15(c)に示した導体層732と、
図15(b)に示したスルーホール72T1とによって構成されている。インダクタL7は、
図15(c)に示した導体層733と、
図15(b)に示したスルーホール72T2とによって構成されている。インダクタL8は、
図15(c)に示した導体層734と、
図15(b)に示したスルーホール72T3とによって構成されている。インダクタL9は、
図15(c)に示した導体層735と、
図15(b)に示したスルーホール72T4とによって構成されている。
【0124】
キャパシタC1は、
図15(b)および
図15(c)に示したキャパシタ用導体層721,731と、これらの導体層の間の誘電体層72とによって構成されている。
【0125】
キャパシタC2は、
図15(c)および
図16(a)に示したキャパシタ用導体層731,741と、これらの導体層の間の誘電体層73とによって構成されている。キャパシタC3は、
図15(c)および
図16(a)に示したキャパシタ用導体層731,742と、これらの導体層の間の誘電体層73とによって構成されている。
【0126】
キャパシタC4は、
図15(b)および
図16(a)に示したキャパシタ用導体層721,741と、これらの導体層の間の誘電体層72,73とによって構成されている。キャパシタC5は、
図15(b)および
図16(a)に示したキャパシタ用導体層721,742と、これらの導体層の間の誘電体層72,73とによって構成されている。
【0127】
キャパシタC6は、
図15(b)および
図15(c)に示したキャパシタ用導体層721および導体層732~735と、これらの導体層の間の誘電体層72とによって構成されている。
【0128】
次に、
図15ないし
図20を参照して、本実施の形態に係るローパスフィルタ1の構造上の特徴について説明する。積層体50の複数の導体層は、積層方向Tにおいて互いに異なる位置に配置された第1のインダクタ用導体層851、第2のインダクタ用導体層751およびキャパシタ用導体層731を含んでいる。第1のインダクタ用導体層851は、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2の各々の少なくとも一部を構成する。第2のインダクタ用導体層751は、第1のインダクタ部分L31の一部を構成する第1の部分751aと、第2のインダクタ部分L32の一部を構成する第2の部分751bとを含んでいる。キャパシタ用導体層731は、キャパシタC1~C3の各々の一部を構成する。
【0129】
第1のインダクタ用導体層851と第2のインダクタ用導体層751は、直列に接続されたスルーホール75T5,76T5,82T5,83T5,84T5(第1のスルーホール)によって構成されたスルーホール列T25によって接続されている。第1の部分751aとキャパシタ用導体層731は、直列に接続されたスルーホール73T6,74T6(第2のスルーホール)によって構成されたスルーホール列T26によって接続されている。第2の部分751bとキャパシタ用導体層731は、直列に接続されたスルーホール73T7,74T7(第3のスルーホール)によって構成されたスルーホール列T27によって接続されている。
【0130】
第2のインダクタ用導体層751は、積層方向Tに平行な一方向(例えばZ方向)から見て、第2のインダクタ用導体層751とスルーホール75T5との接続部分を通り積層方向Tに平行な中心軸を中心として180°回転させたときに、自身と一致する形状を有している。また、第1の部分751aと第2の部分751bは、Z方向から見て、上記中心軸を中心として180°回転させたときに、互いに一致する形状を有している。スルーホール列T26とスルーホール列T27は、上記接続部分を中心として対称な位置に配置されている。
【0131】
第1のインダクタ用導体層851は、Z方向から見て、スルーホール84T5と第1のインダクタ用導体層851との接続部分を通り積層方向Tに平行な中心軸を中心として180°回転させたときに、自身と一致する形状を有している。また、第1の部分851aと第2の部分851bは、Z方向から見て、上記中心軸を中心として180°回転させたときに、互いに一致する形状を有している。
【0132】
第1のインダクタ用導体層861の形状は、第1のインダクタ用導体層851の形状と同じである。従って、第1のインダクタ用導体層861は、第1のインダクタ用導体層851と同様の回転対称形状を有している。
【0133】
図19において、記号Cを付した直線は、スルーホール75T5,76T5,82T5,83T5,84T5(第1のスルーホール)と交差し積層方向Tに平行な中心軸を示している。Z方向から見たときに、中心軸Cは、誘電体層71~87の各々の重心と一致する。第1のインダクタ用導体層851,861および第2のインダクタ用導体層751に限らず、積層体50に含まれる複数の導体層の各々は、Z方向から見て、中心軸Cを中心として180°回転させたときに、自身と一致する形状または他の導体層と一致する形状を有している。また、積層体50に含まれる複数のスルーホールの各々は、Z方向から見て、中心軸Cを中心として180°回転させたときに、自身と一致する位置または他のスルーホールと一致する位置に配置されている。
【0134】
図15(c)ないし
図16(b)に示したように、第2のインダクタ用導体層751とキャパシタ用導体層731との間には、キャパシタ用導体層741,742が介在している。Z方向から見て、第2のインダクタ用導体層751は、キャパシタ用導体層741,742の各々の一部と重なっている。
【0135】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0136】
[シミュレーション]
次に、シミュレーションによって求めた第1の実施の形態に係るローパスフィルタ1と第2の実施の形態に係るローパスフィルタ1の各々特性の一例について説明する。シミュレーションでは、第1のモデルと第2のモデルを用いた。第1のモデルは、第1の実施の形態に係るローパスフィルタ1に対応するモデルである。第2のモデルは、第2の実施の形態に係るローパスフィルタ1に対応するモデルである。
【0137】
図21は、第1および第2のモデルの各々の通過減衰特性を示す特性図である。
図22は、第1および第2のモデルの各々の挿入損失を示す特性図である。
図23は、第1および第2のモデルの各々の第1の入出力ポート2(
図1参照)の反射損失を示す特性図である。
図24は、第1および第2のモデルの各々の第2の入出力ポート3(
図1参照)の反射損失を示す特性図である。
図21ないし
図24において、横軸は周波数を示している。
図21の縦軸は減衰量を示している。
図22の縦軸は挿入損失を示している。
図23および
図24の各々の縦軸は反射損失を示している。
【0138】
図21において、符号91を付した曲線は、第1のモデルの通過減衰特性を示し、符号92を付した曲線は、第2のモデルの通過減衰特性を示している。
図22において、符号93を付した曲線は、第1のモデルの挿入損失を示し、符号94を付した曲線は、第2のモデルの挿入損失を示している。
図23において、符号95を付した曲線は、第1のモデルの反射損失を示し、符号96を付した曲線は、第2のモデルの反射損失を示している。
図24において、符号97を付した曲線は、第1のモデルの反射損失を示し、符号98を付した曲線は、第2のモデルの反射損失を示している。
【0139】
図21に示したように、第1のモデルと第2のモデルの各々において、遮断周波数近傍の阻止帯域に、2つの減衰極が表れている。この2つの減衰極の周波数は、主に、第3のインダクタL3によって調整される。第1のモデルと第2のモデルでは、第3のインダクタL3の第1および第2のインダクタ部分L31,L32を構成する第2のインダクタ用導体層の形状が、互いに異なっている。シミュレーションの結果から、第2のインダクタ用導体層の形状を調整することによって、減衰極を調整できると共に、阻止帯域における挿入損失を調整することができることが分かる。
【0140】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、本発明の積層型ローパスフィルタの構成、ならびに、インダクタ用導体層およびキャパシタ用導体層の形状は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
【符号の説明】
【0141】
1…ローパスフィルタ、2…第1の入出力ポート、3…第2の入出力ポート、50…積層体、50A…底面、50B…上面、50C~50F…側面、51~68…誘電体層、531…キャパシタ用導体層、551…第2のインダクタ用導体層、551a…第1の部分、551b…第2の部分、661,671…第1のインダクタ用導体層、C1~C6…キャパシタ、L1…第1のインダクタ、L2…第2のインダクタ、L3…第3のインダクタ、L31…第1のインダクタ部分、L32…第2のインダクタ部分、L33…第3のインダクタ部分、L4~L9…インダクタ。