(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147621
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車両用電子制御ユニット
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20220929BHJP
H02H 9/02 20060101ALI20220929BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220929BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02H9/02 B
H02J7/34 G
H02J9/06
B60R16/033 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048948
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山野上 耕一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
【テーマコード(参考)】
5G013
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
5G013AA09
5G013BA01
5G013CA02
5G015GB06
5G015HA12
5G015JA06
5G015JA52
5G015JA60
5G015KA12
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB03
5G503CA01
5G503DA05
5G503FA17
5G503GD07
5G503HA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電源からの電力供給が断たれた際にも制御を継続できる車両用電子制御ユニットを提供する。
【解決手段】車両用電子制御ユニット10は、コンデンサCから成る蓄電手段16を内蔵し、蓄電手段からの電力で、バッテリBからの電力が遮断しても制御を継続する。そして、車両用電子制御ユニットは、蓄電手段をイグニッションスイッチIG SWがオンされる間充電し、イグニッションスイッチがオフされると蓄電手段の充電を停止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサから成る蓄電手段を内蔵し、
前記蓄電手段からの電力で、バッテリからの電力が遮断しても制御を継続する車両用電子制御ユニットであって、
前記蓄電手段をイグニッションがオンされる間充電し、前記イグニッションがオフされると前記蓄電手段の充電を停止する。
【請求項2】
請求項1の車両用電子制御ユニットであって、
イグニッションスイッチを介して供給される前記バッテリからの電力を、電流を制限して前記蓄電手段に供給する電流制限手段を有する。
【請求項3】
請求項2の車両用電子制御ユニットであって、
前記電流制限手段は、デュティ制御用スイッチング素子と、インダクタンスを備える。
【請求項4】
請求項2の車両用電子制御ユニットであって、
前記電流制限手段は、PCTサーミスタから成る。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1の車両用電子制御ユニットであって、
前記蓄電手段のコンデンサは、直列接続された電気二重層コンデンサであり、各電気二重層コンデンサは、放電及びセルバランス用の抵抗が並列接続されている。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1の車両用電子制御ユニットであって、
内蔵の前記蓄電手段の電力を電子制御パーキングブレーキに供給する。
【請求項7】
請求項3の車両用電子制御ユニットであって、
前記デュティ制御用スイッチング素子は、前記蓄電手段の負電位側に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主電源からの電力供給が断たれた際にも制御を継続できる車両用電子制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、主電源装置の故障時に副電源装置から自動的にECUに給電する車両用ECU電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、事故等において、主電源(バッテリ)からの給電線の断線と、副電源からの給電線の断線とが同時に発生した場合、ECUの制御を継続できない。
【0005】
本発明の目的は、電源からの電力供給が断たれた際にも制御を継続できる車両用電子制御ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用電子制御ユニット(10)は、コンデンサ(C)から成る蓄電手段(16)を内蔵し、前記蓄電手段からの電力で、バッテリからの電力が遮断しても制御を継続する。そして、前記蓄電手段をイグニッションがオンされる間充電し、前記イグニッションがオフされると前記蓄電手段の充電を停止する。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明に係る車両用電子制御ユニットは、コンデンサから成る蓄電手段を内蔵する。このため、主電源、更に、非常用の副電源からの電力供給が断たれた際にも制御を継続できる。請求項1の車両用電子制御ユニットは、蓄電手段をイグニッションがオンされる間充電し、イグニッションがオフされると蓄電手段の充電を停止する。コンデンサが電力供給を必要とされる間のみ充電され、電力供給の不要の間は電荷が放電されているため、コンデンサが劣化しない。
【0008】
請求項2の発明では、イグニッションスイッチを介して供給されるバッテリからの電力を、電流を制限して蓄電手段に供給する電流制限手段を有する。このため、コンデンサから成る蓄電手段に過大な電流(突入電流)を流すことなく電荷をチャージすることができる。
【0009】
請求項3の発明では、電流制限手段は、デュティ制御用スイッチング素子と、インダクタンスを備える。バッテリからの電流をスイッチング素子でデュティ制御し、インダクタンスで平滑化し、コンデンサから成る蓄電手段に過大な電流(突入電流)を流すことなく電荷をチャージすることができる。デュティ制御を用いるため、比較的大きな電流で、短時間で蓄電手段を充電しても少ない電力損失とすることができる。
【0010】
請求項4の発明では、電流制限手段は、PCTサーミスタから成る。バッテリからの電流をPCTサーミスタの抵抗値が変化することで制限し、過大な電流が流れると温度上昇して内部抵抗が増加することから、コンデンサから成る蓄電手段に過大な電流(突入電流)を流すことなく電荷をチャージすることができる。制御動作を行わないため、廉価に構成でき、故障の可能性が低い。
【0011】
請求項5の発明では、蓄電手段のコンデンサは、直列接続された電気二重層コンデンサである。電気二重層コンデンサは、通電状態で長時間経過すると性能劣化を起こし、その容量減少と内部抵抗増加が促進される。請求項5の発明では、電力供給が必要とされる間のみ充電され、電力供給の不要の間は電荷が放電されているため、電気二重層コンデンサが劣化しない。各電気二重層コンデンサは、抵抗が並列接続されている。電力供給の不要の間は電荷が並列接続された抵抗へ放電され、また、充電中は各電気二重層コンデンサのセルバランスが取られる。
【0012】
請求項6の発明では、車両用電子制御ユニットは、内蔵の蓄電手段の電力を電子制御パーキングブレーキに供給する。車両走行中に事故等で車体を損傷してバッテリが破損した状態でも、運転者は電子制御パーキングブレーキを操作して制動を行って、車両を停止させることが可能になる。
【0013】
請求項7の発明では、デュティ制御用スイッチング素子は、蓄電手段の負電位側に接続されている。トランジスタ、又は、MOSFETからなるデュティ制御用スイッチング素子は、車両用電子制御ユニットのグランド電位を基準として動作するように回路形成できて、駆動が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用電子制御ユニットの回路図
【
図2】実施形態の第1改変例に係る車両用電子制御ユニットの回路図
【
図3】実施形態の第2改変例に係る車両用電子制御ユニットの回路図
【
図4】実施形態の第3改変例に係る車両用電子制御ユニットの回路図
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
図1は実施形態に係る車両用電子制御ユニットの回路図である。
車両用電子制御ユニット10は、電子制御パーキングブレーキユニットである。
車両用電子制御ユニット10では、バッテリBの+側にヒューズFUSEを介して入力側+B端子と、ヒューズFUSE及びイグニッションスイッチIGSWと介してIG端子とが接続されている。バッテリBの-側及びアースにグランド端子GNDが接続されている。車両用電子制御ユニット10は、負荷装置(電子制御パーキングブレーキアクチュエータ)20に、出力側+B端子と、出力端子OUTを介して接続されている。
【0016】
車両用電子制御ユニット10は、入力側+B端子からの電流を流すダイオードD1と、ダイオードD1に接続された電流制限手段12と、電流制限手段12により制御された電流を充電するためのコンデンサCが直列に接続されてなる蓄電手段16と、蓄電手段16からの電流を内部電源側に流す整流手段を構成するダイオードD2と、を有する。内部電源は図示しない電子制御パーキングブレーキユニットの制御素子側に電力を供給する。蓄電手段16のマイナス側はグランド端子GNDを介してバッテリBの-側及びアースに接続される。
【0017】
車両用電子制御ユニット10は、イグニッションスイッチIGSWがオンされると、電流制限手段12を介して充電電流を小さくして蓄電手段16への充電を開始する。そして、イグニッションスイッチIGSWがオフされると、蓄電手段16への充電を停止する。電源ラインBLを介してバッテリBからの電力が正常に供給される間は、バッテリBからの電力がダイオードD1を介して内部電源側に供給されると共に、出力側+B端子を介して負荷装置20に供給される。事故により電源ラインBLが断線する等、バッテリBからの電力が供給されなくなると、蓄電手段16からの電力がダイオードD2を介して内部電源側に供給されると共に、出力側+B端子を介して負荷装置20に供給される。車両用電子制御ユニット10は出力端子OUTを介して負荷装置20に動作指令を送る。
【0018】
実施形態の車両用電子制御ユニット10は、コンデンサCから成る蓄電手段16を内蔵する。このため、主電源(バッテリB)、更に、図示しない非常用の副電源からの電力供給が断たれた際にも制御を継続できる。実施形態の車両用電子制御ユニット10は、蓄電手段16をイグニッションがオンされる間充電し、イグニッションがオフされると蓄電手段16への充電を停止する。コンデンサが電力供給を必要とされる間のみ充電され、不要の間は蓄電手段16への充電が停止されているため、コンデンサCが劣化しない。
【0019】
実施形態の車両用電子制御ユニット10は、内蔵の蓄電手段の電力を電子制御パーキングブレーキアクチュエータ20に供給する。車両走行中に事故等で車体を損傷してバッテリからの電源ラインBLが断線した状態でも、運転者は電子制御パーキングブレーキを操作して制動を行って、車両を停止させることが可能になる。
【0020】
[実施形態の第1改変例]
図2は実施形態の第1改変例に係る車両用電子制御ユニットの回路図である。
車両用電子制御ユニット10は、パーキングブレーキの電子制御ユニットである。
車両用電子制御ユニット10では、バッテリBの+側にヒューズFUSEを介して入力側+B端子と、ヒューズFUSE及びイグニッションスイッチIGSWと介してIG端子とが接続されている。バッテリBの-側及びアースにグランド端子GNDが接続されている。車両用電子制御ユニット10は、負荷装置(電子制御パーキングブレーキアクチュエータ)20に、出力側+B端子と、出力端子OUTを介して接続されている。
【0021】
車両用電子制御ユニット10は、入力側+B端子からの電流を流すダイオードD1と、パーキングブレーキの制御及び内部電源の制御を行う制御手段14と、制御手段14の第1出力OUT1及びIG端子に接続された充電制御手段18と、充電制御手段18のトランジスタT1によりデュティ制御されたFETからの電流を充電するためのコンデンサCが直列に接続されてなる蓄電手段16と、FETと蓄電手段16との間に設けられ、充電電流を平滑にするインダクタンスLと、蓄電手段16からの電流を出力側+B端子側に流す整流手段を構成するダイオードD2と、FETとアースの間に設けられたダイオードD3と、を有する。充電制御手段18とFETとインダクタンスLとは電流制限手段12を構成する。FETはMOSFETから成る。直列接続されたコンデンサCは、電気二重層コンデンサである。各電気二重層コンデンサCには、放電及びセルバランス用の抵抗Rが並列接続されている。蓄電手段16のマイナス側はグランドに接続される。
【0022】
車両用電子制御ユニット10は、イグニッションスイッチIGSWがオンされると、充電制御手段18のトランジスタT1によりデュティ制御されたFETからの電流を流し、蓄電手段16への充電を開始する。充電中は、各コンデンサCに並列接続された抵抗Rによりセルバランスが保たれる。そして、イグニッションスイッチIGSWがオフされると、充電制御手段18による蓄電手段16への充電が停止される。各コンデンサCに蓄えられた電荷は並列接続された抵抗Rにより放電される。電源ラインBLを介してバッテリBからの電力が正常に供給される間は、バッテリBからの電力がダイオードD1を介して制御手段14に供給されると共に、出力側+B端子を介して負荷装置20に供給される。事故により電源ラインBLが断線する等、バッテリBからの電力が供給されなくなると、蓄電手段16からの電力がダイオードD2を介して制御手段14と共に、出力側+B端子を介して負荷装置20に供給される。制御手段14は、第2出力OUT2からの出力をトランジスタT2に印加し、出力端子OUTを介して接続されている負荷装置(電子制御パーキングブレーキアクチュエータ)20を制御する。
【0023】
実施形態の第1改変例に係る車両用電子制御ユニット10では、電流制限手段12は、デュティ制御用スイッチング素子であるFETと、インダクタンスLを備える。バッテリBからの電流をFETでデュティ制御し、インダクタンスLで平滑化し、コンデンサCから成る蓄電手段16に過大な電流(突入電流)を流すことなく電荷をチャージすることができる。デュティ制御を用いるため、比較的大きな電流で、短時間で蓄電手段を充電しても少ない電力損失とすることができる。
【0024】
実施形態の第1改変例に係る車両用電子制御ユニット10では、蓄電手段16のコンデンサCは、直列接続された電気二重層コンデンサである。電気二重層コンデンサは、通電状態で長時間経過すると性能劣化を起こし、その容量減少と内部抵抗増加が促進される。実施形態の第1改変例では、電力供給が必要とされる間のみ充電され、電力供給の不要の間は電荷が放電されているため、電気二重層コンデンサが劣化しない。各電気二重層コンデンサCは、抵抗Rが並列接続されている。電力供給の不要の間は電荷が並列接続された抵抗へ放電され、また、充電中は各電気二重層コンデンサのセルバランスが取られる。
【0025】
[実施形態の第2改変例]
図3は実施形態の第2改変例に係る車両用電子制御ユニットの回路図である。
実施形態の第2改変例の車両用電子制御ユニット10は、実施形態の第1改変例に係る車両用電子制御ユニット10と同様である。但し、実施形態の第2改変例では、電流制限手段12は、PCTサーミスタPCTから成る。PCTサーミスタPCTと蓄電手段16との間に、PCTサーミスタPCTからの電流を蓄電手段16側に流すダイオードD4が設けられている。
【0026】
実施形態の第2改変例に係る車両用電子制御ユニット10では、バッテリBからの電流をPCTサーミスタPCTの抵抗値が変化することで制限し、過大な電流が流れると温度上昇して内部抵抗が増加することから、コンデンサCから成る蓄電手段16に過大な電流(突入電流)を流すことなく電荷をチャージすることができる。制御動作を行わないため、廉価に構成でき、故障の可能性が低い。
【0027】
[実施形態の第3改変例]
図4は実施形態の第3改変例に係る車両用電子制御ユニットの回路図である。
実施形態の第3改変例の車両用電子制御ユニット10は、実施形態の第1改変例に係る車両用電子制御ユニット10と同様である。但し、実施形態の第3改変例では、デュティ制御用スイッチング素子であるFETが、蓄電手段16の負電位側に接続されている。FETのソース側がアースに接続されると共に、ダイオードD5を介して直列接続された負端部側のコンデンサC7のマイナス、即ち、蓄電手段の負電位側に接続される。ダイオードD5のアノード側がFETのソース側に接続される。ダイオードD5のカソード側が蓄電手段の負電位側に接続される。FETのドレインがインダクタンスLを介して蓄電手段の負電位側に接続される。FETのドレインは、ダイオードD4を介して蓄電手段の正電位側(直列接続された正端部側のコンデンサC1のプラス)に接続される。FETのドレインは、ダイオードD4のアノード側に接続される。ダイオードD4のカソード側が蓄電手段の正電位側に接続される。
【0028】
実施形態の第3改変例に係る車両用電子制御ユニット10では、デュティ制御用スイッチング素子を構成するFETは、蓄電手段16の負電位側に接続されている。デュティ制御用スイッチング素子を構成するFET、又は、トランジスタは、車両用電子制御ユニットのグランド電位を基準として動作するように回路形成できて、駆動が容易になる。
【0029】
以上のように構成して、本発明の車両用電子制御ユニットは、電源からの電力供給が断たれた際にも制御を継続できる。尚、上記各実施例において電子制御ユニット10と負荷装置20は別体として其々が電気的に接続されるものとしたが、電子制御ユニット10は負荷装置20と一体となして形成しても良い。これによって、係る接続部分の機械的損傷の可能性が低くなり、より安全性が向上する。
【符号の説明】
【0030】
10 車両用電子制御ユニット
12 充電制御手段
14 制御手段
16 蓄電手段
20 負荷装置
C コンデンサ
D1、D2、D3 ダイオード