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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147562
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ガスデマンド監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20220101AFI20220929BHJP
   G01F 3/22 20060101ALI20220929BHJP
   G01F 15/075 20060101ALI20220929BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20220929BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20220929BHJP
【FI】
G01F1/00 G
G01F3/22 Z
G01F15/075
F23N5/24 101A
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048859
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広田 和真
【テーマコード(参考)】
2F030
2F031
5L049
【Fターム(参考)】
2F030CB00
2F030CC13
2F030CE09
2F030CE25
2F031AF04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】ガス積算値が契約デマンド値を超える可能性の監視を、特に必要となる時点から精度良く行うことができるガスデマンド監視装置を提供する。
【解決手段】ガスデマンド監視装置1は、算出部2、設定部3及び逐次監視部4を備える。算出部2は、ガスメータ61から送られるガス流量値Qを積算してガス積算値Qaを算出するよう構成されている。設定部3には、デマンド時限の経過時点よりも所定時間前の監視開始時点tsにおける、ガス積算値Qaの制限値としての監視閾値dが設定されるとともに、監視開始時点tsからデマンド時限の経過時点までの監視閾値dが逐次高くなるよう設定されている。逐次監視部4は、監視開始時点tsからデマンド時限の経過時点までの間の所定の時間間隔ごとに、ガス積算値Qaが監視閾値dを超えていないかを逐次監視するよう構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスメータから送られるガス流量値を積算してガス積算値を算出する算出部と、
規定時間間隔ごとのデマンド時限の経過時点よりも所定時間前の監視開始時点における、前記ガス積算値の制限値としての監視閾値が設定されるとともに、前記監視閾値が前記監視開始時点から前記デマンド時限の経過時点までの間において逐次高くなるよう設定された設定部と、
前記監視開始時点から前記デマンド時限の経過時点までの間において、所定の時間間隔ごとに前記ガス積算値が前記監視閾値を超えていないかを逐次監視する逐次監視部と、を備えるガスデマンド監視装置。
【請求項2】
前記設定部における前記監視閾値は、1段目閾値と、前記1段目閾値よりも所定値だけ高い2段目閾値との2段階に設定されており、
前記1段目閾値及び前記2段目閾値は、前記監視開始時点から前記デマンド時限の経過時点までの間において逐次高くなるよう設定されており、
前記逐次監視部は、前記ガス積算値が前記1段目閾値を超えていないかと前記2段目閾値を超えていないかを、逐次監視するよう構成されている、請求項1に記載のガスデマンド監視装置。
【請求項3】
前記設定部には、前記デマンド時限におけるガスの最大使用可能量を示す契約デマンド値よりも低い固定監視閾値が設定されており、
前記デマンド時限内の所定の時間間隔ごとに、前記ガス積算値が前記固定監視閾値を超えていないかを逐次監視するデマンド監視部をさらに備える請求項1又は2に記載のガスデマンド監視装置。
【請求項4】
前記設定部における前記固定監視閾値は、1段目固定閾値と、前記1段目固定閾値よりも所定値だけ高い2段目固定閾値との2段階に設定されており、
前記デマンド監視部は、前記ガス積算値が前記1段目固定閾値を超えていないかと前記2段目固定閾値を超えていないかを、逐次監視するよう構成されている、請求項3に記載のガスデマンド監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスデマンド監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの基本料金は、単位時間当たりに使用できるガスの最大使用量によって決まる。需要家におけるガスの使用量が、単位時間当たりに使用できるガスの最大使用量を超えていないかを監視するためにガスデマンド監視装置が用いられる。ガスデマンド監視装置は、ガスメータから送られるガス流量値を積算したガス積算値が、規定時間間隔ごとのデマンド時限における契約デマンド値を超えていないかを監視する。
【0003】
例えば、特許文献1のガスデマンド監視装置においては、デマンド時限を複数のタイムゾーンに区分し、特定のタイムゾーンにおいて所定時間毎に警報条件及び警報解除条件の成立を監視することが記載されている。そして、ガスデマンド監視装置においては、警報条件が成立した後に警報解除条件が成立しないまま所定の猶予時間が経過したときには、デマンド警報の表示を開始する。この構成により、消費者のガス消費傾向に適合したタイミングでデマンド警報を発するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-90159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
需要家におけるガスの使用量を示す、デマンド時限内のガス積算値が、契約デマンド値を超えないかの監視は、ガス流量値の積算を開始してからの経過時間がデマンド時限の時点に近くなる、デマンド時限内の後半以降に特に重要になる。デマンド時限内の前半においては、ガス積算値が契約デマンド値に到達する可能性は低いためである。
【0006】
しかし、特許文献1のガスデマンド監視装置においては、デマンド時限内の前半及び後半に関わりなく、デマンド時限内の特定のタイムゾーンにおいて警報条件が成立しているか否かを監視している。そのため、ガス積算値が契約デマンド値を超える可能性を、より適切に監視するためには、更なる工夫が必要とされる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、ガス積算値が契約デマンド値を超える可能性の監視を、特に必要となる時点から精度良く行うことができるガスデマンド監視装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
ガスメータから送られるガス流量値を積算してガス積算値を算出する算出部と、
規定時間間隔ごとのデマンド時限の経過時点よりも所定時間前の監視開始時点における、前記ガス積算値の制限値としての監視閾値が設定されるとともに、前記監視閾値が前記監視開始時点から前記デマンド時限の経過時点までの間において逐次高くなるよう設定された設定部と、
前記監視開始時点から前記デマンド時限の経過時点までの間において、所定の時間間隔ごとに前記ガス積算値が前記監視閾値を超えていないかを逐次監視する逐次監視部と、を備えるガスデマンド監視装置にある。
【発明の効果】
【0009】
前記一態様のガスデマンド監視装置の設定部においては、デマンド時限の経過時点よりも所定時間前の監視開始時点における、ガス積算値の制限値としての監視閾値が、初期の監視閾値として設定される。初期の監視閾値は、例えば、需要家におけるガスの使用状況を考慮して、適宜定められる。
【0010】
また、監視閾値は、監視開始時点からデマンド時限の経過時点までの間に逐次高くなるよう設定される。そして、逐次監視部によって、監視開始時点からデマンド時限の経過時点までの間の所定の時間間隔ごとに、ガス積算値が監視閾値を超えていないかが逐次監視される。このとき、逐次監視部が監視開始時点から監視を開始することにより、例えば、デマンド時限内の後半の適宜時点から監視を開始することができる。これにより、ガス積算値が契約デマンド値を超える可能性の監視が特に必要となる時点から監視を開始することができ、ガス積算値を適切に監視することができる。また、監視閾値が監視開始時点からデマンド時限の経過時点までの間に逐次高くなることにより、ガス積算値が契約デマンド値を超える可能性の監視の精度を高くすることができる。
【0011】
それ故、前記一態様のガスデマンド監視装置によれば、ガス積算値が契約デマンド値を超える可能性の監視を、特に必要となる時点から精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1にかかる、ガスデマンド監視装置を示す説明図である。
図2図2は、実施形態1にかかる、ガスデマンド監視装置におけるガス積算値の推移及び監視閾値を示すグラフである。
図3図3は、実施形態1にかかる、ガスデマンド監視装置による監視方法を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態2にかかる、ガスデマンド監視装置を示す説明図である。
図5図5は、実施形態2にかかる、ガスデマンド監視装置による監視方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述したガスデマンド監視装置にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のガスデマンド監視装置1は、図1に示すように、算出部2、設定部3及び逐次監視部4を備える。算出部2は、ガスメータ61から送られるガス流量値Qを積算してガス積算値Qaを算出するよう構成されている。
【0014】
図2に示すように、設定部3には、デマンド時限tgの経過時点よりも所定時間前の監視開始時点tsにおける、ガス積算値Qaの制限値としての監視閾値dが設定されるとともに、監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの監視閾値dが逐次高くなるよう設定されている。逐次監視部4は、監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの間の所定の時間間隔ごとに、ガス積算値Qaが監視閾値dを超えていないかを逐次監視するよう構成されている。
【0015】
以下に、本形態のガスデマンド監視装置1について詳説する。
(ガスデマンド監視装置1)
図1に示すように、ガスデマンド監視装置1は、業務用、産業用等として用いられ、工場、施設、集合住宅、病院、ビル、店舗等の種々の建物における、単位時間当たりのガスの最大使用量を監視するために用いられる。ガスは、導管によって建物に供給される都市ガスである。ガスデマンド監視装置1は、コンピュータ端末11によって構成されており、ガスメータ61に接続されたパルスセンサ62から送られるガス流量値Qを積算処理して、ガス積算値Qaを監視する。
【0016】
コンピュータ端末11は、種々の回線を介して、ガス会社等が利用するクラウドコンピュータ7に接続されている。コンピュータ端末11において情報収集されるガス積算値Qa、ガス積算値Qaが監視閾値dを超えたこと等のデータは、クラウドコンピュータ7に送信してもよい。クラウドコンピュータ7においては、需要家における契約デマンド値D等の管理が行われる。
【0017】
(ガス使用設備6)
図1に示すように、ガスの需要家には、例えば、工場を運営する企業等があり、工場には、ガス使用設備6として、コージェネレーション装置、ボイラ、その他のガス機器等がある。ガスメータ61は、ガス使用設備6のガス供給配管に配置される。
【0018】
(ガスメータ61)
図1に示すように、ガスメータ61は、ガス使用設備6に供給されるガスの流量を検出し、ガスの流量に応じたパルス信号を出力するものである。ガスメータ61のパルス信号は、パルスセンサ62においてガス流量値Qに変換されて、コンピュータ端末11に送られる。各需要家のガス使用設備6へのガスの導管又はガスメータ61には、ガスの流量を絞ることができる制御バルブが設けてあってもよい。
【0019】
(監視機器63)
図1に示すように、コンピュータ端末11には、需要家に注意を喚起する種々の監視機器63として、需要家がガス積算値Qaを視認するための表示機器、需要家に警報を発する警報機器等を設けてもよい。表示機器は、ガス積算値Qa、契約デマンド値D等を常時表示し、ガス積算値Qaの表示による警報を発する構成とすればよい。また、表示機器は、モニター、表示灯、回転灯等とすればよい。警報機器は、逐次監視部4による監視結果を受けて、需要家に警報可能な構成とすればよい。
【0020】
(算出部2)
図1に示すように、算出部2は、デマンド時限tgごとに、ガスメータ61から送られるガス流量値Qを積算してガス積算値Qaを算出する。算出部2は、コンピュータ端末11に構築されている。デマンド時限tgは1時間として設定されている。デマンド時限tgが経過するごとに、ガス積算値Qaはゼロにリセットされる。
【0021】
(設定部3)
図1及び図2に示すように、設定部3においては、ガス会社と需要家との間の契約によって決められた契約デマンド値Dが設定されている。契約デマンド値Dは、デマンド時限tgにおけるガスの最大使用可能量を示し、需要家におけるガスの基本料金を決定するために用いられる。需要家におけるガスの料金は、基本料金と使用量に基づく料金との合計となる。
【0022】
設定部3は、コンピュータ端末11のメモリを利用して構築されている。設定部3においては、需要家からの入力を受けて、逐次監視部4による逐次監視を開始する、デマンド時限tgの経過時点よりも所定時間前の監視開始時点tsが設定される。本形態の監視開始時点tsは、デマンド時限tg内の後半(30分以降)における特定時点とする。
【0023】
図2に示すように、デマンド時限tgの経過時点における監視閾値dは、デマンド監視閾値dgといい、契約デマンド値Dよりも若干小さな値になるようにする。デマンド監視閾値dgは、例えば、契約デマンド値Dの90~99%の値として設定してもよい。設定部3においては、逐次監視部4による逐次監視を開始するときの初期の監視閾値dsと、監視閾値dを段階的に逐次高くする上昇幅Δdとが設定される。
【0024】
上昇幅Δdは、初期の監視閾値dsが、所定の時間間隔である監視周期s1ごとに段階的に増加して、デマンド時限tgの経過時点においてデマンド監視閾値dgになるように決定する。監視周期s1は、監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの間において等間隔に設定される。監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの監視時間を、監視周期s1によって除算した値が、逐次監視部4によってガス積算値Qaの監視が行われる監視回数となる。上昇幅Δdは、デマンド監視閾値dgから初期の監視閾値dsを差し引いた差分値を監視回数によって除算した値となる。
【0025】
初期の監視閾値ds及び監視周期s1は、需要家によって適宜設定することが可能である。初期の監視閾値dsは、監視開始時点ts、デマンド時限(1時間)tg、デマンド監視閾値dgを用いて、ds=ts/tg×dg±0.1×dgとして求めてもよい。
【0026】
本形態においては、図2に示すように、一例として、ガス流量値Qの積算を開始する積算開始時点(0分)から45分が経過した時点を監視開始時点tsとし、監視周期s1は1分とする。そして、監視回数は16回とする。上昇幅Δdは、デマンド監視閾値dgから初期の監視閾値dsを差し引いた差分値を15で除算した値となる。
【0027】
図2に示すように、本形態の設定部3における監視閾値dは、1段目閾値d1と、1段目閾値d1よりも所定値だけ高い2段目閾値dとの2段階に設定されている。1段目閾値d1及び2段目閾値dは、警告、ガスの流量縮小等の種々の用途に用いるために設定すればよい。監視閾値dを2段階に設定することにより、需要家に注意を喚起したい水準に応じて、警報等の仕方を柔軟に変更することができる。
【0028】
本形態の設定部3においては、監視閾値dは、2段目閾値dとして用い、1段目閾値d1は、監視閾値dよりも所定値だけ低い予備監視閾値dとして用いる。1段目閾値d1は、需要家に警報を発する前の予備段階の注意喚起のために、ガス積算値Qaが2段目閾値dに到達する前の閾値として用いる。1段目閾値d1は、2段目閾値dよりも所定値だけ低い値として、2段目閾値dと同様にして、監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの間において、監視周期s1ごとに段階的に逐次高くなる値として設定される。デマンド監視閾値dgは、1段目閾値d1及び2段目閾値dのそれぞれについて設定されている。
【0029】
(逐次監視部4)
図1及び図2に示すように、逐次監視部4は、ガス積算値Qaが契約デマンド値Dを超える可能性を事前に監視するために、デマンド時限tg内の後半時点からデマンド時限tgの経過時点までガス積算値Qaを監視し、需要家に注意を喚起するものである。逐次監視部4は、監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの間の監視周期s1ごとに、ガス積算値Qaが、監視周期s1ごとに逐次高くなる監視閾値dを超えていないかを逐次監視する。逐次監視部4は、コンピュータ端末11に構築されている。
【0030】
本形態の逐次監視部4は、ガス積算値Qaが1段目閾値d1を超えていないかと2段目閾値dを超えていないかを、逐次監視するよう構成されている。逐次監視部4は、例えば、ガス積算値Qaが1段目閾値d1を超えたときに、警報機器又は表示機器によって需要家に警報を発するよう構成してもよい。また、逐次監視部4は、例えば、ガス積算値Qaが2段目閾値dを超えたときに、制御バルブによってガス使用設備6のガス供給配管におけるガスの流量を絞るよう構成してもよい。また、逐次監視部4は、例えば、ガス積算値Qaが2段目閾値dを超えたときに、ガス使用設備6の運転を中止する指令を発信するようにしてもよい。
【0031】
図2においては、積算開始時点(0分)からの経過時間が50分の時点において、ガス積算値Qaが1段目閾値d1及び2段目閾値dを超えている。この場合には、経過時間が50分の時点において、逐次監視部4によって需要家に注意が喚起される。
【0032】
(時間計測部5)
図1に示すように、ガスデマンド監視装置1は、ガス流量値Qの積算を開始する積算開始時点(0分)からの経過時間を計測する時間計測部5を備える。逐次監視部4は、時間計測部5による積算開始時点が監視開始時点ts以降になったときには、ガス積算値Qaの逐次監視を開始する。時間計測部5は、契約デマンド時限tgとしての1時間が経過した時には、経過時間(計測時間)をゼロにリセットする。時間計測部5は、コンピュータ端末11に構築されている。
【0033】
(監視方法)
以下に、ガスデマンド監視装置1によるガス積算値Qaの監視方法の一例を、図3のフローチャートを参照して示す。
ガスデマンド監視装置1においては、ガスメータ61によってガスの流量が測定され、算出部2によって、ガスメータ61から送られるガス流量値Qが積算されて、ガス積算値Qaの算出が開始される(ステップS101)。また、時間計測部5によって、ガス流量値Qの積算が開始される積算開始時点(0分)からの経過時間の計測が開始される(ステップS102)。
【0034】
次いで、逐次監視部4によって、経過時間が監視開始時点tsになったか否かが判定される(ステップS103)。経過時間が監視開始時点tsになるまでは、ガス積算値Qaの算出が繰り返される。次いで、経過時間が監視開始時点tsになったときには、逐次監視部4によって、ガス積算値Qaが監視閾値dとしての1段目閾値d1及び2段目閾値dのそれぞれを超えていないかの判定がなされる(ステップS104)。
【0035】
ガス積算値Qaが1段目閾値d1を超えている場合には、逐次監視部4は、監視機器63によって需要家に注意を喚起する(ステップS105)。また、ガス積算値Qaが2段目閾値dを超えている場合には、逐次監視部4は、監視機器63における、1段目閾値d1の場合とは異なる方法によって需要家に注意を喚起する(ステップS105)。一方、ガス積算値Qaが1段目閾値d1以下である場合には、監視機器63による需要家への注意の喚起は行われない。
【0036】
次いで、設定部3によって、監視閾値dが上昇幅Δdの分だけ高く変更される(ステップS106)。次いで、ガス積算値Qaの算出(ステップS107)及び経過時間の計測(ステップS108)が、時間計測部5による経過時間が監視周期s1だけ経過するまで継続される(ステップS109)。次いで、時間計測部5による経過時間が監視周期s1になったときには、経過時間がデマンド時限tgになったか否かが判定される(ステップS110)。
【0037】
経過時間がデマンド時限tgになっていない場合には、逐次監視部4によって、ガス積算値Qaが監視閾値dとしての1段目閾値d1及び2段目閾値dのそれぞれを超えていないかの判定が再びなされる(ステップS104)。そして、経過時間が監視周期s1を経過するごとに、S104~S110が繰り返し行われて、ガス積算値Qaが、段階的に高くなった監視閾値dを超えているかが判定され、監視機器63によって適宜、需要家に注意が喚起される。
【0038】
その後、ステップS110において、経過時間がデマンド時限tgになった場合には、ガス積算値Qa及び経過時間がゼロにリセットされる(ステップS111)。そして、デマンド時限tgごとに、ステップS101~S111が繰り返し行われる。なお、適宜タイミングで監視停止入力がなされたときには、逐次監視部4によるガス積算値Qaの監視が停止される。
【0039】
ステップS105において、一旦、注意の喚起がなされた後には、同一のデマンド時限tg内においては注意を喚起する状態を維持してもよい。これにより、同一のデマンド時限tg内において、注意の喚起と喚起の解除とが繰り返し行われることを防ぐことができる。
【0040】
また、ステップS104において、ガス積算値Qaが監視閾値dを超えた後には、所定の猶予期間が経過するまで、ガス積算値Qaが監視閾値dを超えた状態が維持されている場合に限って、需要者に注意を喚起してもよい。
【0041】
(作用効果)
本形態のガスデマンド監視装置1の設定部3においては、デマンド時限tgの経過時点よりも所定時間前の監視開始時点tsにおける、ガス積算値Qaの制限値としての1段目閾値d1及び2段目閾値dが、初期の監視閾値dsとして設定される。初期の1段目閾値d1及び2段目閾値dは、例えば、需要家におけるガスの使用状況を考慮して、適宜定めることができる。また、初期の1段目閾値d1及び初期の2段目閾値dは、需要家からコンピュータ端末11への入力を受けて適宜変更されてもよい。
【0042】
また、1段目閾値d1及び2段目閾値dは、監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの間に逐次高くなるよう設定される。そして、逐次監視部4によって、監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの間の所定の時間間隔ごとに、ガス積算値Qaが1段目閾値d1又は2段目閾値dを超えていないかが逐次監視される。このとき、逐次監視部4が監視開始時点tsから監視を開始することにより、デマンド時限tg内の後半の適宜時点から監視を開始することができる。
【0043】
これにより、ガス積算値Qaが契約デマンド値Dを超える可能性の監視が特に必要となる時点から監視を開始することができ、ガス積算値Qaを適切に監視することができる。また、監視閾値dが監視開始時点tsからデマンド時限tgの経過時点までの間に逐次高くなることにより、ガス積算値Qaが契約デマンド値Dを超える可能性の監視の精度を高くすることができる。
【0044】
それ故、本形態のガスデマンド監視装置1によれば、ガス積算値Qaが契約デマンド値Dを超える可能性の監視を、特に必要となる時点から精度良く行うことができる。
【0045】
<実施形態2>
本形態は、図4及び図5に示すように、実施形態1に示したガスデマンド監視装置1の構成に加えて、ガス流量値Qが急激に増加する場合を監視する構成を有するガスデマンド監視装置1Aについて示す。本形態のガスデマンド監視装置1Aの設定部3には、デマンド時限tgにおけるガスの最大使用可能量を示す契約デマンド値Dよりも低い固定監視閾値eが設定されている。
【0046】
本形態のガスデマンド監視装置1Aは、デマンド時限tg内の所定の時間間隔である固定監視周期s2ごとに、ガス積算値Qaが固定監視閾値eを超えていないかを逐次監視するデマンド監視部40をさらに備える。本形態の固定監視周期s2は、実施形態1の監視周期s1と同様に1分としている。固定監視周期s2は監視周期s1と異なっていてもよい。
【0047】
本形態の設定部3における固定監視閾値eは、1段目固定閾値e1と、1段目固定閾値e1よりも所定値だけ高い2段目固定閾値eとの2段階に設定されている。1段目固定閾値e1及び2段目固定閾値eは、警告、ガスの流量縮小等の種々の用途に用いるために設定すればよい。固定監視閾値eを2段階に設定することにより、需要家に注意を喚起したい水準に応じて、警報等の仕方を柔軟に変更することができる。
【0048】
本形態の設定部3においては、固定監視閾値eは、2段目固定閾値eとして用い、1段目固定閾値e1は、2段目固定閾値eよりも所定値だけ低い予備固定閾値e1として用いる。1段目固定閾値e1は、需要家に警報する前の予備段階の注意喚起のために、ガス積算値Qaが2段目固定閾値eに到達する前の値として用いる。デマンド監視部40は、ガス積算値Qaが1段目固定閾値e1を超えていないかと2段目固定閾値eを超えていないかを、固定監視周期s2ごとに逐次監視する。
【0049】
デマンド監視部40によるガス積算値Qaの監視は、積算開始時点(0分)からデマンド時限tgの経過時点までの間、換言すれば、デマンド時限tgの初めから終わりまでの間において継続してなされる。逐次監視部4によるガス積算値Qaの監視が行われる監視開始時点ts以降においては、実施形態1に示す逐次監視部4によるガス積算値Qaと、デマンド監視部40によるガス積算値Qaの監視とが重複して行われる。
【0050】
本形態の1段目固定閾値e1は、実施形態1の図2において、低い方のデマンド監視閾値dgとして示され、2段目固定閾値eは、実施形態1の図2において、高い方のデマンド監視閾値dgとして示される。
【0051】
(監視方法)
本形態のガスデマンド監視装置1Aによるガス積算値Qaの監視方法の一例を、図5のフローチャートを参照して示す。
本形態のガスデマンド監視装置1Aにおいては、算出部2によるガス積算値Qaの算出が開始され(ステップS201)、かつ時間計測部5によって、経過時間の計測が開始される(ステップS202)。経過時間は、逐次監視部4及びデマンド監視部40によって利用される時間である。
【0052】
次いで、デマンド監視部40によって、経過時間が固定監視周期s2だけ経過したか否かが判定される(ステップS203)。経過時間が固定監視周期s2を経過するまでは、ガス積算値Qaの算出が継続される。次いで、経過時間が固定監視周期s2を経過したときには、デマンド監視部40によって、ガス積算値Qaが1段目固定閾値e及び2段目固定閾値e1のそれぞれを超えていないかの判定がなされる(ステップS204)。
【0053】
ガス積算値Qaが1段目固定閾値e1を超えている場合には、デマンド監視部40は、監視機器63によって需要家に注意を喚起する(ステップS205)。また、ガス積算値Qaが2段目固定閾値eを超えている場合には、デマンド監視部40は、監視機器63における、1段目固定閾値e1の場合とは異なる方法によって需要家に注意を喚起する(ステップS205)。一方、ガス積算値Qaが1段目固定閾値e1以下である場合には、監視機器63による需要家への注意の喚起は行われない。
【0054】
次いで、経過時間がデマンド時限tgになったか否かが判定される(ステップS206)。経過時間がデマンド時限tgになるまでは、ステップS201~S206が繰り返し行われる。
【0055】
その後、ステップS206において、経過時間がデマンド時限tgになった場合には、ガス積算値Qa及び経過時間がゼロにリセットされる(ステップS207)。そして、デマンド時限tgごとに、ステップS201~S207が繰り返し行われる。なお、適宜タイミングで監視停止入力がなされたときには、デマンド監視部40によるガス積算値Qaの監視が停止される。
【0056】
また、本形態のガスデマンド監視装置1Aにおいても、積算開始時点(0分)からの経過時間が監視開始時点ts以降である場合においては、実施形態1の図3に示した逐次監視部4によるガス積算値Qaの監視周期s1ごとの監視が並行して行われる。
【0057】
本形態のガスデマンド監視装置1Aにおいては、実施形態1に示す逐次監視部4によるガス積算値Qaの監視に加えて、デマンド監視部40によるガス積算値Qaの監視を行うことにより、ガス流量値Qが急激に増加する場合に、需要家に警報等によって注意を喚起することができる。例えば、突発的にガスの使用量が増加し、ガス流量値Qが急激に増加する影響を受けて、ガス積算値Qaが契約デマンド値Dを超える可能性が高くなる場合がある。この場合に、本形態のガスデマンド監視装置1Aによれば、需要家への注意の喚起を効果的に行うことができる。
【0058】
逐次監視部4によるガス積算値Qaの監視のその他の構成及び監視方法は、実施形態1の場合と同様である。本形態のガスデマンド監視装置1Aにおける、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の構成、作用効果等と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0059】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 ガスデマンド監視装置
11 コンピュータ端末
2 算出部
3 設定部
4 逐次監視部
40 デマンド監視部
5 時間計測部
6 ガス使用設備
61 ガスメータ
62 パルスセンサ
63 監視機器
7 クラウドコンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5