▶ 株式会社キッドコーポレーションの特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147592
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】可搬型消臭機
(51)【国際特許分類】
A61L 9/013 20060101AFI20220929BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20220929BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61L9/013
A61L9/14
A61L9/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048902
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】512115623
【氏名又は名称】株式会社キッドコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100188776
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 吉男
(72)【発明者】
【氏名】金鹿 功
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB06
4C180BB12
4C180CB04
4C180CB06
4C180CC06
4C180DD06
4C180EB05X
4C180EC02
4C180GG07
4C180HH05
4C180KK05
(57)【要約】
【課題】消臭が必要な室内に設置して常時消臭機能を発揮する可搬型の消臭機を提供すること。
【解決手段】本体ケース10の上部に設けた吸気開口部地上高調節機構20に吸気開口部12を取り付け、吸気開口部12から薬液タンク30内に貯留された酸性薬液32へアンモニア臭気を含む空気4を送りこみ中和させる。続いて酸性薬液32から出たアンモニア臭気を僅かに含む空気6に再度酸性薬液32を散気管40から噴霧して中和させるという2段階での消臭作用を行わせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型消臭機であって、
本体ケースと
前記本体ケース上部に設けられた吸気開口部地上高調節機構と
前記吸気開口部地上高調節機構に設けられた吸気開口部と
前記本体ケースに設けられた排気開口部と
前記本体ケース内に設けられた酸性薬液を貯留する薬液タンクと
前記吸気開口部に接続されたエアーポンプと
前記薬液タンク内に設けられた散気管と
前記散気管と前記エアーポンプとを接続する空気吸込管と
前記本体ケース上面内壁と前記酸性薬液の上面間に
設けられた散液管と
前記薬液タンク内の下部に設けられた薬液循環ポンプと
前記散液管と前記薬液循環ポンプとを接続する薬液吸上管と
を備え、
前記吸気開口部地上高調節機構により前記吸気開口部の上下位置が可変可能であり、
前記酸性薬液が、植物由来の有機酸の水溶液であることを
特徴とする可搬型消臭機。
【請求項2】
前記吸気開口部地上高調節機構が、テレスコピック構造を有する内部が空洞の筒であって
前記吸気開口部地上高調節機構の下端が前記本体ケース内で開口し、
前記吸気開口部地上高調節機構の上端に吸気ファンを設けて、前記吸気ファンにより
前記吸気開口部地上高調節機構内に取り込まれた空気が
前記本体ケース内に取り込まれることを特徴とする請求項1に記載の可搬型消臭機。
【請求項3】
前記散気管から排出される空気が、マイクロバブルまたはナノバブルであることを
特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型消臭機。
【請求項4】
前記薬液タンクに超音波キャビテーション発生手段を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の可搬型消臭機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の消臭機に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や養護老人ホーム等では、自力でトイレに行けない要介護者がポータブルトイレを用いた際に主にアンモニヤを原因とする悪臭が発生する。また室内で愛玩動物を飼っている場合にも同様の現象が発生する。
そこで、この悪臭を除去するための技術として、特開平1-201259号公報(以下「特許文献1」という。)に開示された室内用脱臭装置がある。この脱臭装置は、吸気口ならびに排気口を両端に有する管路に水槽、酸性液槽、アルカリ性液槽のうちの少なくとも二つの槽と、活性炭槽と、芳香添加手段とが吸気口から排気口に向かって順に配置されていることを特徴としている。
【0003】
しかし、特許文献1の室内用脱臭装置は、必要時に吸気口を便器と尻部の間に差込み、或いは便器の近傍へ向けて排気機を駆動させて使用するようになっており、局所的な使用に留まり、消臭が必要な室内で常時動作させておく仕様にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、消臭が必要な室内に設置して常時消臭機能を発揮する可搬型の消臭機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するための本発明は、酸性薬液中にアルカリ性の臭気を含む空気を散気させて中和する手段と、酸性薬液中を通過した空気にさらに酸性薬液を噴霧する手段とを可搬型の容器内に収めたことを主な特徴とする。
【0007】
すなわち、第一の本発明に係る可搬型消臭機は、本体ケースと本体ケース上部に設けられた吸気開口部地上高調節機構と吸気開口部地上高調節機構に設けられた吸気開口部と本体ケースに設けられた排気開口部と本体ケース内に設けられた酸性薬液を貯留する薬液タンクと吸気開口部に接続されたエアーポンプと薬液タンク内に設けられた散気管と散気管と前記エアーポンプとを接続する空気吸込管と本体ケース上面内壁と前記酸性薬液の上面間に設けられた散液管と薬液タンク内の下部に設けられた薬液循環ポンプと散液管と薬液循環ポンプとを接続する薬液吸上管とを備え、吸気開口部地上高調節機構により吸気開口部の上下位置が可変可能であり、酸性薬液が、植物由来の有機酸の水溶液であることを特徴とする。
【0008】
第一の本発明によれば、臭気を含む室内の空気が、エアーポンプの働きによって吸気開口部から散気管に送られる。散気管は酸性薬液で満たされた薬液タンク内の下部に設けられているので、散気管に設けられた複数の散気孔から空気がバブルとなって酸性薬液中に放出される。空気に含まれるアンモニア成分の大半が酸性薬液との中和反応によって塩となる。そしてアンモニアの大半が消失した空気は、酸性薬液の上面から放出され、続いてこの空気中に、散液管に設けられた散液孔から酸性薬液が噴霧される。噴霧された酸性薬液によって中和されずに残っていたアンモニヤが中和される。酸性薬液は、薬液タンク内の薬液循環ポンプにより散気管まで吸い上げられ、循環している。酸性薬液としてはクエン酸水溶液が好適である。安全性と取扱性に優れるからである。
【0009】
病院や養護老人ホーム等の臭気はアンモニヤ臭が主である。そしてアンモニアは、純粋な空気に比べて比重が小さいため部屋の天井近くに滞留する。そこで、第一の本発明の可搬型消臭機は、臭気を含んだ空気を取り込むための吸気開口部を本体ケースの上部に設けた吸気開口部地上高調節機構に取り付けて、本体ケースよりも高い位置から臭気を含んだ空気を本体ケース内に取り込める構造としている。さらに環境によって臭気の滞留高さが異なるため、吸気開口部地上高調節機構により吸気開口部の上下位置を調節可能としている。可搬型にするための簡易な手段として、本体ケースをキャスター付の台車に載せることも考えられる。
【0010】
さらに第二の本発明に係る可搬型消臭機は、第一の本発明における吸気開口部地上高調節機構が、テレスコピック構造を有する内部が空洞の筒であって吸気開口部地上高調節機構の下端が本体ケース内で開口し、吸気開口部地上高調節機構の上端に吸気ファンを設けて、吸気ファンにより吸気開口部地上高調節機構内に取り込まれた空気が本体ケース内に取り込まれることを特徴とする。
【0011】
吸気開口部地上高調節機構の上端に設けられた吸気ファンが、空気を吸気開口部地上高調節機構内部に取り込み、取り込まれた空気は、吸気開口部地上高調節機構内部を通って本体ケース内に送り込まれる。そして送り込まれた臭気を含む空気は、第一の本発明と同様に散液管から噴霧される酸性薬液によって中和される。
【0012】
さらに第三の本発明に係る可搬型消臭機は、第一又は第二の本発明において、散気管から排出される空気が、マイクロバブルまたはナノバブルであることを特徴とする。
【0013】
エアーポンプと散気管の間にマイクロバブル又はナノバブル発生機を設けることで、散気孔から放出される空気をマイクロバブル又はナノバブルとすることができる。
散気孔から排出される空気がマイクロバル又はナノバブルとなることで、中和反応が促進される。マイクロバブル又はナノバブルの発生機としては、気体と液体を混合し、高速で旋回させることでバブルを生成する旋回流方式、気体に圧力をかけ、液体中に溶け込ませて、一気に圧力を開放することでバブルを生成する加圧溶解方式、オリフィス等の微細孔へ圧力を加えて気体を通すことでバブルを生成する微細孔方式が採用される。
【0014】
さらに第四の本発明に係る可搬型消臭機は、第一~第三のいずれか一つの本発明において、薬液タンクに超音波キャビテーション発生手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
薬液タンクに超音波キャビテーション発生手段を備えることで酸性薬液中に超音波キャビテーション現象が発生し、中和反応が促進される。
例えば、薬液タンクの底面に超音波振動子を設置し、その超音波振動子に超音波発振器を接続することで超音波キャビテーションの生成が可能となる。超音波振動子は薬液中に吊架してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の可搬型消臭機は、必要な箇所に設置してその場所の効率的な消臭を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第一実施形態を示す構成図である。本体ケース10内に薬液タンク30が設けられ、薬液タンク30内に酸性薬液32が貯留されている。
本体ケース10の上部に吸気開口部地上高調節機構20が設けられ、その上部に吸気開口部12が取り付けられている。吸気開口部12はエアーポンプ50と接続されており、エアーポンプ50と散気管40とは空気吸込管44で接続されている。
一方薬液タンク30の底部から薬液循環ポンプ64に接続された薬液吸上管66が、本体ケース10の内側上部に設けられた散液管60に接続されている。
【0019】
アンモニア臭気を含む空気4は、エアーポンプ50の動作により、散気管40に送られた後、複数の散気孔42から酸性薬液32中に気泡Bとなって放出される。酸性薬液32中に放出された臭気を含む空気4のうちアンモニア成分の大部分は、酸性薬液32との化学反応によって中和され、その後酸性薬液32の上面から空気中に出ていく。そして、そのアンモニア臭気を僅かに含む空気6に、散液管60に設けられた複数の散液口62から酸性薬液32が噴霧される。酸性薬液32が噴霧されたアンモニア臭気を僅かに含む空気6は、残っているアンモニア成分が中和された後、排気開口部14から本体ケース10の外部へ放出される。
【0020】
アンモニア臭気を含む空気4は、室内の高い位置に滞留することが多いため、吸気開口部12は、吸気開口部地上高調節機構20によりその設置高が調節可能となっている。吸気開口部12は地上高3m程度までは設置可能な構造となっている。吸気開口部地上高調節機構20は、例えばテレスコピック構造で実現できる。また、吸気開口部12の取付部と係合するためのレール部を外側面の上下にわたって設けることで実現できる。
【0021】
図2は、本発明の第二実施形態を示す構成図である。第一実施形態と異なるところは、薬液タンク30の底部に超音波振動子74が設けられている点である。超音波振動子74は、超音波発信器72からの超音波信号により振動することによって、酸性薬液32中に超音波キャビテーション現象を発生させる。
超音波キャビテーション現象により、アンモニア臭気を含む空気4の中和反応が促進される。
【0022】
図3は、本発明の第三実施形態を示す構成図である。第一実施形態と異なるところは、散気孔42から放出される気泡Bがマイクロバブルであることである。空気吸込管44と散気管40との間に旋回流方式のマイクロバブル生成機70が設置され、マイクロバブル生成機70に取り込まれたアンモニア臭気を含む空気4と酸性薬液32との作用により散気孔42からマイクロバブルが放出される。アンモニア臭気を含む空気4がマイクロバブルとなって放出されることで、中和反応が促進される。
【0023】
図4は、本発明の第四実施形態を示す構成図である。第三実施形態と異なるところは、吸気開口部地上高調節機構20の上端が開口され、そこに吸気ファン46が設けられていることである。第一実施形態~第三実施形態のように吸気開口部12から酸性薬液32に放出される経路に加えて、吸気ファン46から吸気開口部地上高調節機構20の内部を通って、本体ケース10の内部上方へアンモニア臭気を含む空気4を吸い込む経路を設けたことである。アンモニア臭気を含む空気4が直接本体ケース10内に強制的に吸い込まれることにより、2経路によるアンモニア臭気を含む空気4の中和処理が行われるとともに、本体ケース10内の空気が攪拌されることで、中和反応がより促進される。
【0024】
続いて以下に本発明の実施例を説明する。
【実施例0025】
図5は、本発明の実施例である。本体ケース10が移動用キャスター80が付いたキャスター付手押し車82の上に載せられている。本体ケース10の上側に蓋16とテレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22とが設けられている。そしてテレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22の最上部には吸気ファン46が設けられ、テレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22の中間部には吸気開口部12を有するエアーポンプ50が吸気開口部取付具48を介して設置されている。テレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22は伸縮可能であり、吸気ファン46の地上高が調整可能である。また吸気開口部取付具48により吸気開口部12を有するエアーポンプ50の地上高も調節可能である。
【0026】
本体ケース10の上面には蓋16が設けられ、本体ケース10は開閉可能となっている。そして本体ケース10の側面には乾燥剤入り通気口18が設けられ、本体ケース10内の空気が排出される。さらに本体ケース10の上側面にはクエン酸供給器36が設置されていて、ここから本体ケース10内にクエン酸が供給される。
【0027】
本体ケース10内の薬液タンク30には、クエン酸水溶液34が貯留されている。そしてクエン酸水溶液34内に吸気開口部12から空気吸入管44を介して繋がっている散気管40が設置されている。またクエン酸水溶液34内に設置された薬液循環ポンプ64から繋がった薬液吸上管66の先端に散水シャワー(散液管)68が設けられている。
【0028】
本体ケース10の側面には分電盤91が設置され、分電盤91へは交流電源90が接続されている。そしてエアーポンプ用電源線92と吸気ファン用電源線94と薬液循環ポンプ用電源線96とが、分電盤91から分岐している。薬液タンク30内にペーハー測定器98が設置され、常時薬液タンク30内のクエン酸水溶液34のペーハー値が計測表示される。
その他の構成要素の各機能は前述の本発明の実施形態と同じであるから説明を省略する。
【0029】
「実験1」
ここで、実施例と同様に構成した可搬型消臭機(以下「実験機」という。)を用いて実験を行った結果の一例を示す。
広さ約21平方メートル(横2.7m×縦3.3m×高さ2.4m)の密閉された実験室内に、実験機を設置して、令和3年3月10日16時10分~3月11日16時10分までの24時間実験機を稼働させた。酸性薬液には、水28000mlにクエン酸1400gを溶解させたものを用いた。臭気を発生させるために、PH12のアンモニア水20mlを上部が開口した容器に入れて室内に設置した。
本体ケースの容量は42L、吸気ファンの設置高さは床上2140mm、エアーポンプの設置高さは床上1900mmである。
主な構成部品の仕様を[表1]に示す。
【0030】
【表1】
上記の構成で行った実験結果を[表2]に示す。
【0031】
【0032】
以上の実験結果のとおり、実験機を設置しなければ、継続して発生するアンモニアによるアンモニア臭が、時間の経過とともに増加していくはずであるが、実験機の中和作用により、実験開始から時間が経過するにつれて、アンモニア臭は減少していった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明はさらに小型化が進めば、室内での使用に限らず、自動車内やエレベータ内等の移動する密閉空間の消臭にも利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 可搬型消臭機
4 アンモニア臭気を含む空気
6 アンモニア臭気を僅かに含む空気
10 本体ケース
12 吸気開口部
14 排気開口部
16 蓋
18 乾燥剤入り通気口
20 吸気開口部地上高調節機構
22 テレスコピック式吸気開口部地上高調節機構
30 薬液タンク
32 酸性薬液
34 クエン酸水溶液
36 クエン酸供給器
40 散気管
42 散気孔
44 空気吸入管
46 吸気ファン
48 吸気開口部取付具
50 エアーポンプ
60 散液管
62 散液孔
64 薬液循環ポンプ
66 薬液吸上管
68 散水シャワー(散液管)
70 マイクロバブル生成機
72 超音波発振器
74 超音波振動子
80 移動用キャスター
82 キャスター付手押し車
90 交流電源
91 分電盤
92 エアーポンプ用電源線
94 吸気ファン用電源線
96 薬液循環ポンプ用電源線
98 ペーハー測定器
B 気泡
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型消臭機であって、
本体ケースと
前記本体ケース上部に設けられた吸気開口部地上高調節機構と
前記吸気開口部地上高調節機構に設けられた吸気開口部と
前記本体ケースに設けられた排気開口部と
前記本体ケース内に設けられた酸性薬液を貯留する薬液タンクと
前記吸気開口部に接続されたエアーポンプと
前記薬液タンク内に設けられた散気管と
前記散気管と前記エアーポンプとを接続する空気吸込管と
前記本体ケース上面内壁と前記酸性薬液の上面間に
設けられた散液管と
前記薬液タンク内の下部に設けられた薬液循環ポンプと
前記散液管と前記薬液循環ポンプとを接続する薬液吸上管と
を備え、
前記吸気開口部地上高調節機構により前記吸気開口部の上下位置が可変可能であることを
特徴とする可搬型消臭機。
【請求項2】
前記吸気開口部地上高調節機構が、テレスコピック構造を有する内部が空洞の筒であって
前記吸気開口部地上高調節機構の下端が前記本体ケース内部上方で開口し、
前記吸気開口部地上高調節機構の上端に吸気ファンを設けて、前記吸気ファンにより
前記吸気開口部地上高調節機構内に取り込まれた空気が
前記本体ケース内に取り込まれることを特徴とする請求項1に記載の可搬型消臭機。
【請求項3】
前記散気管から排出される空気が、マイクロバブルまたはナノバブルであることを
特徴とする請求項1又は2に記載の可搬型消臭機。
【請求項4】
前記薬液タンクに超音波キャビテーション発生手段を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の可搬型消臭機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型の消臭機に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や養護老人ホーム等では、自力でトイレに行けない要介護者がポータブルトイレを用いた際に主にアンモニヤを原因とする悪臭が発生する。また室内で愛玩動物を飼っている場合にも同様の現象が発生する。
そこで、この悪臭を除去するための技術として、特開平1-201259号公報(以下「特許文献1」という。)に開示された室内用脱臭装置がある。この脱臭装置は、吸気口ならびに排気口を両端に有する管路に水槽、酸性液槽、アルカリ性液槽のうちの少なくとも二つの槽と、活性炭槽と、芳香添加手段とが吸気口から排気口に向かって順に配置されていることを特徴としている。
【0003】
しかし、特許文献1の室内用脱臭装置は、必要時に吸気口を便器と尻部の間に差込み、或いは便器の近傍へ向けて排気機を駆動させて使用するようになっており、局所的な使用に留まり、消臭が必要な室内で常時動作させておく仕様にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、消臭が必要な室内に設置して常時消臭機能を発揮する可搬型の消臭機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するための本発明は、酸性薬液中にアルカリ性の臭気を含む空気を散気させて中和する手段と、酸性薬液中を通過した空気にさらに酸性薬液を噴霧する手段とを可搬型の容器内に収めたことを主な特徴とする。
【0007】
すなわち、第一の本発明に係る可搬型消臭機は、本体ケースと本体ケース上部に設けられた吸気開口部地上高調節機構と吸気開口部地上高調節機構に設けられた吸気開口部と本体ケースに設けられた排気開口部と本体ケース内に設けられた酸性薬液を貯留する薬液タンクと吸気開口部に接続されたエアーポンプと薬液タンク内に設けられた散気管と散気管と前記エアーポンプとを接続する空気吸込管と本体ケース上面内壁と前記酸性薬液の上面間に設けられた散液管と薬液タンク内の下部に設けられた薬液循環ポンプと散液管と薬液循環ポンプとを接続する薬液吸上管とを備え、吸気開口部地上高調節機構により吸気開口部の上下位置が可変可能であることを特徴とする。
【0008】
第一の本発明によれば、臭気を含む室内の空気が、エアーポンプの働きによって吸気開口部から散気管に送られる。散気管は酸性薬液で満たされた薬液タンク内の下部に設けられているので、散気管に設けられた複数の散気孔から空気がバブルとなって酸性薬液中に放出される。空気に含まれるアンモニア成分の大半が酸性薬液との中和反応によって塩となる。そしてアンモニアの大半が消失した空気は、酸性薬液の上面から放出され、続いてこの空気中に、散液管に設けられた散液孔から酸性薬液が噴霧される。噴霧された酸性薬液によって中和されずに残っていたアンモニヤが中和される。酸性薬液は、薬液タンク内の薬液循環ポンプにより散気管まで吸い上げられ、循環している。酸性薬液としてはクエン酸水溶液が好適である。安全性と取扱性に優れるからである。
【0009】
病院や養護老人ホーム等の臭気はアンモニヤ臭が主である。そしてアンモニアは、純粋な空気に比べて比重が小さいため部屋の天井近くに滞留する。そこで、第一の本発明の可搬型消臭機は、臭気を含んだ空気を取り込むための吸気開口部を本体ケースの上部に設けた吸気開口部地上高調節機構に取り付けて、本体ケースよりも高い位置から臭気を含んだ空気を本体ケース内に取り込める構造としている。さらに環境によって臭気の滞留高さが異なるため、吸気開口部地上高調節機構により吸気開口部の上下位置を調節可能としている。可搬型にするための簡易な手段として、本体ケースをキャスター付の台車に載せることも考えられる。
【0010】
さらに第二の本発明に係る可搬型消臭機は、第一の本発明における吸気開口部地上高調節機構が、テレスコピック構造を有する内部が空洞の筒であって吸気開口部地上高調節機構の下端が本体ケース内部上方で開口し、吸気開口部地上高調節機構の上端に吸気ファンを設けて、吸気ファンにより吸気開口部地上高調節機構内に取り込まれた空気が本体ケース内に取り込まれることを特徴とする。
【0011】
吸気開口部地上高調節機構の上端に設けられた吸気ファンが、空気を吸気開口部地上高調節機構内部に取り込み、取り込まれた空気は、吸気開口部地上高調節機構内部を通って本体ケース内部上方に送り込まれる。そして送り込まれた臭気を含む空気は、第一の本発明と同様に散液管から噴霧される酸性薬液によって中和される。
【0012】
さらに第三の本発明に係る可搬型消臭機は、第一又は第二の本発明において、散気管から排出される空気が、マイクロバブルまたはナノバブルであることを特徴とする。
【0013】
エアーポンプと散気管の間にマイクロバブル又はナノバブル発生機を設けることで、散気孔から放出される空気をマイクロバブル又はナノバブルとすることができる。
散気孔から排出される空気がマイクロバル又はナノバブルとなることで、中和反応が促進される。マイクロバブル又はナノバブルの発生機としては、気体と液体を混合し、高速で旋回させることでバブルを生成する旋回流方式、気体に圧力をかけ、液体中に溶け込ませて、一気に圧力を開放することでバブルを生成する加圧溶解方式、オリフィス等の微細孔へ圧力を加えて気体を通すことでバブルを生成する微細孔方式が採用される。
【0014】
さらに第四の本発明に係る可搬型消臭機は、第一~第三のいずれか一つの本発明において、薬液タンクに超音波キャビテーション発生手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
薬液タンクに超音波キャビテーション発生手段を備えることで酸性薬液中に超音波キャビテーション現象が発生し、中和反応が促進される。
例えば、薬液タンクの底面に超音波振動子を設置し、その超音波振動子に超音波発振器を接続することで超音波キャビテーションの生成が可能となる。超音波振動子は薬液中に吊架してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の可搬型消臭機は、必要な箇所に設置してその場所の効率的な消臭を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第一実施形態を示す構成図である。本体ケース10内に薬液タンク30が設けられ、薬液タンク30内に酸性薬液32が貯留されている。
本体ケース10の上部に吸気開口部地上高調節機構20が設けられ、その上部に吸気開口部12が取り付けられている。吸気開口部12はエアーポンプ50と接続されており、エアーポンプ50と散気管40とは空気吸込管44で接続されている。
一方薬液タンク30の底部から薬液循環ポンプ64に接続された薬液吸上管66が、本体ケース10の内側上部に設けられた散液管60に接続されている。
【0019】
アンモニア臭気を含む空気4は、エアーポンプ50の動作により、散気管40に送られた後、複数の散気孔42から酸性薬液32中に気泡Bとなって放出される。酸性薬液32中に放出された臭気を含む空気4のうちアンモニア成分の大部分は、酸性薬液32との化学反応によって中和され、その後酸性薬液32の上面から空気中に出ていく。そして、そのアンモニア臭気を僅かに含む空気6に、散液管60に設けられた複数の散液口62から酸性薬液32が噴霧される。酸性薬液32が噴霧されたアンモニア臭気を僅かに含む空気6は、残っているアンモニア成分が中和された後、排気開口部14から本体ケース10の外部へ放出される。
【0020】
アンモニア臭気を含む空気4は、室内の高い位置に滞留することが多いため、吸気開口部12は、吸気開口部地上高調節機構20によりその設置高が調節可能となっている。吸気開口部12は地上高3m程度までは設置可能な構造となっている。吸気開口部地上高調節機構20は、例えばテレスコピック構造で実現できる。また、吸気開口部12の取付部と係合するためのレール部を外側面の上下にわたって設けることで実現できる。
【0021】
図2は、本発明の第二実施形態を示す構成図である。第一実施形態と異なるところは、薬液タンク30の底部に超音波振動子74が設けられている点である。超音波振動子74は、超音波発信器72からの超音波信号により振動することによって、酸性薬液32中に超音波キャビテーション現象を発生させる。
超音波キャビテーション現象により、アンモニア臭気を含む空気4の中和反応が促進される。
【0022】
図3は、本発明の第三実施形態を示す構成図である。第一実施形態と異なるところは、散気孔42から放出される気泡Bがマイクロバブルであることである。空気吸込管44と散気管40との間に旋回流方式のマイクロバブル生成機70が設置され、マイクロバブル生成機70に取り込まれたアンモニア臭気を含む空気4と酸性薬液32との作用により散気孔42からマイクロバブルが放出される。アンモニア臭気を含む空気4がマイクロバブルとなって放出されることで、中和反応が促進される。
【0023】
図4は、本発明の第四実施形態を示す構成図である。第三実施形態と異なるところは、吸気開口部地上高調節機構20の上端が開口され、そこに吸気ファン46が設けられていることである。第一実施形態~第三実施形態のように吸気開口部12から酸性薬液32に放出される経路に加えて、吸気ファン46から吸気開口部地上高調節機構20の内部を通って、本体ケース10の内部上方へアンモニア臭気を含む空気4を吸い込む経路を設けたことである。アンモニア臭気を含む空気4が直接本体ケース10内に強制的に吸い込まれることにより、2経路によるアンモニア臭気を含む空気4の中和処理が行われるとともに、本体ケース10内の空気が攪拌されることで、中和反応がより促進される。
【0024】
続いて以下に本発明の実施例を説明する。
【実施例0025】
図5は、本発明の実施例である。本体ケース10が移動用キャスター80が付いたキャスター付手押し車82の上に載せられている。本体ケース10の上側に蓋16とテレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22とが設けられている。そしてテレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22の最上部には吸気ファン46が設けられ、テレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22の中間部には吸気開口部12を有するエアーポンプ50が吸気開口部取付具48を介して設置されている。テレスコピック式吸気開口部地上高調節機構22は伸縮可能であり、吸気ファン46の地上高が調整可能である。また吸気開口部取付具48により吸気開口部12を有するエアーポンプ50の地上高も調節可能である。
【0026】
本体ケース10の上面には蓋16が設けられ、本体ケース10は開閉可能となっている。そして本体ケース10の側面には乾燥剤入り通気口18が設けられ、本体ケース10内の空気が排出される。さらに本体ケース10の上側面にはクエン酸供給器36が設置されていて、ここから本体ケース10内にクエン酸が供給される。
【0027】
本体ケース10内の薬液タンク30には、クエン酸水溶液34が貯留されている。そしてクエン酸水溶液34内に吸気開口部12から空気吸入管44を介して繋がっている散気管40が設置されている。またクエン酸水溶液34内に設置された薬液循環ポンプ64から繋がった薬液吸上管66の先端に散水シャワー(散液管)68が設けられている。
【0028】
本体ケース10の側面には分電盤91が設置され、分電盤91へは交流電源90が接続されている。そしてエアーポンプ用電源線92と吸気ファン用電源線94と薬液循環ポンプ用電源線96とが、分電盤91から分岐している。薬液タンク30内にペーハー測定器98が設置され、常時薬液タンク30内のクエン酸水溶液34のペーハー値が計測表示される。
その他の構成要素の各機能は前述の本発明の実施形態と同じであるから説明を省略する。
【0029】
「実験1」
ここで、実施例と同様に構成した可搬型消臭機(以下「実験機」という。)を用いて実験を行った結果の一例を示す。
広さ約21平方メートル(横2.7m×縦3.3m×高さ2.4m)の密閉された実験室内に、実験機を設置して、令和3年3月10日16時10分~3月11日16時10分までの24時間実験機を稼働させた。酸性薬液には、水28000mlにクエン酸1400gを溶解させたものを用いた。臭気を発生させるために、PH12のアンモニア水20mlを上部が開口した容器に入れて室内に設置した。
本体ケースの容量は42L、吸気ファンの設置高さは床上2140mm、エアーポンプの設置高さは床上1900mmである。
主な構成部品の仕様を[表1]に示す。
【0030】
【表1】
上記の構成で行った実験結果を[表2]に示す。
【0031】
【0032】
以上の実験結果のとおり、実験機を設置しなければ、継続して発生するアンモニアによるアンモニア臭が、時間の経過とともに増加していくはずであるが、実験機の中和作用により、実験開始から時間が経過するにつれて、アンモニア臭は減少していった。