(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147617
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】オイルミスト測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20220929BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/49 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048937
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(71)【出願人】
【識別番号】591143892
【氏名又は名称】明陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230116816
【弁護士】
【氏名又は名称】成川 弘樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159248
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 修
(72)【発明者】
【氏名】深山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 駿輔
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE02
2G059GG02
2G059JJ13
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM14
2G059NN07
(57)【要約】
【課題】汚れによる測定誤差を補正できるオイルミスト測定装置を提供すること。
【解決手段】観察窓を介して導入室内に配置される反射板に光を照射する補正用照射部により照射され、観察窓の導入室内側の表面と当該表面に付着する汚れとの境界で反射する光を、観測窓を介して受光して受光量に応じた値を出力する補正用第一受光部と、補正用照射部により照射され、反射板により反射した光を、観察窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する補正用第二受光部と、補正用第一受光部の出力値と前記補正用第二受光部の出力値とに基づき観察窓表面の汚れに応じた補正値を算出し、算出した補正値を用いて補正するオイルミスト測定装置を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルミストが導入される導入室の室内に、前記導入室に備わる観察窓を介して光を照射する測定用照射部と、
前記測定用照射部が照射した光が前記導入室内のオイルミストにより反射又は散乱した光を、前記観察窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する測定用受光部と、
前記観察窓を介して前記導入室内に配置される反射板に光を照射する補正用照射部と、
前記補正用照射部により照射され、前記観察窓の導入室内側の表面と当該表面に付着する汚れとの境界で反射する光を、前記観測窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する補正用第一受光部と、
前記補正用照射部により照射され、前記反射板により反射した光を、前記観察窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する補正用第二受光部と、
前記補正用第一受光部の出力値と前記補正用第二受光部の出力値とに基づき、前記観察窓表面の汚れに応じた補正値を算出する補正値算出部と、
前記測定用受光部による出力値と、前記補正値算出部により算出された補正値とに基づきオイルミストを測定する測定部と、
を有することを特徴とするオイルミスト測定装置。
【請求項2】
算出された補正値と所定値との比較に基づき観察窓の汚れの程度を判断する判断部を、さらに有することを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト測定装置。
【請求項3】
前記判断部の判断結果に基づき警報を出力する警報部を、さらに有することを特徴とする請求項2に記載のオイルミスト測定装置。
【請求項4】
測定用照射部、測定用受光部、補正用照射部、補正用第一受光部及び補正用第二受光部は、一のブロックに設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一に記載のオイルミスト測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的手段によりオイルミストを測定するオイルミスト測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルミスト測定装置の一典型例として、内燃機関のクランクケース内に配置されるオイルミスト測定装置がある。これは、オイルミスト導入室を有するケーシングと、このオイルミスト導入室に設けた透光窓の外側に臨むように配置した発光手段及び受光手段とを備える装置である。オイルミスト導入室内に導入されたオイルミストの存在により、発光手段による照射光は反射又は散乱する。その反射光や散乱光を、透光窓を介して受光手段により受光することでオイルミストを検出するのである。
【0003】
上述のように、透光窓を介して投光と受光を行うため、透光窓の表面がオイルミストなどで汚れることにより透光窓の透過率が低下し、透過率の低下により測定値が実際よりも低く得られることになってしまうという問題がある。
【0004】
この問題に対して、特許文献1の技術は、オイルミスト導入室内にオイルミストが存在しない状態における受光手段の検出信号値を基準とし、オイルミスト測定時の受光手段の検出信号値と基準となる検出信号値とを比較して、その結果から透光窓の汚れを判断し、報知又は警報するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、透光窓表面の汚れを報知することで、汚れによる不正確な測定の継続を抑止することに寄与する。すなわち、ユーザは報知を受けて、測定を停止し、透光窓の汚れを除去したり透光窓を交換することで、再び正確な測定を行うことができる。
【0007】
しかしながら、透光窓の汚れを検出して単に報知するのではなく、汚れによる測定誤差を補正できるように構成し、誤差を抑制した良好な精度での測定をより長時間維持させることの方が有益である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決するために本発明において、以下のオイルミスト測定装置などを提供する。すなわち、オイルミストが導入される導入室の室内に、前記導入室に備わる観察窓を介して光を照射する測定用照射部と、前記測定用照射部が照射した光が前記導入室内のオイルミストにより反乱又は散乱した光を、前記観察窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する測定用受光部と、前記観察窓を介して前記導入室内に配置される反射板に光を照射する補正用照射部と、前記補正用照射部により照射され、前記観察窓の導入室内側の表面と当該表面に付着する汚れとの境界で反射する光を、前記観測窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する補正用第一受光部と、前記補正用照射部により照射され、前記反射板により反射した光を、前記観察窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する補正用第二受光部と、前記補正用第一受光部の出力値と前記補正用第二受光部の出力値とに基づき、前記観察窓表面の汚れに応じた補正値を算出する補正値算出部と、前記測定用受光部による出力値と、前記補正値算出部により算出された補正値とに基づきオイルミストを測定する測定部と、を有することを特徴とするオイルミスト測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、観察窓の汚れに応じた補正値を算出することで、その補正値を用いてオイルミストの測定をすることができ、良好な精度での測定時間を伸長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】素子保持ブロックと、保持される素子を示す概念図
【
図3】
図2に示した素子保持ブロックが配置されるオイルミスト測定装置の一部の断面を示す概念図
【
図4】オイルミスト測定装置の機能的構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
<実施形態>
<概要>
【0012】
本実施形態のオイルミスト測定装置の特徴は、観察窓の汚れを測定するための光学的な構成を備えるとともに、係る構成から観察窓の汚れに応じた値を算出し、算出した値を用いてオイルミストの測定値を補正するというものである。
<構成>
【0013】
図1は、本実施形態のオイルミスト測定装置の一例を示す模式図である。
図1(a)は斜視図であり、
図1(b)は横断面図である。図示するように、オイルミスト測定装置100は、クランクケース内部などの測定空間に配置されオイルミストを導入するための孔が設けられる筒状の導入室101と、導入室内を導入室外から窺うための観察窓102と、観察窓102を通して導入室内のオイルミストを測定するための発光素子及び受光素子を保持する素子保持ブロック103と、各素子と接続される基板104を備えている。
【0014】
素子保持ブロック103には、発光素子であるLED(light emitting diode)105と受光素子であるPD(Photodiode)106とが保持されている。そして、LED105による照射光が導入室内のオイルミストにより反射又は散乱した光をPD106が受光することでオイルミストを測定している。また、観察窓の汚れに応じた補正をするための補正用のLED及びPDについても本図には示されないが素子保持ブロック103が保持している。
【0015】
また、基板104は、プロセッサ107、メインメモリ108及びROM109と接続されている。プロセッサ107は、メインメモリ108上に展開したプログラムに従い演算処理を行い、データの加工や蓄積、各ハードウェアの制御などを行う。また、図示しない、入出力インタフェースや通信インタフェースなどを備えるものとしてもよい。なお、プロセッサは演算処理装置の一例である。また、メインメモリは演算処理装置の作業領域を提供する。また、ROMはOS(オペレーティングシステム)を含む各種のプログラムやデータを格納する不揮発性メモリの一例である。
【0016】
図2は、素子保持ブロックと、保持される素子を示す概念図である。
図2(a)は観察窓側からの正面図であり、
図2(b)はA-A切断線における断面図であり、
図2(c)はB-B切断線における断面図である。各図に示すように、オイルミスト測定用のLED202及びPD203と、補正用のLED204とPD205及びPD206と、が素子保持ブロック201に配置されている。本図では、一のブロックにすべての素子が配置されているが、各素子を複数のブロックに分けて保持するように構成してもよい。
【0017】
図3は、
図2に示した素子保持ブロックが配置されるオイルミスト測定装置の一部の断面を示す概念図である。本図は、補正用のLED304とPD305及びPD306が表れる断面を示している。図示するように、素子保持ブロック301は、導入室303を形成する筒状のケースに収容されており、導入室内側において観察窓302と接している。また、導入室内に保持部材308を介して配置される反射板307は、LED304から照射される光を反射するように構成されている。
【0018】
図4は、本実施形態のオイルミスト測定装置の機能的構成を示すブロック図である。図示するように、オイルミスト測定装置400は、測定用照射部401と、測定用受光部402と、補正用照射部403と、補正用第一受光部404と、補正用第二受光部405と、補正値算出部406と、測定部407と、を有する。以下に、各部の機能について説明する。
【0019】
測定用照射部401は、オイルミストが導入される導入室の室内に、前記導入室に備わる観察窓を介して光を照射する機能を有する。この機能は、
図1に示したLED105や
図2に示したLED202などの発光素子と、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などにより実現することができる。
【0020】
測定用受光部402は、測定用照射部が照射した光が導入室内のオイルミストにより反射又は散乱した光を、観察窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する機能を有する。この機能は、
図1に示したPD106、
図2に示したPD203やフォトトランジスタなどの受光素子と、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などによって実現することができる。
【0021】
補正用照射部403は、観察窓を介して導入室内に配置される反射板に光を照射する機能を有する。この機能は、
図2に示したLED204などの発光素子と、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などにより実現することができる。
【0022】
補正用第一受光部404は、補正用照射部により照射され、観察窓の導入室内側の表面と当該表面に付着する汚れとの境界で反射する光を、前記観測窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する機能を有する。この機能は、
図2に示したPD205などの受光素子と、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などにより実現することができる。
【0023】
補正用第二受光部405は、補正用照射部により照射され、反射板により反射した光を、観察窓を介して受光して、受光量に応じた値を出力する機能を有する。この機能は、
図2に示したPD206などの受光素子と、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などにより実現することができる。
【0024】
補正値算出部406は、補正用第一受光部の出力値と補正用第二受光部の出力値とに基づき、観察窓表面の汚れに応じた補正値を算出する機能を有する。具体的には観測窓の表面に付着した汚れの透過率を補正値として算出する。補正値算出部の機能は、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などにより実現することができる。
【0025】
測定部407は、測定用受光部による出力値と、補正値算出部により算出された補正値とに基づきオイルミストを測定する機能を有する。上記の通り補正値は観測窓表面の汚れの透過率となる。この透過率を補正値としてオイルミストの測定を行う。この機能は、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などにより実現することができる。
<補正値算出とオイルミスト測定>
【0026】
以下に、オイルミスト測定装置における補正値算出とオイルミスト測定の処理について説明する。
図5は補正値算出処理を説明するための概念図である。図示するように、素子保持ブロック501には、補正用のLED504、補正用の第一のPD505及び第二のPD506が配置されている。そして、素子保持ブロック501と観察窓502を挟んで対向する位置に反射板507が配置されている(保持部材の図示省略)。また、観察窓502の表面にはオイルミストやオイルなどが付着して汚れ508が生じている。
【0027】
第一のPD505は、LED504により照射され、観察窓502の表面と当該表面に付着する汚れ508との境界で反射する光を、観察窓を介して受光するように構成されている。なお、図中の点線矢印は照射された光の経路を示している。また、第二のPD506は、LED504より照射され観察窓502を透過し反射板507で反射した光を、観察窓502を介して受光するように構成されている。第一のPD505及び第二のPD506は、受光した光の量に応じた値を出力する。LED504から照射され第二のPD506が受光する光は、反射板507での反射の前後で観察窓502の表面に付着する汚れ508を通過する。この通過の際に光は付着する汚れに吸収され、その分第二のPD506の受光量が低下する。一方、第一のPD505が受光する光は、観測窓502の汚れ508を通過するものではない。いずれのPDも受光する光は同じLED504から照射されるものであるので、それぞれのPDの受光による出力値から観察窓502の汚れ508を評価することができる。
【0028】
観察窓の汚れ評価の測定系は、以下のような前提に基づいて構築されている。この前提条件は実装した場合に厳密に成立するものではないが、後述する調整作業を行い調整時のPDの出力との比率演算を行うことにより、測定上は成立する。前提条件は、以下の通り。
1.観察窓502の上面(素子保持ブロック501側の面)及び内部での反射は生じない。
2.観察窓502内部での吸収は生じない。
3.観察窓502の下面に汚れの付着がない場合、観察窓502の下面に到達した光は全て透過する。
4.反射板507に光の透過はなく、反射板507の表面に到達した光は全て反射する。
5.反射板507で反射した光の反射は、観察窓502の下面では生じない。
6.観察窓502の下面に汚れの付着がある場合、LED504から照射された光は観察窓502と汚れ508の境界でその一部が反射し第一のPD505に入射する。
7.観察窓502の汚れ508及び反射板507に付着した汚れにより、到達した光の一部が吸収される。
8.反射板507で反射した光は、観察窓502を透過して第二のPDに入射する。
9.光の反射は観察窓502の下面と汚れ508との境界、及び反射板507の表面でのみ生じ、汚れ508の表面では生じない。
10.観察窓502の下面に付着した汚れ508と反射板に付着した汚れは同一で、汚れによる光の吸収も同一である。
11.観察窓502と反射板507の間でのオイルミストによる反射や散乱は生じないものとする。
【0029】
上記前提のもと、LED504から照射され観察窓502の下面と付着した汚れ508との境界で反射した光が入射する第一のPD505の出力値と、LED504から照射され反射板507で反射した光が入射する第二のPD06の出力値と、をそれぞれ考察する。
【0030】
観察窓502に付着した汚れ508の透過率をτG、観察窓502と汚れ508との境界の反射率をγG、観察窓502に付着した汚れ508の吸収率をεG、汚れが付着した反射板507の反射率をγR、反射板507に付着した汚れの吸収率をεRとするとき、
0≦τG、γG、εG、γR、εR≦1、τR=0・・・(1)
第一のPD505及び第二のPD506のそれぞれの出力値(I/V変換、増幅後)をVPD1、VPD2とすると、
VPD1=L・α・γG・・・(2)
VPD2=L・β・τG・γR・τG=L・β・τG・(1-εR)・(1-εR)・τG
=L・β・τG
2(1-εR)2・・・(3)
と表すことができる。ここで
L:LEDの投光量
α:第一のPDのI/V変換、増幅度を表す定数
β:第二のPDのI/V変換、増幅度を表す定数
である。さらに、キルヒホフの法則より、
τG+γG+εG=1・・・(4)
γR+εR=1・・・(5)
である。
【0031】
つづいて調整作業について説明する。
まず、観察窓、反射板に汚れの付着がない状態、かつオイルミストが存在しない状態で、VPD1、VPD2を測定する。この場合、前提から、γG=0、τG=1、εR=0、(2)式(3)式より
VPD1=L・α・γG=0・・・(6)
VPD2=L・β・τG
2・(1-εR)2=L・β・・・(7)
が得られる。
【0032】
次に、観察窓を下面で全反射するものに交換し、VPD1、VPD2を測定する。この場合、前提から、γG=1、τG=0であり、(2)式及び(3)式より
VPD1=L・α・γG=L・α・・・(8)
VPD2=L・β・τG
2・(1-εR)2=0・・・(9)
が得られる。ここで観察窓下面の反射率γGをγG=1とすることが困難、もしくは実際の汚れによる反射率の増大と大きく異なるということであれば、既知の反射率を有する観察窓で実施すればよく、(8)式がVPD1=(観察窓の既知の放射率)・L・α となるのみである。実際には、(6)式はVPD1のオフセット値、(7)式はVPD1のスパン値、(8)式はVPD2のスパン値、(9)式はVPD2のオフセット値であるが、ここでは前提条件を加味し、上記としている。また、実際の測定において、VPD1では(7)式、VPD2では(8)式との比率演算とすることで、前提とした条件の1~5は実際の測定上は成立することになる。
【0033】
実際の測定において、観察窓に汚れが付着し、その透過率τGが低下した場合、オイルミスト測定値は実際よりも低い値として得られる。実際の測定時のデータ処理として、調整時のスパン値との比率演算を用いると、(2)式、(3)式、および(7)式、(8)式より
VPD1´=L・α・γG/L・α=γG・・・(10)
VPD2´=L・β・τG
2・(1-εR)2/L・β=τG
2・(1-εR)2・・・(11)
ここで、観察窓に付着した汚れに光の吸収がない、すなわちεG=0のときに限り、(10)式よりVPD1´=1-τGと得られ、観察窓の汚れの補償が可能である。(11)式は、前提条件の10より、
VPD2´=τG
2・(1-εR)2=τG
2・(1-εG)2・・・(12)
(10)式は
VPD1´=γG=1-(τG+εG)・・・(13)
(12)式、(13)式より、未知数はτG、εGの2つであることから、連立させることによりτGを求めることができる。求めた観察窓に付着した汚れの透過率τGを補正値として、観察窓に付着した汚れによるオイルミスト測定値の低下を補償して、オイルミストを測定することが可能である。
<効果>
【0034】
以上のように、本実施形態のオイルミスト測定装置は、観察窓に付着した汚れの透過率を補正値として算出することで、その補正値を用いてオイルミストの測定をすることができる。これにより、単に汚れを通知する従来のオイルミスト測定装置に対して、良好な精度での測定時間の伸長を実現することができる。
<他の実施形態>
【0035】
上述したオイルミスト測定装置を基本として、さらに観察窓の汚れの程度を判断する判断部を有するように構成することができる。判断部は、算出された補正値と所定値との比較に基づき汚れの程度を判断する機能を有する。この機能は、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108及びROM109などにより実現することができる。
【0036】
上述したように、観察窓の汚れに応じた補正値を算出することで、良好な精度を保ちつつオイルミスト測定を継続することができる。一方で、観察窓の汚れを除去することも必要である。そこで、観察窓の汚れに応じた補正値を所定の値と比較し、観察窓の汚れがどの程度にあるかを判断するように構成する。判断する汚れの程度は様々に考えられ、例えば、「低」、「中」、「高」の各程度に判断してもよいし、測定の停止又は観察窓の汚れ除去を行うべき汚れの程度を判断するように構成してもよい。
【0037】
また判断部の判断結果を出力するように構成することも好ましい。例えば、上述した観察窓の汚れの程度を表示したり、観察窓の汚れ除去や測定停止を促すための警報を出力するといった具合である。また、警報の出力は、ネットワークを介して他の装置や端末などに対して行ってもよい。判断部の機能は、
図1に示したプロセッサ107、メインメモリ108、ROM109及び入出力インタフェースを介したディスプレイやスピーカなどの出力デバイスなどにより実現することができる。
【符号の説明】
【0038】
100、400:オイルミスト測定装置
101、303:導入室
102、302:観察窓
103、201、301:素子保持ブロック
104:基板
105、202:測定用LED
106、203:測定用PD
107:プロセッサ
108:メインメモリ
109:ROM
204、304:補正用LED
205、206、305、306:補正用PD
307:反射板
308:保持部材
401:測定用照射部
402:測定用受光部
403:補正用照射部
404:補正用第一受光部
405:補正用第二受光部
406:補正値算出部
407:測定部