(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147564
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電界検知システム
(51)【国際特許分類】
G01R 29/12 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01R29/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048863
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】谷口 昌司
(72)【発明者】
【氏名】吉元 光児
(57)【要約】
【課題】電界の状態を精度よくかつ低コストに検知可能とする。
【解決手段】電界検知システム12は、電界効果トランジスタ15と、電界効果トランジスタ15のゲート電極15aに接続されるアンテナ16と、電界効果トランジスタ15のソース電極15bとドレイン電極15cとの間に所定の電圧V1を付与するためのバイアス電源17とを具備し、アンテナ16は、車両11のボデー金属部11aである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのゲート電極に接続されるアンテナと、
前記電界効果トランジスタの前記ソース電極とドレイン電極との間に所定の電圧を付与するためのバイアス電源とを具備した電界検知システムであって、
前記アンテナは、車両のボデー金属部であることを特徴とする電界検知システム。
【請求項2】
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間を流れる電流の大きさを計測するための計測装置をさらに具備し、
前記計測装置で計測した電流の大きさに基づいて前記アンテナが置かれた空間の電界強度を算出可能に構成される請求項1に記載の電界検知システム。
【請求項3】
前記計測装置により計測した電流の大きさが、予め設定した閾値以上である場合、前記車両に設けた通信システムを利用して前記検知した電界に関する情報を送信する請求項1又は2に記載の電界検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造工場など、安定的な稼働が求められる施設においては、安定的な電力供給が必要とされている。その一方で、落雷などの自然現象などによって、電力線等の電力設備が損傷して、停電や瞬低(瞬時電圧低下)などの電力トラブルが不可避的に発生しているのが現状である。
【0003】
ここで、落雷の発生を予測して当該施設に警告を発するためのシステムが特許文献1に記載されている。詳述すると、この特許文献に記載のシステムでは、タワー等の建造物の建設作業現場あるいは建設作業現場の周辺の地点に落雷検出装置を設置すると共に、建造物の建設作業現場または建設作業現場の近隣の地点に静電界検出装置を設置する。そして、落雷検出装置により落雷の発生を検出すると共に、静電界検出装置により雲・大地間の静電界の電界強度を検出し、両検出装置から出力された検出信号のレベルに基づいて、警告出力装置により警告情報のランクを決定して、そのランク付けされた警告情報を警告出力装置から出力する。また、この際、静電界検出装置の検出レベルを優先的に採用して、警告情報を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造工場においては、設置された各種機器が高度に電気制御され、また電気によりネットワーク化されているため、施設への落雷による機器の破損などの直接的な被害だけでなく停電や瞬低等による間接的な被害に対する対策(雷害対策)が重要となる。特に、半導体工場などは上述の影響を受けやすいため、従来にも増して精度の高い落雷発生予測が求められる。例えば特許文献1に記載のシステムにおいて落雷発生の予測精度を高めるためには、静電界検知装置の数を増やして広範囲に設置することが考えられるが、数を増やすほど設備コストの高騰につながるため、例えば落雷予測を有料サービスとして相手(工場など)に提供することを考えると、現実的でない。
【0006】
なお、以上述べた問題は何も落雷予測の場合にのみ該当するわけではなく、他の自然災害となり得る現象を電界の状態から予測する場合にも起こり得る。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、電界の状態を精度よくかつ低コストに検知可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係る電界検知システムによって達成される。すなわち、この検知システムは、電界効果トランジスタと、電界効果トランジスタのゲート電極に接続されるアンテナと、電界効果トランジスタのソース電極とドレイン電極との間に所定の電圧を付与するためのバイアス電源とを具備した電界検知システムであって、アンテナは、車両のボデー金属部である点をもって特徴付けられる。
【0009】
本発明に係る電界検知システムでは、ゲート電極に付与した電圧の大きさに応じてソース電極とドレイン電極との間を流れる電流が変動する電界効果トランジスタの特性を活用して、電界の状態を検知可能とした。すなわち、この電界検知システムによれば、アンテナが置かれた空間の電界をアンテナが受信することで、受信した電界の状態(電界の強さ、向きなど)に応じた電圧がゲート電極に付与される。電界の状態とデート電極に付与される電圧(ゲート電圧)との間には一定の相関が見られるので、上記電圧がゲート電極に付与された際に生じるソース電極とドレイン電極間の電流変動を正確に評価することで、受信した電界の状態を精度よく検知することができる。また、本発明では、アンテナを車両のボデー金属部としたので、非常に大きな面積で電界を検知できる。そのため、電界の状態を感度よく検出することができ、これにより高精度に落雷の発生を予測することが可能となる。また、電界効果トランジスタは非常に安価に入手し易く、また車両のボデー金属部をアンテナ代わりとすることで、別個にアンテナを用意する手間及びコストを低減できる。加えて、バイアス電源は、車両に搭載された既存の電源を利用できるので、この点でも低コストに検知システムを構築できる。以上より、本発明によれば、車両まわりの電界を高精度にかつ低コストに検知することが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る電界検知システムは、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流の大きさを計測するための計測装置をさらに具備してもよい。また、この場合に、電界検知システムを、計測装置で計測した電流の大きさに基づいてアンテナが置かれた空間の電界強度を算出できるように構成してもよい。
【0011】
上述のようにソース電極とドレイン電極間の電流の大きさを直接的に計測し、計測した電流の大きさに基づいて電界強度を算出することで、より高精度に電界の状態を評価し、落雷の予測につなげることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る電界検知システムにおいて、ゲート電極は、ボデー金属部の上下方向一方の側に接続されてもよい。
【0013】
車両が設置する地表付近の電界では、鉛直方向に電荷の偏りが生じている。また、落雷発生時には電荷の偏りが助長され、あるいは季節によっては電荷の偏りが上下で反転する場合も起こり得る。これらの事象を踏まえた場合、ゲート電極を、アンテナとなるボデー金属部の上下方向一方の側に接続することで、上述した電荷の偏りを感度良く検知することができる。よって、安定して高精度な電界検知を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る電界検知システムにおいて、計測装置により計測した電流の大きさが、予め設定した閾値以上である場合、車両に設けた通信システムを利用して検知した電界に関する情報を送信してもよい。
【0015】
このように、計測した電流の大きさに予め閾値を設けておき、計測した電流の大きさが閾値以上である場合、車両に設けた通信システムを利用して検知した電界に関する情報を送信可能とすることで、異常時(例えば雷雲接近時)のみ計測して得た情報を落雷予測のために利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る電界検知システムによれば、電界の状態を精度よくかつ低コストに検知することが可能となる。また、このことにより高精度な落雷予測を低コストに実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る落雷発生予測システムの概念図である。
【
図2】
図1に示す電界検知システムの構成を説明するための車両側面図である。
【
図3】
図1に示す予測システムを用いた予測方法の一例に係るフローチャートである。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る送電事故発生予測システムの概念図である。
【
図5】
図4に示す予測システムを用いた予測方法の一例に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第一実施形態に係る電界検知システム、及びこの検知システムを備えた落雷発生予測システムの内容を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る落雷発生予測システム10の概念図を示している。この予測システム10は、複数の車両11に設けられた電界検知システムとしての電界強度検出装置12と、車両位置情報取得装置13と、データ処理装置14とを具備する。以下、各構成要素の詳細を順に説明する。
【0020】
電界強度検出装置12は、後述する電界強度データの取得対象となる全ての車両11に設けられるもので、
図2に示すように、電界効果トランジスタ(FET)15と、電界効果トランジスタ15のゲート電極15aに接続されるアンテナ16と、電界効果トランジスタ15のソース電極15bとドレイン電極15cとの間に所定の電圧V1を付与可能なバイアス電源17とを具備する。本実施形態では、電界強度検出装置12は、ソース電極15bとドレイン電極15cとの間を流れる電流Iの大きさを計測するための計測装置18、及び電界強度算出部19とをさらに具備する。
【0021】
電界効果トランジスタ(FET)15としては、後述の通り、ゲート電極15aに付与される電圧V2の大きさに応じて電流Iの流れ易さ(電流量)が変化する限りにおいて、言い換えると、電流Iの値から電圧V2ひいてはアンテナ16で受信可能な電界の状態(例えば電界強度)に換算可能な限りにおいて、任意の種類(接合型FET、MOSFETなど)の電界効果トランジスタが適用可能である。本実施形態では、電界効果トランジスタ15としてMOSFETが適用される。
【0022】
アンテナ16は、車両11が位置する地表付近の電界を受信し、受信した電界の状態に応じた電圧V2をゲート電極15aに付与可能に構成される。例えば本実施形態では、受信した電界の強さ(電界強度)に、ゲート電極15aに付与される電圧V2の大きさが比例するように、アンテナ16が構成される。
【0023】
上記構成のアンテナ16は、車両11のボデー金属部で構成される。本実施形態では、
図2に示すように、車両11のドアアウタ11aでアンテナ16が構成されている。すなわち、車両11の金属外板となるドアアウタ11aに電界効果トランジスタ15のゲート電極15aを導線等により電気的に接続することで、ドアアウタ11aがアンテナ16本体として機能し得る。
【0024】
この際、ゲート電極15aに対するドアアウタ11aの接続箇所は原則として任意であるが、地表付近の電界における電荷の鉛直方向への偏りを考慮した場合、ドアアウタ11aの上下方向一方の側にゲート電極15aを接続するのがよい。本実施形態では、
図2に示すように、ドアアウタ11aの下部にゲート電極15aを接続している。
【0025】
バイアス電源17としては、任意の電源が適用可能である。例えば車両11のECU用電源など車両11に搭載されている既存の電源を利用することがコストの面で好適である。
【0026】
計測装置18は、例えば電流計で構成され、電界効果トランジスタ15のソース電極15bとドレイン電極15cとの間を流れる電流Iの大きさ(電流値)を計測可能な位置に設けられる。この計測装置18は、計測して得た電流値に関する情報を電界強度算出部19に送信する。なお、計測装置18による電流値の計測は、例えば一定の時間おきに実施される。もちろん、データ処理装置14からの指令を受けてその都度計測を実施してもよい。
【0027】
電界強度算出部19は、計測装置18で計測して得た電流値に関する情報に基づいて、車両11まわり、より正確にはアンテナ16まわりの電界の状態(ここでは電界強度)を算出可能に構成される。また、この電界強度算出部19は、算出した電界強度に関する情報を、車両11に設けたデータ通信装置20に送信する。この場合、電界強度算出部19は、算出した全ての電界強度に関する情報をデータ通信装置20に送信してもよく、あるいは予め設定しておいた閾値以上の電界強度に関する情報のみ、データ通信装置20に送信してもよい。
【0028】
データ通信装置20は、少なくとも電界強度データと、車両11の位置情報に関するデータ、及び各データの取得時刻に関するデータとをデータ処理装置14に送信可能に構成される。もちろん、上記以外の気象に関するデータであって、車両位置データを取得したエリアの気象に関するデータを送信してもよく、例えば温度、湿度、降雨量(降雪量)、降雨エリア、風速、風量、気圧など、およそ一般に気象情報と認識される事象に関する情報を送信可能に構成される。また、これら気象データは、各種計測機器により直接的に計測したデータであってもよく、あるいは例えばワイパーの動作回数など当該自然現象に関連する動作に関するデータから間接的に算出して得たデータであってもよい。
【0029】
なお、データ通信装置20としては、既存のデータ通信可能な装置を幅広く適用することができ、例えば本実施形態に係るデータの通信を専用に行うためのデータ通信機器をデータ通信装置20として車両11に据え付け固定してもよい。あるいは、タブレットやスマートフォンなどの汎用データ通信端末に専用のアプリをインストールしたものを車両11内に設置し、これをデータ通信装置20として使用してもよい。
【0030】
車両位置情報取得装置13は、例えばGPS等の衛星測位システム用の衛星(測位衛星)との通信を可能とする衛星測位システムの受信部で構成される。この場合、車両位置情報取得装置13は、例えばカーナビゲーションシステムで構成される。車両位置情報取得装置13は、測位衛星との通信により車両11の位置を取得(算出)し、取得した車両11の位置情報を車両11の位置データとしてデータ通信装置20に送信する。位置データを受信したデータ通信装置20は、上述した電界強度データや気象データと共に、データ処理装置14に位置データを送信可能とされている。もちろん、車両位置情報取得装置13を、カーナビゲーションシステムとは別の専用の機器として車両11に設けてもよい。
【0031】
データ処理装置14は、例えば
図1に示すように、データ蓄積部21と、データ処理部22とを有する。このうちデータ蓄積部21は、複数の車両11から送信される位置データ、電界強度データ、及び気象データを蓄積する。これらのデータは、例えば各車両11から所定時刻おきに送信される。また、車両11以外から送信されるデータがある場合、当該データをデータ蓄積部21に蓄積する。
図1に示す例では、気象情報提供機関23から提供される気象データを受信し、データ蓄積部21に蓄積する。この気象データには、例えば実際に発生した落雷に関連するデータ(地域、時刻、強さなど)が含まれる。
【0032】
データ処理部22は、データ通信装置20により送信され、データ蓄積部21に蓄積された各種データに基づいて、落雷の発生予測処理を実行する。
【0033】
ここで、落雷の発生予測処理(具体的には落雷の発生予測を行うためのプログラムの実行)は、例えばAI(人工知能)を用いて行うことが可能である。具体的には、まずデータ蓄積部21に蓄積された各種データを教師データとして用いて、データ処理部22により、落雷の発生地域、時刻、及び強さに関する情報を出力とする学習モデルを生成する(学習モデル生成ステップP1)。この際、使用する教師データとしては、各車両11の位置データと電界強度データ、及び実際に発生した落雷に関するデータ(以後、単に落雷データと称する。)が用いられる。言い換えると、過去の落雷データに対応する位置データと電界強度データ、すなわち、データ蓄積部21に蓄積された各種データから、実際に落雷が発生した地域及び時刻における電界強度データを、対応する位置データを利用して抽出する。そして、抽出した電界強度データとその他の気象データを入力とし、落雷データを出力とする学習モデルを生成する。このうち落雷データについては、例えば
図1に示すように、気象情報提供機関23から提供される気象データのうち過去に発生した落雷に関するデータを用いることができる。
【0034】
このようにして落雷発生に関する学習モデルを生成した後、この学習モデルを用いて落雷の発生を予測する(落雷発生予測ステップP2)。具体的には、学習モデル生成ステップで生成した学習モデルに、各車両11の位置データ、電界強度データ、その他の気象データを入力して、落雷の発生地域、時刻、及び強さの少なくとも一つを落雷発生の予測結果として出力するプログラムをデータ処理部22により実行する。これにより、落雷の発生予測結果に関する情報を取得する。
【0035】
次に、上記構成の落雷発生予測システム10を用いた落雷発生予測方法の一例を
図1~
図3に基づいて説明する。
【0036】
図3は、落雷発生予測システム10を用いた落雷発生予測方法の手順を説明するためのフローチャートを示している。このフローチャートに示すように、本実施形態に係る落雷発生予測方法は、複数の車両11から電界強度データ、位置データ、及び気象データを取得する第一データ取得ステップS1と、車両11以外から気象データを取得する第二データ取得ステップS2と、取得した各種データに基づいて落雷の発生予測を行う落雷発生予測ステップS3と、落雷の発生予測結果に基づいて、必要な場合に、必要な施設24(例えば半導体工場などの各種生産施設)に落雷の発生予測結果に関する情報を提供する落雷発生予測情報提供ステップS4とを具備する。
【0037】
(S1)第一データ取得ステップ
このステップでは、データ取得の対象となる複数の車両11から、各車両11の位置データ、電界強度データ、及び、気温、雨量、風速などの気象データ(以後、便宜的に第一気象データと称する。)を取得する。具体的には、上述した電界検知システムとしての電界強度検出装置12により車両11が位置する空間の電界強度を検出し、検出した電界強度に関する情報を電界強度データとしてデータ通信装置20によりデータ処理装置14に送信する。同様に、車両位置情報取得装置13により取得した車両11の位置情報を位置データとしてデータ通信装置20によりデータ処理装置14に送信する。また、図示しない各種センサ等により検出した気象情報を第一気象データとしてデータ通信装置20によりデータ処理装置14に送信する。これら各種データを受信したデータ処理装置14は、受信した各種データをデータ蓄積部21に蓄積する。このようにして、所定エリア内の複数箇所における所定時刻の電界強度データ、及び第一気象データを取得する。
【0038】
(S2)第二データ取得ステップ
このステップでは、気象情報提供機関23から、所定エリア内で過去に発生した落雷に関するデータ(落雷データ)を含む気象データ(以後、便宜的に第二気象データと称する。)を取得する。データ処理装置14は、取得した落雷データ等の気象データ(第二気象データ)をデータ蓄積部21に蓄積する。これにより、所定エリア内の所定時刻における落雷データと、同エリア及び同時刻における電界強度データと各種気象データが、相互に関連付けられた状態でデータ蓄積部21に蓄積される。なお、第一データ取得ステップS1と第二データ取得ステップS2のタイミングはともに任意であり、
図3に示すように、第二データ取得ステップS2と第一データ取得ステップS1の実施順が制限されることはない。
【0039】
(S3)落雷発生予測ステップ
このステップでは、ステップS1,S2で取得した各種データに基づいて、データ処理部22により、所定エリア内における落雷の発生予測処理を行う。具体的には、データ処理部22により、各種データを入力とし、落雷の発生予測結果を出力とするプログラムを実行する。ここで、実行可能なプログラムは任意であり、本実施形態では上述した学習モデルを用いた落雷発生予測プログラムを実行する。すなわち、学習モデル生成ステップP1では、ステップS1,S2で取得した過去の電界強度データ、位置データ、気象データ、及び落雷データを教師データとして、落雷発生に関する学習モデルを生成する。然る後、所定時刻に取得した電界強度データ、位置データ、及び気象データを学習モデルに入力して、所定時刻以降に発生する落雷の発生地域、時刻、及び強さの少なくとも一つを落雷の発生予測結果として出力するプログラムをデータ処理部22により実行する。これにより、所定時刻以降における落雷の発生予測結果に関する情報を取得する。
【0040】
(S4)予測情報提供ステップ
このステップでは、ステップS3で取得した落雷の発生予測結果に関する情報を、必要とされる施設24に提供する。このようにして落雷の発生予測情報が、必要とされる施設24において活用(可否判断を含む落雷に対する事前対策の実施など)され得る。
【0041】
以上述べたように、本実施形態に係る電界強度検出装置12によれば、アンテナ16が置かれた空間の電場をアンテナ16が受信することで、受信した電場の状態(電界強度)に応じた電圧V2がゲート電極15aに付与される。電界強度とゲート電極15aに付与される電圧V2(ゲート電圧)との間には一定の相関が見られるので、上記電圧V2がゲート電極15aに付与された際に生じるソース電極15bとドレイン電極15c間の電流Iの変動を正確に評価することで、車両11まわりの電界強度を精度よく検出することができる。ここで、電界強度検出装置12のアンテナ16を車両11のボデー金属部、具体的にはドアアウタ11aとすることによって、非常に大きな面積で電界を検知できる。そのため、電界強度を感度よく検出することができ、より高精度に落雷の発生を予測することが可能となる。また、電界効果トランジスタ15は非常に安価に入手し易く、また車両11のボデー金属部(ここではドアアウタ11a)をアンテナ16とすることで、別個にアンテナ16を用意する手間及びコストを低減できる。また、バイアス電源17は、車両11に搭載された既存の電源(ECU用電源など)を利用できるので、この点でも低コストに電界強度検出装置12を作製できる。
【0042】
また、本実施形態に係る落雷発生予測システム10によれば、上述した電界強度検出っ装置12による高精度な電界検出能に加えて、複数の車両11から電界強度データや位置データを取得することで、非常に広範囲にわたって多数の電界強度データを位置データと紐づけした状態で取得することができる。そのため、これら多数の電界強度データに基づいて落雷発生予測を行うことで、従来の落雷警告技術に比べて、各段に信頼性の高い落雷予測が可能となる。また、これら位置データや電界強度データは、車両11に既設のデータ通信装置20を利用することで、収集(蓄積)可能であるから、大幅なコストアップを招くことなく上述した予測システム10を構築することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、データ処理部22により、位置データと電界強度データ、及び位置データを取得したエリアの気象情報に関するデータを車両11から取得すると共に、気象情報提供機関23から実際に発生した落雷に関するデータを含む気象データを取得し、取得した各種データに基づいて、落雷の発生を予測するようにしたので、さらに高精度な落雷予測が可能となる。
【0044】
図4は、本発明の第二実施形態に係る送電事故発生予測システム50の概念図を示している。この送電事故発生予測システム50は、
図1に示す落雷発生予測システム10を具備したもので、所定のデータ提供サービス機関51から提供された送電設備の位置情報に関するデータをデータ蓄積部21に蓄積可能とし、かつ蓄積した位置データと電界強度データ、及び送電設備の位置データとに基づいて、落雷による送電事故の発生を予測するプログラムをデータ処理部22で実行可能とされている。上記以外のデータ処理装置14の機能、車両11から電界強度データ、位置データ、及び気象データを取得するための構成(電界検知システムとしての電界強度検出装置12、車両位置情報取得装置13、データ通信装置20)は、第一実施形態と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0045】
図5は、送電事故発生予測システム50を用いた落雷による送電事故発生予測方法の手順を説明するためのフローチャートを示している。このフローチャートに示すように、本実施形態に係る送電事故発生予測方法は、複数の車両11から電界強度データ、位置データ、及び第一気象データを取得する第一データ取得ステップS5と、車両11以外から第二気象データを取得する第二データ取得ステップS6と、取得した各種データに基づいて落雷の発生予測を行う落雷発生予測ステップS7と、送電設備の位置データを取得する第三データ取得ステップS8と、送電設備の位置データを含む各種データに基づいて送電事故の発生予測を行う送電事故発生予測ステップS9と、送電事故の発生予測結果に基づいて、必要な施設24に送電事故の発生予測に関する情報を提供する予測情報提供ステップS10とを具備する。このうち、ステップS5~S7については、第一実施形態のステップS1~S3と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0046】
(S8)第三データ取得ステップ
このステップでは、所定のデータ提供サービス機関51から、送電設備の位置情報に関するデータ、具体的には、送電線の位置情報に関するデータを取得する。データ処理装置14は、取得した送電設備の位置データをデータ蓄積部21に蓄積する。
【0047】
(S9)送電事故発生予測ステップ
このステップでは、ステップS5,S6,S8で取得した各種データに基づいて、データ処理部22により、所定エリア内における落雷の発生による送電事故の発生予測を行う。具体的には、データ処理部22により、各種データを入力とし、送電事故の発生予測結果を出力とするプログラムを実行する。ここで、実行可能なプログラムは任意であり、例えば第一実施形態と同じプログラムで落雷の発生地域に関する予測結果を出力した後、データ処理部22により、出力した落雷の発生地域に関する予測結果と、ステップS8で取得した送電設備の位置情報とに基づいて、落雷の発生により送電線等の送電設備の稼働に影響を及ぼすか否か、言い換えると、送電設備又はその周辺に雷が落ちるか否かを判定するプログラムを実行する。これにより、落雷による送電事故の発生予測結果を取得する。
【0048】
ここで、落雷の発生が送電設備の稼働に及ぼす影響の一例として、送電設備(送電線)により送電を受ける施設24の停電、又は瞬低が挙げられる。この場合、データ処理部22は、上述した送電事故発生予測プログラムの実行により、落雷による施設24の停電、又は瞬低の発生予測結果を取得する。
【0049】
(S10)予測情報提供ステップ
このステップでは、ステップS9で取得した送電事故の発生予測結果に関する情報を、必要とされる施設24に提供する。このようにして送電事故の発生予測情報が、必要とされる施設24において活用(可否判断を含む落雷に対する事前対策の実施など)され得る。
【0050】
以上述べたように、本実施形態に係る送電事故発生予測システム50によれば、位置データと電界強度データとに加えて、送電設備に関するデータを利用して落雷の発生を予測することで、送電設備又はその周辺に雷が落ちる可能性を精度よく予測することができる。よって、落雷による送電事故の発生をより高確率に予測することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、送電設備としての送電線の位置情報に関するデータを利用して落雷の発生を予測することで、何処の送電線に雷が落ち、又は送電線の稼働に影響を及ぼす可能性が最も高いかにつき高確率に予測することができる。よって、送電線又はその周辺に落雷が生じた際に停電又は瞬低が生じる施設を事前に特定することができ、容易に事前の対応を図ることが可能となる。
【0052】
もちろん、上記実施形態においても、電界強度検出装置12を具備した落雷発生よそくシステム10を用いて、落雷の発生予測を行っているので、非常に高精度な電界強度の検出を行うことができ、これにより高精度な落雷予測が可能となる。
【0053】
以上、本発明の第一及び第二第一実施形態について述べたが、本発明に係る電界検知システムは、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0054】
例えば、アンテナ16に関し、第一実施形態では、車両11のボデー外板であるドアアウタ11aをアンテナ16とした場合を例示したが、もちろんこれ以外の部位をアンテナ16としてもよい。すなわち、車両11のボデー金属部な限りにおいて、アンテナ16とする部位は任意である。また、ボデー金属部に限らず、例えばボデー金属部と絶縁されることなく連結されるボデー以外の構成要素のうち金属製の要素をアンテナ16としてもよい。また、ボデー金属部のうちアンテナ16となる部位とゲート電極15aとの接続形態も任意であり、アンテナ16に対する要求性能に応じて、適宜設定してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、電界強度検出装置12に設けた計測装置18で、ソース電極15bとドレイン電極15c間を流れる電流の大きさを計測し、計測した電流値から電界強度算出部19で電界の状態を示すパラメータとして電界強度を算出した場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態もとることも可能である。例えば、ソース電極15bとドレイン電極15c間に所定の抵抗を配設し、当該抵抗の両端における電圧を計測装置18で計測し、計測した電圧値から電界強度算出部19で電界強度を算出してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、いずれも車両11に設けた計測装置18と電界強度算出部19により、ソース電極15bとドレイン電極15c間の電流値を計測し、計測した電流値から電界強度を算出した場合を例示したが、これ以外の形態を採ることも可能である。例えば電界強度検出装置12において、計測装置18で計測した電流値の如く、所定の演算により車両11まわりの空間の電界強度を算出可能なデータを取得し、取得したデータをデータ処理装置14に送信すると共に、送信したデータをデータ処理装置14に組み込んだ電界強度算出部19で算出することも可能である。
【0057】
また、本発明に係る電界検知システムを具備した落雷発生予測システムについて、上記実施形態では、データ処理装置14が、複数の車両11から電界強度データと位置データ、及び第一気象データを取得すると共に、気象情報提供機関23から落雷データを含む第二気象データを取得し、取得したこれらの各種データに基づいて落雷発生予測を行う場合を説明したが、もちろんこれ以外の形態を採ることも可能である。例えば、各車両11から取得した電界強度データと位置データ、及び第一気象データのみに基づいてデータ処理部22が落雷発生予測を行ってもよい。あるいは、各車両11から取得した電界強度データと位置データ、及び気象情報提供機関23から提供された第二気象データのみに基づいてデータ処理部22が落雷発生予測を行ってもよい。また、あるいは、上記例示したデータ以外の種類のデータを、位置データ及び電界強度データと共に取得し、取得したこれらのデータに基づいて落雷発生予測を行ってもよい。要は、車両11の位置データと電界強度データが含まれる限りにおいて、落雷発生予測に用いられるデータの種類は任意である。
【0058】
また、第一及び第二実施形態では、落雷又は送電事故の発生予測結果に関する情報を必要とされる施設24に提供する場合を例示したが、例えば施設24が存在する地域を管轄する電力会社に、落雷又は送電事故の発生予測結果に関する情報を提供してもよい。
【0059】
また、以上の説明では、本発明に係る電界検知システムを、落雷発生予測システム、又は送電事故発生予測システムに適用した場合を例示したが、本発明に係る電界検知システムは、電界の状態変動が発生の予兆として認識されている自然現象を予測するためのシステムに対しても適用可能である。もちろん、予測に限らず、今まさに発生している自然現象の状態を電界の状態から検知する場合に、本発明に係る電界検知システムを適用することも可能である。あるいは、電界の状態変動を伴う事故の検知など、電界の状態変動を伴う種々の事象の検知又は予測に、本発明に係る電界検知システムを適用することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 落雷発生予測システム
11 車両
11a ドアアウタ
12 電界強度検出装置(電界検知システム)
13 車両位置情報取得装置
14 データ処理装置
15 電界効果トランジスタ
15a ゲート電極
15b ソース電極
15c ドレイン電極
16 アンテナ
17 バイアス電源
18 計測装置
19 電界強度算出部
20 データ通信装置
21 データ蓄積部
22 データ処理部
23 気象情報提供機関
24 施設
50 送電事故発生予測システム
51 データ提供サービス機関
S1 第一データ取得ステップ
S2 第二データ取得ステップ
S3 落雷発生予測ステップ
S4 落雷発生予測情報提供ステップ
S5 第一データ取得ステップ
S6 第二データ取得ステップ
S7 落雷発生予測ステップ
S8 第三データ取得ステップ
S9 送電事故発生予測ステップ
S10 送電事故発生予測情報提供ステップ