IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トッパンTDKレーベルの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147706
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】アンテナシート
(51)【国際特許分類】
   H01Q 11/10 20060101AFI20220929BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20220929BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H01Q11/10 100
H01Q1/38
H01Q1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049080
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】板倉 哲之
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AB17
5J047AA09
5J047AA19
5J047AB17
5J047EC02
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で製造でき、自動車の窓ガラス等に後付け可能アンテナシートを提供すること。
【解決手段】シート状の基材と、前記シート状の基材の一方の表面に設けられる導電性パターンからなるアンテナシートであって、前記導電性パターンは、導電線からなる第1及び第2のアンテナパターンを含み、前記第1及び前記第2のアンテナパターンはそれぞれ、前記導電線を折返し配置することで形成された複数のエレメント部と、前記複数のエレメント部を連結する給電線部を含み、前記第1及び前記第2のアンテナパターンのエレメント部同士が線対称の逆位相になり、給電線部同士が交差するように、対数周期的に配列されている、アンテナシート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の基材と、前記シート状の基材の一方の表面に設けられる導電性パターンからなるアンテナシートであって、
前記導電性パターンは、導電線からなる第1及び第2のアンテナパターンを含み、前記第1及び前記第2のアンテナパターンはそれぞれ、前記導電線を折返し配置することで形成された複数のエレメント部と、前記複数のエレメント部を連結する給電線部を含み、
前記第1及び前記第2のアンテナパターンのエレメント部同士が線対称の逆位相になり、給電線部同士が交差するように、対数周期的に配列されている、
アンテナシート。
【請求項2】
前記第1及び前記第2のアンテナパターンはそれぞれ、1本の導電線から形成されている、請求項1に記載のアンテナシート。
【請求項3】
前記第1及び前記第2のアンテナパターンの最先端のエレメント部同士が1本の導電線として繋がっており、これにより、前記第1及び前記第2のアンテナパターンが1本の導電線から形成されている、請求項1に記載のアンテナシート。
【請求項4】
さらに、前記シート状の基材の少なくとも一方の側に設けられた粘着層を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンテナシート。
【請求項5】
さらに、前記導電性パターンの少なくとも一部を保護するための保護層を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナシートに関する。とりわけ、柔軟性のあるフィルム状のアンテナシートに関する。
【0002】
現代社会において、携帯電話やスマートフォン、モバイルノートパソコンなどの無線通信を利用した移動通信システムは社会において欠かすことのできない技術となっている。特に近年では、自動車分野をはじめとした移動体分野においても、自動車と車外ネットワークを接続し、周辺車両やインフラ、交通情報、ダイナミックマップなどのさまざまな情報と常時アクセスし、相互に情報を伝達する移動体通信システムの開発が進められ、車載機器にもスマートフォンなどと同様に、移動通信のための技術が求められている。
【背景技術】
【0003】
無線通信には、必ず電波を受信するためのアンテナが必要になる。自動車など用のアンテナとして、従来、後付け可能なフィルム状のアンテナを用いることが行われていた。フィルム状のアンテナは、一般には、柔軟性に優れるフィルム基材上に、導電性材料を用いて電波の受信に適した形状のアンテナが形成されたものである。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2004-242277号公報)には、第1のダイポールアンテナと第2のダイポールアンテナとからなるクロスダイポールアンテナをシート状の誘電体に形成したアンテナであって、前記クロスダイポールアンテナへの給電を、前記誘電体上に形成した平衡給電線により行うものにおいて、前記クロスダイポールアンテナを構成する4つのアンテナエレメント部の内の、少なくとも1つのアンテナエレメントを面状アンテナエレメントとしたことを特徴とするアンテナが開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2008-187383号公報)には、主として移動体のガラスに装着して使用されるフィルムアンテナとして、直線状で幅の異なる2つの導電体を略平行に配置して各導電体の両端同士を接続することにより、特性インピーダンスが通信信号伝送用の同軸ケーブルと整合するように設定された2線折返しダイポールアンテナであるアンテナ導体を積層してなるフィルムアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-242277号公報
【特許文献2】特開2008-187383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
刻々と変化する交通状況、天気、ニュースなどの情報をリアルタイムに送受信するには、相当な量のデータを素早くやり取りする必要がある。通信速度を高速化するには、高い周波数帯の電波を用いる必要があるが、高い周波数の電波は直進性が高く、例えば車内、建造物内へ電波が届きにくいという技術的な課題が生じる。特許文献1及び2に開示される技術では、高速かつ大容量の無線通信には十分ではなかった。また、これらのアンテナは、簡便に製造及び設置することができない。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、簡便な方法で製造でき、自動車の窓ガラス等に後付け可能アンテナシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、シート状の基材に、導電性パターンを設けることで、簡便な方法でアンテナシートを製造することができることを見出し、本発明の完成に至った。そこで、本発明は、以下のように例示される。
【0010】
本発明は一側面において、シート状の基材と、前記シート状の基材の一方の表面に設けられる導電性パターンからなるアンテナシートであって、
前記導電性パターンは、導電線からなる第1及び第2のアンテナパターンを含み、前記第1及び前記第2のアンテナパターンはそれぞれ、前記導電線を折返し配置することで形成された複数のエレメント部と、前記複数のエレメント部を連結する給電線部を含み、
前記第1及び前記第2のアンテナパターンのエレメント部同士が線対称の逆位相になり、給電線部同士が交差するように、対数周期的に配列されている、
アンテナシートである。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記第1及び前記第2のアンテナパターンはそれぞれ、一本の導電線から形成されている。
【0012】
本発明の別の一実施形態において、前記第1及び前記第2のアンテナパターンの最先端のエレメント部同士が1本の導電線として繋がっており、これにより、前記第1及び前記第2のアンテナパターンが1本の導電線から形成されている。
【0013】
本発明の別の一実施形態において、アンテナシートは、さらに、前記シート状の基材の少なくとも一方の側に設けられた粘着層を含む。
【0014】
本発明の別の一実施形態において、アンテナシートは、さらに、前記導電性パターンの少なくとも一部を保護するための保護層を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡便な方法で製造でき、自動車の窓ガラス等に後付け可能アンテナシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】本発明のアンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。
図1b】本発明のアンテナシートの一例を模式的に示す断面図である。
図2a】本発明のアンテナシートの一実施形態における、第1のアンテナパターンの一例を模式的に示す平面図である。
図2b】本発明のアンテナシートの一実施形態における、第2のアンテナパターンの一例を模式的に示す平面図である。
図3a】本発明のアンテナシートの別の一例を模式的に示す平面図である。
図3b】本発明のアンテナシートの別の一例を模式的に示す断面図である。
図4a】本発明のアンテナシートにおいて、導電性パターンの導電線がシート状の基材の表面に埋め込まれた状態の一例を示す。
図4b】本発明のアンテナシートにおいて、導電性パターンの導電線の一部がシート状の基材の表面に覆われる状態の一例を示す。
図5】本発明のアンテナシートに保護層を設けた一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。なお、本発明の各実施形態を説明する図面における寸法、縮尺、角度などは、理解に資するために便宜上示すものであり、実際の寸法、縮尺、角度などを示すとは限らない。
【0018】
(1.シート状の基材)
図1aは本発明のアンテナシートの一例を模式的に示す平面図である。図1bは本発明のアンテナシートの一例を模式的に示す断面図である。図1bを参照すると、シート状の基材2の一方の表面に、導電性パターン3が設けられ、シート状の基材2の導電性パターン3が設けられていない側には、粘着層4を設けた例が示されている。粘着層の詳細については後述する。
【0019】
本発明の一実施態様において用いられるシート状の基材2は、所定の厚みを有し、単層又は複数層で構成され、各層は、紙、合成紙、熱可塑性樹脂シートなどを用いることができる。柔軟性の観点から、シート状の基材2が単層である場合、樹脂材料からなる層であることが好ましく、シート状の基材2が複数層で構成される場合、少なくともその一層が樹脂材料からなることが好ましい。シート状の基材2の少なくとも一層を構成する樹脂材料には熱可塑性樹脂を用いることが望ましい。
【0020】
熱可塑性樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂等を用いることができ、これらの材料として、1種を単独に使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
シート状の基材2を複数層で構成する場合の例としては、紙基材上に熱可塑性樹脂を塗工やラミネートしたものを挙げることができる。
【0022】
シート状の基材2を熱可塑性樹脂で構成する場合、透明又は半透明な熱可塑性樹脂からなるものであれば、全体として透明又は半透明なアンテナシートを作製することができるので好適である。全体として透明又は半透明なアンテナシートは、貼り付け対象となる自動車の窓ガラス等の被着体の透明性や外観を損なうことなく貼着可能となるので好ましい。
【0023】
シート状の基材2には、無機微細粉末あるいは有機フィラー、分散剤、酸化防止剤、相溶化剤、紫外線安定剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤等を適宜添加することができる。
【0024】
シート状の基材2の強度を維持し、導電性パターン3を担持する機能を果たすためには、シート状の基材2の厚みは、0.030mm以上であることが好ましく、0.050mm以上であることがより好ましい。一方、シート状の基材2の柔軟性を維持する観点から、シート状の基材2の厚みは、1.000mm以下であることが好ましく、0.500mm以下であることがより好ましい。
【0025】
(2.導電性パターン)
図1aを参照すると、導電性パターン3は、導電線からなる第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32を含み、第1のアンテナパターン31は、任意の間隔dをもって導電線を折返し配置することで形成された複数のエレメント部(l1、l2、…ln、…、nは2以上の整数、例えば2~20の間の任意の整数である。)が、当該複数のエレメント部を連結する給電線部33を含む。第2のアンテナパターン32も同様に、任意の間隔dをもって導電線を折返し配置することで形成された複数のエレメント部(l1、l2、…ln…、nは2以上の整数、例えば2~20の間の任意の整数である。)が、当該複数のエレメント部を連結する給電線部33を含む。第2のアンテナパターン32において、エレメント部及び給電線部33の構成は実質的に第1のアンテナパターン31と同様であるため、同様の符号で示されている。
【0026】
図1aに示される実施形態では、第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32のエレメント部同士が線対称の逆位相になり、給電線部33同士が交差するように、対数周期的に配列されている。各エレメント部は、折り返しの部分を除き、一方向(図面では上下方向)に平行であるように配置される。このような配置は、典型的にはログペリオディックアンテナとして分類される。また、第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32の各エレメント部同士の基端部は、一定の間隔Dになるように配置されている。
【0027】
図2aは、本発明のアンテナシートの一実施形態における第1のアンテナパターン31の一例を模式的に示す平面図であり、図2bは、本発明のアンテナシートの一実施形態における第2のアンテナパターン32の一例を模式的に示す平面図である。第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32のそれぞれのエレメント部が線対称の逆位相となるように、互いの給電線部33を交差させて配設することにより、図1aのアンテナシート1を構成するログペリオディックアンテナの構造になる。
【0028】
導電性パターン3は、任意の間隔dをもって折り返された一つのエレメント部が1つのダイポール素子を構成し、各素子のエレメント部長さl、折り返し間隔d及びエレメント部間隔Xは給電点34に向かって徐々に短くなるように複数配列されている。各寸法は、一般的な対数周期アンテナの構造式に基づき、対数周期比(寸法係数)τ及び間隔係数σを受信周波数に整合した適当な値に設定することで広帯域対数構造とすることができる。エレメント部長さlは最高周波数と最低周波数の1/4λの範囲で等比的に短くなり、寸法係数τは、必要とするアンテナの大きさから求められる寸法比で、各周波数に対応するエレメント部長さl、幅(折り返し間隔d)はこれにより決まる。また最低周波数、最高周波数及び寸法係数τからエレメント部本数が決定される。
【0029】
対数周期比(寸法係数)τ及び間隔係数σは、以下のように決定される。
【数1】
【数2】
【0030】
周波数帯域とアンテナパターンを例示すると、受信周波数を700MHz~4000MHzとした場合、ブーム長を218.7mmとすれば、τは0.760、σは0.134、エレメント部数は10となる。各エレメント部の具体的な寸法例を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1によれば、折り返し間隔dは、おおよそ0.2mm~2.1mmの範囲内とすることができるが、本発明はこれに限定されず、より広い範囲とすることができる。例えば、折り返し間隔dの下限は、0.1mm以上とすることができる。また、折り返し間隔dの上限は、3.0mm以下とすることができる。
【0033】
導電性パターン3は、銀ペースト等の導電性インキを用いた印刷や銅箔等の金属箔のエッチングによる形成、一定の径を有する断面視で円形の導電線を所定のパターンに配設して形成することができる。
【0034】
導電性パターン3を導電線で形成する場合、その導電線は、少なくとも金属線を含んで構成され、好ましくは、金属線が自己融着性の絶縁被膜により被覆されてなるものとすることができる。金属線としては、例えば、銅、鉄、金、銀、銅ニッケル、ニッケルクロム、鉄ニッケルクロム等の金属線を用いることができるが、導電性を有するものであれば他の材料を用いることもできる。通信特性や耐久性、コストの観点から、金属線として銅又は銅合金が好ましい。銅合金の例としては、亜鉛、鉛、錫、銀、アルミ、ニッケル、ベリリウム、ジルコニウムなどを単独もしくは複数組み合わせてある銅合金を用いることが好ましい。
【0035】
金属線を被覆する絶縁被膜は、絶縁性の樹脂被膜であり、絶縁被膜で被覆された導電線は市販のエナメル線とすることができる。絶縁性の樹脂被膜の具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等を挙げることができる。絶縁被膜は、典型的には黒色であるが、貼り付け対象となる被着体の色彩にあわせて絶縁被膜を任意の色に着色させてもよい。
【0036】
導電性パターン3を構成する導電線の直径は通信特性を考慮すると、例えば、0.03mm~0.2mmとすることができる。細い導電線を形成するのは容易ではない場合もあるが、貼り付け対象となる被着体の透明性や意匠性を損なわないためには導電線はできるだけ細いほうがよく、導電線の直径は好ましくは、0.05mm~0.15mmである。
【0037】
本発明の好ましい1つの実施態様として、導電性パターン3は、第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32を1本の連続した導電線で形成することができる。図2a、bでは、第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32がそれぞれ1本の導電線からなる連続した導電性パターンとして設けた例を示している。図3aでは、第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32の最先端のエレメント部同士が一本の導電線で繋がっており、第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32が全体で一本の導電線からなる連続した導電性パターン3として設けた例を示している。
【0038】
このような導電性パターンの形成方法としては、典型的にはシート状の基材2の一方の表面に、導電線を引き回して、所定のパターン形態を描き、導電線を少なくともシート状の基材2の一方の表面に埋め込むことにより固定することで、形成することができる。ここで、埋め込むとは、導電線に接しているシート部分の位置が、導電線の下端よりも高い状態にあることを意味する。例えば、図4aに示すように、シート状の基材2の表面よりも奥側に導電線の下端がめりこんだ状態であってもよい。或いは、図4bに示すように、導電線の下端は、シート面と同じ高さかそれよりも高い位置にあるが、シート面の一部が盛り上がって、導電線の下端の一部を覆うような状態であってもよい。
【0039】
シート状の基材2の表面への導電線の埋め込み方法としては、例えば、少なくとも一方の表面が熱可塑性樹脂で構成されるシート状の基材2を用い、超音波融着の原理を活用して導電線をシート状の基材2の表面に埋め込むことが望ましい。超音波融着を行うに際しては、導電線を繰り出しながら熱可塑性樹脂からなるシート状の基材2の表面を溶融させ、導電線をシート状の基材2の表面に埋め込むことが可能な配線描画装置を用いることができる。このような配線描画装置が備える超音波ヘッドにより、導電線をシート状の基材2の表面上へ繰り出しつつ、振動と加圧によりシート状の基材の表面に導電線を埋め込むことができる。
【0040】
シート状の基材2の表面への導電線の埋め込みにより、シート状の基材2上での導電性パターン3の位置決めを行うことができ、外部からの衝撃等による導電線の位置ずれの抑制を図ることができる。また、シート状の基材2の表面に導電線を埋め込むことで、シート状の基材2の表面上に導電線を配置することによるシート状の基材2の表面の凹凸の程度を低減することができる。
【0041】
導電性パターン3は、印刷やのエッチングで形成することもできるが、その場合は、第1のアンテナパターン31及び第2のアンテナパターン32の間に絶縁層を形成するとよい。図2aに示す第1のアンテナパターン31を形成し、第1のアンテナパターン31上に絶縁樹脂を塗布形成又はラミネート形成した後、絶縁樹脂上に図2bに示す第2のアンテナパターン32を形成することもできる。
【0042】
(3.粘着層)
本発明の一実施形態において、図1b、図3bに例示されるように、シート状の基材2の少なくとも一方の側に粘着層を設けることができる。より具体的には、シート状の基材2の導電性パターン3が設けられた一方の面、及びシート状の基材2の導電性パターン3が設けられていない他方の面の少なくともどちらか一方に、粘着層4を設けることができる。
【0043】
粘着層4としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ゴム系、ポリエステル系、セルロース系、エマルジョン等の粘着剤が使用可能である。また必要により粘着剤の特性向上のための添加剤として、フィラーや粘着付与剤や硬化剤なども適宜使用できる。
【0044】
粘着層4の厚みは接着力が得られる厚みであれば特に限定されず、通常は20μm以上であり、好ましくは25μm以上である。粘着層4の厚みの上限は特に限定されないが、通常は200μm以下であり、好ましくは75μm以下である。粘着層4を形成する場合、粘着剤をグラビアコーティング、グラビアリバースコーティング、コンマコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング等の塗布方式を用いて形成できる。
【0045】
(4.保護層)
本発明の一実施形態において、導電性パターン3の少なくとも一部を保護するために、保護層5を設けることができる。より具体的には、シート状の基材2の導電性パターン3が設けられた一方の面に、導電性パターン3の少なくとも一部を保護する保護層5を設けることができる。
【0046】
図5は本発明の一実施形態におけるアンテナシート1に保護層5を設けた一例を模式的に示す断面図である。図5によると、シート状の基材2の一方の面に、導電性パターン3が設けられ、シート状の基材2の導電性パターン3が設けられた側の全面に、導電性パターン3を被覆するように保護層5が設けられている。
【0047】
保護層5は、シート状の基材2の一方の面に設けられた導電性パターン3が外部に露出するのを保護する。導電性パターン3が自己融着性の絶縁層により被覆された導電線であれば保護層は必ずしも必要ではないが、保護層5は、擦れなどで導電線がシート状の基材から剥がれたり、衝撃で断線したりすることを防止することができる。
【0048】
保護層5の材料の具体例としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリル系もしくはポリメタクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ-プラスト系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂等を構成するモノマー、プレポリマー、オリゴマー又はポリマーの1種又は2種以上を主成分とする組成物を挙げることができる。
【0049】
保護層5の形成方法としては、例えば、オフセット印刷やグラビア印刷等、スクリーン印刷等の印刷方式で形成することができる。また、シート状の基材2と同様の透明な熱可塑性樹脂シートを、必要に応じて接着層を介して熱プレスでラミネート形成することもできる。シート状の基材2と保護層5が透明又は半透明なものであれば、全体として透明又は半透明なアンテナシート1を作製することができるので好適である。全体として透明又は半透明なアンテナシート1は、貼り付け対象となる自動車の窓ガラス等の被着体の透明性や外観を損なうことなく貼着可能となる。
【0050】
保護層5の厚みは、例えば、印刷方式で形成する際には、下限が1μm以上、好ましくは5μm以上であり、上限が100μm以下、好ましくは50μm以下である。熱可塑性樹脂シートを用いる場合、例えば、保護層5の厚みの下限が10μm以上、好ましくは50μm以上であり、上限が500μm以下、好ましくは300μm以下である。
【0051】
本発明の一実施形態において、保護層5が導電性パターン3を視覚的に隠蔽する隠蔽層とすることができる。隠蔽層としての保護層5を着色したものでよく、保護層5そのもの、又は保護層5上に印刷による意匠を施したものでもよい。
【0052】
以上に説明したように、本発明によるアンテナシートは、構造が簡素であるため、簡便な方法で製造でき、自動車の窓ガラス等に容易に後付け可能である。
【0053】
また、本発明の一部好ましい実施形態によれば、高速かつ大容量の無線通信に利用可能な、指向性のある広帯域対応のアンテナシートを提供することも可能である。
【実施例0054】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
シート状の基材2となる熱可塑性樹脂シート(三菱樹脂株式会社製ポリカシートDPI-AO 厚み0.075mm)を準備し、シート状の基材2の一方の表面に導電線(ELEKTRISOLA社製自己融着被膜導線AB15φ0.10mm)を、超音波ヘッドを備えた配線描画装置(Ruhlamat社製WCE150、設定条件:USP1200、speed40%)を用いて埋め込み、図2aに示す第1のアンテナパターン31を形成した。続いて、シート状の基材2の第1のアンテナパターン31を形成した一方の表面に図2bに示す第2のアンテナパターン32を同様に形成した。第1のアンテナパターン31と第2のアンテナパターン32のエレメント部間隔Dを10mmとし、図1a示す線対称の導電性パターン3を形成した。
【0056】
第1のアンテナパターン31と第2のアンテナパターン32は、700MHz~4000MHzの周波数に対応するように、ブーム長は218.7mm、エレメント部数は10、τは0.760、σは0.134とし、各エレメント部は、表1に示す寸法で、エレメント部長さl、折り返し間隔d、エレメント部間隔Xが、給電点34に向かってに徐々に短くなるように複数配列した。
【0057】
シート状の基材2の他方の面には粘着層4を形成した。粘着層4は主剤としてアクリル系樹脂「BR1122」(三菱レイヨン株式会社製)、硬化剤としてイソシアヌレート系硬化剤「TPA100」(旭化成株式会社製)を用い、主剤と硬化剤を固形分比で100:1の割合で配合した粘着層ペーストを作製し、メイヤーバーを用いて膜厚20μmになるように塗布形成し、熱風恒温槽で120℃、5minの乾燥を行った。その後、粘着層面に剥離性フィルム「A31」を貼り合せ、50℃、72時間で粘着層を熱硬化させた。最後に、縦250mmm×横300mmにカットし、図1bに示すアンテナシート1を作製した。
【0058】
(実施例2)
実施例1と同様に、シート状の基材2の一方の面に導電線(ELEKTRISOLA社製自己融着被膜導線AB15φ0.10mm)を、超音波ヘッドを備えた配線描画装置(Ruhlamat社製WCE150、設定条件:USP1200、speed40%)を用いて埋め込み導電性パターン3を形成した。このとき図3aに示すように、第1のアンテナパターン31と第2のアンテナパターン32の最外縁のアンテナエレメント部とを一本の導電線で繋げて形成し、第1のアンテナパターン31と第2のアンテナパターン32とが全体で一本の導電線からなる連続した導電性パターン3を形成した。
【0059】
実施例2では、シート状の基材2の導電性パターン3を形成した一方の面に、実施例1と同様の方法で粘着層4を形成した。最後に、縦250mmm×横300mmにカットし、図3bに示すアンテナシート1を作製した。
【0060】
(実施例3)
保護層5となる熱可塑性樹脂シート(三菱樹脂株式会社製ポリカシートDPI-AO、厚み0.075mm)を準備し、実施例1の導電性パターン3を配線したシート状の基材2の表面に保護層5となる熱可塑性樹脂シートを貼り合わせて、真空ラミネート機(名機製作所製MVLP-500、温度180℃、圧力0.5MPa)により加熱プレスし、シート状の基材2に十分に密着させた。その後、実施例1と同様に粘着層4を形成し、最後に、縦250mmm×横300mmにカットし、図5に示すアンテナシート1を作製した。
【符号の説明】
【0061】
1 アンテナシート
2 シート状の基材
3 導電性パターン
31 第1のアンテナパターン
32 第2のアンテナパターン
33 給電線部
4 粘着層
5 保護層
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5