(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147664
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220929BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049007
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】高橋 晋
(72)【発明者】
【氏名】森園 修
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB23
2C056EB24
2C056EB29
2C056EB59
2C056EC26
2C056FA13
2C056HA58
2C056JA01
2C056JB04
(57)【要約】
【課題】ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットの状態を、作業者の作業を要さずに取得することを可能とする。
【解決手段】メンテナンスユニット5は、X方向に移動可能に構成されており、吐出ヘッド31に対向する対向位置Laと、吐出ヘッド31からX方向に離れた離隔位置Lbとの間で移動する。X方向において対向位置Laより離隔位置Lb側に設けられた撮像範囲Riを撮像する撮像部8が具備されており、撮像範囲Riに重複するメンテナンスユニット5の少なくとも一部が撮像部8によって撮像されて、ユニット画像I2が取得される。すなわち、メンテナンスユニット5の状態を示すユニット画像I2を撮像部8によって取得することができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有し、前記ノズルから基材にインクを吐出する印刷動作を実行する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドにメンテナンスを実行するメンテナンスユニットと、
前記吐出ヘッドおよび前記メンテナンスユニットの少なくとも一方の駆動対象を駆動方向に駆動することで、前記吐出ヘッドに対向する対向位置と、前記対向位置から前記駆動方向に離れた離隔位置との間で、前記吐出ヘッドに対して前記メンテナンスユニットを相対的に移動させる駆動部と、
前記駆動方向において前記対向位置より前記離隔位置側に設けられた撮像範囲を撮像する撮像部と
を備え、
前記対向位置に位置する前記メンテナンスユニットは、前記吐出ヘッドにメンテナンスを実行し、
前記離隔位置に位置する前記メンテナンスユニットは、前記駆動方向において前記吐出ヘッドから離れ、
前記駆動部による前記駆動対象の駆動に伴って、前記メンテナンスユニットは前記撮像範囲に対して相対的に移動し、
前記撮像部は、前記駆動部による前記駆動対象の駆動に応じて前記撮像範囲に重複する前記メンテナンスユニットの少なくとも一部を撮像することでユニット画像を取得する印刷装置。
【請求項2】
前記撮像範囲は、前記駆動方向において前記対向位置と前記離隔位置との間に設けられた請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記対向位置と前記離隔位置との間での移動に伴って前記撮像範囲を相対的に通過する前記メンテナンスユニットを撮像する請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記駆動部は、前記印刷動作の開始前に、前記対向位置から前記離隔位置へ前記メンテナンスユニットを移動させ、
前記撮像部は、前記対向位置から前記離隔位置へ移動中に前記撮像範囲を通過する前記メンテナンスユニットを撮像する請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記駆動部は、前記印刷動作の終了後に、前記離隔位置から前記対向位置へ前記メンテナンスユニットを移動させ、
前記撮像部は、前記離隔位置から前記対向位置へ移動中に前記撮像範囲を通過する前記メンテナンスユニットを撮像する請求項3または4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記撮像部が取得した前記ユニット画像を作業者へ表示する表示部をさらに備える請求項1ないし5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記基材を搬送方向に搬送する基材搬送部をさらに備え、
前記吐出ヘッド、前記メンテナンスユニット、前記駆動部および前記撮像部をそれぞれ有する複数の印刷ユニットが前記搬送方向に配列され、
前記複数の印刷ユニットは、それぞれの前記吐出ヘッドから互いに異なる色のインクを前記基材搬送部により搬送される前記基材に吐出し、
前記複数の印刷ユニットそれぞれの前記撮像部は、それが属する前記印刷ユニットが前記吐出ヘッドから吐出するインクの色に応じて互いに異なる構成を有する請求項1ないし6のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記複数の印刷ユニットそれぞれの前記撮像部は、それが属する前記印刷ユニットが前記吐出ヘッドから吐出するインクの色に応じた波長の光を前記撮像範囲に照射しつつ前記撮像範囲を撮像する請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記撮像部は、所定の波長の光を選択的に通過させるフィルタと、前記撮像範囲から射出されて前記フィルタを通過した光を検出することで前記撮像範囲を撮像する撮像素子とを有し、
前記複数の印刷ユニットそれぞれの前記フィルタは、それが属する前記印刷ユニットが前記吐出ヘッドから吐出するインクの色に応じた波長の光を選択的に通過させる請求項7に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記撮像部が取得した前記ユニット画像を解析する制御部をさらに備える請求項1ないし9のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記撮像部が取得した前記ユニット画像に基づき前記メンテナンスユニットの状態を求める請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記メンテナンスユニットに付着したインクに関する情報を前記ユニット画像に基づき求める請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記メンテナンスユニットにおいてインクが付着する位置を前記ユニット画像に基づき求める請求項12に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記メンテナンスユニットに堆積したインクの厚みを前記ユニット画像に基づき求める請求項12または13に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記メンテナンスユニットを構成する基準部材の寸法を基準寸法として記憶し、前記ユニット画像に含まれる前記基準部材と前記インクとの寸法比と、前記基準寸法とに基づき、前記メンテナンスユニットに堆積したインクの厚みを求める請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記メンテナンスユニットに堆積するインクをそれぞれ異なる方向から撮像することで取得された複数の前記ユニット画像に基づき、前記メンテナンスユニットに堆積したインクの厚みを求める請求項14に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記撮像部が取得した前記ユニット画像に基づき前記メンテナンスユニットの乾燥の程度に関する情報を求める請求項10ないし16のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記制御部は、所定状態における前記メンテナンスユニットを前記撮像部により撮像した基準画像を記憶し、前記ユニット画像と前記基準画像との比較に基づき、前記メンテナンスユニットの状態を求める請求項10ないし17のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記所定状態は、前記メンテナンスユニットが未使用の新品である状態あるいは前記メンテナンスにより清掃された状態である請求項18に記載の印刷装置。
【請求項20】
前記撮像部は、前記吐出ヘッドが前記ノズルから前記メンテナンスユニットに吐出したインクを撮像して前記ユニット画像を取得し、
前記制御部は、前記吐出ヘッドの前記ノズルの状態を求める請求項10ないし19のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項21】
前記制御部は、前記メンテナンスユニットが前記駆動方向において異なる位置に位置する状態で前記撮像部により取得された複数の前記ユニット画像に基づき、前記ユニット画像に含まれる対象物の三次元形状を求める請求項10ないし20のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項22】
前記撮像部は、互いに異なる方向から前記撮像範囲を撮像する複数のカメラを有し、
前記制御部は、前記複数のカメラのそれぞれが取得した前記ユニット画像に基づき、前記ユニット画像に含まれる対象物の三次元形状を求める請求項10ないし20のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項23】
前記制御部は、前記ユニット画像と、前記ユニット画像を取得するまでに前記吐出ヘッドにより実行した前記印刷動作の履歴に関する履歴情報とを関連付けつつ、前記ユニット画像を蓄積する請求項10ないし22のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項24】
前記制御部は、前記ユニット画像と前記履歴情報とを蓄積した結果に基づき、前記印刷動作の実行に伴う前記メンテナンスユニットの状態の変化に相関を有する変数を求める請求項23に記載の印刷装置。
【請求項25】
前記制御部は、前記メンテナンスユニットの清掃を実行するタイミングを、前記変数に基づき求める請求項24に記載の印刷装置。
【請求項26】
前記制御部は、前記ユニット画像から、機械学習に対する教師データを作成する請求項10ないし25のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項27】
前記撮像部は、互いに異なる方向から前記撮像範囲に光を照射する複数の照明を有し、
前記対向位置から前記離隔位置へ向かう往路を移動する前記メンテナンスユニットに光を照射する前記照明と、前記離隔位置から前記対向位置へ向かう復路を移動する前記メンテナンスユニットに光を照射する前記照明とが互いに異なる請求項1ないし26のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項28】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドに対向する対向位置に位置するメンテナンスユニットにより、吐出ヘッドにメンテナンスを実行する工程と、
前記対向位置から前記メンテナンスユニットの駆動方向に離れた離隔位置に前記メンテナンスを位置させつつ、前記ノズルから基材にインクを吐出する印刷動作を吐出ヘッドにより実行する工程と、
前記駆動方向において前記対向位置より前記離隔位置側に設けられた撮像範囲を撮像部によって撮像する工程と
を備え、
前記撮像部は、前記撮像範囲に重複する前記メンテナンスユニットの少なくとも一部を撮像することでユニット画像を取得する印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットの状態を確認する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材にインクを付着させることで基材に印刷を行う印刷装置では、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドが一般に用いられている。かかる印刷装置では、印刷動作を行っていない期間に、吐出ヘッドにメンテナンスを適宜実行することで、ノズルの目詰まり等の不具合の抑制が図られる。例えば、特許文献1では、回復手段(メンテナンスユニット)が、吐出ヘッドのノズルを覆うキャップや、吐出ヘッドをワイパで掃除するワイプといったメンテナンスを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メンテナンスの実行に伴って、メンテナンスユニットへのインクの付着やメンテナンスユニットの摩耗が進行すると、吐出ヘッドのメンテナンスを適切に実行することができない。そこで、メンテナンスユニットの清掃が作業者によって適宜実行される。しかしながら、メンテナンスユニットへの清掃の要否を判断するには、作業者が印刷装置のカバーを開いて、メンテナンスユニットの状態を目視で判断する必要があり、作業者の作業負担が大きかった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットの状態を、作業者の作業を要さずに取得することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置は、インクを吐出するノズルを有し、ノズルから基材にインクを吐出する印刷動作を実行する吐出ヘッドと、吐出ヘッドにメンテナンスを実行するメンテナンスユニットと、吐出ヘッドおよびメンテナンスユニットの少なくとも一方の駆動対象を駆動方向に駆動することで、吐出ヘッドに対向する対向位置と、対向位置から駆動方向に離れた離隔位置との間で、吐出ヘッドに対してメンテナンスユニットを相対的に移動させる駆動部と、駆動方向において対向位置より離隔位置側に設けられた撮像範囲を撮像する撮像部とを備え、対向位置に位置するメンテナンスユニットは、吐出ヘッドにメンテナンスを実行し、離隔位置に位置するメンテナンスユニットは、駆動方向において吐出ヘッドから離れ、駆動部による駆動対象の駆動に伴って、メンテナンスユニットは撮像範囲に対して相対的に移動し、撮像部は、駆動部による駆動対象の駆動に応じて撮像範囲に重複するメンテナンスユニットの少なくとも一部を撮像することでユニット画像を取得する。
【0007】
本発明に係る印刷方法は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドに対向する対向位置に位置するメンテナンスユニットにより、吐出ヘッドにメンテナンスを実行する工程と、対向位置からメンテナンスユニットの駆動方向に離れた離隔位置にメンテナンスを位置させつつ、ノズルから基材にインクを吐出する印刷動作を吐出ヘッドにより実行する工程と、駆動方向において対向位置より離隔位置側に設けられた撮像範囲を撮像部によって撮像する工程とを備え、撮像部は、撮像範囲に重複するメンテナンスユニットの少なくとも一部を撮像することでユニット画像を取得する。
【0008】
このように構成された本発明(印刷装置、印刷方法)では、吐出ヘッドおよびメンテナンスユニットの少なくとも一方は、駆動方向に移動可能に構成されており、吐出ヘッドに対向する対向位置と、吐出ヘッドから駆動方向に離れた離隔位置との間で移動する。また、駆動方向において対向位置より離隔位置側に設けられた撮像範囲を撮像する撮像部が具備されており、撮像範囲に重複するメンテナンスユニットの少なくとも一部が撮像部によって撮像されて、ユニット画像が取得される。すなわち、メンテナンスユニットの状態を示すユニット画像を撮像部によって取得することができる。こうしてノズルからインクを吐出する吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットの状態を、作業者の作業を要さずに取得することを可能となっている。
【0009】
また、撮像範囲は、駆動方向において対向位置と離隔位置との間に設けられるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、駆動部によって駆動されるメンテナンスユニットの可動範囲である対向位置と離隔位置との間に撮像範囲が設けられる。そのため、撮像範囲へ移動させるための機構を駆動部に別途設ける必要が無く、合理的である。
【0010】
また、撮像部は、対向位置と離隔位置との間での移動に伴って撮像範囲を相対的に通過するメンテナンスユニットを撮像するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、対向位置あるいは離隔位置といった移動先へ向かって撮像範囲を通過するメンテナンスユニットが撮像される。これによって、メンテナンスユニットが移動先へ移動する期間を利用して、ユニット画像を効率的に取得することができる。
【0011】
また、駆動部は、印刷動作の開始前に、対向位置から離隔位置へメンテナンスユニットを移動させ、撮像部は、対向位置から離隔位置へ移動中に撮像範囲を通過するメンテナンスユニットを撮像するように、印刷装置を構成してもよい。これによって、メンテナンスユニットが離隔位置へ移動する期間を利用して、印刷動作の開始前におけるメンテナンスユニットの状態(ユニット画像が示す状態)を効率的に取得することができる。
【0012】
また、駆動部は、印刷動作の終了後に、離隔位置から対向位置へメンテナンスユニットを移動させ、撮像部は、離隔位置から対向位置へ移動中に撮像範囲を通過するメンテナンスユニットを撮像するように、印刷装置を構成してもよい。これによって、メンテナンスユニットが対向位置へ移動する期間を利用して、印刷動作の終了後におけるメンテナンスユニットの状態(ユニット画像が示す状態)を効率的に取得することができる。
【0013】
また、撮像部が取得したユニット画像を作業者へ表示する表示部をさらに備えるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、作業者は、表示部に表示されたユニット画像によってメンテナンスユニットの状態を把握して、メンテナンスユニットの清掃の要否を簡便に判断できる。
【0014】
また、基材を搬送方向に搬送する基材搬送部をさらに備え、吐出ヘッド、メンテナンスユニット、駆動部および撮像部をそれぞれ有する複数の印刷ユニットが搬送方向に配列され、複数の印刷ユニットは、それぞれの吐出ヘッドから互いに異なる色のインクを基材搬送部により搬送される基材に吐出し、複数の印刷ユニットそれぞれの撮像部は、それが属する印刷ユニットが吐出ヘッドから吐出するインクの色に応じて互いに異なる構成を有するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、ユニット画像に写るインクの色に応じた適切な構成でユニット画像を取得することができる。
【0015】
具体的には、複数の印刷ユニットそれぞれの撮像部は、それが属する印刷ユニットが吐出ヘッドから吐出するインクの色に応じた波長の光を撮像範囲に照射しつつ撮像範囲を撮像するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、メンテナンスユニットに付着・堆積したインクを鮮明にユニット画像に写すことができる。
【0016】
あるいは、撮像部は、所定の波長の光を選択的に通過させるフィルタと、撮像範囲から射出されてフィルタを通過した光を検出することで撮像範囲を撮像する撮像素子とを有し、複数の印刷ユニットそれぞれのフィルタは、それが属する印刷ユニットが吐出ヘッドから吐出するインクの色に応じた波長の光を選択的に通過させるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、メンテナンスユニットに付着・堆積したインクを鮮明にユニット画像に写すことができる。
【0017】
また、撮像部が取得したユニット画像を解析する制御部をさらに備えるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、ユニット画像の解析によって、ユニット画像に含まれる情報を抽出することができる。
【0018】
また、制御部は、撮像部が取得したユニット画像に基づきメンテナンスユニットの状態を求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、ユニット画像が示すメンテナンスユニットの状態を確認することができる。
【0019】
また、制御部は、メンテナンスユニットに付着したインクに関する情報をユニット画像に基づき求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、ユニット画像が示すメンテナンスユニットに付着・堆積したインクの状態を確認することができる。
【0020】
また、制御部は、メンテナンスユニットにおいてインクが付着する位置をユニット画像に基づき求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、ユニット画像が示すインクの付着位置を確認することができる。
【0021】
また、制御部は、メンテナンスユニットに堆積したインクの厚みをユニット画像に基づき求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、ユニット画像が示すインクの厚みを確認することができる。
【0022】
また、制御部は、メンテナンスユニットを構成する基準部材の寸法を基準寸法として記憶し、ユニット画像に含まれる基準部材とインクとの寸法比と、基準寸法とに基づき、メンテナンスユニットに堆積したインクの厚みを求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、基準部材の基準寸法との比較によって、インクの厚みを簡便に求めることができる。
【0023】
また、制御部は、メンテナンスユニットに堆積するインクをそれぞれ異なる方向から撮像することで取得された複数のユニット画像に基づき、メンテナンスユニットに堆積したインクの厚みを求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、複数のユニット画像の視差によって、インクの厚みを的確に求めることができる。
【0024】
また、制御部は、撮像部が取得したユニット画像に基づきメンテナンスユニットの乾燥の程度に関する情報を求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、メンテナンスユニットの乾燥が進行していると判断される場合には、吐出ヘッドから吐出するインクによりメンテナンスユニットを湿らせる等の処置を適宜実行することができる。
【0025】
また、制御部は、所定状態におけるメンテナンスユニットを撮像部により撮像した基準画像を記憶し、ユニット画像と基準画像との比較に基づき、メンテナンスユニットの状態を求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、ユニット画像と基準画像との比較に基づき、メンテナンスユニットの状態の変化を確認することができる。
【0026】
また、所定状態は、メンテナンスユニットが未使用の新品である状態あるいはメンテナンス作業により清掃された状態であるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、清浄な状態からのメンテナンスユニットの状態の変化を確認することができる。
【0027】
また、撮像部は、吐出ヘッドがノズルからメンテナンスユニットに吐出したインクを撮像してユニット画像を取得し、制御部は、吐出ヘッドのノズルの状態を求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、ノズルの吐出不良等を的確に確認することができる。
【0028】
また、制御部は、メンテナンスユニットが駆動方向において異なる位置に位置する状態で撮像部により取得された複数のユニット画像に基づき、ユニット画像に含まれる対象物の三次元形状を求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、制御部は、複数のユニット画像の視差に基づき対象物の三次元形状を的確に求めることができる。
【0029】
また、撮像部は、互いに異なる方向から撮像範囲を撮像する複数のカメラを有し、制御部は、複数のカメラのそれぞれが取得したユニット画像に基づき、ユニット画像に含まれる対象物の三次元形状を求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、複数のカメラのそれぞれで撮像した複数のユニット画像の視差に基づき対象物の三次元形状を的確に求めることができる。
【0030】
また、制御部は、ユニット画像と、ユニット画像を取得するまでに吐出ヘッドにより実行した印刷動作の履歴に関する履歴情報とを関連付けつつ、ユニット画像を蓄積するように、印刷装置を構成してもよい。このように履歴情報と関連付けて蓄積されたユニット画像は、印刷動作の履歴とユニット画像が示す状態との相関関係を解析するのに有用である。
【0031】
また、制御部は、ユニット画像と履歴情報とを蓄積した結果に基づき、印刷動作の実行に伴うメンテナンスユニットの状態の変化に相関を有する変数を求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、当該変数の値に基づき、メンテナンスユニットの清掃の要否を判断することが可能となる。
【0032】
また、制御部は、メンテナンスユニットの清掃を実行するタイミングを、変数に基づき求めるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、メンテナンスユニットの清掃タイミングを的確に求めることができる。
【0033】
また、制御部は、ユニット画像から、機械学習に対する教師データを作成するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、教師データを簡便に作成することができる。
【0034】
また、撮像部は、互いに異なる方向から撮像範囲に光を照射する複数の照明を有し、対向位置から離隔位置へ向かう往路を移動するメンテナンスユニットに光を照射する照明と、離隔位置から対向位置へ向かう復路を移動するメンテナンスユニットに光を照射する照明とが互いに異なるように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、撮像部は、対向位置と離隔位置との間を往復するメンテナンスユニットの往路と復路とで異なる方向から光を照射しつつ撮像範囲を通過するメンテナンスユニットを撮像することができる。これによって、メンテナンスユニットの異なる部分の状態を取得することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明によれば、ノズルからインクを吐出する吐出ヘッドをメンテナンスするメンテナンスユニットの状態を、作業者の作業を要さずに取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図。
【
図2】
図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図3】ヘッドユニットの構成を模式的に示す底面図。
【
図4】メンテナンスユニットの構成を模式的に示す斜視図。
【
図5】キャップの断面およびキャップに接続されたインク排出ユニットを模式的に示す図。
【
図6A】メンテナンスユニットによるキャップの実行態様を模式的に示す部分断面図。
【
図6B】メンテナンスユニットによるパージの実行態様を模式的に示す部分断面図。
【
図6C】メンテナンスユニットによる移動の実行態様を模式的に示す部分断面図。
【
図7】メンテナンスユニットの動作を模式的に示す図。
【
図17】メンテナンスユニットを撮像したユニット画像に基づく制御の変形例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は本発明に係る印刷装置の一例を模式的に示す正面図であり、
図2は
図1の印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。
図1および以下の図では、水平方向であるX方向、X方向に直交する水平方向であるY方向および鉛直方向であるZ方向を適宜示す。印刷装置1は、ロール・トゥ・ロールで長尺帯状のウェブWを搬送しつつ、インクジェット方式でウェブWにインクを吐出することで、ウェブWに画像を印刷する。ウェブWの素材は紙あるいはフィルムであり、ウェブWは可撓性を有する。印刷装置1は、装置全体を統括的に制御する制御部10を備え、印刷実行に必要となる制御は制御部10によって実行される。
【0038】
この制御部10は、演算部11、記憶部12および通信部13を有するコンピュータである。演算部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成され、印刷に必要な演算を実行する。記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)等の記憶装置であり、印刷に必要なデータや、印刷に伴って取得されるデータ等を記憶する。通信部13は、外部のコンピュータ等の外部装置との通信を実行する。
【0039】
また、印刷装置1は、例えば液晶モニター等によって構成されたディスプレイ14を備え、制御部10は、ディスプレイ14に情報を表示することで、当該情報を作業者に報知する。このディスプレイ14はタッチパネルで構成されており、作業者による入力操作を受け付ける機能を有する。作業者によってディスプレイ14に入力された情報は、制御部10に送信されて、制御部10による制御に使用される。なお、入力機能は、ディスプレイ14とは別に設けられたキーボードやマウス等の入力機器によって構成されてもよい。
【0040】
印刷装置1は、ウェブWを搬送する搬送部2を備える。搬送部2は、操出ローラ21と巻取ローラ22とを有し、操出ローラ21が繰り出すウェブWを巻取ローラ22により巻き取ることで、ロール・トゥ・ロールでウェブWを搬送する。この搬送部2は、操出ローラ21から繰り出されたウェブWを取り込む取り込み部23を、操出ローラ21と巻取ローラ22との間に備える。取り込み部23は、2本の駆動ローラ231と、2本のニップローラ232と、2本の駆動ローラ231の間に設けられたエッジ位置調整部234とを有する。各駆動ローラ231はウェブWを巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。2本のニップローラ232はそれぞれ2本の駆動ローラ231に対応して設けられ、各ニップローラ232は対応する駆動ローラ231との間にウェブWを挟む。エッジ位置調整部234は、ウェブWの幅方向であるX方向において、ウェブWの端の位置を調整する。
【0041】
また、搬送部2は、取り込み部23と巻取ローラ22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラ24を有する。これら支持ローラ24は、インクジェット方式でインクが吐出されるウェブWを下方から支持しつつ、ウェブWをY方向へ搬送する。特に、複数の支持ローラ24は、ウェブWの搬送方向(Y方向)の下流側の支持ローラ24ほど高い位置に位置するように、傾斜して配列されている。したがって、これら支持ローラ24によって搬送されるウェブWは、Y方向へ向かうに連れて上昇するように傾斜して搬送される。
【0042】
さらに、搬送部2は、これら支持ローラ24と巻取ローラ22との間でウェブWを支持する複数の支持ローラ25と、これら支持ローラ25と巻取ローラ22との間に配置された乾燥部26を有する。乾燥部26はヒートドラム261と、ヒートドラム261から巻取ローラ22へ向かうウェブWを支持する支持ローラ262とを有する。ヒートドラム261はウェブWの搬送に応じて回転駆動され、内蔵するヒータによってウェブWを加熱することでウェブWを乾燥させる。また、搬送部2は、乾燥部26から巻取ローラ22へ向かうウェブWを支持する複数の支持ローラ27を有する。さらに、搬送部2は、これら支持ローラ27と巻取ローラ22との間に配置された駆動ローラ281とニップローラ282とを有する。駆動ローラ281は、ウェブWを巻き掛けつつモータの駆動力によって回転することで、ウェブWを駆動する。ニップローラ282は駆動ローラ281との間にウェブWを挟む。
【0043】
印刷装置1は、複数の支持ローラ24によって支持されるウェブWに上方から対向する複数(6個)のヘッドユニット3(
図3)を有する。
図3はヘッドユニットの構成を模式的に示す底面図である。ヘッドユニット3は、複数(5個)の吐出ヘッド31を有する。複数の吐出ヘッド31は2行千鳥でX方向に配列されており、換言すれば、X方向に平行に配列された3個のヘッドユニット3からなるヘッド列C31と、X方向に平行に配列された2個のヘッドユニット3からなるヘッド列C31とがY方向に設けられている。各吐出ヘッド31では、複数のノズル311がX方向に千鳥状に配列されて上方からウェブWに対向し、各ノズル311はインクジェット方式でインクをウェブWに吐出する。このヘッドユニット3は、各吐出ヘッド31を保持するヘッド保持部材32を有する。ヘッド保持部材32は、複数の吐出ヘッド31に対応して設けられた複数のヘッド挿入孔321を有し、複数の吐出ヘッド31のそれぞれ対応するヘッド挿入孔321に挿入された状態で、ヘッド保持部材32に固定される。かかるヘッド保持部材32は、金属あるいは樹脂といった非弾性部材で構成することができる。
【0044】
図1に示すように、複数の支持ローラ24によって支持されるウェブWの傾斜に応じて、複数のヘッドユニット3それぞれの姿勢が設定される。つまり、複数のヘッドユニット3のうち、ウェブWの搬送方向の上流側のヘッドユニット3ほどZ方向に対する傾きが大きくなるように、各ヘッドユニット3が配置されている。ただし、ウェブWの搬送方向(Y方向)の最下流のヘッドユニット3は水平に配置されており、Z方向に対して傾いておらず、当該最下流のヘッドユニット3以外のヘッドユニット3が、ウェブWの搬送方向に向かって高くなるように傾く。なお、ヘッドユニット3の傾きは、ノズル311が形成された吐出ヘッド31の底面がZ方向に対してなす角度によって評価できる。
【0045】
複数のヘッドユニット3のそれぞれは、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックを含む互いに異なる色のインクを、制御部10からの指令に応じてノズル311から吐出する。これによって、ウェブWにカラー画像を印刷することができる。ただし、ヘッドユニット3の個数やインクの色は、ここの例に限られない。
【0046】
また、印刷装置1は、複数のヘッドユニット3に対応してそれぞれ設けられた複数の昇降駆動部4を備える。各昇降駆動部4は、対応するヘッドユニット3を制御部10からの指令に応じて昇降させることで、互いに高さの異なる複数の位置のいずれかにヘッドユニット3を位置させることができる。
図1では、各ヘッドユニット3はウェブWにもっとも近接する印刷高さh0に位置する。かかる昇降駆動部4は、周知の具体的構成により実現でき、例えばボールネジあるいは偏心カム等をモータで駆動することでヘッドユニット3を昇降するように構成することができる。
【0047】
さらに、印刷装置1は、ヘッドユニット3に対してメンテナンスを実行するメンテナンスユニット5(
図4)と、メンテナンスユニット5を水平方向(X方向)に駆動する水平駆動部61とを備える。これらメンテナンスユニット5および水平駆動部61は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられる。このメンテナンスユニット5は、水平駆動部61によって清掃方向であるX方向に移動することで、後述するワイプをヘッドユニット3に実行する。メンテナンスユニット5および水平駆動部61は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられる。水平駆動部61は、例えばメンテナンスユニット5を支持するX方向に延設されたレールと、メンテナンスユニット5をX方向に駆動するリニアモータによって構成することができる。また、リニアモータに代えて、メンテナンスユニット5に取り付けられたベルトを巻き掛けるプーリをモータで回転させる機構や、メンテナンスユニット5を直動させるボールネジを用いても構わない。続いては、メンテナンスユニット5の詳細について説明を行う。
【0048】
図4はメンテナンスユニットの構成を模式的に示す斜視図である。上述の通り、メンテナンスユニット5は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられ、各メンテナンスユニット5は対応するヘッドユニット3に下方から対向する。この際、ヘッドユニット3の傾きに応じて、メンテナンスユニット5も傾いて配置される。ただし、メンテナンスユニット5の傾きは僅かであるため、
図4および以下の図では、メンテナンスユニット5の傾きは反映させていない。また、複数のヘッドユニット3に対応して設けられた複数のメンテナンスユニット5は共通の構成を備えるため、1つのメンテナンスユニット5について説明を行うこととする。
【0049】
メンテナンスユニット5は、X方向に長尺な直方体形状を有するベース部材51を有し、水平駆動部61(
図2)はベース部材51を支持しつつX方向に駆動する。このベース部材51には、X方向に長尺な直方体形状を有して上方へ開口するキャップ挿入孔511が設けられている。メンテナンスユニット5は、対向するヘッドユニット3の複数の吐出ヘッド31に対応して、複数のキャップ挿入孔511を有する。こうして複数のキャップ挿入孔511が2行千鳥でX方向に配列されている。
【0050】
また、メンテナンスユニット5は、複数のキャップ挿入孔511のそれぞれに嵌め込まれたキャップ52を有する。このようにメンテナンスユニット5は、対向するヘッドユニット3の複数の吐出ヘッド31に対応して複数のキャップ52を有し、各キャップ52は対応する吐出ヘッド31に下方から対向して当該吐出ヘッド31から落下したインクを受ける。複数のキャップ52は2行千鳥でX方向に配列されており、換言すれば、X方向に平行に配列された3個のキャップ52からなるキャップ列C52と、X方向に平行に配列された2個のキャップ52からなるキャップ列C52とがY方向に設けられている。
【0051】
メンテナンスユニット5は、ベース部材51の上面に配置されたシール部材53を有する。シール部材53は、Z方向からの平面視において長方形状を有する枠体であり、複数のキャップ52のそれぞれに対して設けられている。このシール部材53は、ベース部材51の上面から所定の高さ突出し、平面視において対応するキャップ52を外側から囲む。このシール部材53は、ゴムあるいはシリコン等の弾性部材で構成され、外力に応じて弾性変形する。なお、同様のシール部材をベース部材51の平面縁部に沿って配設してもよい。
【0052】
また、メンテナンスユニット5は、ゴムあるいはシリコン等の弾性変形する弾性部材で構成されたワイパ54を有する。ワイパ54は、Y方向に平行に延設された平板形状を有するブレードであり、ベース部材51の上面から立設されている。ワイパ54は、複数(2列)のキャップ列C52のそれぞれに対応して設けられており、各ワイパ54は、対応するキャップ列C52のX方向(清掃方向)の上流側に配置されている。こうしてベース部材51のX方向の上流端では、複数(2本)のワイパ54がY方向に配列される。各ワイパ54は、後述するように、吐出ヘッド31からインクを掻き取る。
【0053】
さらに、メンテナンスユニット5は、複数のワイパ54のそれぞれに対して設けられたタンク取付部512を有する。このタンク取付部512は、ベース部材51に形成された上方に開口する孔であり、対応するワイパ54の下方に位置し、各タンク取付部512には廃液容器513が挿入される。こうして、複数のワイパ54のそれぞれの下方に廃液容器513が設けられる。各廃液容器513は、上方に開口する箱体のタンクであり、対応するワイパ54に下方から対向する。かかる廃液容器513は、ワイパ54により掻き取られてワイパ54から落下してきたインクを貯留する。なお、廃液容器513は箱体である必要はなく、インクを受けるパンでも構わない。
【0054】
図5はキャップの断面およびキャップに接続されたインク排出ユニットを模式的に示す図である。キャップ52は、X方向に長尺な直方体形状を有するキャップ本体521を有する。キャップ本体521は樹脂製であり、上記の弾性部材と比較して弾性変形しにくい性質を有する。キャップ本体521には上方に開口する凹部522が設けられている。凹部522は直方体形状を有し、凹部522を囲むキャップ本体521の上面523は平面である。凹部522の底面524は平面形状を有し、この底面524では、キャップ本体521をZ方向に貫通する排出口525が開口する。また、凹部522の底面524に対しては、スポンジ等で構成されたインク吸収部材526が載置されている。
【0055】
また、
図5に示すように、印刷装置1は、キャップ52の凹部522からインクを排出するインク排出ユニット7を備える。インク排出ユニット7は、廃液容器71と、ポンプ72と、廃液容器71とポンプ72とを接続する配管73と、排出口525とポンプ72とを接続する可撓性の配管74とを有する。したがって、ポンプ72によって排出口525を排気することで、インク吸収部材526に付着したインクが排出口525を介して廃液容器71に廃棄される。廃液容器71、ポンプ72および配管73は、メンテナンスユニット5の複数(5個)のキャップ52に共通して設けられ、複数のキャップ52それぞれに設けられた配管74が、ポンプ72に接続される。ただし、複数のキャップ52のそれぞれに、インク排出ユニット7を設けるように構成しても構わない。
【0056】
図6Aはメンテナンスユニットによるキャップの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、
図6Bはメンテナンスユニットによるパージの実行態様を模式的に示す部分断面図であり、
図6Cはメンテナンスユニットによる移動の実行態様を模式的に示す部分断面図である。
【0057】
上述の通り、昇降駆動部4はヘッドユニット3を昇降させる。これによって、ヘッドユニット3はその底面高さを基準に、印刷高さh0(
図1)、印刷高さh0より高いキャップ高さh1(
図6A)、キャップ高さh1より高いパージ高さh2(
図6B)、パージ高さh2より高い退避高さh3(
図6C)のいずれかに位置することができる。なお、
図6A~
図6Cに示すように、吐出ヘッド31の底面31Lおよびヘッド保持部材32の底面32Lはいずれも平面であって面一に並ぶ。また、ヘッドユニット3の高さh1~h3は、当該底面31L、32L(換言すればヘッドユニット3の底面)の高さで示されている。
【0058】
ヘッドユニット3が高さh1~h3のいずれかに位置する場合は、ヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5が位置することができる。一方、ヘッドユニット3が印刷高さh0に位置する場合は、ヘッドユニット3とウェブWとの間にメンテナンスユニット5が位置できない。そのため、水平駆動部9がメンテナンスユニット5をウェブWよりX方向へ退避させる。
【0059】
これらの図に示すように、ヘッド保持部材32の底面32Lには、Z方向に延設されて下方に開口する位置決め孔322が設けられている。この位置決め孔322には、キャップ52の位置決め突起527が下方から挿脱可能であり、四隅に設けられた4個の位置決め突起527に対応して4個の位置決め孔322が設けられている。この位置決め孔322は、位置決め突起527よりも長い。また、キャップ52は、ベース部材51のキャップ挿入孔511に対してZ方向に昇降可能である。キャップ52の底面とキャップ挿入孔511の底面との間には、圧縮バネ514(付勢部材)が設けられており、キャップ52は圧縮バネ514によってベース部材51に対して上方へ付勢されている。
【0060】
図6Aに示すキャップ時は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ52は、ヘッドユニット3の複数の吐出ヘッド31にそれぞれ下方から対向する。ヘッドユニット3はキャップ高さh1に位置して、ヘッドユニット3のヘッド保持部材32の底面32Lがシール部材53に上方から接触する。シール部材53は、接触するヘッド保持部材32の底面32Lの形状に応じて弾性変形して、当該底面32Lに密着する。これによって、ヘッド保持部材32の底面32Lとシール部材53との間の隙間は消失し、底面視においてシール部材53の内側に存在する吐出ヘッド31の底面31Lおよびノズル311はシール部材53によって封止される。こうして、ヘッドユニット3に密着するシール部材53は、シール部材53の内側と外側との間の空気の流れを遮断して、シール部材53の内側のノズル311をシール部材53の外側の雰囲気から隔絶する。すなわち、底面視において吐出ヘッド31はシール部材53の内側に位置して、ヘッドユニット3に密着するシール部材53によって外気から遮断される。これによって、吐出ヘッド31のノズル311の保湿が行われる。
【0061】
図6Aに示すキャップ時において、位置決め突起527の位置と位置決め孔322の位置とはY方向に僅かにずれており、位置決め突起527は位置決め孔322に嵌らない。このような位置決め突起527と位置決め孔322との位置関係は、水平駆動部9によってキャップ52の位置を調整することで実現できる。その結果、位置決め突起527の上端は、キャップ高さh1のヘッド保持部材32の底面に、圧縮バネ514の付勢力によって下方から押圧される。したがって、キャップ本体521は、ヘッド保持部材32の底面32Lよりも、位置決め突起527の長さ分だけ下方に位置する。
【0062】
図6Bに示すパージ時は、メンテナンスユニット5の複数のキャップ52は、ヘッドユニット3の複数の吐出ヘッド31にそれぞれ下方から対向する。ヘッドユニット3はパージ高さh2に位置して、シール部材53から上方へ離間する。位置決め突起527の位置と位置決め孔322の位置とは一致しており、位置決め突起527は位置決め孔322に下方から嵌る。その結果、
図6Aのキャップ時と比較してキャップ52のキャップ本体521はヘッドユニット3に近接し、キャップ52のキャップ本体521の上面521Uがヘッド保持部材32の底面32Lに接触する。キャップ52のキャップ本体521は樹脂製であるため、シール部材53のように弾性変形しない。したがって、キャップ本体521の上面521Uがヘッド保持部材32の底面32Lに当接した状態において、キャップ本体521の上面521Uとヘッド保持部材32の底面32Lとの間には微小な隙間が存在する。つまり、ヘッド保持部材32に当接するキャップ52は、この隙間を介したキャップ52の内側と外側との空気の流れを許容する。
【0063】
吐出ヘッド31のノズル311の目詰まりを防止するためにパージを実行する際には、制御部10は、ヘッドユニット3およびメンテナンスユニット5に
図6Bに示す動作を実行させる。パージは、吐出ヘッド31内に貯留されるインクに圧力を加えてノズル311からインクを所定時間流出させることで実行される。一方、ヘッド保持部材32に当接するキャップ52の凹部522内のインク吸収部材526は、下方から吐出ヘッド31に対向して、吐出ヘッド31のノズル311から流出するインクを受ける。こうしてインク吸収部材526に受けられたインクは、廃液容器71に回収される。
【0064】
図6Cに示す退避時は、ヘッドユニット3は退避高さh3に位置する。退避高さh3は、位置決め突起527が圧縮バネ66の付勢力によって上昇できる最高点よりも高く、ヘッドユニット3は、位置決め突起527からZ方向に離間する。もちろん、ヘッドユニット3はキャップ52やシール部材53からもZ方向に離間する。
【0065】
図7はメンテナンスユニットの動作を模式的に示す図である。メンテナンスユニット5は印刷動作の停止期間中に印刷ヘッド3の下面をキャップして外部雰囲気から保護する部材である。本実施形態では、作業者がディスプレイ14を介して制御部10に印刷動作の開始を指示すると、制御部10がメンテナンスユニット5を対向位置Laから離隔位置Lbに向けて移動させる。また、作業者がディスプレイ14を介して制御部10に印刷動作の終了を指示すると、制御部10がメンテナンスユニット5を離隔位置Lbから対向位置Laに向けて移動させる。メンテナンスユニット5が対向位置Laと離隔位置Lbとの間を移動する過程で撮像部8(後述)によるメンテナンスユニット5の撮像が行われる。
【0066】
また、
図7では、X方向の一方側X1と他方側X2とが示されている。ここで、一方側X1と他方側X2とは互いに逆を向く。上述の通り、メンテナンスユニット5は、水平駆動部61からの駆動力を受けてX方向に移動する。特に、
図7に示すように、メンテナンスユニット5に対しては、X方向において互いに異なる対向位置Laおよび離隔位置Lbが設けられており、メンテナンスユニット5は、対向位置Laと離隔位置Lbとの間で移動する。ここで、対向位置Laは、ヘッドユニット3に対向する位置であり、離隔位置Lbは、対向位置LaからX方向に間隔を空けて設けられた位置である。換言すれば、平面視において、ヘッドユニット3と離隔位置LbとはX方向に間隔を空けて並ぶ。
【0067】
メンテナンスユニット5が対向位置Laに位置する場合は、メンテナンスユニット5はヘッドユニット3に下方から対向し、メンテナンスユニット5の複数のキャップ52は、ヘッドユニット3の複数の吐出ヘッド31のそれぞれに下方から対向する。一方、メンテナンスユニット5が離隔位置Lbに位置する場合には、メンテナンスユニット5はヘッドユニット3からX方向に退避する。つまり、平面視において、メンテナンスユニット5は、ヘッドユニット3のX方向の一方側X1に位置して、ヘッドユニット3に重複しない。
【0068】
また、印刷装置1は、離隔位置Lbに対して設けられた平板形状のカバー部材63を備える。カバー部材63とヘッドユニット3とはX方向に間隔を空けて並び、カバー部材63は、離隔位置Lbに位置するメンテナンスユニット5に上方から対向することで、メンテナンスユニット5を覆う。なお、メンテナンスユニット5に多量のインクが付着したような場合には、メンテナンスユニット5の清掃作業が作業者によって実行される。この清掃作業は、例えば、メンテナンスユニット5を離隔位置Lbに位置させつつカバー部材63を取り外してメンテナンスユニット5を露出させた状態で実行される。
【0069】
また、上述の通り、ヘッドユニット3は、昇降駆動部4からの駆動力を受けて昇降する。つまり、
図7に示すように、ヘッドユニット3は、Z方向において互いに異なる印刷位置Ha、退避位置Hbおよびキャップ位置Hcの間で昇降する。ここで、印刷位置Haは印刷高さh0に位置し、退避位置Hbは退避高さH3に位置し、キャップ位置Hcはキャップ高さH1に位置する。つまり、印刷位置HaはウェブWに近接する位置であり、退避位置Hbは印刷位置HaよりもウェブWから離間した位置であり、キャップ位置Hcは印刷位置HaよりもウェブWから離間するとともに退避位置HbよりもウェブWに近接する位置である。
【0070】
さらに、印刷装置1は、X方向における対向位置Laと離隔位置Lbとの間に設けられた撮像範囲Riを上方から撮像する撮像部8を備える(
図8)。この撮像部8は、複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して設けられる。
図8は撮像部の構成の第1例を模式的に示す図である。撮像部8は、ヘッドユニット3とカバー部材63との間を介して、撮像範囲Riに対向する。この撮像部8は、照明81とカメラ83とを有し、照明81が撮像範囲Riに光(例えば、白色光)を照射しつつ、カメラ83が撮像範囲Riを撮像する。カメラ83は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の個体撮像素子で構成されたエリアセンサ811を有し、撮像範囲Riで反射された光を当該エリアセンサ811により検出することで、撮像範囲Riを撮像する。照明81は、キャップ52の上面521Uに垂直な法線Nに対して角度θ81だけ他方側X2側へ傾いた斜め上方から撮像範囲Riに光を照射し、カメラ83は、当該法線Nに対して角度θ83だけ他方側X2側へ傾いた斜め上方から撮像範囲Riを撮像する。これによって、キャップ52およびシール部材53それぞれの側面および上面に光を照射しつつ、これらを撮像することができる。なお、法線Nに対して照明81およびカメラ83が傾く方向は、他方側X2に限られず、一方側X1でも構わない。
【0071】
例えば、印刷動作を開始する場合には、
図7に示すステップS101~S105が順に実行される。ステップS101では、メンテナンスユニット5が対向位置Laに位置しつつ、ヘッドユニット3がキャップ位置Hcに位置する。この状態では、メンテナンスユニット5の複数のシール部材53はヘッドユニット3のヘッド保持部材32に密着して、ヘッドユニット3の複数の吐出ヘッド31は、それぞれに対応するキャップ52およびシール部材53によって覆われる(キャップ)。これによって、各吐出ヘッド31が有する複数のノズル311の乾燥が抑制される。
【0072】
ステップS102では、ヘッドユニット3が退避位置Hbに移動して、メンテナンスユニット5の複数のシール部材53がヘッドユニット3のヘッド保持部材32から離間する。さらに、ステップS103では、メンテナンスユニット5が対向位置Laから離隔位置Lbへ向かって一方側X1へ移動する。そして、メンテナンスユニット5の一方側X1への移動に伴って、メンテナンスユニット5のワイパ54がヘッドユニット3の吐出ヘッド31に摺動されて、ワイパ54によって吐出ヘッド31からインクが掻き取られる(ワイプ)。
【0073】
また、ステップS103では、対向位置Laから離隔位置Lbへ移動するメンテナンスユニット5が撮像範囲Riを通過する。そこで、撮像部8は、撮像範囲Riを通過するメンテナンスユニット5を撮像して、メンテナンスユニット5の画像データを制御部10に送信する(撮像処理)。
【0074】
メンテナンスユニット5が離隔位置Lbに到着すると(ステップS104)、ヘッドユニット3が退避位置Hbから印刷位置Haへ下降する(ステップS105)。そして、印刷位置Haに位置するヘッドユニット3からウェブWにインクが吐出されて、ウェブWに印刷が実行される(印刷動作)。
【0075】
一方、印刷動作を終了した場合には、上述と逆の手順が実行される。つまり、印刷動作の終了直後は、ステップS105に示すように、ヘッドユニット3は印刷位置Haに位置してウェブWに近接し、メンテナンスユニット5は離隔位置Lbに位置してカバー部材63に覆われている。
【0076】
そして、ステップS104で、ヘッドユニット3が印刷位置Haから退避位置Hbに上昇し、ステップS103で、メンテナンスユニット5が離隔位置Lbから対向位置Laへ向かって他方側X2へ移動する。また、ステップS103では、メンテナンスユニット5の他方側X2への移動に伴って、メンテナンスユニット5のワイパ54がヘッドユニット3の吐出ヘッド31に摺動されて、ワイパ54によって吐出ヘッド31からインクが掻き取られる(ワイプ)。
【0077】
また、ステップS103では、離隔位置Lbから対向位置Laへ移動するメンテナンスユニット5が撮像範囲Riを通過する。そこで、撮像部8は、撮像範囲Riを通過するメンテナンスユニット5を撮像して、メンテナンスユニット5の画像データを制御部10に送信する(撮像処理)。
【0078】
メンテナンスユニット5が対向位置Laに到着すると(ステップS102)、ヘッドユニット3が退避位置Hbからキャップ位置Hcへ下降する(ステップS101)。その結果、ヘッドユニット3の複数の吐出ヘッド31は、それぞれに対応するキャップ52およびシール部材53によって覆われる(キャップ)。
【0079】
上述した印刷装置1では、メンテナンスユニット5を離隔位置Lbに退避させつつ、印刷位置Haに位置するヘッドユニット3からウェブWにインクを吐出することでウェブWに印刷を実行する(印刷動作)。この際、制御部10は、印刷動作において実行された各動作の履歴を示す履歴情報I1(
図9)を取得して、記憶部12に蓄積する。
【0080】
図9は履歴情報の一例を模式的に示す図である。
図9に示すように、履歴情報I1は、印刷動作を実行した印刷装置1を識別するための装置ID、印刷動作が実行された時刻、印刷動作で使用されたインクの種類、印刷動作で使用されたウェブWの種類および印刷動作が実行された印刷距離を含む。ここで、インクの種類としては、水性インク、油性インクおよびUV(Ultraviolet)インク等が挙げられ、ウェブWの種類としては、フィルム、コート紙および上質紙等が挙げられ、印刷距離は、印刷動作の実行対象となったウェブWの長さを示す。
【0081】
また、印刷装置1では、印刷動作の開始あるいは終了に伴って、X方向に移動するメンテナンスユニット5が撮像範囲Riを通過するタイミングで撮像処理が実行される(ステップS103)。続いては、この撮像処理について、説明する。
【0082】
図10は撮像処理の一例を示すフローチャートである。ステップS201では、撮像部8が撮像範囲Riを通過するメンテナンスユニット5を撮像することで、撮像範囲Riに含まれるメンテナンスユニット5の少なくとも一部を示す画像データであるユニット画像I2を取得して、制御部10に送信する。このユニット画像I2の取得は種々の態様で実行できる。例えば、メンテナンスユニット5のうちキャップ52の凹部522の周縁あるいはシール部材53といった対象箇所が撮像範囲Riを通過するタイミングで、撮像範囲Riを撮像することで、当該対象箇所を示すユニット画像I2を取得できる。あるいは、X方向において撮像範囲Riの幅をメンテナンスユニット5が移動する度に撮像を行って、各撮像で取得された画像データを接続することで、メンテナンスユニット5の全体を示すユニット画像I2を取得できる。もちろん、メンテナンスユニット5のうちの対象箇所毎のユニット画像I2と、メンテナンスユニット5の全体のユニット画像I2との両方を取得してもよい。
【0083】
ステップS203は、演算部11は、前回実行された清掃作業(換言すれば、直近に実行された清掃作業)より後に収集された履歴情報I1を記憶部12から読み出す。そして、演算部11は、記憶部12から読み出された履歴情報I1とユニット画像I2とを互いに対応付けた統合データI3を作成して、記憶部12に保存する(ステップS204)。これによって、清掃作業の後の印刷動作で実行された各動作の実行状況(履歴情報I1)とユニット画像I2との対応関係を、統合データI3によって確認することができる。
【0084】
以上に説明する実施形態では、メンテナンスユニット5は、X方向(駆動方向)に移動可能に構成されており、吐出ヘッド31に対向する対向位置Laと、吐出ヘッド31からX方向に離れた離隔位置Lbとの間で移動する。また、X方向において対向位置Laより離隔位置Lb側に設けられた撮像範囲Riを撮像する撮像部8が具備されており、撮像範囲Riに重複するメンテナンスユニット5の少なくとも一部が撮像部8によって撮像されて、ユニット画像I2が取得される。すなわち、メンテナンスユニット5の状態を示すユニット画像I2を撮像部8によって取得することができる。こうしてノズル311からインクを吐出する吐出ヘッド31をメンテナンスするメンテナンスユニット5の状態を、作業者の作業を要さずに取得することを可能となっている。
【0085】
また、撮像範囲Riは、X方向において対向位置Laと離隔位置Lbとの間に設けられている。つまり、水平駆動部61(駆動部)によって駆動されるメンテナンスユニット5の可動範囲である対向位置Laと離隔位置Lbとの間に撮像範囲Riが設けられる。そのため、撮像範囲Riへ移動させるための機構を水平駆動部61に別途設ける必要が無く、合理的である。
【0086】
また、撮像部8は、対向位置Laと離隔位置Lbとの間での移動に伴って撮像範囲Riを相対的に通過するメンテナンスユニット5を撮像する。すなわち、対向位置Laあるいは離隔位置Lbといった移動先へ向かって撮像範囲Riを通過するメンテナンスユニット5が撮像される。これによって、メンテナンスユニット5が移動先へ移動する期間を利用して、ユニット画像I2を効率的に取得することができる。
【0087】
また、水平駆動部61は、印刷動作の開始前に、対向位置Laから離隔位置Lbへメンテナンスユニット5を移動させ、撮像部8は、対向位置Laから離隔位置Lbへ移動中に撮像範囲Riを通過するメンテナンスユニット5を撮像する(ステップS103)。これによって、メンテナンスユニット5が離隔位置Lbへ移動する期間を利用して、印刷動作の開始前におけるメンテナンスユニット5の状態(ユニット画像I2が示す状態)を効率的に取得することができる。
【0088】
また、水平駆動部61は、印刷動作の終了後に、離隔位置Lbから対向位置Laへメンテナンスユニット5を移動させ、撮像部8は、離隔位置Lbから対向位置Laへ移動中に撮像範囲Riを通過するメンテナンスユニット5を撮像する(ステップS103)。これによって、メンテナンスユニット5が対向位置Laへ移動する期間を利用して、印刷動作の終了後におけるメンテナンスユニット5の状態(ユニット画像I2が示す状態)を効率的に取得することができる。
【0089】
ところで、上述のように撮像処理においては、履歴情報I1と対応付けつつユニット画像I2を記憶部12に保存することができる。そして、制御部10は、記憶部12に保存されたユニット画像I2の解析を適宜のタイミングで実行する。
【0090】
図11は画像解析の第1例を示すフローチャートである。この画像解析の第1例は、例えば、印刷動作の開始前あるいは印刷動作の終了後に実行される。ステップS301では、演算部11は、解析対象となるユニット画像I2、例えば直近の撮像処理で取得されたユニット画像I2を記憶部12から読み出す。
【0091】
ステップS302では、演算部11は、メンテナンスユニット5のうち、対象箇所(シール部材53あるいはキャップ52等)に付着したインクの位置および厚みをユニット画像I2に基づき算出する。具体的には、演算部11は、ユニット画像I2が示すインクの存在領域を抽出する。インクの存在領域の抽出は、種々の態様で実行可能である。例えば、インクの色と、インクの周囲の色の違いに基づき、インクの存在領域を抽出できる。
【0092】
あるいは、インクの付着が無いあるいは僅かであるメンテナンスユニット5を撮像した画像(基準画像)を判定基準I4として記憶しておき、この基準画像とユニット画像I2との比較に基づき、インクの存在領域を抽出できる。この場合、制御部10は、ユニット画像I2と基準画像との比較に基づき、メンテナンスユニット5の状態の変化を確認することができる。なお、インクの付着が無いメンテナンスユニット5を示す基準画像は、ワイプ、キャップおよびパージといったメンテナンスに未使用の(すなわち、新品の)メンテナンスユニット5を撮像することで取得できる。また、インクの付着が僅かであるメンテナンスユニット5を示す基準画像は、清掃作業の実行後であってメンテナンスの実行前のメンテナンスユニット5を撮像することで取得できる。かかる構成では、制御部10は、清浄な状態からのメンテナンスユニット5の状態の変化を確認することができる。
【0093】
シール部材53の上面が対象箇所である場合、
図8に示すように、カメラ83は、法線Nに対して傾斜した方向(すなわち、斜め上方)からシール部材53を撮像する。したがって、ユニット画像I2は、シール部材53の側面および上面の両方を含む。これに対して、記憶部12には、シール部材53の側面の高さが基準高さとして記憶されている。そこで、演算部11は、法線Nの方向(換言すれば、高さ方向)において、ユニット画像I2から抽出したインクの存在範囲の寸法と、基準高さの寸法とを比較した結果に基づき、シール部材53に付着したインクの厚みを求める。また、演算部11は、高さ方向に直交する平面におけるインクの存在範囲をインクの位置として求める。対象箇所がキャップ52である場合も、同様にインクの厚みおよび位置を求めることができる。
【0094】
ステップS303では、演算部11は、メンテナンスユニット5のシール部材53の清掃作業が必要か否かを判定する。具体的には、清掃作業の要否を判定する基準となる厚み閾値が判定基準I4として記憶部12に記憶されている。そして、演算部11は、インクの厚みが厚み閾値以上であれば、清掃作業が必要と判定し(ステップS303で「YES」)、インクの厚みが厚み閾値未満であれば、清掃作業が不要と判定する(ステップS303で「NO」)。
【0095】
清掃作業が必要と判定した場合には、演算部11は、その旨をディスプレイ14に表示することで、清掃作業の実行を作業者に要求する(ステップS304)。そして、演算部11は、メンテナンスユニット5を離隔位置Lbに移動させて(ステップS305)、清掃作業に備える。ちなみに、印刷動作の実行前に当該画像解析を行った場合には、実行予定であった印刷動作を中止して、ステップS304、S305が実行される。
【0096】
この第1例では、制御部10は、メンテナンスユニット5に付着したインクに関する情報をユニット画像I2に基づき求める(ステップS302)。こうして、制御部10は、ユニット画像I2が示すメンテナンスユニット5に付着・堆積したインクの状態を確認することができる。
【0097】
具体的には、制御部10は、メンテナンスユニット5においてインクが付着する位置をユニット画像I2に基づき求める(ステップS302)。こうして、制御部10は、ユニット画像I2が示すインクの付着位置を確認することができる。
【0098】
また、制御部10は、メンテナンスユニット5に堆積したインクの厚みをユニット画像に基づき求める(ステップS302)。こうして、制御部10は、ユニット画像I2が示すインクの厚みを確認することができる。
【0099】
また、制御部10は、メンテナンスユニット5を構成するシール部材53あるいはキャップ52(基準部材)の側面の高さを基準高さ(基準寸法)として記憶する。そして、制御部10は、ユニット画像I2に含まれるシール部材53あるいはキャップ52とインクとの寸法比と、当該基準高さとに基づき、メンテナンスユニット5に堆積したインクの厚みを求める。かかる構成では、シール部材53あるいはキャップ52の基準高さとの比較によって、インクの厚みを簡便に求めることができる。
【0100】
図12は画像解析の第2例を示すフローチャートである。この画像解析の第2例は、例えば、印刷動作の終了後に実行される。ステップS401では、演算部11は、解析対象となるユニット画像I2、例えば直近の撮像処理で取得されたユニット画像I2を記憶部12から読み出す。
【0101】
ステップS402では、演算部11は、メンテナンスユニット5のうち、キャップ52に設けられたインク吸収部材526の乾燥の程度を、ユニット画像I2に基づき求める。つまり、インク吸収部材526が湿っている場合には、ユニット画像I2のうち、インク吸収部材526に対応する領域は光沢を有し、当該領域に含まれる画素の輝度が高くなる傾向にある。そこで、演算部11は、当該領域の輝度の平均値あるいは中央値を、インク吸収部材526の乾燥の程度を示す乾燥指標値として算出する。つまり、乾燥しているほど、この乾燥指標値は小さな値を示す。
【0102】
ステップS403では、演算部11は、インク吸収部材526の保湿の要否を判定する。具体的には、保湿の要否を判定する基準となる輝度閾値が判定基準I4として記憶部12に記憶されている。そして、演算部11は、乾燥指標値が輝度閾値以下であれば、保湿が必要と判定し(ステップS403で「YES」)、乾燥指標値が輝度閾値より大きければ、保湿が不要と判定する(ステップS403で「NO」)。
【0103】
保湿が必要と判定した場合には、演算部11は、
図6Bに示したパージを実行して、吐出ヘッド31から吐出したインクによってインク吸収部材526を示される。これによって、続いて実行されるキャップ(ステップS101)を十分な湿度下で実行して、吐出ヘッド31のノズル311の乾燥を抑制することができる。
【0104】
この第2例では、制御部10は、撮像部8により取得されたユニット画像I2に基づきメンテナンスユニット5の乾燥の程度に関する情報(乾燥指標値)を求める(ステップS402)。かかる構成では、メンテナンスユニット5の乾燥が進行していると判断される場合には、吐出ヘッド31から吐出するインクによりメンテナンスユニット5を湿らせるといった処置を適宜実行することができる(ステップS404)。
【0105】
上述の通り、画像解析の第1例および第2例では、撮像部8により取得されたユニット画像I2に基づき制御部10がメンテナンスユニット5の状態(インクの付着範囲やキャップ52の乾燥の程度)を求める。こうして、ユニット画像I2が示すメンテナンスユニット5の状態を制御部10により確認することが可能となっている。
【0106】
図13は画像解析の第3例を示すフローチャートである。ステップS501では、制御部10は、蓄積された統合データI3を記憶部12から読み出す。ステップS502では、制御部10は、統合データI3に含まれるユニット画像I2の類似度に基づき、統合データI3を分類する。かかる分類は、例えばクラスタリングによって実行できる。ステップ502におけるユニット画像I2の分類先の違いは、メンテナンスユニット5に対するインクの付着状態の違いを示すと考えられる。
【0107】
ステップS503では、演算部11は、ユニット画像I2の分類先と相関を有する因子を抽出する。例えば、
図9に示す各因子のうち、インク吐出量(変数)が抽出される。そして、演算部11は、清掃作業の実行要否の判定を、こうして抽出された因子(インク吐出量)に基づき実行することとする。具体的には、演算部11は、インク吐出量に対する閾値を設定する(ステップS504)。この閾値の設定は種々の態様で実行できる。例えば、ユニット画像I2とインク吐出量とを対応付けてディスプレイ14に表示しつつ、作業者にインク吐出量の閾値を決定・入力させることができる。
【0108】
以後に実行される印刷動作においては、演算部11は、清掃作業の度にインク吐出量をゼロにリセットしつつ、清掃作業後のインク吐出量をカウントする。そして、インク吐出量が閾値以上となると、制御部10は、清掃作業が必要と判定して、その旨をディスプレイ14に表示することで、清掃作業の実行を作業者に要求する。
【0109】
上述の例では、制御部10は、ユニット画像I2と、ユニット画像I2を取得するまでに吐出ヘッド31により実行した印刷動作の履歴に関する履歴情報I1とを関連付けつつ、ユニット画像I2を蓄積する(
図9)。このように履歴情報I1と関連付けて蓄積されたユニット画像I2は、印刷動作の履歴とユニット画像I2が示すメンテナンスユニット5の状態との相関関係を解析するのに有用である。
【0110】
また、制御部10は、ユニット画像I2と履歴情報I1とを蓄積した結果に基づき、印刷動作の実行に伴うメンテナンスユニット5の状態の変化に相関を有する変数を求める(ステップS503)。かかる構成では、当該変数の値に基づき、メンテナンスユニット5の清掃の要否を判断することが可能となる。
【0111】
また、制御部10は、メンテナンスユニット5の清掃を実行するタイミングを、当該変数に基づき求める。かかる構成では、メンテナンスユニット5の清掃タイミングを的確に求めることができる。
【0112】
図14は画像解析の第4例を示すフローチャートである。制御部10は、ユニット画像I2を記憶部12から読み出して(ステップS601)、これをディスプレイ14に表示する(ステップS602)。これによって、作業者は、ユニット画像I2を確認することで、メンテナンスユニット5におけるインクの付着状況を把握しつつ、良否をディスプレイ14に入力することができる。ここで、「良」とは、メンテナンスユニット5の清掃作業が不要であるとの作業者の判断を示し、「否」とは、メンテナンスユニット5の清掃作業が必要であるとの作業者の判断を示す。
【0113】
演算部11は、作業者により入力された良否結果を取得し(ステップS603)、該当のユニット画像I2に良否結果を対応付けて記憶部12に保存する(ステップS604)。こうして、機械学習のための教師データが作成される。ステップS605では、対象となる全てのユニット画像I2(例えば、所定の日時以後に取得されたユニット画像I2)について、ステップS601~S604を完了したかが判断される。そして、全てのユニット画像I2にステップS601~604が完了すると(ステップS605で「YES」)、演算部11は、作成された教師データに基づき、ユニット画像I2と良否結果との関係を機械学習する(ステップS606)。
【0114】
以後に実行される印刷動作においては、演算部11は、機械学習による学習結果と、撮像部8によって取得したユニット画像I2に基づき、メンテナンスユニット5の清掃作業が必要か否かを判定する。そして、演算部11は、清掃作業が必要と判定した場合には、その旨をディスプレイ14に表示することで、清掃作業の実行を作業者に要求する。
【0115】
このように、撮像部8が取得したユニット画像I2を作業者へ表示するディスプレイ14(表示部)が設けられている。そのため、作業者は、ディスプレイ14に表示されたユニット画像I2によってメンテナンスユニット5の状態を把握して、メンテナンスユニット5の清掃の要否を簡便に判断できる。
【0116】
また、制御部10は、ユニット画像I2から、機械学習に対する教師データを作成する(ステップS604)。かかる構成では、教師データを簡便に作成することができる。
【0117】
上述の画像解析の各例では、撮像部8により取得されたユニット画像I2が制御部10によって解析される。かかる構成では、ユニット画像I2の解析によって、ユニット画像I2に含まれる情報を抽出することができる。
【0118】
図15は撮像部の構成の第2例を模式的に示す図である。
図15の撮像部8は、カラーフィルタ85を有する。カラーフィルタ85は、カメラ83と撮像範囲Riとの間に設けられて、照明81から射出されて撮像範囲Riで反射された光のうち、カラーフィルタ85を通過した光がカメラ83によって撮像される。
【0119】
このカラーフィルタ85は、特定波長の通過を許容するとともに特定波長以外の波長の光の通過を制限することで、特定波長の光を選択的に通過させる。特に、印刷装置1では、互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニット3にそれぞれ対応する複数の撮像部8が設けられている。そして、各撮像部8は、対応するヘッドユニット3が吐出するインクの色の補色に対応する波長の光を選択的に通過させる許容するカラーフィルタ85を備える。
【0120】
具体的には、シアン(C)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8のカラーフィルタ85は、赤(R)の波長の光を選択的に通過させ、マゼンタ(M)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8のカラーフィルタ85は、緑(G)の波長の光を選択的に通過させ、イエロー(Y)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8のカラーフィルタ85は、青(B)の波長の光を選択的に通過させ、ブラック(K)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8のカラーフィルタ85は、赤(R)の波長の光を選択的に通過させる。
【0121】
このように、撮像部8は、所定の波長の光を選択的に通過させるカラーフィルタ85(フィルタ)と、撮像範囲Riから射出されてカラーフィルタ85を通過した光を検出することで撮像範囲Riを撮像するエリアセンサ811(撮像素子)とを有する。そして、複数のカラーフィルタ85は、それぞれが対応するヘッドユニット3が吐出ヘッド31から吐出するインクの色に応じた波長(インクの補色の波長)の光を選択的に通過させる。かかる構成では、メンテナンスユニット5に付着・堆積したインクを鮮明にユニット画像I2に写すことができる。
【0122】
ちなみに、カラーフィルタ85を設ける代わりに、照明81から撮像範囲Riに照射する光の波長を限定することで、同様の技術的効果を実現することができる。具体的には、白色光ではなくて、特定色に対応する波長の光を選択的に照射するように照明81を構成すればよい。この変形例では、各撮像部8は、対応するヘッドユニット3が吐出するインクの色の補色に対応する波長の光を照射する。
【0123】
具体的には、シアン(C)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8の照明81は、赤(R)の波長の光を照射し、マゼンタ(M)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8の照明81は、緑(G)の波長の光を照射し、イエロー(Y)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8の照明81は、青(B)の波長の光を照射し、ブラック(K)のインクを吐出するヘッドユニット3に対して設けられた撮像部8の照明81は、赤(R)の波長の光を照射する。
【0124】
このように、複数の撮像部8は、それぞれが対応するヘッドユニット3が吐出ヘッド31から吐出するインクの色に応じた波長(インクの補色の波長)の光を撮像範囲Riに照射しつつ撮像範囲Riを撮像する。かかる構成では、メンテナンスユニット5に付着・堆積したインクを鮮明にユニット画像I2に写すことができる。
【0125】
上述の各例では、ヘッドユニット3、メンテナンスユニット5、水平駆動部61および撮像部8によってそれぞれ構成される複数の印刷ユニットがY方向(搬送部2よるウェブWの搬送方向)に配列されている。そして、互いに異なる印刷ユニットに属する複数のヘッドユニット3は、それぞれの吐出ヘッド31から互いに異なる色のインクを、搬送部2(基材搬送部)により搬送されるウェブWに吐出する。すなわち、互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニット3のそれぞれに対して、メンテナンスユニット5、水平駆動部61および撮像部8が設けられている。これに対して、複数の撮像部8は、それぞれが対応するヘッドユニット3が吐出ヘッド31から吐出するインクの色に応じて互いに異なる構成(カラーフィルタ85あるいは照明81)を有する。これによって、ユニット画像I2に写るインクの色に応じた適切な構成(カラーフィルタ85あるいは照明81)でユニット画像I2を取得することができる。
【0126】
図16は撮像部の構成の第3例を模式的に示す図である。この撮像部8は、法線Nに対して、一方側X1に傾いた照明81aおよびカメラ83aと、他方側X2に傾いた照明81bおよびカメラ83bとを有する。照明81aは、法線Nに対して一方側X1へ傾いた斜め上方から撮像範囲Riに光を照射し、カメラ83aは、当該法線Nに対して一方側X1へ傾いた斜め上方から撮像範囲Riを撮像する。これによって、対象箇所を一方側X1から撮像することができる。照明81bは、法線Nに対して他方側X2へ傾いた斜め上方から撮像範囲Riに光を照射し、カメラ83bは、当該法線Nに対して他方側X2へ傾いた斜め上方から撮像範囲Riを撮像する。これによって、対象箇所を他方側X2から撮像することができる。
【0127】
なお、第3例に係る撮像部8においても、インクの色の補色に対応する特定波長の通過を選択的に許容するカラーフィルタ85を設けたり、当該特定波長の光を射出する照明81a、81bを設けたりといった変形を適宜加えることができる。
【0128】
図16に示す撮像部8の使用態様は種々想定できる。例えば、制御部10は、カメラ83aが撮像したメンテナンスユニット5のユニット画像I2と、カメラ83bとが撮像したユニット画像I2に対してステレオマッチングを行って求めた視差に基づき、メンテナンスユニット5や当該メンテナンスユニット5に付着したインクの三次元形状を算出できる。したがって、上述のステップS302において、メンテナンスユニット5に付着するインクの厚みを、インクの三次元形状に基づき求めることができる。
【0129】
かかる態様では、制御部10は、メンテナンスユニット5に堆積するインクをそれぞれ異なる方向から撮像することで取得された複数のユニット画像I2に基づき、メンテナンスユニット5に堆積したインクの厚みを求める。これによって、ユニット画像I2の視差によって、インクの厚みを的確に求めることができる。
【0130】
具体的には、撮像部8は、互いに異なる方向から撮像範囲Riを撮像する複数のカメラ83a、83bを有し、制御部10は、複数のカメラ83a、83bのそれぞれが取得したユニット画像I2に基づき、ユニット画像I2が示すインク(対象物)の三次元形状を求める。かかる構成では、複数のカメラ83a、83bのそれぞれで撮像した複数のユニット画像I2の視差に基づきインクの三次元形状を的確に求めることができる。
【0131】
あるいは、対向位置Laから離隔位置Lbへ向かうメンテナンスユニット5の撮像は、照明81aおよびカメラ83aにより実行し、離隔位置Lbから対向位置Laへ向かうメンテナンスユニット5の撮像は、照明81bおよびカメラ83bにより実行してもよい。逆に、対向位置Laから離隔位置Lbへ向かうメンテナンスユニット5の撮像は、照明81bおよびカメラ83bにより実行し、離隔位置Lbから対向位置Laへ向かうメンテナンスユニット5の撮像は、照明81aおよびカメラ83aにより実行してもよい。
【0132】
かかる態様では、撮像部8は、対向位置Laと離隔位置Lbとの間を往復するメンテナンスユニット5の往路と復路とで異なる方向から光を照射しつつ撮像範囲Riを通過するメンテナンスユニット5を撮像することができる。これによって、メンテナンスユニット5の異なる部分に光を照射しつつ、当該部分の状態を取得することができる。
【0133】
ところで、
図7に示したステップS101~S105を実行するにあたって、吐出ヘッド31からインク吸収部材526にインクを吐出してからメンテナンスユニットを撮像することで、種々の制御が実行可能となる。
図17はメンテナンスユニットを撮像したユニット画像に基づく制御の変形例を模式的に示す図である。
図17では、ハッチングが付されたドットがインク吸収部材526に着弾したインクにより形成されるドット(インクドット)を示す。
【0134】
この変形例では、ステップS101において、制御部10は、吐出ヘッド31の複数のノズル311からのインクの吐出を試行する。具体的には、制御部10は、吐出ヘッド31のノズル311を駆動する駆動信号を、複数のノズル311のそれぞれに送信する。
【0135】
吐出ヘッド31の複数のノズル311のいずれにもノズル詰まりが発生していない場合には、複数のノズル311のそれぞれは、受信した駆動信号に応じてインクを吐出する。その結果、
図17の上段の「ノズル詰まりなし」の欄に示すように、複数のノズル311の配列に応じた複数のインクドットがインク吸収部材526に形成される。一方、吐出ヘッド31の複数のノズル311のいずれかにノズル詰まりが発生している場合には、ノズル詰まりが発生していないノズル311は受信した駆動信号に応じてインクを吐出する一方、ノズル詰まりが発生しているノズル311は受信した駆動信号に応じたインクの吐出を適切に実行できない。その結果、
図17の下段の「ノズル詰まりあり」の欄に示すように、複数のノズル311の配列に応じた複数のインクドットの配列において、一部のインクドットが欠けることとなる。
【0136】
そして、ステップS103では、インクドットが形成されたインク吸収部材526を撮像したユニット画像I2が取得される。したがって、制御部10は、ユニット画像I2に基づき、ノズル詰まりの有無の確認や、ノズル詰まりが発生したノズル311の特定を実行することができる。
【0137】
このように、撮像部8は、吐出ヘッド31がノズル311からメンテナンスユニット5に吐出したインクを撮像してユニット画像I2を取得し、制御部10は、吐出ヘッド31のノズル311の状態をユニット画像I2に基づき求める。かかる構成では、制御部10は、ノズル311の吐出不良等を的確に確認することができる。
【0138】
ちなみに、インク吸収部材526にインクドットを着弾させてから取得されるユニット画像I2に基づき判断できる内容は、上述の例に限られない。例えば、インク吸収部材526が乾燥している場合には、インクドットがインク吸収部材526に吸収されて、インクドットが時間経過とともに急速に薄くなる。よって、ユニット画像I2が示すインクドットの濃さに基づき、インク吸収部材526の乾燥の程度を判断してもよい。例えば
図12のフローチャートのステップS402の判断を、このインクドットの濃さに基づき実行することができる。
【0139】
上述の様に、本実施形態では、印刷装置1が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、制御部10が本発明の「制御部」の一例に相当し、ディスプレイ14が本発明の「表示部」の一例に相当し、搬送部2が本発明の「基材搬送部」の一例に相当し、吐出ヘッド31が本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、ノズル311が本発明の「ノズル」の一例に相当し、メンテナンスユニット5が本発明の「メンテナンスユニット」の一例に相当し、水平駆動部61が本発明の「駆動部」の一例に相当し、撮像部8が本発明の「撮像部」の一例に相当し、照明81が本発明の「照明」の一例に相当し、エリアセンサ811が本発明の「撮像素子」の一例に相当し、カメラ83が本発明の「カメラ」の一例に相当し、カラーフィルタ85が本発明の「フィルタ」の一例に相当し、ヘッドユニット3、メンテナンスユニット5、水平駆動部61および撮像部8が本発明の「印刷ユニット」の一例を構成し、対向位置Laが本発明の「対向位置」の一例に相当し、離隔位置Lbが本発明の「離隔位置」の一例に相当し、撮像範囲Riが本発明の「撮像範囲」の一例に相当し、履歴情報I1が本発明の「履歴情報」の一例に相当し、ユニット画像I2が本発明の「ユニット画像」の一例に相当し、ウェブWが本発明の「基材」の一例に相当する。
【0140】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、インクの三次元形状を、次の変形例のように求めてもよい。この変形例では、対象箇所(インクの付着箇所)が撮像範囲Riを通過している期間における異なる2回のタイミングのそれぞれにおいて、撮像範囲Riを撮像する。こうして、2回のタイミングにおいて取得された2個のユニット画像I2は、互いに異なる角度から対象箇所を撮像した結果を示す。そして、制御部10は、これら2個のユニット画像I2に対してステレオマッチングを行って求めた視差に基づき、対象箇所に付着したインクの三次元形状を算出できる。
【0141】
つまり、制御部10は、メンテナンスユニット5がX方向において異なる位置に位置する状態で撮像部8により取得された複数のユニット画像I2に基づき、ユニット画像I2が示す対象箇所(対象物)の三次元形状を求める。かかる構成では、制御部10は、複数のユニット画像I2の視差に基づき対象箇所の三次元形状を的確に求めることができる。
【0142】
また、メンテナンスユニット5のうち、撮像する部分は、上記の例に限られない。例えば、メンテナンスユニット5のワイパ54を撮像してユニット画像I2を取得してもよい。かかるユニット画像I2に基づき、ワイパ54に対する清掃作業の要否を判定することができる。
【0143】
また、上述の通り、キャップ52は、ベース部材51のキャップ挿入孔511に嵌め込まれている。しかしながら、キャップ52をベース部材51と別体で設ける必要は必ずしもない。つまり、キャップ52とベース部材51とを一体的に構成しても構わない。
【0144】
また、カメラ83の配置や構成を適宜変更することができる。例えば、エリアセンサ811ではなく、ラインセンサによって撮像範囲Riを撮像するように、カメラ83を構成してもよい。
【0145】
また、ヘッドユニット3に対してメンテナンスユニット5を相対的に移動させるにあたって、メンテナンスユニット5ではなくヘッドユニット3を駆動するように構成してもよい。要するに、吐出ヘッドおよびメンテナンスユニットの少なくとも一方の駆動対象を駆動すればよい。
【0146】
また、履歴情報I1に対応付けずに、ユニット画像I2を保存・蓄積するように構成してもよい。
【0147】
また、撮像範囲Riの位置を適宜変更することができる。例えば、離隔位置Lbに撮像範囲Riを重複して設けてもよい。具体的には、離隔位置Lbのうち、対向位置La側の端に撮像範囲Riを設けることができる。
【0148】
また、カバー部材63は必須ではなく、印刷装置1からカバー部材63を省略してもよい。
【0149】
また、メンテナンスユニット5の構成を適宜変更してもよい。
図18はメンテナンスユニットの変形例を示す図である。このメンテナンスユニット5は、プレワイパ55を有する。特にキャップ列C52に属する複数のキャップ52のうち、清掃方向(対向位置Lakら離隔位置Lbに向かう方向)において最上流のキャップ52に対して、プレワイパ55が設けられる。このプレワイパ55は、ワイパ54よりも先に吐出ヘッド31からインクを掻き取る機能を果たす。
【0150】
上記実施形態では、作業者が制御部10に印刷動作の開始動作を指示し、メンテナンスユニット5がヘッドユニット3のキャップ動作を行う過程で撮像部8がメンテナンスユニット5を撮像した。また、作業者が制御部10に印刷動作の終了を指示し、メンテナンスユニット5がヘッドユニット3のキャップ開放動作を行う過程で撮像部8がメンテナンスユニット5を撮像した。すなわち、作業者により印刷動作の開始または終了が指示されたことを契機として撮像部8はメンテナンスユニット5を撮像した。しかし、撮像部8によるメンテナンスユニット5の撮像の契機はこれに限られない。例えば、作業者は、印刷装置1の印刷動作の実行中または印刷動作の停止中の任意のタイミングでメンテナンスユニット5の撮像をディスプレイ14から制御部10に指示してもよい。
【0151】
前者のケースでは、作業者がディスプレイ14から制御部10にメンテナンスユニット5の撮像を指示すると、制御部10は印刷装置1の印刷を一時的に停止させてメンテナンスユニット5を離隔位置Lbから対向位置Laに向けてX方向に移動させる。メンテナンスユニット5が離隔位置Lbから対向位置Laに向けて移動する過程で撮像部8はメンテナンスユニット5を撮像する。
【0152】
後者のケースでは、作業者がディスプレイ14から制御部10にメンテナンスユニット5の撮像を指示すると、制御部10はメンテナンスユニット5によるヘッド3のキャップを一時的に停止させてメンテナンスユニット5を対向位置Laから離隔位置Lbに向けてX方向に移動させる。メンテナンスユニット5が対向位置Laから離隔位置Lbに向けて移動する過程で撮像部8はメンテナンスユニット5を撮像する。
【0153】
さらに、撮像部8によるメンテナンスユニット5は必ずしも作業者の指示を契機にしなくてもよい。例えば、印刷処理が一定時間を経過する度に撮像部8によるメンテナンスユニット5の撮像を実行するようにしてもよい。
先述の
図16に係る実施形態では、撮像領域Riを挟んで法線NのX1側とX2とに撮像部8をそれぞれ配置し、法線NよりもX1側に位置する撮像部8(撮像部8l)により撮像領域Riを法線に対してX1側から撮像し、法線NよりもX2側に位置する撮像部8(撮像部8u)により撮像領域Riを法線に対してX2側から撮像した。これにより、撮像領域Riを二つの撮像部8により法線Nの両側から撮像できるようにした。
【0154】
しかし、撮像領域Riを法線Nの両側から撮像する機構はこれに限られない。例えば、単一の撮像部8を所望の移動手段により法線NのX1側とX2側の間で移動できるように構成してもよい。この場合、メンテナンスユニット5を法線に対してX2側からX1側に移動させる前に撮像部8を撮像領域Riの法線NよりもX1側に位置させておく。この状態で、メンテナンスユニット5を法線に対してX2側からX1側に移動させることにより撮像領域Riを法線NよりもX1側から撮像する。そして、メンテナンスユニット5を法線に対してX1側からX2側に移動させるときには、前記移動手段により撮像部8を法線NよりもX2側に事前に移動させておく。この状態でメンテナンスユニット5を法線に対してX1側からX2側に移動させることにより、撮像部8は撮像領域Riを法線NよりもX2側から撮像することができる。このように、撮像部8を法線Nの両側に配置しなくても、撮像領域Riを法線Nの両側から撮像することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、インクを吐出する吐出ヘッドのメンテナンスをメンテナンスユニットによって実行する技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0156】
1…印刷装置
10…制御部
14…ディスプレイ(表示部)
2…搬送部(基材搬送部)
3…ヘッドユニット(印刷ユニット)
31…吐出ヘッド
311…ノズル
5…メンテナンスユニット(駆動対象、印刷ユニット)
61…水平駆動部(駆動部、印刷ユニット)
8…撮像部(印刷ユニット)
81…照明
811…エリアセンサ(撮像素子)
83…カメラ
85…カラーフィルタ(フィルタ)
La…対向位置
Lb…離隔位置
Ri…撮像範囲
I1…履歴情報
I2…ユニット画像
W…ウェブ(基材)